(その1) 読者投稿欄から…
(その2) 政治・経済・その他欄から…
(但し、「社説」「コラム(一部)」等は極力除く)
津軽三味線
すごい 手から音楽の鳥が はばたいていってるみたい ずっと観ていたい ずっと聴いていたい ( 東京都渋谷区・加計塚(かけづか)小4年 成瀬 流奈) (2006.? 読売新聞 こどもの詩欄より) |
イチョウの葉
イチョウの葉っぱは まだ赤ちゃん ちっちゃくってかわいいけど 形は ちゃんとした イチョウさ 今は こんなに 小さいけど 秋になったら もう 大人さ 冬には葉っぱがとびちって みんなちがう運命になってゆくのさ (東京都町田市・カリタス小4年 杉森 春奈) (2006.? 読売新聞 こどもの詩欄より) |
愛されていると思い知った日
父は寡黙で怖い人でした。私の嫁ぎ先は兼業農家で、義父母は体が弱く、農業は、教えてもらいながら、私が 担いました。 田植え前のある雨の夕方、泥まみれになって家に帰ると、玄関先に父が立っていました。用事があって訪れた のでしょう。家の中では、義父と囲碁友達の笑い声が聞こえていました。 父は私に「お前一人、仕事をしているのか」と尋ねました。 ちょっと得意げに「ええ」と言った途端、父の目から涙が伝わり落ちました。私はびっくりして「お父さんはいつ も、仕事をしない者は死んだ方がいいのだと言っていたでしょう」と言うと、「そんなこと言ったっけなあ」と苦笑 していました。 この時、私は父に愛されているのだなあと、強く思い知りました。 (兵庫県豊岡市 主婦 川崎 節子 71歳) (2006. 6.18 読売新聞読者寄稿欄より) |
モーツァルトで娘が起きた
「もうすぐ7時よ。起きて」が「もう7時よ。起きなさい」になり、最後は「7時過ぎたわよ。いい加減に起き なさい!」。毎朝、小学2年の娘を起こすたび、大声を出さざるを得ず、さわやかな朝の気分が一気にかき 消されてしまいます。そんな時にふと見つけたのが、モーツァルトのサンプルCDです。「クラシック音楽で もかけたら少しは和やかに起きられるかな」と思い試してみました。 午前6時45分にミュージックスタート。美しく軽快な曲が流れると、高級ホテルにでもいる気分になります。 驚いたのは、娘が一人で目覚め、不思議そうな顔で洗面所へ向かったことです。 以来、モーツァルト様々です。娘は大抵、一人で起きてきます。さわやかな朝をもたらしてくれた音楽の 力に感謝しています。 (北九州市 大西 美紀 主婦 44歳) (2012.10.24 朝日新聞読者寄稿 Voice声 欄より) |
弟を迎えに来た蛇
この夏、弟が「庭に蛇がいる」と言ってきた。私は、何げなく、「マムシじゃなかったら放っちょき」と 言った。 それから3日後、弟は脳梗塞でICUに5日間入院し、65歳で他界した。 葬式後、一人暮らしだった弟の家を一人で片付けた。親類の反対を押し切って弟宅で葬式をやり、 送り出したので、片付けが大変でも弱音は吐けない。長いスロープにまいた滑り止めの砂を集めて汗 をかいて運び出したとき、それは美しい蛇がいるのに気づいた。 薄いオレンジ色で、光を反射して光っていた。初めて見る蛇だ。優しい顔をしていた。「あんたかね、 弟が話していたのは」。思わず、蛇に話しかけていた。 5年前に死亡した母は、巳年の生まれだった。もしかしたら、独居の息子が心配で、迎えに来たのか もしれない。「正寛が迷わんように、安らかでいられるように、守っちゃって」と、続けて話しかけた。 私は母の生前から、弟の家計管理などを任せられていた。弟が無事あの世に着いたと知らせるため に、母が蛇の体を借りて姿を現したのだろうか。無人となった家に鍵をかけたとき、涙があふれてきて、 私はその場に泣き伏してしまった。 (高知県 千光寺 昭子 主婦 68歳) (2012.10.10 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
大滝のタンポポおじちゃん
東京・世田谷の都営アパートに暮らした小学2年の春。タンポポがアパートのベランダの下に黄色いじゅ うたんとなっていたのを今も鮮明に覚えている。 ある日、一階に住むおじちゃんに尋ねた。「ベランダの下のタンポポを取ってもいい?」。「全部取っちゃ あ、だめだよ。来年また咲くように残しておこうね」。ざらついた、でも温かい声だった。私はタンポポを片 手いっぱい握りしめながら、うなずいた。そしてさらに尋ねた。 「おじちゃん。どうしてお仕事に行かない の?」。 失礼な質問に、おじちゃんはニコニコ答えてくれた。 「今ね、お仕事なくて奥さんに食べさせてもらってるの」。「タンポポ、ありがとう」と言って私が帰ろうと すると、「ちょっと待ってて」と奥へ。ベランダごしに小さな紙包みを私に手渡した。中はビスケットが二つ。 私の友達の分まで包んでくれていた。 母によると、そのベランダの住人は、先日亡くなった俳優の大滝秀治さん。後にテレビなどでお顔を拝 見するたび、母は私に声をかけた。「タンポポのおじちゃんが出てるよ」。その母も8年前に亡くなった。 大滝さんの優しい声と笑顔にもう会えないと思うと寂しい。ご冥福をお祈りしています。 (兵庫県 松永 浩美 無職 58歳) (2012.10.26 朝日新聞読者寄稿 Voice声 欄より) |
大学進学以外の道も広げて
我が家の中学3年の娘は勉強が苦手だ。でも手先は器用なので、工業系の専門学科のある高校で技術を身につけて、 卒業後はすぐに就職したいと考えている。 田中真紀子文部科学相による3大学新設不認可問題をきっかけに、大学のあり方をめぐる議論が盛んだ。日本の大 学進学率は主要国の中では低く、大学を減らすべきではないという意見もある。だが、そもそも大学というのは、相応の 学力と意欲を持った人が進むところではないのか。学力が不足している学生も入学できる現状は、おかしいと思う。 大学ばかりが学びの場ではあるまい。15歳や18歳で就職し、社会の中で勉強をするほうが向いている子もいるだろ う。大学だけでなく、専門学校や高校の専門学科を充実させ、技術を身につけてすぐ社会に出ていける道を広げてほし い。そうした多様な選択肢が用意されていることが、教育の充実ではないだろうか。 (神戸市 中野 朋子 主婦 49歳) (2012.12. 6 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
助産師さんをもっと頼ろう
ドイツで出産 高福祉に驚く
ドイツのベルリンで出産した知人を先日訪ねました。6月、彼女は夫の仕事の都合で妊娠中にベルリンへ。10月4日、 ベルリンの自宅で出産しました。彼女の夫はあいにく日本で仕事中でしたが、上の3人の子どものことや自分の出産の ことなど、夫と一緒に事前に色々決めたようです。今までで一番協力的だったそう。 日本では夫は出産には立ち合うものの仕事で忙しく、子育てはほぼ一人。そのためか「ここでの出産が一番幸せだ った」と彼女は言っていました。そう思えるのは、夫の協力はもちろんですが、国の制度のおかげもあるでしょう。 ドイツで妊娠した場合、妊娠中の検査や出産は実質無料。産後2ヵ月までは随時助産師が訪問してくれ、費用は保 険で支払われます。サポートが手厚いことで子育ての不安も解消されたのではと思います。虐待予防にもなると実感 しました。 (滋賀県 朝比奈 順子 助産師 70歳) (2013.11.21 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
国づくりに観光資源生かせ
世界地図を眺めると、日本ほど恵まれた国はないと思う。主に四つの島から成る土地の多くは、温暖な気 候。例えば、3島が囲む瀬戸内海周辺の地域は、自然の景観に加えて文化遺産の宝庫でもある。国内のほ かの地域も同様であり、日本ほど多角的かつ広域的な観光地となるであろう国は、ないのではないか。 しかし、政治政策はこの環境に原発を作る進路を選んできた。その結果、莫大な負の遺産を作りつつある。 新政権が発足し、新年を迎えた日本。危険な原発を廃し、恵まれた観光資源を生かし、観光地としての存在 感を世界へ示す時ではないだろうか。これこそが平和産業であり、人類生活に貢献できる道だと思う。美しい 国への門出とは、こういうことではなかろうか。 (和歌山県 益田 俊吉 無職 100歳) (2013.1.22 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
大卒資格 どれほどの価値?
美容師養成専門学校の合格が決まった私に、父が言った。「大学に行きなさい」 予想もしなかった言葉に、驚きと同時に疑問を感じた。学歴社会というが、大卒の方がいい職につけるという学歴神 話も、就職氷河期の訪れに凍り付いたはずだ。ましてや国公立大学へ合格するだけの実力もない私が何のために? と思う。 専門学校の学費は2年で約300万円。その金額で、専門的な技術を身につけた自分を買うのである。 進学するとすれば、今の段階では、私は入社エントリーの段階で企業に相手にされないようなレベルの大学しか合格 できないであろう。ならばそんな大卒資格を高い学費で買うよりは、直接、就職につながる道を選ぶべきではないのか。 大卒というだけでありがたがられた時代ではない。「学歴」の価値があいまいな今、大学の魅力を見つけることは難 しい。 大学に行く意味を、私たち、企業、大学、社会全体で考え直す時期ではないだろうか。 (京都市 岡田 脩平 高校生 18歳) (2013. 1.22 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
いじめ 勇気だして注意した
地下鉄で小学4、5年らしき少年ら4人と乗り合わせた。小柄で太めの1人が、連れの少年たちにいじめられてい る。少年たちは、その少年の鼻を指ではじいて痛がるのを見て笑い転げている。 見ていられなくなった私は、リーダー格の少年のほおを指ではじいて、「痛い? 自分がされて嫌なことは人にもしな さんな」 と厳しくたしなめた。悪口雑言も覚悟していたが、彼は「はい、すいません。すいません」と羞恥の表情を浮 かべた。 意外だった。この年頃はまだ大人への敬意が失われていないのだとそのとき気づいた。ならば大人が子どもたち の悪ふざけに無関心ではなく、自分の子どもか孫のように見ていれば、いじめの芽が育つ前に摘み取れるのではな いだろうか。 子どもの声が聞こえたら、大人は携帯から目をあげて、そっと彼らを見守りませんか。 (奈良県 西 海子 主婦 66歳) (2013. 1.31 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
1円玉を交番へ
今年もお正月休みに、東京に住む娘と小学3年の孫が帰省した。晩の食事で、孫が興味深いことを話してくれた。 娘と孫が2人で散歩しているとき、孫が路上に落ちていた1円玉を発見した。孫がすぐ近くの交番に届けたい、と言 うと、娘も同意。 2人で交番に行った。 1円玉を拾ったので届けに来たとお巡りさんに伝えると、すぐ拾得物届の書類を作成し、預かってくれたそうだ。 私はこの話を聞いた時、心温まる思いをした。 1円玉を届けた孫はもちろん、一緒になって交番まで連れていった娘、いやな顔ひとつせずに真面目に対応したお 巡りさん。それぞれにいいことをしてくれたと思う。私は「本当にいいことをしたね」と孫と娘を褒めた。 ただ、もし娘ではなく私だったら、孫に対してどのような対応をとっただろうか。 私はおそらく、たったの1円を届けるのは恥ずかしいし、お巡りさんも困ってしまうと勝手な判断をして、孫に届ける ことをやめさせたのではなかろうか。 娘が孫の申し出通りに届けてくれたことに対し、誇りに思っている。 (愛知県 森岡 滋 無職 76歳) (2013.2.3 朝日新聞読者寄稿 男のひといき欄より) |
電力会社の安易な態度 驚き
九州電力が、2011年に起きた「やらせメール問題」の責任をとって当時の会長・社長を辞任したりした相談役2人 と顧問1人に年間計8900万円の報酬を支払うという報道に驚いた。現在経営に責任は持っていないという3人に、 なぜ高額な報酬を払うのか。 電力業界は、原発の停止や火力発電などの原価高騰を理由に、電気料金の値上げを表明している。ところがこの 報酬は電気料金算定の原価に入るというのだ。 各電力会社が、実際には運転を停止している原子力発電会社に対して基本利用料を支払っていたという問題も目 を疑った。自社内でのコスト削減などの努力を怠り、そのまま消費者に電気料金の値上げという形で負担を強いると いうのは、 独占企業の地位にあぐらをかいた安易過ぎる態度だ。 ましてや電気料金というのは、「いらないから買わない」では済まない生活必需品。電力会社には猛省を促したい。 (山形市 三河 友紀子 無職 43歳) (2013.2. 朝日新聞読者寄稿 voice声 欄より) |
雪まつり 温かな思い出
テレビのニュースで見るばかりだった札幌の雪まつりに、ついに行ってきた。 雪像は期待通りにダイナミック、かつ精巧だ。ラーメンやおやつの出店もたくさんたくさんあり、海外からの観光 客も多い。降りしきる雪を楽しみ、お祭り気分を味わっていたら、小学校低学年くらいのグループが近づいてきた。 「雪まつりについて学習しているので、質問してよろしいか」 中の一人の少女が、暗唱したセリフを発表するような、一生懸命な表情で聞いてきた。 「どこから来ましたか」 「兵庫県の神戸です」 「どれが一番よかったですか」 「ちびまる子ちゃんのが、かわいくてよかったと思います」 「ありがとうございました」 言い終わるや少女は、引率の先生とおぼしき女性にわっと抱きついた。先生もよしよしという感じで肩を抱き寄 せた。その光景に胸がじんわり温かくなった。私も人に話しかけるのが苦手な子だった。 「兵庫県がどこにあるか、あとで調べようね」と先生の声が優しい。旅行中の一番の思い出になった。 (神戸市 操田 登志子 主婦 64歳) (2013. 2.21 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
檀家やめるか 先々考え悩む
檀家制度に縛られず、自分の目で気に入ったお寺を選ぶよう提言された「お寺の選択競争原理導入を」(5日)を拝 読し、共感しました。私の家の菩提寺は隣県にあり、長男は東京に住んでいます。先行きを考えると、檀家をやめる 離壇をしてはどうかと悩んでいます。 葬儀の多様化、居住地流動化などで檀家制度や菩提寺の必要性は薄れてはいるものの、寺院と檀家のつながり は昔とかわっていないでしょう。年忌、法要、寺院改修費の支援、葬儀のしきたりは依然として残っています。 離壇しようとして、高額な離壇料を請求されたトラブルも聞きます。寺にある墓は撤去し更地にする必要があり、経 済的負担から諦める人も多いのではないでしょうか。それぞれが満足できるのが理想ですが、経済的負担なく友好的 に解決するとは思えません。こうした経験のある方のご意見を伺えればと思います。 (石川県 加藤 光彦 無職 71歳) (2013. 3. 15 朝日新聞読者寄稿 お寺の選択欄より) |
葬送儀礼を押しつける例も
「お寺の選択」を読んだ。数年前、知人の父親が亡くなった。父親は生前、「葬儀にはお金がかかるので戒名もお坊 さんのお経もいらない」と言っていたので、その通りにして、菩提寺に納骨をお願いしたところ、「当宗の慣習にのっと った葬儀をしなかったので埋葬できない」と言われた。やむなく読経してもらい、戒名をつけて納骨した。 昨年は親しかった友人が亡くなった。友人の妻は僧侶抜きの友人葬を行い、先祖が眠る墓地に埋葬をお願いした が、同じような理由で拒否された。憤慨した彼女は民間の墓地を買い、先祖のお骨ごと埋葬した。葬送儀礼を押しつ けられるこうした例が少なくないことを知ってほしい。 (東京都 栗原 章吉 無職 69歳) (2013. 3. 15 朝日新聞読者寄稿 お寺の選択欄より) |
心優しい息子 巣立ちの春
父と同じ大工 釜石で目指す
私は高校卒業後、休みも少なく毎日のように働いている父のような大工になりたいと考えている。 父の姿にあこがれを抱いたのは、2年前の東日本大震災がきっかけだ。 その日、自宅のある岩手県釜石市は、大震災に続いて津波に襲われた。幸い、自宅は津波の直撃は免れ たが、停電で家は暗く暖もとれず、仕事で戻って来ない父を母や兄と待ち続けた。 そして間もなく、父が泥にまみれた釜石の街のがれき撤去の作業に出掛ける日々が続いた。 朝早くから夜遅くまで、街の復旧作業に明け暮れる姿を見て、自分のことよりも多くの人のために働く父に 胸を打たれた。父と同じ仕事をしたいと考えるようになった。 高校では社会で必要な学力や教養などを身につけ、卒業後は大工の技術を身体で覚えて、以前のような 活気ある釜石の街を取り戻す仕事をしたい。 父は目標であり、あこがれの存在だ。一緒に街づくりに汗を流すことが、私の夢だ。 (岩手県 細川 雅斗 高校生 15歳) (2013. 4. 29 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
ほろ苦い 「ヨイトマケの唄」
祖父母は家業で帽子や足袋などの露店をしていた。父は会社員で母は市場で雑貨商。私が高校3年になると祖父 母の手伝いをさせられた。1回目の手伝いは高校の近く。同級生が陸上の練習で走ってきた時は恥ずかしさから背 中を向けた。2回目はクラスの男子に会った。翌日彼は学校で冷やかし「バナナのたたき売り」をやり出した。私は笑 ってごまかしたが、帰ってから 母に「こんな手伝い嫌や」と訴えた。「盗んだもんを売っているんやない」とすごい顔で 怒られたが、それから手伝わされることはなかった。 しばらくして母が店を閉めることになった。大手スーパーの進出が理由だ。母は45歳で車の免許を取り祖父母の 露店を手伝った。何度か祖父母と母の姿を陰で見たが、店の前を通れなかった。 美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」の一節「母ちゃんの働くとこを見た、母ちゃんの働くとこを見た」には、今もほろ 苦く涙がこぼれる。 (堺市 西村 節子 無職 61歳) (2013. 4. 29 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
子どもは親と一緒にいたい
大学の授業で、なぜ少子化は進み、なのになぜ待機児童は増えるのか、ということについて考えた。原因は、多く の人が住み、働いている都市部に人口が集中し、そこにある保育所に人が集まってしまうことにありそうだった。 核家族や、共働きの親が増えている時代に、子どもを遅くまで見てくれるような、仕事の帰りにも迎えに行けるよう な保育所が必要なことは納得できる。しかし、これが当たり前となっている社会には納得したくないと思う。 子どもには、特に保育園や幼稚園に行くような幼い子どもには十分に家族と触れ合う時間があってほしい。保育所 はあくまで子どもを預かるところであって、愛情を全員に十分に与えることは難しい。子どもはなるべく、家庭で親に 愛されるべきだと私は思う。そのために、社会の考え方が変わっていってほしい。早い時間に仕事を切り上げ、家族 が夕食を共に取ることができる日本になってほしい。 (愛知県 太田 藍里 大学生 19歳) (2013. 5. 4 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
おばあちゃんの世話 ぼくも
ぼくのかぞくは、犬3匹と人7人。ぼくは、お姉ちゃんと毎日、お手伝いをがんばっています。パパとママ がしごとでいそがしいので、犬のさんぽと、ゴミすて、そしておばあちゃんの世話をします。ぼくのおばあ ちゃんは頭の血管がつまってしゃべれなくなり、動けなくなりました。ずっとベッドにいて、ごはんが口から たべられなくなり、おへそのところにあるボタンにチューブをつなげて、ジュースをいれます。 おばあちゃんの身の回りの世話を進んでするお姉ちゃんは、すごいです。お姉ちゃんが中学生になって 帰りがおそくなったので、ぼくがおばあちゃんのデイサービスのおむかえをしています。車イスがとおるた め、ゆかに長いマットをしきます。リフトのでん源を入れて、おくってくれた人にあいさつをします。ベッドに 上げてもらったら、ちょっと話をして、あいさつをして見おくって、マットをかたづけます。 大へんだけど、お手伝いをしていると、おもしろいことやうれしいことがあるので、とってもいい気分にな ります。 (滋賀県 松村 海音 小学生 7歳) (2013. 5. 11. 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
仮面ライダーなボクが好き
時間外保育で受け持つ4歳児のA君。同じ年のB君に席を譲ってもらったのに黙ったままでいる。 「ありがとうってB君に言おうか?」と聞くと、口をとがらせた。 「今は言えんのやな。 後で言えるかな? B君、待っていてあげてね」と私。 30分後、「ありがとうって言えた?」とA君に聞くと、はにかみながら小さくうなずいた。 「やっぱりA君なら言えると思ったよ。どんな気持ちになった?」 少し考えて……でも、ちょっと自信にあふれた顔で彼はこう答えた。 「仮面ライダーになった気持ち」 強くて優しい仮面ライダーは、彼にとってなりたい自分の象徴なのだろう。 自分の気持ちを、自分の言葉で伝えられたA君。 A君にありがとうって言ってもらって、うれしかったと伝えてき たB君。 「自分が好き」ってステキだよ。気持ちを伝えられるのってステキだよ。 この時期は、小さな心でたくさんの「自分が好き」を感じてほしい。この自己肯定感こそが心を育み、人生を切り開 く原動力になると私は信じている。 ほのぼのな一日。子どもたちにありがとう。 (愛媛県 石川 由美 保育士 51歳) (2013. 6. 20 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
高句麗遺跡の旅 不戦を思う
世界遺産の高句麗遺跡を見るため、今月、一人で中国東北部を旅しました。戦時中に父母が過ごした旧満州の街を 訪ねるのも目的。中国語を勉強して準備しましたが、出発前に家族や友人から「尖閣諸島問題などで対日感情が悪く なっているのになぜ今行くの」と言われました。でも私は普通の中国の人が日本についてどう感じているか、知りたい と考えていました。 飛行機で瀋陽に入り、そこから自分で長距離バスを探して乗り継ぎました。北朝鮮国境の街、集安で遺跡や好太王 碑(広開土王碑)を見学。鴨緑江も眺めました。戦時中、兵士だった亡父がこの川を渡る時に狙撃されたと話していた ことを思い出しました。桓仁では高句麗の山城である五女山城に登りました。 どこへ行っても中国の皆さんは親切でした。買い物は漢字で筆談。「私はリーベンレン(日本人)」と言っても、遠い所 からよくきたなあとニコニコしています。にらみつける人はいませんでした。最後は、亡母が戦時中に暮らしたハルビン へ。 長距離バスからは、豊かなトウモロコシ畑や地平線に沈む夕日をずっと見ていました。その穏やかな風景に私は平 和の尊さを感じ、二度と戦争をしてはならないと思いました。 (大阪府 鶴丸 春吉 柔道整復師 66歳) (2013. 6. 28 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より ) |
木が売れず敗退していく山
海外の方から「どうして日本は自分の国の木は切らずに温存して、海外から輸入しているのですか」と言われるこ とがある。とんでもない。海外から安い木がどんどん入ってくるから、日本の山林地主はみんな困っているのだ。 木は売れず、値段はどんどん下がって、手入れにお金がかかるばかり。山の世話をする「山守」も少なくなった。 自分の山を捨ててしまっている人も多い。そのため山は荒れて、雨が降ると斜面崩落などの被害が増幅している。 我が家もかつては山守さんを雇い、兼業で林業をしていた。今は定年退職した夫が一人で、木の間引きや枝打ち などをしている。息子は別の仕事があるので山の管理をするのは無理だ。山林だけでは生活が出来ない。過疎、高 齢化などでますます山は放置され、廃退していくだろう。見ているしかない、もどかしい気持でいっぱいだ。保水力が あり、自然がいっぱいで、日本の原風景でもある里山を子孫に残したい。 (大阪府 飯岡 清子 主婦 64歳) (2013. 10. 2 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
メガバンク 国民に恩返しを
メガバンクは社員のベースアップや総報酬引き上げを検討中と報道されている。過去最高水準の利益が出ている ためで、賃上げを求める安倍政権の意向を受けている。しかし、大手銀行が1990年代後半、不良債権の処理で窮 し、公的資金の導入によって回復したことを忘れてはならないと思う。 今、空前の収益があるのは株価回復などの要因もあるが、根本は公的資金の導入と預金金利の引き下げのおか げではないか。社員の賃上げよりも、国民に対する恩返しを先に考えるべきではないか。金融機関には公共性があ る。 預金金利は金融機関によるが、多くが1年もの定期預金で0.025%ほど。0ではないという言い訳程度に引き下げら れたままである。年利5%だったころに比べると、なんと200分の1。私ももちろんそうだが、預金者に貯蓄の楽しみは 全くない。それだけの収益があるのなら、このあたりで利率をもう少し上げても経営の足を引っ張るとは思えない。 社員の待遇より、まず預金金利の引き上げだろう。消費が増えれば「アベノミクス」の効果も表われるのではない か。メガバンクは預金者、国民に恩返しをして欲しい。 (大阪府 倉田 昌治 無職 82歳) (2014. 1. 25 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
原発ゼロでも温暖化阻止可
小泉純一郎元首相が、安倍晋三首相に原発即時ゼロの方針を打ち出すよう迫りました。これに対し、温暖化防止問 題を考えれば無責任、との批判もあるようです。 私は工場の省エネ改善を調査してきました。必要以上に大がかりな設備や管理不足など原因はさまざまでしたがエ ネルギーの無駄遣いがまだまだ改善されていないのです。 私は原発ゼロでも、省エネの徹底的実践により、燃料費も二酸化炭素排出量も削減が可能だと確信しています。経 営者の強い方針のもと、本気で省エネ改善に取り組み、増産しながら30%以上のエネルギー消費量を削減している企 業がわずかながらある一方、大半の企業の経営者は、省エネ改善に人材の投入と投資を惜しんでいるのが実態です。 日本の技術者は、トップの明確な方針と目標、費用と人材を用意されれば、目標を達成させる力があり、高い目標ほ ど奮い立つのです。小泉元首相の言うように、最高権力者が方針を明確に打ち出せば確実に解決できることを我々技 術者も確信しています。 (東京都 村田 博 省エネコンサルタント 77歳) (2013. 11. 18 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
久美浜原発反対 旧友を思う
旧制第三高等学校(現・京都大)時代の友は京都府久美浜町(現・京丹後市)の出身で、大学工学部卒業後は東京で 就職したが、1970年代に関西電力の久美浜原発が持ち上がると反対運動にかかわった。私たち友人にも様々な資料 を熱心に送ってきたが、私は他山の石としか考えず反応しなかった。彼は2005年に死去。翌年、関電は久美浜原発建 設を断念した。 忘れかけていたが12年6月、声欄投稿「久美浜原発阻止 住民の先見」を読んで私はハッとした。久美浜の隣町、兵 庫県豊岡市の方がかつて反対運動に立ち上がった住民たちの勇気を書いていた。私は彼を思い出した。ご子息に連 絡し、膨大な資料が残っていることを知った。 多くは原発の危険性についての新聞スクラップやビデオなどだが、驚いたのは自然エネルギー利用の進歩に関する 資料収集だった。水素自動車、水素飛行機、太陽光発電などの資料。理論的根拠を踏まえた彼の行動は誘致反対派 にとって有力な力となったに違いない。 彼は旧制豊岡中学校(現県立豊岡高校)出身でもある。私は若者が脱原発を考える糧にして頂ければと考え、高校に 相談してこれらの資料を1月に贈った。彼もさぞ喜んでくれると思う。 (奈良県 瀧野 義忠 無職 91歳) (2014. 2. 14 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
消費税意見聴取 世論と乖離(かいり)
安倍政権が消費税増税について意見を聞く「集中点検会合」のヒアリングを終わった。意見を述べた60人のうち、来年 4月に予定通りの増税に賛成した人は7割を超す43人、反対や慎重な意見は14人だった。賛否を表明しない人が3人だ った。 しかしこれは国民世論とは乖離(かいり)している。朝日新聞の世論調査では、反対が49%で賛成の43%を上回った。なぜ ヒアリング結果との間でずれが生じたのか。陳述者の人選によるのだ。 1日の記事「消費税ヒアリング総集編」によると、陳述者の内訳は、経済や社会保障の研究者、経団連や業界団体の 関係者、社会保障関係者、自治体の首長らである。日々の生活に困っている人は一人もいないだろう。 月々10万円足らずの年金で細々暮らす年金生活者、年収200万円以下で食うや食わずの生活をしている非正規労働 者、いまだに消費税の上乗せをできずに苦しい経営を強いられている零細事業者……。これらの人は一人も含まれて いない。こうした人が入って意見を述べていたら、結論は違っていただろう。 このヒアリングだけで「国民の意見を聞いた」と政府が判断するのは大間違いである。 (奈良県 谷 弥兵衛 無職 79歳) (2013. 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
日本のコメ輸出 農業に活気
環太平洋経済連携協定(TPP)に参加しようとしまいと、日本の農業は衰退の一途をたどっている。そうであれば、私は 日本のコメをどんどん海外に出し、何とか日本の農業を守っていきたいと思っている。今は国際交流・競争の時代だ。現 体制にあぐらをかいていてはだめだ。政府も農協も農業政策の大転換をすべき時なのだ。農家自身も立ち上がらなけれ ば日本の農業に活気は取り戻せない。 金銭的なばらまきである補償は農家のためにならない。自主性や独立性をなくすだけだ。今の農政は対症療法で根本 的な解決の方向性は示していない。このままでは我が国に農業がなくなってしまう。 土地はあっても担い手のない農地は多い。意欲のある農家が共同で水田耕作をする会社をつくり、小さな農家はそこ に耕作を委託する。そうして地域が協力しあいながら田んぼを維持していくしかない。そのうえで、作ったコメは海外にも 売る。官僚や政治家は現状をよく見てほしい。そして農家は、現状を打破する勇気をもってほしい。 (福島県 佐藤 豊 農業 89歳) (2013. 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
出生前診断に強く反対する
生物の授業中に、先生から衝撃的な話を聞かされたことがある。それは出生前診断についてだった。おなかの中にい る胎児にダウン症などの染色体異常があるかを調べることができ、人工妊娠中絶する人もいるというものだった。私は 話を聞いて、出生前診断に強く反対する気持ちになった。 職場体験の授業で病院に行った時、さまざまな年代の障害がある方と接した。歩行、トイレ、入浴、服を着ることなど が自分の力だけではできない人。思うように手先を動かせない人などさまざまだった。でも、障害者の方々は少しでも自 分の力でできるように努力していた。 私はその光景を見ていただけに、人工妊娠中絶につながる出生前診断が許せないと思った。確かに、障害のある人 のお世話は大変だった。でも、周りのサポートで親の負担も減ると思う。どんな事情があっても命を大切に思う人が増え ることを願っている。 (香川県 高橋 悠里奈 高校生 18歳) (2014. 3.15 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
高校生 もっと大人扱いして
中学生から社会人まで、これまでの卒園生たちが毎年訪ねてくれる。特に活気があるのは、やりたいことがいっぱい ある高校生だ。子どもっぽいところもあるが、大人社会がそうさせているのかも知れない。彼らの会話からそう感じた。 「俺らの学校、部活に自動車部があるのに18歳になっても運転免許取らせてくれへん」。工業高校の生徒の発言から それぞれの学校談義にわいた。「日本は20歳まで選挙権もお預けやしな。外国では選挙権は18歳からが大半なのに」 と私が言うと、「自分たちはどうすべきなのか」と、話の輪がまた広がった。 彼らはたくましく育とうとしている。高校生のうちから、自立して社会に目を向けられるように育てるべきだ。高齢化社 会を支える若者を、みすみす子ども扱いするのは国の大きな損失ではないかと少し考えさせられた。 (滋賀県 長尾 寿 保育園長 76歳) (2014. 3.16 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
大阪のため 橋下市長を支持
大阪市の巨額赤字。市民の資産を食いつぶして積み上がった借金です。市民として、これをいつまでも放置させる ことはできません。赤字の一因が大阪府と大阪市の二重行政による弊害です。解決の方策が「大阪都構想」。大阪市 をなくして複数の特別区に分割する構想です。都構想の議論を進めるかどうかを争点に掲げた橋下徹氏が、この度の 市長選で再選されました。 よって、その実現を急ぐ必要があります。赤字体質からの転換で福祉、医療、教育、文化にお金を回すことができ、 水道や交通についても良い方向に向かうと考えます。 市議会は協力せねばなりません。橋下市長は夏までに都構想の設計図をつくると言っています。話し合いをせずし て議会は何をするのですか。議論が進まなければ我々市民も理解、判断ができません。今、大阪のために考え、行動 力のある人は橋下市長以外にいません。私は真っすぐに進んできた市長を支持します。 (大阪府 山崎 貞芳 無職 67歳) (2014. 3. 30 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
父の心身を荒廃させた入院
腎臓を患う84歳の父が、長期療養型病院に入院して3ヵ月が経った。入院前は杖を使いながらも自力で歩き、身の 回りのこともこなせていた。その父の変貌ぶりに言葉を失った。オムツをして車いすに乗り、周りの患者や職員に支 離滅裂な言葉を吐き続けていた。 公立小学校の教頭だった父は、当時を回想するのか、見舞いに訪れる客を児童の保護者と思い込み、授業参観 を始めると言う。幻を追う父の姿は、いたたまれない。さらに夜中に「退院させろ」と暴れては自傷行為に及ぶため 精神安定剤の注射が欠かせなくなった。 病院側の対応に問題はなく、リハビリなどを積極的に提案してくれるが、父は聞く耳を持たない。穏やかな最期を 迎えるために入院を勧めた病院で、父の心身を荒廃させてしまった結果に、私は深い後悔と自責の念にさいなまれ ている。 ベッドでおとなしく寝ていることが唯一の「勤め」になってしまった父の苦痛は想像に難くない。授業参観の幻を追う 父の姿もかわいそうでならない。長期療養型病院への身内の入院を考えている家族の方は、慎重に検討してほしい。 (千葉県 石川 博美 国家公務員 55歳) (2014. 5. 31 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
イスラエル ガザ攻撃やめよ
パレスチナ自治区ガザにイスラエルが空爆を続け、16日までに死者は225人を超えた。イスラエルは対テロ 作戦だと言うが、子どもや女性を含む多数の民間人が殺されており、住民全体への集団懲罰と言うしかない。 私は今年1月に現地へ行き、支援しているガザの学校を訪問しようとしたが、検問所でイスラエル兵に阻止 された。イスラエルの厳しい封鎖によって、検問所を通過する者はほとんどなく、約180万人のガザ住民は外 に出るどころか、医薬品や生活物資も手に入らない困窮の中にある。 ガザは狭く、送電や水道の施設などのライフラインも爆破され、人々は恐怖と苦難におびえている。イスラ エルの空爆は、パレスチナ人の間にイスラエルへのさらなる憎しみを育て、和平の実現を一層困難にするも のだ。 私はイスラエルに対し、直ちにガザへの攻撃をやめ、封鎖を解除して和平実現に歩を進めるよう、強く求め たい。また、日本政府は今年5月に来日したイスラエルのネタニヤフ首相に二国間関係の強化を表明したが、 このような行為を繰り返す国との関係強化は見直すべきであると考える。 (宮城県 石川 雅之 行政書士 53歳) (2014. 7. 18 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
川内原発再稼動 故郷を憂う
鹿児島から上京して一年半。都会の雑踏と喧騒の中でふと、火山灰を気にした故郷での日々を思い出す。先日、川 内原発の再稼動が事実上、決定した。賛成か反対かを明確にするための時間や情報が不足していると感じる人もいる。 鹿児島に住む友人はこう話す。「原発が動けば、街は元気になるかも知れない。しかし、また福島のような悲劇が起 こるのではないかという思いが頭から離れない。頭のよい人たちが難しい言葉で勝手に話を進めていって、私たちは完 全に取り残されている。みんなで考え、勉強し、議論する時間がもう少し欲しい」と。 鹿児島にいながら、「蚊帳の外」で議論を見守るだけの不安は察するにあまりある。 再稼動の話が持ち上がってから今までに費やした時間は、鹿児島と日本の未来を考えるのに十分な時間だったか。 国民全体で、再稼動の是非を考える時間がもう少し欲しかった。 桜島は今日も噴煙を上げているだろう。風向きが気になる。降り積もるのが火山灰であるうちはまだよい。遠く離れ た東京で空を見上げ、スピード決着で再稼動に突き進む故郷を憂う。 (東京都 札内 僚 大学生 22歳) (2014. 11. 15 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
「武器」で潤う未来 誇れるか
防衛装備品という名の「武器」を輸出する企業に、国が低金利の資金援助を検討するという報道を知り、驚 愕(きょうがく)しました。さらに輸出だけでなく、「武器」を使う訓練や修繕の指導も検討するとか。 政治家や役人は、今年ノーベル平和賞を受けたマララ・ユスフザイさんのスピーチを知らないのでしょうか。 戦車をつくる企業に援助するより、学校を建てる活動に援助するべきです。銃の使い方を教えるより、一冊の 本を届け、一人の教師を育成するべきです。 日本は世界でも経済に強く豊かな国の一つです。世界に平和をもたらすうえで、真の意味で「強い」国であっ てほしい。武力による争いで利益を得る国や人が、平和を訴えたところで信用されるでしょうか。日本の景気 や雇用が、戦争や紛争に支えられる未来に誇りが持てますか。決して正しくない道だと思います。 エコカーや自然エネルギーの開発など日本が誇れる技術はたくさんあります。平和に役立つ技術を発信し 続けるためにも、国は未来を明るくする企業に援助をしてほしいと思います。 (愛知県 樋渡 悦子 中学校非常勤講師 40歳) (2014. 12. 27. 朝日新聞読者寄稿 voice声欄より) |
摂取補助 子育て世代手厚く
インフルエンザの季節です。私の住む自治体は、高齢者への補助により1回千円で予防摂取を受けられます。ところ が、13歳未満の子どもたちは2回の摂取が必要で、しかも料金は平均1回3千円ほど、2回だと6千円ほど掛かります。 2人分なら1万2千円。子育てに奮闘中の家庭にとって、かなりの負担です。摂取を断念する家庭もあるのではないか と懸念します。子どもの予防接種に補助制度を設けている自治体もありますが、私が住む場所のように補助がない自 治体もあるのです。 高齢者がインフルエンザにかかると、重篤となった場合に治療費がかさむので補助があるのでしょうか。でも、高齢 者は健康管理も自分でできますし、外出を控えることも可能です。しかし、子どもたちは保育園や幼稚園、学校で多く の人と接触しなければなりません。インフルエンザに対するリスクも高いはずです。 行政の予算が厳しい折、どの分野を手厚くするかは大事な問題です。予防接種は子育て世代に補助をするべきです。 ここは一つ、我々高齢者はやせ我慢のしどころではないでしょうか。 (神奈川県 犬飼 徹 建築士 69歳) (2015. 1. 29 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
アラブの歴史 十分配慮必要
日本人人質事件の危機対応の検証を政府が始めた。「ISILと闘う周辺各国に総額で2億㌦程度支援」との安倍晋三 首相の演説が、過激派組織「イスラム国」を刺激したと専門家たちは述べる。私は見逃せない点がもう一つあったと思 う。 半世紀ほど前、企業の駐在員としてアラブ4カ国で通産6年の生活をした体験から言うと、イスラエルでの記者会見で 首相が「テロには屈してはならない」との発言を「日の丸」「ダビデの星」の両国旗の前でしたのが大きな問題だ。駐在 当時はイスラエルの出入国印がある旅券では多くのアラブ諸国への入国は不可能だった。世界ブランドの万年筆をア ラブ諸国に持ち込む際も、ダビデの星を連想させるマークの部分が丸になっているものを選んだものだ。イスラエル建 国の経緯、今も続く占領地への入植活動、暴力の連鎖……。相互の反目はとても根深い。 イスラエル国旗を背に「テロ」を語る意味を首相は理解していたのだろうか。長年培われたアラブの人たちの親日感 情への影響は大きいと危惧する。日本が触れることのできない双方の歴史と人々の微妙な感情に対し今後十分な配 慮が必要と考える。 (千葉県 高橋 正夫 無職 79歳) (2015. 2. 18 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
77年 電気バスから燃料電池
戦前、大阪市内を走っていた電気バス。その電池と充電法の改良に携わった私の経験が、昨年1月10日の本紙夕 刊で紹介された。 私は1938(昭和13)年に湯浅蓄電池製造(現・GSユアサ)に入社。当時、バスは充電所で予備電池に取り換える方式 だったが、1回の充電に5時間以上かかっていた。新人にもかかわらず、充電時間を短縮できれば予備電池が節約出 来るのでは、と課長に相談したところ、「君が取り組んでみるか」と言われた。私は工業高校の卒業論文で、蓄電池の 参考書の要点を丸写ししたのだが、課長は私が蓄電池について深く理解していると誤解したようだ。結局、大阪市の 充電所所長の指導の下、本社研究設計部門の担当者たちにも協力いただき、2年後、改良に成功し充電時間を3時 間に短縮した。困難と思う作業でも懸命に行えば理解者や協力者が得られ、完遂出来ると自信が持てた。 あれから77年。昨年、水素と空気中の酸素で走る燃料電池車が発売された。今後は水素ステーションの設置も進ん でいくという。二酸化炭素排出削減にも寄与するだろう。環境技術の進歩を楽しみに生き続けよう ! (大阪府 首藤 功夫 無職 94歳) (2015. 3. 4 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
脱原発 メルケル首相の雄弁
ドイツのメルケル首相が来日し安倍晋三首相と会談した。両国の将来へよき実を結んでほしいと祈るような思いであ る。 4年前の東京電力福島第一原発事故を受け、メルケル首相は「脱原発」の方向へと踏み出した。2022年までに全て の原発を停止することを決め、再生可能エネルギーを中心にした構造への転換を目指すという。しかし、首脳会談で は、原発政策についての議論はなかったそうだ。 メルケル首相は訪日直前、「日本も共にこの道を進むべきだ」との 考えを示しているのに、なぜ踏み込んだ話し合いがなかったのか。大変残念だ。 だが、メルケル首相は9日の講演で「私が考えを変えたのは、やはり福島の事故でした。日本という高度な技術水準 を持つ国で起きたからです」などと、自らの脱原発政策を雄弁に語ったそうだ。安倍首相はどう受け止めるのか。 広島、長崎への原爆投下と、原発事故という悲劇に見舞われた日本。その痛みを肌身で知り、最大の発言権を持つ はずなのに、原発再稼動が政権の既定路線だ。 日本もドイツにならって、世界で脱原発推進の先頭に立つ「一歩」を踏み出してほしい。 (大分県 雨宮 恵二 無職 84歳) (2015. 3. 12 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
緑の山 その恩恵を忘れまい
1980年、サウジアラビアの港湾設備建設プロジェクトに携わり初めて海外出張をした。期間は約7カ月。臨 海部の砂漠の地だった。任務を終え日本に帰国した時、まっさきに目に入ったのは緑豊かな山。大きな感動 を覚えた。日本を出るまで山を意識したことはなく、砂漠での生活が発見をもたらしてくれたのだ。 広島市北部の小さな集落で過ごした少年時代。薪(まき)をとるなど、山は暮らしに欠かせない燃料の調達先 だった。秋にはマツタケ採りもした。ライフスタイルが変わり、燃料が石油に代わって、山の荒廃が始まった。 昨今、各地で大規模な土砂災害が相次ぐ。山の保水力を高めるには災害に強い森林づくりが急務だ。 森林は日本の国土の約67%を占めている。二酸化炭素を吸収して温暖化防止に役立ち、水源の確保にもつ ながる緑の山。その恩恵を私たちは忘れかけていないか。かけがえのない日本の宝を大切にしたい。 (広島県 亘 幸男 無職 73歳) (2015. 1. 4 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
報道人は圧力に抗してこそ
「報道ステーション」で、元経済産業省官僚の古賀茂明氏がテレビ朝日などの意向で出演は最後と述べた。 「菅官房長官をはじめ、官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきた」とも発言した。 テレビ朝日の早河洋会長は会見で、政治家からの圧力について「一切ありません」と明言。菅官房長官も 「まったくの事実無根」と話した。「圧力」については真偽不明で、古賀氏の言動に賛否両論があることにはうな ずける。ただ私は、古賀氏の問題提起はメディアを覆う自粛ムードに一石を投じたもので、公益にかなうと思う。 私たち視聴者には、権力による報道機関への圧力が強まっているのではないか、自粛しているのではないか というモヤモヤした気分があるからだ。昨年の衆院選時に、政権与党が報道内容について在京テレビキー局に 注文をつけたことを思うと、その感はさらに強まる。 今回の件を古賀氏個人の問題に矮小(わいしょう)化してはいけない。 テレビ局だけでなく、新聞も含めて報道に かかわる人たちすべてが、圧力が仮にあっても、伝えるべきは伝える姿勢を再確認すべきではないか。 (東京都 小山 哲史 大学生 21歳) (2015. 4. 4 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
自民もテレ朝も 募る不信感
衆院選を控えた昨年11月、テレビ朝日の「報道ステーション」が安倍政権の経済政策アベノミクスについて報じた内 容に自民党が「公平中立」を求める文書を出していたことが分かった。 権力を行使する側に厳しく問題点を指摘するのはメディアの本分だ。それを権力側が中立性を欠くと言い立てること は批判を押さえ込む圧力で、それこそ放送の中立性を脅かすものだ。一方、この件をすぐに公表しなかったテレビ朝 日にも不信感を抱く。なぜ速やかに公表し、反論しなかったのか。圧力に屈したのでは、との心証も与える。 先月、報道ステーションの生放送中、コメンテーターで元経済産業省官僚の古賀茂明氏が官邸などからバッシン グを受けたと批判し物議を醸した。あの時はいささか常軌を逸する行動とも思えたが、今回の自民党とテレビ朝日の 対応を見ると発言は真実味を帯びてくると感じる。 自民党は権力への批判を封じるようなことは慎み、反論すべき点があれば反論すれば良い。テレビ朝日はメディア の本分を存分に発揮した放送で、圧力に屈したのではないかという疑念を払拭してほしい。これは他のテレビ局や番 組も同じだ。 (大阪府 清水 康寛 無職 58歳) (2015. 4. 14 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
中国人も見習いたい「秩序」
昨秋、栃木県の日光に行った。東照宮はもちろんだが、輝くばかりに美しい紅葉も印象的だった。世界遺産 もある日光は、日本の宝の一つだろう。 ただ、3カ月前に中国から来日したばかりの私にとって、文化遺産や 名所といえば、「やっぱり中国の方が」という自負がある。 そこで、日本の宝とは一体なんだろうと改めて考えてみた。頭に浮かんだのは「秩序」という言葉だった。 どこへ行っても日本人はいつも奇麗に並ぶ。エスカレーターでは片側を空けることに驚かされた。洗面所でも、 みんなが一定の距離を保ち黙って順番を待つ。中国では信じられない光景である。 古代から礼儀大国として知られる中国にそういう秩序はあるか。お互いを尊重しあう気持ちがあるか。そう思 うとちょっと悲しくなった。恥ずかしいというのが本音だ。 今、日中関係が冷えているが、市民同志なら中国人も日本への偏見を捨てて日本から学べることがいっぱい あるんじゃないか。秩序を重んじ他人を尊重する日本人のふるまいは、日本の宝だと思う。 (茨城県 楊 亜舒 留学生 23歳) (2015. 4. 5 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
未来に向け 政治に関心持つ
統一地方選で自民、民主、公明の3党が、子ども向けの政策集を作ったそうだ。子どものうちから政治に関心 を持つためのきっかけになればよいと思う。 将来、税金を納めて日本を支えていくのは私たち若い世代だ。18歳まであと3年。選挙権を持つようになった ら、どんな候補者に投票するか。信念を持って日本がよりよい国になるように働いてくれる人に、私は投票した い。 昨年亡くなった俳優・菅原文太さんの言葉が、私は好きだ。「政治の役割は二つ。国民を飢えさせないことと、 絶対に戦争をしないこと」。死の1カ月前に、沖縄県知事選の応援演説でそう話した。 文太さんの遺言ともいえる心からの訴えを、真剣に受け止めたいと思う。 戦争のない平和な日本が、ずっと未来まで続くようにする。それが、これからを生きる私たちにとって大切なこ とだ。いざ投票するときに悩まないよう、今からしっかり政治の動きを見つめていきたい。 (東京都 伊藤 舞香 高校生 15歳) (2015. 4. 14 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
愛犬レオの優しさ
レオが逝ってしまった。 黒ラブラドルのオス、15歳7カ月。買い物から帰ると、ちぎれるほどしっぽを振って出迎えてくれたレオのいない 空間が、大きすぎる。 うちに来たのは夫が単身赴任のとき。当時、高校生と小学生だった子ども3人を見守ってくれた。2ケ月の子犬 にはさぞ荷が重かっただろう。 見たことがない男の人が玄関に近づくと、低い声でほえた。私が娘と口げんかしていると、心配そうに私たちの 顔を見ていた。りりしく、優しい犬だった。 いま、子どもたちは成人して家を離れ、同居する母は介護が必要な身となった。15年の歳月はレオにも流れて いた。 この数カ月で後ろ脚がおぼつかなくなり、一過性不整脈でたびたび倒れるようになった。いずれ寝たきりになる だろうと不安だった。そんな私の心を読みとるように今年3月、心臓発作を起こして急いで逝ってしまった。 「おばあちゃんの介護をがんばらなきゃだめだよ」と、おしりをポンとたたかれたようだった。でもね、レオ。君と 母、ふたりの介護をする覚悟はできていたんだよ。 (大阪府 楠原万由美 主婦 59歳) (2015. 4. 10 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
私の「思い出の先生」は 愛犬
特集「思い出の先生」を拝読した。私の「思い出の先生」は、先日亡くなった愛犬だ。「何で犬が先生なの?」と驚 かれるかも知れないが、愛犬からずいぶん学ばせてもらったからだ。 愛犬は14歳過ぎに腎臓病の悪化で食欲不振になった。流動食を与えると病気に伴う口内炎の痛みに震えながら 飲み込み、「食べたよ」と私を見て口を開けた。 その後は点滴で命をつないだ。ある日、手作りスープを与えると飲んでくれた。「元気になれるよ」と言う私に愛犬 は「もう少し」とスープを催促した。ところが突然、吐血したのだ。「無理させてごめんね」と謝る私や娘に愛犬はふら ついて歩み寄り体を寄せて尾を振った。遠のく意識の中、呼びかける私を涙目で見つめ、静かに息を引き取った。 真の心を見つめて心を伝える大切さを学んだ。今後の私の人生に生かしたい。 (大阪府 渡辺 和子 主婦 62歳) (2015. 3. 23 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
◎ はい、チーズ
女友達3人が遊びに来たので、部屋の中で写真を撮ることになった。 「はい、チーズ」 と言ってシャッターを押した瞬間、近くで寝ていた愛犬が大慌てでやって来て、 「お手」 をした。 (広島市 おやつのチーズを夢見ていたワン 49歳) (2015. 10. 31 朝日新聞読者寄稿 いわせて もらお 欄より) ◎ 潔白 かつて家で飼っていた黒いシバイヌを、父は鎖につながず散歩に連れて行くことが多かった。ある日、近所のおばさ んから「お宅の犬がうちの犬をはらませた。黒い子犬がその証拠」とクレームが。近くで黒犬はうちだけ。仕方なく謝っ たが、よく考えると、うちの犬はメスだった。 (三重県伊賀市 犬は鎖につなぎましょう 66歳) (2018. 9. 1 朝日新聞読者寄稿 いわせて もらお 欄より) |
ゴローとテツ 魂の付き合い
不思議な体験をした。実家のゴローとテツという老犬である。1歳違いの弟テツをゴローは非常にかわいがっていた。 いつも一緒に行動し、かばって暮らしていた。 そのテツが亡くなった。ゴローは荒い息で玄関前に安置したテツをなめながら、亡きがらのまわりを何度もグルグル回 っていた。私が呼んでも見向きもしない。心配で1時間半ほど傍らで見守っていたが、私がそばを離れてすぐゴローはワ ンワンと鳴きだした。 戻ってみると、2㍍ほど上方、一点を見つめるように虚空に向かって鳴いている。ゴローどうした? と呼ぶと、しばらく 鳴いてから私の方に近寄ってきた。なでてやるとクンクンと体を寄せる。その直後からピタリとテツの亡きがらの傍らに は近寄らなくなった。 翌朝も亡きがらに全く興味を示さない。弟の魂を見送り、きちんとお別れをしたような態度の激変だ。私はといえば、 いまだに写真を見てメソメソしている。魂と魂で付き合っていたであろう犬たちを尊敬し、うらやましく思う。 (大阪府 山村 規子 無職 65歳) (2019. 6. 27 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
「現状維持」はやめてほしい
「大阪都構想」の住民投票は1万741票の僅差(きんさ)。「1票の大切さ」を改めて実感した。 投票所の前では、賛成・反対両派が陣取り、ギリギリまで呼びかけを続けていた。告示から3週間、両派とも互い を攻撃する主張ばかりが目立った。本当に大阪のためを思うなら、都構想の良い点も悪い点も市民に丁寧に説明 するべきだった。この点で、私は賛成派の言う「二重行政の無駄」は問題だと思ったし、「わからないなら反対を」と 議論を深めなかった反対派に印象の悪さが残った。 ただ、重要なのはこの後だ。反対派がこれからの大阪市をどう導いていくのか、市民は注視すべきだ。都構想を 阻止したから現状維持、というのだけはやめてほしい。今は「大阪維新の会」の2人が大阪府知事と大阪市長を務 めているから府市の意思疎通ができていると思う。橋下徹市長は12月の任期満了後の政界引退を表明したが、 橋下氏が去った後も、府市のトップが意思疎通を密にし、二重行政の無駄をなくしてほしい。 こんな思いがかなうもかなわないも、投票で選ばれた私たちの代表次第なのだ。橋下氏がくれた、大切な気づきで ある。 (大阪府 華野 優気 大学生 20歳) (2015. 5. 19 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
娘絞殺事件の判決 胸が痛む
県営住宅の家賃を滞納し、立ち退きを迫られた母親が、部屋の明け渡しの強制執行日の朝、中学2年の娘 を絞殺した事件で判決が出た。記事を読んで胸が痛んだ。母娘は母親のパート収入などで暮らし、身近に頼れ る人はいなかったという。2013年春、市の生活保護担当を訪ねたが制度の説明を受けただけ。明け渡しの強 制執行は市には伝わっていなかったそうだ。 私は若い頃、電話局の料金徴収担当として滞納料金の徴収や強制執行手続きに関わった。先輩から支払い 命令や差し押さえの強制執行はなるべく避けて収納率を上げるよう指導された。そのため、滞納者の自宅を訪 ね、暮らしぶりを見ながら可能な限り話し合い、少しずつでも払える額に分割して収納するよう努めた。 強制執行の現場を初めて見たときには、その生々しさに私も衝撃を受けた。早く仕事を覚え、先輩のように、 困窮した人の相談に乗れるようになりたいと思ったものである。 生活に困った人に、強制執行だけが行われるのではあまりに救いがない。死を考える前に、相談できる窓口 はなかったのだろうか。 (埼玉県 藤田 章 無職 66歳) (2015. 6. 19 朝日新聞読者寄稿 voice 声欄より) |
息子 思わぬ役どころ
ある朝の出来事です。 小学4年生の長男のいつもの登校時間になりました。その時、外で「コホンッ」と小さな声が。すると、息子 は大慌てで登校の支度をして玄関へ走り出しました。 息子のあまりの挙動不審な行動に、私も玄関まで出て行きドアを開けると、なんとそこにはかわいらしい女 の子が立っていて、「おはようございます」と元気な声であいさつしてきました。 疑問符で頭の中がいっぱいになっている私の様子に気づいた息子。ブスッとした口調で「あんなぁ、最近 不審者が多いやん。でな、一緒に行ってって頼まれたんや」とコソッとささやきました。そして、チョッピリ照 れくさそうな、でも誇らしげな顔をして、息子は女の子と出かけて行きました。 不審者対策として駆り出された息子。思わぬ役どころに夫といっしょに大笑い。小学生の子どもでも、男 子は男子。お役に立てて何よりです。 男子は女子に"選んで"いただかなくてはならないこのご時世。息子よ、不審者対策でも何でもよいでは ないか。"選んで"もらえたのだから、ねえ !? (徳島市 幸泉(こいずみ) 美紀 公務員 51歳) (2015. 7. 10 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
杖の私 球児からの「特別席」
病気の後遺症で足に障害が残り、杖をついている者です。通勤電車で座っている人の前に立つと、「嫌みで すか」と、座っている人からつぶやかれることもあり、通勤は体力的にも精神的にもつらい時間です。 今月初め、仕事の帰りに近鉄京都線に乗って、いつものようにドアの近くに立っていました。横には野球部の バッグを持った高校生が立っていました。 彼はある駅で、数㍍先の座席が空いたのを見ると、重そうなバッグを担いで、その席の方に行きました。運 動部の生徒が疲れて座席で眠り込む姿をよく見るので、彼もそうするものだと何げなく見ていました。 ところが彼は座らず、バッグを席の前の床に置くと私の所に戻って「座って下さい」と小さな声で伝えてくれ ました。足の悪い私のため席を確保してくれたのです。こんなことは初めてでした。ごく自然にこうした振る舞 いができるのは、彼の親御さん、そして伝統ある野球部が育んだ人間性だと、感謝の思いと感動が止まりま せんでした。 鳥羽高校野球部員の彼、本当にありがとう。甲子園での活躍を祈っています。 (京都府 坂本 理 臨床心理士 48歳) (2015. 8. 8 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
認知症 と診断されて
79歳の夫の感情の起伏が激しいことが気になり、かかりつけの先生の紹介状を持って、ある病院の「物忘れ外来」を 受診したのは昨年1月だった。 認知症との診断結果にはさしたる驚きはなかったが、心のどこかには「間違いであってほしい」という思いもあった。 介護相談員をしていたので、認知症については一通りの知識は習得していた。認知症は誰でも発症する可能性があ る病気だ。覚悟はしていたものの、夫と2人で暮らすこれからの日々はどんなものになるだろうかと、不安もあった。 夫の場合は早期発見、早期治療できたことで、1年半たった現在でも、それほどの進行は見られない。理解力は少し 下がっているが、日常生活に支障はなく、金銭管理もできている。本当に認知症を患っているのかと思うこともある。 夫は診断を受けるまで、子どもの登下校などの見守りボランティアを続けていた。私には続けられると思われたが、 周囲は難しいと判断したのか、活動の連絡は届かなくなった。夫の心情を推し量ると、やりきれなさもある。認知症と いうだけで社会から遠のいていかないか、危惧している。 (大阪府 三好 桂子 主婦 79歳) (2015. 9. 3 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
勝つため 工夫するのは当然
横綱・鶴竜が立ち合いで変化したことに対し「綱が泣く」といった批判が出ているが、的外れだ。私は現役のアマ チュアボクサーだが、真剣勝負だからこそ、あれやこれやと勝負の手を考え、工夫するのは当たり前だと思っている。 ボクシングも、一流になればなるほど実に巧妙なフェイントでの引っかけ技や、だまし技が見られる。立派なテクニッ クだ。 相撲は「四十八手」と云われるように、いろんな技があるからこそおもしろい。相撲の妙味で、奥深さではないか。 鶴竜関へ。批判は全く気にしなくていい。横綱としての初優勝おめでとう。更に強くなってほしいとエールを送りま す。私もボクシングの聖地である東京・後楽園ホールに70歳になっても立てるように、技を磨き、ベストを尽くしま す。 (神奈川県 赤嶺 進一 小学校非常勤講師 66歳) (2015. 10. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
豊穣な農地 荒れゆく切なさ
隣家の働き者の先輩が亡くなった。農業をこよなく愛する人だった。田は高齢になって業者に委託したが、雨の 日以外は朝早くから日が暮れるまで畑を耕していた。畑に雑草一本なく数種類の野菜が元気に育っていた。あぜ の草も伸びる間もなく刈り取られ、見事な田園風景をなしていた。 それが今は荒れ放題。亡くなって2カ月足らずでこの変わりようだ。後継者がいないのである。こんな農地が数年 前から周辺で目立つようになった。田は委託されているところが大半だが、畑は耕作放棄地となるところが多い。 狭い畑は、自家消費の野菜を作るのがせいぜい。スーパーで買ったほうが安上がりなくらいだ。若い人が見切り をつけるのもうなずける。結局、高齢者が耕すしかなくなってしまっている。今後、放棄地が増えるのは明白である。 先祖代々、大切に引き継がれてきた豊穣(ほうじょう)な土地が荒れ地に戻っていく。なんとももったいなく、忍びない。 高齢者が細々と担う農業は、もう限界がきているのではないか。食料自給率の低さが危ぶまれる国で、農家育ち の私はそう考える。 (愛知県 山本 信之 無職 74歳) (2015. 10. 9 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
放射性廃棄物 どうするのか
愛媛県の中村時広知事が、県内の伊方町にある四国電力伊方原発の再稼動に同意した。鹿児島県の九州 電力川内原発に次いで、再稼動することになりそうだ。 私は東京電力福島第一原発に隣接する福島県富岡町に住んでいた。事故後に県中部の町へ避難し、 故郷 に帰れないままだ。 富岡町では、生活ゴミや解体家屋を燃やした灰など、放射性廃棄物の最終処分場を造る計画が持ち上がっ ている。住民には反対意見も多く、結論が出ていない。 一方で、中間貯蔵施設の放射性廃棄物は30年以内に福島県外に移す方針という。だが、めどは立っていな い。原発の除染に伴う放射性廃棄物の中間貯蔵施設や、原発の廃炉作業に伴う廃棄物をどうするのか。今後 も大きな課題として住民に突きつけられてゆく。 原発の再稼動を受け入れた知事らは、放射性廃棄物も全て地元で受け入れる覚悟があるのか。加えて言え ば、伊方原発で事故が起きれば対岸の大分、山口、広島など他県への影響も計り知れない。 放射性廃棄物の捨て場所も決まらないままで、隣接地域への影響調査もせずに見切り発車で原発を再稼動 するのは容認できない。 (福島県 林 正二 無職 64歳) (2015. 10. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
性的少数者は異常ではない
人間は、知らないものを無意識に危険と思うのかも知れない。最近、気になったのは、神奈川県海老名市議 が性的マイノリティーについて「異常動物」とインターネット上に書き込んだことだ。 無知だから、男と女の間の恋愛以外は考えられないのだろう。だが、人間は複雑な感情を持った動物(註…存 在)だから、多様なのは当たり前なのだ。米国に住んでいたときマイノリティーの友人がいたからこそ言えること だが、 彼らは「異常」ではない。恋愛の価値観が少し違うだけだ。彼らと話し合うことによって、さまざまな視 点から物事を考えられるようになる。 国際化の中で、更なる多様性と寛容性が必要になる時代。私たちは、様々なマイノリティーに対して理解を深 めることが求められている。 (東京都 井口 華菜子 中学生 15歳) (2015. 12. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
朝鮮学校も いつか無償化に
