巡る恋歌


昨夜は良い宿に泊まった為か、一行は安眠でき、今、朝の清々【すがすが】しい空気に

より目を覚ました所だった。

宿の者から出された食事をとり、一行は早めに出た。



「さて、どうやって春姫というお方を探しましょう。」

どこまでも続く畑の道を歩いていた一行の沈黙を、法師が破った。



「そうね・・・。とりあえず、聞くしかないんじゃないかしら。お殿さまのお姫さまなら、

知ってる人は多いと思うし。」

「やっぱりそうだよね・・・。でもどこから聞く。東国は広いし。」

珊瑚の質問を機に、一行は黙ってしまう。そんなかごめたちを、犬夜叉は少し

いらついた表情で見た後、こう言った。

「ぐずぐずしてる暇はねえだろ。町に入って片っ端から聞き込むぞ。」

と、かごめをおんぶして走っていってしまった。

やれやれと、いうような顔をした法師と珊瑚も、雲母に乗って犬夜叉のあとを追った。









殿方の姫といったら、まずは城下町だ。

茶店や宿が集まるにぎやかな城下町で、一行は聞き込みを開始する。

最初から城に入ればいいものをという犬夜叉に、法師はまず皆【みな】に聞こうといい、

犬夜叉はまたいらついた表情でぶつくさぶつくさ言っている。



殿方の娘ならいくらでも情報は入ると思っていた一行であったが、一時間たっても、

二時間たったも良い情報は入らずじまいであった。



とりあえず、この町にはいないと確信した一行は、この町を出た。



「殿方の娘なら簡単に見つけられると思っていたのですが・・・。」

「そんなに甘くはなかったね・・・。」

と、法師と珊瑚が口々に言う。

そんな二人にかごめは・・・

「でも、探すしかないのよ。それに・・・雅道さんと、美依さん、二人のその、

真実を知りたい・・・。」

「かごめさま・・・。」

真顔でかごめを見る法師。



そんなかごめたちに犬夜叉・・・

「くだくだぬかしてないで次の町に行くぞ。」

犬夜叉の一声により一行はまた歩き始めた。









いったい何時間歩いたのだろうか。

いつのまにか太陽は、西の空へ差し掛かっていた。



そこに居るもの全てが今日は無理かと思った時であった。

向こうから、市女笠と十二単をまとった女性が歩いてきたのであった。



法師はすぐさまその女性に近づき、話しかけた。

背後に珊瑚の凄まじい怒りを感じながらも。

「さ・・・珊瑚。私はこのお方に聞こうとしているのだ・・・。」

少し震えた口調で言う。

そう言った後、その女性に話しかけた。



「私たちは“春姫”というお方を探しています。ご存じないでしょうか。」

そう言うとその女性は知っているような顔をして、こう言った。



「知っていますとも。公家【ぐげ】の春姫さまでしょう。」



ようやくその一言が聞けた。一行はその女性にありがとうという眼差しを向けた。

「春姫さまのお屋敷に行きたいのなら、この道を進んで突き当たった所を右に

曲がって少し行った所にありますよ。」

と、女性は付け足した。



「ありがとうございます。」

と、一言礼をして、一行は早速向かった。

そんな一行を見ながらその女性はこう言った。

「でもあのお方たち、春姫さまに何の御用なのかしら。あの姫君は“眠り姫”という、

異名を持ったお方だというのに・・・。」



その女性の言葉も届かず、一行はひたすら向かっていた。





Back Next


                 〜一言〜

とうとう五話目まで来ました。「巡る恋歌」 何やら無駄に長い文になりつつあり

ますが、この小説は大切に、大切に書いていきたいと思っています。

今回は“春姫”の居場所を見つけた所で終わらせました。次回は春姫の正体と

状況を書きたいと思います。