続・居場所を探して
〜タンポポの種〜


其の八・一日暮家と愉快な仲間達 A




”浮気しちゃうから!!”





かごめの爆弾発言に犬夜叉、ショックで草太君の部屋で
眠った。






まだ布団から出てこない。






(かごめとほーじょーが浮気・・・浮気・・・)




布団にくるまって泣いてます




「かごめ。犬夜叉さん起こしてこなくていいの?」




「いいのよ!ほっとけば!!じゃああたし、行くね!」





かごめは自分の食器を洗うといそいそと
ハンドバックを肩にかけ出て行った・・・








「まぁったく・・・。二人とも意地っ張りなんだから」




茶碗にご飯をよそいながら話すかごめ母。






「ケンカするほど中がいいと言うだろ。いいんじゃない?」




「そうね」







かごめ母はくすっと笑った。






(・・・ん?)




こそこそッ。





玄関へ続く廊下を布団かぶり四つんばいになって移動する物体が






「犬夜叉さん?」





ギクリ。





物体の正体は犬夜叉だった。






「朝ごはん食べないでかごめ尾行するの?」





「・・・(汗)」




犬夜叉の行動、最初からバレバレ♪





「尾行は体力がいるわ。ハイ。おにぎり♪」






サランラップにつつまれた昆布と海苔のおにぎり。



にぎりたてであったかい。







「それ食べて、かごめの浮気、阻止してきてくださいね!」





「ばっ・・・。か、かごめが本気で浮気なんかするわけねぇだろッ。お、オレはちょっと
煙草会に行くだけだ!!」






「ホントは信じてるのね」





「///。う、うっせぇ」





バタン!





犬夜叉はおにぎりをポケットに突っ込んで慌てて出て行った・・・






「ったくー。世話がやけるんだからな。姉夫婦(予定)は・・・」





「ね。草太。アンタはどう思う??かごめ、ちゃんと帰ってくるかしら♪」




声を一オクターブ高くして聞くかごめ母。






「・・・母さん、楽しんでるな・・・(苦笑)」











かごめ母のおにぎりをほお張りながら犬夜叉、電信柱に隠れながらかごめ尾行。






(・・・かごめに限ってそんなことはねぇと思うが・・・。ホージョーの方はわからねぇからな。
ん?なんかくせー)








「あ・・・」




犬夜叉の足元で野良犬が思いっきりおトイレを(笑)






(くそーーー!!なんでオレばっかりこんな目に・・・。っていけねぇ!!)





犬夜叉が悶々としている間にもかごめは待ち合わせ場所の喫茶店に入った。








犬夜叉もこそっと身をかがめて入り、かごめの座席の後ろの席に座った。




半透明のガラスの仕切りがあり犬夜叉は
メニューで顔を隠し頭を下げた。






「あの・・・ご注文は」







「あ、えっと、んじゃコーヒーくれ」




犬夜叉は注文どころじゃないらしくかごめの様子を伺っている。




「ブラックになさいますかそれともエスプレッソ・・・」




「あ?”エビ釣れそう?”そんなもんじゃなくてただのコーヒーでいい」





「・・・わかりました(汗)」







店員は首をかしげながら厨房へ戻った・・・








(・・・なんか。こんな状況。前にもあったよーな)





そうです。




鋼牙がかごめに婚約者役を頼んだあの一件。





鋼牙親子とかごめを追い回しましてましたよ、犬夜叉君。







(・・・オレって一体・・・)



ちょっと虚しくなった犬夜叉だが。






「日暮!」





「北条くん」







北条の姿が目に入ると犬夜叉の嫉妬レーダーはすぐにスイッチON!





(あんのやろ〜。実にさわやかに登場しやがって・・・!!)