ぼくは朝鮮初級学校に通う6年生です。今はサッカー部に入っていますが、中学生になったらラグビー部に入ろう と思っています。去年、映画「60万回のトライ」(大阪朝鮮高級学校のラグビー部を追ったドキュメンタリー)を見たか らです。 でも、学校でならったことですが、25年ほど前までは朝鮮学校は全国大会に出られなかったそうです。大阪朝鮮 高級学校女子バレーボール部が、一度は大会に出てもいいといわれて一次予選を突破したのに、大会側から「や っぱりでてはいけない」と言われてしまったこともあるのです。ぼくの親せきのおばさんが当時のキャプテンで、テレ ビで泣きながら大会についてのことを語った、とおばさんから聞きました。 そしてその数年後、朝鮮学校も全国大会に行けるようになりました。ぼくが目指す大阪朝鮮高級学校ラグビー部 は、全国大会で好せいせきを残しています。でもまだ高校むしょう化から外されています。なのでぼくもいち早く高 校むしょう化されるよう、署名運動や街とう宣伝などをがんばりたいと思います。そして、さべつの無い社会になっ てほしいと思います。 (大阪府 趙 顕佑 朝鮮初級学校生 12歳) (2015. 11. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
雨の日のあの子 今も胸痛む
昨秋の雨の日の夕方、自宅そばに4、5歳の男の子が震えながら立っていた。薄くて大きすぎるTシャツを着てい た。その頃、子どもの激しい泣き声が聞こえることが何度もあった。「まさかそんな」と、しばらく動くことが出来なか った。 子どもは私の方を見て、小さく「眠たい」と2度繰り返して言ったと思う。困惑していた私は、雨の入ってこない集合 ポスト前を指さして、「あそこならぬれない、早く行ってぬれないようにして」と言って、逃げるように部屋へ入った。 その後、男の子一家は引っ越した。近所では「虐待ではないか」とうわさになっていた。私は深く後悔した。なぜあ のとき家からタオルを持ってきて、あの子をあたためてあげなかったのか、と。子どもの弱った無表情な顔が頭から 離れない。 私は作家志望だ。ただ楽しいだけの話ではなく、例えば私のような母子家庭の子もいるし、親の愛情がもらえない 子もいる、色々な境遇の子がいると知ってもらえる話を書きたい。 (岡山県 梶山 瑞弓<みく> 高校生 16歳) (2015. 11. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
いじめ これからは闘う時代
「いじめ」に関するニュースをよく耳にします。僕はいじめを受けたことがなく、人をいじめたこともないから、 いじめられている人やいじめる人がどんな気持ちなのか分かりません。でも、いけないということだけは頭に入 っています。 小学校の頃、校舎の裏から、僕は何もしていませんというような叫び声が聞こえてきました。友達と様子を見 にいくと、内気な子を数人のグループで囲んでいました。僕と友達は怖くなってすぐ先生に言いに行きました。 その後、その子は転校したようです。何かのぬれぎぬを着せられていたとうわさで聞きました。僕は、いじめな のではと思いました。 このことで、いじめは誰かを不幸にしかしないと知りました。止めたり声をかけたり出来なかったことが悔しい です。これからの時代は、皆でいじめと闘わなければいけないのではないでしょうか。 (岡山県 梶山 瑞弓<みく> 高校生 16歳) (2015. 11. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
テロの源 私はまだ知らない
憎しみとは恐ろしいものだ。人間の誰にだってある感情で、人によって大きくもあり小さくもある。原因だってちが う。フランスのパリでテロを起こしたテロリストらは、どれほどの憎しみを抱えていたのだろう。原因はなんだったの だろう。 テロなんて遠い遠い話のように思っていた。14年前のアメリカ同時多発テロのとき私は3歳で、もちろん記憶にな い。だがその波紋でたくさんの人が死んで、世界の形が変わり、憎しみが生まれたことはわかる。今回のテロはそ の波紋なのだろうか。それとも全く別のところから湧き出た憎しみなのだろうか。私はまだテロを全く知らない。 テロの原因、テロリストらの憎しみの源を理解できれば何か変わるだろうか。きっと難しいだろう。憎しみは憎しみ を生むという。原因をつきとめても、それによる波紋が新たな憎しみを生むかもしれない。だが私は理解しなければ いけないと思う。どうしてこんなことが起きたのか。どうしてテロリストらは凶行に及んだのか。理解に努めなければ 何もわからないままだ。 (岡山県 小野 望 高校生 17歳) (2015. 12. 14 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
ISのテロ 世の難しさ痛感
一番記憶に残ったニュースは、11月13日夜のパリ同時多発テロだ。130人が死亡。過激派組織「イスラム国」(IS)が 「フランスのシリア空爆への報復だ」とする犯行声明を出した。人の正義というものは、厄介なものだと痛感した。 ISは自分たちの正義のためにパリの住民を殺したという。本来、正義というものは、決して人を傷つけるものではない はずだ。だが、それが行き過ぎてしまったり、相手の正義とは食い違ったまま相手との対話もなく進んでいったりする点 が問題なのだ。自分が正しいと思い込むあまり視野が狭まって、歯止めがきかなくなってしまう。 自らに疑問を持たないということは、自身の過去を振り返っていないことだ。過去にもISは各地でテロを起こしたが、 それが結局、シリアの空爆強化を招いた。過去を振り返る。自分にも刻みたい。 (香川県 勝亦 時央 大学生 21歳) (2015. 12. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
沖縄 のこと もっと知ろうよ
戦後70年の夏、大学のゼミ合宿で沖縄を訪れた。沖縄へ行くと友人に伝えたら、「うらやましい」と言われた。東京の 学生にとって、沖縄は「観光地」なのだ。 私も沖縄に行くまで、沖縄の基地問題に興味がなかった。しかし、米軍普天間飛行場や、その移設先とされる辺野古 で反対運動を目にして、衝撃を受けた。長年、基地問題解決を願ってきた人たちが大勢いるのに、なぜ変わらないのだ ろうと思った。 戦争の痕跡でもある米軍基地は、戦後70年たっても存在している。戦争はまだ終わっていないのだ。戦後、100年の 時、基地はなくなっているだろうか。 私は沖縄で変わった。そして、国民一人ひとりが考えるべき米軍基地問題を、国民は知らないのだということも分か った。無知だから無関心なのだ。そう思った私は、沖縄から帰った後、友人に沖縄の現状を伝えた。 「もっと知ってほ しい」と願いを込めて。 (埼玉県 石原 芙紀 大学生 21歳) (2015. 12. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
金髪の若者に最敬礼
とうとう杖がいるようになった。コンビニに向かって歩いていたら、キンキラキンの髪の若者が開いたドアにもたれて スマホに熱中していた。「今の若者はみんなあれに夢中なのか」と思いながらコンビニへ入ったら、若者はスッと店の 奥へ歩いて行った。 「ハッ」。 彼は私のために手動ドアを開けて待っていてくれたのだった。彼の後ろ姿に最敬礼をして「ありがとうござ いました」と言った。買い物を済ませたら、今度はレジの女性がドアを開けてくださった。正面からお礼を言った。 「ああ、今日は何ていい日なんだろう」。ほんわかと、何とも言えない気持ち。自分がピンシャン元気でいた頃には味 わえなかった幸福感であった。 「自分は誰のお世話にもなっていない」とどこか傲慢(ごうまん)な気持ちを持っていた。しかし、私を見守ってくださって いるのは神様だけではなく、私の気づかないところで大勢の人様がいてくださるのだ。それに気づけた。衰えるのもま んざらではないかもしれない。 これからはいっぱいの感謝をもって生きていこうと思う。あの金髪の若者が幸せな将来を迎えられるよう祈るばかり である。 (三重県 平屋敷 恒子 主婦 76歳) (2016. 2. 13 朝日新聞読者寄稿 社会・ひととき欄より) |
米軍の親戚と「マレーの虎」
米国東部・ペンシルベニア州で暮らしていた祖父の兄弟と、私は子供の頃、年数回は会った。彼は第二次世 界大戦で1941年12月の真珠湾攻撃後、21歳で徴兵され太平洋各地の戦いに従軍。最後はフィリピン・ルソン 島へ。捕虜収容所で管理担当をしたという。 帰国後、戦争中のことについてあまり話さなかったというが、日本人についてはよく褒めていた。日本人元捕 虜から感謝の手紙が届いたこともあった。公平な態度で接したからだったと聞いている。 捕虜の中にいた有名な人の話も聞いた。「マレーの虎」と呼ばれたフィリピン駐留日本軍司令官で、後に戦争 犯罪の責任を問われ処刑された山下奉文大将。ただ、彼が観察した山下大将は人道主義者で、最も尊敬すべ き人物だったという。裁判で多くの非難を浴びたが反論せず文句を言わず、判決に従い、なおかつ感謝の意を 表明していたという。彼にとって、名誉ある男だった。 私は米国の大学を卒業後、京都の日本語学校で学んで1年半。既に亡くなった彼の経験についてよく考える。 米日の相互理解を更に進めるため懸け橋になりたい。将来、日本での就職を考えている。 (京都府 ジム・マクドナルド 日本語学校生 30歳) (2016. 2. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
兵役で帰国 日本への感謝状
私は韓国からの留学生です。日本に来て2年4カ月になりました。今は京都の大学の1年生ですが、韓国は兵役の義 務があるので、3月末に帰国します。 兵役が終わればまた日本に来て復学しますが、振り返ってみると、今まで日本人の皆さんには大変お世話になりま した。 高校の日本語科目で日本が好きになり、大学は日本と決めていました。渡日のとき日本に知り合いはなく、新生活 への期待もあれば、緊張や不安もありました。さらに朴槿恵(ぱくくね)大統領と安倍総理が就任し、歴史問題で日韓関 係が冷え込む中、様々な感情を抱いて渡日しました。 不安を払拭(ふっしょく)したのは、他でもない日本人でした。アルバイト先や語学学校での優しい指導、悩みを聞いて くれる人、家族のように接してくれるお客さん。偽善や嘘(うそ)ではない接し方は親切で温かく、感動の連続でした。無 事に大学への進学もでき、満足した日々を送っています。 日韓関係について、「冷え込んだ」とか「史上最悪」とかのフレーズを聞きながらの生活でしたが、私の気持ちは冷 え込むどころか春のように暖かいです。この大切な気持ちをこのまま保っていきたいと思います。 (大阪府 李 建炯 大学生 21歳) (2016. 2. 16 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
病 を得て希望もらった
42歳の時、乳がんで右乳房を全摘し、リンパも取り除く手術を受けた。高2と中1の2人の子どもを抱え、今のように情 報も少なかったので、宣告を受けた時は、本当につらかった。 手術後、右手や右腕がほとんど動かなかった。エプロンも結べず、雑巾もしぼれない。できなくなったことが多すぎて、 悲しく気がめいることも多かった。 だが、夫や周囲にも支えられリハビリに取り組んだ。1㌢ずつ手を伸ばすことを目標にした。すると、1年経つと手が以 前のように動くようになったのだ。 当初私は、命のありがたさを感じるより、手の不便さを克服していくことに精いっぱいだった。1年かかったが、ようや く、乳房と引き換えに与えられた命を大切に生きようと思えるようになった。幸い再発もなく、子どもたちも当時の私の 年を超えた。 57歳で実父の介護が始まり、ヘルパーの資格を取得。父をみとった後に、週半分は訪問ヘルパーとしてバイクで走 り回っている。 病を得て、できないことを悲しむより、できるようになったことを喜ぶように考えが変わった。希望につながり、日々が 充実している。 (京都市 木下 直美 ヘルパー 71歳) (2016. 2. 19 朝日新聞読者寄稿 ひととき欄より) |
基地の騒音 放置していいか
僕の住む神奈川県には、米海軍と海上自衛隊が共同で使用している厚木基地があります。 同じ県内の横須賀基地に空母が来ると、両基地間を行き来する空母艦載機の爆音に悩まされていました。ジェット戦 闘機が上空に飛来すると、テレビの映像が映らなくなるようなことも幾度となくありました。 近年はだいぶ改善されたとはいえ、抜本的な解決には至っていません。今も抗議活動を続けている住民がいます。 基地の騒音問題については「国防のために仕方ない」「基地のある街に越してきた自己責任」などの意見もあります。 僕も国の安全を守る目的で基地があると十分承知しています。しかし、生活に支障が出るほどの騒音を放っておいて いいのでしょうか。多くの人に騒音問題を知って欲しいと思います。 (神奈川県 小林 駿太 中学生 13歳) (2016. 2. 26 朝日新聞読者寄稿 若い世代欄より) |
過ちから何を学ぶかが大切
広島県の中学校3年の男子生徒が自殺した問題で、1年時の他の生徒の万引きが誤って本人のものとされた記録が 改められなかったことが問題のように報道されています。しかし、もっと根本的な問題があるのではないでしょうか。 実際に1年の時に万引きをした生徒が推薦入学を希望したら、担任が推薦はできないとする行為は教育者として正し いでしょうか。 私は小学6年の時に個人商店で万引きをしました。お店の人が後で家に来ました。母が土下座をして謝る姿を見て 「二度とすまい」と思いました。私の場合は表沙汰にならず、学校は介在しませんでした。お店の人に感謝しています。 万引きやいじめなど、子どもは様々なことをしてしまうことがあります。そこから何を学び、どう成長するかが問題で はないでしょうか。 1年時の記録が正されなかったということは、万引きをした生徒と担任が深く関わらず、指導しなかった結果ではあ りませんか。指導を放棄して記録だけ残す。そこに教育的配慮は感じられません。記録だけをもって生徒の将来を 閉ざすなんてもってのほかです。 (岩手県 太田 栄理子 医師 65歳) (2016. 3. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
推薦取り消し 救われた言葉
広島県の中学3年生が間違った非行記録が原因で自殺した事件は、ひとごとに思えません。「学校側のミスであなた の推薦は取り消しになりました」。第1志望の推薦入試が2週間後に迫った時、高校からこう言われました。私の希望の 専攻コースは推薦入試の指定校の枠があると勘違いしたというのです。 校内で推薦をもらうための選考試験を通り、面接の練習などもしながら受験当日に備えていました。それが突然、無 意味になり、一般入試を受験することになったショックは言葉にできません。推薦で次々合格していく級友を見て胃が 痛くなる日々。 しかし、救いがありました。キリスト教系の我が校にいるシスターが私を抱きしめ涙してくださいました。「この試験 は、あなたに耐えられる力があるから神様がお与えになったのだと思います。心を強く持ってね」。この言葉がなけ れば、私も自分を追い込んだかもしれません。 私は第1志望校に合格しました。苦しみ続けた日々には、意味があったと今なら言えます。 広島の中学生は支えてくれる人が校内にいなかったのでしょうか。こんな事件が二度と起きないよう心から願ってい ます。 (愛知県 両角 詩穂 高校生 18歳) (2016. 3. 17 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
奉納土俵入りの白鵬に感謝
大阪市の住吉大社を友人らと散策していた5日、偶然にも大相撲の横綱3人による奉納土俵入りを見た。全く予想も していなかったが住吉大社での土俵入りは今年で4回目という。横綱の姿は壮観で圧倒された。 日本人だ、外国人だとの区別なんてない。厳しい世界に自らを賭けた相撲人が存在するのみだ。日本の神事にのっ とり、3人は春場所成功を祈り、存在感たっぷりの土俵入りを披露。見守る多くの観客が「ヨイショ!」と声援を送った。 終わると、横綱たちが車で帰っていくのを見送る人々の列にまで私は並んだ。目を凝らすと、「安馬」のしこ名の頃か ら応援している日馬富士が車内から手を振っているのが見えた。思わず「日馬富士、頑張れ」と叫んだ。鶴竜にも「頑 張れ」と声をかけた。でも、なぜか白鵬の姿を確認できなかった。 仕方なく路面電車で帰りながら思った。白鵬には何と声を掛けただろう。頑張れではないはずだ。何年も角界の中心 でいてくれる白鵬には、やっぱり「ありがとう」しか浮かばない。史上最多35度の優勝記録以上に、白鵬の重みを感じ た。 (大阪府 坂之上 千代 主婦 64歳) (2016. 3. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
職場のホ・ン・ネ
天下り テレビに昼寝
財団法人で経理を担当する臨時職員です。つとめて5年ほどですが、公務員の天下りが次々とやってきては上司に なります。普段は昼寝したり、テレビをみたり、本を読んだり、パズルで遊んだり。新年はあいさつ回りに費やし、お役 所仕事ぶりにはあきれます。 しかも、私たち臨時職員の給料は全く上がらないのに、同じ時期に入った正規職員の給料は上がり続け、格差は広 がる一方です。そんな彼らは日中はダラダラと仕事して残業代を稼ぎ、出張旅費も使い放題。本当に我慢がなりません。 (長野県 50代女性) (2015. 1. 9 朝日新聞読者寄稿 生活欄より)、 |
男子高校生 女子大生になる
娘の高校の男子同級生が女子大生になりました。10年以上前、テレビで「性同一性障害」を知った時は本当に驚きま した。その後、カミングアウト(公言)する人が増えましたが認められない私がいました。社会的・文化的な性差解消を意 味する「ジェンダーフリー」という考え方を娘から聞き、考えさせられました。 性別、年齢、病気、学歴、国籍などの違いを差別の理由にしてはいけない。違いはよさで立派な個性。そう思えるよう になりました。女子大生とお母さんに会いました。とてもすてきなお嬢さんで、家族も幸せそうで私は納得しました。 同性カップルを結婚に準じた関係と認める条例が東京都渋谷区でできました。どんな人も自分らしさを発揮して生きて いける日本になって欲しいと願います。 (東京都 清水 悦子 主婦 58歳) (2015. 4. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
廃棄食料 重さで規制しては
今年の夏、フィリピンに短期留学した。その時に出会ったストリートチルドレンが忘れられない。おぶったら、とて も軽かった。きっとご飯をしっかり食べていないのだろう。 帰国後、スーパーでアルバイトをして大量の売れ残りを廃棄する作業をした。これをあの子たちに食べてもらえ たらと思い、それがかなわないことに悲しくなった。 廃棄する食料を減らす努力をもっとするべきだと感じる。アルバイト先ではゴミの重さを記録、管理しているが、 一歩進んで廃棄する食べものの重さに規制値を設け、それを超えないように企業に求める法律があっていいので はないか。 今の日本には、貧困に苦しむ人たちに思いやりを示そうとする姿勢が明らかに足りないと考えるからである。 (東京都 岩城 怜佳 大学生 20歳) (2015. 10. 16 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「君」とは国民 君が代を歌う
岐阜大の学長が卒業式などで「君が代」を斉唱しない方針を示したことに関するご投稿「『愛唱歌』に歌われた祖国愛」 を拝読しました。君が代について今の時代に、「この歌詞で国歌と言われても……」とのご意見でした。私は君が代の歌 詞を批判されていると思いました。 君が代は千代に八千代にさざれ石の巌(いわお)となりて苔(こけ)のむすまで 戦後、私は君が代の「君」とはあなたであり、私たち国民のことだと思ってきました。国民の代が、千代に八千代に永 遠に栄えることを願い、たたえたおめでたい歌詞です。そして国民の代は、万世一系の世界に誇るべき天皇制とともに あると私は思います。 君が代は国民のよりどころとしての皇室を敬愛するにふさわしく、美しく荘重な曲も国歌にふさわしいです。オリンピッ クで日本選手が活躍し日章旗が掲揚され、君が代が吹奏されるのを誇りに思わない国民はいないでしょう。 国歌君が代の歌詞は、永遠に変えるべきではないと思います。日本に生まれた私。戦後71年、平和な時代に生きて いることに感謝し、何かの式典では声高らかに君が代を歌いたいと思います。 (徳島県 鴻野 福恵 主婦 94歳) (2016. 3. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
小学生の安全守る高速バス
松山の家族と離れ、単身赴任中です。週末に帰省し、日曜夜に赴任先の高知へ戻ります。時々高速バスも利用して おり、先日もJR松山駅前から乗車しました。珍しく女性運転手さんで、アナウンスも運転もとても丁寧で安心できまし た。 松山から一緒に乗った小学生の姉妹2人は夜9時前、雨が降る高知市内の真っ暗な無人バス停で降りました。お迎え に誰も来ていない様子。2人に続いて車外に出た運転手さんは戻ってきて「置いていくわけにいきません。お迎えが来る まで少しバスを停車させます。ご了解願います」とアナウンス。私たち十数人の乗客に異論はありません。時間に制約 がある中で勇気ある運転手さんの決断。少ししてご両親が迎えに来られ、バスは定刻よりわずかに遅れただけで高知 駅到着。 最近、高速バスは事故が多く、運行の安全が注目されています。しかし下車後も、最後まで乗客の安全を守る責任感 と細かな対応に感心しました。 (高知県 石崎 達治 会社員 53歳) (2016. 4. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
高校無償化 学ぶ権利なのに
私は日本で生まれ育った、在日コリアン4世です。北朝鮮も韓国も同じ言葉を使い、同じ文化を持ち、同じ血筋 でつながっているので、私はあえて自分を「在日コリアン」と言います。 私たち在日コリアンが通う朝鮮学校は高校無償化の対象外です。私たちの学ぶ権利が認められていないよう に思います。私の夢は看護師ですが、朝鮮高級学校を卒業しても高卒とは認められず、日本の大学に進学した いなら、高校卒業程度認定試験に合格しなければなりません。 私は歴史の授業が大好きです。過去の過ちから教訓を得ることができ、過去があって現在があるという流れを 認識できます。私は正しい歴史を知り、日韓・日朝がお互い尊重しあえる新しい時代を切り開く懸け橋となるため にがんばります。私たちに学ぶ権利を与えて下さい。 (大阪府 金 美沙 朝鮮高級学校生 16歳) (2016. 4. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
地震で分かった水の大切さ
4月16日午前1時25分、眠っていた私は、激しい揺れに襲われ、身動きが取れなかった。テレビで震度7の地震が 起きたと知った。その後、水が出るか確認すると、出なかった。トイレの水や飲み水、お風呂のことを考え、不安でたま らなかった。 数日後、支援物資が届くようになり、水道も復旧した。私の不安は少しずつ和らいだ。本当に感謝の気持ちでいっぱ いだ。 一方、地震は農林水産業にも大きな被害を与えた。水田の中には、水路が壊れて水を引けなくなった所が少なくな い。いまだに田植えができるのかどうか懸念を抱いていらっしゃる農家の方も多いと聞く。 地震を体験し、水を大切にしていかなければならないと強く思った。地球の生き物は自然によって生かされているの だから。 (熊本県 宮本 将利 高校生 17歳) (2016. 5. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
女好きでも好きです 父・敦士
私の父の名前は敦士(あつし)です。きれいな人を思わず目で追いかけてしまうような、女好きです。 敦士は小6の時、威張っていたので男友達に仲間外れにされましたが、女友達が助けてくれたと母に聞きまし た。それから女の人が大好きなのでしょう。 敦士は50歳ながら、毎日約4㌔走り、週1で近所の山に登っています。夏はそこでクワガタをとり、近所の子 にあげています。その時ハチに何度も刺されていますが、それでもやめないめげない心を持っています。 敦士は動物に好かれます。犬は機嫌が悪くても寝ていても、しっぽをふって近づきます。 敦士は子供好きで、犬にも好かれ、優しいし、冒険心を忘れていません。女好きで、ワガママで、存在自体がめ んどくさい時もあるけど、何より家族を大切にする所が私は好きです。 (兵庫県 藤後 名央(ななか) 高校生 16歳) (2016. 5. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
生き物に優しい河川工事を
私の故郷で水害対策の河川改修工事が進められている。これ自体は幸せなことと感謝している。だが工事の結果、 かつては石積みや土手だった川岸はコンクリートで護岸され、動物のすみかが失われてしまった。 かつてこの川には、岸に営巣するカワセミがいた。国の特別天然記念物のオオサンショウウオも多く、この地域で 「ぐろ」と呼んでいる川岸の石のすき間の穴に潜って生きていた。コイ、フナ、モロコ、ハヤ、ドジョウが泳ぎ、水も飲め るほど清かった。 それが、私の見る限り、工事によるひどい水の汚濁もあり、死の川に近い状況になってしまった。なんとか動物と人 間が共存できる、もっと環境に優しい河川整備はできないものだろうか。 (京都府 奥村 覚 農業 90歳) (2016. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
優しい風
風の強い午後だった。赤信号で停車中の私の視界に黄色い物が飛び込んできた。ふわっと舞い上がり横断 歩道に落ちたそれは、中に生き物がいるかのようにツツーッと動き、中央あたりで止まった。 そばの柱の陰に女の子がいた。ピカピカのランドセル。どうやら1年生のようだ。黄色い物は彼女の学童帽 らしい。彼女が取りに行こうとしたその時、信号が変わった。 どうしよう、どうしよう。帽子を取りに行かなくっちゃ。車にひかれてぺちゃんこになる。でも横断歩道は赤信 号だし……。彼女の戸惑いが手に取るようだった。「ここは私が」とシートベルトに手をかけたその時、前の車 の助手席から若者が飛び出した。帽子を取って彼女に手渡す。そして、後続車にペコリと頭を下げた。 若者の爽やかな行動に私は小さく拍手を送った。新入社員かな? まだ背広姿が慣れてないようだった。 片側3車線の通行量の多い道で、後続車が何台もいたけれど、早く早くとクラクションを鳴らすことなく待って いた。新しいスタートを踏み出した人たちを見かけるこの季節、街には優しい風が吹いている。 (松山市 園田 美佐子 主婦 67歳) (2016. 5. 30 朝日新聞読者寄稿 生活・ひととき欄より) |
広島の祈り 子らに伝えたい
オバマ米大統領の広島訪問という歴史的瞬間を目の当りにできたことをとても幸せに思います。大統領が被 爆者と抱擁しあった瞬間。互いの国の違いや加害者・被害者という立場を超えていました。平和を希求する一人 の人として、ともに命の尊さを訴え、広島という地で思いを分かち合う人類の大きな一歩でした。 「生きている間にこんな日が来るなんて」と語った被爆者の感慨は想像を絶するものです。原爆投下は一瞬で も、その苦しみは、はかり知れず、痛みを癒やし許しあうことは、決して簡単なことではありません。 戦争の経験のない私にはそのつらさを本当の意味で分かってあげることはできません。でもすでに大人である 私たちには、次世代に対する責任があります。人として過ちを認め、繰り返さない。広島の祈りは、私たちの日々 の暮らしの中の選択に通ずるものです。 戦争経験者が高齢化してゆく中で、何を受け継ぎ、どんなふうに子どもたちに語りつないでいくのか。どんな 社会を残してあげられるのか。生まれたばかりの娘の顔を見ながら、身の引き締まる思いがしました。 (三重県 河野 明日香 主婦 28歳) (2016. 6. 8 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
タトゥーある息子 温泉満喫
スウェーデンからの留学生の投稿「刺青(いれずみ) なぜ温泉にはいれないの」(16日)を読んだ。 息子は豪州の大学で油絵を学び、卒業後も7年間、現地で絵を描いて過ごした。その頃、大きな鳥がはば たく絵柄のタトゥー(刺青)を背中に入れた。私と妻は仰天した。 次に、息子はドイツへ。もう15年になり、ドイツ人女性と結婚し、8歳の男の子がいる。待望の子が生まれ たハンブルクの病院の場所を表す緯度、経度の数字のタトゥーを、18文字で二の腕に入れた。息子から説 明を聞き、大切な思い出だからと理解した。 去年5月、息子家族が来日し、皆で温泉ホテルに滞在した。刺青がある人の入浴を断る注意書きがあり、 私はホテル側へありのままを話し、息子が入れないか聞いてみた。すると、「どうぞお入りください」との返 事。露天風呂で一緒に楽しく過ごせた。 私は定年後、豪州の大学に英語を学ぶため4年間留学した。大学の学園祭の標語は「多様性の中の調 和」だった。日本社会も多様性を重んじるようになってほしい。そうなれば、観光業にもますます寄与すると 思う。 (京都府 神谷 正 無職 78歳) (2016. 6. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
沖縄で謝罪した元米軍大佐
元米軍大佐で今は平和活動をしている友人女性、アン・ライトから沖縄で行動するので来ない?とメール が届き、6月初旬、行ってみた。わが友は、元米海兵隊員で軍属の男による女性殺害・強姦(ごうかん)致死 容疑事件に深い痛みを感じている。追悼・抗議集会や記者会見に出て、元米軍幹部として謝罪の言葉を 口にした。 アンや今回一緒に行動した退役米軍人は、軍隊の構造的暴力について語った。「私たちは幼い時から 人を傷つけてはいけないと教えられてきた。しかし軍隊ではそうではない」と。 敵に対し人間的なものを感じていたら、勝つことは出来ないかもしれない。軍隊では、人間性を排除した 暴力が兵士に教育されるそうだ。だから、兵士には暴力で他人をコントロールする習性が備わるという。 アンの話では、そういう習性はまず家族に、そして軍隊内の他人に、ついには軍隊外の人々に向かうそ うだ。だから、あのような犯罪をなくすには基地撤去しかないと彼女は言う。 やはり、武力で平和は築けないのだ。暴力の連鎖を断ち切って、幸せな世界を築きたいと切に思う。 (大阪府 大口 彰子 無職 72歳) (2016. 6. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
看護師さんの優しさ
先日、耳鼻科で吸引をしてもらうためにベッドに横になって処置を待っていた。いつも忙しそうにあちこ ちと跳びはねている看護師さんとおじいさんの会話が聞こえてきた。 「耳が遠いということは本当に難儀なことよのう」と少し寂しげに言うおじいさん。 すかさず、看護師さんは「ううん、違うのよ。さっきは私が格好をつけてお上品な声で言ったからよ。今 のこの声だったらちゃんと聞こえてるよね」と明るく言葉を返していた。 カーテンを隔てたところから聞くともなく聞こえてきたこの会話に私の心はほんわかと温かになった。 病院通いの多くなった高齢者たちにとって、先生や看護師さん、またはそこのスタッフさんたちとの会話 は、ちょっとした一言で励まされたり傷ついたりするものである。私自身も、整形外科の看護師さんに「帰 りの支度はゆっくりでいいですよ」と声をかけてもらったことがあったのを思い出した。 おじいさんに対して、看護師さんが返された言葉は、患者さんの気持ちに寄り添うという本当の優しさで はないか。同じ患者として、うれしく思った。 (広島県 富山 昌代 主婦 71歳) (2016. 7. 7 朝日新聞読者寄稿 生活・ひととき欄より) |
目標示して 食品ロス削減 を
近所に引っ越してきたアメリカ人の家族と一緒にレストランで食事をしたときのこと。子どもが食事を残したとき、母 親が私に「なぜ日本にはドギーバッグ(残した食品を持ち帰る容器)がないの?」と言って、不思議がっておられた。ア メリカでは食べ残した食品は持ち帰って食べるのだという。 農林水産省の推計によると、日本の食品廃棄物は年間約1700万㌧に上り、まだ食べられるにもかかわらず賞味期 限が切れたことなどによって年間600万㌧を超える食品ロスが発生しているという。世界中で飢餓に苦しむ人々に国連 の世界食糧計画(WFP)が援助する食品の量をはるかに上回る。日本人はそのことを知っておくべきだろう。 政府は食品会社と協力して削減に挑んでいるが、あまり成果は上がっていない。消費者に対する意識向上はもちろ んのこと、いつまでにどれだけ食品ロスを減らすのかという削減目標を示すべきだ。 また、未利用食品を生活困窮者や施設に届けるフードバンク事業を充実させ、食品ロスを減らしていきたい。 (大阪府 大森 宏之 中学校職員 57歳) (2016. 6. 25 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
バスで泣き始めた赤ちゃん 運転手の言葉、ネットで拡散
バスの車内で泣き始めた乳児をあやせず困った母親に、運転手が車内アナウンスで語りかけた言葉が ネット上で話題になっている。 8月31日午後、15人ほどが乗った横浜市営の路線バスで母親の腕に抱かれた赤ちゃんがぐずり始め た。母親と友人の女性が2人であやしていたが、赤ちゃんは手足をばたつかせ泣き声は大きくなるばかり。 友人は途中で下車し、母親は立ち上がりあの手この手であやすも泣きやむ気配はなかった。 10分ほど経った時、車内アナウンスが流れた。 「お母さん、大丈夫ですよ。赤ちゃんですから気になさらないでください。きっと眠いか、おなかすいてい るか、おむつが気持ち悪いか、暑いかといったところでしょうか」 明るい口調でミラー越しに語りかけたのは、鈴木健児さん(46)。乗車歴20年のベテラン運転手だ。 「迷惑をかけないよう何とかしたい、というお母さんの焦りをひしひしと感じた。今後バスや電車を使う のをためらうんじゃないかと心配になって」と振り返る。このやりとりがネットに投稿されるとツイッターな どで拡散され、「感動。まさにプロ」「運転手さん素晴らしい」などの投稿が相次いだ。 ( 2016. 9. 4 朝日新聞デジタル より ) |
帰還者増 には 住環境整備 を
東京電力福島第一原発事故で、福島県楢葉町に出された避難指示が解除されて1年あまり。町で新たに不 動産業を始めるため、昨冬に取り壊した自宅敷地内に事務所を作り、町外の避難先から通っています。 日中だけ戻るようになって、変わったなと思うことがたくさんあります。 まず、人に会いません。帰ってきた住民が少ないので、昔のように近所の人と世間話をすることもありませ ん。 復興のためのトラックやバス、作業車も多く、昼時のコンビニは、町民の駐車場所がありません。 イノシシやアライグマなどの野生動物が、毎日のように現れます。襲われてけがをした知人もいます。立ち 去るのをじっと待つしかありません。 家の周りの県道や町道は背丈を超えるほどの草に覆われているためカーブの見通しが悪く、事故の原因 になりかねません。住民が刈れる量ではありません。 国や自治体は、住民の帰還を進めようとするなら、新しい施設や道路を造ることより、住民が住む住居の 周りの環境を整備する方が先ではないでしょうか。 (福島県 新妻 宏明 会社役員 57歳) ( 2016. 9. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より ) |
歩道で見た 金髪青年の親切
先日、原付バイクに乗って交差点で信号待ちをしていた時の出来事です。 歩道に、電動車いすに乗った高齢の女性と数人の老若男女がいました。信号が青になると左右から人がいっせい に行き交い、電動車いすの女性は前をふさがれて動けなくなってしまいました。 すると、色黒で金髪、体の大きい、一見怖そうな20くらいの青年がその女性に「先にどうぞ」と笑顔で道をゆずった のです。女性はその青年のおかげで、無事に横断歩道を渡ることができました。最近、残虐な事件が多い中で、 親 切なこの青年を見ていると、うれしくて涙が出そうになりました。 やはり、見た目ではないですね。この青年のように優しくて思いやりのある老若男女が増えたら良いなと思いました。 (兵庫県 小田 惠子 アルバイト 28歳) ( 2016. 10. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より ) |
禁止 よりも自己判断させて
学校の教育は、危険だからといって禁止することが多すぎると思う。禁止せずに良いこととだめなことを教えるのが 学校ではないのか、というのが僕の意見だ。 例えば、廊下で上級生とぶつかると危ないから1年生は用事のとき以外は2、3階に上がってはいけないというのは おかしいと思う。ぶつからないように歩こう、と教えるべきだ。 禁止するのも一つの方法だけど、そんな規則にばかり縛られていたら限度を自分で考えてその中で思いっきり、か つ自由に過ごす方法を身につけられない。「危険だからこれはだめだ」と自己判断ができるように教えるのも学校だ と思う。 良いこととだめなことを教えた上で規則を減らせば、子供はより伸び伸びと勉強し、楽しく過ごせるのではないだろ うか。 (大阪府 石川 俊介 小学生 12歳) ( 2016. 10. 21 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より ) |
低予算で散骨できる場 望む
葬儀のための積み立てが満期になったので、葬儀社に費用を見積もってもらった。「葬式なし」の場合でも、 遺体の運搬と火葬料などに消費税が加わり、30万円近くかかるとのことだった。 私は墓に入る気などさらさらない。だから問題は火葬後の遺骨の処理だ。樹木葬や海洋葬、宇宙葬など散 骨に関する記事を読んだ後、改めて葬儀社に問い合わせた。すると散骨できる場所は許可制で数も限られ、 最低でも数万円はかかるということだった。 「死んだら大地に帰りたい」。そんなささやかな望みをかなえるのも大変な世の中になったものだ。 もちろん、遺骨をどこへでもまいてよいとは思わない。私有地や海水浴場などはあり得ない。しかし放射性 廃棄物ではあるまいし、焼いた骨を野山にまくことが、いかなる害をもたらすというのか。 今はお金さえ出せば樹木葬の形で許可を得られる霊園もある。しかしもっと低予算で、例えば国有林の一 部を散骨可能な場所に整備するのはできない相談だろうか。関係者に一考をお願いしたい。 (福岡県 神崎 春枝 無職 78歳) ( 2016. 9. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より ) |
ふれあい学級が 生きがいに
私が所属する地域の長寿会と小学校が連携し、児童との「ふれあい学級」を毎年実施している。この取り組みは 教育だけでなく我々の生きがいづくりにも役立っている。今年は10月4日に開かれた。 私たちが子どもの頃に楽しんだ遊びを実演しながら、約2時間、子どもたちにその面白さを伝えた。今回は「囲碁」 「竹とんぼ」「紙鉄砲」「紙飛行機」「おはじき」「お手玉」「あやとり」の7種。子どもたちは7班に分かれ、それぞれ の遊び担当の長寿会メンバーと先生たちが加わった。私は竹とんぼ担当。みんないきいきと本当に楽しそうだった。 先日、子どもたちから丁寧なお礼状と写真が届いた。心のこもった言葉がつづられ、感謝の気持ちが十分に伝わ り、新たな生きがいを感じた。子どもは宝だ。今後も地域住民が教育の当事者となり、子どもたちとふれあっていき たい。 (富山県 萩原 義隆 農業 74歳) ( 2016. 11. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より ) |
男のひといき
食事 変えただけで
昨年の人間ドックで、コレステロール値や尿酸値などの項目で「イエローカード」が出た。体重も前年より3㌔ 増えた。再診で医師から「薬を処方するまでではないが、運動をし、酒はやめるように」と言われた。 酒をやめるのは嫌だが、運動ならできると思い、休日や長期休暇中の空き時間を使ってウォーキングをや った。だが週に数回では、全く効果はなかった。 今年4月、元同僚が転勤してきて再び一緒に働くことになり、驚いた。がっちりタイプだった彼がスリムにな っていたのだ。「どうやって?」と問うと「食生活を変えた」の一言。それしかやっていないという。 すぐに、飲食量をコントロールすることにした。昼はご飯を少なめにし、コンビニで買うおにぎりは三つだっ たのを二つに。ラーメンは大盛りをやめた。夕飯の際の発泡酒はできるだけ2缶にとどめ、それ以上はノン アルコールビールに。もったいないと思ってすべて食べるようにしていたが、それもやめた。 今年8月の人間ドック。驚いたことに全ての数値は標準値になり、体重も2・5㌔減となった。これほど体のこ とで変化があったのは初めてだ。同僚の実践伝授に感謝したい。 (静岡県牧之原市 池ケ谷 八州志 高校教員 59歳) (2016. 10. 309 朝日新聞読者寄稿 扉欄より ) |
南スーダンは戦場 命が心配
南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に従事する陸上自衛隊に「駆けつけ警護」の新任務を与える政府方針が固 まり、隊員の武器使用が現実となる。かの地の内戦について日本政府は「戦闘」ではなく「衝突」と言うが無理がある。 紛争当事者間の停戦合意などを条件とする「PKO参加5原則」も維持されていると言うが政府軍と反政府勢力が武器 を使って殺し合い、破壊活動をしている。これを戦争と言わずに何と言う。隊員の命が心配だ。 過去、日本政府は言葉のごまかしで国民を欺いてきた。第2次大戦中は敗れて逃げたら「転進」、撃墜されたら「未 帰還機」。最近では武器を「防衛装備品」。武器の輸出を「移転」と表現。次は「戦場」へ行くのを、「衝突」現場へ 行くというのか。戦争放棄、戦力不保持の憲法はひと言も変わらぬのに、これでは戦争をする「普通の国」と同じで はないか。 兄は1944(昭和19)年2月に軍隊にとられ、12月に死んだ。わずか10カ月。あんな悲しみは絶対に平和日本の国民に 味わわせてはならない。いつも犠牲になるのは弱い者や貧乏人。号令をかけている者は安全地帯にいるのだ。 (福井県 吉田 昭 農業 83歳) (2016. 11. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
高齢者に謝罪されて 涙
勤務先の施設で、入所中のおばあさんが目に涙を浮かべて話しました。「私たちの年金のために、あなたたちに迷 惑をかけてごめんね」。私自身、年金制度を詳しく知りませんが、少子高齢化で若者の負担が増えることは聞いてい ました。 とはいえ、この方が悪いわけでは決してないのに、ショックでした。利用者には、トイレに行きたくても「職員が忙し そうでお願いするのは申し訳ない」とためらう方もいると聞き、涙が出ました。 高齢者の皆さんは、敗戦後の日本を経済大国に押し上げてくれた方々です。なのに今、年下の人間に涙ながらに 謝罪したり遠慮されたりしています。何かが間違っていると思います。 (東京都 高山 圭吾 介護スタッフ 32歳) (2016. 12. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
女性患者へ配慮 徹底したい
「同性に頼みたい介助もある」 (11月19日)、「男性看護師から座薬 嫌」 (同28日) と、女性患者さんが男性看 護師について書かれたご投稿を拝読しました。 私は今、大学院の看護学研究科で学ぶと同時に、大学生に看護技術の基礎を教えています。そのような立場か ら、男性看護師へ嫌悪感を抱く女性患者さんにひと言ご説明したいと思いました。 私たち看護師は、どのような看護の時も必ず患者さんに説明し、同意を得てから行うようにしています。学生に対 してもそれは必須であると教育しています。 私は男性看護師として臨床現場で働く際、女性患者さんが羞恥(しゅうち)心を持たれるような、例えば尿道カテーテ ルの挿入や排泄(はいせつ)介助などの際には、女性看護師に交代を頼むなど特別な注意をして対応していました。 投稿者の女性たちには十分な説明がなく、同意も得なかったと推察されます。大変申し訳ない気持です。 男性看護師は増加傾向にあります。女性患者さんに対して私自身、気を引き締め、配慮する必要を感じます。 (岡山県 原田 雅義 大学院生 31歳) (2016. 12. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
お姉ちゃんに感心
この秋、夫と私は新幹線で横浜に住む息子夫婦のところへ遊びに行きました。14歳と2歳の孫娘に久しぶ りに会い、上の子が妹の世話をしっかりしている様子に感心しました。 帰りの新幹線でのことです。 車内は混み合いザワザワして落ち着かず、私はトイレに行きました。トイレは使用中で、じっと待つことにしま した。すると中から女の子の声がしているのに気がつきました。 「そうそう、それでいいのよ」「そのままじっとしていてね」「あら、上手にパンツはけるようになったのね」 ガサゴソと音が聞こえ、ドアが開きました。小学3、4年生と3歳くらいの女の子2人が出てきました。年上の女 の子は私の顔を見ると、「時間がかかってすみません」とペコリと頭を下げたのです。その瞬間、お姉ちゃんが妹 にトイレをさせていたのだとわかりました。 私は「いいえ。お姉ちゃん、えらいね。妹さんの面倒を見て」とほめました。女の子はニコリと笑って慌てて妹に 手を洗わせ、自分も手を洗い、客室に戻っていきました。 あまりにいい光景で、そっと胸にしまっておきたい一方、誰かに伝えたくなりました。 (大阪府河内長野市 松浦 郁子 主婦 62歳) (2016. 12. 24 朝日新聞読者寄稿 ひととき 生活欄より) |
食べ物 廃棄 自給率低いのに
私はベトナムから来て、2年ほど日本に住んでいます。コンビニでバイトし始めた時、とてもびっくりしたこ とがありました。毎日、お弁当や野菜の廃棄量が本当に多いのです。 1回に廃棄するのが約2千円分。それが1日4回ほどあります。毎日、大量の食べ物を廃棄しているのです。 学校の授業で日本の食料自給率(カロリーベース)を知りました。39%です。とても低く、他の国に助けてもら っているのに食べ物を無駄にするなんて信じられません。日本人は自給率や廃棄量を知らず、食べ物を無駄 にしているとは感じていないのではないでしょうか。 日本は他の国に助けてもらえなかったらどうなるのでしょう。困りますよね。日本人は食べ物の自給率や廃 棄量を知って、一人ひとりが食べ物を無駄にしない意識を上げたほうがいいと思います。 (大阪府 ルオン・タン・トゥン 日本語学校生 21歳) (2016. 12. 27 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
地位協定見直し 独 伊 参考に
日米両政府は、日米地位協定で米側に優先的に裁判権を認めている米軍属の範囲を縮小することで実質合意した。 日本側の裁判権の対象が広がる見通しで、一定の前進とは言えよう。 だが、オスプレイ事故で、日本が調査に手出しできないことからも分かるように、地位協定をめぐる課題は山積してい る。 同じ敗戦国のドイツやイタリアにも、米軍を柱とするNATO軍との同様の協定などがある。だが沖縄県の調査や報道に よれば、内情はかなり違う。 日本では、飛行禁止区域設定が米軍機には適用されない。しかし、ドイツはNATO軍の演習にも国内法を適用。イタリ アでも米軍機の事故後に、低空飛行の規制が進んだという。 また日米地位協定では、環境面の規制が弱いとして、沖縄県はかねて規制強化を要望している。一方、ドイツでは NATO軍側に施設の環境アセスメントの義務があり、汚染があれば回復措置を取るといった規制を定めている。 政府は今年こそドイツやイタリアにならい、地位協定の抜本的な見直しに臨むべきだ。 (神奈川県 高村 広昭 無職 74歳) (2017. 1. 6 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
沖縄へ修学旅行 戦争 感じた
全てが輝いていて、感動を与えてくれた昨年12月の沖縄への修学旅行。感じたこと全てが一生の宝物として、心の アルバムに刻まれた。 沖縄には多くの魅力がある。透き通った海、様々な特産品や人々の温かさ、民泊でお世話になったお宅ではウチナ ーグチ(沖縄方言)も聞いた。 時前学習では第2次大戦における沖縄戦のことも学んだ。その悲惨さは、まるで遠い国の出来事のように思えた。で も沖縄県平和祈念資料館(糸満市)をみて、実際に日本であったことなんだと実感できた。嘉手納基地の近くでは初め て戦闘機の爆音を聞き、その大きさに驚いた。 新聞やニュースでは沖縄の米軍基地問題が報道されるが、本土の人たちにとっては、沖縄はまだ遠い国のようなイ メージがあるのではないだろうか。私は実際に沖縄の地を踏んでようやく沖縄を身近に感じた。沖縄の基地問題は日 本の基地問題なのだと、本土の人の意識を変えていかないといけないと思う。 沖縄の自然や文化などの誇りと、戦争の爪痕を感じた3日間だった。 (兵庫県 岡田 朋恵 高校生 17歳) (2017. 1. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「農」の激動 肌で感じた歳月
田舎暮らしの私にとって、今日までを顧みると「農」の激動を肌で感じる歳月であった。 子供の頃、山には桑畑が広がっていた。桑を食(は)む蚕の繭が絹糸となり、現金収入となった。養蚕業が下火になる と桑の根は掘り起こされ、畑は二十世紀梨の棚で覆われた。やがて都市や新興工業地帯に労働力を奪われ、零細農 家は兼業か出稼ぎかという選択を迫られた。過酷な労働、価格の低迷。食っていけないと感じた農家が畑を諦めると 今度はスギやヒノキの植林が進行し、山の姿は変わった。 効率的土地利用のため耕地整理が進められ、コメは過剰供給とかで減反が始まった。さて次は何を栽培すればいい のか、誰にもわからない。老齢化した農家は草原と化した田畑を抱え、経営革新の知恵も労働力もなく、わずかな年金 で生活を支える。 貿易の更なる自由化も予想される中、本当に農は産業として自立していけるのだろうか。経済的な貢献は微少だとし ても、地域社会や国土保全に寄与してきた部分はどう評価されるのだろうか。そして未来永劫(えいごう)に自然を守り育ん でゆくのは……。 農における「百年の計」は、経済面だけでは成り立たない。環境維持や地方文化など多様な面から模索すべきである。 それが国内産業、ひいては地域社会のためにも必要なことだと思う。 (鳥取県 上本 文範 農業 67歳) (2017. 1. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
山の獣たちから重大な警告
山村が直面している獣害は、都会の人にとっては想像もできないことかもしれない。私たちの山間の集落ではイノシ シ、ニホンジカ、サルの出没で作物に食害が多く、年寄りの生きがいの一つになっている野菜づくりもままならない。先 日も集落の年寄りが総出で、田畑を取り囲む電気柵の補強作業を行った。野生動物との共生が望ましいのだろうが、 今では獣に憎しみや怒りさえ覚えるようになった。 だが、作業をしながら考えた。獣の立場になってみるとどうだろう。獣たちを山から追い出したのは誰だと問われてい るように思える。私たちに生態系の異常を知らせる重大な警告を突きつけているのではないか。 十分手入れされていないため地面に日光が届かないスギなどの人工林は、動植物が生息するところではなくなってい る。しかも大雨ごとに表土が流されて災害の元にもなっている。伐採期を迎えても放置されている人工林は、抜本的な 対策として元の落葉広葉樹林などに戻すべきではないだろうか。「このままではいけない」と山の獣たちが教えてくれて いる。 (滋賀県 江竜 喜信 無職 72歳) (2017. 1. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
死刑廃止 犯罪と向き合おう
日本弁護士連合会は、2020年までの死刑制度廃止の提案を盛り込んだ宣言を採択した。死刑制度は命が関わるだ けに様々な論点や意見があるが、僕は「死刑廃絶」を訴えたい。 犯人が悪い。誰しも当たり前のように考えることだろう。しかし、「社会も悪い」のではないか。犯罪が起きた時、背景 には社会の問題がある。犯人を悪者だと言うだけの社会でよいのか。そう思わない。 犯罪の背景にある社会のひずみと向き合い、二度と同じことが起きないように考える責任が僕たちにはあるのではな いか。加害者と社会が、市民と市民が対話することで犯罪の背景を言語化し、共有し、より良き社会に変えていくべき である。 死刑は命をもって罪を償うのだから、究極の刑だ。しかし、それは加害者の声を消すことでもある。社会との対話の可 能性を絶ち、永遠に真実を分からなくする恐れがある。社会が犯罪と向き合う時間を奪うという理由で、僕は死刑制度 に反対する。 (北海道 太田 哲平 大学生 23歳) (2016. 11. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) 犯罪の抑止力にはならない 私も死刑廃止のご意見に大賛成です。被害者の遺族が何より求めているのは真実解明です。しかし、ずさんな捜査 で真実がゆがめられ、再審請求で死刑判決が覆った例が幾つもあります。冤罪(えんざい)が後を絶たない現状のまま、 「二次的殺人」が起きるのは許されません。 冤罪(えんざい)の可能性を限りなくゼロにするために、取調べ可視化の対象を拡大することなどに加え、加害者がなぜ 犯行に及んだか、真実を徹底追及していく努力が欠かせません。 死刑は犯罪の抑止力となるという考えにも、私は疑問を拭えません。「死刑が怖いからやめておこう」と考えて、犯行 を自制する人がいるでしょうか。 投稿された方が述べられたように、犯罪の背景にある社会のひずみの問題に私たち市民が向き合い、犯罪防止に向 けた議論を発展させるべきだと考えます。 (大阪府 天野 佑紀 大学生 21歳) (2016. 11. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
瀬戸内の島に見る 地方衰退
香川県丸亀市の本島(ほんじま)を訪ねた。中近世に水軍や海運で栄えた塩飽(しわく)島の拠点。島の政務を担った江戸 時代の塩飽勤番所跡もある観光地だ。 往事をしのべる白壁の町には約70軒の立派な家々が立ち、一帯は国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ば れている。ただ、地元の人によると、人が住んでいる家はごく一部という。驚いた。 ほかにも、朽ちた廃屋が並んでいた。豪邸の庭に雑草が背丈を超えて生えている。見たことのない光景だった。島 の人口は50年ほど前は約2千人だったが、現在は300人台という。さらに減少しかねないと思うと、島の未来が不安に なった。 こうした人口減や廃村は日本中で続いている。2040年までに、20~39歳の女性の数が5割以下に減ってしまう「消 滅可能性都市」とされる市区町村は、全国で約900と全体の半数を占める。そうした地方衰退の一端を島で実感した。 華やかな五輪も、東京が栄えるのもいい。しかし、その前に、政治は消滅しそうな集落に目を向けるべきではないか。 人住まぬ古き町並み誰守る道路真ん中猫が一匹 (兵庫県 山田 國雄 無職 79歳) (2017. 1. 31 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
使用済み核燃料へ課税 疑問
原発から出る使用済み核燃料に対して、立地自治体が独自の課税を強めているという(4日朝刊)。税収不足や再稼 動がなかなか進まないことによる交付金減などの穴埋めの意味合いが強いようだ。 しかし、この発想には疑問がある。使用済み核燃料が存在することへの安全対策など、用途を限定した目的税なら まだ理解出来る。 しかし、実際には「一般財源だけでは立ちゆかない。町民生活を支える一つに、使用済み核燃料税も使えれば」と いった自治体が多いからだ。 自治体の課税に電力会社が従うのは、電気料金に転嫁して回収すれば済むからだ。最終的には、電気料金を払う 国民の負担になるということだ。これでは、国民への「課税」そのものではないか。 最終的にこの税金を負担する国民の一人として、とても納得できない。 原発は打ち出の小づちではない。立地自治体の厳しい財政事情は理解できるが、原発依存の発想を転換し、利権 構造のしがらみから抜け出すことを考えることも必要ではないか。 (茨城県 細川 環 会社員 48歳) (2016. 4. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
干拓止めた投稿の力
声欄(註・朝日新聞)には、共感し勇気をもらっています。約20年前、私も投稿の力が偉大なことを体験しました。 島根・鳥取両県にまたがる汽水湖・中海。その約1700㌶を干拓し、大根島を陸続きにして農業を、と1995年12月、 島根県知事が宣言しました。 当然、反対運動が起きました。自然破壊の最たるものと、女性約20人が「救おう! 中海」を合言葉に干拓反対の市民 団体「ゆりかもめの会」を結成し、私が事務局長に。朝日新聞島根版の投稿欄「ふれあいトーク」で干拓の非を何度も訴 えました。呼応するように、多くの方々が声欄に干拓中止の悲願を寄せて下さいました。 新聞に干拓反対の意見広告を載せようと呼びかけると、約1万3千人もの賛同者が。結果、97年から8回、全国紙や地 方紙に掲載しました。そして2000年、干拓中止という快挙に至ったのです。 大根島も今は日本一のボタン産地に。でも島をつなぐ森山と大海崎両堤防は古来の潮流を変え、特産だったサルボ ウ貝(赤貝)は激減。食材は地域活性の源。漁協などが稚貝の育成と養殖に力を入れていますが、今こそ官民協力し、 赤貝の育つ中海に戻しましょう。 (島根県 山根 愛子 主婦 84歳) (2017. 2. 25 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
パニック障害10年 支援感謝
私は、精神神経科にかかって10年になるパニック障害の患者です。 最初の発作は勤務先で起きました。休憩時間が終了する直前に突然、過呼吸のような発作が起き、救急外来へ。あ の時は自分の症状が精神神経科の領域だとは思いもよらず、ただの仕事疲れだと思っていました。それが、こんなこと になるなんて…。 仕事はやめることになり、その後も息苦しさ、冷や汗、震えといった突然の発作に悩まされ続け、何度も救急外来のお 世話になりました。発作が治まらずしんどくて薬を飲み過ぎてしまったことも。 もう二度と職場復帰は出来ない、ずっとこんな状態のままだろうなと、かなり落ち込んだ時期もありました。 しかし、今はそんなことは思いません。発症当初から通院中のクリニックに併設されたデイケアに通い続け、最近よ うやく体調が安定してきました。デイケアの就労支援で、仕事復帰に向けた実習を始め、少しずつですが自分に自信 が持てるようになりました。 支えてくれる家族、デイケアのスタッフさんたちに本当に感謝しています。 (島根県 伊藤 郁子 主婦 40歳) (2017. 3. 16 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
国有地売却側も証人喚問を
国有地が9割近く値引きされて森友学園(大阪市)に売却された問題で、学園の籠池泰典理事長の証人喚問が23日に 衆参両院の予算委員会で開かれました。国民の財産の不自然な売却について、少しでもその原因や経緯が明らかにな ってほしいと祈っております。 しかしながら、事実解明には一方の当事者に事情を聴くだけでは不十分だと思います。たとえ森友学園が格安で土地 を売ってほしいと政治家に働きかけたとしても、売る側の財務省の責任者が承知し、書類を作り、決済しないことには実 現しません。また、国土交通省大阪航空局が、土中のごみ撤去費用を相場よりはるかに高い約8億円と見積もっていま すが、これにも担当者がいるはずです。 売却にいたる事情についてよくご存じのはずの当時の近畿財務局長や幹部、大阪航空局の担当者ら行政側からも話 を聴くべきでしょう。国会が本気で真相を解明しようとしているのなら、証人喚問するべきだと私は考えます。 国有地の格安払い下げ問題で、まけてもらった側だけの証人喚問で、全体像が明らかになるとはとても思えません。 与野党議員の良識を信じたいものです。 (山口県 福田 寿史 会社員 57歳) (2017. 3. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
本来の居酒屋 禁煙死活問題
受動喫煙防止策を強化する法案に、小さな「本来の居酒屋」の店主や常連客は困惑している。 今や多くの人は、居酒屋といえば全国展開の大型チェーン店を思い浮かべると思う。同じ店の造り、同じメニュー、マ ニュアル通りの接客。経営者は鮭にたいする思い入れよりも、しゃれた料理やメニューの豊富さなどに力を入れ、女性 や子ども客をつかみ、売り上げを伸ばしてきた。 一方、本来の居酒屋というのはいわゆる赤ちょうちん、縄のれんのある昔ながらの店構えで、ほとんどが家族と若干 の雇用者でやりくりする。がんこ親父(おやじ)とか世話好きおかみ、愛想良しのアルバイトなど血の通った従業員がいて、 見知らぬ客同士もしゃべり合う。あくまで酒が主役で食べ物は脇役。したがって酒を飲まない客は本来出入りしないの だ。 厚生労働省案では、小規模なバーなどは喫煙可とするが、居酒屋は屋内禁煙とするという。居酒屋というくくりで大手 と同じ扱いになれば、小さな店は資金的、場所的にも喫煙専用室の設置など対応できず、ひとたまりもない。居酒屋の 風景は一つの文化。存続できるよう配慮を願いたい。 (奈良県 森山 悦宏 居酒屋経営 74歳) (2017. 3. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
小さな飲食店で見つけた絆
一昨年の秋に中国から日本へ留学しました。驚いたのは、日本では普通の小さい飲食店でも長く続いているとい うことです。近年の中国では、流行の店が何店舗も支店を開き、でもその後どんどん消えていく。店の移り変わりは 早く、時間に耐えることのできない店ばかりです。ですから日本の居酒屋でアルバイトをして、10年以上続く小さな店 が多いのを知って驚きました。なぜ続くのでしょう。 それは店とお客さんの信頼関係だと思います。お客さんは店を信じておいしい料理を頼みます。店はお客さんを 大事にして心を込めて料理を作ります。この絆は1日でできることではありません。ある日、常連客が店長に「一杯 どうぞ」とビールをおごりました。そして驚いたことにアルバイトの私にも。「えっ、私にも、まさか」と思いながら、店 長の言うとおりにお礼を言って、いただきました。 料理がおいしくて雰囲気が良くて、こんな店なら長く続くはずです。大切なことはお互いの絆を作ること。これは私 が日本で気づいた、というより学んだことです。 (大阪府 施 政 豪 専門学校生 23歳) (2017. 3. ? 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
日ロ友好 淡路の海商に学ぶ
春の陽光に恵まれた先日、淡路島の高田屋嘉兵衛翁記念館(兵庫県洲本市)を訪れた。 嘉兵衛は淡路が生んだ江戸後期の海商。当時の蝦夷地、国後・択捉島への航路開拓の功績者で、松前藩に幽閉さ れていたロシア軍ゴローニン少佐の平和的開放に尽力した日ロ交渉史上の偉大な人物である。少佐の手記「日本幽囚 記」で尊敬すべき人物として書かれ、司馬遼太郎も小説「菜の花の沖」で人を平等に重んじる姿を描いている。 私は大学で教壇に立って44年になるが、ロシアや中国との領土問題に先が見えない昨今、学生らの中で隣国に対す る否定的な印象が形成されていると感じる。メディアの論調に流されず、自分の目で隣国を見て欲しいと願わずにいら れない。 記念館は3月末に閉館し、高田屋顕彰館(同市)と統合して展示内容を充実させる予定だという。リニューアルオープン したらぜひ若者にも足を運んで欲しい。2018年には日ロ交流を目的とした「日本におけるロシア年」が開催される。彼の 功績を礎に、隣国ロシアとの関係が発展していくことを願う。 (京都府 塩見 武雄 短大非常勤講師 74歳) (2017. 3. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
美しい辺野古 工事は再考を
沖縄県名護市辺野古の海で一度泳いだことがある。昨夏、牧師約20人で工事中断中の埋め立て予定地を船で見学。 地元の方に「泳げるよ」と言われ、飛び込んだ。美しい海とサンゴ。透明度が高い。埋め立てたら二度と戻らない。 政府はついに辺野古で埋め立て工事を始めた。抗議する人たちを支援しようと、幾度か現地に足を運んだ者として地 団太踏む思いでいっぱいだ。 米軍普天間飛行場の代替地として日米政府が決めた辺野古。沖縄の人々の反対の声を一切聞かず、まともに変更を 協議せぬまま今日に至った。かつて成田空港を造った時も、最初の計画ありきで日本政府は民の声を聞かず強行し、 長く課題を引きずった。 工事が強行された辺野古では5年間かけて埋め立て完了を目指すという。いずれ巨大な基地が完成しても本土に住む 者は忘れていくのかもしれない。だが反対してきた人たちは諦めるはずがない。 国民財産の貴重な自然を破壊してまでなぜ米軍基地を造る。地元住民より米国。沖縄より本土。この意識で工事を進 めるのだろう。禍根を残さないわけがない。今からでも再考は間に合うと願う。 (兵庫県 横山 順一 牧師 58歳) (2017. 4. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
ぼくの畑 趣味は野菜づくり
