木彫・胡粉・古裂の魅力
 木彫

   江戸人形と言われるものは、元来日本の彫
 刻に代表される、仏師の手によって作り出さ
 れた「仏像彫刻」と、言われています。

 室町期の末頃、京洛の仏師が仏教衰退と共に、
 象徴としての仏の像−かたち-を、生きた人
 間の体として、人形が生みだされました。

 江戸人形も土台の素材に、木彫りが使われそ
 の上に施こされる、塗料との相性が良いもの
 として、桐の木が選ばれてきました。
 明治時代以後,桐塑(桐粉と生麩糊)が多く使
 われていきます。

 木彫は,永い歳月にも耐久性があり、持つた
 時にも適度の軽さと、人の手に優しさを感じ
 させます。
 木彫は桐塑よりも、より鋭いシャ-プな微妙な
 形が得られ、木と向き会う一品制作の為,木の
 内から形、姿を掘り出そうとする精神性、豊か
 な造形性が生まれます。


 
狐面かぶり人形 木彫  H18cm

 

胡粉

 日本画で使われる白色顔料は、通常胡粉が
使われています。
胡粉(イタボ牡蠣等の貝の粉末)と膠(動物
魚の骨、皮から作るゼラチン)を練り合わせ
て描かれています。

人形では木彫、桐塑の胎の上に、濃度を変え
つつ塗り重ねていきます。幾つかの工程(地
塗り・置き上げ・トクソ・二へん塗り・上塗
り)と工程ごとの磨きがあり、18〜20回
入念に塗り重ね磨き、最後の上塗り胡粉で、
胡粉塗装の美しさは究極に達っします。

胡粉の扱いの難しさは、温度、湿度、季節に
よる胡粉濃度の調整など、天候、天気自然と
の闘いと言ってもいいかもしれません。
胡粉の乾きの悪い梅雨の湿度は胡粉の大敵で
仕事にならない季節ですし、防腐剤を使わな
い生ものゆえ夏場の温度は、腐敗を進めすぎ
胡粉を駄目にしてしまいます。
地塗り・中塗り・上塗りの胡粉濃度の違いに
より、塗る時間を調整しなければならない手
の掛かる、生きものなのです。
膠は生ものゆえ泡を生み、それが気泡となり
胡粉の肌の光沢を奪います。
ひび割れと気泡とが胡粉塗装にとつて、二大
障害物と言えるでしょう。

貝殻の粉でしかない、その白さに秘められた
控えめな光沢とあたたかな質感、純粋な胡粉
の白さ、それは現代の樹脂塗料とは、別次元
の日本の風土性を感じさせるものです。


這いはい人形 W10cm
こま廻し人形 木彫H12cm


抱き人形 木彫H70cm


 古裂                             
                
    時代と言う時間を重ねた、衣裳の美しさ雅び
  さは、 現代の衣裳とは違い、鮮やかな色彩、い
  ろいろな文様意匠をこらし、艶やかな風俗が感
  じられ、あたかも浮世絵を見ているような気に
  なります。

  時代古布の薄くなった、擦れの部分などのいた
  みを、補正、裏打ち修正など人形の着物に仕立
  てる大変さも、仕立てあがった時はうれしく、
  その時代に立ちかえった様な気持ちになるもの
  です。  


  <狐面被り人形>
   朱縮緬に手描きの鶴が飛ぶ、前掛けは亀の刺
  繍の縮緬、鶴と亀で縁起よくアレンジしました。

  
<這い這い人形、こま回し人形>
   腹掛けからし色の縮緬、エプロン朱縮緬に刺
  繍、唐子風俗見立て

  <抱き人形>
   綸子に菊花模様の刺繍 江戸後期の裂とおも
  われます

   <犬乗り童子、童子人形三体>
   裂地の効果が発揮されるよう、胡粉の溝へ刺
  繍裂地を入れ込み人形の体に衣裳がぴったりす
  るよう入れ込み細工で仕上げてある。
  洒落気や粋な文様で、江戸職人達は入れ込みの
  技を、競い合ったのではないでしょうか。



瓢箪持ち童子 木彫H10cm


童子人形三体 木彫H6.5cm


トップページに戻る

i