自分はさわやかにストーカーしてますし。犬夜叉。






「ごめん。遅れて・・・」





「ううん。今きたばっかりよ」




かごめはにこっと北条に笑顔を見せた。






(・・・か、かごめの奴・・・。他の男にまであんな笑い方しやがって・・・)






笑顔だけは自分だけのものだと思っていたのに・・・






かごめが他の男に笑いかけるだけで
苛苛してくる・・・








「同窓会の話って・・・」






「ああ・・・。ごめん。それ嘘なんだ」





「え?」







かごめと同時に犬夜叉も驚いた。






「・・・日暮が帰ってるって聞いて・・・。つい。ごめん。でも何か理由作ってくれないと
日暮呼び出せないだろ・・・?」





「北条君・・・」







北条がなんともせつなそうに
かごめを見つめている・・・










(・・・な、な、なんなんだーーーー!!あの空気はーーー!!!見つめあんじゃねぇーーー!!)






かごめの背後のストーカー。





メニューを握る両手がぐしゃっと力が入った・・・








「・・・北条君。ごめんなさい。あたし・・・」





「わかってる。犬夜叉さんと結婚・・・するんだろ?」





かごめは黙って頷いた






「・・・”卒業”って映画知ってよな・・・。あのラストシーンみたいなこと・・・
オレ・・・しちゃおっかな・・・」






(卒業・・・?そんな映画しらねぇぞ。どんなラストシーンなんだ!!)





それはですね。犬夜叉クン。恋人を結婚式直前で拉致して駆け落ちするお話なのです。







「じょ・・・冗談でしょ?」





「さて・・・。それは日暮次第・・・かな」





「・・・意地悪言わないで・・・」




「ごめんごめん。冗談だよ。そんな目でみるなよ。オレなんか切ないし・・・」





北条はコーヒーを一口含んだ。






「・・・。なぁ、店でないか?」





「え?」





「少し歩きたい。いいだろ?」





「えっ。ちょ・・・っ」






北条は強引にかごめの手を引っ張って喫茶店を出た。






(ま、まちやがれーーーー!!)





犬夜叉も出て行こうとしたが入り口で






「お代金、まだでございます。お客様」






さっきの店員につかまっちゃった犬夜叉。





「オレいそいでんだ、釣りはいらねぇ!!」






ポケットから出したのはなんと一万円札だった・・・






「ありがとうございましたーー!」









(か、かごめたちはどこだ!!)




キョロキョロ右左前後を探す。





(くそ!!どこへ消えやがった!!)





”浮気しちゃうから!!”





かごめの発言が頭をよぎる。






(くそ!!んなこと絶対ゆるさねぇ!!)





犬夜叉が息を切らして辺りを探すと






(いた!!)





小さな公園のベンチにかごめと北条は座っていた。







犬夜叉はベンチの後ろのツツジの植え込みに身を潜め、再び盗聴。









「この公園・・・。覚えてるか?」





「うん・・・。学園祭でやる演劇の練習したよね」







二人は思い出をかみしめるように空を見上げて話す。






(・・・)





自分の知らないかごめ。





なんだか犬夜叉は急に寂しさがこみ上げて来た・・・








「日暮が眠り姫役で・・・オレが王子・・・ってクラスの奴らに無理やりやらされたっけ」





「そうー・・・。もう私お姫様役なんてガラじゃないのにね」





楽しそうに思い出話に花を咲かせるかごめ・・・







”兄ちゃん・・・。姉ちゃんの過去には子供並の嫉妬巡らせるくせに
自分はまだケリついてねぇって・・・。冗談じゃねぇぜ”







昨日の草太の言葉が急によぎった







この前・・・



かごめと買い物に出かけ、街中から聞こえてきた桔梗のバイオリンの音色に
心、止めてしまった・・・





(オレのせいでかごめはケガしちまった・・・)








桔梗という存在を割り切れていない自分をかごめに見抜かれ、逆に
かごめに対しては子供並の嫉妬ばかり・・・








(・・・まだまだだな・・・俺も・・・)








反省する犬夜叉・・・











「日暮・・・。ラストシーン、再現してみようか」





「え・・・?」






「眠り姫は・・・王子のキスにより目を覚ます・・・ってね」







(んなーーーーーーーーーーッ!???????)