ぼくの趣味は、庭を耕して畑をつくり、種を植え育てることです。おばあちゃんには、めずらしい趣味だと言われまし た。一番好きなことは、育てた野菜をしゅうかくすることです。今はトウモロコシ、マメ、イチゴなどを植えているので、 水やりや草ぬきが大変ですが、がんばって育ててしゅうかくできたらうれしいです。 冬にしゅうかくしたダイコンは、近 所の人が食べて「おいしかった」と言ってくれました。 おじいちゃんとおばあちゃんの家には大きな畑があって、おじいちゃんとぼくで同じ時に種を植えて、どちらがよく育 つかきそうのが楽しいです。ぼくが学校に行っている間は、おじいちゃんが畑のことをしてくれます。自分の畑もあって いそがしいのにぼくの畑も見てくれて、とてもうれしく感じています。 (兵庫県 越智 青輝 小学生 11歳) (2017. 4. 21 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
先生に頼まれ 「転校生」友に
私が中学2年になったばかりのとき、担任の先生から「城君、今度転校生が来るから友達になってくれ」と言われた のです。当然「はい」と答えましたが、どうしたものかと思っていたとき思い出したのが、2、3カ月前に学校の運動場に 相撲の土俵が造られたことです。 「そうだ相撲を取ろう」と思い、その転校生ともう一人の友達を誘い、放課後毎日3人で相撲を始めました。そうした ら毎日何人かが見に来るようになり、最終的にいつも参加する生徒が5人になりました。その5人は親友になりました。 卒業式の日、先生は「城君、ありがとう。『転校生』も無事に卒業できた。彼は転校生ではなく、実は学校に1年間来 られなかった1歳年上の子だったのだ」と言われたのです。 (大阪府 城 博規 無職 77歳) (2017. 5. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より |
「はい風船」 みんなが笑顔
友達とお昼を食べていたときのことです。近くに風船を持って喜んでいる赤ちゃんがいました。しかし、急に泣き出 してしまいました。手に持っていた風船が天井の方に飛んでいってしまったのです。天井が高くて、誰もとれませんで した。 そのとき、5歳ぐらいの男の子が自分の風船を持って赤ちゃんの所に行き、満面の笑みで渡しました。私はとても感 動したし、その男の子は心が広いなと感じました。近くに親らしい人がいなかったので、自分の意思で渡したんだなと 思いました。一瞬にして周りがキラキラと輝きました。近くにいた人たちもみな笑顔になっていました。私は親切な行動 で周りの人を笑顔にできるのはとっても良いことだと思います。私もその男の子のように、心の広い人になりたいです。 (東京都 角屋 凛 中学生 14歳) (2017. 5. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「北朝鮮=悪」だけでいいか
高校の世界史教師を長くやってきた私には、どうにも腑(ふ)に落ちないことがある。最近の国際情勢の見方について である。 アメリカの核兵器は善で、北朝鮮の核兵器は悪である、という前提に立ってすべてが論議されているように思う。戦 後、この2国が他国に武力行使をした回数を比較すれば、圧倒的に米国が多い。1983年のグレナダ侵攻など中南米諸 国への武力介入、ベトナム戦争などは、米国が正しかったとはとても言えない。一方、北朝鮮も50年に韓国に武力侵攻 して朝鮮戦争を引き起こし、拉致や大韓航空機爆破事件(87年)を起こすなど、「善」とはとてもいえない。 だが、私は現在の北朝鮮の国力からみて、この国の核兵器は弱者の持つ、まさしく最終兵器のように思えてならない。 こういう発言をするだけで「何をたわけたことを」と総攻撃されかねないが、そういう異論を認めない雰囲気の方が怖い のである。 日本の役割は、米国が北朝鮮を対話のテーブルにつかせる、そのために2国に積極的に働きかける外交的な努力を することである。それは拉致問題解決のほとんど唯一の方向であると信じる。 (岡山県 徳方 宏治 無職 77歳) (2017. 6. 2 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
韓国への生徒派遣 中止は残念
青森市、松山市などが今夏の韓国への中高生派遣事業を中止した。韓国からの受け入れは予定通り行う自治体も中 にはあるようだが、中止は残念だ。 北朝鮮のミサイル発射による半島情勢の緊迫化などを考慮したというが、このような時だからこそ顔を合わせて交流 できたら素晴らしいのにと思う。何に関心を持ち、何に悩んでいるか、互いに話し合っている場面を想像するだけで心 が温まる。歴史認識の違いから激しい議論になるかもしれないが、同じ物を食べ、同じ時間を共有して得られた知見は、 グローバル時代を生きる生徒にとって大きな意味を持つだろう。 私自身、中学生の時に地元自治体から釜山に派遣された。滞在中の出来事は今でも鮮明に覚えている。日韓関係 がどんなに政治レベルでぎくしゃくしようと、「顔が見える関係」を得られたことが「報道されない韓国」に目を向け る姿勢を与えてくれた。 日韓双方の大人が努力してくれたゆえの事業だと今だからこそわかるが、感謝しかない。派遣事業は未来を創る若 者への贈り物。今後も続くことを願う。 (神奈川県 瀬尾 あずさ 主婦 43歳) (2017. 6. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
半島緊迫 日朝交渉の再開を
北朝鮮は5月、3週連続で弾道ミサイルの発射実験を行った。29日には日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下。米軍 は朝鮮半島付近に空母を展開させ、日本や韓国と共同で軍事演習、訓練を繰り返している。かなり緊迫した情勢だが、 私には日本政府が米国頼みの受け身の姿勢に終始しているように見える。 安倍政権の掲げる「戦後レジームからの脱却」という原点を思い返していただきたい。第2次大戦後に確立したレジー ムの中で、「東西冷戦体制」はヨーロッパでは1990年代初頭に終結したとみなされているが、日本を含む東アジアでは、 いまだに冷戦体制は厳然と存在し続けている。 戦後72年。日本と北朝鮮の間には、いまだに国交がない。安倍政権には今こそ、国交正常化に向けた交渉を再開さ せてもらいたい。それによって、現在の緊迫した朝鮮半島情勢に日本が主体的に関わる道が切り開かれる。 「戦後レジームからの脱却」を図るための最大のチャンスが訪れている。これを逃す手はない。 (香川県 山岡 健次郎 高専教員 39歳) (2017. 6. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
吉本 大好き なみだも笑顔に
私は吉本新喜げきが大好きで、大の夢です。いつも学校で、吉本の話で大盛り上がりです。すっちー、しげぞう、 アキ、色々なギャグをしてふんいきがいいです。私があこがれている人は、未知やすえ姉さんです。げき場にも見に行 って、勇気をもらいました。すごくキレイで、とてもおもしろい方です。 私は幼いころぜんそくで、ずっと入院していました。そんな悲しい時、吉本新喜げきが助けてくれました。おもしろ くて、おもしろくて、なみだがふきとび、笑顔になりました。すごいなぁ~、おもしろいなぁ~と思い、私は決めました。 吉本に入ると。理由は、みんなをはげまし、笑顔にしたいからです。 一年生の時、友達がいなかったけれど、吉本のギャグをやったら、みんな笑って、うれしかったです。そして友達が だんだん増えていき、いっぱい友達ができました。みんなをはげまし、笑顔にしてくれる。吉本新喜げきが大好きです。 (大阪府 長船 未玲亜<みれあ> 小学生 11歳) (2017. 6. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
すてきな心がけ 学んだ相手は
旅行会社に入ってすぐ、東京ディズニーランドが開業しました。最初は駐車場でバスの団体客に入場券を配る仕事。 1カ月続くと「いつまでこんな仕事を」と落ち込み、会社を辞めたくなりました。 その駐車場に、バスを誘導しながら笑顔で楽しそうに働いている女性がいました。「ミッキーやドナルドと働けなく て残念やね」と言うと「いいえ。お客様が最初に出会うキャストが私なんです。こんなすてきな仕事はないです」と。 なるほど。 翌日から私も笑顔で「こんにちは !」とやってみました。するとお客様から「ご苦労様」「ありがとう」という反応。 びっくりです。自分の意識と行動を変えると相手の反応も変わることに気付きました。 それから34年。その女性は、私が家に帰ると、「お帰り」と迎えてくれます。 (大阪府 室田 善弘 会社役員 57歳) (2017. 6. 27 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
韓国の脱原発 見習うべきだ
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は「脱原発」を国家目標に掲げ、原発の新規建設計画を白紙にし、寿命の延 長もしない方針を表明した。福島第一原発の事故が大きな転機になったという。「地震による原発事故は極めて 致命的だ。原発は安全でも低廉でも環境に優しくもない」と明快だ。 世界で脱原発の流れは、スイス、ドイツ、イタリア、台湾と拡大している。一方で日本は、あの大事故の当事国であり ながら、原発を次々と再稼動させ、原子炉の寿命の延長も次々と認めている。 だが、日本における地震の脅威は韓国の比ではないだろう。原発の直下・直近で、昨年の熊本地震クラスの地震が 起きても安全と言えるのか。 国は、原発を重要な基幹電源と位置づけ、その必要性を主張している。だが、経済産業省を始め、いわゆる「原子力 村」の人たちが巨大な既得権益を失いたくないだけではないかと疑ってしまう。 日本で再び原発の大事故が起これば、国の存立さえ危うくなるのではないか。その前に再生可能エネルギーなどに大 規模な転換を図るべきだ。 (愛知県 久野 聚 パート 71歳) (2017. 7. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
女性の細やかさ たくましさ
一人住まいの80代の母が入院することになった。妻が準備に気を砕いている。「タオルはこんな大きさが良くて、同 室の人への差し入れにはコレを買っていけば良い」 「テレビのイヤホンは病院で買うと高いので、家にある物を持っ て行こう」…… 私など入院してから気が付いた物を買いそろえれば良いと思っていたが、妻は実に細かなところまで気が付く。日頃、 新聞の政治や国際情勢の記事を妻に解説しては、三面記事以外も読むように説いてきたが、この時ばかりは立場が 逆転してしまった。 私が「もし、入院する羽目になったら、財政が許すなら1人部屋が良いなあ。身体が弱っている上に他人への気遣い まではゴメン被りたい」と言うと、妻は「私が入院するなら他の人と同室が良いわ。色々病院の情報も入るし、お話し出 来たら気も紛れるしね」と言う。 手術当日の夜、麻酔から覚めた母は、かなり気弱に見えたが、翌日には同室の女性たちと井戸端会議を始めていた らしい。女性の賢明さ、たくましさに、今回は目を見開かされた。 (大阪府 楠本 嘉昭 会社役員 60歳) (2017. 7. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
白鵬 外国籍でも一代年寄に
大相撲に興味を持って60年。千代の山、鏡里、吉葉山から稀勢の里まで32人の横綱を見てきましたが、中でも白鵬 関のファンです。今場所達成した歴代最多勝、39回目の優勝おめでとうございます。戦後、白鵬関に勝る力士はいない と思います。 白鵬関は日本の国技を愛し、日本文化をよく研究していると感じます。優勝回数は史上1位の39回、歴代2位の63連 勝。年間最多勝の回数など、功績を残した横綱に授与される「一代年寄」として親方になるには十分すぎる実績、功績 があります。 しかし日本相撲協会は、白鵬に日本国籍がないので否定的な見解を示してきました。モンゴルで白鵬関は国民的英 雄で、モンゴル国籍へのこだわりもあるようですが、日本国籍取得の意向を示しているそうです。 高見山以来、多くの外国出身力士が大相撲を支えています。外国でも衛星放送で相撲が見られ、多くの外国人観光 客が大相撲を楽しみにしている。今こそ英断を持って、日本国籍がなくとも白鵬関に一代年寄を承認されることを願い ます。外国籍では一代年寄になれないのなら、協会は理由を明確にご説明いただきたいです。 (兵庫県 浅田 幸夫 小学校非常勤講師 67歳) (2017. 7. 25 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
愛情伝わる俳句 これからも
小林凜君、元気にしておられますか。 先日、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生が105歳で亡くなられました。その時に、俳句をたしなんでおられ た日野原先生が、凜君と90歳の年の差も何のその、俳句のやりとりをしておられたことを思い出しました。 私も少し俳句をしていますが、凜君のように上手に詠めません。凜君の俳句を読ませて頂くと、私は俳人の小林一茶 を思い出します。凜君が大好きな動物や植物に対する愛情が、心に伝わってきます。 もう高校生かな? 才能があり、感性が豊かな凜君には、これからも俳句を続けて欲しいです。凜君の句集がまたでき たら、書店へ走りますからね。暑い折、お体を大切にして下さい。 (大阪府 西川 美智子 主婦 77歳) (2017. 8. 14 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
政権交代視野に 野党結集を
「健全な野党第1党 出現切望」(7月29日)に大賛成です。私は創価学会員で、当然のこととして公明党支持者ですが、 今の自民1強体制は、民主主義にとって、あまりにも弊害が多すぎると思います。やはり政権交代を視野に入れること の可能な、健全な野党の結集が必要だと思います。それは、国民の声を代表する国会の場では、緊張が常に存在する 仕組みが必要と考えるからです。 ここで問題になるのが野党第1党の民進党内の対立です。有力な代表候補と目されている枝野幸男元官房長官が 共産党を含む野党勢力の結集を目指す一方、前原誠司元外相のスタンスは、共産党排除で、天皇制、自衛隊、日米 安保、消費税で共通認識を持つ政党としか組まないとの主張。これは健全な在野精神というより、政権補完のイデオロ ギーです。これでは現政権への対立軸とは成り得ないでしょう。共産党の実態をもっとよく知るべきだし、政権交代を本 当に望むのであれば、今の日本の政治の実情を直視し、現実的であるべきでしょう。執拗(しつよう)な反共に固執するの は野党分断に手を貸すだけでしょう。政権交代こそ野党連携の最大の目的であるべきです。 (兵庫県 堀口 日出夫 無職 79歳) (2017. 8. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
裁判官 独立守られているか
私は、国を被告とする裁判や原発関連の裁判で判決が出た場合、裁判長の経歴やその後の異動先に強い関心を持 っている。 最近ならば、高校授業料無償化制度の適用対象から大阪朝鮮高級学校を除外した国の対応を「違法」とした、7月28 日の勇気ある大阪地裁判決である。 ただし判決は代読、当該裁判長は4月1日付で大阪国税不服審判所長に異動していた。当該裁判長は以前、原爆症 の認定申請を却下した国の処分を覆す判決を出したこともある。 他方、原発関連で2015年4月に福井地裁は関西電力高浜原発再稼動差し止めの仮処分決定をした。前年に大飯原 発運転差し止め判決も出している。この二つを出した裁判長は15年4月1日付で名古屋家裁に異動。その後に高浜再 稼動を容認した裁判官3人は、エリートコースとされる最高裁勤務経験者だ。 最高裁は、国にたてつく判決を出した裁判官を人事権でもって、そうした判決を出せないポストに動かしたのか。裁判 内容への介入だとしたら、憲法76条3項「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法 律にのみ拘束される」に反する。一方、裁判官もいま一度76条の理念に立ち返ることが求められている。 (兵庫県 前田 勉 無職 68歳) (2017. 8. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
老親の商売 どうたたむべきか
30を過ぎた頃から、同世代の友人たちとの会話に少し重いテーマが加わった。「親の家業をどうきれいにたたむか」と いう話だ。 私たちの親は高度成長期に働き盛りで「真面目に働いていれば必ず報われる」と信じてきた世代だ。その精神は尊び たいが、ネット通販の登場や製造業の系列再編など社会は変化し、商店も工場も昔のやり方が通用しないことが多い。 だが真面目な親たちは、もう行き詰まっている商売でも、「今やめると他人に迷惑がかかる」と頑張り続ける。 私も実家の町工場を早く手放すよう、親を説得した経験がある。知人から相談を受けた時も、怪しい金融業者に手を 出しているような場合は、一刻も早く専門家に相談するよう促す。「きれいに倒産するにもお金がいる。余力があるうち に商売を閉じた方が、結果として他人にかける迷惑も少ないです」。人生の先輩に偉そうなことを言うのは気が引ける が、そう言う。 最後の血の一滴まで振り絞って頑張ろうとする老親たちに、子はどんな言葉をかけたらいいのだろうか。 (東京都 吉田 正太 ライター 47歳) (2017. 8. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
畑で農作業の大変さ知った
僕のおじいちゃんは畑で野菜をつくっています。トマトやキュウリ、ナスビなどさまざまなものを栽培しています。僕は 小6まで収穫を手伝っていました。 中学の時は部活が忙しくて一度も手伝えませんでしたが、高校に入学した今春、久しぶりに畑へ行ってみました。 畑はまだ耕す前でした。トマトの苗を植えるために、土を耕し、木材とシートで雨よけを組みました。経験して初めて 農作業が大変だと知りました。野菜はさまざまな困難を乗り越えて育てられているのだと思いました。 農業にふれる機会はあまりないかもしれませんが一度畑へ足を運んでみて下さい。食べ物のありがたみが改めて 分かるでしょう。また若い農業者を増やすため学校で農業体験ができればと思います。 (大阪府 柴垣 陸 高校生 16歳) (2017. 8. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
政府は過剰に不安あおらないで
8月29日朝、目覚まし時計が鳴るよりも前に、携帯電話からのただならぬ音に起こされた。Jアラート(全国瞬時警報シ ステム)なのだろうか。市の防災無線も、不安をあおる警報音と共に、北朝鮮からのミサイル発射を知らせ、頑丈な建物 や地下に避難するようアナウンスしていた。 テレビもこのニュース一色。番組を変更して放送し、一部新幹線はしばらく運行を見合わせ、休校にした学校もあった と聞く。 しかし、ミサイルは十数分で落下し、国内に直接の被害はなかった。胸をなでおろす一方、おかしいと思うことがある。 ミサイルの最高高度は約550㌔で、日本のはるか上空を通過。安倍晋三首相は「ミサイル発射直後からミサイルの動 きを完全に把握している」と述べた。それなら「国民の安全、安心の確保に万全を期す」との言葉通り、危機感をあおる のではなく、私たちが冷静に行動できるように、的確な情報提供や指示を行ってほしい。 政府の姿勢は過剰な不安をかきたてる一方だ。政府が防衛強化に取り組みやすい状況を、作り上げているのではな いかと勘ぐりたくなってしまった。 (長野県 松樹 純子 主婦 60歳) (2017. 9. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
男のひといき
消えた ニャンちゃん
ある極寒の朝、雪をかぶった雄の老猫が、庭先でうずくまっていた。たらいにお湯を張り入れ、牛乳を温めて飲ませ たら、少し元気になった。猫が好きなのと、一人暮らしのわびしさから飼うことにした。 自分の名前が言えるよう、「ニャン」と名付けた。 元々野良ちゃんだからか、なでようとすると嫌がった。レモンの木の木陰がお気に入りで、日中はいつも横たわって いた。 夏がきて、暑くなり始めた頃から食欲がなくなった。ついには、何をあげても食べなくなり、あばら骨を浮かし、よた よた歩くようになった。 ある夜、私が眠っていると、ニャンちゃんが懐に潜り込み、顔をスリスリし、のどをゴロゴロ鳴らした。初めてのこと だった。骨でゴツゴツした背中をなで続けていたら、眠ってしまった。 朝、目が覚めたら居なくなっていた。方々探したが見つからなかった。あの夜が最初で最後の甘えだった。死期を 察した老猫が、自分が居なくなるのがせめてものご恩返しだと思ったのだろうか? そのいじらしさに涙があふれた。 あれ以来、ニャンちゃんの姿は見えない。 (東京都多摩市 北岡 政憲 無職 70歳) (2017. 9. 3 朝日新聞読者寄稿 リライフ 欄より) |
最賃アップ 小さな店には重荷
15年間、リピーターに支えられて細々と飲食店をやってきました。この春、6年間働いてくれた若手スタッフが辞めた ので久々にアルバイト募集をかけたところ、半年経っても応募がありません。まさかこれほどまでに深刻な人手不足に なっているとは……。 その上、昨年秋に932円に上がった東京都の最低賃金が、来月また958円に引き上げられると知りました。ドリンク の注文があまり出ないため利益の少ないカレー屋では、最低時給を払うのさえ四苦八苦。 近所のチェーン店の「時 給1100~1500円」に対抗するすべはありません。 昨年家主から立ち退きを求められ、やっとの思いで移転した新店舗をつぶすわけにはいきません。夫婦2人と身内 1人、平均年齢54歳の従業員で切り盛りする店を、なんとか細く長く続けるために、売り上げの激減を覚悟の上で営 業時間を大幅に短縮するしかない、というところまで追い詰められています。 労働者にとっては最低賃金の引き上げは朗報でしょうが、「賃金が上がっている=景気がいい」という政府発表の陰 で、小さな店は風前のともしびです。 (東京都 西川 仁 飲食店経営 62歳) (2017. 9. 8 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
北の脅威下 原発再稼動なぜ
北朝鮮の核実験、弾道ミサイルの脅威が声高に叫ばれている。たとえはるか頭上を通り過ぎたミサイルとは言え、 その破片が日本を直撃する危険はゼロとは言えない。しかし政府が大げさに反応することで、ほかの大事なことから 国民の目をそらさせようとしているのではないか。 そう思っていたら原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼動審査で東電の原発運転 に「適格性」を認めた。再稼動への合格証だ。福島で未曾有の大事故を起こし、6年半たっても事故原因が特定でき ず収束作業は難航中というのに。 柏崎刈羽だけでなく、国内の原発はどれも北朝鮮のミサイル射程内。攻撃される危険性は想定されているのだろう か。核搭載のミサイルである必要はなく、原発に命中すれば大惨事だ。 その脅威を原子力規制委員会はどう考えているのだろう。想定しているのなら、東電に適格という判断は出ないと 思うが。15日のミサイル発射を受け、安倍晋三首相は「北朝鮮がこの道をさらに進めば明るい未来はない」と述べた が、それは日本にも当てはまるという気がしてならない。 (岡山県 豊岳 澄明 僧侶 62歳) (2017. 9. 22 朝日新聞読者寄稿 声voice 欄より) |
不倫は公に騒ぐ話 ?
先日、浮気だ不倫だと騒がれ、民進党の女性議員が離党しました。何とも馬鹿馬鹿しいと私は思います。 政治家は、国民のための政治を行うのが仕事。政治家としての力量があれこれ問われるのなら納得できるのです が、不倫騒動にはあきれてしまいます。報道関係者たちも、なんでそんなことを大きく取り上げるのでしょうか。 不倫なんて個人的な問題で、公の場で騒ぐことではないと思うのです。個人的な問題と言っても、交友関係を大事 にするあまり、国民のためにならない政治をされては困りますが。 それとも、不倫や浮気の話を取り上げると、週刊誌などが売れるのでしょうか。でも、国政とは切り離してほしいで す。 もう何十年も前になりますが、地元で知られた人たちについて「あの人が浮気している」とか、「この人もそうだ」と か、うわさ話に花が咲き、私は面白おかしく聞いていました。 私自身は、幸か不幸か、色恋沙汰とは無縁で生きてきましたが、もし夫が浮気をしたら「お父さん、もててよかった わね」 とでも言いたいです。でも、友人にそう話したら、なぜか一笑に付されてしまいました。 (横浜市 吉井 多恵子 主婦 80歳) (2017. 9. 25 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
適切受診で公平負担維持を
公的医療保険制度は日本が世界に誇る優良な施策であると感じます。保険証一枚で優れた医療を安価に受けられ る安心感は計り知れません。しかし、この制度が過渡期を迎えていることも事実です。少子高齢化の波は簡単に防げ るものではなく、今後、医療費負担は私たち若い世代に重くのしかかってくることでしょう。 投稿では(註・略)「若者に配分を」とご提案されています。しかし、長年公的医療保険を支えて下さった世代の方々の 負担を増やすということは、いささか「不公平」であるように感じます。また、国民が公平に負担するという社会保障の あり方から、逸脱しているようにも思います。 不要不急な受診を避け、本当に必要な時に公的医療保険制度を利用するよう私たちの意識を変えていく必要があ ると感じます。 (香川県 三好 雄大 事務職員 22歳) (2017. 10. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
原発事故後の現実
東京電力福島第一原発で事故が起きた翌年の2012年に続いて今夏、福島県を訪れた。私なりに現実を知るフィー ルドワーク(註・実地調査)。 飯舘村で目にしたのは、除染作業で出た土など放射性廃棄物を詰め込んだフレコンバックが見渡す限り広がる光景。 「仮置き場」だが、いつ県外に運び出せるのか分からない。高レベル放射性廃棄物に至っては最終処分場のめどさえな い。全村避難を強いられた「無人の村」は今春、避難指示の大部分が解除されたが、人の姿は少なかった。 宮城県の東北電力女川原発PRセンターも訪問。震災時に女川原発で事故が起きなかったことを強調し、PRしている と感じた。福島第一原発事故は何一つ解決していない。現実から目をそらし、原発依存を続けようとするのは東電だけ ではないと実感した。 たまり続ける汚染水。避難指示解除でも住民が帰還できない現実……。原発は国策として進められたのだから、事故 の原因、責任追及と反省を真摯(しんし)に行うことが、再稼動より先に国がするべきことだろう。原子力政策を変えなけ ればならないと考えた東北の旅だった。 (大阪府 増田 純一 無職 63歳) (2017. 10. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
パソコンで授業 便利なの?
タブレットパソコンを使った授業が学校で始まりました。パソコンを使うことで、図や説明が見やすくなりました。 でも、不便に感じることもあります。 まず、画面が動かなくなったりするのでなかなか授業が進まないことです。1人のパソコンがおかしくなると、周り にも影響が出ます。 次に、目が疲れることです。パソコンを使わない授業もありますが、多いときは1日6時間近く液晶画面を見てい ることになります。一部の人は、休み時間や家にいる時でもパソコンを使っています。その人たちの目には、もっと 負担がかかっていると思います。肩も痛くなるし、目にも体にも悪いです。 パソコンはいいことばかりではなく悪いこともあります。私は、パソコンを使って授業することは好ましくないと考 えます。 (京都府 中島 早映 中学生 13歳) (2017. 10. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
デジタル授業で思考力が育つか
日本の学校で授業のデジタル化が進んでいることをニュースで知った。教科書の代わりに生徒一人一人がタブレ ット端末を使い、たとえば立体図形などの授業で活用されているという。 確かに、素早く理解するには有用な方法だ。しかし、頭の中に図形を思い浮かべて考える訓練も必要なのではな いか。その方が、将来の役に立つ理解力を養えるように思う。 米国の大学の実験で、文字を手書きする方がタイピングするより能が活発に働くことが分かったという。別の実験 では、手書きの方が着想が豊かになり授業内容を記憶に留める効果も高かったそうだ。新しいテクノロジーに頼る のは、必ずしも良いことばかりではないのだろう。 私の学校は授業でコンピューターを使うが、答えを画面に表示する前に必ず議論する時間を持つ。深く考える力 を育てようとしているのだと思う。 これから必要とされるのは、新しいアイディアを出し、社会や国の進歩のために貢献できる人だ。そのためには、 むやみにデジタル授業を採り入れるのではなく、思考力や想像力を育てる教育を強化することが先だと思うが、ど うだろうか。 (タイ 武者 祐衣 高校生 16歳) (2017. 11. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
娘の強い思い 生きている
生命は不思議です。娘は高校1年の時、病気で亡くなりました。告別式の数日後、朝目覚めると、娘が私の隣で 寝ています。でも大きく目を開けて、周りを見回すと娘はいません。 「ああ夢だった」と再び目を閉じると、やは り娘を感じるのです。不思議でした。 2年後、娘の学校の卒業式に招待されました。会場の体育館に向かう途中、ふと視線を感じて校舎の窓を見上 げると、制服姿の娘が私を見つめていました。目が合った瞬間、その姿は消えました。 担任だった先生が娘の個人用小型ロッカーを預かって下さっていました。そこはまさに先ほど娘がいた場所。 娘の復学への思いを感じました。肉体は消えても命は生きています。私はそっと抱いて家に持ち帰りました。 (大阪府 吉本 てるみ 主婦 68歳) (2017. 11. 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
たぬき先生に感謝
かかりつけのお医者様として、子どもたちがお世話になった先生の訃報(ふほう)を新聞で読んだ。「たぬき先生」こ と、毛利子来(たねき)先生だ。 4人の子どもが小さい頃は、毎月のように医者通いをしなくてはいけなかった。おもちゃと絵本がいっぱいの友達 の部屋みたいな待合室を、子どもたちは覚えているだろうか。 長男が3歳のとき、風邪で診てもらいに行ったことがあった。順番がきて、私が長男の症状を訴えようとすると、 先生は長男に「もう君はお話がちゃんと出来そうだから、君の体がどんな風だか言ってごらん」とおっしゃった。 子どもの状態は母である私が伝えるものだと思っていたので不安だったが、長男は私が話そうとした内容を、長 さは半分で、ほぼ正確に伝えていた。長男の話が終わると先生に一言「どうですか?」と聞かれたので「はい、ほぼ その通りです」と答えた。 「小さな子どもでも、体は自分のものだからね。自分で話させましょう」。子どもの味方だったたぬき先生は、 母親にとっても本当に心強い先生だった。心からご冥福をお祈りいたします。 (東京都豊島区 毛利 惠子 主婦 61歳) (2017. 11. 11 朝日新聞読者寄稿生活欄 より) |
毛利子来先生に支えられた
小児科医の毛利子来(たねき)先生が10月26日にお亡くなりになった。私には21歳と19歳の娘がいる。子どもたち がまだ小さかった時、風邪を引くたびに病院で処方される薬を飲ませることに疑問をもち始め、先生が編集代表を 務めた子育て誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」と出合った。 風邪を引いても薬や通院は最小限にし、ちょっとした鼻水くらいなら様子をみてもいいとか、清潔志向の世の中に 子どもは少しくらい汚く育てた方がいいとか、予防接種も調べて考えてから受けようなど、先生の主張は小児科医と しては少し異色だったかもしれない。でも母親が自ら考えて選択していく育児を教わった。我が子を診てもらう機会 はなかったが、先生のご著書を通して、支えられ、癒やされ、本当に多くのことを学んだ。心強かった。 一度だけ先生の講演を聞いた時に、先生の後に続く小児科医が育っていないことを心配しておられた。先生のよ うに権威にとらわれない自由な発想を持った小児科医は育ったのだろうか。毛利子来先生のご冥福を心からお祈 りいたします。 (兵庫県 二田 潤子 契約社員 49歳) (2017. 11. 8 朝日新聞読者寄稿生活欄 より) |
地震と空襲に「やっつけられた」
昭和19(1944)年の12月7日という日は忘れられない。国民学校3年生だった。いつものように防空ずきんをかぶり 登校すると、先生の話があった。 「明日12月8日は日本軍が真珠湾を攻撃して大勝利した日です。米国が仕返しをしてくるかもしれません。すぐ帰っ て避難の用意をしていなさい」 だが街は静かで、私は外で縄跳びをして遊んだ。突然、激しい地震が起き、玄関脇の水槽の水が数十㌢もはね、 こぼれた。水槽は空襲の時バケツリレーで水を家にかけて消火するためのものだった。私らは無事だったが、東海 地方などで千数百人が犠牲になった。 空襲があったのは翌年6月19日深夜。警報で私たち一家は防空壕(ごう)に逃げ込んだ。焼夷(しょうい)弾が近くに落ち、 外に出て火の雨の中を必死に走り、街はずれの麦畑に身を伏せた。朝、家に戻ると一面の焼け野原。防空壕は崩 れ落ち、爆弾のかけらが2個転がっていた。家族全員が焼死体となるところだった。 近所の老人が「わしらは天と地からやっつけられた」とつぶやいた。天からの爆弾と地震。大人はバケツリレーや 竹やりの訓練もしたが、本当に無意味だった。 (愛知県 高橋 みな子 無職 82歳) (2017. 12. 8 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
相撲界の常識うのみは不健全
大相撲の11月場所で、横綱白鵬が取組後に「待った」をアピールして長い時間立ち去らなかった件について、避難 の声を聞く。サッカーや野球では、選手や監督が審判に抗議して食い下がることはまれではない。しかし、そのような 他のスポーツでの抗議に対して、今回のようにひどい愚行をしたかのような反応が起こることはない。「勝ちたい気持 ちの裏返し」と解釈されることもある。 力士の行動が問題にされるとき、「相撲は他のスポーツとは違う」という言葉をよく聞く。しかし、やったことの善 しあしが競技によってコロコロと変わっていいのだろうか。 白鵬のしたことは確かに前代未聞だ。私も10年以上大相撲を見ているから驚いた。しかし、後から考えると、それ は自分が相撲界の常識や風潮を当然のように受け入れていたからだと気付いた。 今回の件のみならず、相撲界という一つの枠の中の常識だけで物事を判断するのは危険に思う。常に、枠の外で はどうかと考える必要があるだろう。にもかかわらず、視聴者やメディアなど外にいる人々までもが相撲界の考えをう のみにするのなら、それは不健全だと言わざるを得ない。 (埼玉県 小室 知眞 大学生 22歳) (2017. 12. 20 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
協会役員を独立させ強い権限を
角界が大変な騒ぎだ。事の真相はさておき、若手力士の暴行死や野球賭博、八百長などの不祥事で落ち込んだ人 気が回復している中で起きた。私たち相撲ファンはガッカリしている。 モンゴルでは大相撲に憧れる少年が多いと聞く。しかし、日本の子供たちはどうか。私の住む近くの小学校では土俵 はあることにはあるが、使っているのを見たことがない。野球やサッカーなどと比較した時、子供たちにとって格好いい スポーツとは言えないのかも知れない。 今回の騒動で、相撲がめんどうくさい世界と捉えられてしまうのではないかと心配だ。パワハラなど、様々なハラスメ ントが問題視される現代社会にあって、角界には「かわいがり」と呼ばれるしごきも、いまだに残っているという。別格 扱いが続くなら、相撲を目指す日本の子供たちはこれからも減り続ける気がする。 外国人力士を受け入れている角界は、従来の概念を変え、よりスポーツ性を持たせるべきではないか。まずは協会役 員や行司、審判が各部屋に所属する今の仕組みを改め、役職ごとの独立した権限を強化することが必要だと考える。 (福島県 遠藤 徳行 理容業 63歳) (2017. 12. 27 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
米ヘリ 窓落下 被害校に中傷とは
沖縄県宜野湾市の小学校の校庭に、米軍ヘリコプターの窓が落下しました。その小学校に対して「やらせだろ」などと 中傷する電話が相次いでいるそうです。米軍が公式に謝罪しているのに、どうして「やらせ」と言えるのでしょうか。 もしも「日本の安全には米軍基地は不可欠。だから事故があっても文句を言うな」と考えて中傷しているのだとしたら、 あまりに身勝手です。基地の近くに住んでいたら、こんな中傷はできないはずです。 私がまだ子どもだった1977年、横浜市の住宅地に米軍機が墜落する事故がありました。私の家の近所でした。2人の 幼い子が亡くなり、大やけどを負ったお母さんも数年後に亡くなりました。後にこの話を絵本で読み、米軍機の騒音が聞 こえる自宅で何度も思い出していたことを忘れることができません。今も米軍機の音を聞くたびに、この痛ましい事故を 思い出さずにはいられません。 米軍基地による「日本の安全」は、周辺住民の「基地と隣り合わせの危険」に支えられています。政治家はこうした中 傷を許さない断固たるメッセージを発し、「基地と隣り合わせの危険」の解消に向けて奔走してほしいと思います。 (東京都 佐藤 康人 高校教員 43歳) (2017. 12. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
皆を助ける ヒーローになる
私は、皆を助けられるような 「ヒーローになりたい」 と思っている。 3年前、友人と遊んでいた時、友人が何かに気付いた。坂でおばあさんが転んでいたのだ。私と友人が助け起こそう とした。けれどまったく動かない。そこに急に車が曲がってきた。起き上がれないおばあさんと大切な友人が危ない ! と思った時、私は車の前に両うでをあげて立っていた。 「死ぬ !」と思い、私は目を強くつむった。気付いた運転手がブレーキを踏み、私たちは助かった。 大人が助けに来たので、おばあさんを助け起こしてもらい、私と友人はおばあさんを家まで一緒に歩いて送ることに した。家に着くとおばあさんの娘さんがお礼を言ってくれた。 それから数日経ち、先生に呼ばれた。娘さんが学校と地元市長に連絡をしたらしく、市長さんから地域の安全安心に 貢献した人に贈られる「愛の泉賞善行賞」とメダルをいただいた。 私はあの時おばあさんを助けて本当に良かったと思った。私は、皆が幸せでいてくれるのなら、私ができる限りのこと をして助けようと思う。 (岡山県 岡田 未羽 中学生 14歳) (2018. 1. 6 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
核廃絶に向け私にもできること
ノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」ICAN (International Campaign to Abolish Nuclear Weapons) の事務局長ベアトリス・フィンさんが先日、長崎を訪れ、若者と意見交換してくれた。 私は、気になっていたことをフィンさんに直接尋ねることができた。「ICANという頭文字になったのは、偶然ですか、 それとも意図的ですか?」 フィンさんは「私たち地球市民は一人一人が核廃絶に向けて取り組むことができる」というメッセージを込め 「I CAN (私はできる)」と名付けたそうだ。 若者にできることはあるのか。そんな疑問もあったが、話を聞いて見つけた答えはシンプルだった。まずは、自分の 周りの人に興味を持ってもらえるように努力する。核兵器を持つことが恥ずべき行いだという認識を周囲と共有し、そ の数を少しずつ増やしていく。 それなら自分にもできると感じた。この投稿が第一歩だ。将来、私たち一人一人の動きを大切に思ってくれるICAN のメンバーと共に、核廃絶を目指す運動に加わっていきたい。 (長崎県 岡田 未羽 大学生 20歳) (2018. 1. 19 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
森林ボランティア活動 20年
登山の行き帰りに目にする里山の荒廃が気になり、町内の中高年登山仲間20人と、「とやま緑化推進機構」が募集し た「とやま森林づくりボランティアの会」に登録し、活動を始めて20年を迎える。 冬季を除いて月1回、県内の森林組合の共有林で間伐、枝打ち、植樹、下草刈りなどの森林の手入れを組合の方々と 一緒に行う。岐阜県から富山県に流れる宮川や神通川流域で行われる「飛越源流の森づくり」活動にも参加している。 毎回ケガや蜂刺されなどの応急手当のため、救急箱を準備しているが、これまで誰も世話になったことがない。昨年11 月に実施された年内最終日まで、無事故で作業できたことに感謝している。 富山県では、現在、約5200人の森林ボランティアの登録があるという。さらに森林ボランティアの輪が広がることを 期待したい。 (富山県 松村 至 無職 84歳) (2018. 1. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
42 年 間 の 新 聞 配 達
昨年12月31日の朝日新聞朝刊をもって、私たち夫婦は42年間の配達を終えました。 新聞配達はもともと、お小遣いがほしいからと娘が始めました。数年頑張りましたがやめたいというので、彼女の担当 だった25軒分を引き継ぎ、徒歩や自転車で手分けして配ることにしました。続けないと迷惑がかかると思ったからです。 それから今までけがもなく、無事終えることができて感謝の日々です。 毎朝、お寺と地蔵堂の前で一日の無事をお祈りして始めました。2人とも会社勤めをしていたので、配達の後、出勤し ました。会社や田畑で元気に働くことができたのは、早朝からの配達が健康の源になったからだと思います。 区切りをつけたきっかけは、1年前の大雪でした。もうそろそろ引退してもよろしいよ、という天の声だったのかもしれ ません。 やめる時、販売店にねぎらってもらいました。また、正月には2組の娘夫婦、孫、孫夫婦、ひ孫が集まったにぎやかな 食事の席で、「おじいちゃん、おばあちゃん、42年間ご苦労さまでした」と花束を贈られたのです。感激で胸がいっぱい になりました。 (滋賀県豊郷町 澤 秀子 無職 81歳) (2018. 2. 9 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
ひととき
孫との恋人つなぎ
「危ないから、ばーばとおててつなごうね」 働く娘に代わり赤ちゃんの頃から、日中や放課後、孫を預かってきた。外出する時は、必ず手をつないで車道と反対側 を歩かせていた。おてんばだったが、大きなケガや事故もなく今春、小学6年生になる。 以前ほど、危険がないか気をつかうことは少なくなった。だが、今も変わらないのは、手をつなぐことだ。それも、指 をしっかりからめた恋人つなぎ。孫が歩き出した頃からそうしてきたので、違和感はない。 だが最近ふと気づいた。さりげなく手をつないでくるのも、車道側を歩くのも孫なのだ。スーパーの階段を下りる時も、 「おばあちゃん、気をつけや」と言って、服の背中側を持っていてくれる。 数年前まで私が孫にしていたことばかりなのに、いつの間にか立場が逆転していた。狭い通路で前方に障害物がある と、先に自分が立って、何げなくかばってくれる。私より孫の方が目配り、気配りが上手だ。 孫と手をつないで歩くのも、そろそろ卒業かなと思うとさみしい。けれど、孫の手が自然に離れていくまでは、もう少 し恋人つなぎを楽しみたい。 (大阪府高槻市 高井 邦子 主婦 69歳) (2018. 3. 2 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
「阪神」被災 東北・熊本を応援
今年も3月11日が巡ってきました。東北地方を襲ったあの大津波の映像を、決して忘れることはできません。 私は23年前に起きた阪神大震災の被災者で自然災害の恐ろしさは身にしみていますが、改めて人が身を守るには逃 げるしかないことを学びました。そして原発が制御不能となる事態に、信頼していた日本の先端技術がいかに無能であ るか思い知りました。自然の脅威を前に、人が立ち向かうことなど出来ないのです。私たちはいかに自然と共生していく べきか、今後も問い続けないといけません。 震災に遭われた東北の皆様、熊本の皆様。復帰には時間がかかると思います。でも、いつまでも応援を続けていきま す。私も震災後、たくさんの応援に支えられた一人ですから。 (鳥取県 丹波 哲二郎 税理士 63歳) (2018. 3. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
金利政策 個人資産に重点を
金融庁によると、預貯金や株式など家計金融資産の残高は、1995年からの20年で日本は1. 47倍、米国は3. 11倍に なったという。 資産の中身は、株式・投信が米国では約3割を占める。一方、日本では約15%しかなく、資産の約半分は預貯金だそう だ。預貯金の低金利が続けば、資産残高が伸び悩むのは当然だ。 転じて、国の景気はどうか。日銀は低金利政策を20年近く続ける。アベノミクスでは、企業投資を促し、経済成長率ア ップとの筋書きだった。確かに今が「いざなぎ景気」を超える景気拡大期とされる。だが、一部富裕層や大企業は利益を 得たが、国民の実質所得は伸び悩むのが実情だ。 成長率アップの方法として、個人資産を増やし個人消費拡大へつなげる道もあったはずだ。バブル以前は10年もてば 元利金が倍になる預貯金利率の時代もあった。そんな金利環境はもう望むべくもないのは分かる。だが個人資産を増や す道こそ、もっと真剣に模索すべきだったのではないか。国内総生産(GDP)のうち、個人消費が半分以上を占めるのだ から、まずは日銀金利をいま一度考えたい。 (香川県 十河 裕之 銀行員 58歳) (2018. 4. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
義務教育での性教育は必要
東京都足立区の中学校で3月にあった性教育の授業に、都議が異議を唱えたという。「性交」や「避妊」という言葉が中 学生の発達段階にそぐわないというが、高校生になると性体験をする子どもが増える。正しい知識を持たせないまま中学 校を卒業させることが、子どものためなのか。 望まない妊娠をして中絶したり、出産したりして学業に支障が出る高校生もいる。避妊をせずにセックスをすると妊娠す る可能性があると教えることが、なぜ問題視されるのか。若者の間で性感染症も急増しているらしい。どのような行為が 性感染症を広め、どうすれば防げるか学校で教えることの、どこが問題なのか。 今や子どもが産める状況になるまで性行為をしてはいけませんなどというのは、非現実的だ。現実に即さない教育では 意味がない。 口をつぐめば問題がなくなるわけではない。それどころか、子どもたちがつらい思いをすることになる。私は小学生ら 3人の子育て中。子どもたちのことを第一に考え、義務教育のうちに必要なことをしっかりと伝えて欲しい。 (京都府 安井 日和 主婦 46歳) (2018. 5. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
つらい闘病 笑顔に救われた
高校2年の秋、私に突然の病が襲ってきた。告げられた病名は、膠原病(こうげんびょう)。楽しいはずの10代は一変した。 長い長い入院生活。その頃、テレビでは山口百恵や桜田淳子が連日のようにヒット曲を歌っていた。だが私は関節の 痛みやひどい口内炎などに苦しみ、先の見えない日々を送っていた。 そんな中で父は、私の前ではいつも明るかった。毎晩7時前になると、仕事を終えた父の靴音が廊下に響く。「元気か あ?」と笑顔で病室に入ってくるのだ。元気なら入院してない ! といつも思っていたが、冗談を言って笑わせてくれる父は 本当に救いだった。 しかし後に、病院帰りの父は暗い表情だったと母から聞いた。時折、布団の中で声を殺して泣いていたのだという。 そんな父も早90歳。今は認知症で施設のお世話になっている。今度は私が訪ねて行く番になった。状況を受け入れら れずにいる私だが、顔を出せば父が必ず満面の笑みで迎えてくれる。 私の前ではいつも笑顔でいる父は、やっぱりすごい人だ。今、私は父に何をしてあげられるんだろうか。 (大阪府 小西 郁子 地域包括支援センター相談員 60歳) (2018. 5. 19 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
大好きな ボニータ
11歳になる息子とボニータの出会いは、息子が2歳の時でした。ボニータは上野動物園の子ども動物園にいたメスヤギ です。それまで犬や猫など怖くてふれあえなかったので、いつまでもヤギたちのお尻を追いかける息子にびっくり。年に 何度もボニータに会いに行きました。 何年か後、遠くに転居しましたが、この春、関東に用事があり、上野動物園にも久しぶりに行くことにしました。ボニ ータやヤギたちに会いたい、との息子の希望で。 子ども動物園は場所が変わり、展示の様式も様変わりしていました。さらに動物に親しみを持てるような工夫が施され ていましたが、ヤギは少なくなり、ボニータにも会えませんでした。息子は意見箱に大好きだったボニータやヤギたちは どこへ行ったのか、という質問を入れて帰りました。 ゴールデンウィーク前、動物園からヤギのポストカードが届きました。ボニータは3年前に亡くなったこと、マイペー スで好奇心が強かったこと、皆に愛され幸せそうだったことが記されていました。家族で一筋の涙を流した後、ボニータ やヤギたちの思い出を語りあう一晩でした。 (福岡市 古川 千絵 主婦 41歳) (2018. 5. 19 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
次は私が 温かい言葉 かける
私の1歳の子供と友人の3人で先日、ランチに行きました。隣のテーブルには制服姿の高校生2人のお子さんと彼ら の母親が食事をしていました。 まだ上手に食べられない我が子が床にトマトを落としました。すると隣のテーブルの母親が、「小さな子供を連れてく るなんて。床にボトボト落として汚い」とお子さんに話すのが聞こえました。申し訳なく思うとともに、かつて幼い子供 を育てたはずの女性からの発言に言葉を失いました。 いつかこの子が大きくなっても、子育てに奮闘する女性の気持ちを考え、温かい言葉をかけられるようにありたいと思 います。 (兵庫県 島田 育実 主婦 27歳) (2018. 7. 2 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
転用へ官民の役割分担考えよう
今後空き家は爆発的に増え、相続放棄も多発すると懸念される。解体すると高額な解体費用が発生するので、なるべ く解体をしないですむような方策を検討すべきだ。民泊への転用、商業施設への斡旋(あっせん)、低所得者への住宅提供 など安全性に問題のない限り、有効活用する手立てを考える。中には安全性に問題がある物件も出てくると思われるの で、自治体が予算を確保する必要もあるだろう。 ただし、費用をかけすぎるスキーム(註・企画)は自治体財政を圧迫して長続きしない。また、コスト意識の乏しい国や 自治体、第三セクターが中心となるのではなく、運営は原則として民間に任せたい。 一方、行政サイドはこうした政策を後押しするために、固定資産税減免などの税制優遇、外郭団体の設立、シニア層 の活用など、民間企業が活躍できる仕組みづくりを進めてほしい。 (愛知県 高橋 智彦 会社員 49歳) (2018. 7. 18 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
スマホ まずルール作りから
しくじった。 大学生の息子、高校生の娘とスマホの使い方や時間などを決めていなかった。受験生活へのねぎらいで スマホを買い与えたのは2年前、2人の合格通知が届いた日。店で機種を選ぶ2人を見て、妻とほほえましく思った。 通話や検索、映像など、様々な機能を備えるスマホは、これまでの家族の生活シーンを変えていった。その利便性を知 った人間の欲求を阻むことは容易ではない。スマホとの付き合い方には、地道なルール作りが大切だと思う。 会って話す、書いて伝える、自分で味わう、じかに触れる……。スマホ全盛の時代に、こぼれ落ちていく大切なものをい ま一度、子どもたちと話し合いたい。 (大阪府 岸本 卓也 小学校教員 50歳) (2018. 8. 19 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
労働環境改善 労組は本腰を
JR東日本で最大の労働組合、東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)から大量脱退者が出たという。さもありなんであ る。 そもそも現代において、労働組合の存在意義とは何か? みんななんとなく労組に入っていても疑問を感じているのでは ないか。労組は賃上げ以外にはあまりに無関心のように感じる。 労組は、もっと労働環境の改善に取り組むべきだ。セクハラ・パワハラ、内部告発者の保護といった問題に対処し、女 性の社会進出に向き合い、もっと女性役員を登用すべきだ。私自身も、両親の介護と仕事の両立を相談したことがある が、労組は何もしてくれなかった。過重労働と介護が重なり、うつ状態になって早期退職した。過労死や自殺につながる 過重労働は、問題が深刻化する前に労使で交渉すべきである。 そしてドイツのように、経営陣の中に労組の代表を送り込むことを目指すべきである。発想の転換をしなければ、労組 はじり貧になるばかりだ。 (大阪府 井上 直久 無職 67歳) (2018. 9. 2 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
恋愛は悪ではない 見守って
学校で担任の先生から「駅で生徒同士がいちゃついていて見苦しい、海のそばにカップルがいて通りづらいと地域の 人から苦情があった」と聞き、疑問に思いました。なぜ恋愛が悪のように言われているのでしょうか。 カップルはモラルに反することをしていたのかもしれませんが、「男女交際は節度をもって」などと言われると、恋愛が いやらしいものとして扱われている気がします。性につながるからでしょうか。 恋愛は大人も子供も関係ないと思います。大人同士の恋愛は何も言われないのに、子供ばかり責められているよう に感じます。18歳の成人になれば恋愛が何か変わるのでしょうか。 恋愛をしている2人を見つけたら、その時はやさしく見守ってあげてほしいです。恋愛は悪ではないと思うし、力になる ことの方が多いと感じます。 (兵庫県 中川 陽太 高校生 17歳) (2018. 9. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
国民の税意識と役所の信頼
税金の負担は高いが、教育や福祉のサービスが充実するスウェーデン。国民の税意識を報告した「社会機能させる 役割に信頼」(11日経済面)を読み、税金は社会への「投資」だと認識する国民が多いと知って驚いた。 日本の消費税にあたる付加価値税は25%だが、教育費や20歳未満の医療費は基本無料で、高齢者への手当なども充 実。社会形成の歩みが異なるにせよ、日本との大きな違いは国民が税金に寄せる信頼の高さだ。 本来、財政再建や持続可能な社会保障に取り組むには、日本もスウェーデン並みの消費税率が望まれるはずだ。しか し、社会保障の具体的な未来図が描かれないままでは、大幅な増税に多くの国民は理解を示すはずはなく、税金は「投 資」ではなく「掛け捨て」というイメージが続くだけではないか。 スウェーデンでは、国税庁は信頼される役所の上位の常連。税金に対する国民の信頼向上は政治や行政に課せられた 使命だ。ただ、日本の場合、前国税庁長官が森友学園の公文書改ざん問題で、前財務事務次官もセクハラ問題で辞任。 役所の信頼回復が先だ。次元の違いを痛感せざるを得ない。 (兵庫県 福留 大作 会社員 51歳) (2018. 8. 22 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
汚染水 住民の意見重視して
東京電力福島第一原発の汚染水の処理に関する国の公聴会が8月、福島県で開かれた。それまで説明されていたト リチウム以外の放射性物質が含まれることもわかり、「海洋放出」する手法に住民から反対意見が続出したという。 海洋放出を有力視しているのは政府と原子力規制委員会である。私たちは、こうした専門性を持つ集団に任せれば間 違いがないと刷り込まれていないだろうか。 今回の住民の反応は当然のことである。汚染水の処理は生存や環境に直結する問題だ。住民が自らの経験値から生 まれる直感で出した判断を私は信じる。 福島の原発事故を受けて、ドイツが原発廃止を決めた過程に学ぶべきだ。ドイツは当時、専門家による検討に加えて、 専門家以外を含む倫理委員会を設置した。最終的には倫理委員会の意見を取り入れた。事故があれば影響を受ける人 々の考えを重視したのである。 専門家の意見を至上とし、住民の意見はアリバイづくりのため聞き置くだけならば、国はその姿勢を再考すべきだ。汚 染水の問題も十分に議論を重ねて欲しい。 (大阪府 大崎 年章 高校教員 62歳) (2018. 9. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
空き家 壊したら驚きの負担増
築50年の空き家を取り壊した。夫と共働きをしつつ建て、3人の子どもと暮らした小さな家である。隣人が時々、 草取りや見回りをして下さったが、いつまでも厚意に甘えていられない。近所の迷惑を考えて決断した。 更地にして驚いたことが二つある。 その一。 取り壊しの費用である。道路が狭くて不便だったため、家を建てた時の額に近い費用がかかった。もち ろん、貨幣価値は昔と今とでは異なるが予想以上の額だった。 その二。 宅地が更地になったら、私の場合、固定資産税が来年から7倍強に跳ね上がるそうだ。港の近くで、周 囲に空き家が数件もある過疎地である。加えて津波の危険大で利用価値は全くない。壊したことを少し後悔した。 バブル時代の税制の名残なのだろうか。空き家対策特措法が施行されても税制改革がなされなければ無意味であ る。全国的に年々放置された空き家が増加しているとか。前述の2点が解決されなければ、放置されてもやむを得な いと思う。的確な対策を望む。 (静岡県 山本 美亥子 無職 83歳) (2018. 11. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 空き家対策 税制見直し急務 「空き家壊したら驚きの負担増」 (5日) を読みました。空き家の解体に高額な費用がかかった上、固定資産税も跳 ね上がり、後悔したという内容です。 私の場合も同じように実家の周囲の道路が狭く、重機が入れず手作業でしか解体できないので、解体費が建設費 くらいになるので修繕して売却しました。なんとか購入してくださる人が見つかり無事売却できました。ただ、売値は修 繕費より安くしました。昔の家は屋根、壁、柱などすべてにおいて品質が良いので修繕さえすれば長く住めるのではな いかと思っています。 現在の税制は建物を解体して更地にすると、自動的に固定資産税が高くなります。空き家対策を進めるなら、壊す理 由、周囲の状況、環境など様々なことを勘案して税額を決める時代ではないでしょうか。 国会で空き家対策について税制を含め本気で議論をしてほしいと思います。空き家の所有者だけでなく、周辺住民を 含め、国民みんなが困っている問題です。 (岡山県 梶田 寛之 無職 71歳) (2018. 11. 18 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 空き家10年超 売却でき ホッ 「空き家壊したら驚きの負担増」(5日)、「空き家対策 税制見直し急務」(18日)と続いて掲載され、共感しつつ読ん だ。住宅が立っていれば、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1に減額される。だが「空き家対策 特別措置法」では、倒壊の危険や、衛生上の問題があるなど「特定空き家」に指定されると、優遇措置の対象外とな り、実質増税となると定められている。 では危険とみなされる前に、空き家は撤去して更地にして、税金が増額されても仕方ないと諦めるしかないのか。 私の島根県の実家も、両親が他界したため10年以上空き家となっていた。兄弟は更地にしようと提案したが、それ では税金が跳ね上がってしまう。近所の方に手入れをお願いし、時折修理をしながら維持してきた。2年前に市の「空 き家バンク」に登録し、ようやく今春、買いたい人物が現れ無事売却。ホッと胸をなで下ろした。 私個人の事情はともかく、冒頭の疑問や心配は遅々として解消されない。空き家問題が社会問題になりつつある今、 救済措置を含めたきめ細かな税制改革が急務である。 (兵庫県 中島 敏 無職 67歳) (2018. 11. 21 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
そろばん習い集中力アップ
私はそろばんを習っています。兄が習っているのがきっかけで始めました。最初は難しくていやだったけれど、今 では一番好きな習い事です。そろばんのことを多くの人に知ってもらいたいです。 そろばんは約600年前から日本で使われ、今も受け継がれています。注意深く観察する力、イメージやヒラメキの 力、記憶する力、集中する力、情報を処理する力、速く聴き・速く読む力の六つの能力を上げる効果があるそうです。 私も授業で先生の話に集中するようになり、計算も速くなりました。 「古い」「電卓がある」などよく言われます。確かに昔からあるのは事実ですが、便利さだけではない効果や楽しさが そろばんにはあります。次の世代へ受け継がれていくのではないでしょうか。 (大阪府 難波 綾香 小学生 12歳) (2018. 11. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
高度成長時代の夢 追うよりも
恩師が亡くなりました。昆虫学者の須田孫七先生です。生前、東京大学に寄贈した標本が今年公開されたので見に 行きました。驚きました。東京ではまず見なくなった水生昆虫のタイコウチを、1960年の吉祥寺で採集していたのです。 恩師に導かれた少年時代、虫や鳥、獣、植物をよく知る人は決まって言いました。「東京五輪まではこの辺りにもいた んだけど」。当時住んでいた東京・多摩は、64年の東京五輪を機に急速に開発が進み、自然が失われたというのです。 今、東京では再び五輪に向けて工事が進んでいます。東京だけでなく日本中で言えることですが、大規模な開発は本 当にまだ必要なのでしょうか。新たに造らずとも既存の施設を活用する方法もあるでしょう。目先の経済効果より、次世 代に残すべき本当のレガシー(註・遺産)があるはずです。 東京五輪に続き、大阪万博も再び開催されると決まりました。あの時の夢をもう一度、ということなのでしょうが、高 度成長時代の夢をそのまま追わず、自然との共存をはじめとする「これからの時代の夢」を見せてほしいと思います。 (岩手県 柳澤 亮 NPO法人理事 44歳) (2018. 11. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
基地問題 沖縄へ行って体感
10月の沖縄修学旅行で、米軍嘉手納基地へ行った。乗ったタクシーの運転手はいかにも沖縄のおっちゃんという雰 囲気の人で、気軽に話しかけてくれた。ちょうど基地と住宅地を分ける柵が見えてきたころに、「このあたりは飛行機が うるさくてしかたねえ」とおっちゃんはつぶやいた。本土から来た僕たちに気を使ってくれたのか表情は穏やかに見えた が、口調に少し怒りがまじっているように聞こえた。 基地の隣にある「道の駅かでな」にいる間、何度か飛行機が通り過ぎたが、とてつもなく大きな音だった。夜中にも飛 行機の爆音が聞こえるらしく、住民は夜間の飛行禁止を求めている。 沖縄へ来る前は、基地によって沖縄県民の雇用が増えるのではと冷めたことを思っていた。しかし実際に来て、県民 の負担は想像していたよりも重いものだと気づいた。問題を遠くから眺めるだけではなく、、実際に行って話を聞き、自 分の目で見ることがどれほど重要なことなのかを知った。 多くのものに触れながら、自分の意見を作っていこうと思った。 (大阪府 貝柄 敬哉 高校生 17歳) (2018. 12. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
沖縄受難 我がことと考えて
