あの夢を見た後。様々な事が急展開した。
新たな敵が現れる。七人衆という奈落が蘇らせた死人達。
皆、残虐非道な男たち。犬夜叉達は七人衆を追うことで、奈落の場所を
突き止めようとした。
その、七人衆の一人、
睡骨。
すべてを浄化してしまう白霊山のふもとにいた睡骨は邪気を消され、澄んだ心をもってしまった。
そしてそこで出会った子供達と暮らしていた。
犬夜叉達が睡骨と出会ったとき、そこには・・・。
桔梗がいた。
久しぶり・・・。だった。犬夜叉と桔梗が会うのは・・・。
睡骨は、仲間達に昔の邪悪な姿に戻され、一緒に暮らしていた子供達を残し、仲間達と
その場を離れていった・・・。
そして、睡骨との戦いで、死骸虫を抜かれ倒れ込む桔梗に駆け寄る犬夜叉。
「桔梗!」
ドキン・・・ッ!
痛い・・・ッ!!
「桔梗!大丈夫か!」
ズキンッ・・・。
苦しい・・・ッ。
犬夜叉の声で、その名をが聞こえてくると、かごめの心臓は鋭い刃物の先端で突き刺された様に、激しい痛みと動悸が走る。
でも・・・。かごめはそれらを必死に抑える。ぐっと拳に握って・・・。
大丈夫・・・。あたしは大丈夫・・・。これは・・・。
自分で選んで、覚悟した痛み・・・。
大丈夫・・・。大丈夫・・・。
そう呪文の様につぶやく・・・。
そして。弥勒が、桔梗を木陰に連れて行こうとした。
「私が・・・。桔梗様をあちらに運んでもよろしいのですか・・・?」
動けない桔梗。
桔梗に触れていいのは・・。只一人。
この魂に触れていいのは・・・。あいつだけ。
それが嫌でなくらいに、わかっている・・・あたし・・・。
こんな台詞は言いたくない。
なんであたしがって思うけど、でも、
言わなきゃいけないって、
言わなきゃいけないって、声を出そう、出そうとする。
「そんなの・・・。犬夜叉しかいないでしょ・・・。犬夜叉しか運べないでしょ・・・」
見たくない。目をそらしたい光景が、かごめの目の前に・・・。
桔梗を・・・。両手で抱えて運ぶ・・・。犬夜叉の・・・背中が・・・。
見たくない、見たくない、目をそらしたい・・・!
なんで、なんで、なんで・・・。
こんな二人を・・・。見つめなくちゃいけないの。
なんで。なんで。なんで・・・。
でも・・・。見たくないけど・・・。
桔梗を運ぶ・・・犬夜叉の背中は・・・。
凛々しかった。
大きかった。
頼もしく感じた。
あたしには・・・。あんな顔を見せないって実感して、また胸が痛んで・・・。
そんなかごめの目の前で、
二人は・・・。
見つめ合って。
二人にしか作れない空気を
漂わせて。
目と目で言葉を交わし会って・・・。
みんながいるのに。弥勒様も珊瑚ちゃんも七宝もいるのに。
“きっと・・・誰もいなかったら・・・抱きしめ合いたいだろうな・・・”
後ろを向いていても。その二人の思いが、かごめを覆う。
線を、引かれた。
ここからは、誰も入れない。
線を。
かごめの痛みは二人は知らない。
でも、その線を突き抜けて、桔梗と犬夜叉
二人の姿がかごめの背中を刺す。
刺す。
刺す。
その痛みが、胃に響いて。むかむかして・・・。
かごめはその痛みに必死に堪える。耐える・・・。
スカートの裾をきゅっと掴んで。
背中を丸めて・・・。
かごめは今にもこぼれそうな涙を・・・。
瞳のふちでぐっと、
ひとり、こらえて耐えていた・・・。
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