闇の告白(ミロサン編)
〜琥珀色の涙〜

奈落の臭いをだ追って犬夜叉達一行は森の奥の洞窟までやってきた。

そして、その洞窟は入り口が二手に分かれており、右の入り口に犬夜叉とかごめが左の入り口に弥勒と珊瑚が入っていったのだった。

「どこまでいっても真っ暗だね。法師様」

「ええ・・・。これでは珊瑚の尻を位置もわかりません・・・」

といいつつ、しっかり珊瑚にセクハラ開始しております。

バキ!!

珊瑚の鉄拳、見事、弥勒の後頭部に命中。

「珊瑚・・・お前この暗闇でどうやって私の頭を・・・」

「その手に目玉でもつてるんじゃないの!そっちこそこんな暗い所で・・・」

二人とも、最近、こんなやりとりも慣れてきたのか絶妙なタイミングになりつつある。

「全く・・・。法師様、ちゃんとそこにいる?」

「いますよ。何時も珊瑚のそばにおります」

「嘘ばっかり。暇さえ有れば女ひっかけに行ってる癖に」

弥勒、急所をつかれる。

「・・・。それはそれ。これはこれお前が一番ですよ。珊瑚・・・」

「何がそれはそれよ!!こんな時に・・・。!!」


その時、弥勒と珊瑚同時に凄まじい邪気を感じた!

これは・・・。

間違いなく奈落の邪気・・・。

二人に緊張が走った。

「法師様・・・」

「せっかくの二人きりの時間を邪魔されましたな。一番むかつく奴に」

身構える二人。あたりを警戒する。

コツ、コツ、コツ・・・。

暗闇から足音が聞こえてきた。

コツ・・・。コツ・・・。

段々大きく聞こえてくる。

こちらに向かっているような・・・。

少しずつ、音は大きくなり、その足音の主の姿が見えてきた・・・。

「あ・・・」

妖怪退治屋の衣を身にまとい、まるで人形の様に意志がない顔の琥珀が・・・。珊瑚の前に現れた。

「こ・・・琥珀!!」

「・・・」

珊瑚の声もきこえていない。

うつむいたままの琥珀。

「琥珀ーー!!」

珊瑚が思わず琥珀の元へ走ろうとした!!

しかし、珊瑚の腕を弥勒が掴んで止めた!

「法師様!?」

「珊瑚。感情的になるな。奈落の思うつぼだ。少し様子をみなさい」

「でも・・・!!」

“クックックッ・・・”