海に近い我が町の上に、爆音をとどろかせて米軍機が頻繁に飛んで来ます。すぐ頭上を飛ぶこともあります。在日 米軍の低空飛行訓練ルートが全国にあり、この辺りは紀伊半島から四国山地を通る「オレンジルート」というそうです。 初めて見たのは18年前。バリバリという爆音に驚いてベランダに飛び出すと目の前に大きな機体。心臓がバクバク し、恐怖で体が動かなくなりました。 つい最近も見ました。散歩中、戦闘機らしい高速の機体。あまりにも低く、1㍍ほどの大きさで目に映りました。こ こはどこの国なんでしょう。オスプレイを見た知人もいます。 35年前、初めて沖縄を訪れた私は海の美しさに感動し、一方で広大な米軍基地に大変なショックを受けました。爆 音、事故の恐怖。沖縄の方たちは長年苦しめられているのです。 名護市辺野古の海に政府が土砂投入を始めました。米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設のためですが、最近の政 府のやり方を見ていると沖縄の方たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになります。いま一度、沖縄で起きていること を、みんなが自分のこととして考えてみませんか。 (和歌山県 松尾 雪枝 パート 71歳) (2018. 12. 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
水道事業 民間任せでいいか
ひと言で言えば水道事業を「民営化」しやすくする法律らしい。改正水道法が6日成立したが、誰にとっても大切な水 に関わることに民間の経営ノウハウを導入するのが適切なのかどうか、私は判断に悩む。 水道事業は人口減少に加え、水道管の老朽化という深刻な課題を抱えている。高度成長期に急速に整備された水道管 は、法定耐用年数の40年を過ぎて使われているのが全国で約15%。更新にかかる費用は莫大だが、事業母体がどこであ ろうと、それほど変わらないだろう。民間企業は、当然ながら採算性を重視する。 旧国鉄の分割民営化を思い出す。JR各社が誕生したが、ドル箱の東海道新幹線を持つJR東海と、JR北海道を比較す れば、単に不採算部門を切り離したに過ぎないとも言えないか。 だが、水道事業に地域差はあり得ない。その維持については税や社会保険料などの負担と同じく、国民が平等に義務 を負うべき時代になったと思えてならない。 本来、それを説くのは政治家のはずだが、その努力を怠り、安易に民間に任せておけといった思惑があるのなら言語 道断だ。 (兵庫県 福留 大作 会社員 52歳) (2018. 12. 20 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
学校と子どもへのいじめだ
先生の勤務時間の長さが社会問題になっています。解消法の一つにテストの採点作業を補助職員にさせる動きがあり ます。でも、これは先生本来の仕事を手放そうとしているとしか思えません。答案を見るのは基本中の基本、重要な先生 本来の仕事であり、一人ひとりの子どもの姿を思い浮かべる貴重な時間であろうと思います まさに先生冥利(みょうり)と思います。 答案に表われた子どもたちの大きな文字、小さな文字から一人ひとりの学習度合 いを読み取る。大事なのはそこに表現された子供の成長の姿ではないでしょうか。併せて先生の教え方が表現されており 先生自身の通信簿だとも思います。それを放棄するなら先生ではなくなります。 そう心配していたところ、大阪市教委がテスト結果を校長の人事評価に反映する方針との報道に接しました。まさに 「学校いじめ」であり、行き着くところ「子どもいじめ」でしょう。こんな環境では「いじめ」はなくなりません。教育 はどこへ行くのでしょうか。子は国の宝。しっかりと時間をかけて磨こうではありませんか。 (滋賀県 鹿山 健三 無職 79歳) (2019. 2. 2 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
命の力 奇跡信じ息子と歩む
4歳半の息子は脳腫瘍(しゅよう)の一つ、脳幹グリオーマです。 治療がとても難しいとされているがんです。2年前の3月 に宣告された時、妻は第2子出産の直前で、夫婦で泣き崩れました。天国から地獄でした。 放射線などの治療法を医師から提案されましたが、余命をわずかに延ばすだけのもので、苦しい入院生活が想像さ れました。私たちは「息子にとって幸せな人生とはなにか?」と考えました。それは我が家に連れて帰って今まで通り暮 らすことでした。医師からは「治療をせずに帰宅する家族は初めて」と言われましたが、私たちは奇跡を信じ、息子と歩 み始めました。 間もなく娘が生まれ、家族に幸せと笑顔が増えました。訪問診療や看護、友人らの支援も受け、余命10カ月と言わ れた息子は元気に生き続け、もうすぐ2年たちます。歩行や着替えに援助が必要ですが、幼稚園にも通っています。 息子と娘がたくさんのことを気づかせてくれました。命の力強さを信じてください ! 自分を信じる勇気をもってくださ い ! 私たちが受け取った愛と勇気が、悲しみと不安の中にいる方々にも届きますように。 (滋賀県 荒木 佑介 会社員 37歳) (2019. 2. 2 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
衝撃 前例も正解もない難題
昨年12月に12回掲載された「てんでんこ 遺言」(総合3面)は衝撃的でした。福島県浪江町の前町長・馬場有(たもつ)さ んに突然降りかかった全町民避難と町役場の移転は「前例も正解もない」もので、町職員と難題に取り組まれました。 原発については安全を信じていたのに、東京電力福島第一原発は事故で危機的状況になります。国や県から放射性ブ ルーム(雲)の正しい情報が届かず、結果的に町民を放射線量の高い地域に避難させてしまうなど苦悩が続きます。 亡くなった方など被害者へ配慮をされ続けた馬場さんは去年6月に逝去。ご冥福をお祈りします。新聞記事でこんなに重 たい気持ちになったのは初めてです。 (大阪府 市原 志文 パート 58歳) (2019. 2. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
みんなに伝えたい福島の現状
「新聞やニュースで実情はよく知っている」。そのような私の考えが、いかに浅はかであったかを思い知らされた。 東電福島第一原発事故のため、いまだ避難指示が解除されていない福島県双葉町と大熊町を訪れた。現地入りした直 後、言葉を失った。ほぼ全ての民家や店舗で草木が生い茂り、外壁が剥がれ落ち、鉄骨が露出している。人影は防護服 を着た原発関係者のみ。他には誰もいない。 「ここは本当に日本なのか」。人が住めない町を見て涙が止まらなくなった。現状から目を背け、未来の日本を語れ ようか。だから私は、その様子を、人々に伝えようと努めている。一人ひとりの理解が日本の飛躍につながると信じて。 (栃木県 屋代 貴之 中学校教員 30歳) (2019. 2. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
保護者からの暴力に傷ついて
私は虐待された子供の保育の支援中に、乗り込んできた保護者から殴る蹴るの暴力を受け、全治2週間のけがを負い ました。傷の手当もしないまま、働き続けさせられました。また、その後、加害者と面談した上司の命令で加害者に謝罪 をさせられるなど、配慮のない職場対応などから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、通院治療中です。 今は暴力被害に関連のあることには強い恐怖を伴って体調が悪化するため、業務は被害前と同じことはしていません。 他の保健師たちをバックアップするような仕事をしています。 そんな中、人事担当者から「給与に見合った仕事をしているのか」という趣旨のことまで言われました。今までも暴力 被害に対する誤解・偏見に傷ついてきましたが、恐怖でさらに体調が悪化しています。 虐待予防支援の最前線にいる保健師は今でも懸命に子供を守るために働いています。その中で私のように保護者か らの暴力被害にあう職員もいます。そうなってしまった職員を守るどころか、切り捨てるような今の体制では子供の命を 守ることはできないと思っています。 (埼玉県 坂爪 なを美 保健師 49歳) (2019. 2. 19 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
沖縄の県民投票
声上げねば犠牲にされる
「沖縄でも私より上の年代の人たちは自分たちが嫌なものをよそに押し付けられないからとはっきり県外移設とは言 わなかった。しかし政府はそれを黙認と受け止め基地を沖縄に押し付け続けてきた。私たちはもう二度とあなたたち本 土の盾にはならないと声に出して言わないと伝わらないのです」 (沖縄県・60代女性) 「米軍はアメリカの国益のために活動しているのであり、日本の防衛・国益のためになにかしてくれるという期待は すべきではない。それでも日本への駐留を望むなら、沖縄への集中配備はやめて、必要だという日本の皆さんで負 担したらいい。海兵隊はグアムに移転すると言っているのに、辺野古に滑走路、弾薬庫、岸壁を新設する必要もな い。何から何までおかしい話だ」 (沖縄県・50代男性) 「沖縄と対話をしない、説明責任を頑として果たさない、日本の国防のためだと民意を無視して工事を進めるなど、 政府、各政治家の発言や行動から沖縄や辺野古の人々は日本国民とみなされていないのだと感じます」 (沖縄県・20代女性) 「日本がいつまでもアメリカの軍事施設に関与しているのはおかしい。日本は戦争をしない国であるし、他国の軍隊 に日本のお金を使う必要は全くない。アメリカの軍事施設のことで、日本人同士が傷つけ合うことがなにより悲しい」 (沖縄県・40代男性) 「すでに基地のある状態の沖縄に生まれ、日常生活においてストレスとなる対立を避けるため基地問題を口にするこ とをタブーとして育ちました。日常会話の中で議論ができる環境になるにはまだ遠いけれど、今回の県民投票は有意義 だったと感じます。米軍基地が日本に必要ならば、不平等な地位協定をこそ変えてほしい」 (沖縄県・40代女性) 「多くの日本人は海兵隊であろうが陸軍であろうが米軍は全て同じ役割を持っていると考えていると思います。日本 のため米軍が必要だと主張している沖縄以外の国会議員がいる選挙区の有権者は、次の国政選挙で民意を示し、 もしその議員が当選したら普天間基地を誘致してください」 (沖縄県・50代男性) 「宜野湾市出身です。納得のできる説明や議論がなされないまま工事を強行する政府の姿勢には恐怖さえ感じます。 どれだけ『反対は無駄』だと言われても沖縄の人々が諦めないのは、散々虐げられ、戦ってきた歴史があるからだと思 います。声を上げなければ、どこまでも犠牲にされてしまう。たとえ辺野古の基地が完成したとしても、これだけ多く の人々が抵抗した事実は歴史に刻まれるでしょう」 (神奈川県・30代女性) (2019. 3. 24 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄 より) |
原発より 再生エネを主力に
27日からの10連休、工場の稼動停止などで電気の需要減が予想されている。九州地方では、太陽光発電を一時的に 停止させる「出力制御」が実施される可能性がある。電力の供給が需要を上回ると、大規模停電の危険がある。危険回 避のため、九州電力が再生可能エネルギー事業者に一時的な稼動停止に対応できるよう周知しているそうだ。 もろもろの反対を押し切って原発は再稼動された。なのに電気が余っても原発は稼動し続け、再生エネにそのしわ寄せ が行くのは時代に逆行してはいないか。再生エネの事業者の減収となり打撃だろう。 原発の出力を急に下げるのは難しいとされるが、独などでは需要減には原発の出力抑制で対応していると聞く。国をあ げて原発を海外にまで輸出しようという技術力のある日本なら出力抑制は可能ではないか。 使用済み核燃料の処理問題、それらの貯蔵プールは満杯目前など数々の問題を原発は抱える。東京電力福島第一原 発事故でも汚染水はたまり続ける。一度事故を起こしたら取り返しがつかない原発である。主要な電源として再生可能エ ネに軸足を移していくのが正しい道ではないか。 (石川県 西山 一也 任用職員 60歳) (2019. 4. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
苦労乗り越えた 世界一の母
私の母は家族のために頑張ってきた世界一の母だ。 母はタイ人で、貧しい環境に育った。長女として、幼い時から5人の弟や妹の面倒をみていた。小4の時、家計を助け るため、家の近くの屋台でアルバイトを始め、稼ぎは全部家に入れていたという。 当時の母の夢は、貿易会社に入って世界を見ること。大学に入ったが、生活費と家族への仕送りを稼ぐのに精いっ ぱいで中退。弟たちの学費を稼ぐため、工場などで働き続けた。 その後、日本に出稼ぎに来て父と結婚。私が小学生だった頃、「将来どんな苦労をしても支えてあげる」という言葉と 共に、昔話を教えてくれた。 私も含め、現代の日本の若者には母のように力強く生きられる人は少ないと思う。家族思いな母を、私は心の底から 尊敬している。 (東京都 伊藤 香 専門学校生 19歳) (2019. 8. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
義務教育段階は 実体験重視 で
柴山昌彦文部科学相は、小中学校へのスマホ持ち込みを「原則禁止」としてきた従来の方針を見直し、新指針を策定す ると表明した。その後の議論を見ていて、私は子どもの所在把握とデジタル機器導入という二つの論点が混在しており、 きちんと整理して、学齢段階ごとに分けて考える必要があると感じる。 大都市では、緊急時の所在把握にスマホが役立つ面があるだろう。しかし、本県など地方では、保護者が「見守り隊」 を組織していたり、地域の目が子どもに十分に注がれていたりする。 持ち込み賛成論者の中には、時代の要請に見合ったデジタル学習の必要性を訴える人もいる。もちろん、学習効果が 出るなら賛成だ。しかし、義務教育段階においては、実体験を重視した学習こそ意義深い のではないか。マッチで火をつ ける。砂や泥の中で遊ぶ。稲を刈る……。自ら体験して五感を鍛えてこそ、共感力や想像力を体得できるからだ。 (山形県 青柳 滋 小学校教員 59歳) (2019. 4. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
春風のような親切
3月のある日、私は急いでいた。家には具合の悪い愛犬がいる。速く帰らなくては、と銀行で用を足し、買い物に走っ た。 途中、陸橋の上で駐車券を財布にしまおうとした。その時、春風が吹いた。駐車券は私の手を離れ、ヒラヒラと舞って 車道に落ちた。 取りに行かなきゃと、きびすを返して階段を下りようとした時、それを見ていた青年が「奥さんは上から見てて。また 券が飛ばされるかもしれないから」。そう言って階段を駆け下り、歩道と車道の柵をとび越え、券を拾って私を見上げ た。私は急いで歩道まで下りて「ご親切にありがとう」とお礼を言った。青年は笑って券を私に渡すと、足早に歩き出し た。 私は素っ気ないお礼しか言わなかったと思い、遠ざかっていく青年に大きな声でもう一度、「ありがとう」と叫んだ。 気がついた青年は、笑いながら片手をあげ、雑踏に消えた。 わずか数分の出来事だったが、私の心にも爽やかで、暖かい春風が吹いた。この親切は、いつか私も他の人にバト ンタッチしていこう。忙しい毎日、でもきょうはいい日になった、と空を見上げた。 (埼玉県所沢市 河北 あつ子 主婦 64歳) (2019. 4. 11 朝日新聞 生活欄 より) |
牛と奮闘 命を無駄にしない
農業高校を舞台にした漫画「銀の匙(さじ)」に小学5年で出会い、ペットでなく牛や豚を育てる姿に衝撃を受けた。中学 2年の夏、農業高校の酪農牛舎で牛を見て「ここしかない」と畜産科に進学を決め、3年生になった。 入学後は、牛乳や卵の生産、豚や牛の分娩(ぶんぺん)に立ち会うなど、すべてが新鮮で感動そのものだった。家畜の 世話は休みがなく大変だが、それ以上に楽しさが上回った。所属する乳牛クラブでは子牛の餌やりや、牛の美しさを競 うコンテストに出場する。自分が担当する牛もいて一番の生きがいだ。 病気や餌を食べない牛をどうするか、薬はあっても万全な処方箋(せん)はない。いかに小さな変化に気づけるか。毎日 が試行錯誤の繰り返しで、家畜と向き合うときには、命を無駄にしないことを一番大切にしている。 大学に進学し農業経済を学び、将来は畜産に関する後継者不足などの様々な問題解決に貢献したい。残り1年の高 校生活も牛たちと奮闘する。 (兵庫県 安田 美琴 高校生 17 歳) (2019. 4. 14 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
そろばんを習うべき理由は
私は小さい頃からそろばんを習うことはすばらしいことだと思う。 まずは計算が速くなる。私は小学3年から中学1年までそろばんをしていた。計算が得意になり、友だちに自慢するほ どになった。そして自信につながる。私はそろばん1級、暗算4段をもっている。これは大きなほこりだ。必死に毎日そろ ばんの練習をやってやっとつかんだ1級だ。そういう苦労をしてとったものは、私の大切な自信につながり、次の挑戦へ の気力にもなっている。 そして集中力がつく。 そろばんの中でも「珠算競技」は、規定の時間内にどれだけの計算問題ができるか競う。その 時間、最大級に集中することが大切だ。私はそろばんのおかげで、学校のテストでケアレスミスが少なくなった。 このような理由から、私はそろばんを小さい頃に経験しておくべきだと思う。 (奈良県 谷口 綾子 中学生 15歳) (2019. 5. 6 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
どう思いますか 京都の景観
京の景観脅かすホテル建設 4月14日=要旨
京都市内の自宅そばに江戸時代に開かれた運河、高瀬川がある。近くで約300年続く京町家が今、市内のホテル建設 ラッシュで憂き目をみている。昨秋、向かいにホテルが建ち、今度は隣接地にもホテル建設が計画中。日照権もプライ バシーも住民にはないのか。 外国人が急増し、来年の東京五輪を前にさらに宿泊需要が優先される。京都市は市民の権利をないがしろにしている と思う。 ヨーロッパでは街並みや景観を厳しく守っているが、京都ではあちこちで町家を解体。景観は元には戻らない。瓦屋根 の街並みや市民のこまやかな暮らしに京都の良さがある。本当の京都の姿を考え直してみませんか。 (京都府 杉田 恒夫 会社役員 72歳) (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 京都でなくなりつつあります 京都の景観を脅かすホテルの建設を憂えるご投稿は、とても身近な問題で、共感しました。今や京都は京都でなくな りつつあります。 京都市東山区に約40年、住んでいます。先日、京都五花街の一つにある住まいから、鴨川沿いを走る川端通に出る までを歩き、びっくりしました。以前は住居だった建物が解体され、更地になっている場所が3カ所以上ありました。すで に建設されているゲストハウスなどの宿泊施設はいくつもあります。どれも簡易な建設です。 一方で、この10年ほど訪日外国人客(インバウンド)が増え、あまりの多さに、四条や東大路は私には歩きたくない通 りになっています。 市長はじめ市の担当の方はどう思っていらっしゃるのでしょうか。細やかに歩いて街の声を聞き、街がどうなっている のか把握してほしい。早急に対策を立てないと大変なことになりますよ。 (京都府 中西 千栄子 自営業 70歳) (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 子供たちに良いもの残して 小学生の2人の子供は歴史が好きで、休日は家族で京都観光を考えます。しかし夫は、観光客と通行車両で混雑する 街や、神社仏閣とビルが混在した違和感のある景色に息苦しさを感じると言って行くのを嫌がります。 先日、子供たちと奈良県の高取城址へ行きました。道中、「土佐街道周辺景観住民協定」という看板を見つけました。 城下町の古い町並みとの調和を図るため、建築様式や屋根、外壁の色などに配慮するよう七つの「心得」が掲げられて いました。強制力はありませんが、歴史的な景観を守りたいという住民の素敵な心意気が、看板のある通りに生かされて いました。 京都の歴史的な景観と住民の暮らしを守るには、便利さばかりにとらわれることなく、変えるべきもの残すべきものに ついて丁寧な議論が必要でしょう。子供たちに良いものを残すため、日本全体のモラルが問われていると思います。 (大阪府 上杉 華 主婦 44歳) (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 「観光立国」両立できる姿を 街で守り続けてきた文化財などを外国人向けの観光資源とする考えは、「観光立国」を標榜(ひょうぼう)する今の日本にと って当たり前の流れになっていると思う。よく訪れる京都は、大阪に住む私にとっても、とても身近な存在だ。祇園や河 原町、鴨川……。中心街にある町家が外国人観光客向けの宿泊施設へ急速に変貌を遂げるのを目の当たりにしている。 外国人客が市街地で宿泊し、名所や社寺を効率よく巡ってもらえれば多様な業種で収益が見込める。観光客にとって も市外で宿泊して京都入りするより便利に違いない。観光業界と客側の利益の一致が景観を変貌させている一因だろ う。 しかし、町家などが醸し出す古都の雰囲気がいったん損なわれたら、回復は難しい。街のおもむき、市民が営む日々 の暮らしを観光客に感じてほしい。でも、経済活動も欠かせない。両立できる京都の姿を市民や識者の目で見つけてほ しい。難しいが、待ったなしだ。 (大阪府 熱川 英明 塾講師 69歳) (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 景観保全には公的支援不可欠 京都が大好きです。清水の舞台から見た景色が忘れられません。京都では元々、建築物や屋外広告物に関する厳 しい規制が敷かれており、高層ビルは少なく、マクドナルドなどの看板も原色を避けて歴史的景観に配慮しています。 町家が減ると京都らしさが失われます。町家の外観は残すけれども、内部は現代人の生活に合わせてリノベーショ ンしたり、たとえ鉄筋コンクリートでホテルを建築するとしても、京都らしいデザインにしたりすることは可能です。 神社仏閣のような荘厳なホテルだったら、きっと外国人の人気を集めるでしょう。そして、景観保全に向けて関係者の 協力を仰ぐには、補助金支給や固定資産税減免など公的な財政支援策を用意しないと、絵に描いた餅になりかねま せん。 一度失ったものは元に戻りません。京都のよさは古きもの、新しきものが融和している点にあります。京都の景観は 日本の財産。後世に残してほしいです。 (神奈川県 木村 賢治 地方公務員 51歳) (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) 適切な管理の「技術」大切 京都府内に40年以上暮らす東洋文化研究者の米国人、アレックス・カーさん (66) 私は観光立国には賛成ですが、町家を壊し、乱開発が続くと、京都の歴史ある町並みはおかしくなります。大切なのは 適切な管理やコントロールの技術です。 同様の悩みを抱えた世界の観光地では、観光客の「総量規制」と「誘導対策」の両輪で対応しています。 例えばオラン ダのアムステルダムでは条例で中心部でのホテル新規建設を原則禁止し、観光バス乗り入れを制限。スペインのバルセ ロナでも同様に中心部で新規ホテル建設を禁じています。 京都でも街の空洞化を危惧する住民、商店街が行政を動かし、共に知恵を絞らないと。中心部での町家取り壊しや新 規宿泊施設禁止に踏み切っては。経済効果と景観破壊の調整を皆で考える。また、公共工事も発想の転換が必要です。 電線埋設一つとっても実現すれば景観は劇的に良くなるし、ゼネコンが仕事に困ることもありません。 (2019. 5. 29 朝日新聞読者寄稿 声voice 京都の景観欄 より) |
楽しんで 頭 と 体 をほぐす場に
私はインターナショナルスクールの教員だが、部活動のあり方が日本の学校とは違うと感じる。現場に就いてすぐバス ケット部のコーチを任され、その「ゆるさ」に驚いた。部員の参加はまちまち、先輩後輩の区別も厳格でなく、人数が集 まればすぐ練習試合をする。週末を練習に費やすこともない。当初は「これでは強くなれない」と思った。 同僚の米国人教師に疑問をぶつけると逆に質問された。「部活動はあくまで生徒の学業を支えるためにあるんじゃない か」と。目からうろこだった。日本の学校しか知らなかった私は、部活動には献身的に打ち込むものと思い込んでいた。 しかし、それが本当に部活動の唯一のあり方なのか。迷いが生じた。 そして大きな発見をした。生徒たちが実に楽しそうなのだ。勉強で凝り固まった頭や体をほぐすように部活動の時間を 使っている。こうした部活動があってもいいのではないか。私は提案したい。 (京都府 木村 有伸 教員 42歳) (2019. 6. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
「いじめは犯罪」 皆で伝えよう
私は小学校でクラスメートをいじめた。転校生の彼は発語が少し不自由なだけだったが、からかうには十分だった。 日常化した。彼は言葉で反撃できない鬱憤(うっぷん)を時に泣きながら爆発させた。それがまた面白かった。人の親にな って初めて彼へのいじめを悔いたが、遅すぎる。 若い人がいじめを苦にして自殺する事件が後を絶たない。表沙汰になっていつも語られるのは、自殺した子とその親 の「悲惨」、事実の隠蔽(いんぺい)と保身に走る学校関係者の「ひきょう」だ。なぜか、絶対にいるはずの加害者が出てこ ない。代わりに、子どもを取り巻く環境や機能不全な教育現場のシステムなど「いじめる理由」が解説される。いじめる のに深い理由なんてない。面白いから、自分の身が可愛いからやるだけだ。 社会的背景があるとしても解決には時間がかかり、今いじめられている子には救いがない。救えるのはまず先生だろ うが、良き師と処罰する役の両方を担わせるのは酷だ。 「いじめ」と称しているが、実際は犯罪行為だ。その意味を、私たち大人が事あるごとに子どもたちにはっきり伝える。 人の命がかかっている。そう思い切るしかない。 (福岡県 天本 満博 無職 66歳) (2019. 6. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
学校に携帯持参 ぼくは反対
授業で学校に携帯電話を持ってきていいかを話し合いました。ぼくは、学校に携帯電話を持ってくるのは反対です。 なぜなら、携帯を使いすぎて、成績が下がるからです。全国学力テストの国語の平均正答率をくらべると、携帯を1日 4時間以上使っている人が約60%、30分未満の人が75%です。 次に、イジメがおこる可能性があるからです。今の時代は携帯を持っている子が多く、携帯を持っていない子が仲間 はずれにつながるかもしれないからです。 もう一つは、目が悪くなるからです。休み時間にずっと携帯をさわっていたら、目が良かった人も、どんどん目が悪く なる可能性があるからです。 携帯を持ってくるメリットもありますが、デメリットの方が問題になることが多いので、反対です。 (大阪府 赤崎 心(しん) 小学生 11歳) (2019. 8. 27 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
見えないお金 便利さに怖さ
最近ではクレジットカードだけではなく、電子マネーやスマホ決済など、キャッシュレス決済が急速に普及している。 これほど種類があると、仕組みや特徴、リスクなどを正しく把握できず、その便利さに怖さを感じることがある。 コンビニでアルバイトをしているが、利用者は急増し、一人で4種類を使い分ける人もいる。しかし多くの人が正しい仕 組みを理解していないのが実情だ。トラブル時は解決方法を探るが、その場で対応しきれないこともある。私も知識を 深めなければと思った。 先日おつかいに来た子どもには驚いた。「カードに(お金)入っているからなんでもいける」と、値段を気にせず商品を選 んでいる様子だった。まだお金の仕組みを理解できていない小さな子どもには、利用制限も必要と感じる。 別の日には小学校高学年くらいの友達どうしが「あと3円出すとお釣りがまとまるよ」と話していた。現金ならではのお 金の使い方もこういう場面で養われる。現金でのやりとりも大切にしたい。 (兵庫県 多田 衣里 大学生 21歳) (2019. 8. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
失敗を恐れずに挑戦したい
僕の好きな言葉の一つに「成功の反対は失敗ではなく、挑戦しないことである」があります。今まで、迷っているうちに タイミングを逃して出来なかったことや、失敗を恐れて実行できなかったことがあり、この言葉を知った時、あの時は、 自分から成功とは反対の行動を選んでしまったのだと反省しました。 同じ後悔でも挑戦するのとしないのとでは確かに違うと思います。挑戦する前は勇気もいるし、結果が必ず成功する わけではないので落ち込むこともあると思います。しかし、挑戦したからこそ結果が決まり、その結果を次につなげるこ とができます。 この言葉は、失敗を恐れず挑戦することも成功するための努力の一つなのだと、頑張る力を与えてくれました。何事 にも挑戦していきたいです。 (香川県 藤川 誉積(ほずみ) 中学生 13歳) (2019. 9. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
若い人ががんばって 農業 を
わたしは5年生の時に習った、若い人が農業をやらなくなっているということを考えなければいけないと思います。若い 人ががんばり、今働いている高れい者のお手伝いをしたらいいと思います。 農業は1965年は1151万人いたのに、2005年は335万人になっています。日本で生産するごはんの量も年ねん減って います。2017年度の食料自給率は38%です。日本が他国と貿易などをしていなかったら、今ごろ日本は食料不足におち いっていました。いろいろな他国の人と仲良くなれたとしても、自分の国で食べ物を作ることは大事なことだとすごく思い ます。 今、日本に人が生きているのは祖先がお米などを作り、生きてきたからです。若い人がもっとがんばり、未来の子ども たちにたくしていけることを願っています。 (大阪府 鈴木 凜音(りん) 小学生 11歳) (2019. 9. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
スマホ なくても 楽しく充実
以前、スマホを持っていなくても最低限の情報は回ってくるし、元気に生きているという高校生の投書を読んで強く 共感した。 私もスマホを持っていない。でも、ピアノを弾いたり本を読んだりして好きなことや打ち込めることがあるので欲しい と思わない。 最近、「スマホがないと生きていられない」というほど、はまっている子どもが多いと感じる。それはスマホを触るこ と以外に好きなことがないからではないだろうか。 SNSのトラブルや友だちとのけんかにつながる危険性がある。小・中学生が使い方を間違えてトラブルに巻き込ま れるのは絶対に防がなければいけない。 使い方に気をつけてスマホを持つという選択もあるが、判断力が弱い子どもの頃はスマホを持たない方がいいと思 う。スマホがなくても、私は楽しく充実した日々を送っている。 (大阪府 松本 梓 中学生 13歳) (2019. 9. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
法王に平和のメッセージ期待
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が11月23日から訪日し、24日に被爆地の長崎と広島を訪れることが 決定した。広島で4歳のとき爆心地から約1.5㌔離れた自宅で被爆した私はとてもうれしい。 ローマ法王の来日は、1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶり2度目となる。2013年に就任以来、フラ ンシスコ法王は世界各地で続く紛争や戦乱、人権問題の憂慮を示し、現場に赴いて解決を促す姿勢を続けている。 14年にはトルコ訪問の帰路の記者会見で、「広島と長崎から、人類は何も学んでいない」と核廃絶が進まない現 状を批判した。また17年末には、原爆投下後の長崎で撮影されたという「焼き場に立つ少年」の写真をカードに印 刷し、教会関係者に配布している。被爆地から核兵器廃絶のメッセージを世界に訴えてほしい。 訪日でもう一つ関心を持ったのは、死刑が確定して再審請求中の袴田巌さんとの面会を調整していることだ。死 刑廃止を提唱していると言われ、日本をよく勉強されているのに驚く。平和と人権が守られる世界へ弾みがつくこと を期待したい。 (広島県 亘 幸男 無職 78歳) (2019. 10. 9 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
ヘアピン届けた娘へ
さわやかな秋晴れとなったある日の夕方、電話が鳴った。駐在所からだった。何があった? 「お嬢さんがヘアピンを拾ったので届けに来てくれました」。小学4年の娘が学校帰りに落ちているのを見つけたか ら、とのこと。ヘアピン1本……。 「拾得物の場合、調書を作成しますので、少し時間がかかります」と言われ、いくつかの質問を受けた。答えながら、 大ごとでなくて良かったと安心する一方、軽微なことで警察の方に手間を取らせてしまった申し訳なさを感じた。 すると、最後にこう言って下さった。「お金であれ何であれ、拾った物を届けるのは良いことですから、帰られたらど うぞ誉めてあげて下さい」 すぐに娘を迎えに行った。私を見つけて手を振っている。放課後の陸上の練習を終えた娘の額は少し汗ばんでい た。「落ちたままだったら踏まれるかもしれないし、届けたら、はい、ありがとう、で終わると思ってた」 田んぼの脇を2人で帰った。娘よ、どうかこのまま大きくなって。優しい駐在さん、ありがとうございました。収穫を 待つ稲を揺らし、風が渡っていった。 (松山市 松田 純子 主婦 47歳) (2019. 11. 1 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
ひととき
本当に キャッシュレス?
消費税の増税に伴い、キャッシュレス化が進んでいる。クレジット払いや「○○ペイ」を使えば支払金額の5%が還 元されるとか。 カードは怖いと思ってしまう私は昭和のおばちゃん。来年6月までのメリットなら現金で済ませようと思っていたが、 よく考えてみれば結構大きな金額ではないか。大学生の息子の手ほどきで○○ペイに申し込んだ。引き落としは本 人口座のみ。わずかのパート収入しかない私は口座の残高も少ない。使った分、きちんと入金しなければ。 早速ドキドキしながら使ってみたが、「本人確認ができていません」と表示され、うまくいかない。再度息子に習い、 ついにパン屋で590円の支払いを完了。30円相当が戻るはずだが、これってお得だよね? 次に写真屋で使おうとしたが、またうまくいかない。ちょっと年下かな、という感じの店のお姉さんもよくわからない らしい。結局、現金で払った。帰って息子に聞くと、利用できる限度額を超えていたようだ。 とりあえず忘れないように、パン屋の590円を入金しようと銀行で現金をおろし、引き落とし口座に入金。でも、これ ってホントにキャッシュレス? (大阪府羽曳野市 安田 真理 パート 56歳) (2019. 12. 26 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
立法22年 描いた夢に出会えた
23歳の大学生の投稿「相手を知れば優しくできる」(19日)が目にとまった。電車でおばあさんに「座りませんか」と とっさに声をかけた。その行動ができたのは、教員免許取得のための介護体験があったからだと。 教員免許の取得要件に、高齢者施設や養護学校などでの体験を義務づける「介護等体験特例法」は、1997年に 成立した。この法律は私が在職中に手がけた数本の議員立法のなかで、最も苦労したものである。 人の尊厳や痛みを知ることで、社会連帯の認識を深めることが肝要だと考えていた。当時当選4年目の駆け出し 議員。法制化には文部・厚生両省を説得せねばならず、「義務付け」をクリアするのに、至極難渋した。委員会での 法案の趣旨説明では、「質の高い人材を教育現場に提供するよう制度を整えることは国家の義務です」との信念を 披瀝(ひれき)した。 あれから22年。当時1歳だった投稿者の文面は、私の心を大きく揺さぶった。「高齢者の方々と接し、その暖かさ、 懐の深さを知った」との素直な表現は、まさに私が求めていたもの。理想としていた人物像が突然はっきりと姿を現 してくれた。 人生にこんな感動があるのだろうか。 (東京都 田中 真紀子 元衆院議員 75歳) (2019. 12. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ひととき
母がのこした手帳
母の遺品を整理していたら、バッグの中から2018年の手帳が見つかった。そこには「みのりに行く、楽しい」と毎 日同じ文章がつづってある。「みのり」とは、母が通っていたデイサービスの施設の名前だ。 認知症になった母をわが家に呼び寄せたのは2年前の5月。当初は札幌の生活になじめず寂しそうだったが、デ イサービスに通うようになり笑顔が戻った。親切なスタッフさんや施設に通う方たちと触れ合うのが楽しいらしく、週 に6日間通った。 手先が器用な母は、折り紙、塗り絵、手芸など何でも上手にできた。「すごいね」とほめられてうれしそうだった。 塗り絵部門で一番になったと、スタッフさん手作りのメダルをもらってきたこともある。 母は昨年10月末から体調を崩した。病院へは行きたがらなかったが、デイサービスには1月半ばまで欠かさず出 かけた。 だが、あっという間に衰弱して、2月半ばに天に召された。 11月からの手帳のページは空白だった。我慢強かった母は、痛みをこらえて元気を装っていたのかもしれない。 空白のページを見るたびに、切なくて目頭が熱くなる。 (札幌市 佐藤 文子 会社員 60歳) (2019. 8. 8 朝日新聞読者寄稿 生活欄 より) |
白鵬 の取り口 批判おかしい
初場所前の稽古総見での白鵬の取り口が一部で取り沙汰されている。相撲を格闘技と思っていない人たちの声をそ こまで取り上げる必要があるのか。 立ち合いでの張り手やかちあげは、力士が自分有利に取組を運ぶための技だ。昭和の大横綱である大鵬も北の湖も かちあげを使っていた。決して白鵬の専売特許ではない。それを知った上での批判なのだろうか。横綱審議委員会が 苦言を呈しても協会幹部は問題にしていないようだ。元力士の親方衆は、張り手もかちあげもやめさせねばならないよ うな技でないことを承知しているからではないか。ボクシングのパンチのように、相手にダメージを与えることを目的とし た技ではない。当たる部位やタイミングによっては多少のダメージはあるだろうが、それも相撲という格闘技の醍醐味だ。 大事なのはその技自体が目的ではないし、反則でもないということである。横綱の品格を持ち出す人もいるが、まった く別次元の話なのである。 (奈良県 早瀬 元博 無職 62歳) (2020. 1. 14 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
席譲ってくれた女性の「うそ」
博多駅まで電車で出かけた日のこと。高齢に足の悪さが加わり、立っているのがかなり苦痛なのだが、空席はなかっ た。車内の皆様は日頃の仕事と勉強の疲れからか居眠り状態だ。スマホを触っている人も多い。 人のことなどかまっている余裕はない。無理もないと思う。「杖を頼りに立っていこう」と覚悟した時、声がかかった。 高校生と思われる色白の女性であった。 「どうぞあちらの席に座ってください」と言う。固辞したが「私はすぐに降りますから」と言って譲らない。厚意に甘え ることにした。彼女は隣の車両へ移っていった。 ところが、目的地の改札で彼女とばったり顔を合わせた。「先ほどはありがとう」と礼を言うと、彼女はほおを赤らめ 「うそをついてごめんなさい」と頭を下げてきた。 さりげない思いやり。 私は一生忘れないであろう。 (福岡県 三宅 隆吉 会社員 80歳) (2020. 1. 21 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
国籍に関係ないチーム 誇り
ラグビー・ワールドカップの日本代表選手をテレビで最初に見た時、「ダンサーの関口メンディーみたいな濃い顔の 人がいっぱいいるな。本当に日本のチームなのか?」と思ったが、日本語がうまくて驚いた。 ラグビーの代表資格は、国籍ではなく、生活している国や地域を重視していると知った。日本人でなくても代表選手 になれるのはとてもよかったと思う。 「違和感がある」「日本のチームではないみたい」 という声があるようだが、それは一人ひとりの考え方なので、ど う思ってもいい。でもその意見を押しつけて、国籍が日本の人だけになったら差別ではないか。 どんな国のどんな顔の人がいても、国籍に関係なく一つのチームで感動を与えてくれた選手を私は誇りに思う。他 の競技もラグビーのような考え方が採用されたらと願う。 (兵庫県 福田 一花(いちか) 中学生 13歳) (2020. 1. 21 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
「寅さん」 見て少年時代思う
元日、22年ぶりの寅さんの新作映画を見てきた。我々の世代だと、1960年代の植木等さんらクレージーキャッツの 「クレージー映画」のあとを継いで笑いを誘ってくれた映画が「男はつらいよ」だった。 50作目の今作品は、「笑い」というよりも「しみじみ感」が残った。それもそのはず、過去の作品に登場したマドンナ たちが次から次とスクリーンに現れた。八千草薫さんら、すでに鬼籍に入ったマドンナ役も何人かいた。「昭和も遠く なりにけり」だ。 特に妹さくら役の倍賞千恵子さんの若いころの姿に、たちまち少年時代に引き戻された。その美しさにボーッと したのが彼女だった。「下町の太陽」で歌手デビューしたころだ。 美貌とかわいらしさの両方を兼ね備え、演技力、歌唱力のある俳優だと、寅さんを鑑賞して改めて感じた。 (京都府 原田 義明 会社非常勤顧問 70歳) (2020. 1. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
ウィンドウズ10 にして疲れた
使い慣れたパソコンを買い替え、とにかく精根尽き果てた。基本ソフト「ウィンドウズ7」の更新サポートの終了には 納得できないが、使用を継続するとウィルス感染の危険があるとのことで、仕方なく家電量販店に向かった。 便利なネットは日常で使う。悔しいがパソコンメーカーの無料サポート付きの「ウィンドウズ10」製品を購入した。し かし、その後1週間、何度も悲鳴を上げた。同じウィンドウズでも、「7」と画面の表示も使い勝手も違う。ヤフーメール の文字の大きさがうまく変えられず、メーカーのサポートに問い合わせたり、量販店を訪ねたりした。ヤフーには電話 での問い合わせ先がなく、量販店も「故障ではないのでこれ以上の対応は有料」とのこと。 買ってすぐなのに有料とは…。不便なまま使っているが、私のようなIT弱者はどうすればよいのか。 (徳島県 那賀川 恵子 主婦 66歳) (2020. 1. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
思考を重視し 堂々と意見を
高校1年の夏から1年間、カナダの高校に留学した。通ってみて、日本とのテストや授業の違いを感じた。日本では歴 史のテストなら何年に起きたか、その出来事を何と言うかという問題がよく出る。 しかしカナダでは、○○事件はなぜ起きたのか、もしこの事件が起きなければ世界はどうなったと思うか、となる。 科学では日本なら元素記号や化学式を覚えて答案を書くが、カナダでは元素表が試験用紙に載っていて、それを見な がら「化学物質の性質について説明せよ」などとなる。 授業の様子も違う。日本は先生の説明と板書が中心。カナダは生徒に考えて話をさせ、生徒は疑問に思ったことを先 生にすぐに質問する。授業中に眠くなんてならない。 欧米ではこういう授業スタイルが小中学校の頃から一般的だと聞いた。最初は緊張し不安だったが、慣れてくると授業 が本当に楽しく感じられた。そしてこのような授業スタイルが欧米人の発言力につながるのだと思った。暗記重視から思 考重視の学びへ日本も早く移行し、世界で堂々と意見を述べ、議論できるようになればよいと思う。 (京都府 細見 伊吹 高校生 18歳) (2020. 1. 16 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
「共犯者」の関電 料金値下げを
関西電力に原子マネーが還流していたとの関電を巡る一連の記事を読み、驚いている。役員ら75人が3億6千万円相 当の金品を福井県高浜町の元助役から受け取っていたと、第三者委員会が公表した。還流したお金の原資は、市民の 電気料金だ。 私は夫婦二人の年金暮らし。関電の関連会社の勧めで電気とガスのセットプランに入り、月1万数千円を支払ってい る。 関電の社内調査では、受領者は23人としていた。委員会の調査で大幅に増えた。関電には全く自浄作用がない。電 気利用者の多くがあきれ果てているだろう。時に1千万円もの金品を元助役から受け取った役員らについて、第三者委 の委員長は「共犯者」と語った。 17日の続報記事によると、東日本大震災後、関電は電気料金を値上げし、その前提として役員報酬をカット。だが退 職後、秘密裏に補填(ほてん)したという。非常に策略的だ。会社の体質だろうか。嘱託となった元副社長に月490万円支 払い、うち90万円が補填だったという。その金銭感覚が分からない。 利用者として私は怒る。料金値下げに真剣に取り組むよう求める。 (大阪府 園部 健一 無職 84歳) (2020. 3. 22 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
子と離され 一晩鳴き続けた母牛
小学校低学年の頃のこと。毎年1回、子牛の競り市が私の住む村で行われていました。 その朝、子牛を連れた両親と一緒にでかけました。大勢の観客と家畜商のおじさんたちが見守る中、子牛を引いた父 が柵の中へ。1周する間に、子牛の値が徐々に上がっていきます。 思いのほか高値がついたので両親は大喜びです。当時は高値で珍しかったバナナを私に買ってくれ、私もうれしかっ たのを覚えています。 しかし帰り道。一緒に連れて行った、あのかわいい子牛の姿はもうありません。家に近づくにつれ、「モォー、モォー」 という大きな鳴き声が聞こえてきました。母牛が、子牛をさがして泣き叫んでいたのです。 その夜、母牛は鳴いて鳴いて……夜通し鳴いていました。私も布団の中で、一緒になってオイオイ泣き続けました。 翌朝には声もかすれ、それでもなお出ない声で鳴いている母牛。その顔を見ると、ドングリ眼の下に涙の筋が、何本も ついていました。今も母牛の胸中を思うと涙がこぼれてきます。 (東京都 今泉 洋子 主婦 76歳) (2020. 4. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄 より) |
大根の葉 捨てずに食べられた
私の家は農業をしています。今、食品ロスが問題となっており、まだ食べられるのに捨てられる食品があります。その 捨てられた食品を世界で困っている人たちに届ければ、助けられるのにと思います。父が一生懸命作った野菜がどこか で期限切れで捨てられていると考えると、とても悲しくなります。 私の学校では、滋賀県の農場で大根やサツマイモなどを作らせてもらっています。大根を収穫した時、大根の葉っぱ は捨てずに食べられると校長先生から教えてもらいました。それまでは葉っぱを捨てていたけど、細かく刻んでちりめん じゃこと一緒にごま油で炒め、しょうゆなどで味付けすると、とてもおいしく食べられました。 これも食品ロスを防ぐ対策になると思います。食べ物をむだにしない方法を考えて、生活していきます。 (京都府 村田 リサ 中学生 13歳) (2020. 4. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
隠れた技術 「エアそろばん」
小学生の頃に通っていた習い事の中で、大人になった今でも役に立つと感じるのがそろばんだ。 「今時そろばん? 電卓やパソコンがあるじゃない」という声が聞こえてきそうだ。確かに、買い物へ行く時、わざわざそ ろばんを持って行かない。正確に計算したければスマホの電卓を使う人が多いと思う。 私は買い物へ行くと頭の中にそろばんを思い浮かべる。スマホを取り出すより「エアそろばん」、つまり暗算の方が早 い。自分が買う商品の合計金額がいくらになるか、すぐに判断できる。なによりスマートだ。お釣りが正しいかどうかも すぐにチェックできる。 そろばんを通じて身につけた暗算力や計算スピード、正確さは、なかなか代用されにくいと思う。多機能な電卓やハイ スペックなパソコンと並んで、「エアそろばん」は隠れた技術の一つではないだろうか。 (山口県 山本 美幸 主婦 42歳) (2020. 4. 7 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
人生百年時代 先取り
長年ひとり暮らしだった祖母が99歳で亡くなるまで、80代後半から10年あまりを私は一緒に暮らした。女性の平均寿 命が80歳を少し超えたころ、まだ40代だった私には、90歳が近づいた祖母をひとりにしておくわけにはいかなかった。 しかし、心配する必要はなかった。戦前をアメリカで過ごしていたからだろうか、祖母の一日は、年齢からは想像でき ないとっぴな考えと元気いっぱいの行動にあふれていて、同居生活は驚きの連続だった。 趣味はパチンコ。定期券を作って、着物姿で電車で街まで通い、景品の菓子を手土産に意気揚々と帰宅した。ベッド ではアクロバットまがいのストレッチを欠かさず、大声で発生訓練をするのも日課だった。どれもボケ防止だったのだと、 いまでは理解できる。健康意識が高かったのだ。 70代を迎えて私はいま、エアロビクスと卓球に燃えている。脚立にのぼって庭木を刈込み、朝日に染まる浜辺までカ メラを担いで自転車を飛ばす。こんな自分の姿は想像したこともなかった。これも祖母との同居生活のたまものなのだ と思う。あんがい、祖母は人生百年時代の先駆者だったのかもしれない。 (津市 丹羽 美香 薬剤師 72歳) (2020. 5. 22 朝日新聞読者寄稿 生活欄より) |
孫との菜園で知る農業の力
新型コロナウイルス感染拡大で、長男はテレワーク、4歳の孫娘の幼稚園も休園が続いた。生後7カ月の孫息子を抱 く長男の嫁と私が加わり、週末の退屈しのぎに畑仕事をしている。 数週間前、孫娘が顔に泥をつけて大騒ぎしながらトマトとピーマンの苗を植えた。最近、トマトは黄、ピーマンは白の 花をつけた。小ぶりだが美しい。花をなで回して騒ぐ孫娘に、一家が笑いに包まれた。自粛生活の一服の清涼剤だ。 これから赤いトマトや緑のピーマンが実ると思うとさらに楽しくなる。大地から食を生み出す農業の力を改めてすごい と感じる。 コロナ禍で今後、農産物の安定輸入は大丈夫だろうか。我が家がある弥生時代からの稲作地帯、出雲平野でも耕 作放棄地が目立ちつつある今、農業の大切さが再認識され、孫たちに豊かな食生活を送ってほしい、などと思う週末 であった。 (島根県 猿木 浩二 会社員 61歳) (2020. 5. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「カタカナ用語辞典」 日々改訂
「一般的でないカタカナの外来語を、紙面で安易に使わないでほしい」との声が読者から届く(16日本紙)とありました。 最近「ソーシャルディスタンス」「クラスター」などカタカナ語が多すぎると私も感じています。新型コロナウイルスの感 染が拡大してからは目に余ります。 85歳の母は新聞を毎日2時間かけ読み、テレビでニュースをよく見ています。でも「ソーシャルディスタンスって分かる? アライアンスは?」と聞くと「最近の新聞は意味がわからない」とつらそうにします。 そこで私は、コロナ関連で耳にするカタカナ語とその日本語の一覧をパソコンで作成し母に届けました。 でも「フィジカルディスタンス」「ロードマップ」と新たな言葉が続々。こうなると、日々「自作カタカナ用語辞典」を改訂 しなければいけないのかなとも感じています。 (福岡県 小田 清子 無職 63歳) (2020. 5. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
めぐみさんの心思う 同い年の私
私は横田めぐみさんと同い年だ。出身地もめぐみさんが暮らした新潟の隣県である。 折に触れ想像する。 11月半ば、中一の女の子が部活動を終え、とっぷり暮れた寒い家路を急ぐ。頭に浮かぶのは「早く家に着いて、お母 さんのあったかい料理が食べたいな」。 「その時」の恐怖と混乱はいかばかりだったろう。やがて事実を理解したときの絶望感は--- 13歳だったころの自分を重ね合わせると、筆舌に尽くしがたい思いを抱く。 それでもめぐみさんは、「お父さんとお母さんがいつか必ず迎えに来てくれる」と希望を捨てなかったに違いない。 娘の願いを痛感していたからこそ、めぐみさんの父・滋さん、母・早紀江さんはすべてをなげうち、国や人々に拉致問 題解決を訴え続けてきたのだろう。 滋さんの訃報に接し、言葉が見つからない。夫妻の血のにじむような40年以上にわたる渾身の活動を、いま改めて 政治家たちに思い起こして欲しい。いつの日か、おふたりが報われる日が来ることを切に願う。 (東京都 大野 香 会社員 55歳) (2020. 6. 9 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
差別根絶へ「NO !」 声上げる
米国で黒人男性が白人警察官にひざで首を押さえつけられて亡くなったニュースを見た。小学時代、父の仕事でドイ ツに5年間住んだが、旅したフランスの飲食店で初めて家族揃(そろ)って差別を感じた記憶が蘇(よみがえ)った。 明るい前の席が多く空いていたのに、案内されたのは奥で端の暗い席だった。黄色人種の客がそこに集められ、白 人客は明るく広々とした席に通された。父が何度も注文しようと手を挙げても、店員は見て見ぬふり。後から手を挙げ た白人客を優先し続け、嫌そうな顔をしながら来たのは20分もたってからだった。 体の臓器が宙に浮いたような不安な感覚、悔しさ、悲しさ、様々な感情が心にあふれかえり、料理の味はよく分から なかった。私たち自身が1度体験したことと、黒人の方々が生まれながらに味わってきた、命を奪われるほどの激しい 差別とは天と地の差があるだろう。だけど「人種差別を根絶したい」という思いは同じだと思っている。 私には影響力も経済力も無い。だからせめて差別を目にしたら、「NO !」と伝えたい。肌の色で位付(くらいづ)けをする 悪(あ)しき慣習を、私たちの世代で終わりにするために。 (東京都 小関 菜々花 中学生 14歳) (2020. 6. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「不要不急の通院」考えて
月に一度、心療内科に通院しています。病状も安定していたので、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出てい た5月14日までは電話診療にしていただきました。 宣言が解除され、2カ月ぶりに病院へ行くと、いつも満杯の駐車場も満員の待合室もガラガラ。感染を恐れて多くの人 が通院を控えていると聞いていましたが、ここまで「不要不急」の患者が多かったとは思いませんでした。 コロナ禍以前は、診察しないと薬を出せない病院が多かったと思います。しかし、体調が安定している場合など、電話 診療で事足りることも多いと思います。 「3時間待ちの3分診療」が解消され、医師の激務の緩和や医療費が抑えられるなど、患者・医師・国の三方良し。「不 要不急の通院はしない」を「新しい生活様式」に付け加えていただきたいと思います。 (富山県 池田 典恵 無職 48歳) (2020. 6. 12 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
ひととき
ステキな親子
「だけど、出る前に教えてくれたから偉かったよ」と話しながら、スーパーに入ってきた親子がいた。だっこひもで赤 ちゃんを抱えた若いパパと、2、3歳ぐらいの女の子。ほめられた彼女はうれしそうに「ありがとう」と言った。 私のすぐ後ろだったので、やりとりが聞こえた。どうやら、入店前にトイレに行ったけれど、失敗してしまったらしい。 何はともあれ、パパのフォローが素晴らしい。それに対して、こんな幼児の口から「ありがとう」が聞けるなんて。お おかたはちょっと嬉しそうな顔をするだけだろうに。 私が若かった頃は、人にほめられると謙遜の言葉を返したものだが、いつの間にか、こうした場面では素直に「あ りがとう」と言う人が多くなったようだ。彼女もそういう中で育ってきたということだろう。 自分の子育て時代はどんな対応をしていたか、振り返らずにはいられなかった。たぶん、「もっと早めに言わないと ダメでしょ」ときつく叱って、子どもの方は下を向いてふくれていたと思う。 今さらどうにもならないけれど、さっきの親子のようでありたかったなあ。 (埼玉県宮代町 外山 いく江 主婦 71歳) (2020. 6. 20 朝日新聞読者寄稿 生活欄より) |
福祉研修の導入 力もらい提案
昨年の当欄で元衆院議員田中真紀子さんの投稿「立法22年 描いた夢に出会えた」(12月30日)を読み、感銘を受けた。高齢 者にとっさに声かけできたのは、教員免許取得の際に義務づけられた介護体験のおかげだと振り返った23歳大学生の投稿への反 響だった。 田中氏は、難産だったこの制度の「生みの親」。自身が理想とした人物像に22年を経て出会えたことに「人生にこんな感動があ るのだろうか」と結んでいた。 私は心動かされ、6月の市議会で市当局に「新規採用職員に福祉施設での体験研修を実施すること」を提言した。40年前後に及 ぶ公務員人生。優しい心で市民に向き合ううえで必ず役に立つと力を込めて訴えた。市側の答弁は「受け入れ先の確保が困難」。 でも、今回が初の提起。粘り強く実現を働きかけてゆきたいと思う。二つの投稿のつながりが私を動かしてくれた。 (北海道 北名 照美 市議 76歳) (2020. 6. 27 朝日新聞読者寄稿 生活欄より) |
自粛期間に孫への料理教室
孫のこども園が休園中の五十数日間、一緒に昼食を作った。毎日楽しくて、献立が頭から離れなかった。 自作するからには、インスタントはあかん。4歳間近の男児が自ら米をとぎ、バナナ・豆腐などは子供用包丁で切っても らう。ハンバーグをこね、エンドウ豆の皮むきも。時間はたっぷりあるから、汁をこぼしても、ハンバーグを崩しても大丈 夫。失敗を恐れず体験してもらう。 一度教えれば調理法をしっかり覚えている。小さな手で台所へ食器を抱えてくると、自信もつくようだ。「おいしい」とほ めると満面の笑み。周囲の役に立っていると感じ、孫が家族の一員であるとの意識を高めているのが私にもわかる。 私も、時間がかかる煮物などは、孫が退屈しないよう先に作るなどの工夫を考えた。家族が笑いながら、おいしく食べ る。楽しい自粛期間となった。 (兵庫県 門内 和代 主婦 59歳) (2020. 7. 6 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
吃音 先生の温かさと出会い
「話し方の『癖』 吃音(きつおん)理解進んで」(6月4日)を読み、私の体験を伝えたくなりました。 幼い頃、近所にいた吃音の男の子のまねをしていたら、私自身がなってしまったのです。幼稚園の先生に「おはようござ います」と言おうとしたら「お」が出てこず、下げた頭を上げた時には先生はいなくなっていました。 小学校では国語は大好きだけど、みんなの前で教科書を読むのが苦手でした。1年生の時、授業で「暖かい」という言葉 がある文章を読んでいて緊張し、顔が真っ赤になりました。先生は、「あ」は発音せず口だけ形をつくり、「たたかい」だけ 声に出すよう教えてくれました。その授業時間を使って何度も練習させてくれて以来、吃音が気にならなくなりました。今も 少し残っているものの、ほぼ普通に会話できています。 吃音は原因や治療方法が確立しておらず、私の体験が誰にでもあてはまることはないでしょう。しかし、先生の温かさが うれしく、亡くなられるまで交流が続きました。 (徳島県 三浦 範子 主婦 68 歳) (2020. 7. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
子どもが考え決める学校作り
コロナ禍で分さん登校から始まった今年度の学校。クラスを受け持つ6年生がそろったのは6月だ。「クラス運営はみんな に委ねる。自分たちで決められることはどんどん進めて」と宣言した。自主自立を促す狙いからだ。 先生に言われたことを素直にやるのが良い子とされがちな風潮の中、子どもたちは最初は戸惑っていた。だが、「これ、や ってみたい」という声が次第に聞こえるようになってきた。 「朝会でこの体操をしたい」「踊りとクイズもどう?」。朝から何ともにぎやかなクラスに。提案や取り組みはクラス内のこ とにとどまらない。「運動会の代わりに開かれる学年レクで、これをしたい」といった案も出る。 当然とされてきた学校行事の多くがコロナで中止や延期になった。だが、これは大きなチャンスでもある。大人の都合を押 し付けず、本当に必要なものを子どもと一緒に考え、決めていきたい。そうやって子どもたちと作り上げる学校は楽しいもの に違いない。 (愛知県 鈴木 俊宏 小学校教員 31 歳) (2020. 7. 14 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
誕生日の母に…1輪のクチナシ
小学校の通学路に面した我が家。生け垣に様々な花木を植えてあります。香り高いクチナシは子供たちにも人気で、下校 時に鼻を寄せて匂いをかぐ子もいます。 ある夕方、母親に手を引かれて小学校低学年と思われる男の子が来ました。下を向いている子へ、母親が何か催促する ようにささやきました。するとその子は決心したように顔を上げ、「花を黙って採ってごめんなさい。今日は……母ちゃん の誕生日なんです」。 母親がパート勤務後に帰宅すると、留守番していた男の子から、しおれてしまったクチナシの花を1輪、差し出されたそう です。花瓶にすぐ入れ、花が元気になったところで「この花、どうしたの?」と聞き、事情が判明。うれしいけれど、「クチナ シの持ち主に対しておわびもさせないと」と、渋る子をなだめて来たのです。 私は黙って男の子を抱きしめました。その子の親を思う気持ちや叱られないかという不安、そして謝った勇気……。父を 亡くし、一家離散で他家で育てられた私の幼児期と重なり、万感の思いでした。「お母さんに、もっといっぱいプレゼント してあげてね」。クチナシの他に、紫陽花(あじさい)や月桃(げっとう)の花も両手に抱えさせました。 (鹿児島県 吉見 満雄 NPO法人役員 83 歳) (2020. 7. 15 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
差別気づかせた祖父の一言
母と雑談中、話題が米国の黒人差別問題になった。母は、小学校低学年だった頃の私の祖父のエピソードを話してくれた。 小学生の母は、茶の間のテレビに映った黒人を見て、「なんか怖い」と言ったそうだ。それに対して祖父は、ぽつりと「それ を差別って言うんやで」と返したという。母は衝撃を受け、40年ほどたった今でも、はっきりと覚えているそうだ。 私はこれを聞いて、祖父は子どもの悪気のない差別発言に、怒るでも説教するでもなく、たった一言で母に何かを気づか せたということに感動した。祖父の考えはまさに今必要とされるのではないだろうか。 黒人に限らず、その発言が差別だという自覚がないまま口にする人も多いのではないか。人を傷つけてしまった後で、「そ んな気はなかった」と言っても、許されるものではない。母から祖父の話を聞き、言葉を発する時は常に一度頭で考えなけれ ばならないと、改めて気づかされた。 学びを与えてくれた祖父は、私が3歳の時に亡くなった。これからも尊敬し続けようと思う。 (兵庫県 中村 真衣 大学生 20 歳) (2020. 7. 25 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
公務員給与削減し休業補償に
緊急事態宣言の発令を受け、製造業や飲食店、介護業者から芸術、芸能関係者に至るまで、多くの業種の経営や資金繰り が急速に悪化している。これ以上この状態が続くと多くの人が職を失い、コロナ禍が去っても、その「二次災害」で社会に新 たな苦難が押し寄せると思う。特に芸術分野の衰退は甚大で、我々は文化面での心のよりどころを失う。 そこで政府に提言したい。公務員の給与を大幅に削減し、その財源を休業補填にまわしてはどうか。多くの業種が倒産の危 機に直面するなか、公務員だけが普段通りの給与を支給されるのは何か割り切れないものがある。私も国立大学で働く身であ るが、たとえ今の給与が半減したとしても、その分で休業補填ができ、経済、文化が救済されるなら、それは十分納得がいく。 一日も早くコロナ禍を終息させるには、外出自粛と休業補填が必須だが、大胆な策が打ち出せていない。すでにいくつかの 地方自治体では市長らの給与を削減しコロナ対策関連費用に充当する動きもある。公務員にも家族がいるが、今は全国民が 覚悟をしないと、さらに恐ろしい事態が待ち受けている気がする。 (兵庫県 内野 隆司 大学教員 57歳) (2020. 5. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
学校連絡デジタル化 陰の面も
