「珊瑚・・・。傷は痛むか・・・?」
「・・・」
手の甲の傷。弥勒が手ぬぐいできつくしばって止血したが、当の珊瑚は呆然としていた。
「珊瑚・・・。しっかりしなさい」
「・・・。琥珀・・・。琥珀・・・」
一瞬だった・・・。一瞬しか抱けなかった。琥珀・・・。また遠くへ行ってしまった・・・。
「珊瑚・・・」
「琥珀・・・。琥珀・・・」
ペチンッ!!
「!」
弥勒は珊瑚の頬に軽く打ち付ける・・・。
「目を覚ませ!珊瑚・・・!」
珊瑚はハッと我に返った。
「ほう・・・し様・・・」
「すまん・・・。珊瑚・・・。だが・・・泣きたいならば・・・。哀しいならば・・・私の胸をおかしします・・・」
「法師様・・・」
優しく微笑む弥勒。珊瑚は耐えきれず、弥勒の懐に泣きついた・・・。
「法師様・・・。法師様・・・っ。うっ・・・」
弥勒の胸で思い切り泣いた珊瑚・・・。
しばらく弥勒の胸にその身を寄せていた・・・。
どのくらい時間がたったか・・・。
ようやく落ち着きを取り戻した珊瑚。
「法師様・・・。ごめんね・・・。迷惑かけて・・・」
「いや・・・。あやまるのは私の方だ・・・。さっき・・・。いくらお前が混乱していたからと・・・。おなごに手を挙げてしまった・・・。すまん。珊瑚・・・」
「ううん・・・。ああしてくれなかったらあたしずっと頭に血が上ったままだったと思う・・・。・・・。法師様。もう一回ぶって!」
「!?」
珊瑚は正座して弥勒に言った。
「さ、珊瑚何を・・・」
「あたし・・・。もう一回自分にカツ入れたいんだ!そして今度こそ、琥珀を取り戻す・・・!」
「珊瑚・・・」
「お願い!!法師様にしてほしいから・・・」
珊瑚は懇願した。
「・・・。わかりました・・・。では目をつむりなさい。ではいきますよ・・・。珊瑚」
珊瑚は目を閉じ、歯をグッとくいしばった。
(え・・・ッ!?)
その瞬間・・・
。
フワッ・・・。
静かに・・・唇と唇が触れた・・・。
「惚れたおなごに2度も手を挙げられるほど私は度胸がありません。すまんな珊瑚・・・」
「・・・」
珊瑚、固まっている。
「さ、珊瑚・・・?」
「・・・。あ、あ、え、あの・・・ッ」
瞬間湯沸かし器の様に珊瑚の顔は赤く染まり上がった。
「ほ、ほほ法師様・・・ッ。な、な、何・・・ッ」
「そんなに驚かなくても・・・」
「お、お、驚くわよッ!!いきなりあんなことされて・・・ッ!!」
「嫌だったのか?」
「なっ・・・。嫌だなんてそんな・・・。別にあのその・・・」
もうしどろもどろの珊瑚。
「すまん。俺は琥珀に嫉妬した」
「えっ・・・」
弥勒が嫉妬・・・??珊瑚は訳が分からず、弥勒と見つめた。
「お前を助けようとしたとき・・・止められた」
“法師様はこないで!!これはあたしと琥珀の闘いだから!!”
「あんな状況で俺は・・・。琥珀とお前の絆の強さに嫉妬したんだ・・・。まるでこれ以上珊瑚に入ってくるなといわれた気がして・・・。犬夜叉の事はいえんな・・・」
「法師様・・・」
珊瑚の胸が急速に速まった。
琥珀に嫉妬したなんて・・・。珊瑚は胸の高鳴りを押さえきれず、落ち着かない。
「やっ・・・。やだな・・・。琥珀は弟だよ・・・。嫉妬なんて・・・」
「ふ・・・。そうだな・・・」
弥勒が『私』ではなく『俺』と言っている。
更に珊瑚の鼓動は早くうつ。
「珊瑚」
「は、はひッ!!」
緊張のあまり、珊瑚の声がうらがえっている。
「琥珀に嫉妬している俺が言うのもなんだが、約束する。絶対に奈落を倒し、琥珀を救い出す!だから・・・。今は・・・。笑っていなさい・・・」
「法師様・・・」
再び見つめ合う二人・・・。弥勒は少し乱れた珊瑚の前髪を整え、そっと頬に手を当てた。
(法師様・・・)
珊瑚も静かに目を閉じる・・・。
「おーい!!弥勒様、珊瑚ちゃーん!!」
(!!!!)
突然のかごめの声に驚いた珊瑚!
ドカ!!
思わず、弥勒の頭に一発鉄拳を入れてしまった!
「さ・・・珊瑚・・・」
弥勒、固い地面と接吻中。かなり痛いです・・・。
崖の上から犬夜叉とかごめが降りてきた。
「二人とも、大丈夫だった!?」
犬夜叉の背から降りるかごめ。
「う・・・うん。か、かごめちゃん達こそ、ケガなかった??」
慌てる珊瑚。
「うん。犬夜叉がちょっとケガしてるけど・・・」
「けっ・・・。こんなもんどーってことねーやい!っておい、弥勒お前、何してんだ??」
地面との接吻、終了。顔を上げる弥勒。小石がついてます。
「ふ・・・。何も・・・」
二人の様子がなんだか変だなと思うかごめと犬夜叉。
「でもよかった。二人どこにいるかと思って探そうとして下見たら弥勒様と珊瑚ちゃんがいた」
「え・・・。って見てたの!?かごめちゃん!!」
「見てたって・・・何を??」
「えっ・・・。あのその・・・。あ、何でもない何でもないッ。さ、帰ろう帰ろう!!」
珊瑚、とにかくその場を納めたくてかごめと犬夜叉とぐいぐいと引っ張って3人すたすたと帰っていった。
ヒュウウウ・・・。弥勒、寂しく残される。
「私をお忘れですよ・・・。がっくし・・・」
弥勒、トボトボと帰りました・・・。
闇の中での出来事・・・。
闇の中で見た、聞いた事。
辛かった。哀しかった。
でも・・・。闇はきっといつか明ける。
深い闇でもいつかはきっと優しい光がさして青い空が見えてくる。
そんな風に青空は4人を励ますように青々としていたのだった。