この命全部でお前を守りたい

「コホンッ・・・」
「かごめちゃん大丈夫・・・?顔が赤いよ?」
「うん・・・。大丈夫・・・」
珊瑚がかごめの額の汗を拭く。
このところの妖怪との闘いで疲れがたまっていたのか、かごめは治りかけていた風邪がぶりかえしたのか。
「けっ。だから人間はヤワだっていうんだ。ケガすりゃ治りはおそいしたまんねぇ・・・」
そういいながらも、犬夜叉は心配なのかかごめのまわりをさっきからいったりきたり。
「どーでもいいけど、落ち着かないからすわてくれない?」
「けっ」
「それより楓様・・・かごめちゃん、風邪にしてはちょっと様子がおかしいきがするんだけど・・・。肩の辺りに何か・・・」
どこからともなく、弥勒登場。
「確かに・・・これはひどい汗だ。着替えをさせなければいけませぬな・・・」
ドカッ!
珊瑚より先に犬夜叉の蹴りがはいった。
「どさくさに何やってんだ。てめぇー!」
「ならば犬夜叉。お前がやるか?」
「・・・んなっっ!!んなわけねーだろ!!」
そして、珊瑚の退去命令がでる。
「男達は出ていけ!」
そんな男達をよそにかごめは苦しそうに息をはく。
そのかごめの肩に妙な赤いあざがうかんでいた。
そして、それは少しずつ大きくなっている。
楓は愕然とした。
「これは・・・。呪詛の証!!」
「えっ。呪詛ってあのもしかして・・・」
呪詛・・・。思い当たる人物はたった一人。
「作用・・・。これは椿の紋章・・・。椿の呪いだ・・・。それも呪詛の中でも一番強力で浅ましい呪い・・・」
「でも、四魂のかけらは汚れてないよ」
珊瑚に言うとおり、ビンの中の四魂のかけらは黒ずんでいない。
「・・・。かけらの力はなくとも呪う相手の体の一部さえあれば何のことはない・・・。椿め・・・」
「う・・・」
「かごめちゃん!」
紋章はかごめが苦しむのと同時に大きくそして、濃くなっていく。
珊瑚は椿の呪いのことを犬夜叉達に伝えた。
「椿・・・。あの野郎またかごめを・・・っ!!許せねぇっ!」
「犬夜叉!どこへ行く」
「決まってんだろ!椿の野郎をとっつかまえにいくんだよっ!きっと近くにいるに違いねぇっ」
犬夜叉は興奮状態で出ていこうとする。
「待て!犬夜叉!椿を倒してはならぬのだっ!」
「何?どういう事なんだ?!」
楓は椿の式神の事を話す。
以前、犬夜叉達との戦いで自分の中に飼っていた妖怪を全て死んでしまった椿。その椿は今度は椿自身が式神となり、呪いをかける。
自分自身の恨みをはらすためのその呪いの強さは計り知れないものがあった。
「だから早く椿をとっつかまえて・・・」
「確かに式神を倒せば呪いは解ける。しかし・・・。自分自身を式神にした場合、式神を倒すことはすなわち、呪った相手の命もろともということなのだ・・・」
「そんなっ!じゃあ、かごめちゃんは・・・」
「・・・。椿の思うつぼ・・・ということですな・・・」
「また・・・。桔梗の落とし物をかごめちゃんに・・・」
珊瑚はかごめの額の布を取りかえる。
「おい!楓ばばあっ!!何か、方法はねえのかっ!おい、楓ばばあっ!!」
「・・・。椿自身が呪いを解くしか・・・」
犬夜叉は楓のえりをつかんで必死に問う。
また・・・。過去の自分と桔梗とのいざこざが今、また、かごめにふりかかっている。
犬夜叉は何もできないのかと自分に対して腹立たしさがこみあげてきた。
「畜生!何で・・・。何で俺を狙わねぇんだっ・・・!何でいつもかごめなんだっ!!何で・・・いつも・・・っ!!」
ドンッ!
怒りを床板に叩きつける犬夜叉。
その横で、かごめは苦しんでいる。
「犬夜叉・・・。物に八つ当たりしている暇はないぞ。椿はすぐそこだ」
「!」
楓の小屋の外には既に椿がよこした妖怪達が囲んでいる。そのまん中に椿がいた。
「椿の野郎・・・っ!俺がつるし上げて呪いを解かせる!俺が・・・っ。うっ!?」
ドクンッ。
犬夜叉の爪と妖気がだんだんと弱まっていく!
「犬夜叉・・・お前・・・」
「っ!こんな時にっかよ・・・っ!!だけど俺は行く!早く呪いを解かせるっ!どけ弥勒!!」
しかし、弥勒は犬夜叉の前に立ちはだかる。
「お前はかごめさまを連れてここを逃げろ。お前はこの、破魔の札をこの先の洞窟に貼って夜明けを待つんだ日が昇るまで私と珊瑚でなんとか奴らをくい止める」
「そんな悠長なことできっかよ!今すぐ、呪いをとかなけりゃ・・・。どけっ!弥勒!」
「落ち着け!犬夜叉!」
「うるせえっ!かごめが苦しんでるのなんて見ていられねえんだよっ!どかねぇならお前、ぶったおしても俺はいくぞっ!!」
「犬夜叉っ!」
バキッ!
弥勒は犬夜叉に一発御見舞した。
「なにすんだよっ!」
「目を覚ませ。犬夜叉!お前がかごめ様の側にいなくてどするんだ!!ここに一人にする気か?!」
「・・・」
「お前の焦る気持ちはわかる。だが、今一番苦しんでいるのは誰だ?!かごめ様は今、たった一人で闘っておられるのだぞ!何も言わず。たった一人で・・・」
苦しそうなかごめ。しかし、その心の中で呪いと闘っているにちがいない。
「・・・。人間の姿で今、できる一番の方法を冷静に考えろ。私と珊瑚はなんとしてでもふんばる。」
「弥勒・・・」
「ふん・・・。見くびるな犬夜叉。俺はお前が思っているほどヤワじゃねぇ。それに珊瑚もいるしな」
「そうだよ。犬夜叉。退治屋の名にかけても妖怪共をここから先は行かせない。だからあんたはかごめちゃんを絶対守るんだよ」
「珊瑚・・・」
「おい!オラもおるぞ!」
「すまねぇ・・・。みんな・・・」
犬夜叉はかごめをおぶさる。
「かごめ・・・。もう少しがんばってくれよ・・・」
犬夜叉が裏戸から出ていこうとして立ち止まる。
「・・・。すまねぇ。弥勒・・・。でもさっきの一発で目ぇ冷めたぜ」
「ふん。貸しにしといてやる。だから、早く行け」
「やられんじゃねぇぞ・・・」
犬夜叉は仲間達の安否を心配しつつ楓の小屋を後にした。
「さーて。お客様を待たせてはいけませんな。珊瑚」
「丁重にお迎えしてあげるよっ!行こう!法師様!」
弥勒と珊瑚。意を決して外の妖怪に立ち向かっていった。
「おーい。待ってくれ、オラもおるぞったら!」
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