学校と保護者の連絡のデジタル化が検討されている。仕事柄、学校現場の状況は想像できる。教員の多忙さが社会問題化 する中、導入すべき策の一つと思う。たとえば生徒の欠席連絡も、関係者への伝達や集計が驚異的に楽になるだろう。端末普 及など環境整備が必要だが、学校からのお知らせなど必要な情報にいつでもアクセス可能な環境は、保護者にも歓迎されるは ずだ。 ただ心配なのは、教員と保護者のコミュニケーションが減ることだ。たとえば教員は、朝一番の欠席連絡の時に交わされる保 護者との何げない会話から、生徒や保護者の状況など重要な情報を引き出せるはず。そうした機会を逸する恐れがある。また 教員には、聞く力や伝える力などコミュニケーション力が必要だが、その力を鍛える機会が失われる可能性もある。 新しい試みは時として、大切なものまで失うきっかけになりかねない。連絡のデジタル化を進める上で、弊害への手当てもぜ ひ一考してほしい。 (神奈川県 渡辺 吉隆 塾講師 62歳) (2020. 11. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
デジタル化 役所の意識改革必要
菅内閣はデジタル化推進を掲げています。行政の非効率は今に始まった問題ではありません。たとえば新型コロナ対策の特 別定額給付金は、申請から給付まで何週間もかかった自治体が少なくなかったようです。元々の制度が違うので単純比較でき ないかもしれませんが、ドイツでは中小企業向け助成金の手続きが簡単で、申請から給付まで2日の人もいたという記事を読み ました。 少し前、国民健康保険税の納付で口座振替を選びました。手続き書類が役所から7月10日ごろ届き、20日ごろ返送。それな のに7月末の引き落としがありません。問い合わせると、「役所内の処理に40~50日ほどかかる」。驚きましたが、担当者は 「お待たせしてすみません」というでもなく何の疑問も感じていない様子で、そのことにもっと驚きました。 これは小さな例ですが、市民・国民の利便性を良くしようという意識がない限り、デジタル化にお金だけかけても大した効果 がないでしょう。役所の意識改革にまず取り組むべきです。同時に、役所に出す書類の簡素化も必要です。そうした改革なし にデジタル化に取り組んでも、更なるムダを生むだけでしょう。 (埼玉県 赤尾 篤志 無職 74歳) (2020. 11. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
眞子さまの真心に心打たれた
秋篠宮家の長女眞子さまが、小室圭さんとの結婚の延期について書かれた「お気持ち」の全文を読んだ。眞子さまの真心 に心打たれた。繰り返し読みたくなる美しい文章だと思った。 最も心打たれたのは、お二人がお互いをかけがえのない存在だとし、「結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守り ながら生きていくために必要な選択です」と述べた部分だ。眞子さまはこれまで、ご自身の結婚について否定的な意見を目に する機会も多かったのではないだろうか。 秋篠宮さまがお二人に結婚の条件として出された「多くの人が納得して喜んでくれる状況」が望まれるのは、皇族というお立 場からしてもっともである。しかし、眞子さまの熱い気持ちは、誰の心にも届いたのではないだろうか。 小室さん側に皆の理解を得難い金銭問題があることはわかる。しかし、「心を大切に守りながら生きていくために必要な選 択」との言葉は、何度読んでも心に迫る。陰ながらお二人を応援したくなった。 (神奈川県 高橋 沙織 中学校教員 42歳) (2020. 11. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
公明「大衆とともに」原点回帰を
半世紀以上も前の話である。日本は高度成長期とは言え、貧しい人も多かった。私は16歳で熊本から集団就職で上京し、 町の工場に職を得て、1年後やっとの思いで定時制高校に通い始めた。弱者に寄り添い希望を持って生きることの大切さを 学んだ。 選挙権を得た頃、共感するスローガンを目にした。「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」。この 公明党の立党精神は「常に弱者の側に」との思いを強く持っていた私の心を揺さぶった。以来、私は公明党を応援してきた。 私の知る地方議員は本当にこの精神の通りだった。しかし、「自公連立政権」」になり、党の立ち位置に疑問を持つことが 多くなった。安保法制、「共謀罪」法、沖縄県知事選などへの対応は「大衆とともに」ではなく「自民党とともに」ではない か。このまま公明党は「死んでいく」のか。いや既に死んでいるのかと心配だ。 今、人生を振り返って言えることは「常に弱者の側に寄り添えば、強く生きる希望が湧く」という原点だ。公明党には「大衆 とともに」を貫き通してもらいたい。 (大分県 園田 敏勝 技術コンサルタント 76歳) (2020. 12. 11 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
縁の下の力持ちに感謝して
エレキベースの演奏が趣味である。弦を弾いたときに出るあの重低音がたまらない。ベースはギターと比べると影が薄い存 在かもしれない。しかしバンド内でリズムを安定させる重要なパートだ。もし、ベースがなければ、味の薄い料理のような物足 りなさを感じる音楽になるだろう。 私たちの生活は、裏で働く存在が積み重なってできているといえる。例えば、大学と聞くと真っ先に教授を思い浮かべるが、 清掃員、警備員、事務職員など様々な人のおかげで機能している。 私は将来、歴史関係の博物館の学芸員になりたいと思っている。博物館も学芸員のみならず、展示物の提供者や運搬業者 らの協力があって機能している。社会に出たら、縁の下の力持ちとなって働いている人たちに感謝し、自分の仕事も誰かの役 にたっていると信じて生きたい。 (香川県 小出 啓太 大学生 20歳) (2020. 12. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
開墾した農園に子供たち招待
偶然にも近所で開墾できる土地を借りられることになった。畑と田んぼの候補地計2千平方㍍。元々田んぼだったという湿地 は35年間、放置されたまま。原野に近い。 日当たりが悪いため、大きな梅の木を2本切り倒し、枝を払って整理した。周りの竹林や森林も伐採して日当たりを改善し、 湿地帯から田んぼに戻す準備をしている。 私は秋田県の農家の長男として育ち、52年前に横浜市へ出てきた。小学校教員をしながら、市民菜園を20年間続け、退職後 は本格的な農業従事者になりたいと思っていた。 今年は借りた自分の土地を開墾し、一から農業に従事できる記念の年だ。地域の小学校の父親によるボランティア組織「おや じの会」も仲間に入れたいし、子供たちのサツマイモ畑も作ろう。 昔ながらの脱穀機や風を起こして籾(もみ)とゴミなどを分けるもみすりなど、伝統的な機具を使い、いくつかの手を通して稲 作りに挑戦しよう。近隣の小学生に農業の出前授業もしたい。そうだ、いっそ「さだお農園」に小学生を招待しようか。夢は膨 らむ。 (神奈川県 高橋 定雄 小学校非常勤教員 69歳) (2021. 1. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「おいしい」の声もっと聞きたい
ぼくには、小さいころからの夢があります。それは料理人になることです。 料理は作るのも食べるのも大好きです。昔からお母さんが料理するのを見たり一緒に手伝ったりしていました。だんだん料 理の楽しさを知っていきました。 まずは卵焼きなど簡単なものからやっていきました。そうしたらあまりにも簡単にできてしまって、親に食べてもらったら 「おいしい」と言われてうれしかったです。その後、だんだんレベルを上げていきました。今はカレーなどを作っています。 一番きらいなのは、タマネギを切ることです。目が痛くなるからです。でも料理で、材料を切ったり炒めたりするとストレ スはっさんになり、一石二鳥です。もっとむずかしい料理を作って「おいしい」とみんなに言わせたいです。 (東京都 佐藤 聖南(せな) 中学生 14歳) (2021. 1. 5 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
股割り30回・音読・毎日笑って
今年は82歳になる。おかげさまで悪いところがどこにもない。 50代前半から始めた毎朝のラジオ体操と力士がやるような股割り30回を欠かさない。股関節を丈夫にすると、ひざへの負担 が少なくなるそうだ。歯もまだ23本が頑張ってくれていて、何でもおいしく食べる。食後の歯磨きに加え、いつも歯間ブラシでき れいにする。 夫が糖尿病なので、薄味の調理を心がけ、バランスよく食べる。検査したら腸内に善玉菌が多く、栄養状態も良かった。医師 に食事を聞かれた。野菜をたくさん食べる。肉より魚が好き。カルシウムを取るため、スキムミルクときなこを、お湯で溶いて飲 む。今でも骨密度は50代だと、ほめられた。 また、私はよく笑う。なんでもないことでもおかしい。夫にも冗談を言う。新聞や本は大きな声で音読する。内容が耳からも入 り、よけいにわかりやすい。そうやって、日々を楽しく生きている。 人生100年時代、これからも明るく前向きに生きていきたい。 (広島県 藤井 光子 主婦 81 歳) (2021. 1. 13 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
立派すぎる 国勢調査 の感謝状
私は昨年、国勢調査の調査員として、区内の数十軒を担当しました。新型コロナ感染予防で、対象者と直接面談するのではな く郵便受けに調査票を投函(とうかん)する方法で調査を実施しました。 区から報酬の振り込み通知と感謝状が届きました。感謝状は総務省統計局長名の立派なものでした。今の時期にこのように立 派な感謝状をいただくのは違和感を抱かざるを得ません。発送用の封筒も大きく、郵送代も含め全国的に見れば経費は相当かか っているのではないでしょうか。このようなお金は、コロナで疲弊している医療・看護現場や飲食業の支援に充ててほしいと思い ます。 そもそも、我々はこうした感謝状を頂くためにやっているのではありません。どこか「上から目線」な感じも受けてしまいま す。今の政治に求められるのは、国民目線に立った政治だと思います。菅義偉総理。あなたは「国民のために政治をする」 とおっしゃっていましたよね。 (東京都 松井 今朝雄 介護職員 72歳) (2021. 1. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
コロナ対応 罰則よりも「安心」を
感染症法の改正で、入院措置に従わない人や、保健所の調査を拒否する人への罰則の設定が検討されている。だがこれは 重大な問題をはらんでいると思う。新型コロナに感染した人が悪いとの偏見があるなか、罰則という言葉が独り歩きすると、 感染=悪の意識が助長されかねない。 入院拒否や調査への非協力は、感染しても働かねばならぬ状況があったり、感染を公にした際の非難や中傷を恐れたりしての ことではないのか。必要なのはむしろ、感染者に対し政府が「あなたは悪くありません。安心して療養してください」とのメッ セージを出すことだと考える。 飲食店が時短営業命令に従わないのも同じことが言える。そうせざるを得ない状況に問題があるのだ。「社会に支えられてい ない」との思いが、自分で何とかするしかないという行動を引き起こすのだと思う。 罰則を設けるとすれば、感染者や医療従事者などへの差別に対してではないのか。いま、政府がすべきなのは、コロナ感染に ついて全力で支えるというメッセージを出し続け、社会の分断を阻止することだ。安心して治療できることは、感染拡大の抑止に つながるはずだ。 (宮城県 加藤 順一 大学職員 62歳) (2021. 1. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
子どもの泣き声 迷惑じゃない
ある夜のスーパーで、こんなアナウンスが聞こえた。「お子様が走り回ると大変危険です。他のお客様のご迷惑になります。 保護者の方はお子様から目を離さないよう、よろしくお願い致します」。確かに子どもがスーパーの店内で走り回ると危険だ。 だが、このアナウンスは引っかかる。モヤモヤしながら、苦い記憶を思い出した。 5年前の冬。大学受験の帰りに満員電車に乗った。隣に立っていた男性が抱えていた赤ん坊が泣き出した。一緒にいた女 性が必死にあやしていたが泣きやまなかった。ほかの乗客は困惑の目線を3人に送った。「迷惑かかるし、降りようか」。女性 の言葉に男性はうなずいて、次の駅で降りた。ドアが閉まり、寒い夜のホームに3人を置き去りにして電車は発車した。「迷惑 じゃないですよ」の一言が言えなかった。 子どもの行動に「迷惑をかけてしまう」と気に病んでいるのは保護者だ。たしかにそんな視線を感じるかもしれないが、周りは それほど「迷惑」を感じていないかもしれない。もう誰も寒い夜のホームに置いていきたくない。子育てをする人に伝えたい。迷 惑じゃないですよ。 (京都府 大月 隆生 大学院生 23歳) (2021. 1. 26 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
核軍縮の歴史 日本でも参考に
核兵器禁止条約が22日、発効した。だが、日本は、唯一の戦争被爆国なのに参加しない。「高校生平和大使」も務めたお笑い ジャーナリストのたかまつななさんが、この核をめぐる政策について、落としどころが分からない、と述べた(8日本紙)。彼女は、 学校で幅広い視野から議論がなされるよう勧める。その際、授業の事前準備として、冷戦時代の各国の経験に学ぶことをお勧 めしたい。 旧西ドイツでは1980年ごろ、ソ連に対抗する核兵器が配備された。それに対し、「核武装を断念してなお、いかにソ連の攻撃を 防げるか」との発想が広まった。核の存在を前提とするNATO(北大西洋条約機構)の政策を否定し、平和な国づくりを目指した。 同時期に、元スウェーデン首相オロフ・パルメ氏が主宰する委員会が「この状況で脅威となっているのは、他国の核兵器ではな く、核兵器そのもの」であり、各国が協力して核軍縮に取り組むべきだとする「共通の安全保障」の構想を提示した。それが冷戦 終結に繋(つな)がった。 こうした歴史を知ることが、私たちが今の日本の核兵器をめぐる問題に向き合う一助となるはずである。 (神奈川県 豊田 昭子 主婦 58歳) (2021. 1. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
若い世代
グラタン作り 一緒に挑戦
ぼくは、ステイホーム中に色々な料理を両親から教わり、得意になりました。作ったのはエビグラタン、シフォンケーキ、 わらびもち、プリンケーキ、イタリアンピザ、ブリトー、天ぷら、からあげ、カレーライス、オムレツなどたくさんです。エビグ ラタンは、ホワイトソースから作ります。カレーライスも市販のカレールーを使わないでカレー粉でルーを作ります。 友達にグラタン作りについて話をしたら、仲の良いけんちゃんが「グラタン作り教えて!!」と言ったので、ぼくの家でふたり でグラタン作りに挑戦しました。ホワイトソースの作り方をけんちゃんに教えて、材料を切っていためて、楽しく料理できま した。オーブンで焼いて「チーン」と出来上がってグラタンを見たら、こんがり茶色に焼き上がっていてうまかったです。仲 良しと一緒に作ったグラタンは大成功でした。けんちゃんとまた料理をしたいです。 (岩手県 豊巻 慶 小学生 11 歳) (2021. 2. 9 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
原発再稼働 将来の子孫 どう判断
再稼働で原発の安全性が議論され、30㌔圏内の住民の同意も得るべきであるという意見が広がっています。立地自治体の住民 の多数が地域経済の回復を強く望んだ場合は、再稼働へ流れてしまうようです。 しかし、原子力エネルギーは、多量の放射性物質の無害化が現実的に不可能である以上、安全性だけではなく、将来を含めた経 済性で判断すべきだと思います。事故が起きなくても、原発の廃炉費用の総額は、電力会社の利益や立地自治体の経済的恩恵と は比べ物にならないくらい巨額となり、将来の国民の膨大な税金が投入されるはずです。 30年後を考えてみてください。このままでは地震の多発する日本は、何の利益も生み出さない動かない原発に加え、10万年後ま で危険な高レベル放射性廃棄物の保管を引き受けさせられることになります。子や孫たちは必ず「こうなることが分かっていたのに、 なぜすぐに原発を止めなかったのか」と思うことでしょう。 今年は衆院選があります。30年後の子孫が次の衆院選で投票権を行使できるとすれば、原発推進派は当選できるでしょうか。 (福岡県 速水 良晃 大学教員 69 歳) (2021. 4. 23 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
ないはずの銀行口座から現金が
認知症になってからでは遅いと身辺整理を始めました。まず、いくつかある預金通帳から。長らく使っていなかった銀行に預 金があってうれしい思いもしましたが、記憶はあるのに通帳もカードも見つからないものもありました。 銀行の口座管理は厳密で信用に足るものと思い、コロナ過のため電話で問い合わせました。すると、「そんな名前の口座は 元々ない」と。後日、窓口で身分証明書を示して聞きましたが「ない」の一点張りです。諦めていたところ、通帳とカードが出てき ました。 再度訪れると窓口は長蛇の列。待つことに閉口しATMで確かめるとなんと残金が出てきました。思わぬ解決に銀行側の言い 訳が聞けず残念でした。通帳をなくしたままだと預金はどうなったのでしょう。銀行は紙の通帳を減らしていくようですが、利用 者への配慮も忘れないでほしいです。 (神奈川県 大庭 浩子 主婦 84 歳) (2021. 4. 27 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
若い世代
環境問題対策 簡単なことから
私は周りの輝く大自然の恵みを受けて生活しています。でも最近、自然の変化が強く感じられます。大好きな海にはプラスチ ックごみがどっさり。台風も激しさを増しています。 環境問題の対策が必要ですが、それは身の回りの簡単なことでもいいのです。エアコンの設定温度の確認、風呂の水の再 利用、プラスチック削減、ゴミを見つけたら拾う、できるだけ地元の野菜を食べる、車より自転車に乗るようにする、など。 環境問題の話をしたら他の人から嫌われるかもしれないし、自分の意見だけが正しいと思っていると受け取られるかもしれま せん。けれど、嫌われるのをおそれていては何も変わらないでしょう。 地球人なら堂々と豊かな地球を守るべきです。今よりも温暖化が進んでしまうと、私の家でも、嫌でもエアコンを買わなければ なりません。 (兵庫県 武田 理和 中学生 12歳) (2021. 6. 1 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
日本芸術院にマンガ 慶賀の至り
功績が顕著な芸術家を優遇する「日本芸術院」のあり方を検討していた文化庁の有識者会議が、改革案をまとめたという。各部 の定員、新会員の選考方法を見直すよう提言。新たな文科として「マンガ」も加わるそうで、まことに慶賀の至りだ。 私の少年時代にはマンガは悪書の典型だった。私たちはマンガを隠れて読んだものだ。しかし、マンガの中には人間の成長に 必要な心の糧もあったのだ。 大学教員時代、私はマンガを教材に用いたことがあった。医療系学部の「現代社会と文学」という科目を担当したのが縁だった。 初年度は医学界の暗部や医療過誤問題にメスを入れた山﨑豊子の小説「白い巨塔」を用いたが、学生の反応はいま一つだった。 そこで次年度は絶海の孤島の診療所に赴任した青年医師の奮闘を描いた山田貴敏のマンガ 「Dr.コトー診療所」を用いると、学生 の関心が高まった。作品の中に現代医療の課題や若き医師の人間的苦悩が描かれていたからだろう。 近年、日本のマンガは世界の芸術として認知されている。国内で市民権を得るのは当然だ。日本芸術院の改革を支持したい。 (静岡県 安藤 勝志 無職 79歳) (2021. 5. 30 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
収穫楽しみ「ドテカボチャ」
我が家の敷地に「土手」と呼ばれる場所がある。そこに40年ほど前、桜を2本植えた。その木は大きく育ち、花が咲けば毎年ご 近所様を喜ばせている。5月の大型連休明けにふと思いついた。「あの桜と桜の間にカボチャを植えてみては」と。 カボチャの苗を買いに花屋へ行った。店の人に「ドテカボチャの苗を下さい」と言ったところ、そんなカボチャは無いという。子供 の頃、米の代わりに食べていたのに……。 仕方がないので別のカボチャの苗を購入したが、不思議に思って調べてみた。ドテカボチャはカボチャの種類ではなく、「役に立 たない」などの意味で使われると初めて知った。 植えた苗は黄色い花を咲かせている。どんな実がなるか楽しみだ。たくさんとれて近所の人にも食べてもらいたい。「とてもおい しいカボチャだった」と話の輪が広がりますように。 (滋賀県 谷口 旬子 会社役員 78歳) (2021. 6. 24 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
農家と外国人 お互いが幸せに
毎年、採れたてのブドウを送ってもらっていた長野の果樹園から、「もう地方発送ができない」と手紙が届きまし た。ご両親が高齢になって人手が足りないとのことでした。 サクランボを送ってくれた山形の農家からも、同じ理由で今年で最後だと言われました。以前にお世話になって いた愛媛のミカン農家はすでに発送をやめており、後継者が見つからないと聞きました。 「いったい日本の農家に何が?」 と心配になりました。 そんな時、「在留資格ってなんだろう」(5月23日)の記事を読みました。失踪した外国人技能実習生に農作業の 就労許可を与えてほしいと願う長野県川上村。困窮するクルド人の就労を可能にと希望する埼玉県川口市。人手 不足に困っている地域と働くことが許されず困っている外国人の姿が浮かびました。 後継者難や人手不足に悩んでいるのは農家だけではないでしょう。様々な事情で日本にいる外国人を暖かく迎 え入れ、きちんとした待遇で働いてもらえたら、お互いに幸せだと思います。在留資格が切れた外国人は速やか に帰国させるという入管行政は冷たすぎないでしょうか。 (埼玉県 根本 敬子 主婦 65歳) (2021. 6. 28 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
手作り料理で 夫の通風 治った
コロナ過で夫は飲み会もなくなり、夕食を家で食べるようになった。コロナの影響か、料亭に回るはずだったと思われる大きなタ イがスーパーで安く売られていて、調子に乗って食べていたら夫に通風の症状が。いつしか不整脈も出るようになっていた。気持ち を入れ替え、レモン汁を使うことで塩分を入れないサラダ、蒸して脂分を除いた豚肉、熱湯に入れプリン体を落とした魚、野菜を煮 ただけのスープなどの食事にしてみた。 同じメニューを出すわけにもいかない。一日中次から次へと食事のメニューを考え、買い物にも頻繁に出かける。ずっと台所に縛 られているような気もしたが、頑張ったかいあって夫の通風はすぐに治まり、不整脈も1年ほどで消えた。2人とも散歩するとき体が 軽くなり、夫は、食事の度においしいと手をたたいて喜んでくれる。 食生活の改善を徹底すると、塩辛いものや脂っこいものは怖くて食べられなくなった。食生活を意識して悔いなき人生に。これか らが専業主婦魂の見せどころだ。 (東京都 鈴木 美春 主婦 61歳) (2021. 6. 25 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
自分の安全 自ら守れる力を
大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件から20年が経った。当時、水戸市に住み、小学2年生だった私は、同学年の子ども が何人も亡くなったことに衝撃を受けた。 この20年で、子どもを守る様々な防犯・防災グッズなどが充実してきたように見える。防犯ブザーをつけて登下校する子ども の姿は、当たり前になった。しかし、誤ってブザーを鳴らす子どももいる。そのため、けたたましく音が響いても、「またか」 といった様子で、周囲の子どもや大人たちが、さほど注意を払わないケースをよく見かける。 通学時のヘルメットは、頭を事故から守る。だが、暑い日には熱中症の危険とも隣り合わせだ。防犯・防災グッズは、決して 万能ではなく、物に頼りすぎるのは考え物だ。 危険な目に遭遇したときに、自分を守るためにどう行動すべきか。子どもたちに、自分の頭で考え、最善策を選択できる力を 身につけさせてあげることこそが、大切だと思う。 そのためにも、折に触れて、身近な危険についてや、過去の事件や災害のこと、得られた教訓や反省点などを、日頃接して いる子どもたちに聞かせてあげようと思う。 (千葉県 川又 淳史 学童保育指導員 27歳) (2021. 7. 4 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
「原発は安全?」 覚えていた先生
小学校の同級生から手紙が届いた。89歳になった担任のY先生から頼まれて私を捜していたこと、先生が私に謝りたいこと があると話していることがつづられていた。 50年前、6年生の遠足で地元・福島県いわき市から福島第一原子力発電所を訪ねた時、私が何度も聞いたという。「先生、 原発って絶対安全なの? 僕は怖いんだけど」。 あの時の私の瞳が忘れられず、事故が起きた時、なんちゅう間違いを教えち ゃったのかとどれだけ後悔したか、と。 原発がいかに安全で有用か説明を受け、広大な施設の芝生で弁当を食べた記憶はある。手紙には「原子力発電所見学」と 題した私の作文のコピーが同封されていた。確かに広島、長崎の原爆に重ねた私の懸念が記されていた。原発事故で自らも 避難者となったY先生。50年前の私の疑問を心に留めていただいていたことに感謝の気持ちでいっぱいになった。早速電話を かけ、「先生」とお呼びすると、後は言葉にならなかった。 時の政治や国策から教育だけが独立を保持することは難しい。Y先生のように自責の念を抱え続ける人々の良心に、社会は 支えられていることを忘れてはならないと思う。 (東京都 藁谷 雅喜 塾講師 62歳) (2021. 8. 18 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
学校のローマ字入力 再考を
現代の子どもたちは「デジタルネイティブ」と呼ばれる。スマホをはじめとしたデジタル機器が日常にあり、学校でもタブレット やパソコンを使い学習する。 やがて彼らは進級する過程でローマ字入力という壁に直面する。ひらがなでスラスラ入力できる子にも、小中学校のICT(情報 通信技術)教育では一般的にローマ字で入力させる。 ローマ字入力は覚えるキーが少なくて済み、長文を打ちやすいと思われそうだが、これからの時代、機械的に長文を打つこと は必要とされるだろうか。むしろ言葉をわざわざローマ字に置き換えると、思考を迂回させることになる。それよりストレートに表 現することこそが創造的な仕事につながるのではないか。それにはひらがな入力の方が良いし、音声入力が適する人もいるだ ろう。慣習に従うように入力を一律にするのはやめた方が良いと思う。 (山形県 山本 泰弘 地方公務員 35歳) (2021. 10. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
地球規模の視点と見識 あるか
岸田文雄内閣が発足した今、私は引退が迫ったドイツのメルケル首相の事を思い浮かべています。 物理学の博士号をもつ科学者であるメルケル氏は、16年におよぶ在任中、世界的課題を見据えた言動が多かったと思います。 福島第一原発事故の際は、直ちに脱原発政策へ転換を図りました。難民受け入れでは世論の反発を受けつつも、積極対応しまし た。コロナ危機には、科学的根拠に基づきながら対策を実直に説明しています。氏を手放しで礼賛するつもりはありませんが、私の 目には我が国の昨今の指導者たちとは対照的に映ります。 日本は今、コロナ対策や財政立て直し、格差や分断など待ったなしの課題に直面しています。また、気候変動などの環境問題、ジェ ンダーや移民といった人権問題、貧困対策などは内政課題であるだけでなく、地球規模の協力と行動が必要です。 私は、衆院選で一票を投じるにあたり、候補者一人ひとりが諸課題を地球規模の視点でとらえなおす見識を持っているか、見極め ようと思います。こうしたバックボーンなしには、国内問題の「より正しい解」も導き出せないと考えるからです。 (島根県 槇原 茂 大学特任教員 65歳) (2021. 10. 10 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
赤字鉄路 公と民の役割に知恵を
鉄道ファンの小学6年生の孫が、ローカル線の木次線に乗りたいと言うので、3月に一緒に行きました。同線は中国山地を走り広島 県と島根県を結ぶ。山桜が満開で車内は観光客らでにぎわっていました。しかし線路脇には倒木が多く、路線の保全管理に人員や 経費が必要だと感じました。 途中、松本清張の小説で映画にもなった「砂の器」で知られる亀嵩(かめだけ)駅があり、地元の有力な観光資源のようです。ふだん は高校生や高齢者らの足となっているとも思います。しかし利用客は減り続けているそうです。 欧州の鉄道ローカル線は線路などのインフラを「公」が担い、列車運行は「民」が運営する「上下分離方式」が原則になっていると いう記事(3日付朝刊)を読みました。「民」のコスト負担を軽減するためだそうです。 「上下」とも民間会社に任せると、赤字が続くと廃線論議が出てくるでしょう。鉄道を守るため「公と民の役割」に知恵を出すべきだ と思います。 (神奈川県 生田 修 気象予報士 73 歳) (2021. 10. 31 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
(註…公と民の一体改革とは、こういう事ではないだろうか。)
どう思いますか
生き物どこ行った
カエルの歌が聞こえてこない この夏、田舎でも、山でも、暑かった。セミやカエルが元気に鳴くのを聞けば気持ちが和らぐと思ったが、これまでうるさいほ どだったカエルの鳴き声が聞こえてこなかった。 私の住んでいるのは農村地帯だ。それでも新築の住宅が増え、放置された農地もある。それにしてもカエルの鳴き声が聞こ えない夏とは一体何なのだろう。気味が悪くなってきた。毎晩カエルの姿や鳴き声を求めて歩き、田をのぞき続けているが、ジ ャンボタニシのほかには生き物の姿をほとんど見かけない。 私の住む地域だけの問題か。環境の汚染や変化によるものなのか。カエルの歌が聞こえてこない「沈黙の田んぼ」はご免被 りたい。 (広島県 松浦 恵子 無職 78歳) (2021. 11. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) 小さな命の危機は人類の危機 「沈黙の田んぼ」、私も気になっていました。12年前、米どころと言われる庄内地方に移住しました。美しい田んぼが広がって いたのですが、あまりに静かで、水面が動かないのです。子ども時代の遊び場でもあった田んぼには、アメンボやミズスマシが 水面に波を立て、カエルの声で水の輪が伝わり、居場所がわかるほどでした。畔(あぜ)を歩けばカエルやバッタが跳ねるのです。 でも今の美しすぎる田んぼにはその全てがありません。 夫婦で朝夕散歩する防風林の松林も、野鳥やリスが生息し生物相が豊かに思えるのですが、なぜかテントウムシやミツバチ など、かつて当たり前にいた昆虫が見つかりません。アカシアやシナノキの花に集まるハチの歌も聞こえてこないのです。私た ちは、外来の目新しい生き物にはすぐに気がついても、たとえばミノムシのように見慣れた生き物が姿を消しても気がつかない ものです。小さな生き物たちの危機は、必ず人類の危機につながると思うのです。 (山形県 浜田 謙一 無職 72歳) (2021. 11. 3 朝日新聞読者寄稿 声voice欄より) |
ひととき
義母の介護に喜び
義母と暮らして、いつしか12年。認知症を患っているため、感情や思いが互いに伝わらないこともあり、何度も壁にぶつかった。 ケ・セラ・セラと切り替えることを私は覚え、2人で昔の歌を歌う楽しみを見つけた。そうして私たちが手を離さずに来られたのは 義母の柔和な笑顔のおかげ。私も笑顔でいられた。 5カ月前、義母が2回目の誤嚥(ごえん)性肺炎で入院した。体力も弱り、退院後はほぼ寝たきり。食事はゼリー状の栄養補助食品 となった。 目が合うと笑ってくれたが言葉は出ず、会話も話しかけるばかりになった。 ところが先日、往診のときのことだった。 義母の耳元で注射の説明をした。 「インフルエンザの注射を私と一緒に打ちますよ。チックンするけど大丈夫ですよね?」。返事は期待していなかった。 「お母さんと一緒やったら平気」。お母さんとは私のこと。1カ月ぶりに聞く義母の言葉に、涙が出そうになった。 介護は、大変じゃなかったといえばうそになるかもしれない。けれども、支えることは私の支えになった。喜びと生きがいを数え切 れないくらい与えてくれた。義母に感謝している。 (兵庫県西宮市 藤尾 伸子 主婦 60歳) (2021. 11. 18 朝日新聞読者寄稿 生活欄より) |
(註…ことばには 命がある)
ひととき
オシッコ 間に合った?
子育て世帯に冷たい今の日本について書いた、先日の「子育て罰」の記事を読んで思い出したことがある。4年前のクライマック スシリーズ、雨の阪神対DeNA戦。当時小学6年の長男とその友人、5歳の次男の3人を連れて甲子園に行った帰り道のことだ。 この頃すでに「都会は子連れに厳しい」というイメージがあり、迷惑をかけないようにしなければと思っていた。なのに電車に乗っ たとたん、次男が「オシッコ」と言い出した。乘った車両にトイレはなくJRの新快速はしばらく止まらない。日曜日の夜とはいえ乗客 は多く、「この中を通るのか」と気分は重かった。 「すみません。トイレを探しています」と言いながら、次男をつれて車両を移動。3両目でなんとか無事に用をたせた。 ひたすら謝りながら元の車両に戻ると「オシッコ間にあった?」と聞いてくださる方がいた。次男が「うん!」と答えると、「よかった ねえ」と別の方が返してくれた。その瞬間、車内の空気がふわっと温かくなった。あちこちで笑いがおこり、「よかったねえ」が伝染 していく。おかげで、うつむいたままだった私も顔をあげることができた。 (大津市 尾木 直子 養護学校教員 50歳) (2021. 11. 22 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
(註…ことばには 命がある)
妻思いの相談者と作戦立てた
2カ月ほど前、健康相談を終えようとしたとき、相談者の50代男性が思い切った様子で尋ねてきた。「先生は、もともと太ら ない体質ですか? 秘訣(ひけつ)があるんですか?」 私はこんなふうに答えた。「摂取カロリーより消費カロリーが多ければ、必ず痩せます。お茶わんを小さいのに替えるとか、 回転ずしならもう一皿食べたいというところでやめておく感じですね。立派な運動はできなくても、近場は車を使わずに歩く、 階段を使うのもおすすめです」。そしてつけ加えた。「医師の私があまり太ってしまうと、説得力がなくなりますから」 相談者は熱心に聞いてくれた。最後に「実は一番気になっているのは、妻が肥満ということです」と明かされた。妻がこのま ま痩せないと身体を壊すのではないか。しかし「痩せなさい」と言うと怒るので言えないのだと。 そこで、まずは相談者ご自身が減量に成功してみせて、妻に秘訣を尋ねられた時に、教えてあげる。そんな段取りがまとま った。妻思いの相談者の作戦が今ごろ成功していることを願う。 (秋田県 石井 朋子 医師 53歳) (2021. 6. 5 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
次男の魂 今も私に寄り添う
早くにして肉親を見送ったものは命のはかなさを思い知る。20年前、私は25歳の次男を見送った。 何も手につかず悲しみの日々を送る中で、次男や家族の誕生日や母の日など特別な日には、次男の配慮と思われる事象が 起きたり、夢でみた物事が現実となったり、不思議な出来事が相次いだ。しだいに次男の気配を確かに感じるようになり、私を 慰めてくれた。 魂は無にならない。肉体はなくなっても生き続け、愛する人に寄り添って助けてくれる。次男の死を通して、私は確信した。 次男の座右の銘は「日々、精進」だった。魂の故郷にかえった次男は今も魂の向上に精進しているに違いない。私は私自身 の生を全うし、いつの日か次男に迎えてもらいたい。そして私たち夫婦は、先に逝った者が次男に会えたことを必ず相手に知ら せようと約束している。 (福井県 山本 朱美 主婦 71歳) (2022. 4. 3 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
どう思いますか
ウクライナ避難民
異国での暮らし 孤立が心配
留学などで日本に滞在した経験がなく、親族もいないウクライナ避難民の生活が心配だ。非難の長期化が予想される中、言 葉や習慣も異なる遠く離れたこの国での暮らしは心身の負担が大きい。各地でばらばらに生活すれば孤立する恐れもある。 日本には、災害による長期の避難生活から得られた知見が豊富にある。阪神大震災などで同じ地域出身者同士のコミュニ ティーの重要性が認識され、東日本大震災では集落単位での避難も多く行われた。ウクライナからの避難者にとっても、同国 出身者同士での支え合いが重要になると思う。 各地の自治体が受け入れに手を挙げているが、避難者の孤立を防ぐ態勢づくりを十分に果たしていけるだろうか。不十分な ままに受け入れるよりも、政府はむしろ、避難者を多く受け入れたウクライナの近隣国へ、これまでの災害避難で培ったコミュ ニティー作りなどの知見を伝え、支援してはどうかと思う。 (静岡県 浦上 健司 NPO理事 49歳) (2022. 4. 27 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
若い世代の雇用増で 林業守ろう
3月まで栃木県の山奥の有機農家で約7カ月間、養鶏などに従事した。この間、ビックリしたのは、戦後に植林されたとい う森林を遠くから見ると、もやしのような細い杉が多くあったことだ。この農家周辺では30年ほど前、雑木林や休耕地にも杉 が植えられたそうだが、間伐などの手間をかけなかったため、うまく育たなかったという。 ラジオを聴いていたら、海外から木材輸入量が減り、価格が高騰する「ウッドショック」を伝えていた。最近のコンテナ不足 や米国の需要増が原因で、今後、ウクライナに侵攻したロシアからの輸入減も価格に影響しそうだ。それならば、国内の森 林を育てて木材供給を増やせないのか。昔、山仕事をしていた方に話を聞くと、若い人が林業に従事するには給料が安く、 技術がある世代もどんどん減っているという。 林業は治水や地球温暖化抑制のうえでも重要な役割を持っている。国や自治体が所得を保障し、山林の管理と育成を担 う従事者を増やしてはどうだろうか。そうすれば、若い世代の移住促進や定住、過疎地域の活性化にもつながり、税金の使 い方としても適切だと思う。 (埼玉県 野津 慧一郎 会社員 31歳) (2022. 4. 29 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
抑留死者名簿 親孝行のきっかけ
元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏の訃報(ふほう)に接し、感慨深い思いがあった。 ゴルバチョフ氏が1991年に来日した際、第2次世界大戦後にソ連が抑留した日本人の死者約3万8千人の名簿が日本側に引 き渡された。その後、新聞に掲載された死者の一覧の中に父の名を見つけた。 父の出征は44年、私が2歳の時である。私に父の思い出はない。私の最も古い記憶は、友人や近所の人に囲まれ泣いてい る母の姿である。戦死の公報が届いた日のことだった。だが詳しいことは分からず、母は本心では父の死を納得していなかっ たのではないかと思う。 新聞で父の名前を確認すると気持ちに区切りがついたのか、「靖国神社へ連れていってくれ」 と言い出した。私と姉夫婦とお 参りし祈りを捧げ、戦後の暮らしを報告してあきらめもついたようだった。 名簿の引き渡しは、都合の悪いことにふたをせず両国の信頼関係を築きたいというゴルバチョフ氏の誠意があったからこそ 実現したのだと思う。親孝行のきっかけを作ってくれたゴルバチョフ氏の安らかな永眠を願いたい。 (愛媛県 松木 敏夫 無職 80歳) (2022. 9. 25 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
ひととき
あの日のお姉さん
幼稚園児の時、父と兄とで地元の大きな公園に遊びに出かけた。2人の目を盗んで1人で走り出した私は、迷子になった。怖 くて不安で、めそめそ泣きながら歩いていたら、白いプードルの散歩をしていた一見ギャル風の女性が「大丈夫?」と、私の目線 までしゃがんで声をかけてくれた。 「じゃあ、おねえさんと一緒にお父さんたちを捜そうか! 」。笑顔で言ってくれたので私は安心し、近くの公園管理事務所で 一緒に待つことになった。お姉さんはその間もわたしのおしゃべりにつき合ってくれたり、プードルと遊ばせてくれたりし、自販 機でジュースも買ってくれた。私は自分が迷子であることをすっかり忘れ、お姉さんと遊ぶことに夢中になっていた。 その後、無事父たちと合流できたが、私は「もっとお姉さんと遊ぶ!」と言い父たちを困らせたことを覚えている。彼女の雰 囲気や姿は今も鮮明に思い出す。 今、私はあの時のお姉さんと同じくらいの年齢になった。もし、泣いている子どもを見かけたら、彼女のような行動ができる だろうか。まだまだ私は子どもだなあと感じる。あの日から、彼女のような人になることが私の目標になった。 (埼玉県草加市 高橋 里奈 大学生 19歳) (2022. 6. 29 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
関係改善に自ら動いた 猪木さん
元プロレスラーで参院議員も務めたアントニオ猪木さんが亡くなりました。難病「心アミロイドーシス」などで闘病生活 を送っていたそうです。心からお悔やみ申し上げます。 「元気ですかーっ」のかけ声とキャッチフレーズの「燃える闘魂」で親しまれた猪木さんは、ジャイアント馬場さんと日 本プロレス界の黄金期を築きました。強靭(きょうじん)な肉体と天才的な受け身で見せる「延髄斬り」や「卍(まんじ)固め」。 私も大ファンでした。 猪木さんは1990年、イラクの邦人人質解放に尽力。95年には師である力道山の故郷、北朝鮮を訪問して平壌でプロレ スを開催。2014年にもイベントを開くなど計3回も訪朝し、スポーツ交流を通じて日朝関係改善を訴え続けてきました。 北朝鮮が日本人拉致を認めてから今年で20年。解決に向けて一向に進展は見られません。そんな中、北朝鮮は5年ぶ りに日本上空を通過する弾道ミサイルを発射。岸田文雄首相は「度重なる暴挙。強く非難する」と語りました。 しかし、避難だけでは外交は進みません。猪木さんのように強い意志を持って自ら関係改善に動く政治家の出現を期待 しています。 (大分県 戸上 博之 農業 68 歳) (2022. 10. 13 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
ワンマンの館に ガキ大将と潜入
戦後間もない頃、東京・目黒駅近くの長屋に住んでいた。裏には後に自然教育園となる森が広がり、その隅にワンマン宰相 と呼ばれた吉田茂首相の公邸があった。現在は東京都庭園美術館となっている旧朝香宮邸で、アールデコの美しい建物だ。 高い石塀をよじのぼり、ガキ大将の男の子と10人で忍び込んだ。庭の大きな池のそばに隠れていると、着物姿の吉田首相 がコイにエサをやりに出てきた。池へ駆け寄ると、番犬を連れた男の人が飛んできて「どこから入った」と怒鳴られた。首 相は「よいよい。ここらの子だろう」。 するとガキ大将が「オレ、おじさん知ってるよ。ワンマンって言うんだろう」。吉田首相はワハハと大声で笑って、彼の父 親の仕事を聞き、「魚屋の息子か。父ちゃんの手伝いするんだぞ」。私には「お前は大工の娘か」と声をかけて下さった。 建物はその後、迎賓館としても使われ、インドのネール首相ら国賓が訪れた際には、門の前で小旗を振ってお迎えした。 22歳で横浜に嫁いだが、数年前に庭園美術館を訪れ、当時の懐かしい思い出にひたった。 (神奈川県 野崎 礼子 主婦 79 歳) (2022. 11. 7 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
12年前忘れない 原発回帰やめて
福島の原発事故から12年が経ちます。白煙を上げる原発をテレビで見て、家族みんな明日の命かと、歯がかみ合わない ほど震えたことを鮮明に覚えています。膨大な数の方々が故郷を追われ、その影響で亡くなる「関連死」は今も増えていま す。私たちの地域にも放射性物質を含む雨が降り、住む場所や食べ物に不安を抱えて暮らすようになりました。 原発事故後、「想定外」という言葉が繰り返されましたが、原発の危険を感じていた人、反対していた人は少なからずいた でしょう。現実に事故は起き、私たち大人は子や孫たちに取り返しのつかないことをしてしまいました。学べたことがあるとす るなら、命と健康を後回しにした代償は、この上もなく大きく悲惨だという事でしょうか。 ところが政府は今月、原発政策の転換を決定し、原発回帰を進めようとしています。政治家の皆さん、原発への依存はもう やめて、二度と事故を起こさぬよう自然エネルギーの利用へ舵(かじ)を切ってください。災害に加え、戦争による破壊の不安も 拭えぬ時代です。自分たちのためにも未来の子どもたちのためにも、廃炉に全力で取り組んでください。 (埼玉県 篠原 陽子 パート 49 歳) (2023. 2. 27 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
手段と目的 はき違えないよう
私が何かをするうえで常に気をつけていることがある。それは、手段を目的にしないこと、何が目的かを考えることだ。 例えば、宿題が出た時に「宿題は学力をつける手段であって、宿題そのものは目的ではない」と思うようにしている。 これは社会に必要なことではないのかと考える。一例を挙げれば、国会の論戦はより良い日本のための手段であって、他の 目的ではいけない。だが、国会に限らず今の社会には「この論戦で相手を陥れよう」などという無意味な論戦が多い気がする。 宿題のような個人的なことから国際問題まで、自分の名誉や利益などのために手段が目的になったら、なんの意味もなさな い。 「大事な目的のために必要な手段をとる」。これが自然に行われる社会になって欲しいし、実行できる人間になりたい。 (千葉県 田中 優羽 高校生 16歳 ) (2023. 3. 27 朝日新聞読者寄稿 オピニオン欄より) |
自家米「TPPに負けない」 みんな・渡辺氏、田植えでPR みんなの党の渡辺喜美代表は11日、地元・栃木県那須塩原市にある自らの田んぼで田植えをした。無農薬で「通 常の3倍の値段で取引される」という。環太平洋経済連携協定(TPP)推進派の渡辺氏は田植え後、記者団に「日本の 米は世界一おいしい。付加価値の高い米をつくれば、TPPは心配しなくてよい」と訴えた。田んぼの広さは約1万平 方㍍。作業着に長靴姿で、雑草が生えにくいよう活性炭の入ったシートで覆いながら苗を植えた。米作りは10年以 上前にはじめたという。 (2013. 5. 12 朝日新聞 4面欄より) |
ブラジルで水力発電事業 三井物産は、ブラジル北部のマデイラ川で大型水力発電事業を始める。2015年に運転する「ジラウ水力発電所」 の運営会社の株式の20%を、数百億円で買い取る。発電能力は原発3基分にあたる375万㌔ワットで、ブラジルで4 番目に大きな水力発電所になる。この発電所は電力会社と30年間の売電契約を結んでおり、安定した利益が見込 める。 (2013. 5. 14 朝日新聞 経済欄より) |
初の句集を出した小学生俳人 小林 凛(りん) さん (12) (本名・西村凛太郎) 生まれしを幸かと聞かれ春の宵 944㌘の未熟児で生まれ、他の子より腕力が弱い。小学校に入っていじめを受け始め、耐えきれない時は学校に行 くのをやめた。休学中は祖母が外に連れ出した。動植物を見て自然と口をついて出たのは、幼稚園の頃から絵本で 親しんだ俳句だった。 大好きな一茶の名字と自分の名の一字をとった俳号は「小林凛」。9歳で朝日画壇に初投稿した句が、5千通の中か ら選ばれた。 紅葉で神が染めたる天地かな 大胆な詠(よ)み方が評価され、大人に交じって入選を重ねた。 いじめられ行きたし行けぬ春の雨 つらい思いはしても、「僕には俳句がある」と支えになった。 4月、「ランドセル俳人の五・七・五」 (ブックマン社) を出版。「がんばってきた結晶」 という。101歳の日野原重明さんが推薦文を寄せた。1年前に、「百歳は僕の十倍天高し」と いう句を送って以来の縁だ。 大阪市岸和田市在住。昨秋から近所の句会に参加する。60代以上の仲間と、学びの真っ最中だ。 この春、6年生になり、9ヵ月ぶりに登校を始めた。「本が出来て自信になったから」。 最近になって、いじめっ子の一人が謝ってきた。そのうれしさから、新しい俳句が生まれた。 仲直り桜吹雪の奇跡かな ![]() (2013. 5. 24 朝日新聞 ひと 欄より) |
防潮堤の必要性 みんなで再考を 昭恵さんがフォーラム 安倍晋三首相夫人の昭恵さんが24日、東日本大震災の被災地で計画されている大規模な防潮堤をめぐ り、意見交換するフォーラムを仙台市内で開いた。 「本当にどこでどの程度の高さが必要か、もう一度みなさ んと一緒に考えたい」 と述べ、各地で進む計画への再考を呼びかけた。 住民や専門家、地方議員ら約400人を前に「海が見えなくなって、環境も破壊されてしまうかもしれない」と指 摘。 「若い人が『こんな海が見えない所は嫌だ』と出て行って、防潮堤だけが残ることがないようにしたい」 と訴えた。 安倍首相もビデオでメッセージを寄せ、 「想定される津波の高さとともに、環境の保全や景観との調和など を考える必要がある」 として、住民主体の見直しに柔軟な考えを示した。 昭恵さんは防潮堤の計画を考える住民の運動に関わり、昨年12月には自民党の環境部会に出席し、計画 を再考するよう求めている。 (2014. 5. 25 朝日新聞 4面 より) |
研究不正対策 透明性 カギ 東京大大学院教授 渋谷 健司さん 大手製薬会社ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンの臨床研究を巡る論文不正問題は、東京地検特捜 部の強制捜査に至った。STAP細胞の論文を巡る混乱も続いている。 東大大学院教授の渋谷健司氏は「泥沼化する臨床研究不正問題の先にあるもの」(30日配信)で、日本の 医療界に対する国際的な信頼の失墜を憂えている。ノバルティスもSTAP細胞も、解明を主導したのはネット 上の告発だった。権威ある研究機関は「対応が遅く、身内で調査を行うためにいつまでも疑義が晴れない」 と、研究者の「ムラ」意識を批判する。 筆者は論文のネット公開など透明性の強化や、第三者性の高いオンブズマン組織の設立などの対策も提 案した。「今の医療界は20年前の金融業界を彷彿とさせる」「フェアでないことは国際社会で最も信頼を失う」 という現状が改善される日はいつ来るのだろうか。 (2014. 6. 4 朝日新聞 オピニオン欄より) |
診療報酬 不正請求疑いの8000機関 厚労省、半数は調査せず 厚生労働省が毎年、診療報酬を不適切に請求した疑いがあるとして調査対象に選んでいる全国8千の医 療機関のうち、実際には半数程度しか調査せず、残りは見逃していることが朝日新聞の調べで分かった。大 阪府など調査実施率が1~2割にとどまる府県もある。年40兆円超の税や保険料などが投入される医療費に ついて、行政のチェックは極めてずさんだ。 実施 1割切る県も 日本の診療報酬制度は複雑で、不正の発見が難しいと言われる。刑事事件で立件されることもほとんどな く、実態は不透明だ。 厚労省は全国8ヶ所の厚生局を通じて①不正請求の情報提供がある②前年に指導したが、改善が認められない ③患者1人あたりの診療報酬請求書が高額で過剰診療の可能性がある…などの基準をもとに不適切な請求をした 疑いのある医療機関を抽出。作業が膨大になるため、疑いが高い順に全体の4%にあたる約8千機関を毎年、調査 対象に選んでいる。 厚労省はこれにより2012年度までの5年間で毎年20億~40億円を不適切な請求として返還させたと公表してき たが、どこまで徹底的に調べているかは明らかになっていなかった。 朝日新聞は8厚生局に情報公開請求し、調査対象に選んだ医療機関数と、実際に「個別指導」と呼ばれる調査を 実施した数を入手した。集計すると……(註・中略)… 経済産業省出身で行政改革に詳しい古賀茂明氏は「厚生局と医師会の関係は密接だ。根本的な問題は人手不 足よりも医師に配慮した行政指導にある。医師ではなく国民のために働く自覚を持たなければ厚生局の存在意義は ない」 と話す。 (2014. 5. 11 朝日新聞 1面 欄より) |
猪木氏、平壌でプロレス開催 来月、19年ぶり「平和主義の実践」 アントニオ猪木参院議員が7日、北朝鮮の平壌で8月30、31日にプロレスのイベントを開くことを発表した。 猪木氏が平壌でプロレスを行うのは1995年以来。 イベントは、2万人収容の柳京・鄭周永体育館で開かれ、猪木氏と、国際オリンピック委員会(IOC)の張雄委 員が共同委員長を務めるという。プロレスのほかテコンドーや合気道の演武も行われ、日本、米国、オランダ などの選手が出場予定。報道陣や一般のファンの受け入れを北朝鮮側に要請している。 頻繁に北朝鮮を訪れている猪木氏は「提案した時は北朝鮮側の反応は良くなかったが、お願いして実現にこ ぎつけた。実際に人が交流しないと平和主義の実践にならない」と話した。 (2014. 7. 8 朝日新聞 社会爛 より) |
市営住宅の提供 市長会で対応へ 松江市長 松江市の松浦正敬市長は3日、広島県の土砂災害で自宅に住めなくなった被災者に提供できる市営住宅の 戸数を、県内の市長会でとりまとめて対応する考えを明らかにした。定例記者会見で表明した。 また、この日発足した第二次安倍改造内閣で新設された地方創生相について、「国は地方任せにしないでほ しい」と注文。人口減少を食い止めるためにも、国が東京への一極集中を解決することが必要だと主張した。 (2014. 9. 4 朝日新聞 島根欄 より) |
金正恩氏が親書 「統一努力する」 故・金大中元大統領の夫人あて 北朝鮮の金正恩第一書記は24日、韓国の故金大中元大統領の李姫鎬(イヒホ)夫人にあてて「統一の宿願を 実現するために積極的に今後も努力する」などとする親書を送った。また、親書を夫人側に伝達した北朝鮮の 金養建・統一戦線部長は「北南関係がよくなることを望む」と述べた。南北関係が冷え込む中で韓国政府は発 言の意図を慎重に分析している。 金正日総書記の17日の命日に合わせて夫人側が弔花などを贈ったことから、北朝鮮側がこの日、謝意を伝 えるために夫人の関係者を北朝鮮の開城に招いた。 伝達された正恩氏の親書は、弔意への感謝とともに南北統一への意欲を表明。夫人を平壌に招待する内容 も含まれているという。 南北関係は、10月に電撃訪韓した北朝鮮の最高幹部3人が韓国側と高官会談の実施で合意したが、韓国の 保守団体による北朝鮮の体制批判ビラ散布などを理由に北朝鮮側が一転して拒否するなど冷え込んでいる。 (ソウル) (2014. 12. 25. 朝日新聞 国際欄 より) |
■大飯原発 730人が追加提訴 大飯原発を中心とした住民らが関西電力と国に対し、大飯原発(福井県おおい町)の運転差し止めなどを求 めた訴訟で、新たに730人が29日、京都地裁に追加提訴した。今回で3次提訴。原告弁護団によると、これで 原告は29都道府県の2693人になった。全国で係争中の原発差し止め訴訟で、九州電力玄海原発(佐賀地裁) の原告団に次ぎ2番目の規模になるという。 (2015. 1. 30. 朝日新聞 社会欄 より) |
善意や愛情あってこそ 美輪明宏さん 風刺の根底には、善意や愛情がなければなりません。恨みだとか、商売のためだとか、品性下劣なところ から発せられたものは認められない。言論の自由を振りかざす人がいるけれど、自由と放埓(ほうらつ)とは違 います。 私も皮肉を言うことはよくありますが、根底に善意や愛情、正義があれば、少々辛辣(しんらつ)でも、相手は 「そうか、参ったなあ」と納得します。 選挙演説を聞いて、共産党が一番まともなことを言っていると思ったことがあります。でも、「共産」という、 レーニン、スターリン、毛沢東といったマイナスのイメージがつきまとうネーミングを使い続けている。 「愛の讃歌」にちなんで「共讃」(共に讃<たた>える) とすれば明るいイメージになるんじゃないかしら、と方々 で言ったり書いたりしていたら、共産党の志位和夫委員長から「お心遣いありがとう」って手紙が来ましたよ。 皮肉を利かせるのは、直截(ちょくせつ)に言うよりも、気が利いているし、スマートでおしゃれ。楽しいものです よ。 (2015. 2.10. 朝日新聞 文化欄 より) |
仏大統領 ■ 5月にキューバ訪問へ フランスのオランド大統領が5月、キューバを訪問する。3日、仏大統領府が発表した。米国との国交正常化の 交渉が始まって以降、欧米首脳の初訪問になる可能性がある。また、仏大統領のキューバ訪問も初めてとなる。 (パリ) (2015. 3 .5. 朝日新聞 国際欄 より) |
(註…ドイツ・メルケル首相の来日から) 戦後の姿勢 日本への提言 聖学院大学長 姜尚中氏 戦後70年を前に、日本はドイツと異なる道を進むのではないかという懸念が世界に広がる中での来日。東独 出身で、二つの体制を生き抜いた首相が何を語るのか固唾(かたず)をのんで見守った。人一倍リアリスト的な感 覚の持ち主でもある首相の講演は、かなり抑えたものになるとも予測していた。 実際には、ワイツゼッカー元大統領の言葉を引用しながら、ドイツは敗戦を「開放」と見なしていると強調し、 過去ときちんと向き合ったことが戦後、国際社会に受け入れられるテコになったと明言した。その信用を崩して はならないとも述べた。日本社会に対する重要なメッセージであり、将来なされるであろう「安倍談話」に対す る間接的な提言だと受け止めた。 「この地域にアドバイスする立場にない」としながらも、韓国と日本が良好な関係を結ぶことを願うと言及 したことも印象的だった。過去克服の事例として独仏の和解を挙げ、「隣国の寛容さがあったから可能だった」 と述べたのは、日本が過去を清算すると同時に、韓国もまた日本の戦後の努力を評価し、歩み寄らなければ 独仏のような関係は作れないという暗示だろう。 (2015. 3. 10. 朝日新聞 国際欄 より) |
プーチン氏「核」発言 感度試される国際ニュース 海外での出来事を、どれだけ敏感に受け止めて、記事にするか。各新聞社の国際ニュース担当者の感度がい つも試されています。 最近のニュースで驚かされたのは、ロシアのプーチン大統領の、3月15日に放送された国営テレビの番組での 発言です。この番組は、ロシアがクリミア半島をロシアに編入(併合)して1年になるのに合わせて制作されました。 この中でプーチン大統領は、核兵器の使用を準備していたと明らかにしたのです。 このニュースを、私は毎日新聞の3月16日付朝刊の1面記事で知りました。毎日新聞はさらに3面で、「ロシア強 硬姿勢鮮明」という見出しで、詳しく解説しました。プーチン発言にどんな意味があるのか。こう解説しています。 <一連の危機の中で、プーチン氏は、「ロシアは核大国だ。関わり合いにならない方が良い」(昨年8月、学生と の対話集会)と述べるなど、「核」をちらつかせて露骨に欧州側を威嚇したことはあった。だが、実際に核兵器の準 備を「していた」と、明らかにしたのは初めてだ。準備状況の詳細は明らかではなく、攻撃対象も不明だ。だが、核 配備の軍部隊に大統領が準備を命じたのは間違いなさそうだ> こんな重大なニュースを、他紙はどう報じたのか。慌てて探しましたが、朝日も読売も16日付朝刊には記事があ りません。日経新聞と産経新聞は、いずれも国際面で小さく掲載していますが、共同通信が配信した記事でした。 核廃絶への取り組みは、被爆国・日本の悲願。それに逆行する発言は重大に受け止めるべきニュースなのに、 この反応の鈍さは、どういうことでしょうか。 と嘆いていたら、朝日も読売も16日夕刊で一報を伝えた後、翌17日付朝刊に続報を掲載しました。朝日は1面ト ップで大きく、「プーチン氏発言 懸念必至」と報じました。 新聞業界では「後追い原稿」と呼ばれるものです。他紙が報じたことでニュースを知り、後になって追いかけて記 事にすることを言います。後追い原稿は恥ずかしいもの。なるべく小さく掲載したくなりますが、朝日はその判断を しませんでした。大事なニュースだから、大きく扱う。これは立派な態度だと思います。この記事で、毎日新聞が報 じたプーチン発言の経緯が取り上げられています。 <番組では、ロシア軍がクリミア半島の掌握を進める中、米軍が黒海にイージス艦を派遣、軍事的緊張が高まっ ていた当時の状況を紹介。司会者が「クリミアの状況がロシアに不利に展開した場合、ロシアは核戦力を臨戦態 勢に置く可能性はあったか」と質問したのに対して、プーチン氏は「我々はそれをする用意ができていた」と明言し た> これを読むと、核をめぐる発言が、プーチン大統領自らが言い出したのではなく、司会者の質問に答える形で出 てきたことがわかります。毎日新聞より詳細に報じることで、経緯がはっきりわかります。「後追い原稿」として、 よくできています。 さらに、この発言の意味について、国際政治が専門の秋山信将・一橋大大学院教授の「影響は、欧州以外の 地域にも出るかもしれない。東南アジア諸国は、核を背景にした中国の圧力をより恐れる可能性がある。米ロ両 国の核軍縮交渉や非核地帯構想など、核軍縮の進展にも悪影響を及ぼすだろう」という談話を掲載しています。 では、読売はどうか。17日付朝刊の記事は7面の国際面。見出しは「ウクライナ政変引き金クリミアの編入」で、 見出しに核発言は登場しません。 毎日の記事に対して、朝日と読売では大きく対応が異なりました。他紙が先に報じても、大事なニュースなら大き く扱う。これが読者に対する新聞の責任でしょう。 ◆東京本社発行の最終版を基にしています。 (2015. 3. 27. 朝日新聞 オピニオン欄 より) |
■地方創生 で 知事勉強会 安部政権が掲げる 「地方創生」 に提言をしようと、12県の知事が20日、有志のグループを立ち上げた。グルー プ名は 「日本創生のための将来世代応援知事同盟」。宮城、福島、長野、三重、滋賀、鳥取、岡山、広島、山口、 徳島、高知、宮崎の各県知事が参加。 6月をめどに最初の提言をまとめる予定だ。 (2015. 4. 21. 朝日新聞 総合4 欄 より) |
自動納入に問題も 考/論 PTAに詳しい政策研究大学院大学の今野雅裕教授 (生涯学習論) PTAの上部団体は、自治体から支出される補助金の受け皿でもあり、透明性が求められる。それなのに上部団 体がいい加減に運営していたら、離反されても仕方がない。半ば自動的に加盟会費が納められる仕組みも問題か もしれない。PTAがこれまで培ってきた大切な信頼が傷つかないようにしてもらいたい。 (2015. 4. 26. 朝日新聞 総合 欄 より) |
免疫力上げる作戦にかけた 漢方薬を利用 イラストレーター・南伸坊さん 2005年だったかな、ぜんそくの治療でかかっていた先生に「血痰(けったん)が出た」と報告したら、大病院にすぐ行っ たほうがいいと言われました。CT検査で肺に影があり、「十中八九、肺がんです」と。 手術も抗がん剤も放射線治療も受けたくなかった。免疫力が落ちているのが、そもそもがんの原因でしょうから、 生活スタイルを改めて、免疫力を上げて、治ってしまえっていう作戦を考えました。 大病院で勧められた手術を断って、免疫力が回復するのにかけました。セカンドオピニオンを、と訪ねた漢方医院 で、丁宗鐵先生に出会いました。もともとがん研究所の専門医でもあり、最新のがん治療にも詳しい方でした。 診察は、血圧計や聴診器も使いますし、触診したり、目をつむって片足立ちしたり、さまざまですが、その間ずっと 話しているのが最大の治療になっていましたね。その会話が『丁先生、漢方って、おもしろいです。』 (朝日新聞出版) という本になったぐらいですから。 会話のなかから、体調を考慮して薬の調合を考えてくださる。後で袋詰めになったものが自宅に送られてきて、そ れを煮出して朝晩飲みます。がんがなくなったのか、もともとがんじゃなかったのかわかりませんが、今はとにかく健 康に暮しています。 (談) (2015. 4. 27 朝日新聞 リライフ 欄 より) |
文化の扉 俳優 東ちづるさん 生きるための基本書 日本国憲法について、もちろん、学校の授業では教わりました。言葉が今の私たちにそぐわないし、国民主権 や基本的人権が、自分たちの生活にどうかかわっているのか、身にしみてわかっていない人が多いと思う。 憲法の話をすると、「じゃあ、どこどこが攻めてきたらどうなるの?」 なんて話になってしまう。右とか左とかを区 別したがる人もいる。私は「右でも左でもなくて、前 」って言うんですけどね。勘違いされていることがいっぱいあ る。政府とか政治家が決めるものだと漠然と思われているけど、本当は私たちが決めることなのに。 (2015. 5. 3 朝日新聞 扉 欄 より) |
