繋ぐ手 繋ぐ命

 縁起でもないけど、自分が亡くなってしまった夢を見た。 犬夜叉が・・・。泣いていた。

あたし、そんな犬夜叉の顔、見たくなかったから、必死に元気だしてって 叫んだ。

 でも、犬夜叉にはきこえてなくて・・・。

夢から覚めると・・・。犬夜叉が側にいた。

すごくすごく・・・ホッとした。夢でよかったって・・・。

夢の中では、犬夜叉に「元気だして」って言っていたのに・・・。あたし・・・。

もし、現実だったらって考えたら・・・。

はっきり感じた。 “死ぬ”ってことがこんなに恐いことなのかって・・・。

生きている犬夜叉の側にいられることがこんなに嬉しいなんて・・・。

 そしたら・・・。

 そしたら・・・。桔梗の事が頭に浮かんだ・・・。

 犬夜叉のために死んだ桔梗。

 桔梗の哀しみが・・・。    

 

 あの夢を見てからというもの、犬夜叉はかごめが心配で心配でたまらないらしい。

「ん?」

授業中、窓から感じる視線。見ると、枝と枝の間だから三角の耳が半分顔を出している

「・・・。あれで隠れてるつもりなのかしら」

 学校の行き帰りも・・・。かごめが後ろを振り向くと、ササッと

電柱の影に隠れる耳、二つ。

「・・・」

 家に帰ると、さも、今、かごめの部屋に来たかのような顔をして、犬夜叉がいた。

「おう。今帰ったのか。おせーぞ」

「・・・。あんた、ばればれな嘘を平気な顔で・・・」

家に帰っても安心できない犬夜叉。かごめの行くところ、どこでもついていく。

「ちょっと!どこまでついてくる気?」

「どこにいこーが俺の勝手でいっ」

 そう。どこでも・・・。

「この部屋は何する部屋だ」

その部屋の扉には「バスルーム」と書いてある。

「で・・・で・・・。出てってぇーーーっ!おすわりッ!」

「ぐえッ」

閉め出され、扉の外で腕組みをしてかごめを待つ犬夜叉。

かごめが自分の目の届くところにいないと落ち着かなかった。

「けっ・・・。俺から逃げようたってそうはいかねぇぞ」

そんな犬夜叉をよそに、かごめは風呂につかる。

「全くもう・・・。犬夜叉ってば・・・」

でも・・・。犬夜叉とのこんなやりとりが自分にとってとても大切だと思うかごめ。

ふざけあったり、笑ったり、ケンカしたり・・・。

犬夜叉とかごめだからできること。ささいなことが・・・。とても愛しく感じる。

生きている二人だから・・・。  

イキテイル・・・。フタリダカラ・・・。

桔梗の顔が湯船に浮かぶ。

「・・・」

チャポン!

 

それを消すかごめ。でも浮かんでは消え、浮かんで消え・・・。

 消えない。

 桔梗の哀しみが。

 切ない気持ち。

 今・・・。桔梗はどんな気持ちだろう。

 今・・・。何をかんがえているんだろう・・・。

 分からない。でも、これだけは分かる。
 

犬夜叉に会いたい・・・。

「・・・」

「おう。かごめ!いつまではいってやがる!ゆでだこになるぞ!」

ドアの向こうで、犬夜叉がドンドンやっている。

「わ・・・わかってるよ!お風呂ぐらいゆっくり入らせてよ!」

 かごめはすこし潤んだ目頭をささっとこすって、風呂からあがる。  

犬夜叉に会いたい・・・。  

 その気持ちは誰より、分かる。

誰より・・・。

 だから・・・。苦しくて。

 生きているあたし。犬夜叉が側にいるあたし。

でも・・・。

胸の奥はいつも・・・。

あふれそうな切なさでいっぱい。

犬夜叉・・・。あんたはきっと知らないかもしれないけどね・・・。

でも、この切なさは私が選んだものだから・・・。

だから大丈夫・・・。

大丈夫・・・。

かごめはそう自分の言い聞かせる。

だけど・・・。

この後・・・。運命の二人は・・・再会するのだった・・・。


そう・・・。白霊山で・・・。


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