自分のやきもちに反省しかけていた犬夜叉だがとんでもない展開に
やきもち、再燃!!








「・・・ば、馬鹿なこと言わないで、そんなラストシーンなか・・・」






北条はかごめをじっと見つめる・・・








「オレが・・・夢から覚まして・・・。日暮をさらう・・・。そして幸せにしてみせる・・・」












(・・・!!!)






北条の手がかごめの肩に触れた瞬間・・・








犬夜叉の体がカァッと怒りが走った。













「てめぇえ!!かごめに気安く触ってんじゃねーーーーっ!!」












「い、犬夜叉!??」



バキ・・・ッ!!!!








犬夜叉は思わず北条の頬に一発食らわせてしまった










「北条君、大丈夫!?」



北条に駆け寄るかごめ。







「かごめ!??何でそんな奴かばうんだ!??」






「当たり前でしょ!!いきなり殴るなんて!!」






「そいつがかごめに無理やり・・・」





「・・・無理やりキスなんてしませんよ。そこまでは”草太君の台本”にはないから」





ズボンの膝を払いながら北条は起き上がった。





「草太の台本?どういうことなの。北条君」





「いやね。昨夜・・・。草太君から電話もらったんだ。日暮と犬夜叉さんのために
人芝居売ってくれって」







”なんかさ。いまいち盛り上がってないんだよな、姉ちゃん達・・・。
つーわけで。北条さんに協力を願いたいんだ”




と、草太は北条に頼んだ。






「・・・草太ったら・・・!!きっと面白がってるんだわ!!絶対許さないんだから!」




「違うよ。草太クンは日暮の幸せを願ってるだけなんだ」




「私の幸せ・・・?」





「そう・・・」





北条は何故かチラッと犬夜叉に視線を送った。






”犬夜叉の兄ちゃん・・・。月島桔梗のこと完全に吹っ切れたわけじゃないみたいなんだ。
それじゃかごめ姉ちゃんがかわいそうだ。兄ちゃんが月島桔梗を忘れないと・・・。
姉ちゃんは幸せになれない。だから・・・”







「草太がそんなことを・・・」







「姉さん想いの心に打たれてね。俺としちゃ切ない役回りだけど
草太クンの台本に乗ったんだ」







北条は犬夜叉をギロっと睨んだ。






「・・・オレが口出すことじゃないけど・・・。オレも草太くんと同じ意見だ。
犬夜叉さん。今ここで誓ってください。日暮を絶対に幸せにすると。日暮の前で
確かに誓ってください!でないと俺、本当に日暮、かっさらいますよ!??」







犬夜叉のTシャツをぐっと掴む北条・・・







「どうしたんです!??どうして返事、しないんですか!!」






「・・・」






「結婚するんでしょう!??アンタと日暮は!!!アンタは月島桔梗の思い出付きで
日暮を妻にするつもりなのか!??それで日暮を月島桔梗の代わりにするつもりなのか!??」






「そんなこと・・・」





ぐっと更にえりを吊り上げる・・・




「アンタになくても日暮は思うだろうよ!!結婚しても”自分は桔梗の代わり”なんじゃないかって
不安に・・・!!女はそういうものなんだ!!アンタ、わかってんのか!!!」








「やめて!!北条君!!」







「だけど日暮・・・」








「あたしは犬夜叉と結婚するの・・・!月島桔梗との記憶を持ってる犬夜叉って男と私は
結婚するの・・・。それが私の『選択』よ・・・」








かごめの言葉に・・・



するっと北条の手は犬夜叉から離された・・・









「・・・そんな・・・。そんな切ない話ってあるかよ・・・。他の女への想いが心に住んでる男
なんて・・・。オレは認められない・・・」








「・・・。そうね。切ないね・・・。でも・・・。私はね・・・。桔梗と知り合ってからの
犬夜叉を好きになったの・・・。だから・・・。私は大丈夫よ・・・。北条君」







北条にそっと微笑む・・・








「・・・。日暮のそんな笑顔見たら・・・。もう、オレ、何もいえなくなったじゃないか・・・」







「北条君・・・」








「・・・。犬夜叉さん。これだけは言っておく・・・。オレは日暮が永遠に好きだ。
日暮を幸せにしなかったらその時こそ本当に日暮を奪う・・・。どんな手を使っても・・・世界を
敵に回しても・・・」