水素ステーション誕生 ![]() 山口県周南市に今夏、燃料電池車(FCV)などに水素を供給する中四国地方初の水素ステーションが完成す る。同市の周南コンビナートで生まれる全国屈指の量を誇る水素を活用するもので、地元は「水素先進都市」 に向けた大きな一歩と期待をかける。 (以下略) (2015. 6. 18. 朝日新聞 ちゅうごく経済欄 より) |
故金大中大統領夫人 訪朝へ 韓国の故金大中(キムデジュン)元大統領の李姫鎬(イヒホ)夫人が8月の5日から8日にかけて、平壌を訪問すること が6日、決まった。北朝鮮の最高指導者、金正恩(キムジョンウン)第1書記の招待で、冷え込んでいる南北関係の 改善につながるかどうかが注目される。 正恩氏は昨年12月、夫人にあてて親書を送り、南北統一への意欲を表明するとともに、夫人を平壌に招待し た。夫人側と北朝鮮側の調整が続いていた。 南北関係は、昨年10月に電撃訪韓した北朝鮮の最高幹部3人が韓国側と高官会談の実施で合意したが、韓 国の保守団体による北朝鮮の体制批判ビラ散布などを理由に北朝鮮側が一転して会談を拒否。正恩氏は今年 の「新年の辞」で南北首脳会談に言及したが、実際には批判の応酬が続き、改善の兆しは見えていない。 北朝鮮への融和政策をとった金大中氏の夫人である李氏は、正恩氏の父の金正日(キムジョンイル)総書記が死 去した際に弔問のため訪朝し、正恩氏とも会った。韓国政府は北朝鮮が夫人にどんなメッセージを伝えるかに 注目するが、夫人の招待は北朝鮮の揺さぶりとの見方もある。 (ソウル=貝瀬秋彦) (2015. 7. 8. 朝日新聞 国際欄 より) |
金大中元大統領夫人が訪朝 正恩氏との面会が焦点 韓国の故金大中(キムデジュン)元大統領の李姫鎬(イヒホ)夫人が5日、平壌を訪れた。北朝鮮の最高指導者、金 正恩(キムジョンウン)第1書記の招待による訪問で、正恩氏との面会が実現し、冷え込んでいる南北関係の改善に つながるかが焦点になる。 李夫人とともに訪朝した金聖在(キムソンジェ)・元文化観光相は出発前、記者団に、「我が民族が分断70年の痛 みと傷を癒やし、和解、協力しながら、平和的に往来して暮らすようになることを願う気持ちで向かう」との李夫 人の言葉を伝えた。 正恩氏は昨年12月に夫人あてに親書を送り、南北統一への意欲を表明するとともに、夫人を平壌に招待して いた。夫人は8日まで滞在し、児童施設や病院などを訪れる。 一方で、韓国政府には警戒心もある。北朝鮮への融和政策をとった金大中氏の夫人を招くこと自体が、保守 の朴槿恵(パククネ)政権への揺さぶりとも取れるからだ。韓国政府は今回の訪朝は私的なものだとし、政府のメッ セージも託さなかった。 (ソウル 貝瀬秋彦) (2015. 8. 6. 朝日新聞 国際欄 より) |
(戦後70年 日本の転換点は) 講和条約締結 未解決な問題の発端 ●作家・元外務省主任分析官 佐藤 優さん 1951年のサンフランシスコ講和条約締結 戦後日本の最も重要で未解決の諸問題は、この条約が発 端となっている。早期の講和を望む日本は沖縄だけ独立の対象から外し米軍基地を押し付け、範囲もあいまい なまま千島列島を放棄した。この条約は国際法でいう「処分的条約」。敗戦国の処遇を決めるもの。それを受け 入れて国際社会に復帰したのに、戦犯を祭る神社に国のトップが参拝したり、東京裁判を否定したりするのは、 国際政治のルールブックを無視する行為だ。我々は講和体制という世界秩序に組み込まれているのに、その意 味を消化してこなかった。そのツケがいまきている。 (2015. 7. 26 朝日新聞 オピニオン欄より) |
■ 三井物産、愛媛で魚加工へ 三井物産は、来年夏にも愛媛県宇和島市で養殖魚の加工・販売事業を始めると、12日発表した。 水産養殖 会社「ダイニチ」(愛媛県)、水産加工会社「オンスイ」(新潟県)と、資本金3億円の事業会社を設立した。一部出 資する三井の販売網を使って、加工したブリやカンパチなどをスーパーや飲食店に売り込み、海外へも輸出す る。事業会社は2019年度に売上高20億円をめざす。 (2015. 8. 13 朝日新聞 経済欄 より) |
■□■ 情報ナビ ■□■ より ◆「奥大山の天然水」工場増設 サントリーグループの清涼飲料メーカー「サントリープロダクツ」(東京都) はこのほど、鳥取県江府町にある 「天然水奥大山ブナの森工場」を拡張すると発表した。主力商品の「奥大山の天然水」を増産するほか、炭酸水 やフレーバーウォーターの生産も視野に入れているという。2016年3月に着工し、17年春の稼動を目指す。 同社によると、工場増設で年間生産能力は約1500万ケース(1ケースは2㍑入りで6本)から約2500万ケースに 増える。「奥大山の天然水」の近畿、中国、四国地方への安定供給に加え、現在「南アルプスの天然水」で展開 している炭酸水やフレーバーウォーターの「奥大山」ブランドでの展開を目指す。 投資額は約88億円で、約20人の新規雇用を見込んでいる。環境負荷低減技術の研究部門も本社から同工場 へ移す方針。 (2015. 8. 13 朝日新聞 第2島根欄 より) |
学びを語る 市場原理で質高め 国際競争臨め 大学経営見直し 東京理科大理事長 中根 滋さん 世界的な評価が高いとはいえない日本の大学。そんな中にあって、東京理科大は「世界の理科大」を目標に 改革を進める。長く民間企業を経営したトップは、日本の大学業界のあり方を問題視する。 民間企業の経営と大学の経営は全く違う。大学には株主や株主に似た存在がいない。理事長が動かないと、 経営革新はほぼありえない。 だが、大学には経営者を育てるプロセスが全くない。企業なら目をつけた20代の社員を10~20年かけて育て る。大学はまるで小学校の級長を選ぶかのようなやり方で経営者を選出する。 それでも、文部科学省の「法治主義」によるルールと監督・指導の下、何となくうまく回ってきた。ただ、 これは競争による差異の最大化に消極的なモデルであり、2年前に申告せよとかの、戦後の昭和的ルールだ。 横並びで、お互い痛いところには触れない状況を生む。 抜本的に見直すべきだ。世界は自由市場至上主義。日本も大学は需要に評価を委ね、結果責任を経営者に 負わせる。品質の低い大学や長期定員割れの大学は、市場原理で廃棄すればよい。当然、文科省の役割も変 わることになる。 ノーベル賞の受賞数で劣るのは、日本の頭脳の問題ではない。英語圏の大学に英語で書いた論文数でかなう わけがない。大事なのは中身の国際競争力、教育の質だ。 出来の悪い先生は3年で自主的にやめさせ、「あの人に教わりたい」と世界の人も思う質の高い先生を集める。 国立大への年1兆1千億円の運営費交付金は廃止し、優秀な学生への給付型奨学金にする。国立大は赤字に ならない程度に授業料を値上げすればよい。これで日本は世界レースに戻れる。日本に勝ち目が出てくる。 (聞き手・石山英明) (2015. 8. 27 朝日新聞 教育欄 より) |
水素で描く夢 ニーズの開発課題 <ふり返って> 水素は地球上に最も多く存在し、水を構成する主要な元素。なのに私たちは身近な存在として 意識し、使ってはこなかった。ところが21世紀に入り、家庭用燃料電池(エネファーム)やFCV(註…燃料電池車)が市販 され、水素利用が現実のものになってきた。 水素原子は水をはじめ、色々な物質に含まれる。福岡市では汚泥という厄介者が資源に生まれ変わり、FCVなど に使われている。水素は資源のない日本で、地産地消型の資源になり得る潜在力を持つ。 課題は経済性だ。水素が様々な分野で使われるとコストは下がる。水素社会の実現には、ニ-ズ開発も重要だ。 (コーディネーター 編集委員・安井孝之) (2015. 10. 27 朝日新聞 「朝日地球環境フォーラム2015」欄より) |
FCV 2020年に6000台 講演 舛添要一都知事 世界一の東京をめざすうえで大切なのは、経済ではない。人に優しい環境だ。前回の五輪のときは新幹線ができ たが、今度の2020年の五輪、パラリンピックでは水素社会というレガシー(遺産)を残したい。 世界に先駆けて、一般販売が始まったFCV(註…燃料電池車)に注目している。走行中に出るのは水だけで、CO2も出 ない。蓄電池を抱えているので、非常用の電源としても使える。 ただ、値段が高い。都も独自に補助金を出している。20年までに都内で6千台、25年には10万台まで増やすのが 目標だ。都バスにも燃料電池バスを導入し、20年までに100台以上にしたい。燃料を補給する水素ステーションの整 備も進めている。都はこの構想のために、400億円の基金を積み立てている。世界の7割のCO2を排出しているとさ れる都市の役割は、大きい。 (2015. 10. 27 朝日新聞 「朝日地球環境フォーラム2015」欄より) |
「努力せずに補助金」 若手農家から批判 小泉氏 「最も心打たれた」 「青年の就農者向け給付金のあり方に疑問がある」 「研究も努力もしないで給付金・補助金だのみの人たちがいる」 環太平洋経済連携協定(TPP)の農業対策を話し合う自民党の10日の会合で、そんな「異例」の発言が相次 いだ。農林部会長に就いた小泉進次郎氏が希望した若手生産者との意見交換会で、小泉氏は「今までの会議 で最も心を打たれた」と満足そうだった。 自民党の農業関連の部会では、農政への不満や予算の増額などを求める声がよく聞かれる。この日の会合 では、若手農家から「攻めの農業」に向けた「農業向けMBA(経営学修士号)の創設」 「農業法人が増える中、 サラリーマン農家として働く選択肢も伝えるべきだ」など具体的なアイデアも飛び出した。小泉氏は、来週まとめ る党の農業対策に「できる限り採り入れたい」としている。 (2015. 11. 11 朝日新聞 総合5欄より) |
「改革進めて」 民意は示した 東大名誉教授(政治学) 御厨 貴( みくりや たかし)さん 大阪府と大阪市の二重行政は、多くの人が問題だと思っていた。橋下徹氏はそこに目をつけて大阪都構想を掲げ、 労働組合などの既得権にも切り込んだ。行き過ぎもあったが、劇薬でなければ、大阪は何もできずに沈没した…。そん な府市民の思いが、大阪維新の会のダブル選「2勝」につながったのではないか。 ただ、大阪維新は府議会と市議会で過半数を握っているわけではないから、橋下氏の引退後も「橋下」と「反橋下」 の枠組みは続く。怨念の対立をどう乗り越えるか。これまで政策的に賛成でも、橋下氏は嫌だという感情が議会にあっ た。だけど、反橋下であっても反対だけして代替案を示せないのなら、大阪は良くならない。橋下氏が進めた改革を、 「ポスト橋下」が修正しながらでも前に進めていけ…。それが結果に示された民意だろう。 ダブル選に先立って国政政党「おおさか維新の会」をつくったが、衆参20人程度の弱小政党に過ぎない。設立目的も 大阪の利益を実現することだから、全国的には広がらない。大阪都構想は当初、全国的に注目されたが、今は大阪と いう一地方の話に戻ってしまった。必要なのは都構想を通じ、地方分権をどう一般化していくのかということ。大阪改革 を起爆剤に、それぞれの地方が変わっていくという話にならないと、みんなが関心を持たない。 それでも今回の勝利によって橋下氏自身は、国政と大阪政界の両方にフリーな立場で足場を残した。もしもう1回市 長選に出ていれば、勝ったとしても、またどろどろの対立が待っていた。 一方で、大阪からダイレクトに国政を目指せ ば「大阪を見捨てるのか」と言われていた。引退によって1回、シャッフルするのだろう。こういう立場に立った人は今ま でいない。 (聞き手・今野忍) (2015. 11. 23 朝日新聞 社会欄より) 「テロとの戦い」見えぬその後 内戦の解決こそ本当の「戦い」 千葉大教授 酒井啓子さんに聞く パリの同時多発テロの直後から、各国首脳が口々に「テロとの戦い」を宣言している。 しかし「戦い」の先に何があるのかは、不透明なままだ。中東を専門とする国際政治学 者の酒井啓子・千葉大教授に聞いた。 ◇ 事件の後すぐ、フランスはシリア国内の過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点を空爆しました。各国首脳は「テロと戦 う」と表明しています。しかしそこには、「何のための攻撃であり、その後にはどんな希望があるのか」というメッセージ が欠けていました。 シリアでは、アサド政権、反政府勢力、そしてISが対立し、激しい内戦が繰り広げられています。この内戦を終わらせ なくてはというのは、全世界の共通認識ですが、道は険しい。ISを倒すにしても、その後にどうするのかという道が見え ません。米国やフランスはアサド政権と対立しており、今さら組めない。反政府勢力は独り立ちするには弱すぎて、支 援するには相当な覚悟が必要です。 できることは少ない。それでも国際社会は、シリアを破壊するのではなく人々の安全と将来を考えているのだというメ ッセージを打ち出すべきです。 「テロとの戦い」という言葉は、ブッシュ政権の頃に使われ始めました。イラクなどの民主化を打ち出して介入したも のの失敗。スローガンだけが残りました。いま欧米諸国は、シリアや中東の人たちではなく、自国の安全と利益を守る ためだけに「テロとの戦い」を掲げているように見えます。しかし本当の「戦い」は、内戦の解決に向けて動くことではな いでしょうか。建設的なものが何も見えないままの破壊は、攻撃され巻き添えを食う人にとって、報復の対象になるでし ょう。 攻撃する側の「無自覚」も、戦火にある人々を傷つけています。パリのテロの前日、レバノンでもテロがありました。 ISと地上戦を交えている組織の拠点がある首都ベイルートです。ISの支配地域の周辺国にとって、戦いはリアルです。 一方、今回狙われたパリのロックコンサート会場や金曜夜のカフェは、戦火からほど遠い空間の典型でした。パリで起 きたような殺戮(さつりく)はシリアで日々起きていて、その中にはフランスの攻撃による死もあることに、思いを巡らせる 必要もあるでしょう。今回のテロは、フランスはじめヨーロッパに潜在的にあった、反イスラム、反移民・難民の勢力を 決定的に後押しすることになるでしょう。排除からは反発しか生まれません。難民がテロリストになる必要がないように 温かく迎え入れることです。日本にも、将来の復興を支えるシリア人留学生の受け入れなど、できることはあると思い ます。 (構成・高重治香) (2015. 11. 18 朝日新聞 文化・文芸欄より) |
水素社会へ先手 神戸に輸入拠点 空港島に建設 市と川重合意 二酸化炭素など温室効果ガスを出さないエネルギーとして注目される水素の需要増をにらんで神戸市は26日、 水素の貯蔵拠点を神戸空港島(同市中央区)の一角に整備することで川崎重工業と合意したと発表した。2020 年度をメドに稼動させる計画という。 同市などによると、今回の計画は、川重と岩谷産業、電源開発が取り組む水素の国内供給網構築プロジェク トの一環。豪州で生産した液化水素を専用タンカーで運び、タンクローリーで各地に出荷する構想で、同市と川 重が、空港島北東部の市有地(約1㌶)に水素を荷揚げし貯蔵する設備を建設する。設備は19年度までに完成さ せ、20年度に稼動する計画だが、具体的な内容は今後各社と協議して決めるという。 設備の整備費の一部には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金を充てる。経済産業省は 14年のエネルギー基本計画で「水素社会の実現」を掲げ、水素ステーションなどの設備導入を推進している。燃 料電池車などの普及で将来的な水素不足も懸念されている。市は次世代エネルギーの利活用で先行し、地域 の産業活性化に結びつけたい考えだ。 (金井和之) (2016. 1. 27 朝日新聞 経済欄より) |
ローマ法王、各国へ中国と対話のススメ 「自己防衛のために攻撃的になれば 戦争に」 ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は、2日付の香港のインターネット英字紙「アジア・タイムズ」のインタ ビューで、中国が台頭する中での平和への課題について問われ、「恐怖はよき助言者ではない」と述べ、恐れず に中国とほかの国々が対話を進めることが平和につながると語った。 法王は「自己防衛のために攻撃的な意思疎通になれば、戦争になる。真の平和の均衡は、対話によって実現 する」と述べ、西洋と中国を含む東洋が常に対話を通じて解決策を見い出すよう促した。また、戦後処理の基本 方針を決めた第2次大戦末期のヤルタ会談が冷戦につながったことを引き合いに、「対話は、ケーキの半分をあ なたに、あと半分を私に、といった妥協ではない。ケーキはそのままにして、ともに歩むことだ」と述べ、意見の違 いを認めつつも、人間性、文化などの共通の価値を認め合うべきだとした。 法王はバチカン(ローマ法王庁)と国交がない中国との関係改善を進めており、訪中にも意欲を示している。 (ローマ=山尾有紀恵) (2016. 2. 4 朝日新聞 国際欄より) |
■廃炉計画 地元説明へ 島根原発1号機(松江市、出力46万㌔ワット)の廃止措置計画について、中国電力が原子力規制委員会へ の認可申請に向け、28日にも島根県と市に事前了解を申し入れることがわかった。議会など地元自治体の了 解を得られ次第、規制委に申請する見通しだ。中国電は昨年3月、1号機の廃炉を決定している。島根原発で は昨年6月に低レベル放射性廃棄物の点検記録に虚偽があったことが発覚。中国電は当初、廃止措置計画 の申請のめどを「半年程度」としていたが、虚偽記録の調査のために作業が遅れていた。 (2016. 4. 20. 朝日新聞 総合5欄 より) 「衣食問題優先」金正恩氏が強調 北朝鮮 北朝鮮の朝鮮労働党政治局拡大会議が18日、平壌で開かれた。金正恩(キムジョンウン)第1書記は演説で、人 民の衣食の問題から優先的に取り組んでいくべきだと強調したうえで、経済を指導する機関の幹部らを「責任感 が不足している」と批判した。 21日までの北朝鮮メディアの報道によると、正恩氏は故金日成(キムイルソン)主席や故金正日(キムジョンイル)総 書記の遺訓のうち「人民の食糧問題、衣服の問題に関する遺訓からまず執行していかなければならない」と指 摘。農畜産や水産に力を入れて、早く食糧問題を解決し、軽工業部門も潜在力を最大に活用して製品の質を高 めるよう指示した。 また、地方の特性を生かして地域経済を発展させることで、地方の人民の生活を向上させなければならない と訴えた。 一方で「経済指導機関の幹部をはじめ、少なくない幹部が責任感が足りず、役割を果たせていない」と批判。 「自分の仕事を責任を持って遂行すべきだ」とはっぱをかけた。 (ソウル) (2015. 2. 22. 朝日新聞 国際欄 より) |
考/論 正社員偏重の是正を 浜矩子・同志社大大学院教授 アルバイトや契約社員など非正社員がいまや働き手の4割を占める。そうした人たちにとって、春闘は遠い世 界の話だ。大手企業が正社員に大盤振る舞いすると、むしろ非正社員や下請け企業が、コスト削減の対象にな るおそれもある。 1970年代半ばまでなら、大手の正社員を中心に分配する春闘も意味があった。だが、いまは非正社員が増え た。前年を超えるベアなどと浮かれている場合ではない。全体に恩恵が行き渡ることを目指すなら、大手企業の 正社員に手厚く分配する昔ながらのやり方ではなく、苦しい生活を強いられる非正社員により手厚く分配したら どうか。大手の正社員に偏った分配のゆがみこそ、是正するべきだ。 (2015. 3. 19. 朝日新聞 10版欄 より) |
「演習やめれば 核実験やめる」 米で北朝鮮外相 北朝鮮の李洙墉(リスヨン)外相は23日、滞在先の米ニューヨークでAP通信とのインタビューに応じ、米国が朝鮮半 島周辺での韓国との合同軍事演習をやめれば、北朝鮮も新たな核実験をやめる用意があると発言した。演習を続 ければ核実験も辞さない姿勢をちらつかせ、米国に対北朝鮮政策の見直しを求めた。 AP通信によると、李氏は、米国が3月から韓国と実施している大規模演習をやめれば、「私たちも核実験をやめ るだろう」と述べた。さらに「対立が続けば2カ国だけでなく、世界全体に破滅的な結果となる。米政府が敵視政策 をやめることが肝心だ。そうすれば北朝鮮も同様に対応する」とし、米国に政策転換を求めた。(ニューヨーク) (2016. 4. 25 朝日新聞 国際欄より) イチョウの苗木 広島から国連へ 広島で被爆したイチョウの種から育てられた苗木が2日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部(UNOG)に寄贈 された。国連核軍縮作業部会に平和首長会議会長として参加している松井一実・広島市長が、UNOGのモラ ー事務局長に苗木を渡した。 松井市長は「(今は)30㌢しかないが、数十㍍の大木に育つかもしれない」などと、核軍縮進展への希望を込め てあいさつ。モラー氏も「次世代の希望の象徴だ」と応えた。 (ジュネーブ) (2016. 5. 3 朝日新聞 国際欄 より) |
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2014年3月、モンゴル・ウランバートル、有田芳生参議院議員提供 横田さん、ひ孫との体面写真 14年、モンゴルで 北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(拉致当時13)の両親横田滋さん(83)、早紀江さん(80) 夫妻が2014年3月にモンゴルで、めぐみさんの娘で夫妻の孫にあたるキム・ウンギョンさん(28) と面会した時の写真が9日、公表された。 夫妻を支援する有田芳生参院議員が写真を入手し、公開した。夫妻が首都ウランバートルで、ウンギョンさんや、 その娘で夫妻のひ孫にあたる女児と面会した時の写真2枚。笑顔でひ孫を抱く早紀江さんらが写っている。夫妻は 「とても嬉(うれ)しい時間でしたが、もう2年以上の歳月が流れました」として、被害者全員の帰国を願うコメントを支 援団体を通じて発表した。 この面会は、日本側の働きかけで第三国のモンゴルで実現した。日朝両国政府は面会後の14年5月、スウェーデ ンのストックホルムで、拉致被害者らについて北朝鮮が調査することで合意。しかし調査結果の報告がないまま、 拉致問題の交渉は滞っている。 (佐藤惠子、編集委員・北野隆一) 孫らと体面 うれしかった でも 横田さん夫妻、拉致問題の不安語る (註…以下、一部省略) 夫妻のコメントは、支援団体を通じて発表された。「ウンギョン一家と体面した時はとても嬉(うれ)しい時間でした が、もう2年以上の歳月が流れました。そのときの喜びを、ご支援くださった方々にも知って頂きたいと思っておりま したところ、面会のよろこびの写真を公表する事に孫も同意してくれた様です」 夫妻を支援する有田芳生参院議員が昨年秋などに複数回訪朝。写真を入手し、公開についてウンギョンさん側 の同意を得たという。 拉致問題をめぐる日朝交渉が膠着(こうちゃく)状況にある中、夫妻はコメントの中で、「大変不安な気持ちです」と心 境を明かし、「一刻も早く被害者の全部が家族と共に祖国に帰国出来ます様、強く政府にお願い致したく思います」 と述べた。 早紀江さんは面会して帰国した後、ウンギョンさんについて「明るくはきはきしていて、若いときのめぐみの感じ によく似ていました」。ひ孫については「にこにこして歩くしぐさが幼いころのめぐみちゃんにそっくりで、涙が出ま した。こんなに娘によく似た、血を分けた子が目の前にいるのに、なぜめぐみがいないの」と語っていた。 めぐみさんは1977年11月、新潟市内で失踪。02年に平壌で小泉純一郎首相と会談した金正日総書記(いずれも 当時)は拉致を認め、めぐみさんは「死亡」と伝えた。 横田さん夫妻は、北朝鮮でウンギョンさんと面会するよう提案されたが、幕引きを懸念して応じなかった。モンゴル での面会は日本側が提案して北朝鮮が受け入れ、14年3月に実現した。 (佐藤惠子、編集委員・北野隆一) ![]() ひ孫にあたる女児を抱く横田早紀江さん(右)と滋さん (2016. 6. 10 朝日新聞 社会欄 より) |
中電の廃炉申請 松江市長も了解 島根1号機 松江市の松浦正敬市長は22日の市議会全員協議会で、同市の島根原発1号機の廃炉計画を中国電力が 原子力規制委員会に申請することを了解すると表明した。 市は今後、市議会などから出された「計画通りに使用済み核燃料を搬出する」「安全対策を万全にする」など の要請事項をとりまとめて中電に提出する。 溝口善兵衛知事も同じく了解する意向を示しており、県は現在、松江市を除く周辺5市と鳥取県の意見をま とめている。 (奥平真也) (2016. 6. 23 朝日新聞 島根欄 より) 島根原発1号機 溝口知事も視察 溝口善兵衛知事は24日、中国電力島根原発1号機(松江市)を視察した。県は中電が廃炉計画を国に申請す ることに了解を表明したが、「現場を見ておくことが必要」と知事が求めた。北野立夫・島根原子力発電所長ら が案内し、原子炉建物内で使用済み核燃料を保管する燃料プール周辺などを約1時間見て回った。 視察後、知事は県庁で報道陣に「安全性について説明していただいた。消防車配備など対策は講じられてお り、今の段階で格別問題はないと思う」と述べた。 松江市の松浦正敬市長も10日に視察し、事前了解を表明している。 (奥平真也) (2016. 6. 25 朝日新聞 島根欄 より) |
涼しさ工夫 五輪に生かす 元女子マラソン選手 有森 裕子さん 東京の夏の暑さは、もはや異常ですね。エアコンや車の排熱を含んだ熱風に、肌にまとわりつく湿気。2020 年の東京五輪は、よりによって、こんな暑い時期に催されるわけです。マラソンは五輪史上、最も過酷なレー スになるかもしれません。 ただ、アスリートに関しては私は何も心配していません。雨の日もあれば雪の日もある。同じ環境のもと、ど れだけ頑張れるかを競うのがマラソン。必要な準備をするだけのことです。 心配しているのは、沿道に詰めかける大勢の観客の体調です。炎天下、立ちっぱなしで熱い声援を送ってく れるなかには、子どもや高齢者もいれば障害のあるかたもいるでしょう。 もしも誰かが具合が悪くなったとき、どうやって助けるんでしょう。大勢が広範囲に散らばっているんです。車 両規制のかかった一帯に、救急車はどこまで入れるのか。動線をどう確保するのか。猛暑の危険は十分にわ かっているわけですから、大会組織委員会はもう少し真剣に考えたほうがいい。 それには徹底的にシミュレーションをするしかありません。早くコースを決めて、東京マラソンなどの大会を開 いてみるべきです。いきなり本番では危機管理上、あまりにも心もとない。残念ながら、ゴールとなる新国立競 技場がまだ形も見えていないので、それも難しいのですが。 道路に特殊な舗装をして、温度上昇を抑えようという話もありますが、五輪だけのための事業なら反対です。 どんどん膨らむ経費に、怒っている国民はすでに大勢いる。批判の矛先は結局、アスリートに向けられるんで す。「五輪のため」の出費はこれ以上、増やしてほしくありません。 むしろ、東京の街が近年、妙に暑くなってきたら、五輪をきっかけに少しでも涼しくしよう、そのために舗装も 工夫しよう、という取り組みができないものでしょうか。これからの社会に、これからの暮らしに必要なことを五 輪にも生かしていこう、という。 暑さに強い体づくりですか? 日ごろの努力しかありませんね。私は現役時代、冷房は基本的に使わず、ひ ざを出す服も避けました。汗をかいて新陳代謝をよくすることが大事です。冷たい飲み物も避け、常温か少し 温かくして飲んでいた。胃を疲れさせないためです。走った後は疲労をためないよう、冷水で体を冷やしていま した。 マラソンはメンタルの勝負でもあります。「うわー、暑い」と思うか、「やったー、暑い」と思うか、言葉一つで違 ってくる。暑さも気から。これは五輪に限った話ではありませんね。 (聞き手・萩一晶) (2016. 8. 2 朝日新聞 オピニオン欄 より) |
文化の扉 涼呼ぶ怪談の世界 怖さの中に畏敬や情愛も 精神的な癒やしもたらす 精神科医 香山リカさん 「お迎え現象」を思い起こします。死期が迫っている人が、その場には誰もいないのに誰かと会話をしているそぶ りを見せたり、「亡き家族や友だちが会いに来た」と語ったりする現象です。医学的には「幻覚」として退けられ、非 合理的かもしれません。 しかし、このような体験に見舞われた人の方が、死への不安や恐怖心が薄らぎ、安らかに旅立てるという話を聞 いたことがあります。送る側にとっても「ひとりで旅立たせたのではない」と考えることができ、気持ちが救われるの ではないでしょうか。 こうした意味では怪談も「お迎え現象」のような精神的な癒やし効果をもたらすことがあると思います。人と人、世 代と世代をつなぐコミュニケーションなのかもしれません。いずれにしても人間が人間である限り、あの世や死後の 世界への関心は尽きることはないでしょう。 (2016. 8. 14 朝日新聞 扉 欄 より) |
「共同販売」の監視強化 公取委 自由な取引阻害の恐れ 公正取引委員会の命令が対象にしたのは、「共同販売」と呼ばれる農協独自の出荷手法だ。全国に約650あ る地域農協は、組合員からの農作物をまとめて出荷する共同販売を実施。農家1軒分の農作物よりも、複数の 農家で数量をまとめたほうが有利な条件で売りやすい、と農協は説明する。 農協が共同販売している農作物の多くは、上部組織の全農や卸売業者を経由して消費者に届く。この仕組み は農作物の安定供給に役立った半面、横並びの条件での出荷で農家の創意工夫や経営努力が生まれにくい、 とも指摘されてきた。 また、多くの農協で共同販売や資材購入での収支は悪化しており、共同販売での農家からの手数料収入の確 保も課題となっている。こうしたことを背景にした「農家の囲い込み」を防ぐため、昨年4月施行の改正農協法は、 農協事業の利用の強制を禁止した。 そうした動きに合わせるように、公取委も農協の共同販売の強制が、農家の自由な取引を妨げるケースがある とみて監視を強化してきた。29日の会見で公取委は、JA土佐あきに対して「ブランド力を高め、農家が積極的に 農協を選択するよう改善をしてほしい」と注文を付けた。 (野口陽) (2017. 3. 30 朝日新聞 社会欄 より) |
発言録 3日 ■石破茂・前地方創生相 いつの時代だって、国を変えるのは都ではありません。地方が変える んです。このままいったら84年後の日本人の数は半分になります。田んぼ、畑、海はどうなりますか。鉄道はど うなりますか。経済は伸びますか。日本をもう一度強く、豊かな国としてよみがえらせるためには、千葉は千葉 でものを考えていかなければなりません。永田町、霞が関で、何でも分かると思ったら大間違いだ。やりっ放し の行政、頼りっぱなしの民間、無関心の市民、これが三位一体になったとき、地方創生は絶対に失敗します。 そのとき、この国は終わります。 (千葉県いすみ市での講演で) (2016. 9. 4 朝日新聞 総合4欄 より) |
解/説 病院外の支援が重要 年を取れば様々な病気とつきあっていかざるをえない。高齢化に伴い、病院で「治す」医療の限界がみえてき た。財源も限られるなか、地域社会がどう支え合うのか、住民一人ひとりの死生観や、地方自治の根っこにかか わる問いだ。 プライマリーケアの充実や医療・福祉・介護の連携は、今後、急速に高齢化する都市部でも「解」になりうる。 病院の外で支援の輪を広げれば、家族の負担も減り、住み慣れた家で最期を迎えやすくなる。ただ、実現への 道のりは険しい。 医療は専門性が高く、患者は自らの心身のことなのに医師に依存しがちだ。それがコスト意識のない医療に つながってきた面もある。独法化が頓挫した松前病院をこの秋に退職すると決めた医師、青木信也さん(36)は 「住民はただ薬を出してくれる医師がいればいいのだろうか、と意識のズレも感じた」と話す。 国も「地域包括ケア」をうたい文句に在宅医療を進めようとしているが、「押しつけ」や「お任せ」では立ち 行かない。夕張市立診療所の元所長、森田洋之さんは「与えられる医療に慣れた意識を変え、一人ひとりが どう生き、どんな最期を迎えたいかよく考えてみてほしい」と話す。 (青山直篤) (2016. 8. 15 朝日新聞 経済欄 より) |
マイナス金利は 「いいことない」 地銀協会長 全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行頭取)は14日の記者会見で日本銀行のマイナス金利政策について、 「地方銀行にとっていいことはない。大きな影響で大変な思いをしている」と述べた。1月のマイナス金利の導入決定 後、貸出金利が一段と低下して収益が悪化しているためだ。 日銀は20~21日に予定する金融政策決定会合で、物価上昇率が目標の「2%」に達していない理由などを検証し、 追加の金融緩和策の必要性を議論する。追加緩和でマイナス金利の幅が拡大された場合の影響について、中西氏 は「我々には厳しい」と述べた。 日銀は検証でマイナス金利の問題点も分析する。金利低下で年金資金の運用などにも影響が出ているため、満期 までの期間が長い国債の買い入れを減らし、長期金利の一部の上昇を容認することを検討する。中西氏は「市場や 金融機関の情報をかなり真摯(しんし)に受け止めていて、対話が少しずつ進んでいる感じは受けている」と語った。 (2016. 9. 15 朝日新聞 経済欄 より) |
東芝など3社が 福島に水素工場 2020年 稼動めざす 東芝と東北電力、岩谷産業は29日、福島県内で国が実証事業を進める世界最大級の水素工場建設の事業者に 選ばれたと発表した。来年9月までに内容を詰め、2020年までの稼動をめざす。 工場に備える製造装置は水を電気分解して水素を取り出す方式で、分解に使う電気は周辺で設置が進む太陽光 や風力の発電所から送る。つくった水素を化学反応で電気に変えて東北地域で利用するほか、液体にして東北以 外の地域の水素ステーションにも運び、燃料電池車(FCV)に使うことを想定している。 装置は1万㌔ワット級で、FCV1万台分の燃料にあたる年900㌧の水素を製造できるという。製造から利用まで 二酸化炭素を出さない仕組みという。 (2016. 9. 30 朝日新聞 経済欄 より) |
![]() ベトナム戦争で米軍が使用した枯れ葉剤の影響で、結合双生児として生まれたベトナムのグエン・ドクさん(35) が20日、広島市の平和記念公園を初めて訪れた。原爆死没者慰霊碑に献花し、戦争の被害に苦しむ人が二度と 出ないよう祈りを捧げた。 ドクさんは1981年、兄ベトさんと下半身がつながった状態で生まれた。親がダイオキシンを含む枯れ葉剤を浴びた 影響とみられる。88年に分離手術を受けた。その後結婚して父親となったが、兄は2007年に亡くなった。 初の広島訪問は、市民団体「広島ベトナム平和友好協会」の招きで実現。この日は広島平和記念資料館も訪ね、 原爆の犠牲者の遺品や当時の写真などを見た。 ドクさんは記者会見で「原爆と枯れ葉剤の被害はどちらも戦争によるもので同じ痛みを共有している。世界では今 も戦争が繰り広げられている。争いをやめ、化学兵器や核兵器は廃絶しなければならない」と話した。 (池上碧) (2016. 10. 21 朝日新聞 社会欄 より) |
GPIF 理事長報酬 3130万円 昨年倍増、でも運用損 5.3兆円 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の理事長報酬は、2015年度で3130万5千円だった。GPIFが27日に 開かれた民進党の会合で報告した。GPIFは昨年度中に約5兆3千億円の運用損を出しており、会合では「国民感 情として許せない」という批判が相次いだ。 GPIFによると、理事長報酬は13年末の閣議決定に基づいて15年1月から約2倍に引き上げられた。「高度で専 門的な人材確保」という理由で、日本銀行総裁の3467万円(14年度)や公的金融機関トップの平均年収2223万円 (15年度時点の試算)などを踏まえたという。 99ある国の独立行政法人のうち、GPIFの理事長報酬は最も高い。外資系も含めた資産運用業界トップの報酬 の中央値は7730万円(同)だった。 民進党の会合では「金融機関の報酬は成功報酬的な意味合いが大きい。赤字を出してこんな多くもらっていい のか」といった意見も出た。 (井上充昌) (2016. 9 28 朝日新聞 総合5欄 より) |
![]() 精神科医療への信頼を根底から崩しかねない事態である。 法律に基づく精神保健指定医の資格を、89人もの医師が取り消されることになった。厚生労働省の調査で、自分が 診療に深く関わったように装い症例数を水増ししていた医師が49人、その不正をチェックしなかった指導医が40人見 つかった。このほか、調査が始まった後、自ら資格を返上した者も6人いた。 医療は患者の同意に基づいて行われるのが大原則だ。 だが指定医は、重い精神障害で入院治療が必要と判断した場合、家族等のいずれかの同意だけで患者を「医療保護 入院」させられる。さらに、人を傷つける恐れなどがあると診断したときは、都道府県知事らの命令により、「措置入院」 とすることも可能だ。 人の自由を奪う判断は、確かな人権意識と倫理観に裏打ちされたものでなければならない。資格の不正取得や見逃し が、人権をないがしろにし、倫理にもとる行いであるのは明らかだ。 指定医という資格を、学会が認定する各種専門医と同じようなものと、とらえていたのではないかとの指摘もある。だと したら考え違いも甚だしい。 調査は、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)で昨年不正取引が発覚し、23人が資格を失ったことがきっかけだった。 厚労省が近年の指定医の症例報告を洗い直したところ、12都府県の26病院で問題行為が見つかった。精神医療の 中核病院や大学病院も名を連ねている。 指定医になると処遇は上がり、病院にも診療報酬の上乗せなどの利点がある。不正の広がりの背景に、こうした事情 もあったのだろうか。 聖マリアンナ医大では資格取り消しに加え、不正取得者は1カ月、指導医は2カ月の業務停止処分を受けた。この間、 医師活動はできず、病院も診療報酬の一部自主返納を進めている。 今回も同様の措置が予想されるが、患者にとって、医師が突然代わったり、他の病院に通わなければならなくなったり するのは大きな負担だ。他の医療機関や行政とも連携をとりながら、影響を最小限におさえることに努めてもらいたい。 厚労省の審議会の部会は、指定医資格の審査方法に欠陥があると認め、すでに口頭試験の導入などが提案されてい る。再発防止策を急ぐ必要がある。 制度もさることながら、何より重要なのは、医師と病院の意識を改めることだ。教育や研修の充実などに早急にとり組 み、社会との信頼を結び直さなければならない。 (2016. 10. 31 朝日新聞 社説欄 より) |
野田氏、小沢氏と「天下の情勢議論」会談「幹事長就任祝いで誘われた」 民進党の野田佳彦幹事長は10月31日の記者会見で、自由党の小沢一郎代表と同29日夜に会談したことを明ら かにした。小沢氏から幹事長就任祝いとして誘われたとして、「天下の情勢について議論した」と語った。 衆院補選などの野党共闘をめぐって小沢氏が民進を批判する中の会談。野田氏は「認識が一致したものもあっ たし、これからもっと議論しなければいけないものもある」と述べた。週内にも再会談する予定だ。 民進執行部や共産との共闘に否定的な連合に対し、共産と社民、自由3党が批判や不満を表明しているが、野 田氏は「(連合か野党共闘かの)二者択一ではない」と強調。 共産の小池晃書記局長もこの日、記者会見で、両氏の会談を「お互いに意思疎通を様々なチャンネルでやって いくのは非常にいいことだ」と評価した。 (2016. 11. 1 朝日新聞 総合4欄 より) |
都民不在越え 出直す機会に 元三重県知事の北川正恭・早稲田大名誉教授(自治行政)の話 1回目の調査では不明だった 責任の所在が、今回、行政監察によって徹底的に調べたことで判明した。なれ合いに覆われていた都庁のガバナ ンスを小池知事が抜本的に変えたうえ、都の職員に対し、今後は覚悟を決めて職務に臨まなければならないこと を明確に示した意義は大きい。都の決定に反し、都民の代表の都議会にさえ事実と違う報告をしてきた職員に懲 戒処分で臨むのも当然だ。都庁には、都民不在の危機的な体質を変えて、出直す機会にしてほしい。 (2016. 11. 2 朝日新聞 社会欄 より) |
「クリントン氏立候補 全米の娘たちにメッセージ」 オバマ大統領が会見 クリントン氏の敗北宣言を受けてオバマ大統領は9日、ホワイトハウスで記者会見に臨んだ。150人以上のホワイ トハウス職員が、オバマ氏の声を聞こうと集結する異例の場となり、会見中に涙ぐむ職員の姿もあった。 オバマ氏はバイデン副大統領を伴って現れ、クリントン氏のこれまでの功績をたたえて「誇りに思う」と話した上で 「歴史的な立候補は、全米の我々の娘たちに政治で上り詰めることができるというメッセージを送った」と述べた。 オバマ政権の継承を表明してきたクリントン氏の敗北は、これまでの路線が否定された形にもなる。オバマ氏は 「(トランプ氏と)非常に重大な相違があることは秘密ではない」としながら、「我々は(トランプ氏が)成功裏に国を結 束させ、率いていくために働いていく」と政権移行を円滑にすることを強調した。 オバマ氏が「(トランプ氏側も)詰まるところ、同じチームなのだ」と述べて立ち去った後も、鳴りやまない拍手は、 1分以上続いた。 (ワシントン=杉山正) (2016. 11. 11 朝日新聞 国際欄 より) |
水道代を過徴収 無断放水し帳尻 岡山 検針業務の委託業者 岡山市水道局が使用量メーターの検針業務を委託している「第一環境」(本社・東京)の岡山営業所が、検針ミス 22件を最長で約2年間放置し、市水道局が10月31日付で厳重注意をしたことがわかった。中には庭の水を無断で 流して帳尻を合わせていたケースもあったという。 市水道局と同社によると、内部通報を受け、9月に社内調査したところ、市に報告していない22件の検針ミスがわ かった。10月に「報告遅れがあった」と市に始末書を提出した。 使用量を多く読み取り、料金を過徴収していた。うち2件では、社員が長期不在の契約者宅の敷地内に入り、前 回検針で誤った値まで使用量を増やすため、庭の散水栓から水を流していた。 第一環境は中・四国支店と岡山営業所の幹部6人を懲戒処分にした。進藤賢一支店長は取材に「ミスをしてはい けないという意識が強過ぎたのか、社員が報告できない体制になっていた」と話した。 (波多野大介) (2016. 11. 28 朝日新聞 社会欄 より) |
![]() この徹底したリベラリズムは、いったいどこからくるのだろう。ドイツのメルケル首相のことだ。 各国首脳がトランプ次期米大統領との距離を測りかねる中、「肌の色や宗教、性別などを問わず、民主主義や自由、 法の支配を尊重するという価値観」を共に働く条件にあげた。国内でも、昨年来100万人超の難民申請を受け入れたこ とに反発が強まっているが、「内戦から逃れてきた人を追い返すことはできない」と耳を貸さない。 二つの通説がある。ひとつは彼女の育った家庭環境だ。父親はプロテスタントの牧師で、メルケル氏が幼い頃に旧東 独に一家で移住した。旧東独で協会関係者は抑圧の対象だったが、ほかの牧師を指導する立場として信仰を貫いた。 教会のすぐ横には知的障害者の施設があり、メルケル氏も日常的に接していたという。父親とも交流があったアネッテ・ シャバーン駐バチカン大使は「メルケルは現実的な政治家だが、人間の尊厳にかかわることには原理原則を貫く。カリ スマ的な牧師だった父親の影響を受けている」と話す。 もうひとつは、自由を希求した旧東独市民としての経験だ。ベルリンの壁がまだあったころ、東の市民が西に逃げ出 す大きな契機となったのが、近隣国ハンガリーの国境解放だった。 昨年、ドイツに向かって押し寄せる難民をハンガリー政府がフェンスで遮断しようとしたとき、四半世紀前の記憶がよ みがえったに違いない。伝記を出版した地元記者らはそろってこう話す。自由な移動こそが今のドイツを作り上げ、欧 州の繁栄をもたらしたとの信念が根底にあるのだと。 自身が多くを語らないため、本当のことはよく分からない。ただ、リベラルな政策を貫けるのも、有権者の支持あって こそだ。過去を学び、克服してきた戦後のドイツは、ナショナリズムやポピュリズムにヒトラーのにおいを感じとり、そう 簡単には多数派を形成させない土壌がある。ナチスが多用した国民投票を憲法で厳しく制限していることも、支えの一 つだ。 (ベルリン=高野弦) (2016. 12. 5 朝日新聞 国際欄 より) |
麻薬取締官が調書偽造容疑 警視庁が逮捕 令状取得に使用 薬物事件の捜査書類を偽造して携帯電話の通話履歴を違法に差し押さえたとして、警視庁は8日、厚生労働省関東 信越厚生局麻薬取締部の麻薬取締官、奥村憲博容疑者(46)=横浜市青葉区=を虚偽有印公文書作成・同行使の疑い で逮捕し、発表した。「間違いありません」と述べ、容疑を認めているという。 組織犯罪対策5課によると、奥村容疑者の逮捕容疑は2~4月、覚醒剤事件の捜査で、協力者の男(50)=覚醒剤取締 法違反罪で起訴=の証言を偽造して供述調書を2通作成。それをもとに横浜簡易裁判所から捜索差し押さえ令状を取り、 別の人物の携帯電話の通話履歴を差し押さえたというもの。この捜査で逮捕者は出ていないという。 この事件とは別に同課は9月、覚醒剤約378㌘(末端価格2646万円相当)を所持していたとして、協力者の男を覚醒剤 取締法違反(営利目的所持)の疑いで逮捕。男の交友関係を調べたところ、奥村容疑者と頻繁に連絡を取っていたことが 判明した。 奥村容疑者の身辺やこれまでの捜査を調べたところ、男の証言の一部を変え署名や押印を勝手に加えるなど、調書を 偽造した疑いが浮上したという。同課は、奥村容疑者が調書を偽造した経緯や男との関係を慎重に調べている。 麻薬取締官は全国に8カ所ある厚労省・麻薬取締部の職員で、約300人いる。刑事訴訟法に基づく特別司法警察員とし て逮捕権があり、薬物事件を捜査している。 (2016. 12. 9 朝日新聞 社会欄 より) 堺署虚偽調書 府に賠償命令 大阪地裁 警察官に虚偽の調書を作られ、精神的苦痛を受けたとして、大阪府警堺署に勾留されていた男性(44)が大阪府と 国に550万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁(柴田義明裁判長)は9日、請求の一部を認め、府に6万円の支 払いを命じた。 男性は2012年12月に堺署の留置場から保護室へ移される際、署員を殴ったとして公務執行妨害の罪で起訴され、 地裁堺支部から懲役2年6カ月の実刑判決を受け、服役を終えた。 9日の判決によると、この事件で署員らは保護室への収容手続きが適正だったと装う虚偽調書を作成。13年3月に は法廷で虚偽の証言もした。その後、不正が発覚し、判決は同年の5月から8月に延期された。 判決は虚偽調書の作成を違法行為と認定。「刑事事件の進行に影響を与えた」と指摘し、男性に精神的苦痛を与 えたとした。一方で「検察官も虚偽調書と知っていた」とする主張は退け、国には賠償義務はないとした。 (2016. 12. 10 朝日新聞 社会欄 より) 堺市の情報流出 元職員書類送検 秘密漏示容疑 堺市の全有権者(約68万人)の個人情報が流出した問題で、大阪府警は22日、個人情報を持ち出し、第三者がイ ンターネットで閲覧できる常態にしたとして、古矢敬一・元堺市出納課長補佐(60)=懲戒免職=を、地方公務員法違反 (秘密漏示)と、市個人情報保護条例違反(不正盗用)の疑いで書類送検した。 堺署によると、元課長補佐の容疑は、北区役所で選挙を担当していた2013年9月から昨年4月、市選挙管理委員 会のパソコンにアクセスし、有権者の住所や生年月日などの情報を持ち出したというもの。また14年4~12月と15年 4~6月には、その情報を民間のレンタルサーバーに載せて公開した疑いがある。 (2016. 12. 23 朝日新聞 社会欄 より) ■姫路市の元課長に有罪判決 兵庫県姫路市発注の道路工事の入札で、業者に便宜を図った見返りに現金60万円を受け取ったとして、加重収賄 罪などに問われた元市道路整備改善課長、堀本匡宏(まさひろ)被告(56)の判決が14日、神戸地裁であった。平島正道 裁判長は懲役2年6カ月執行猶予5年、追徴金60万円(求刑懲役2年6カ月、追徴金60万円)を言い渡した。 贈賄罪などに問われた同市の土木工事会社「大成組」の元社長、竹内俊明被告(62)については、懲役2年執行猶 予5年(求刑懲役2年)とした。判決によると、堀本被告は2015年7月までにあった市発注の入札4件で、非公表の設計 金額を竹内被告に漏らし、現金計60万円を受け取った。 (2016. 12. 15 朝日新聞 社会欄 より) |
■島根2号機 制御室配管に穴 中国電力は8日、島根原発2号機(松江市)=定期検査で停止中=で、運転を監視する重要施設の中央制御室の空調 配管に腐食による穴(横約1㍍、縦約30㌢)が見つかったと発表した。周辺への放射能の影響はないが、重大事故時 に放射性物質が漏れた場合、制御室へ流入する恐れがあり、中国電力は国や周辺自治体に連絡するとともに原因 究明と補修作業を急ぐという。 (2016. 12. 10 朝日新聞 社会欄 より) 年金情報対処費 11億円 日本年金機構がサイバー攻撃を受けて101万人分の個人情報が流出した問題で、対処のために計約11億8千万円 の費用がかかっていたことが会計検査院の調べでわかった。また、機構は対処で通常業務が停滞し、保険料未納者 への強制徴収手続きなどが中断。この影響で失われた保険料が計約1億2千万円に相当することも明らかになった。 (2016. 12. 17 朝日新聞 総合5欄 より) ■原燃が虚偽報告謝罪 日本原燃のウラン濃縮工場(青森県六ケ所村)で発覚した保安規定違反について、問題を改善できていないの に改善済みと社内で虚偽報告されていた問題で、原子力規制委員会は14日、同社の工藤健二社長から事情を 聴いた。工藤氏は、「大変な問題だと受け止めている。申し訳ない」と謝罪した。規制委は同日、来年1月末まで に改善計画の報告を求める命令を出した。 濃縮工場では昨年、低レベル放射性廃棄物が保安規定で定められた場所以外で保管されていたことが発覚。 規制委は保安規定違反と判断し、原燃にチェック機能の再構築を求めた。 (2016. 12. 15 朝日新聞 総合5欄 より) |
ギャンブル 「日本全体が一種の依存症」 自民・細田氏 ゲーム例示 カジノ解禁法案を提出した自民党・細田博之総務会長が13日の参院内閣委員会でギャンブル依存症について問わ れ、子どもや若者のテレビゲームやスマートフォンのゲームアプリを挙げて「日本全体が一種の依存症になってきてい る」と発言した。自由党の山本太郎氏への答弁。 山本氏が「ギャンブル依存症対策に取り組む約束はできるか」と尋ねたところ、細田氏は「子どもたちがスマホゲー ムにおぼれて勉強しない。大学生も勉強しない。日本全体が一種の依存症になってきていることにどう取り組むかが 非常に大事だ」と答えた。 (三輪さち子) (2016. 12. 14 朝日新聞 総合4欄 より) ■経産省、職員7人を処分へ 経済産業省は28日、同省生活製品課(旧繊維課)が実施している「繊維流通統計調査」で不適切な処理をしたとして、 職員7人の処分を決めた。管理職級4人を訓告、担当職員3人を口頭での厳重注意とする。 国家公務員法による懲戒処分ではなく、同省の内規に基づくものであるため、同省は対象職員の氏名や今の役職な どについて公表しない、としている。 経産省は、この調査自体の需要が減っているとして、廃止を決めている。 (2016. 12. 29 朝日新聞 経済欄 より) 逮捕の警官から覚醒剤陽性反応 大阪地検起訴 兵庫県警川西署地域1課の巡査部長藤谷龍一郎容疑者(53)が覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで大阪府警に逮捕 された事件で、藤谷容疑者の尿から覚醒剤の陽性反応が出ていたことが捜査関係者への取材でわかった。大阪地検 は27日、同罪で起訴した。府警は自宅から注射器計数十本を押収しており、使用の疑いでも調べている。 (2016. 12. 28 朝日新聞 社会欄 より) 麻薬取締官を再逮捕 警視庁 密輸見逃した疑い 厚生労働省の麻薬取締官による調書偽造事件に絡み、警視庁は28日、知人の男(50)=覚醒剤取締法違反罪で 起訴=が覚醒剤を密輸したと知りながら見逃したとして、この取締官を犯人隠避容疑で再逮捕し、発表した。同庁 は、取締官が男の密輸を黙認する代わりに、情報など何らかの見返りを得ていた可能性もあるとみて全容解明を 進める。 捜査関係者によると、取締官は捜査を通じて男と知り合い、覚醒剤に関する情報を得ていた。2年ほど前から連 絡が頻繁になったという。 再逮捕されたのは、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部の横浜分室に所属する奥村憲博容疑者(46)=横浜 市青葉区。調べに「認否を保留させてください」と話しているという。 組織犯罪対策5課によると、再逮捕容疑は、今年8月12日に男から「覚醒剤を密輸した」という内容の連絡を受け たのに警察に通報せず、警察の捜査が及んでいる可能性があると助言するなどしたというもの。男は横浜市で香 港から届く覚醒剤を受け取る際、男をマークしていた同課の捜査員に気づき、覚醒剤と車を残して逃走した。 同課は男を探し出し、9月下旬に覚醒剤の営利目的所持容疑で逮捕。捜査関係者によると、男はこの覚醒剤所 持事件のほか、8月12日の事件を含む3件の密輸の罪でも起訴された。 奥村容疑者は男が逃走してから逮捕されるまでの間、男と少なくとも2回会っており、電話でも連絡を取っていた という。同課は、奥村容疑者が捜査経験を生かして逃走のアドバイスをしていたとみている。 (2016. 12. 29 朝日新聞 社会欄 より) 女性宅に侵入・情報閲覧疑い 東京・中野元臨時職員 区のシステム利用 勤務先の区役所の情報システムに接続し、女性の個人情報を盗み見たなどとして、警視庁は11日、東京都中野 区中野5丁目、中野区役所の元臨時職員、高橋健一郎容疑者(29)=強制わいせつ罪などで起訴=を住居侵入と中 野区個人情報の保護に関わる条例違反の疑いで再逮捕し、発表した。黙秘しているという。 高橋容疑者は、ほかにも5人の女性に対する強制わいせつや住居侵入などの罪で起訴されている。うち3人につ いては区のシステムから個人情報を盗み見た疑いがあるほか、高橋容疑者のパソコンや携帯電話には20~30代 の女性数十人分の個人情報が保管されていたという。同庁は情報を入手した方法や悪用された事案がないか調 べている。 捜査1課によると、高橋容疑者の逮捕容疑は2014~16年、中野区の20代女性が住むマンションのベランダに侵 入したほか、勤務する中野区役所のシステムからこの女性の個人情報を不正に閲覧したというもの。中野区によ ると、高橋容疑者は14~16年、断続的に区の臨時職員として勤務。事件当時はマイナンバーの通知カードを扱う業 務などを担当し、個人情報を自由に閲覧できる立場だったという。 (2017. 1. 12 朝日新聞 社会欄 より) 沖縄の訓練米兵 民間の畑に着陸 オスプレイから降下 沖縄県伊江村の米軍伊江島補助飛行場でオスプレイからパラシュート降下訓練中だった米兵1人が10日午前、 基地区域外にある民間地に降りた。けが人や農作物への被害はなかった。 村によると、10日午前10時43分ごろ、オスプレイから6人がパラシュートで降り、うち陸軍兵1人が基地のフェン スを越え、約50㍍離れた葉タバコ畑に着地した。訓練でフェンス外への降下が確認されたのは昨年12月7日以来。 毎年数回起きているという。 (2017. 1. 12 朝日新聞 社会欄 より) 経産局元調査官 公金を詐取容疑 埼玉県警が逮捕 関東経済産業局(さいたま市)の物品廃棄業務を、自ら設立した会社が請け負ったように装って公金をだまし取っ たとして、埼玉県警は12日、同局の元会計課調査官、難波信之容疑者(44)=千葉県柏市、懲戒免職=を詐欺の疑 いで逮捕し、発表した。「間違いありません」と容疑を認めているという。 発表によると、難波容疑者は2014年、処分が済んでいる研究機器について廃棄の必要があるように偽装し、自 ら設立したペーパーカンパニー「下総商事」が廃棄業務を請け負ったとする架空の書類を作成。同年11月、請負 代金として約95万円を同局から支払わせ、だまし取った疑いがある。難波容疑者は国有物品の廃棄業者の選定 などを担当していた。金は外国為替証拠金取引(FX)や海外旅行費用などに使っていたという。 捜査2課などによると、下総商事は11年10月の設立直後から15年4月までに、同局から計20件の業務を請け負 ったとして約1千万円を受け取った。県警はこれらの受注についても不正がなかったか調べている。 (2017. 1. 13 朝日新聞 社会欄 より) ■薬局に肝炎治療薬の偽造品 厚生労働省は17日、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーン店で見つかったと して、薬の形などが通常と異なる場合には販売しないよう医療機関や販売業者に指導するよう求める通知を都道府 県などに出した。現在のところ健康被害は確認されていない。厚労省や薬を販売する米ギリアド・サイエンシズ社に よると、今年1月9日、このチェーン店で薬を購入した患者から薬局に相談があり、発覚。同県内にある系列の3店舗 から偽造品5個が見つかったという。 ■性感染症と偽り診断の疑い 性感染症にかかっているとうその診断をして、患者から薬代をだまし取ったとして、警視庁は17日、東京都新宿区 の診療所「新宿セントラルクリニック」院長の林道也容疑者(69)=同区=を詐欺容疑で逮捕し、発表した。容疑を否認 しているという。捜査2課によると、逮捕容疑は2012年9~12月、来院した都内の男性(68)を検査した際、陰性だった のに陽性とうその診断をして、十数回分の薬代薬2万6千円をだまし取ったというもの。 (2017. 1. 18 朝日新聞 社会欄 より) <暴力団組員>福岡県警支援で離脱131人 工藤会が3割 福岡県警は24日、昨年1年間に県警が支援して離脱した暴力団組員数が前年比4人増の131人に上り、3年 連続で過去最多を更新したと発表した。このうち特定危険指定暴力団工藤会」(北九州市)の組員が約3割の43 人と最多。工藤会の県内勢力は準構成員らを含めて前年比60人減の660人で過去最少となった。県警は工藤 会最高幹部らを逮捕する「頂上作戦」などの取り締まり強化や組員の離脱・就労支援策が奏功したとみている。 県警によると、福岡県内の暴力団構成員と準構成員らの人数は、1992年の暴力団対策法施行以降では3年 連続で過去最少となる2240人(前年比160人減)。内訳では工藤会が660人と最も多いが、ピーク時の1210 人(2008年)から約45%減らした。他の暴力団もほとんどが勢力を縮小させた。 県警の支援による離脱者数は、工藤会に続いて山口組(神戸市)が26人と多く、前年より11人増えた。対立す る神戸山口組(兵庫県淡路市)の離脱者も11人で、両暴力団の分裂に伴う抗争や取り締まり強化により離脱者 が相次いだとみられる。 一方、県警の支援による就労者数は前年比6人増の16人。離脱者の県外就労を支援する19都府県の広域連 携で就労したのは3人だった。県警が昨年4月に始めた離脱者を雇用した企業への給付金制度は13人に適用さ れ、受け入れ可能な協賛企業は前年比138社増の236社になった。 (2017. 1. 24 毎日新聞ウェブ 22時19分配信より) ■米軍属縮小 来週にも 日米両政府は、地位協定で米側に優先的に裁判権を認めている軍属の範囲を縮小するための補足協定 に、来週早々にも署名する方向で調整に入った。岸田文雄外相が13日午前の記者会見で明らかにした。協定は署 名により即日発効される。 軍属の範囲見直しは、沖縄県で昨年4月に元米海兵隊員の軍属が逮捕された殺人・強姦(ごうかん)致死容疑事件を 受けた再発防止策として協議してきた。補足協定では、これまであいまいだった軍属の範囲を明確化する。 (2017. 1. 14 朝日新聞 総合4欄 より) ケネディ駐日米大使、日本国民にお別れと感謝のメッセージ 「いつか日本に戻ってきたい」と強調した。 ケネディ駐日米大使は「日本の皆さん、こんにちは。最も緊密な友好国かつ同盟国の日本で、大使を務められ、 光栄でした」と述べた。 トランプ新政権発足を前に、近く離任する、アメリカのケネディ駐日大使が16日、日本国民に対し、お別れと感謝 を示すビデオメッセージを公表した。 この中で大使は、オバマ大統領の広島訪問や、安倍首相の真珠湾訪問にふれ、「大統領が信じる『和 解の力』に共鳴していただいた」と述べ、安倍首相をはじめとする日本政府に、感謝の気持ちを示している。 ケネディ駐日米大使は「さよならは言いません。いつか日本に戻ってきたいと思います。今まで本当にありがとう ございました」と述べた。. <2017. 1. 16 フジテレビ系(FNN)ウェブ 18:20配信 より> キャロラインさん、またね ケネディー米大使 きょう離日 東京の米国大使公邸で17日、キャロライン・ケネディー大使(59)の離任レセプションがあり、岸田文雄外相ら が別れを惜しんだ。ケネディー氏は、トランプ新政権発足前の18日、日本を後にする。 ケネディー氏は2013年11月着任。ジョン・F・ケネディー元大統領の長女という話題が先行したものの、オバ マ大統領との太いパイプを生かし、日米の橋渡しを果たした。 日本政府関係者によると、昨年5月のオバマ大統領の広島訪問は、ケネディー氏によるオバマ氏の直接説 得が実現に大きく影響したという。沖縄の基地問題でも日米の調整役を担い、外務省幹部は「彼女が分水 嶺(ぶんすいれい)だった」と振り返る。 ケネディー氏は、大使館を通じて発表した離任前のビデオメッセージで、「沖縄の苦闘や歴史を教えてくれた 県民の皆さんに感謝する。共通の目標に向けた連携の継続を願う」と述べ、「さよならは言わない。日本での経 験や思い出を持ち帰り、いつか日本に戻ってきたい」と語った。 トランプ氏は、投資会社創設者のウィリアム・ハガティー氏(56)を後任に起用する方針。 (下司佳代子) (2017. 1. 18 朝日新聞 総合4欄 より) 沖縄知事訪米へ 新政権に働きかけ図る 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が31日から、基地問題解決を訴えるため米国に行く。米軍普天間飛行場 (宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を推進する日本政府との対立を打開するため、20日(日本時間21日)に 大統領に就任するトランプ氏の新政権に働きかけるのが狙いだ。 県が16日に発表した。翁長氏は31日に出発し、現地時間31日~2月4日に首都ワシントンに滞在して、政府関係 者や連邦議員と面談できるよう調整している。 (2017. 1. 17 朝日新聞 総合4欄 より) 将棋連盟に禍根 ソフト不正騒動 新会長多難 将棋ソフトによる不正疑惑はその証拠がなかったと判明し、日本将棋連盟の会長辞任につながった。6日、 新会長が誕生したが、棋士の間には連盟の判断をめぐり不満の声が根強く残る。連盟はなぜ処分を急いだ のか。 処分に不満 棋士から次々 同じこと起きないか 大崎善生さん 作家・元「将棋世界」編集長 三浦弘行九段が処分を受けた時、「将棋連盟が不正の動かぬ証拠をつかんだのだろう」と思いました。で も、そうではなかった。当初、私が聞く限りでは、三浦九段を疑っている棋士が多かった。しばらくして羽生善治 三冠がツィッターで「疑わしきは罰せず」と発言し、多くの人の意識が変わったと思います。 連盟が挑戦者交代という判断をしたのは、週刊文春に三浦九段の疑惑の記事が出るとわかっていたから。 自身も謝罪しましたが、渡辺明竜王は取材に応じるべきではなかった。影響力を自覚して欲しかった。 私は他の常務理事たちも総辞職して出直した方がいいと思います。今の理事はそれぞれとても優秀な人材で すが、ソフトの発展といった時代の急激な変化に追いつけていない。外部から経営の専門家を迎えるなどしない と、また同じようなことが起きる心配があります。 長年、将棋界を取材し、こうした不正は起きない世界だと思っていました。でもこういう事態が起きてしまった以 上、ルールを徹底して、対局者同士が安心して将棋を指す環境を整えることが大切です。 (2017. 2 . 7 朝日新聞 文化・文芸欄 より) マイナス金利 乏しい効果 年金運用は苦戦 住宅ローンも陰り 東短リサーチ・加藤出氏の話 マイナス金利政策はうまく機能しなかった。 日本では高齢化が進み、金利低下を喜ぶ人より、老後の暮らしの 心配をする人のほうが多かった。将来不安を抱える社会では、やみくもに金利を下げることが必ずしもプラスと は限らないことがはっきりした1年だった。 異例のマイナス金利は、もうやめたほうがいいのではないか。急激な金利上昇などの不安を市場に与えないよ うに、タイミングを選ぶ必要があるが、少しずつ金利は正常化していくのが望ましい。 (2017. 2. 1 朝日新聞 経済欄 より) |