興奮する珊瑚の感情を逆撫でするような笑い声が琥珀の背後から聞こえてきた・・・。

「な・・・奈落!!」

「どうした珊瑚。久しぶりに肉親に会わせてやろうというのになぜ、こちらにこない??」

「奈落!!琥珀を返せ!!」

更に奈落の言葉に珊瑚は頭に血が上ってしまった。

「罠だと思うか・・・?くっ。今の琥珀はお前の知っている琥珀だと思うが・・・?」

くぐつの奈落はそう言って指をパチンと鳴らした。

「うッ!!」

指の音に反応し、琥珀は両手を頭に抱えて苦しみだした・・・。

「うう・・・わああああッ!!!」

「琥珀!!」

「さぁ、感動的な弟とのひとときを過ごすがいい・・・。琥珀の苦しみを味わいつつな・・・。クックックッ・・・」

「待て奈落!!」

弥勒は風の穴をしかけるが、奈落の姿は闇に消え去ってしまった。

「うぁああああああッ!!!」

苦しむ琥珀に駆け寄る珊瑚。

「琥珀・・・!!?」

「ううう・・・うっ・・・。姉・・・上?」

あどけない瞳。

頼りげな瞳

間違いなく自分の弟の琥珀だ・・・。

「琥珀・・・。あたしがわかるの・・・!?」

「姉・・・上・・・。う・・・俺は・・・。俺は・・・」

蘇る・・・。自分が手にかけてしまった父親・・・。

仲間達・・・。

蘇る・・・。血の匂い・・・。

「うぁああ!!俺は俺は父上やみんなをこの手で・・・!!俺は俺は・・・!!!」

琥珀は再び混乱し絶叫した。ただ、琥珀の脳裏には肉親をこの手で殺めてしまった時のえぐい感触しかない。

「琥珀・・・!!大丈夫大丈夫だから!!落ち着いて・・・。琥珀・・・!!」

琥珀を抱きしめようと珊瑚は近づく。

「くるなぁあああ!!」

「こ、琥珀!?」

琥珀はガチガチと震えている。

「姉上・・・。俺に近づいちゃだめだ・・・。もう一人の俺が・・・。姉上の命を狙ってる・・・。この・・・この父上やみんなを殺めたこの手が・・・ッ!!」

琥珀は自分の右手をぐっと押さえて言った。

「姉上・・・。ごめんよ・・・。俺のせいで・・・。姉上にまで傷つけて・・・」

「琥珀・・・ッ」

「姉上・・・。俺を殺して・・・」

「なっ・・・何言うのよ!!」

琥珀は瞳一杯に涙をためて珊瑚に話す・・・。

11歳の少年はなんと疲れ果てた顔をしているのだろう・・・。

「俺・・・。もうだめだ・・・。奈落様に操られてしまって俺はもう・・・。父上の所に行って謝るよ・・・」

琥珀は鎌の刃を自分の首にあてた!!

「琥珀!!やめて!!」

珊瑚は琥珀から鎌を取り上げようとした!

ザシュ!!

「うっ!!」

珊瑚の手の甲が傷つけられた!

「珊瑚!!」

弥勒が珊瑚を助けようと琥珀に破魔の札を投げようとしたが・・・。

「法師様はこないで!!これはあたしと琥珀の闘いだから・・・ッ」

「珊瑚・・・」

傷つけられた手の甲をグッと押さえ、珊瑚はゆっくりと琥珀に近づいく・・・。

やっと元に戻った琥珀。

ずっと抱きしめたかった・・・。

この世でたった一人の・・・可愛い弟を・・・。

「くるなぁ!!」

「琥珀・・・。ずっと・・・会いたかった・・・」

珊瑚は両手を広げ・・・。

静かに・・・。琥珀を・・・。

抱きしめた・・・。


カラーン・・・。


琥珀手から・・・するどい鎌の刃が落ちた・・・。

「あね・・・う・・・え・・・」

「琥珀・・・。琥珀・・・」

「姉上・・・ッ」

琥珀は珊瑚の胸に赤子の様に埋めた。

ずっとこの懐かしい場所に帰ってこられた・・・。

「琥珀・・・。おかえり・・・」

「姉上・・・」

「やっと帰ってきたんだね・・・」

「姉上・・・」

「琥珀・・・」

やっと、やっと・・・。帰ってきた。私の元へ・・・。

珊瑚の胸に安堵の気持ちが溢れていた。

「琥珀・・・。帰ろう・・・。あたしと一緒に・・・」

「・・・。帰るって・・・どこに・・・?」

「あたしの仲間の村だよ・・・。帰ろう・・・一緒に・・・」

「・・・」

黙る琥珀・・・。弥勒はこの時、琥珀の背後にある黒い影に気がついた!!

(はっ・・・。琥珀はまだ・・・奈落の呪縛から・・・!?)

「うん・・・。姉上・・・。みんなの所に帰ろう・・・。父上やみんなの元へね・・・ッ!」

「!?」

琥珀は珊瑚の両手をガシッとつかみ、背後の黒い影にへ引きずり込もうとする!!

「琥珀!!」

「姉上・・・。行こう・・・。ほら・・・。行こう・・・。あの闇の向こうに父上達が待ってる・・・」

「琥珀・・・。あんたまだ・・・奈落から・・・」

さっきのあの涙は本物の琥珀の涙だった。

しかし、目の前にいるのは奈落に操られている琥珀の瞳・・・。

どうして・・・。やっと・・・。やっと戻ってきたと思ったのに・・・。

珊瑚は落胆し、琥珀にぐいぐいと引っ張られていく!!

「珊瑚!!」

弥勒は破魔の札を琥珀の背後の黒い影に向かって投げた!

黒い影がボワッと切れた!!

その勢いで、琥珀は珊瑚の手を離す!

「珊瑚ォオオッ!!」

珊瑚を抱き留める弥勒!

すると再び奈落が目の前に・・・!

「クックック・・・。せっかくの対面をさせてやったというのに時間切れらしいな・・・。琥珀の心はまだ、己のしたことにさいなまれおるらしい・・・。珊瑚、よく覚えておくいい・・・。琥珀を生かすのも殺すのも・・・。ワシの意志一つだと言うことを・・・」

高々と笑う奈落。そして琥珀と共に再び闇に姿を消していった・・・。


「琥珀ーーーーーー!!!!」

悲痛な珊瑚の叫びと共に・・・闇が・・・明けた・・・。

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