北条は犬夜叉を最後にもう一度睨んだ・・・










「・・・。やっぱりこんな損な役回り・・・。引き受けるんじゃなかったかな・・・。
じゃあな。日暮・・・」








切ない言葉を残し、北条は公園を跡にした・・・












「北条君・・・」


























夕方。






かごめと犬夜叉は沈黙のまま二人川辺を歩く・・・










犬夜叉は悔やんでいた。







どうして




どうして北条の必死の問いただしに応えられなかったのか。








(・・・結局オレは・・・オレの心のせいでみんなを巻き込んじまったってことじゃねぇか・・・)











「・・・なーに考え込んでるのよ。犬夜叉」






かごめはつん!と人差し指で犬夜叉の背中をつついた。








「・・・お前・・・。ホントにいいのか?」





「え?」






「オレなんかで・・・。オレなんかと一緒になって・・・」






「変なの。それ、前に私が言った台詞じゃない」





「けど・・・」








かごめは両手で犬夜叉の口をふさいだ。







「もう、マイナスなこう言うの、お互いやめよう・・・」





「かごめ・・・」






「犬夜叉は私と一緒にいてくれる。私も犬夜叉のそばにいる・・・。
それでいいのよ。それが一番大切なことなの。ね・・・!」







「・・・そうだな・・・」










「ウン!それが一番大事〜♪」






かごめはちょっと昔の歌を口ずさみながら川原の草を摘む。














”かごめ姉ちゃん・・・。笑ってる分だけ絶対どこかで
泣いてるんだ・・・”







草太の言葉。









自分の全てを受け入れてくれるかごめ。







それではいけないと思いつつ






かごめの優しさと労わりに結局委ねてしまう・・・











(オレは・・・。この女を死んでも守らなきゃいけねぇ・・・)










守って





そして・・・







(誰より幸せに・・・してぇ・・・いや違う・・・)










誰より








(かごめがいなきゃオレは・・・幸せになれねぇ・・・)















無邪気に笑いかけるかごめ・・・











「ねぇ。見てみて。たんぽぽの綿毛。これみたらやっぱりふうってやりたくなるよね」






犬夜叉に綿毛を一本手渡す・・・。









「幸せの種。どうか次の種も可愛い花を咲かせますように・・・」








かごめはふうっと静かに息を吹きかける・・・








綿毛はいっせいにオレンジ色の空に向かって飛んだ・・・









「きれい・・・」











タンポポの種の未来を見つめるかごめ・・・









その瞳は





ただ




ただ・・・








慈しみに満ちて・・・










「かごめ・・・」











「なあに?」









「・・・。絶対・・・。幸せにするから・・・。絶対・・・。オレ・・・。だから・・・
一生・・・。そばに・・・い、い、居てほし・・・ほしい・・・(真っ赤)」






滅多に言わないような
台詞。




犬夜叉、噛みまくる。












「うん・・・でもね。犬夜叉」








かごめた立ち上がって犬夜叉と向かい合った。







「違うよ」






「え?」







「”幸せにする”んじゃなくて・・・。一緒に”作っていく”のよ・・・」









かごめは犬夜叉の手をそっと握った・・・












「かごめ・・・」








「・・・頑張ろうね。二人で」










「ああ・・・。”二人”でな・・・」









「・・・子作りとか?」








「ばッ!!!ち、違うわいッ!!」







照れる犬夜叉の手・・・






かごめの手をしっかり力強く握り締める・・・


















やっと同じスタートラインにたった二人・・・







そのスタートラインの先には・・・いくつもの困難を運命は二人に与えようとしていることを
犬夜叉たちはまだ知らない・・・










けど二人なら・・・きっと・・・





きっと・・・
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