経済気象台 変 わ る 大 学 教 育 文部科学省による違法な大学への「天下り」あっせんに対する批判が強まっているが、このような事件は起こるべくし て起きた。この十数年、政治と行政主導で大学教育が大きく変わろうとしている。今では普通に実施されている授業内 容を詳しく説明するシラバスや大学の外部評価、それにアクティブラーニング(能動的学習)、ルーブリック(評価手法)な どという用語は、30代後半以上にはなじみが薄いのではないか。 これら大学教育の質改善を目指す政策の結果、大学側は大量の報告書作成に追われ、文科省の一挙手一投足に 戦々恐々とする状況が生まれている。おまけに文科省は大学への補助金を握っているから、実は大学側もありがたが って文科省から教職員を受け入れている。 大学教育に改革が必要なのは確かだ。高度成長期以来の需要拡大を背景に、大学の数は驚くほど増えた。大学進 学率の上昇により大学は努力なしに定員を確保できたが、この数年、大学生の数は頭打ちになり、大学淘汰(とうた)の 時代はもう始まっている。それに加えて、産業界からの批判や国際比較などによって日本の大学教育の質が厳しく問 われている。 だが、今の改革は大学にアリバイづくりの大量の文書作成を促すだけで、肝心の授業内容はあまり改善されていな い。大学側も、学生よりも文科省の顔色をうかがっている。これは時代遅れの産業政策に似ている。 大学改革は大学を守るのではなく、大学間の競争を促すことが必要だ。政府の役割は細かい規則を守らせることで なく、最低限の基準を作ったうえで大学に創意工夫を発揮させるべきだ。それができない大学は淘汰にまかせて良い のではないか。 (義) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 3. 1 朝日新聞 金融情報欄 より) 金融商品に顧客目線 投信など販売手法にニーズ反映 金融機関が、投資信託など金融商品の販売で、顧客の声を営業現場に反映させたり、業績評価で利益以外の項目 を増やしたりといった取り組みを進めている。顧客満足の重視に加え、目先の手数料のために商品を買い替えさせる 手法を金融庁が強く懸念していることも背景にある。 国、「手数料優先」批判 東京都世田谷区の女性(62)は昨年末、大手証券会社で500万円分の投資信託を購入した。米大統領選トランプ氏が 勝利し、株価が上昇し始めていたころだ。3年前に買って元本割れしていた投信は解約し、「そろそろ買い替え時」と販 売員に勧められるままに、別の投信へと買い替えた。ただ、最初に買ったときと同額の販売手数料約16万円の負担は 重かった。今後も年間10万円ほどの管理手数料がかかる。女性は「手数料は高い。もう投資はやめようか」と不信感を 募らせる。 金融庁によると、日本と米国で投信の売れ筋を比べると、日本は販売手数料が購入価格の平均約3%で米国の5倍 だった。同庁幹部は「日本の金融機関は手数料収入ばかりを優先し、顧客の利益を重視する姿勢に欠ける」と問 題視する。 低金利や年金不安をきっかけに資産運用のニーズは高い。ただ、投資に不慣れな人が一定のリスクがある金融商品 を買う際には、売り手の銀行や証券など金融機関の利用者目線の姿勢が重要だと金融庁はみる。 そのため、金融庁は「フィデューシャリー・デューティー(FD・受託者責任)という言葉を掲げ、金融機関に対し、顧客の 利益を最優先に行動することを求めている。昨年12月には、「重要な情報の分かりやすい提供」「顧客にふさわしいサ ービスの提供」など金融機関が守るべき七つの柱を盛り込んだ「顧客本位の業務運営に関する原則案」をまとめた。社 員らが高い職業倫理を持ち、顧客の資産状況やニーズに合わせた商品を勧めるよう強く促した。 (以下略) (長崎潤一郎、土居新平) (2017. 2. 23 朝日新聞 経済欄 より) ■三菱UFJ、米でネット銀 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が23日、全米規模で個人向けインターネットバンキング事業を始めた。邦銀 は、日本銀行のマイナス金利政策の影響で日本で利益を上げにくくなっており、成長が見込める米国での事業拡大をめ ざす。 サービス名は「ピュアポイント」。米西海岸サンフランシスコに拠点を置く傘下の大手地方銀行MUFGユニオンバンクが 実際の事業を手がける。 (ニューヨーク) (2017. 2. 25 朝日新聞 経済欄 より) |
農業に外国人就労 解禁盛る 特区法改正案 自動走行 実験促進も 政府が今国会に提出する国家戦略特区法、構造改革特区法の改正案の全容が28日、明らかになった。農業での外国 人の就労解禁や自動走行の実証実験の促進など、9項目の規制緩和を進める内容だ。 人手不足や待機児童など日本経済が直面する問題を規制緩和で改善することを狙う。一定以上の技能があることを条 件に外国人が農業に従事できるようにするほか、アニメなどを日本で学んだ留学生や、ホテルなどで訪日客に対応できる 外国人が働きやすくなるよう、在留資格の取得条件も緩める。 認可保育施設などに入れない待機児童対策として、小規模認可保育所の対象年齢の上限を現行の2歳から5歳まで拡 大する。自動走行やドローンといった、国際的な開発競争が激しい技術での実験をしやすくするため、事前手続きなどを 抜本的に見直す仕組みも1年以内に検討する。 (中村靖三郎) (2017. 3. 1 朝日新聞 総合4欄 より) |
経済気象台 水素エネルギーの未来 環境問題に感度の高い知人が、ガソリン車から燃料電池車に乗り換えた。地球温暖化の元凶と言われる二酸化炭素 を排出しないことと、災害時などの停電の際、電源として利用できることが動機だ。新しいタイプの車のため故障を 危惧したが、問題はなく、快調に走行しているという。難点は水素を購入する水素ステーションが少ないこと。 政府 は2020年度までに水素ステーションを現在の倍近い160カ所まで増やす方針だが、可能か。 水素エネルギーは21世紀のエネルギーと言われている。バスやトラック、鉄道、航空機、船舶などの輸送を始め、鉄 鋼の高炉はコークスから水素へ、ボイラーも重油・軽油から水素へと転換。動力から熱源、発電まで水素エネルギーの 利用範囲は広く、画期的な技術革新と言える。 「水素を制する国は、技術面で世界を制する」と断言する学者がいる。日本は燃料電池車を市販するなど現在トップ 陣営にいるが、半導体やパソコン、テレビなどでは他国に追い抜かれた苦い経験がある。その轍(てつ)を踏まないため の戦略を立てるのが急務だ。 水素の製造方法は様々あるが、水電解か熱分解で水素を分離する場合、電力や熱源が必要になる。製造コストを下 げるには余剰電力や廃熱の活用も課題だ。化石燃料による発電は限度いっぱいまできている。再生エネルギーは安定 供給が難しい。原子力発電は福島の事故以来、脱原発の機運が高まり、各地の原子力発電所の再稼動もままならない 状況だ。水素社会の到来へ向け、より安価に持続可能なエネルギーを得るため、官民あげて英知を絞る必要がある。 原子力についても冷静な議論を始める時期に来ているのではないか。 (提琴) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 3. 2 朝日新聞 経済欄 より) |
経済気象台 痛 み 止 め 依 存 経 済 年を重ねるとあちこちにガタが出てくる。先日も体の一部を痛め、医師の世話になった。幸い大事ではなかったが、痛 みが激しいので薬を出してもらった。 それから数日。痛みが引いたので薬をやめてみた。ところが、夜中に急に痛み出し、寝るどころではない状態に逆戻 りだ。 お察しの通り、傷は癒えておらず、痛み止めが効いていただけだったのだ。根本原因がなくならない限り、治癒とは程 遠い。 さて、我が国経済である。戦後72年目を迎え、いたる所に老化現象が生じている。少子高齢化、内向き志向などは典 型例だが、地方の疲弊、既存中小企業の活力低下も厳しいものがある。 地方、中小企業支援に関しては、これまでもっぱら補助金、公共工事、参入規制などが用いられてきた。採算性を確 保しながら売り上げを増やし、競争相手を制限する。だが、これらはいわば痛み止めである。根本原因をなくさない限り 薬をやめたとたんに問題が噴出する。それどころか、薬を出し続けたことによって国への依存心が生まれ、自立した考 えを持つ人が育ちにくくなっている。時にやる気のある人が出てきても、規制などに阻まれて新しいことが出来ないでい る。薬であるはずのものが、地方や中小企業の力を一段と奪うことになっている。 医師によると、結局はバランスの取れた食事と適度な運動、それとストレッチなどの柔軟性向上が大事なのだそうだ。 傷んだ体を根本から治すには、つらくとも患者が自ら努力するしかない。国も痛み止めの処方を封印し、地方や中小企 業の自助努力を後押しすることに徹してはどうか。それが本当の地方創生、成長戦略につながる道となろう。(関西人) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 3. 14 朝日新聞 金融情報欄 より) |
■志位氏、22日から訪米 共産党の志位和夫委員長は16日の記者会見で、22日から訪米すると発表した。ニューヨークの国連本部で、核兵 器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定に向けた交渉会合に出席する。日本は条約に否定的。志位氏は「唯 一の被爆国の政府にあるまじき態度で、賛成の立場に立つことを強くもとめたい」と語った。 (2017. 3. 17 朝日新聞 総合4欄 より) 落胆の 折り鶴 日本の席 核禁止条約交渉 不参加で 「あなたがここにいてほしい」 「あなたがここにいてほしい」---。こんな英語のメッセージが添えられた折り鶴が、核兵器禁止条約交渉が続く国連 の議場にある日本政府代表の席に置かれている。唯一の戦争被爆国でありながら、会議をボイコットした日本政府に 対する落胆と批判のメッセージだ。 折り鶴を置いたNGO関係者は朝日新聞の取材に、「日本政府に『国民や被爆者に対する責任があるんだ』と気付か せたい」と思いを語った。 折り鶴は平和のシンボルであり、オバマ前大統領が昨年5月に広島を訪問した際も、自ら作った折り鶴を広島市に寄 贈している。 (ニューヨーク=松尾一郎) (2017. 3. 30 朝日新聞 国際欄 より) 核兵器廃絶へ対話呼びかけ ローマ法王 ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が、国連で開かれている「核兵器禁止条約」の交渉会議に向けて「我々 は核抑止力を乗り越える必要がある」とのメッセージを送った。法王庁が28日発表した。核兵器廃絶に向けて信頼を醸 成するため、核保有国も含めたすべての国や機関が対話に参加すべきだと訴えた。 法王は「国際的な平和と安定は、偽りの安全に基づくはずはない」と指摘。平和を促進するため、近視眼的な安全保 障を重んじるのではなく、将来を考えた戦略が求められているとした。また「核なき世界は非常に複雑で長期的な目標 だが、我々の手が届かないものではない」として、各国の努力を求めた。 (ローマ) (2017. 3 .? 朝日新聞 国際欄 より)
日本政府は29日、ミャンマー西部ラカイン州の川や河口での貨客船として、中古船を1隻、ミャンマーに無償供与 した。同州で引き渡しの式典が開かれ、樋口建史大使が出席。アウンサンスーチー国家顧問の要望を受けた もので、来年までにさらに中古品1隻と新造船1隻を供与するという。 (ラカイン州シットウェー) (2017. 3 .? 朝日新聞 国際欄 より) |
中国首相、河野氏と会談 ■日中を「正常軌道に」 日本国際貿易促進協会(国貿促、会長=河野洋平・元衆院議長)の訪中団は10日、北京の人民大会堂で李克強 (リー・コ-チアン)首相と会談した。李首相は今年が日中国交正常化から45年の節目になることから、「中国は中日関 係を高度に重要視している」と延べ、両国の関係改善に期待を示した。 李首相は会談の冒頭、「歴史を鑑(かがみ)に未来に向かう精神に基づき、中日関係の発展を推進したい。両国関係が 正常な軌道に戻るよう努力していきたい」と強調した。これに対し、河野氏は「総理(李首相)に時間を割いていただいた のは、非常に意義のある年、さらに日中関係を改善していこうという気持ちの表れだと受け止める」と述べた。(北京) (2017. 4. 11 朝日新聞 国際欄 より) 令状なしGPS捜査は違法 司法、求めた歯止め 「人権とのバランスを」 「確かに僕は悪いことをした。でも警察だったら何をしても許されるのか。ルールを犯したことをただしてくれてよかっ た」。今回の裁判の当事者、岩切勝志被告(45)=保釈中=は判決後、取材にそう語った。 自分の車にGPS端末が設置されていると気づいたのは、窃盗容疑で逮捕される2カ月前の2013年10月ごろ。共犯の 男性のバイクに端末が付けられていたため、自分も車の底を見ると、端末を巻いたビニールテープが垂れ下がってい た。 取り調べで当初、警察官はGPS捜査を認めなかったが、検察官が認めた。犯行時間帯ではない昼間に、事件と無関 係の友人と会っていたことも把握されていた。交際女性の車にも端末が設置されていた。 主任弁護人の亀石倫子(みちこ)弁護士は「これからも新たな科学技術を利用した捜査手法ができて、必ず人権とのバラ ンスが問題になる。その時は今日の判決を尊重してほしい」と話した。 GPS捜査の是非が争われた各地の裁判関係者からも、判決を歓迎する声が相次いだ。 奈良地裁葛城支部で窃盗事件の裁判を担当する青木啓靖(たかやす)弁護士は「画期的な判決。GPS捜査は任意捜査 だと決め付け、使い続けた警察は非難されるべきだ」と話した。張り込みや尾行に比べ、人間関係や思想などの内面ま で知られる恐れがあると問題視する。 愛知県警にGPS端末を取りつけられた男性の代理人だった金岡繁裕弁護士は「憲法に忠実で、GPS捜査が監視 社会の入り口になることをよく理解した判決だ」と評価した。 (2017. 3. 16 朝日新聞 社会欄 より) 和歌山市職員が30万円収賄容疑 配水管工事で便宜か 和歌山市発注の公共工事で業者側に便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、和歌山県警は25日、同市水道 局職員、林克芳容疑者(34)=大阪府東大阪市吉田本町1丁目=を収賄容疑で逮捕した。また、和歌山市の水道工事会社 「藤本水道」の元社長、藤本真司容疑者(36)=同市神前=を贈賄容疑で逮捕した。ともに容疑を認めているという。 県警によると、林容疑者は藤本水道が2015年7月に落札した市発注の配水管工事に絡み、市の抜き打ち調査の日時 を事前に伝えたり、必要な監理技術者がいないのに工事を進めさせたりするなどの便宜を図った見返りに、16年1月27 日ごろ、藤本容疑者側から現金30万円を受け取った疑いが持たれている。 林容疑者は、部下の男性職員に対し、千枚通しを突きつけるなどした暴行などの罪で3月24日に和歌山区検に略式 起訴され、和歌山簡裁から罰金40万円の略式命令を受けている。 (2017. 4. 26 朝日新聞 社会欄 より) |
水素社会向け 初の閣僚会議 普及後押し 政府は11日、「水素社会」の実現をめざす閣僚会議を初めて開いた。燃料電池車の普及や水素ステーションの整備 が想定したほど進んでいないため、年内に具体的な規制緩和などを盛り込んだ基本戦略を策定し、普及を後押しする。 会議には安倍晋三首相や菅義偉官房長官、世耕弘成経済産業相らが出席。政府は東京五輪を開く2020 年までに燃料電池車を4万台普及させ、水素ステーションを160カ所設置する目標を掲げるが、現在の設置数は整備中 も含めて92カ所にとどまる。 政府は、水素ステーションを点検する際の項目や資格要件などの規制を緩和するなどして運営などにかかるコスト削 減を進め、ステーションを普及しやすくする方針だ。また、低品質な石炭を使った水素の生産にも取り組み、水素発電 に向けた条件を整える。安倍首相は会議で「日本は世界に先駆けて水素社会を実現する」と語った。 (2017. 4. 12 朝日新聞 総合5欄 より) |
マイ電力 【1】 地鳴り 小泉が語気を強めた。「ある時期が来れば一気に変わる。地鳴りが鳴っている」 元首相の小泉純一郎(こいずみじゅんいちろう)(75)は3日、千葉県匝瑳市(そうきし)の麦畑にいた。 背後には、高さ3㍍の架台に乗せられた太陽光パネルが約1万枚広がっている。北総台地を切り開いた農地には、こ れから大豆や麦が植えられ、植物と発電パネルが太陽光を共有する「ソーラーシェアリング」が始まる。 「原発なしで、太陽光だけでもやっていける。そういう予感を持ったな」。小泉は、近くの農家の人たちに囲まれて上機 嫌だった。細川護煕(ほそかわもりひろ)、菅直人(かんなおと)両元首相も顔をそろえ、にぎやかな開所式になった。 自然エネの現場を歩いたり、「原発即時ゼロ」を訴えたりした小泉の講演は、東日本大震災後の6年間で140回を超え た。 そのなかには、新たに設立された福島県の「会津電力」や神奈川県小田原市の「ほうとくエネルギー」など、地産地消 型電力生産をめざす「ご当地電力」も少なくない。 地域コミュニティーに基盤を置く電力・エネルギー事業は約200に増えた。昨秋に福島市で開いた「世界ご当地エネル ギ-会議」では、約30カ国600人の自然エネ関係者に「福島からエネルギー革命を」と発信した。 一方で、米国の原発大手ウェスチングハウス(WH)の破綻(はたん)が原因となった東芝の経営危機は深刻化し、日本の 原発事業の先行きはさらに揺らいでいる。 3月下旬のインタビューで、小泉は語気を強めた。「ある時期が来れば、一気に変わる。原発はやはりだめだ、と。そ んな地鳴りが鳴っているな」「根強い動きがある。この6年間、動いた原発はゼロか数基。停電は一度もない。自然エネ ルギーでやっていけるんだという方向を、現実が示している」 首相の時に、原子力発電を推進した元首相が「過ちを改めて」、自然エネの旗を振る。 新たなエネルギー社会が動き始めた。 ★ ★ 東日本大震災は、日本の自然エネルギーの新たな出発点になった。大規模な停電を体験した人たちは、自分のエネ ルギ-源「マイ電力」を持つ大切さを思い知った。新しい動きは被災地から始まった。 (菅沼栄一郎) (2017. 4. 25 朝日新聞 総合3欄 より) |
視/点 東電の償い 長い道 除染が進められてきた避難指示区域などで、東京電力の社員が、避難した住民の留守宅の後片づけや草刈りなど、 さまざまな被災者支援を続けている。約3万3千人の全社員に参加が義務づけられ、昨年11月で述べ30万人を超えた という。 原発事故後、東電では2500人が依願退職した。一方で、福島県内の高校や大学から入社した若者が、16年度だけ で46人いるという。福島県にある広野火力発電所に勤める草野隼斗さん(23)もその一人だ。「ふるさとのために何が できるか、まだ分からない。今は火力発電所をきちんと動かし、少しでも復興の費用を稼ぎたい」という。 避難者はなお8万人近くいて、損害賠償を求める訴訟も県内外で続いている。草野さんが定年を迎えるころ、廃炉作 業はなお続いている可能性が高い。 私は「東電の延命のためのツケを国民に回されてはたまらない」と考えてきた。その思いは変わらない。だが、東電 の存続はやむを得ないと思い始めている。難航必至の廃炉作業を背負わせることができるのは、被災者と日々向き 合い、罪を償うしかない東電をおいて、ほかにないと思うからだ。 (原発取材センター長<福島総局長> 森北喜久馬) (2017. 3. 26 朝日新聞 総合3欄 より) 出雲の建設会社 補助金不正受給 県が返還命じる (註・島根県) 県は23日、森林整備や林業の再生に関わる国の補助事業で不正受給があったとして、出雲市江田町の建設会社「板 倉重機」に対し、補助金約2940万円の返還を命じたと発表した。会計検査院の指摘で分かったという。 県が不正と認定したのは同市長浜町の木材加工施設の舗装工事で、事業費の半分を補助する国から1527万1千円 の支給を受けた。交付申請時に他の企業に委託するとしていた工事を自社で請け負ったり関連会社に発注したりし、工 費が安くなったため、本来の受給額より1128万1千円多く受け取っていた。 板倉重機は不正受給を認め、他の工事分も含めた補助金計2940万1千円の交付取り消しが決まった。県は罰則に当 たる加算分も含め、総額約3800万円の返還を命じた。同社はこれに応じるほか、同様の事業で別の時期に3回にわた って受給した補助金計約7455万円も自主返還する意向を示しているという。 (木脇みのり) (2017. 5. 24. 朝日新聞 島根欄 より) 天下り 違法疑い27件 全省庁調査 組織ぐるみ「なし」 文部科学省の「天下り」あっせん問題を受けて、政府は15日、全省庁を対象にした調査結果を公表した。職員による 天下りのあっせんなど、国家公務員法に違反した疑いのある事例は2008年以降、少なくとも12省庁で27件にのぼっ た。今後、内閣府の再就職等監視委員会が調査を引き継ぎ、違法性の有無を最終判断する。 OBの再就職に出身省庁の職員が関わったあっせん規制違反の疑いがある事例が25件あり、OBが在職中に利害関 係のある企業などへ求職活動をした疑いがある事例も2件あった。省庁別の件数は「疑いの段階」(内閣人事局)として 公表しなかった。 そのうえで、再就職先の情報を得る方法や省庁退職後の求職活動について「広くOBが関与している」と結論づけた。 一方で、人事課や事務次官らが関わった文科省のような組織ぐるみのあっせんの疑いは確認されなかった、とした。 再発防止に向けて、現役職員だけでなくOBにもルールの周知を徹底するほか、内閣人事局や再就職監視委の機能 強化などの対策を検討するという。 調査は内閣人事局が一月末から、現在の天下り禁止ルールが導入された08年以降に再就職した6372人と、各省庁 の現役幹部職員ら285人を対象に実施した。調査チームは約40人態勢で、書面や弁護士を交えて聞き取りをした。 (平林大輔、久永隆一) (2017. 6. 16 朝日新聞 社会欄 より) |
混迷深まるアフガン 首都爆発 対テロ戦、暴力の連鎖 アフガニスタンの首都カブールで31日にあった自動車爆弾を使ったテロとみられる爆発は、少なくとも80人の死者を出 す大きな犠牲をもたらした。2001年9月の米同時多発テロを機に始まった、テロを防ぐはずの米軍主導の戦いは暴力の 連鎖を生み、反政府勢力タリバーンが勢いづく一方、過激派組織「イスラム国」(IS)の浸透も招いている。(以下省略) (2017. 6. 1 朝日新聞 国際欄 より) |
「北朝鮮 核以外に方法ない」 プーチン氏、米の軍事力を警戒 ロシアのプーチン大統領は2日、核開発をやめようとしない北朝鮮の理屈に一定の理解を示した。北朝鮮よりも、米国 が自国の安全保障に対する最大の脅威だと考えるプーチン氏の世界観が浮き彫りとなった。 プーチン氏はサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムの討論で、米国を批判して「力の論理、暴力の論理 が幅をきかせている間は、北朝鮮で今見られるような問題がこれからも起きるだろう。小さな国々は、独立と主権を守る ためには核兵器を持つ以外の方法がないと考えている」と述べた。 ロシアは2日の国連安保理の制裁決議に賛成。しかし、問題を引き起こしている根本的な原因は、武力を背景に北朝 鮮の体制を脅かす米国にあるというのがプーチン氏の考えだ。 (サンクトペテルブルク=駒木明義) (2017. 6. 4 朝日新聞 総合3欄 より) |
コール元独首相 死去 在職16年 東西統一の立役者 東西ドイツ統一の立役者だったヘルムート・コール元独首相が16日、死去した。87歳だった。ドイツ主要メディアが報じ、 与党キリスト教民主同盟(CDU)が公式ツイッターで哀悼の意を伝えた。 「世界の歴史に功績」 ゴルバチョフ氏 コール元独首相の死去が伝えられた16日、各国首脳らからは、冷戦終結や東西ドイツ統一の立役者の死を悼む声が相 次いだ。 AP通信によると、旧ソ連のゴルバチョフ元共産党書記長は「ドイツと欧州、そして世界の歴史に卓越した功績を残した傑 出した人物だった」と称賛。「困難な時期に国を率いたのが、責任感があり、国益を断固として守り、一方で他国の利益も 考えられる優れた政治家であったのは、本当に幸運なことだった」と評した。 またAP通信によると、ブッシュ元大統領(父)も「戦後の欧州でもっとも偉大な指導者の一人」と称賛。「冷戦終結とドイツ 統一を平和的に成し遂げるため、親友と緊密に取り組んだことは、私の人生の最大の喜びの一つだ」と振り返った。 (2017. 6. 18 朝日新聞 国際欄 より) |
医療事故 頻発医師 27人 日医まとめ 16年度までの4年間 医療ミスや不適切な医療行為を繰り返していたとして、2016年度までの4年間で、27人の医師に再発防止が指導・勧告 されていたことが日本医師会(日医)のまとめでわかった。医師が所属する都道府県医師会が勧告などを出している。こう した医師は「リピーター医師」と呼ばれる。 日医は13年8月から、会員の医師約12万人が、医療事故に備えて加入する医師賠償責任保健の支払い請求の内容を 調べる委員会を設置。複数の請求がある医師について分析した。医師側に問題がある事故が複数あった場合をリピータ ーと判定している。日医によると、リピーター医師とみなされたのは13年度2人、14年度10人、15年度7人、16年度8人。 リピーター医師は00年前後から問題視されていたが、その実態はわかっていなかった。医師免許取り消しなどの処分を 審査する厚生労働相の諮問機関・医道審議会の対象は、診療報酬の不正請求をしたり刑事処分を受けたりした医師が 主。また、15年には予期せぬ死亡事故を第三者機関に届け出る「医療事故調査制度」ができたが、リピーター医師は把握 できない。 (2017. 6. 27 朝日新聞 社会欄 より) |
「頭が良くなる」未承認薬、個人輸入を禁止へ 「頭が良くなる」などの触れ込みで使われている未承認薬について、厚生労働省は22日、個人輸入を原則禁止する 読売新聞 6/23(金) 10:01配信 より |
経済気象台 教 育 無 償 化 の 前 に 「教育の費用は原則として社会全体で負担するべきだ」と主張する政党がある。安倍首相も憲法改正の際、高等教育を 含む教育無償化を明記したいとも述べている。にわかに政治案件として浮上したが、一律無償化に反対の意見もある。 長期的視野に立って検討すべき課題だ。 1955年の大学数は228校だった。91年に大学設置基準が緩和されて、今や800校近くにまで増加した。少子化で18歳 人口は長期減少傾向なのに、毎年新たに大学、学部が誕生している。その結果、私大の約4割が定員割れという惨状だ。 大学の授業料無償化を主張する人々は大学の現状を把握しているのだろうか。高校はおろか中学レベルの基礎学力 もない若者が大学生になり、大学とは程遠い内容の授業が行われている。教員たちは半ば諦め顔で、よほどのことがな い限り卒業証書を渡している。卒業させないと学生が集まらず、大学経営が困難になるためだ。 かつて大学を「愚者の学園」と断じた政治家がいたが、今でも一部の大学はこの表現が当たっている。一口に大学とい っても質の違いは著しく、一律に授業料を無償にするのは無定見なバラマキであり、賢い税金の使い方ではない。まず大 学の淘汰(とうた)を進め、一定の学力のある者のみに大学進学を認める仕組みをつくる方が先ではないか。 平等主義の日本社会が、子供たちの選別を受け入れるか疑問だが、大学教育は義務教育とは違う。幼児教育の無償 化を求める声は多く、少子化対策上も有効だ。また義務教育の現場では教員が疲弊しており、授業に専念できる環境を 整えることが急務だ。教育無償化の前にやるべきことは多い。 (提琴) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 6. 24 朝日新聞 金融・経済欄 より) 解/説 廃棄物の山 ツケは国民に ![]() 日本原子力研究開発機構が30日、核燃料サイクルを研究開発してきた東海再処理施設(茨城県)の廃止に70年と約 1兆円の費用がかかると発表した。 原発の廃炉にかかる費用は1基あたり300億円前後、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)でも3750億円以上とされ、 東海再処理の高さは際立つ。 原発では、放射能レベルが高いのは原子炉とその周りの設備だけだ。一方、再処理施設は使用済み燃料をバラバラ にして薬液で溶かし、プルトニウムやウランを取り出すいわば化学プラントだ。体育館よりはるかに巨大なビルのほぼ全 域が激しく汚染されている。とても人が近づけない線量で、施設の除染や解体は遠隔操作頼みになる。 東海再処理施設では廃棄物の管理もずさんだ。中身の状態がよくわからない廃棄物の容器が多数ある。使用済み燃 料の被覆管が入ったドラム缶は貯蔵プールの底に整理されずに山積みになっている。 廃止が70年で終わるというのはあまりにも楽観的だ。想定外の事態が続いて遅れるのは目に見えている。投じられる 1兆円は国民の税金で、ツケはまだ生まれていない子どもたちにまわる。 さらに、青森県では日本原燃の六ケ所再処理工場の建設が進む。処理能力は東海再処理施設の4倍あり、はるかに 規模が大きい。将来、廃止にかかる費用は東海再処理施設の比ではない。ウランは枯渇しないと分かった今、再処理し てプルトニウムを取り出す意味はなくなった。再処理が本当に必要なのか、問い直す時期だ。 (東山正宜) (2017. 7. 1 朝日新聞 総合5 欄 より) |
「脱原発」国家目標に 韓国大統領 福島第一事故が転機 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は19日、韓国の原発で初めて廃炉が決定した古里原発1号機(釜山市)の稼動停止 を記念する式典で演説し、「古里原発1号機の永久停止は、脱核国家への第一歩だ」と述べた。韓国大統領が「脱原 発」を国家目標に掲げるのは初めて。ただ、韓国はエネルギー源の22%(2016年現在)を原発に依存しており、実行は 容易ではない。 文氏は「原発は開発途上国だった時期に選択したエネルギー」と述べ、経済水準が向上した今、国民の生命と安全 が最重要だというのが社会的合意だと指摘。「原発中心の発展政策を廃棄し、脱核時代へ進んでいく」と宣言した。11 年の福島原発事故が大きな転機になったとした。 文氏は「準備中の新規原発の建設計画は全面白紙にする」と明言し、老朽化した原発の設計寿命も延ばさないとし た。朴槿恵(パククネ)前政権は、エネルギー源に原発が占める割合を約30%まで増やす政策のもと、現在25基の原発を 大幅に増設する計画を進めたが、見直されることになった。 (ソウル=武田肇) (2017. 6. 20 朝日新聞 国際欄 より) 南北統一チームを提案 韓国大統領、平昌五輪に向け 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は24日、北朝鮮選手団が参加して全羅北道・茂朱(チョルラプクド・ムジュ)で開かれたテコン ドー世界大会の開幕式で演説し、「平昌(ピョンチャン)冬季五輪に北韓(北朝鮮)の選手が参加するならば、人類の調和と世 界平和の推進という五輪の価値を実現するのに大きく貢献できる」と語り、南北統一チームの結成を呼びかけた。 演説で文氏は、平昌五輪への北朝鮮の参加に期待するとした上で「初めて南北統一チームをつくり最高の成績を収め た1991年の世界卓球選手権やサッカーの世界ユース選手権の栄光をもう一度見たい」と統一チーム実現への期待を表 明。南北選手団が一緒に入場した2000年のシドニー五輪にも触れ「北韓の応援団も参加し、南北和解の機運を準備で きればよい」と語った。文氏は演説後、自ら北朝鮮の選手団に近づき握手を交わし記念撮影をした。南北交流再開をめ ざす強い意志を自ら示した。 一方、文氏は23日、忠清南道・泰安(チュンチョンナムド・テアン)の試験場で北朝鮮全域を射程におさめる弾道ミサイルの試験 発射に立ち会い、「対話は強い国防力があるときに可能になる」との談話を発表。硬軟交えた対応の背景には、文政権の 安全保障政策を不安視する米国や国内の保守層に配慮する狙いがあるとみられる。 (茂朱<全羅北道>=武田肇) (2017. 6. 25 朝日新聞 国際欄 より) |
ひと 日本人への提言を本にまとめた「平和学の父」 ヨハン・ガルトゥングさん (86) 祖国ノルウェーはナチスドイツに占領され、父は強制収容所に送られた。平和研究を志し、半世紀前に「積極的平和」 を提唱したことで知られる。 日本の大学でも教えた「平和学の父」の最新の著作は、「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社)。来日時の記者会 見で出版の理由を問われると、「東アジアは世界でいちばん危機的状況に置かれている」と答えた。 危機を理由に、安倍政権は米国との結びつきを強めようとする。けれど博士は、危機の根源は米国への従属だと説 く。自身は善で、刃向かう者は悪とみなす癖がある「好戦的」な米国に付き従えば危険を呼び込むと考え、「日本は独立 国家たれ」と呼びかける。 いわゆる「護憲派」ではない。日本国憲法は「反戦憲法ではあっても平和憲法ではない」。戦争放棄の理念は崇高だ が、それだけでは平和は守れない。対立を対話や協力に転じるために、知恵と努力を尽くす。そうした本来の意味での 「積極的平和」と専守防衛の方針を明記し、「真の平和憲法」とするよう唱える。 善か悪かと決めつけない。とことん耳を傾ける。その立ち居振る舞いの根っこには、すべての物事に陰陽両面を見い だす東洋の陰陽思想がある。国際政治学者の妻、西村文子さんに学んだという。「結婚生活は文明の対話」だそうだ。 文・松下秀雄 (2017. 7. 6 朝日新聞 総合2 欄 より) |
■核禁条約で志位氏訪米 共産党の志位和夫委員長は5日、核兵器禁止条約の採択に向けた国連の会議に出席するため、米ニューヨーク へ出発した。日本政府が条約に否定的な中、国際的な国会議員団の一員として参加する。記者団に「採択されるよう、 被爆国の政党として力を尽くしたい」と訴えた。 同条約交渉をめぐる志位氏の訪米は3月に続いて2回目。7日に予定されている採択に向け、国連本部で開かれる会 議に出席するほか、各国の代表団や国連関係者らと意見交換する。 条約は、今月7日までの交渉で成案をまとめる。 (2017. 7. 6 朝日新聞 総合5 欄 より) 計画の事前了解 県が中電に回答 1号機廃炉 溝口善兵衛知事は11日、国が認可した中国電力島根原発1号機(松江市)の廃炉計画を事前了解すると中 電の清水希茂社長に回答した。住民の安全確保を第一にすることなど計9項目を要請し、誠意を持って適切に対応す ることを求めた。 県庁を訪れた清水社長に溝口知事が回答書を渡した。原発から30㌔圏内にある自治体のうち出雲、安来、雲南市 などの意見を添え、それぞれを尊重することも求めた。 中電と安全協定を結んでいる山陰両県の6市と島根、鳥取両県の全てが廃炉計画の事前了解を伝えたことになる。 溝口知事に対し、清水社長は「要請を真摯(しんし)に受け止め、誠意を持って対応する」と述べた。早ければ今月中にも 計画に着手するという。 (富岡万葉) (2017. 7. 12 朝日新聞 島根版 欄 より) ![]() 28年に及ぶ長い道のりの第一歩が踏み出された。中国電力が28日、松江市の島根原発1号機の廃炉作業に着手した。 放射性廃棄物の処分地も決まっていない中、中電にとって初の原発廃炉作業となる。 着手前に中電の関係者ら約40人が安全祈願式を開いた。山本直樹・島根原子力発電所長は「1号機は長く地元電力の 安定供給に貢献してきた。工事は安全第一に着実に進めて参りたい」とあいさつ。報道陣の取材に対し、「トラブル等 を隠さないことが地元の理解、安全安心につながる。これまで以上に情報公開に努めていきたい」と述べた。 作業は報道陣に公開され、1号機1階の配管に作業員3人がシールを貼った。放射線の測定に向けた、周囲からの放射 線を遮る鉛の遮蔽(しゃへい)物を設置するためのマーキングで、8月2日まで続く予定。 1号機は40年以上前の1974年3月に営業運転を始めた。廃炉の作業工程は4段階に分かれ、第1段階は2021年度まで に汚染状況の調査、除染活動を進め、使用済み核燃料の搬出も予定する。原子炉本体の解体撤去は第3段階の2030年 度からの予定だ。中電は、原子炉の解体に伴い低レベル放射性廃棄物が約6千㌧発生すると試算しているが、処分場所 は決まっていない。 (奥平真也) (2017. 7. 29 朝日新聞 島根版 欄 より) |
潮 流 竹内敬二 脱原発へ 韓国・台湾を変えたのは 議論の急展開に驚いている。 「古里原発1号機の永久停止は、脱核国家への第一歩だ」 「原発が安全でもなく、安くもないことが明白になった」 まず、6月19日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、同原発を停止する記念式典でこう宣言した。 原発の建設計画を白紙に戻すこと、運転寿命の延長をしないことも言明した。そして子供たちと壇上に並び、一緒に 「閉鎖ボタン」を押すパフォーマンスまで行った。 それまで、隣国の新大統領がこんなにはっきりした脱原発の姿勢をもつとは知らなかった。 韓国は世界6位、25基の原発をもち、原発推進の国というイメージがある。原発輸出にも力を入れ、2009年、韓国が日 仏の企業を抑えて、アラブ首長国連邦の原発建設を受注したときは、国中が沸いた。 変わったのか? 韓国の知り合いに電話すると「福島の事故で意識が大きく変わった」という。「年配の人は『原発なし では電気代が上がる』というが、若い人は事故を嫌がっている。かなり大統領を支持すると思う」 そして6月27日に、進行中の新古里原発の5、6号機の工事が中断になったことで、脱原発の現実味が増した。 6基の原発をもつ台湾。ここでは今年1月、「25年末までに全原発を停止」とした改正電気事業法が可決され、脱原発 の道をスタートした。今から8年後、すぐそこだ。 東京電力福島第一原発事故の後、原発に寛容だった国民党の馬英九(マーインチウ)政権が、完成近い龍門原発2基の工 事を止め続けた。脱原発の流れをつくり、蔡英文(ツァイインウェン)・新政権(民進党)が受け継いだ。 韓国、台湾の共通点は2つ。原発は運転寿命(台湾は40年、韓国は30年か40年)を経たあとに止める。そして、今後は 自然エネに力を入れる。 福島第一原発事故は確かに近隣の原発意識と政策を変えつつある。ただ、すんなりと脱原発に向かうとは限らない。 今後が興味深いが、私たちは、「さてどうなるか?」と見ているだけでいいのか。いちばんに政策変更が必要なのは、事 故を起こした日本だ。 (元朝日新聞編集委員) (2017. 7. 5 朝日新聞 10版 欄 より) |
東芝 水素事業に注力 東京にセンター開設 東芝は13日、府中事業所(東京都府中市)に開設した「水素エネルギー利活用センター」を公開した。太陽光発電によ る電気を使って水素をつくり、燃料電池で動くフォークリフトなどに燃料を供給するモデル施設。東芝は経営再建のため に海外の原発事業や半導体メモリー事業を手放すことにしており、水素を将来の成長事業の一つとする方針だ。 センターでは1時間に5立方㍍の水素を製造し、貯蔵できる装置も備える。二酸化炭素を排出せずに水素が製造でき、 3分間でフォークリフトに水素を供給できる。今後、事業所内で使う車やバスも燃料電池車に代えていくという。 センターを顧客に見学してもらい、水素製造・供給システムを外部の工場や空港、港湾などに売り込んでいく方針。 2021年度に売上高250億円を目指すという。 (川田俊男) (2017. 7. 14 朝日新聞 経済 欄 より) |
ソフトバンク、ファンド通じサウジ支援 孫社長、国王と会談 ソフトバンクグループの孫正義社長は14日、訪日中のサウジアラビアのサルマン国王と東京都内で会談し、 サウジの政府系ファンドや米アップルなどと共同出資して近く立ち上げる10兆円規模のファンドを通じて、脱石油依存 を目指すサウジを支援する考えを示した。非公開の会談後、取材に応じた孫社長が明らかにした。 サウジの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」は5年間で最大450億ドル(約5兆2千億円)を出資する可能性が ある。 この日の会談で、孫氏は国王に「投資を通じてサウジを大いに繁栄させていく」と説明。投資利益がPIFを通じてサウ ジに還元される意義を強調した。 会談後、孫氏は報道陣に「国を挙げてわれわれの協力関係を確実にしていくという意味で、大変意義のある会見だっ た」と述べた。 国王と初対面だったという孫氏は、ヒト型ロボット「ペッパー」をプレゼントしたことも明かし、「ペッパーがアラビア語で 『(訪日を)歓迎しています』とあいさつしたところ、国王は『素晴らしい』とおっしゃっていた」と笑顔を見せた。 (産経新聞 3/15(水) 7:55配信 より) |
孫社長「薩長同盟」 ソフトバンクの10兆円ファンド 「経済の力で大国とりもつ」 ソフトバンクグループの孫正義社長は31日、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で設立した10兆円規模のファ ンドについて、幕末に薩摩藩と長州藩が結んだ「薩長同盟」になぞらえ、「坂本龍馬さんは経済の力で薩長の両大国を とりもった。米国と中東はいろんな問題があったが、(ファンド設立が)僕にとっての薩長同盟だ」と述べた。東京都内で 6月1日に始まる龍馬関連の展覧会会場で報道陣の取材に応じた。 孫氏は大の龍馬ファンを公言しており、白地に2本の横棒が入ったソフトバンクのロゴマークも海援隊の旗をもとにし ている。孫氏は「15歳で、司馬遼太郎の著作『竜馬がゆく』を読んで人生観が変わり、16歳で脱藩するように高校を中 退して渡米した」と回想。その後、米国の大学在学中に自動翻訳機を発明し、そのアイデアで得た資金を元に後のソフ トバンクを起業している。 報道陣に「何を成し遂げれば龍馬に並ぶと思うか」と聞かれ、孫氏は「並ぶことは永遠にない。ファンドは10兆円では 足りず、もっと大きくする。情報革命で世界中を幸せにしたい」と話した。展覧会は、龍馬の立像やゆかりの品などが展 示される「土佐からきたぜよ ! 坂本龍馬展」。1日から25日まで、東京都目黒区のホテル雅叙園東京で。(徳島慎也) (2017. 6. 1 朝日新聞 経済欄 より) |
けいざい+ 秀才・異才に私財投資 孫正義氏が「あしながおじさん」 ソフトバンクグループの孫正義社長が私財を投じて育英財団を設立し、優秀な若者に必要なだけ資金支援する。5 月の最終選考会には全国から秀才・異才が集まり自己PRを競った。審査員として臨んだ孫氏は目を潤ませ、「感動し た。日本も捨てたもんじゃない」。希代の投資家の孫氏は今回「あしながおじさん」として人に投資する。 東京都内のホテルで開かれた孫正義育英財団の最終選考会は孫、学者の山中伸弥、棋士の羽生善治、みずほ ファイナンシャルグループ(FG)社長の佐藤康博、三井住友FG社長の国部毅各氏らそうそうたる審査員が並び、9歳 から26歳の60人がプレゼンした。 その一人、東京の中学2年生の中馬(ちゅうまん)慎之祐君(13)は卵アレルギーがある。海外での食事を想定し、卵や甲 殻類などを避けたいと入力すると、英語、ドイツ語、中国語などで表示されるアプリを開発。小中高生対象のアプリ甲子 園で優勝した。 堂に入ったプレゼンを聞いて孫氏は「すごいね」と一言。「何人が使っている?」と聞くと、中馬君は「1300人です」。 すると孫氏らしい助言をした。「たくさんの人に使ってもらえることも大切だよ」 教員志望だった孫氏は、意欲があってもお金がなく留学できない若者の存在に心を痛めてきた。震災復興支援財団 に40億円、自然エネルギー財団に10億円を投じたのに続き、3回目の私財拠出である。 売名行為と受け取られかねないため匿名とする案もあったが、「かえって怪しく思われそう」(理事の青野史寛ソフト バンクグループ執行役員)。孫氏を前面に押し出すことにした。 1月に募ると約1千人が応募、書類審査や面接で110人に絞りこんだ。最終選考に残るのは東大や米ハーバード大で、 人工知能などを学ぶ理系秀才が多いが、中には異才も。孫氏はむしろそっちに反応する。 たとえば千葉の中学3年生、菅原饗生(ひびき)君(14)はプレゼンで「数学者グロタンディークの著書を読み解き、目先の 応用ではなく、誰も考えていない現代数学の理論を構築したい」と話した。孫氏は、「目先の応用ばかり考えると小さくな ると言われ、ハッとしました」と苦笑い。 上海出身で米スタンフォード大留学中の江(こう)あきさん(26)は小さいころ、中国で施しを求める女の子に持っていたお 小遣いをすべて渡した経験がある。ボランティア活動したインドのスラムでは、向学心があっても、貧しさゆえ亡くなる子 どもを見た。「解決策として私は(貧困層に金融サービスを提供する)マイクロファイナンスをやりたい」。孫氏は心を揺さ ぶられた。「目がうるうるきちゃったよ」 本田財団や稲盛財団のように創業者が若い研究者を支援する例はあるが、孫財団は支援金に上限がないのが特徴。 妥当な金額かどうか審査はするが、望む金額を最長4年間給付する。合格者は6月中に決まる。 米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は文系と理系の異なる才能が交わるとイノベーションが起きたと語っ た。フェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグ氏は大学寮で事業のアイデアを育んだ。出会いが化学反応を 生む。「本当を言うと、僕はお金よりも、すごい人に会いたいんだ」と、プログラミングに夢中な東京の小学3年生の森谷 頼安(らいあん)君(9)。 最終選考に残る多くの人は互いに刺激を受けて自分を高めたいと考えていた。だから孫財団は東京・渋谷に飲食無 料で、パソコンやドローンを自由に使える交流・学習の場を設ける。さて未来のジョブズ氏やザッカーバーグ氏が生まれ るだろうか。 (大鹿靖明) (2017. 6. 14 朝日新聞 経済欄 より) |
経済気象台 若者の芽を摘む? 伸ばす ? 成長産業としての農業の担い手として、いま農外からの企業参入がすすめられている。企業の資金力、経営ノウハウ を農業にいかそうという狙いだが、農家が会社化するところも増えた。一戸一法人と言われるものだ。 北海道のある中山間地域に数年前、一戸一法人が立ち上がった。目的は人材の確保。家族労働力だけでなく、人を 雇用して経営していくためだ。この地域は水田が沢に沿って広がっており、水稲でこれ以上規模拡大するのは難しい。 基盤整備も進まず、ポンプアップで川から水田に水をくむ状況だ。そんな地域で、この法人は、ジャガイモに取り組むこ とで新たな世界を切り開いた。 夢は、地域で一番のジャガイモの生産者になること。向上心にあふれた夢の理由は、一生懸命働く従業員にしっかり 給料を出せるようになるためだと言う。従業員2人には近いうちに、出資をして法人の構成員になってもらいたい。自分 事として主体的に農業にかかわってほしい。地域からも、これからの中心的な担い手と期待される。「年寄りたちが、若 い人のためにやりやすい環境をつくることが大事だ」と。 しかし、地域の人たちよ、自分たちの地域はだめだと言いながら、次を担おうとする若者の芽を摘み取ってはいない だろうか。 若い世代が土地を購入して規模拡大したくても、簡単には売ろうとしない。自分で水田を開いた農地だから売りたくな い、だけれど「管理はして欲しい」と、貸し付けはする。整備されていない農地の経営は、任されても大変だ。 地域をつないでいくために、本当に大事にしなければならないものは、過去ではなく未来にある。 (着) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 10. 31 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
南シナ海「環境保護」宣言へ ASEANと中国 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が13日にフィリピンで開く首脳会議で、ASEAN加盟国の一部と中国との間で領 有権をめぐる争いがある南シナ海について、2027年までの10年間、協力して環境の保護にあたるとの宣言が採択され る見通しだ。 朝日新聞が入手した宣言案は、海洋の環境保全はASEAN諸国と中国の国民の生活向上にとって不可欠だと指摘。 南シナ海の現状は「海洋生態系や生物多様性を保護するための行動が必要だ」とし、国連海洋法条約などの国際法 に従って協力していくとしている。南シナ海での領有権争いをめぐっては、常設仲裁裁判所に提訴するなど強硬姿勢だ ったフィリピンが、ドゥテルテ政権になってから「親中国」に転換。議論の流れが中国のペースになりつつあるとの指 摘が出ている。 一方、同じ日に開かれるASEANと米国との首脳会議の共同声明案には、海洋における「航行の自由」の権利の確保 など、中国の進出を意識したとみられる文言が盛り込まれている。 (ダナン=貝瀬秋彦) (2017. 11. 9 朝日新聞 国際欄 より) ■特別国会の開会式開催 第195回国会(特別国会)の開会式が8日、参院本会議場で開かれた。天皇陛下は「おことば」で、「国会が、国権の 最高機関として、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します」などと述べた。昨年の通常国 会から開会式に参加するようになった共産党は、5回連続で参加した。 (2017. 11. 9 朝日新聞 総合4 欄 より) |
辺野古警備「1.8億円過大」 米軍普天間飛行場の移設工事が進む沖縄県名護市辺野古の沿岸で海上警備につく警備員の労務費を会計検査院 が調べたところ、警備の契約先に約1億8880万円が過大に支払われていた。一般的な警備業務だったのに、「業務内 容が特殊だ」として通常より高い労務単価で計算されていた。 防衛省沖縄防衛局は2015~16年、移設工事の海上警備業務を東京都内の警備会社と契約。警備員の労務費は通 常、1日9時間あたりの単価を約2万2千円~約2万5千円で計算するが、同社の見積もりに基づいて3万9千円~5万 9400で計算していた。 検査院によると、沖縄防衛局は、通常の単価で計算しなかった理由について「業務内容の特殊性」と説明。だが、警 備内容は、制限区域内に近づく船舶に立ち入らないよう注意喚起するなど一般的なものだった。また、警備会社から 警備員に支払われた日当は9千円~1万円程度だった。 検査院は、警備員の業務に特別な技能を要していないとして、通常の単価で計算すれば1億8880万円が低減できた とした。防衛省はすでに、労務単価は業者の見積もりをそのまま採用しないよう地方防衛局に通知した。沖縄防衛局 は「適切に対応していく」としている。 (2017. 11. 9 朝日新聞 社会 欄 より) 遺骨収集事業 経費水増し 厚労省職員32人 計879万円 第2次世界大戦で海外で亡くなった戦没者の遺骨を収集する国の事業で、厚生労働省の職員32人が過去6年間で計 879万円分を水増しした領収書を旅行会社に作らせ、経費の計算をしていたことが会計検査院の調べでわかった。水 増し分について厚労省は「現地で払った」などと説明しているが、検査院はいずれも使途が確認できないとして厚労省 の経理を「著しく不適正」と指摘した。 (以下省略) (2017. 11. 9 朝日新聞 社会 欄 より) 町職員2860万円着服 隠岐の島 関係団体口座から 隠岐の島町(註…島根県)は8日、町に事務局がある水産関係の3団体の預金口座から計約2860万円を着服していたと して、男性職員を懲戒免職の処分とし、発表した。2014年5月からの3年間に約180回にわたり、数万から数十万円を 引き出していたという。 (以下省略) (2017. 11. 9 朝日新聞 島根 欄 より) |
■座間の事件で立憲PT 立憲民主党は10日、神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件を受け、再発防止策な どを考えるプロジェクトチーム(座長・福山哲郎幹事長)を設置した。警察や自殺問題に詳しいNPOの関係者、社会学 者などからヒアリングする予定。 福山氏は「わずか2カ月の間に9人が自殺願望のもとに容疑者に引き寄せられた事件の背景について、政治として議 論を始めたい」と記者団に語った。 (2017. 11. 11 朝日新聞 総合4 欄 より) |
改憲 「多数党案に賛成を」 は不適当 自民党憲法改正推進本部長 細田博之氏 自民党の細田博之・憲法改正推進本部長は10日、朝日新聞のインタビューで、「憲法改正は一種の議員立法。勝手 に自民党が出して『多数党が出したから、賛成したらどうか』という議論は適当ではない。考え方を各党に示してい く手順が必要だ」と述べ、各党との協議を丁寧に進める必要性を強調した。 同本部長は憲法改正の旗振り役。前任の保岡興治氏が引退し、安倍晋三首相が自らの出身派閥の領袖(りょうしゅう) である細田氏を充てた。 9条1項、2項を残したまま自衛隊を明記する首相の提案に、党内には石破茂元防衛相らを中心に、2項でうたう交戦 権否認や戦力不保持を削除すべきだとの主張がある。党内のとりまとめについて細田氏は「協議を深める」とする一 方、「小異を捨て大同につく考えも必要ではないか」と指摘。異論が残る場合でも、党としての改正原案を決める可能 性に言及した。 改憲に慎重姿勢を強める公明党との関係については、「事前に協議して(改憲案を)一本にする性格のものではない」 とする一方、公表前に自民党案を公明側に示す考えも示した。 今後の改憲スケジュールについて、党内には年内にも改憲原案をまとめる考えがあるが、細田氏は「衆院選で2カ月 近い空白があった。年末は税制改正や予算編成など色々ある。スケジュールありきではない」と、年内のとりまとめに こだわらない姿勢を示した。 憲法改正の国民投票と国政選挙の同日実施論に対しては「選挙は各党が争って政策を戦わせるもの。国民投票は 党派を超えて、内容を判断するもの。別のものだ」と指摘した。 (二階堂勇、岩尾真宏) (2017. 11. 11 朝日新聞 総合4 欄 より) |
共産・志位氏 「本格的共闘を」 次の国政選挙へ意欲 共産党の志位和夫委員長は18日、愛知県刈谷市で講演し、立憲民主党などとの野党共闘について「さらに本格 的に発展させる。野党連合政権を作る日まで頑張り抜く決意だ」と語り、次の参院選や衆院選で政策合意を含む本 格的な共闘を目指す考えを表明した。 先の衆院選で候補者を一方的に下ろしたことについて、志位氏は「緊急事態で原則にこだわっていたら話は進ま ない。決断は良かった」と総括。講演後、記者団に「次回は本格的な共闘に進めたい」と語り、他党と共通政策をま とめ、相互に推薦し合う共闘に発展させる方針を示した。 共産党が政権入りする「野党連合政権」については、「作る目標は変わらない。前向きな一致点を探る」と強調。 「国民的な戦いを起こすことが共闘を前進させる一番の推進力になる」とし、憲法改正反対などの国民運動を後押し する考えを示した。 (2017. 11. 19 朝日新聞 経済・総合 欄 より) |
Re ライフ 加藤登紀子の ひらり 一言 破っていい約束もある ! 私と夫は何度か別れ話をしたけど、その度にその約束を破ったの。 離婚サボって本当に良かった ! 宮崎駿さんの引退撤回もうれしいね。 (2017. 12. 3 朝日新聞 リライフ欄 より) 水は動くから生きているんだよ。 動かなくなると死ぬんです。琵琶湖の漁師さんの言葉。 琵琶湖に流れる川に水門ができて水量が一定になった時、魚が減ったそうです。命も同じ。 生きることは、立ちどまらないこと。 (2018. 5. 20 朝日新聞 リライフ欄 より) 旅をする力が人類を育てた。 文明も音楽も旅人。異なる物との出会いを求め、受け入れ、自らを変える。それが人間の大き な可能性を生み出した。 (2019. 8. 4 朝日新聞 リライフ欄 より) 確かなものが見えない時代と言うけれど、360度見渡せる時代。確かなものがあっちにも、 こっちにも。 原始の過去から宇宙の未来まで、東洋から西洋、北半球から南半球まで、地球の、宇宙の隅々 とつながって生きている ! (2019. 9. 22 朝日新聞 リライフ欄 より) 文化は過去と未来をつなぐ木 ゆっくりと時を経て蓄積された経験の集大成、それが文化。時代がどんどん変わっても根が残って さえいれば、木は育つ。 (2019. 11. 3 朝日新聞 リライフ欄 より) こんなに難しい時代、正しい答えを出すのは大変 ! 「あ、間違った」と思ったら、潔くやり直せばいい。 他人の間違いを責めすぎる。自分の間違いを認めず、躍起になってメンツを守る人も多すぎる。 百害あって一利なし。 (2020. 3. 15 朝日新聞 リライフ欄 より) 人生は目標に向かって突っ走る特急電車じゃなく、いろんなことにぶつかりジグザグ進む 各駅停車みたいなものね。 目標を決めるのも大事だけど、突然の事情が目の前に起こった時、邪魔をされたと思うのはよくない わ。それもまた大事なステップ。 (2020. 4. 12 朝日新聞 リライフ欄 より) 遠い水から近くの水へ。 遠い電気から近くの電気へ。 遠くから水を引くために大量の電力を使い、遠くからの送電で無駄に放電。身近な水、身近な発電で 出来る省エネを ! (2022. 5. 15 朝日新聞 リライフ欄 より) 音楽と料理には文化の根と民の力が必要 大きくて強い国で、意外に美味(おい)しい料理にありつけない ! 小さな弱い国に思いがけず美味(うま)い料理、いい音楽がある。 (2022. 6. 12 朝日新聞 リライフ欄 より) 人の心は糸に似ている。 つながりやすいけれど切れやすい。 そしてぐしゃぐしゃに絡んでしまうとほぐすのがとても難しい。 でも、バラバラのものを縫い合わせる力は抜群です。糸も心もね。 (2022. 10. 30 朝日新聞 リライフ欄 より) 時代の変化は必ずしも進歩ではない。 時代の変化についていけない、とお嘆きのみなさん、ご心配なく。 激動の時代だからこそ、変化しないものが残り続けることが大事です。 (2023. 4. 23 朝日新聞 リライフ欄 より) |
知識「活用」に重点 「未来の創り手として社会に貢献するために必要な資質、能力を測る」。こんな狙いで導入される「大学入 学共通テスト」の試行調査の問題が4日、公表された。大学入試センター試験と大きく異なる出題には、「知識偏重」と 言われてきた日本の教育全体に変革を求めるメッセージが込められている。 (増谷文生、氏岡真弓) (以下省略) 「探求的な学び」定着促す (以下省略) 視/点 思考力 問えているか 「大学入学共通テスト」は50万人以上が受ける試験を通し、日本の教育を変えようという試みだ。その影響 は高校と大学のみならず、小中学校にも及ぶ。 大学入試センター試験は、教科書の内容をきちんと理解しているかを客観的に問うてきた。一方、共通テストは現実の 場面を問題に盛り込み、思考力や表現力を測ろうとしている。日本の教育の弱点と言われてきた応用力を問う挑戦的な 内容だ。 文科省は07年に始めた全国学力調査で「活用問題」を設け、全国の小中学校に「こうした学力が必要だ」というメッ セ-ジを発信した。それから10年で授業は変わった。共通テストは、今度は高校と大学に向けたメッセージといえる。 ただ学力調査と異なり、共通テストは数十万人の多様な学力を、限られた時間で測らねばならない。試行調査では、そ れゆえの課題が浮かんだ。記述式問題は速く公平に採点するため、自らの考えではなく、定められた条件を満たしたか どうか見る形にならざるを得なかった。 肝心の思考力を問えているかも、疑問が残る。長い資料を読ませ、複雑な選択肢から正答を選ぶ問題は、考える力よ り、情報を処理する力を評価している可能性がある。 高校からは「時間内に解けない生徒が目立った」との声も出ている。成績が上位層と下位層で二極化すると入試として の役割を果たさない。 受験生の不安に応えるためにも、大学入試センターは結果を多角的に分析し、速やかに公開して議論を広げてほしい。 (編集委員・氏岡真弓) (2017. 12. 5 朝日新聞 総合2 欄 より) |
全土の雨量 日本の半分以下 中国政府には、北部の乾燥地帯のような農業に向いていない「限界農地」に灌漑設備を導入して農業生産を増やし、 習近平(シーチンピン)指導部が力を入れる貧困対策にもつなげるという目的があったとされる。だが、散水装置を大量に 導入した内モンゴル高原などでは、わずか数年で枯れる井戸が相次ぎ、青写真通りには進んでいないのが実情だ。 中国はもともと水資源に恵まれているわけではない。16年の中国全土の平均雨量は730㍉と日本の半分以下だが、 経済成長で工業用水や都市の生活用水の需要は増え続けている。 中国は砂漠化の進行に加え、高地も多く、世界4位の面積を誇る割には農業に適した土地は多くないと指摘される。 陳建耀・中山大教授は「巨大な人口を支える食糧の確保と、農業に向かない土地の開墾というジレンマに中国は今、 直面している」として、水問題は中国の将来を大きく左右する課題だと指摘する。 (2017. 12. 7 朝日新聞 国際 欄 より) |
経済気象台 社外取締役への情報提供 日産自動車やスバルの無資格検査、神戸製鋼所、三菱マテリアルの子会社や東レの子会社のデータ改ざんなど、日本 企業の不祥事が相次いでいる。不祥事発生のたびに詳細がニュースになるが、問題の本質を突く報道はない。取締役会 は機能していたのか、社外取締役は一体何をしていたのかが、核心のはずである。 取締役会は業務執行を監督する機関でもあり、内部統制システムの構築に関わる決定をする。不祥事の発生・発覚は、 その構築が不十分であったことを示しているのではないか。 不祥事は有事である。取締役会は対応を社長任せにせず、自ら原因究明、再発防止策、その開示などに乗り出さなけ ればならない場合がある。社外取締役のいる取締役会にしかできないからだ。 とはいっても、社外取締役が社内情報を把握するのは難しい。非常勤の社外監査役には、主として社内監査役である 常勤監査役という強い味方がいる。監査役会で社内事情に詳しい常勤監査役から背景事情を聴くことができる。しかし、 社外取締役にはそのようなサポートがなく、与えられる情報に頼るしかないことが多い。 社外取締役が機能するためには、正確かつ十分な情報の提供が不可欠である。社外取締役への情報提供で重要な役 割を担うのは、取締役会事務局である。事務局に社外取締役専属のスタッフを置き、社外取締役による情報収集のサ ポートを行っている会社もある。 有事に自浄作用が働くかどうかは、社外取締役への情報提供の要、取締役会事務局の働き次第ともいえる。その位置 付けを明確にして、充実させることが急務である。表面を探っていても対策にはならない。 (環珠) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2017. 12. 8 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
米朝対話の仲介 ロシア外相 意欲 「北朝鮮 対話望む」 ロシアのラブロフ外相は7日、訪問中のウィーンでティラーソン米国務長官と会談し、「北朝鮮は何よりも自身の安全 保障について米国と話したがっている」として、米朝対話の実現に協力する用意があると伝えたことを明らかにした。 会談後、報道陣に話した。ロシアと北朝鮮は今年夏ごろから、高官らが相互に訪問。ロシアは9~10月にも対話の仲 介を目指したが、北朝鮮が「一方的に非核化を迫られる」として拒否したとされる。 (モスクワ) (2017. 12. 9 朝日新聞 国際 欄 より) |
■神戸に 水素発電試験設備 水素を燃料に発電する試験設備が神戸市のポートアイランド内に完成し、報道陣らに10日公開された。病院や国際展 示場など周辺4施設に、電気と熱を供給する実験を来年2月上旬から3月末まで行う。 施設は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、約20億円をかけて川崎重工業と大林組が建 てた。 工場の自家発電などに使われている既存品のガスタービン発電設備をベースに開発した。25立方㍍のタンクを備え、 満タンなら約6時間発電できる。水素は堺市の工場から液化して専用車で運ぶ。 川重などによると、市街地の複数の施設に電気を供給する水素発電施設は世界初だという。 (2017. 12. 12 朝日新聞 経済 欄 より) 姫路城 運営 近畿日本ツーリストに 世界文化遺産の姫路城(兵庫県姫路市)の管理運営を旅行大手の近畿日本ツーリスト(KNT)関西が担うことになった。 姫路城は外国人観光客が増えているため、KNTは対応できる観光ガイドを育てるなどしてサービス向上や集客に力を 入れる方針だ。 姫路城を管理する姫路市が来年3月から3年間の管理運営の委託先を募り、KNTを選んだ。姫路城は「平成の大修 理」を終え、2015年に大天守内部を再公開してから外国人客が増えている。16年度は全体の約211万人の2割弱を占 める約36万5千人となり、過去最高だった。 16年に19言語で案内パンフレットをつくったが、「問い合わせなどに十分対応できていない」(同市)のが課題だっ た。20年の東京五輪に向けて今後も外国人は増えるとみており、その受け入れ強化やツアーづくりをKNTに委ねる。 KNTは今後、複数の外国語を話せる観光ガイドを養成して外国人向けのガイドツアーを開催し、問い合わせへも対応 する。グループ会社の旅行大手クラブツーリズムも巻き込み、大阪市や京都市などを発着する外国人向けバスツア ーに姫路城を組み込む。三田周作社長は「グループの集客力が期待されている。宿泊につながる夜のイベントもつく っていきたい」と話した。 (伊沢友之) (2017. 12. 14 朝日新聞 国際 欄 より) |
蓮池 薫さん 「残された時間少ない」 滋賀で拉致被害者後援会(滋賀県愛荘町愛知川・愛知川公民館) 北朝鮮による拉致被害者の蓮池薫さんの講演会が滋賀県愛荘町の愛知川公民館で開かれた。蓮池さんは拉致被害者 や家族の高齢化を挙げ、「一刻も早い帰国を実現しなければならない」と訴えた。 蓮池さんは1978年に新潟県柏崎市の海岸で妻祐木子さんと共に拉致された。北朝鮮での24年間の生活を振り返り、 「学びや職業の自由はなく、家族と連絡も取れなかった。夢と絆が拉致によって一瞬で奪われた」と話した。 拉致問題の解決に向けては「被害者は今も生存しているという前提で進めていかなければならない」とし、北朝鮮側への 見返りとして「日本が軍事利用につながらない援助を準備する必要がある」と主張した。 今月、拉致被害者の曽我ひとみさんの夫チャールズ・ジェンキンスさんと、増元るみ子さんの母信子さんが亡くなったこ とにも触れ、「関係者に残された時間は少ない。もはや待ったなしの問題になっている」と訴えた。町や町教育委員会など が主催し、約340人が聴講した。 (2017. 12/16(土) 22:57配信 京都新聞) |
違法な天下り 5府省庁6件 内閣府認定 内閣府の再就職等監視委員会は15日、国家公務員の「天下り」あっせん問題で、国家公務員法違反と認められる事例 が新たに5府省庁で6件あったと発表した。事務次官や人事課長が関与していた事例もあり、5府省庁は減給処分や口頭 注意などを行った。 政府が6月に公表した全省庁対象の調査結果で、規制違反の疑いがあるとされた12省庁27件について、監視委が調査 を行い、内閣府、法務省、財務省、文部科学省の各1件、金融庁の2件を規制違反と判断した。監視委の調べでは、内閣 府の当時の人事課長が2012年、法人幹部に自分の名刺を渡し、職員の退職時期を伝えて「何かあればご連絡ください」 と言ったという。監視委は、国家公務員法が規制する再就職の依頼にあたると判断。内閣府は人事課長を減給10分の1 (2カ月)とした。 文科省では15年、人事課の補佐級職員が、一般財団法人への天下りを調整していたOBに職員の略歴を提供。事務次 官だった山中伸一氏は、職員に対し「財団が呼んでいるようだ」と再就職先を伝える発言をした。監視委は「これが再就 職の契機になったと考えられる」と断じた。 金融庁でも16年、当時の室長級職員がOBを通じて職員の退職時期や略歴を法人に伝える違反があった。室長級職員 は減給10分の1(3カ月)。監視委は調査したケースの他にも違反の疑いがあるとして、14日付けで金融庁長官に対し、調 査班を組織するよう要請した。 (2017. 12. 16 朝日新聞 社会 欄 より) 年金給付ミス 再発防止せず ![]() 日本年金機構は20日、年金給付の事務処理ミスの総点検結果を公表した。機構設立の2010年1月から今年3月まで に対処を終えて公表済みの1万902件が対象で、10件以上同じことを繰り返していたミスが33種類あり、このうち18種類 で十分な再発防止策をとっていなかった。機構の年金管理のずさんさが改めて浮き彫りになった。 (前文略) 機構によると、支給漏れや過払いで支給額に影響が出たミスは9697件あり、職員の確認ミスといった人為的なものが 主な要因だった。これを分類した結果、8756件が10件以上のミスが発生した33種類に当てはまった。このうち15種類 (計5176件)では、システムの改修などの再発防止策をとっていて、同じミスが起こらないようになっているという。一方、 18種類(計3580件)については再発防止策がとられておらず、同じミスが起きる可能性があるとしている。 (中略) 公表は対処済みだけ 年金機構の幹部は20日の社保審の部会で「すべての事務処理ミスをなくせるわけではなく、減らしていく努力が今後も 必要だ」と述べた。今回の総点検結果を踏まえ、事務処理ミスを起こした経緯などミスの種類別の分析を毎年行う方針だ。 再発防止策もその都度検討していくという。 (以下略) (2017. 12. 21 朝日新聞 総合5 欄 より) 対北朝鮮制裁 安保理で懸念 人権高等弁務官 国連安全保障理事会は11日、北朝鮮の人権問題を協議した。ザイド国連人権高等弁務官は、北朝鮮に対す る安保理制裁決議が強化されていることに言及し、「不可欠な人道支援に悪影響を及ぼしているかもしれない」と指 摘した。 ザイド氏は、国連などの人道支援は北朝鮮の約1300万人の「命綱」だと説明。だが、制裁による銀行間の国際的な 送金規制が「食糧や医療品の供給など国連の現地活動の遅延を招いている」と指摘した。またザイド氏は、朝鮮半島 の軍事的緊張は北朝鮮政府による市民への「よりひどい」抑圧をもたらしていると強調した。 (ニューヨーク) 支援への影響 WFPも指摘 国連の世界食糧計画(WFP)のデビッド・ビーズリー事務局長が12日に日本記者クラブで会見し、北朝鮮に対す る経済制裁で人道支援に悪影響が出ていることから「各国はあらゆる措置が結果を伴うことを認識してほしい」と訴 えた。 WFPは北朝鮮国民の4割にあたる約1千万人を栄養不足とみて食糧支援を続けているが、各国からの拠出金は 不足がちだ。ビーズリー氏は「制裁は困難な状況を生むが、コメ一粒まで必要な人に届いていると資金提供国に言 えるよう努めている」と語った。 (2017. 12. 13 朝日新聞 国際 欄 より) |
平成と 天皇 伝統越えて 温かい家庭貫く (本文略) 手の届く モデル 共感呼んだ 教育評論家の尾木直樹さんの話 戦後、日本全体が新しい家族のあり方を模索する中で、両陛下は雲の上の 存在ではなく、国民が手の届くような養育モデルを示し、社会に大きな影響を与えた。戦前の家制度ではなく、家庭で仲 良く話し合ったり触れあったりする新たな家庭像だった。 人間らしい、一つの家庭としての皇室を作ろうとしたことが国民の共感を呼び、国民との距離が縮まるきっかけにもな った。 雅子さまのご病気や皇太子家の長女愛子さまの不規則な登校などもあり、一般家庭と同じような問題を抱えているのだ なという親近感をもった。一緒に考えたり、励まされたりした国民もいるのではないか。 2019年5月には代替わりを迎える。皇室のあり方も時代とともに少しずつ変わっていくと思う。 (2017. 12. 16 朝日新聞 社会 欄 より) |
3・11 情報集約は不十分 福島事故当時官房長官の枝野氏 福島第一原発事故当時、民主党・菅政権の官房長官だった立憲民主党の枝野幸男代表に聞いた。 当時の対応として、事実関係は全面的に速やかに公開するという以外になかった。外国への情報提供についても米 国からさんざん言われていた。ただ、情報の集約も報告も十分でなかった。最初の爆発の映像が届いた後、何の情報 もないまま会見した。放っておいたらまずいから、一生懸命調べますというだけでも発信した方がよいと。情報が集約で きなければ対応そのものを間違えることになる。 原発は事故が起こらないというのは幻想だ。日本は需要に対する電力の量は十分足りており、あとはどういうプロセ スでやめるかという問題だ。原発がないと電力が足りないという時代遅れの幻想からどう脱却するかが問われている。 (2017. 12. 21 朝日新聞 総合2 欄 より) |
河野外相 きょう エルサレム訪問 河野太郎外相が24日、日本を出発し、イスラエル、パレスチナなど中東5カ国・地域を歴訪する。26日にはエルサレ ムを訪問。トランプ米大統領が6日にエルサレムをイスラエルの首都と認定して以降、主要国の外相が訪れるのは初め てとなる。 パレスチナ自治政府はトランプ氏の首都認定に激しく反発しており、パレスチナ人らによる抗議活動が強まっている。 国連は21日、米国に認定撤回を求める決議案を賛成多数で採択し、日本政府も「当事者間の交渉により解決されるべ きだ」との立場から賛成した。 河野氏は25日(現地時間)、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長とそれぞれ会談。米国 とは違う日本の立場を説明する予定。 (2017. 12. 25 朝日新聞 総合4 欄 より) |
■日銀総裁ら給与引き上げ 日本銀行は22日、総裁や副総裁、審議委員ら役員の2017年度の年間給与を前年度より0.4%引き上げると発表した。 役員年収の引き上げは4年連続。総裁の年収は3526万円、副総裁(2人)は2786万円、審議委員(6人)は2672万円とな る。 (2017. 12. 23 朝日新聞 経済 欄 より) 治療用装具 724万円不正 厚労省調査 請求、写真義務づけ検討 病気の治療で使うコルセットなどの「治療用装具」の製作をめぐり、2014年4月~17年9月に計324件、総額724万円 の不正請求があったことが23日、厚生労働省の調査で分かった。厚労省は請求の際に現物写真の添付を義務づける など防止策を検討する。 治療用装具は病気やケガをした部分が治るまで保護したり機能を補ったりするために装着する。医師による作製指 示があった場合、装具業者が患部の型を取るなどして作る。健康保険組合などに申請すれば作製費の7~9割が医療 保険から支給される。 ただ病名・装具名を書いた医師の証明書や業者の領収書が必要だが、装具の現物や写真を示す義務がないため、 治療用装具を装い安眠枕を作るなどの不正請求が相次いで発覚し、厚労省が医療保険者を通じて実態を調べていた。 不正請求を受けたと回答したのは全体の1・4%の46保険者。不正請求1件当たりの平均金額は2万2354円だった。不 要な付属品をつけて金額を水増ししたり、市販の靴を加工しただけのものを装具として請求したり、悪質なケースも判 明した。保険者による治療用装具の年間支給額は約400億円となっている。 (水戸部六美) (2017. 12. 24 朝日新聞 経済・総合 欄 より) |
「 白鵬 見習え 」 原氏が由伸Gに指南 「勝つという目的のために全力を出すのが重要」 原氏は恒例の特別講義で、巨人は白鵬のように戦うべきと訴えた。 巨人・高橋由伸監督(42)がセ・リーグ2連覇中の広島を打倒するため、前監督の原辰徳氏(59)が示したお手本 はなんと、横綱らしからぬ取り口に批判も出ている大相撲の白鵬だ。 原氏は9日、千葉県勝浦市の国際武道大で14年連続14度目となる新春恒例の特別講義。2015年限りで監督退 任後、変わってきたセの勢力図について言及した。 「近年、広島はいいチームになってきた。僕が監督のときは大したことなかったが、ハングリーで若さを前面に出した チームづくりが功を奏している」。まずはV2の王者をたたえたが、「相手チームに少しひねったような用兵、戦術をされ るとすごく弱い。一昨年(の日本シリーズ)は日本ハムの栗山(監督)にやられた」と指摘した。 さらに昨年のクライマックスシリーズ・ファイナルステージでは、横浜DeNA・ラミレス監督の先発投手を中継ぎで使 う奇策に屈した。原氏は「ラミの継投は勇気があった。捨て身ではないが、勝負の世界は開き直ったチームと戦うのが 一番怖い。構えた形で勝負というのはあり得ない。向かっていかないと」と解説。王者だからといって受け身になっては 勝てない。その重要性を説いたところで、時の人の名前が飛び出した。 「白鵬は張り差しが横綱らしくないとか言われているが、果たしてそうなのかな。勝つ手段としてルール内であれば、 勝つという目的のために全力を出すのが重要だ」 高橋監督率いる巨人が昨季苦手とした広島戦でやり返すためには、ひねった戦術に弱い相手に力押しの正攻法ば かりでなく、白鵬のような姿勢も必要ということか。 どんな戦い方を志向するのであれ、原氏が高橋監督に求めるのは「意志力」だ。「自分の意志を伝えないと、チーム はなかなか前に進まない。由伸も自分が“有言”することで、チームが“実行”という形で動いていくのではないか。(就 任)3年目だし、それくらい思い切って自分の考えをクリアに伝えていくことが大事」。指揮官にはナインを導くための発 信力が不可欠だ。偉大な前任者の期待に応え、3年目こそ有言実行のシーズンにできるだろうか。 (笹森倫) ( スポーツニュース 夕刊フジ 2018年1月11日 17時10分より ) ビートたけしが白鵬の張り手問題に怒り 「決まり手なのに制限されるのはおかしい」 6日に放送されたTBS系情報番組『新・情報7daysニュースキャスター』では、不祥事が止まない大相撲がテーマに。 ビートたけしが横綱審議委員会・北村正任委員長に苦言を呈し話題になっている。 ■決まり手なのに使えないのはおかしい 北村委員長は、昨年12月に「張り手、かち上げが本場所15日間のうちに10日以上あるのは横綱相撲とは到底言えな そんな中、5日に行われた、横綱審議委員会の稽古総見で白鵬は土俵に上がった。しかし、白鵬は七番おこなわれた 「変だよね相撲の決まり手にあるのに横綱になった途端、使っちゃダメなんて。王貞治が4番打者のときにホームラ と、怒りを露わにした。 ■たけしの正論に賛意 ネットでは、たけしの意見に共感する声が目立っている。 |
解/説 核ゴミ処分は世界的課題 中国が「核のごみ」の処分場建設の難題に直面していることが明らかになった。 原発は多くのリスクを抱えた存在だ。事故の危険だけではない。 とりわけ「核のごみ」の処分は世代を超え、原発利用国に共通する世界的な課題だ。 人類が原発を利用し始めて約60年。東京電力福島第一原発事故の惨禍を経て、世界は大きく二つの流れに分かれ た。中国、日本、フランスのように原発利用を推進し続ける国がある一方、ドイツ、スイス、台湾などは脱原発に向かっ た。 どちらを選ぶかは、リスクのとらえ方次第である。 福島の事故後、原発の建設費は安全強化のために高騰。最新型の原発の建設費は、1基1兆円をゆうに超えるとさ れる。 それでも利用するのであれば、原発が抱えるさまざまなリスクに真摯(しんし)に向き合うことが責務だ。対応を誤れば、 惨禍を繰り返しかねない。 (編集委員 上田俊英) (2017. 12. 31 朝日新聞 総合 3 欄 より) |
「核兵器の終わり 見届ける」 ICAN事務局長、広島訪問 2017年のノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)(アイキャン)の事務局長で、初来日中 のベアトリス・フィン氏(35)=スウェーデン出身=が15日、広島市の平和記念公園や平和記念資料館を訪れた。 フィン氏はこの日午前、ICAN国際運営委員の川崎哲(あきら)さん(49)とともに公園の原爆死没者慰霊碑に献花。原爆 ドームを沈痛な面持ちで見つめていた。平和記念資料館では、被爆して亡くなった少年の衣服や、廃墟になった市中 心部のパノラマ写真などに見入り、資料館においてある核兵器禁止条約の早期締結を求める署名簿に記入した。芳 名録には英語で「広島市は人間性の最悪なるものを経験しました。しかし、街を再建し、核兵器廃絶に取り組む中で、 人間性の最善なるものを示してきました。広島は希望の都市であり、ICANは核兵器の終わりを見届けるため皆様と共 に力を尽くします」と記した。 公園近くの施設では、被爆者が語る被爆体験にも耳を傾けた。フィン氏は「日常生活が一瞬にして奪われたことが理 解でき、大変心を動かされた」などと話した。 (松崎敏朗) (2018. 1. 16 朝日新聞 10 欄 より) |
ひと 小水力発電をきっかけに過疎集落の再生を目指す 平野 彰秀(ひらの あきひで)さん (42) 霊峰白山の南。岐阜県郡上(ぐじょう)市から峠をひとつ越えた石徹白(いとしろ)に移り住んで7度目の正月を迎えた。 1㍍余りの雪の下で、用水路を流れる豊かな水が約110世帯の2倍の電気を生み出している。 水路に水車を仕掛け、さらに全世帯に出資を呼びかけて、一昨年夏に発電所をつくった。休止中だった農産加工所を再 生して特産の「つぶもろこし」を開発、水車で充電した電気自動車で、お年寄りを病院や買い物に送迎する計画だ。昭和の はじめ、谷川で発電した先人の知恵がよみがえった。 「エネルギーや食糧を自分たちで作り出す。いまの暮らしがこの土地の歴史の流れの上にあることを実感できます」 そんな生き方が身体になじむのか、この10年で新住民は13世帯40人に増えた。春と秋に水路の土砂上げをする井普 請(いぶしん)、お年寄りから昔話を聞く会に人が集まる。 岐阜市生まれ。大学、外資系コンサル会社勤務と10年余り東京で暮らした後、Uターン。「目先の利益、効率、数字を追 う生活に無理に合わせている自分がいた」 郡上市への移住を前提にした新事業を春に立ち上げる。どぶろく作り、狩猟、地域電力などへの参加者を募集中だ。 「『はずれ値』というか、枠から飛び出すことの価値が大きくなっているんじゃないか。ぼくもはずれた? いや、世の中はこ っちに向かっていますよ」 (文・菅沼栄一郎) (2018. 1. 3 朝日新聞 総合2 欄 より) |
立憲 「廃炉支援、国が責任」 原発ゼロ法案 骨子案 立憲民主党が通常国会での提出を目指す「原発ゼロ基本法案」の骨子案が2日、わかった。原発再稼動は非常時以 外に認めず、電力会社の廃炉支援や原発立地地域の雇用創出に国が責任を持つことが柱。原発再稼動を進める安倍 政権との対立軸を示し、通常国会での争点にしたい考えだ。 昨秋の衆院選で野党第1党になった立憲が公約で「原発ゼロ」法策定を掲げ、自民党との立場の違いが鮮明になった。 これまで民進党が態度を明確にしなかったため進まなかった原発ゼロに向けた国会論議が、ようやく本格化する。 骨子案では2030年までに10年と比べ、1年間の電力需要量を3割削減する省エネ目標と電力供給量に占める再生 可能エネルギーの割合を4割以上にする目標を明記。原発新増設や使用済み核燃料の再処理、核燃料サイクルを全面 的に禁止し、再稼動は石油が全く入ってこないような異常事態以外は認めないとした。 こうした基本方針を推進するため、首相を本部長とする「原発に依存しない社会を実現するための改革推進本部」(化 称)を設置。電力会社の廃炉や立地地域の雇用創出に国が責任を持つことを盛り込んだ。廃炉にする原発の国有化も選 択肢として考えている。 「原発ゼロ法案」をめぐり、小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟も10日に 独自の法案を発表する。立憲は骨子案をもとに同連盟などと意見を交わし、市民参加型で法案をまとめていく方針だ。 原発を保有する電力会社が原発用に確保している送電線の容量を開放しないことが再生可能エネルギー普及の妨げに なっている現状もあり、立憲幹部は「まずは原発をやめる政治の方向性を示すことが大切だ」と話している。(南彰) (2018. 1. 3 朝日新聞 総合2 欄 より) |
ダルビッシュ、週刊誌報道をチクリ 「頭大丈夫?」 音楽プロデューサー小室哲哉(59)の引退発表で沸き上がった不倫疑惑報道の是非に関する議論に、ドジャースからフ リーエージェントになったダルビッシュ有投手(31)も声をあげた。 小室は19日、都内で記者会見を開き、「僕なりの騒動のケジメとして引退を決意しました」と引退を表明した。多くのファン から悲鳴があがるとともに、小室が引退を決意する引き金となった文春に対する批判も噴出した。 一方で文春側は、21日放送のTBS系「サンデー・ジャポン」に記者がVTR出演し、「率直には引退は残念」「本意ではない 結果になった」とコメントした。 ダルビッシュは22日、ツイッターを更新。文春記者のコメントに「他人のプライベートほじくりまわして『本意ではない結果』 って本当に頭大丈夫なのでしょうか?」と皮肉たっぷりに疑問を投げかけた。 自身も過去にスキャンダルを報じられたことがあり、「週刊誌がやっていることの8割は『人のアラを探してみんなに伝える』 ことだと思います」とチクリ。著名人がスキャンダルによって活動自粛することなどについて「不倫は夫婦間の問題ですから他 人は関係ないでしょう。それを無関係なのに騒ぐバカな人達が多いからそうせざるを得ないだけの話です」と私見を述べた。 (2018.1. 22 (月)9時18分 BIGLOBEニュース 日刊スポーツより) |
◆アパチティ(ロシア) 助け合いのコーヒー (特派員メモ 北極圏にあるロシアの町アパチティに取材で訪れた。冬は一日の大半が真っ暗。気温は零下20度近くに下がり、強い風 も吹く。寒さで顔やペンを持つ手が痛くなった。 冷え切った体を温めるために入ったカフェに「保留コーヒー」と書かれているのを見て驚いた。2杯分の料金を払い、「保 留分」は後でお金のない人が飲めるという助け合いの取り組み。イタリアで始まり世界各地に広がったが、ロシアで見たの は初めてだ。 店員は「北極圏の住民は、いつも助け合っているから」と当たり前だと言わんばかり。確かに、取材で会ったおばあさんは 「それでは寒いでしょ」と、私のコートの襟をそっと直した。タクシーに帽子を忘れて困っていたら、運転手が届けてくれた。 アパチティの給与水準は大都市に比べて低く、インフラ整備も十分とは言い難い。より良い生活を求めてモスクワなどに 移り住む人は多いが、こうした風土を懐かしみ、戻って来る人もいるという。 私も2杯分払ってコーヒーを注文した。見た目は普通のコーヒーだったが、一口飲むと、いつもより温かさが体に染みた 気がした。 (中川仁樹) (2018. 1. 24 朝日新聞 国際 欄 より) |
鮮やか 豊か 強い森に 江津・有福温泉、住民ら植樹 (註・島根県) 江津市有福温泉町で28日、「森づくり植樹会」があり、地域住民ら約50人が、温泉街近くの里山にナンテンやヤマモミジ の苗を植えた。1週間前には土砂崩れ防止に効果があるとされるアジサイの苗も植えており、景観と防災に配慮した森作り に取り組んだ。 地元の湯町自治会(約50世帯)主催で、県の「みーもの森づくり事業」交付金約120万円を受けた。自治会の盆子原温 (たずね)会長(68)によると、植えたのは約2千平方㍍の私有林で、元は放置竹林だったという。参加者は長靴と防寒着姿で 斜面を数分上がり、クワやシャベルで穴を掘り、ナンテン50株、ヤマモミジ25株を約1時間かけて丁寧に植えていった。 アドバイザーは、防災工事会社「国土防災技術」(東京都)執行役員で、災害に強い森林作りに取り組んでいる田中賢治さ ん(52)。田中さんによると、ナンテンはこの地域の自生種で赤い実が良い景観を作るほか、鳥が実を食べフンをすることで 森が豊かになっていくという。また、放置竹林は根がつながっていることから土砂崩れに弱く、アジサイなどに植え替えること で斜面が崩れにくくなるという。 盆子原さんは「寒い中たくさん集まってくれてうれしかった。地域のみんなで、色鮮やかな樹木が育っていくのを楽しみにし ていきたい」と話した。 (奥平真也) (2018. 1. 29 朝日新聞 島根 欄 より) |
経済気象台 読 み 書 き ソ ロ バ ン 2月は受験の季節。中・高・大学の入試が各地で行われている。今年の大学入試センター試験の志願者は58万人で、 1990年に導入されて以来、受験生に定着しているが、3年後には新しい共通テストがスタートする。 新テストは「思考力、判断力、表現力」を問うという触れ込みだが、狙い通りの成果が上げられるか疑問だ。一連の入試改 革は学力低下を招くと危惧する声もある。 私立大学の約4割が定員割れしており、応募すれば誰でも合格する大学が多数存在する。中学卒業の学力がないまま高 校に進学し、大学生になるケースは珍しくない。今回の改革案は現実を無視して決められたのではないか。 「思考力」を発揮するためには一定の知識が必要であり、判断力、表現力もしかりだ。高校生の学力格差は大きい。上位 の生徒は新テストの狙いに対応できるが、基礎学力のないものには無理だ。大学の大衆化が進み、高校卒業の現役進学 率が50%近い現在、中位以下の生徒の学力をいかに上げるかが当面の課題ではないか。 かつて日本の教育では「読み書きソロバン」を重視した。基礎学力なくして思考も判断も十分にはできない。独創性も発揮 できない。英国英語では大学で「専攻する、研究する」に「read」を使う。「学ぶ」ことは「読む」ことでもある。 教育現場では教師が雑務に追われ、小学校では3割強、中学では約6割が過労死ラインにあるという。入試改革の前に、 教師が授業に専念できる環境整備が先ではないか。疲弊した教師のもとでは充実した授業は望めない。読み書きソロバン (算数)の徹底こそ基礎学力向上の原点だ。 (堤琴) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2018. 2. 2 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
今も現役 歴史ある水力発電所へいかが 関西電力は5日、3月から日本初の事業用水力発電所「蹴上(けあげ)発電所」(京都市左京区)の見学会を開くと発表した。 俳優の佐々木蔵之介さんが登場するテレビCMで紹介し、1月の特別公開時には、定員20人に対し60倍の応募があ るなど好評だったため、一般公開に踏み切る。見学会は毎週金曜日の予定。 同発電所は琵琶湖疏水(そすい)を使った水路式の水力発電所で、1891年に運転を始めた。第2期、第3期で建屋が変わ ったが、いまも稼動を続ける。出力は4500㌔ワット。 見学会は、金曜の午前10時開始と午後1時半開始の2回。定員は各回20人で無料。電話(075・205・5352) で申し込む。 (2018. 2. 6 朝日新聞 経済 欄 より) |
![]() 全国小水力利用推進協議会事務局長 中島 大さん (56) 小水力発電の導入には、河川法の厳しい規制がハードルになる。だが、小水力発電の開発を30年以上支援してきた 中島大さん(56)は、1月に出した著書『小水力発電が地球を救う』(東洋経済新報社、税抜き1400円)で「国土交通 省の対応は180度変わった」としている。 小水力発電を始めようとすると、以前は国交省側から、幅5㍍の川でも「大水害が起きないことを証明しろ」と言われたり、 だれも船を使っていない川でも「船に迷惑をかけないことを証明しろ」と言われたりしたという。だが、2010年ごろから は、どうすれば条件をクリアできるか、国交省側も一緒に考えてくれるようになったという。 自然エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)もあって、小水力発電が本格的に広がり始めた。著書では、若者が移住 して立ち上げた例(岐阜県石徹白<いとしろ>地区)や地元建設会社が音頭をとった例(富山県)など、これから小水力発電に 取り組もうという地域に役立つ事例を紹介した。 (中略) かつて地方では、小水力発電が一般的だった。村の有志が金を出し合って近隣の川で小さな発電所をつくり、各家に電 気を引いていた。そんな発電所が全国に数千カ所あったと言われる。 原発など大規模集中型電力の普及によって、小水力発電はほとんど姿を消してしまった。しかし、小規模分散型電力が 求められる現在、小水力が再び地域に受け入れられつつある。 中島さんは「小水力は発電にかかわるすべてが見えるのが魅力。企業が主導の太陽光や風力と違って、地域住民が活 躍できる場が大きいんです」と話している。 (石井徹) (2018. 2. 21 朝日新聞 10版 欄 より) |
経済気象台 金 融 政 策 の 正 常 化 を 上場会社の株を、日本銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が買いまくって上昇させる。これまで黒田日銀 がやってきた金融政策だ。 日経平均株価は2万円を突破し、今年は3万円に行くのではないかと予想する経済評論家も多い。数字上の好景気とは 対照的に、大手シンクタンクが指摘しているように個人消費はさえない。 企業も個人も、この好景気の恩恵を受けているのはひと握りのグループだけ。収入の増えない消費者の家計は、目いっ ぱいの残業と共働きでやっと成り立っている、というのは言い過ぎだろうか。 マイナス金利で金融機関がお金を預かるより、融資に向けるように、企業や個人にお金をつかわせようと誘導してい るつもりなのだろうが、人間の心理はそんな単純なものではない。 個人の富裕層は老後に備えて蓄える。内部留保をため込んだ企業は賃上げよりも、リーマン・ショックのような経済大 変動が到来しても揺るがない財務体質を構築しようとしているかのようだ。 メガバンク3行は、約3万人分の人員や業務量の削減を打ち出した。人工知能(AI)やフィンテックなどの技術革新への 対応だけでなく、マイナス金利の悪影響がでているのは確かである。 大手金融機関の経営が揺らぐのは日本経済にとって由々しき問題だ。そろそろ、金融緩和の出口を模索し始める時期 が来ているのではないだろうか。 雇用の6割以上を占めるサービス産業の企業群、そこで働く人々のことを忘れてはならない。彼らが豊かさを実感でき ない金融政策は意味がない。そこが実体経済を支える岩盤なのだから。 (山猫) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2018. 2. 9 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
米機タンク投棄 休漁補償を要請 青森県知事、防衛省に 米軍三沢基地(青森県三沢市)所属のF16戦闘機が燃料タンク2本を小川原湖(同県東北町)に投棄した問題で、 三村申吾・青森県知事は24日午前、小野寺五典防衛相と防衛省三沢防衛事務所で面談し、休漁となっている漁業 者への補償などを要請した。同席した東北町長も同様の要請を行った。小野寺防衛相は「しっかりと誠意を持って対応さ せて頂きたい」と応じた。 一方、海上自衛隊は同日午前、水深約10㍍の湖底で燃料タンクの破片を発見し、引き揚げた。日米地位協定に基づ き、破片は米軍に引き渡され、三沢基地に運ばれた。長さ3㍍以下の破片23個を見つけたという。 (2018. 2. 25 朝日新聞 社会 欄 より) |
商工中金 新たに不正600件 自治体の制度融資でも 政府系金融機関の商工中金で新たに約600件の不正行為が確認されたことが23日、分かった。国の支援を受けた危機 対応融資で新たな不正が見つかったほか、地方自治体の制度融資でも審査書類の改ざんが判明した。不正融資に関す る調査結果を同日公表する予定だったが、「内容を精査する必要がある」(広報部)として延期した。 (時事通信) (3/23(金) 17:30 掲載 より) |
リレーおぴにおん クルマの世紀 12 エコカーPR 五輪が好機 東京都知事 小池 百合子 さん マラソンのテレビ中継を見て、排ガスを出すバイクの後ろを選手が走るのはどうなのか、と思う方も多かったのではない でしょうか。そこで、今年2月の東京マラソンでは、先導車両の一部を初めて電動バイクにしました。 ただ、国内メーカー製には適当な大きさのものが見あたらず、今年は外国メーカー製を使いました。四輪で進む電気自 動車(EV)へのシフトは、二輪にも広げられるはず。世界シェアの4~5割を持つ日本の二輪メーカーがもっと電動にシフト すれば、それこそ新たな市場を先導できます。やっぱり東京マラソンでは日本をPRしたい。国内メーカーも頑張ってほしい です。 2020年東京五輪・パラリンピックは、まさに世界へのショーウィンドーでもあります。選手など関係者の移動には、でき るだけEVやハイブリッド車などを多く使いたい。競技会場が集中する臨海部の都営路線バスには、燃料電池車などを投 入する予定です。東京の発達した公共交通網などのインフラも生かして、五輪の新たな輸送モデルを示す大会にしたいと 思います。 日本の交通マナーも、五輪を機に注目してもらえる日本の良さの一つかもしれません。大学時代、エジプトで過ごしまし たが、向こうでは免許を取らずに運転する人も少なくありませんでした。私が免許を取ろうとしたら、試験場に車を持って こいって言うんです。免許がないのにどうやって、と言ったら「いいんだよ」って……。ウィンカーを手で出す人もいるんで す。壊れているので、運転は命がけみたいなところでした。中東の人は、日本人は車が来なくても信号を守る、と日本の 交通マナーを絶賛しています。 次世代車の普及に向けて、都として力を入れているのが、エネルギー補給拠点の充実です。来年度予算案には、マンシ ョンにEVの充電器を設置する際の補助を盛り込みました。燃料電池車の水素ステーションは、現在の14カ所から20 年までに35カ所、30年までに150カ所に増やす計画です。減りつつあるガソリンスタンドを、立地の良さを生かして、どん な乗り物でもエネルギーを補給できるステーションに変える方策も進めていくつもりです。 これから次世代車へのシフトが進めば、産業的にも社会的にも、様々なことが起きるでしょう。その変革の中でも、 ぜひ日本の自動車産業には、国際競争力を勝ち取ってほしい。環境性能の高い日本のクルマが世界に広がることは、地 球にとってもプラスになると思っています。 (聞き手・吉川啓一郎) (2018. 3. 13 朝日新聞 オピニオン 欄 より) |
サウジで太陽光発電 ソフトバンク 21兆円規模
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とサウジアラビアのムハンマド皇太子が、滞在先の米ニューヨークで27日 ソフトバンクがサウジ政府系ファンドなどと設立した10兆円規模のファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が資 パネルなどの発電設備の生産は、順次サウジ国内での生産に切り替える。エンジニアの教育・訓練施設も設けて、30年 サウジは脱石油依存を進めており、ムハンマド皇太子は「人類史にとって大きな一歩だ」と述べた。孫氏は「サウジには強 |
高齢者の薬減らして 厚労省が指針案 薬はなるべく減らして---。厚生労働省は21日、高齢者に適正に医薬品を使うための指針案を有識者会議に示し、おお むね了承された。お年寄りは複数の病気を持つことが多く、多くの薬を使いがちだ。指針案は医師や薬剤師向け。主な副 作用を示し、薬の減量や中止で症状が改善することもあると指摘して減薬を促す。厚労省によるこうした指針は初めて。 厚労省によると、薬局で薬をもらっている75歳以上の4割が1カ月間で5種類以上、25%は7種以上を一つの薬局で受け ている。複数の薬局を利用する人もいて、1人あたりの薬の数はさらに多いとみられる。その一方、高齢になると体内で薬 の濃度が上がりやすくなり、成分が対外に排出されるまでにかかる時間も延びる。 指針案は、のんでいる薬による治療が有効なのか、薬以外の方法はないか、検討することを勧める。さらに、複数の医療 機関・薬局を利用して1人が同じ種類の薬を複数のんでいないかを確認することを求めている。ただし機械的に薬を減らす と、持病が悪化する恐れがあるので減量や中止は慎重に行い、経過観察することを推奨する。 主な副作用とその原因とみられる薬の例示もした=表 (註…表は省略) (福地慶太郎) (2018. 2. 22 朝日新聞 総合3 欄 より) |
虐待通告 6万人超 18歳未満、初の大台 虐待を受けた疑いがあるとして全国の警察が昨年に児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもは6万5431人だ った。前年より20. 7%増えた。統計がある2004年から13年連続で増え、初めて6万人を突破した。警察庁が8日発表した。 通告が増えた要因について、警察庁は「児童虐待への市民の関心が高まり、警察への通報が増えたため」とみている。 通報を受けた警察が子どもの命に危険があるなどとして一時的に保護したケースも年々増加しており、昨年は3838人と 過去最多となった。 虐待の内容でみると、子どもに暴言を吐くなどの「心理的虐待」が4万6439人(前年比24. 9%増)で、全体の7割を占めた。 このうちの6割強に当たる3万85人(前年比20. 3%増)が、子どもの前で配偶者らに暴力を振るう「面前DV」だった。暴行な どの「身体的虐待」は1万2343人(同10. 6%増)、食事を与えないなどの育児放棄(ネグレクト)が6398人(同13. 7%増) だった。 (浦野直樹) (2018. 3. 9 朝日新聞 社会 欄 より) |
自分の骨 使って治す ![]() 骨折した場所を、患者自身の骨でつくった「骨(こつ)ネジ」でつなぐ。そんな治療法を、島根大医学部(出雲市)が研究し ている。金属ネジと違って後で取り除くための手術がいらず、人工骨のネジでは炎症などの形で現れることがある、異物 反応も出ないという。専用加工機の開発も進めている。 異物反応なし 周囲と同化 取り組んでいるのは整形外科医の内尾祐司教授(56)と今出真司助教(39)。骨折したひざの皿(膝蓋骨<しつがいこつ>) を人工骨のネジで固定した20代の女性患者に、異物反応による炎症が起きたのがきっかけだった。 金属ネジは、関節などの近くを骨折した場合、動きに支障が出る場合もあり、その時は再手術が必要になる。一方、人 工骨は樹脂製で体内で溶けるものの、異物反応が生じる場合がある。手術を担当した内尾教授が、こうした問題を解決 できる新しいネジはないかと考えて選んだ素材が、いずれ周囲の骨と同化する患者本人の骨だった。 2007年に最初の手術を実施。1回の手術で、患者のすねや腰から長さ約30㍉、直径約6㍉の骨を切り取り、加工機でネ ジにして、患部の骨をつなぐ。切り取った部分の骨はいずれ自然修復される。昨年までにひざや手のひら、指の骨折の12 例で実施し、1年以上経過した11例中10例で経過が順調という。 専用加工機試作 一番のネックは、金属よりもろい骨の加工の習熟に時間がかかることだ。加工機は工業用ネジを作る旋盤を改良したが、 ろくろのように回転する骨に刃を当て、0. 1㍉単位で、ネジ山の溝を削る必要がある。 これまで5例の加工を担当した今出助教は当初、手術前に豚の骨を約100本削って練習したという。金属や人工骨の場 合は、業者がストックする様々なサイズから選んで使ってきた。 「離島の病院に赴任した時、ネジが届くまで骨折の手術を待ったことがあった。骨ネジならそんな心配もなくなる」と話 す。 新たな加工機は家電並みの簡単操作を目指し、2年前から、県産業技術センターや精密加工機械メーカーの日進製作 所(京都府)、子会社のヒカワ精工(出雲市)が協力して開発。昨年12月、試作機を発表した。 ドラマにも登場 刃はより複雑な動きが可能で、求めるネジの大きさや形状などの数値を直接入力できるようにした。製作時間はこれま での1本1時間から15分程度に短縮でき、手術時の患者の負担軽減につながる。新加工機は改良を加え、2019年度に臨 床研究の開始を目指すという。骨ネジによる治療は、天才外科医が活躍するテレビ朝日系のテレビドラマ「ドクターX~外 科医・大門未知子~」でも取り上げられた。 内尾教授は「宮大工が、釘などを使わない木組みの技術で神社仏閣を建てるように、骨折を治す発想。精密技術で宮 大工の技術をカバーできれば、低コストで体に優しい治療システムが可能になる」と話す。 (今林弘) (2018. 4. 4 朝日新聞 島根 欄 より) |
日米返還合意後も賃料 米軍用地に年間最大 9130 万円 在日米軍に基地用地を提供するために国が地権者や自治体から借りている沖縄県うるま市内の土地について、会計 検査院が調べたところ、日米政府の間で22年前に返還が合意されて以降も、年間最大で約9130万円の賃借料が国から 地権者や市に支払われ続けていることがわかった。検査院は26日、賃借料の節減を図るため市などと協議を進めるよう、 防衛省に指摘した。 この土地は同市にある嘉手納弾薬庫地区の用地(29万6千平方㍍)。検査院によると、1996年に米政府が日本側への土 地の返還に合意し、施設の移設も2010年2月までに完了していた。ところが、うるま市側が防衛省に対し、「地権者が賃 借料収入を得られなくなる」などとして、引き続き米側に土地を提供したいと要請。防衛省は有効な跡地利用のための必 要な施策をとらず、約160人の地権者や市に賃借料を支払い続けてきたという。 米軍用地は、日米地位協定により、土地を所有する個人や法人、自治体に日本政府が賃借料を支払っている。今回の 指摘に対し防衛省は「返還跡地については陸上自衛隊の訓練場として利用が可能か検討を進めている」と話している。 (高橋淳) 米軍基地の借地料の問題に詳しい沖縄国際大学の来間泰男(くりまやすお)名誉教授の話 沖縄の米軍用地 料は、1950年代半ばの民衆による「島ぐるみ闘争」以後、一貫して引き上げられ続けてきた。結果、基地返還を求めてい た地権者の中にも返還を希望しない人たちが増えてきた。土地を奪われた地権者が借地料を受け取るのが悪いのではな い。だが、いまの借地料は基地を維持するための「政治価格」といえ、高額すぎる。これは今回の指摘の場所だけでなく、 沖縄全体の問題。使われない土地に国が過大な支出をするのも正常でない。まずは借地料を適正水準に戻していく必要 がある。 (2018. 4. 27 朝日新聞 社会 欄 より) |
■ホワイト大使、高校生にエール 広島と沖縄の高校生ら8人が24日、昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約の交渉会議議長を務めたコ スタリカのエレイン・ホワイト大使と、スイス・ジュネーブ市内で面会した。 松井一実・広島市長、田上富久・長崎市長らと共に面会した広島・盈進(えいしん)高3年の池田風雅(ふうが)さん(17) が、条約の早期締結を求める約18万8千筆の署名録を手渡し、「若者は無力だと言われ、署名集めもささやかな行為 ではありますが、これは被爆者の声であり、私たちの希望なのです」と英語で説明した。ホワイト大使は「核兵器廃 絶には多くの人々の声が必要。大人になるまで待たなくてもよい。世界中に変化を起こしているのは若者たちです」 と励ました。 (ジュネーブ) ■被爆者ら、NPT準備委で訴え スイス・ジュネーブで開かれている核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会で25日、日本被団協事務 局次長の児玉三智子さん(80)=千葉県=や、長崎・広島両市長らがスピーチした。 児玉さんは7歳の時、広島で被爆。放射線を受けたことによる不安は大人になっても続いた。「被爆者の苦しみは 深く、73年経っても『あの日』が消えない」。昨年7月の核兵器禁止条約採択で「核廃絶の扉がやっと開いた」が、 日本政府が賛成しないことには「怒りを覚える」と批判。各国の代表に「核抑止ではなく、相互信頼に基づく安全保 障政策に転換し、 核廃絶に向けて大きく踏み出して下さい」と呼びかけた。 (ジュネーブ) (2018. 4. 26 朝日新聞 社会 欄 より) |
■沖縄で復帰平和行進 沖縄が日本に復帰して15日で46年。沖縄県内で11日に始まった「5・15平和行進」は13日、最終日を迎え、宜野湾市 の宜野湾海浜公園で「平和とくらしを守る県民大会」が開かれた。「日米両政府によって強行される米軍基地の強化、拡 大に反対する」との大会宣言を採択した。 県内外の市民団体や労組などから主催者発表で3500人が集まった。実行委員長の山城博治(やましろ・ひろじ)・沖縄平 和運動センター議長が「来月にも辺野古に土砂が入るかもしれないという極めて緊張した局面。全国の皆さん、力を 貸して下さい」と呼びかけると、大きな拍手が起きた。国会議員らも、沖縄の現状を全国各地に伝えてほしい、と訴えた。 実行委によると、3日間の行進には、述べ5400人が参加した。 (2018. 4. 26 朝日新聞 社会 欄 より) |
生活保護費4300万円横領で告訴へ 東京・北区職員ら2人
職員ら2人が生活保護費計約4300万円を横領していたとして、東京都北区は11日、警視庁に告訴する方針であるこ 北区によると、生活福祉課の40代の男性職員は、ケースワーカーとして担当していた受給者7人の死亡を隠して約3千 今年3月、2人の机を整理した際、不正が疑われる資料が見つかり、内部調査に対し、横領を認めたという。北区は職 |
木の文化 材料活用の知恵 京都大 五十田博教授 世界で木材の建築利用が注目されています。木材を使うことが地球の環境保全に役立つからです。日本には利用され ていない木材がたくさんあります。計画的に利用して、森を循環させるべき時です。 日本には木の文化があり、自然に与えられた材料を活用するための知恵があります。多少コストがかかるという課題も 克服できるでしょう。 海外では20階に迫るような高層建築が木を用いて実現しています。中高生の皆さんが大きくなる頃には巨大なビルの建 設も夢ではないはずです。地震への対策など解決すべきことも多くあるので、学びがいのある分野です。 (2018. 5. 16 朝日新聞 教育 欄 より) |
「原発推進論者 当選させない」 小泉元首相、新潟で講演 小泉純一郎元首相が23日、新潟県魚沼市内で講演し、新規制基準への適合を理由に原発の再稼動を進める安倍政 権の方針を「ごまかし」と批判した。24日告示の新潟県知事選を念頭に、「選挙の時が来たら、原発推進論者は絶対に 当選させない」とも訴えた。 小泉氏は、使用済み核燃料から出る「原発のごみ」の最終処分場が整備されていないことなどに触れ、「原発ほどカネ がかかる産業はない。危険な産業はない」と指摘。廃炉を進め、再生可能エネルギーによる経済成長をと訴えた。 講演は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動に反対する市民団体が企画。同原発の再稼動問題も問われる知事選とタイ ミングが重なったが、小泉氏は記者団に「(講演は)1年前に決まっていたの」。知事選について問われると、「新潟は原発 があるんだから、ただちに廃炉。やめるべきだよ。そういう候補に当選してもらいたいな」と述べた。(高木慎也、磯部佳孝) (2018. 5. 24 朝日新聞 総合4 欄 より) |
(註…結果がどうあれ、勇気あるこの発言も、実践の伴った、一つの革命のように思われる。)
北朝鮮 労働新聞 ■非核化の意志「一貫」 北朝鮮の労働新聞(電子版)は28日、24日に豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄式典を行ったことについて、「核兵器のな い平和な世界を建設するため、世界の平和愛好人民と固く手を取って進もうとする我々の確固たる意志は、今後も一貫し て続くであろう」と伝え、北朝鮮の非核化の意志は一貫していると強調した。 (ソウル) (2018. 5. 29 朝日新聞 国際欄 より) |
食品の輸入停止 福島以外解除へ 香港 千葉など4件 香港政府は5日、2011年の東京電力福島第一原発の事故から続けてきた福島など5県からの野菜や果物、乳製品 の輸入停止措置について、福島をのぞく、茨城、栃木、群馬、千葉の4県で解除する方針を明らかにした。12月以降に 立法会(議会)で議論を始める。 輸入にあたっては、日本の農林水産省が発行する放射性物質の検査証明書の提出を義務づける。解禁日は決まって いない。福島県産品については輸入停止が続くため、日本政府は引き続き緩和を求めていく。外務省によると、香港は日 本が輸出する農林水産物・食品の最大の相手先。 (香港) (2018. 6. 7 朝日新聞 経済 欄 より) JA不正会計で監督指針見直し 農 水 省 JA秋田おばこ(秋田県大仙市)がコメの販売で不適正な会計をして大きな赤字を出したことを受け、農林水産省は 5日、農協の監督指針を見直す方針を示した。収支管理や情報処理システムの運用状況のチェックを強化する。 JA秋田おばこの調査報告書によると、本来は収穫した年ごとに清算するコメの販売代金を、収穫年をまたいで付け替 えるなどして、60億円を超える累積赤字を隠していた。増える事務作業に職員が対応できず、収支が把握できなくなっ ていたという。 農水省が公示した見直し案は、複数の収穫年のコメを並行して売るときに、収穫した年ごとの収支管理を徹底し、理事 や生産者への定期的な報告を求める。 (2018. 6. 6 朝日新聞 経済 欄 より) |
鹿児島相互信金 日銀考査も違反 日本銀行は1日、金融機関の経営をチェックする考査で、鹿児島相互信用金庫が考査契約違反をしたと発表し た。同信金は4月、多くの職員が関わった約1600件もの預金着服などの不正を公表。金融庁から業務改善命令を受け た。不正公表前の2013年と16年に日銀が考査をした際には、同信金は不正の事実を記していない資料を提出。結果と して不正を隠していた。考査契約違反を受け、日銀は管理態勢の改善状況を3カ月に1回程度報告するよう求めた。同 信金は「信頼回復に全力で取り組む」とコメントした。 (2018. 6. 2 朝日新聞 経済 欄 より) |
神戸発 水素発電に熱視線 市街地に供給 世界初 温室効果ガスの削減が期待される新エネルギーの「水素」。日本企業が、水素発電でつくった電気を神戸市内に供給す る初めての取り組みを進めている。海外から注目される一方、石油などの燃料より高い価格が依然として課題だ。 大林組・川重が実証 神戸市中心部に近いポートアイランドで今春、水素だけで発電した電気がつくられ、周辺に供給することに世界で初めて 成功した。手がけたのは大林組と川崎重工業だ。市街地にはいま、天然ガスとともに燃やして発電した「水素電気」が 届けられている。 発電できる最大1,800㌔ワットの電気のうち、設備の消費分を除いた1100㌔ワットが、周辺の病院やスポーツセン タ-など4施設へ。発電時に発生する熱でつくった蒸気も、病院など2施設に熱源として供給する。水素発電による市街 地への供給もまた、世界で初めてという。 一連の取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成を含めた総額20億円の技術実証だ。 水素は燃やした際に二酸化炭素が発生しない理想的なエネルギーとされ、海外からも注目されている。神戸にある発電 設備には、有識者や専門家など約10カ国、350人以上が視察に訪れた。 神戸空港のある空港島では、水素の調達自体でも実証が始まろうとしている。水分が多くて燃料としては使いにくい「褐 炭」と呼ばれる石炭から水素をつくり、豪州から専用船で神戸まで運ぶものだ。約5億豪㌦(約415億円)にのぼる日豪 のプロジェクトには川崎重工や岩谷産業などが参画。2020年ごろの水素の運び出しをめざす。 川崎重工水素チェーン開発センターの西村元彦副センター長は「発電効率の向上など取り組む課題は多いが、水素 は将来的に有望なエネルギー」と話す。 石油よりも割高 普及の壁 政府は昨年末、水素社会の実現に向け、包括的な「水素基本戦略」を初めてとりまとめた。30年に水素を使った燃料電 池車(FCV)や燃料電池バスを普及させ、燃料となる水素の供給拠点も900カ所整備するとしている。 水素の調達では、豪州からの輸入だけでなく、欧州の再生可能エネルギーによる発電で余った電気からつくることも進め る。国内に水素の受け入れ施設を整備し、調達量をいまの200㌧から30年には30万㌧まで増やす方針だ。 発電設備のある神戸市は「水素スマートシティー神戸構想」を掲げており、企業の実証を後押しする土壌を持つ。たが、 こうした新技術の実証には巨額の費用が必要で、継続した国の補助なしに、一つの自治体が支援するには限界がある。 さらに、水素普及の最大の障壁は「価格」だ。FCV用の水素の販売価格は1立方㍍あたり約100円。ただ、水素の供給 拠点の建設費などを除いたものだ。政府の基本戦略でも「水素の調達・供給コストの低減が不可欠」とされ、30年までに 1立方㍍あたり30円程度、30年以降は20円にすることが課題だ。 日本エネルギー経済研究所の柴田善朗研究主幹は「水素の価格目標は他のエネルギーとの比較で導き出されたもの。 輸入水素の市場が構築されなければ、実際の価格は不確定だ」と指摘する。 (金井和之) (2018. 6. 5 朝日新聞 経済 欄 より) |
イングリッシュガーデン 松江市が売却の方針 松江市の松浦正敬市長は18日、宍道湖北岸にある市の観光庭園「松江イングリッシュガーデン」(同市西浜 佐陀町)を、市内の民間事業者に売却する方針を明らかにした。市の負担が年約9千万円に上っており、対策を検討して いた。事業者を活用プランとともに募る公募型プロポーザルの手続きを7月から始める。 この日の市議会一般質問で、最大会派松政クラブの三島良信氏の質問に答えた。松浦市長は「民間事業者のア イディアやノウハウが必要」と、売却する理由を説明。ガーデンの運営を最低10年は続けることが売却する事業者 の条件とした上で、「観光振興や地域の交流人口増加につながると期待している」と話した。 売却するのは、ガーデンと、ルイス・C・ティファニー庭園美術館の跡地などガーデン周辺の土地計約2万3千平方㍍ のほか、ガーデンを囲むように立つ回廊や多目的ホールなどの建物。市は、土地と建物の購入金額に加え、宍道湖の 水辺など周辺のエリアを含む活用プランを審査して、事業者を決める。 松江イングリッシュガーデンは2001年4月、市が誘致した美術館の関連施設として開園。その後、集客などを巡っ て、美術館を所有する不動産会社と市が対立し、美術館は07年3月に閉館した。市はガーデンを翌4月から単独運営 に切り替え、入場料を無料化した。15年には美術館の跡地を約2億円で買い取った。 市によると、利用者は年約20万人という。 (長田豊) (2018. 6. 19 朝日新聞 島根 欄 より) |
山陰から 芽吹け新ビジネス 合銀と野村総研、支援プログラム 山陰合同銀行(本店・松江市)は、コンサルタントなどを手掛ける野村総合研究所(本社・東京)と 協力し、山陰で新ビジネスの起業を支援するプログラムを始める。「事業を始めたい」と考えて いる人材を募り、グループごとに議論を重ね、創造的ビジネスを模索していく内容。参加費は無料という。 チームで議論 起業模索 プログラムの名称は「SAN-IN・イノベーション・プログラム(SIP)」。7月25日から始まり、12月までの予定。 合銀の石丸文男頭取、野村総研の此本臣吾社長が20日、合銀本店で記者会見し発表した。募集対象は、山陰地 方で今までにない事業を始めたいと考えている人や、地域おこしを模索している人など。年齢は問わず、人数に上限も設 けない。月に1、2回、約3時間のセッションを実施するという。 会場は主に同市魚町の合銀本店で、複数人のチームに分かれて、アイディアを出し合ったり、それらの実現可能性を検 討したりする。実際に起業に成功した会社社長ら4人も招き、体験を聞く。 野村総研は北海道十勝地区と沖縄で同様のプログラムを先行実施している。同社によると十勝では、これまで延 べ100人以上が参加。移動式の小屋を農園の真ん中に置いて宿泊してもらう事業や、廃棄していた羊毛でお年寄りにブラ ンケットを作ってもらう事業などが実現したという。 会見で石丸頭取は「今までも企業支援はしてきたが、構想を既に持っている人への支援だった。今回は構想の前の段 階から関わっていく。新事業が数多く生まれることを期待する」と話した。 申し込み、問い合わせは同行地域振興部 ( 0852・55・1821 ) へ。 (奥平真也) (2018. 6. 22 朝日新聞 島根 欄 より) |
小泉氏・小沢氏、30年ぶり協調 原発ゼロ目指し訴え 小泉純一郎元首相が、自由党の小沢一郎代表が主宰する政治塾で講演することがわかった。自民党時代ににらみ合 い、与野党にわかれてぶつかった両者が「原発ゼロ」の実現をめざして足並みをそろえる。原発を推進する安倍政権を 揺さぶるねらいもありそうだ。 小沢氏が塾長を務める政治塾は、新しいリーダーの発掘を目的に2001年に開講した。小泉氏は7月15日の政治塾 で、「日本の歩むべき道」と題して講演する予定だ。原発の撤廃や、太陽光など再生可能エネルギーへの転換の必要性 などを訴える。翌16日には小沢氏も講義する。 関係者によると、両氏が手を結ぶのは約30年ぶり。1989年に小沢氏が自民党幹事長に就き、小泉氏が幹事長の下 で全国組織委員長を務めて以来の「再会」だという。当時は一緒に全国の友好団体などを回り、夜には酒を酌み交わし、 カラオケを楽しんだ仲だったという。. (2018. 6/29 7:43配信 朝日新聞社より) |
新潟・津南町長に 全国最年少 31歳 新潟県津南町の町長選は24日投開票され、無所属新顔で前町副議長の桑原悠(くわばらはるか)氏(31)が初当選した。 桑 原氏は全国で最年少の町長となる。 桑原氏は東京大公共政策大学院在籍中の2011年10月、25歳で町議に初当選した。 養豚農家の男性と結婚し、2児の母親。町長選では子育て世代への支援や町のブランド化戦略を打ち出し、57歳と67歳 の男性候補を退けた。 (2018. 6. 25 朝日新聞 社会 欄 より) |
■タイ政府が義捐金 タイのプラユット暫定首相は16日、バンコクの首相府で佐渡島志郎駐タイ大使と面会し、西日本豪雨の被災地への 義援金として500万バーツ(約1700万円)を贈った。 (バンコク) (2018. 7. 17 朝日新聞 国際 欄 より) |
■枝野氏、 辺野古に反対 立憲民主党の枝野幸男代表は29日、党沖縄県連の設立に伴う那覇市での記者会見で、米軍普天間飛行場(同県宜 野湾市)の名護市返野古移設に反対する考えを表明した。普天間飛行場の返還と合わせて米側と再交渉し、結論が出る まで工事を中止することを主張している。 枝野氏は「沖縄の分断と対立を生む新たな基地の建設をこれ以上強行し続けることはあまりにも無理がある」と主張。 1996年の普天間返還合意の時点から安全保障環境や海兵隊の役割は大きく変わったとし、「粘り強く交渉すれば米国の 理解は得られる」と語った。 (2018 8. 30 朝日新聞 総合 4 欄 より) ▼共産・志位氏、立憲の辺野古移設反対表明を「歓迎」 共産党の志位和夫委員長は30日の記者会見で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移 設計画に対して立憲民主党の枝野幸男代表が反対を表明したことに、歓迎の意を示した。 志位氏は「これまでは野党共闘でなかなか一致が得られなかったが、『辺野古反対』が共同の旗になった。とても大事な 前進だ」と評価。9月の沖縄県知事選について、「戦う態勢が一挙に出来上がった。大変な激戦になるが必ず勝ちたい」と 述べた。 (2018 8. 31 朝日新聞 総合 4 欄 より) |
水素研究の設備 岩谷産業が導入 兵庫・尼崎の研究所 産業ガス大手の岩谷産業は27日、数億円を投じ、水素ステーションなどに使う部品の耐久性を調べるための設備を、 中央研究所(兵庫県尼崎市)に導入したと発表した。建設コストの引き下げに役立てる目的だ。 導入したのは、国内最高水準となるマイナス150度の環境下で、金属部品を液化水素に浸し、耐久性を調べるものなど 七つの設備。2013年にいまの研究所を開設してから大幅更新は初めて。車メーカーや、大学などとの共同研究にも活用 する。 岩谷は23カ所の水素ステーションを持ち、21年3月までの3年間で30カ所程度増やす計画だ。ただ、現行では建設に4 億~5億円かかり、負担が重い。今回導入した設備を生かし、より安価な材料を探すなどして、20年ごろに建設費を半分 程度に下げたいという。 (2018 8. 28 朝日新聞 経済 欄 より) |
<大阪市水道工事> 産廃、人工島に不法投棄 偽造印で管理票 大阪市発注の上下水道工事で、産業廃棄物を適切に処分したことを示す管理票「マニフェスト」が大量に偽造さ |
「新築は温室ガス0」目指す 東京など世界19都市 30年までに 東京都が新たな地球温暖化対策として、新築される全ての建物からの温室効果ガス排出を2030年までに「実質 ゼロ」にする目標を掲げた。ニューヨークやロンドン、パリなど世界の18都市とともに省エネや再生可能エネルギーの導 入などを進め、達成を目指す。地球温暖化対策に積極的に取り組む世界の自治体や企業が集い、米サンフランシスコ で開かれている「グローバル気候行動サミット」(GCAS)で13日(現地時間)、紹介された。 世界の都市で排出される温室効果ガスのうち、オフィスビルや住宅などからの排出は平均5割とされる。東京都の場合 は7割だという。 東京都は新築のビルについては環境性能を示す新たな評価基準をつくり、設計段階から排出量を抑えられるようにす る。住宅についても新たな認定制度をつくり、住宅メーカーの取り組みを支援することを検討している。 既存の建物についても50年までの「実質ゼロ」を目指すが、当面はオフィスビルなどに排出量の削減を義務づける「キャ ップ&トレード」制度に力を入れる。 東京都と他の18都市は「高度な省エネと再生可能エネルギーへの代替に歩調を合わせて取り組み、温暖化対策を加速 させる」とする宣言に署名。進み具合を1年ごとに点検することで合意した。小池百合子知事は「世界の都市と連携しな がら、街全体の温室効果ガスの排出がゼロになるよう目指す」とのコメントを寄せた。 (サンフランシスコ=北郷美由紀) (2018 9. 15 朝日新聞 総合5 欄 より) |
経済気象台 「 A I 論 者 」 の 真 贋 人工知能(AI)に関するニュースの真贋(しんがん)を見分けるには少し時間がかかるようだ。ロボットが運営しているかの ように伝えられていた長崎・ハウステンボスの「変なホテル」が、ロボットの順次廃止を決めたと地元紙が伝えている。そ の理由はロボットの機能の精度不足や、メンテナンスの増加その他で、人間の手間がかかり過ぎるからだという。 金融の現場でも、人間の代わりにAIが投資相談に応ずるかのような報道もみられるが、データの利活用やデジタル化 の応用変化を、人間からAIへの転換かのように説明するのはいかがなものだろう。話題提供や耳目を引くのに良い、と AIに飛びつくのがあまりに増えると、食傷され、ついにはAIと聞いただけで、腰が引ける事態になろう。過ぎたるは及 ばざるがごとし、の典型である。 技術革新はいつの時代でも進んでいる。しかし、職場での仕事は「変化への対応」「いつもと異なる出来事への対応」の 連続である。それは人間が経験によって身につける能力であり、あらかじめロボットにインプットすることはできないものだ。 仕事というのは「とっさの判断」の連続である。単純労働はみなロボットに置き換わる、などという意見もあるが、例えば ワイヤハーネスを通すという「単純な仕事」も、本数や通す場所が異なっていたら、費用対効果を考えると自動化はできな い。 道具が進化することと、仕事が無くなることを同一視してはならない。「AIに奪われる未来の仕事」を論ずるシンクタン クや学者は、どんな仕事について語るにせよ、現場に行って何時間か観察し、聞き取りをしてから発言せよ。(遠雷) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2018 11. 2 朝日新聞 経済 欄 より) |
岩手で防災学習 ■ 家庭に滞在 中国の学生らは、日本の学生との対話や交流会に先立つ11月26~29日、五つのグループに分かれて岩手、 長崎など5県を訪れた。 雲南省からの50人は、2011年の東日本大震災で地震や津波の被害を受けた岩手県の沿岸部を訪れ、被災者の話 に耳を傾けた。 「ああっ !」 約180人が犠牲となった宮古市の田老地区。津波が地区を襲った瞬間の映像が放映されると、学生らがうめき声を上 げた。 一行は市の「学ぶ防災」ツアーに参加。ガイドは地震の発生後、自宅に戻るなどして津波に巻き込まれた人が多かった と説明し、「一人ひとりがまずは逃げるという意識が大切」と繰り返した。ガイド自身も家族や友人を亡くしたことを知り、 涙をぬぐう学生もいた。 同じ沿岸部の山田町では、高潮や潮風を防ぐ防潮林の植樹活動もした。植えた50本のクロマツは20~30年かけて、防 潮林の役割を果たすようになるという。 応希シンさん(21)は「災害を直視する日本の人たちに敬服した。その姿勢を学びたい」と語った。 湖北省の学生約50人はいずれも大学で日本語を専攻しており、長崎県大村市の一般家庭でホームステイした。 梅貴さん(24)は、ほかの学生3人とともに4人家族の家に滞在。自分のふるさとを紹介したり、一緒にすしをつくったりし て交流を深めた。日本式の風呂に入ったり、畳の上に敷いた布団で眠ったりもし、「家族のようにもてなしてくれた」と振り 返った。 金函宇さん(21)は夕食後、日本の3人家族とともにテレビを見てだんらんし、中国の人気俳優で、巨額脱税問題で日本 でも大きく報じられた范冰冰(ファンビンビン)さんの話題で盛り上がったことが印象に残った。「みんな中国に関心を持ってい ることが分かった」と喜んだ。
「国の関係を抜きに、人の関係をつくりたい」。今回の対話で日中双方の学生が口にした言葉だ。 尖閣諸島を巡る対立など、ここ数年、国家間の問題が双方の国民感情に大きな影を落としてきた。政治から離れ個人 としての付きあいを望む声が双方から出たことは、日中の若者たちが互いを冷静に見ようとしている表れだと感じた。 この夏まで中国留学した私は、20代の中国人の友人と内モンゴル自治区フフホトの博物館を訪ねた。現地の文化とと もに旧日本軍が残した爪痕も展示されており、気まずくなったが、友人は「昔の話だ」と淡々としていた。国と個人、過去 と現在を切り離して考える若者は増えているように思う。 今回日本を訪れた学生たちは、予定されたプログラム以外でも交流を深めた。雲南省から参加した唐優悠さん(23)は 都内の飲食店で出会った日本人と英語で様々な問題を議論した。意見は合わなかったが、最後は互いに「おれがおご る」と引かなかったという。唐さんの思い出に強く刻まれたのは、国や文化や言葉の壁を越え、個人としてのふれあいが できたという手応えからだろう。 日中は隣国である以上、摩擦や対立は避けられない。それでも、若い世代のなかに、政治に左右されない関係を築い ていこうという姿勢が芽生えていることを頼もしく感じた。 (高田正幸) (2018 12. 6 朝日新聞 国際 欄 より) 日本観 接点増え質的に変化 艾菁(アイチン)・復旦大学外国語言文学学院講師 多くの若者の日本観が質的に変化していると感じる。 旅行や留学など、自分の目で日本社会を見ることで、個人的に理解を深めることができるようになった。実際に行かな くても、ネットで日本の情報に触れられる。ステレオタイプではない日本観が、各個人の中で芽生えている。 なぜ日本を知ろうと思うのか。背景には「大国の自信」から来る好奇心が指摘できる。中国の国内総生産は日本を抜き 世界2位となり、大きく発展した。 そんな中、若者の間では「世界に影響を与える大国としてさらに発展するため、もっと世界を知りたい」という気持ちが生 まれている。 日本は高度経済成長を経て、文化的にも経済的にも成熟した社会を実現している隣国。学ぶべきことは多いと、多くの 若者が感じている。 今の中国は、故郷の親元を離れ、都市に出る若者が増えている。内面に孤独や不安を抱えて生活を送る中で、村上 春樹や久石譲ら、日本の小説や映画、音楽に表現された「都市的情緒」に共感する層が増えていることも見逃せない。 日本との接点が多くなったことで、より客観的・立体的な日本観が形成されている。今後の健全な両国関係の基礎にな るはずだ。 (聞き手=宮嶋加菜子) (2018 12. 13 朝日新聞 国際 欄 より) |
「抑止力」本当に必要か 元防衛庁官房長 柳沢協二さん (72) ![]() 防衛官僚時代は、辺野古が最善と考えていました。ただ、2010年に鳩山由紀夫首相が「最低でも県外」を断念する理 由として「学べば学ぶにつけ(沖縄への海兵隊駐留で)抑止力が維持できる、という思いに至った」と語ったときから、抑 止力とは何かを追究するようになりました。水戸黄門の印籠(いんろう)のようになっていないか。国民が納得する説明がで きるか、と。 抑止力とは、反撃する能力と意思を相手に示すこと。海兵隊には能力はある。ただ米国はイラク戦以降、慎重になり、 海兵隊を戦地に投入する意思があるかは疑問です。あったとしても前線に基地を集中させておくべきか。前線がやられ たときに大量の援軍が反撃することこそ、抑止力の本質だと考えています。 そもそも在沖海兵隊の主力はグアムに移ります。辺野古は、残った2千人の足であるオスプレイ24機を置く場所です が、小さなテーマ。米中の軍事バランスにも、日本の防衛にも、大した影響はありません。沖縄に本当に海兵隊が必要 か。問い直されるべき課題です。 辺野古移設の始まりには1995年、冷戦後も東アジアに10万人の兵力を維持するという米国の戦略がありました。基 地を安定的に運用するために沖縄の負担を減らさなければならないという問題意識でした。 しかし辺野古移設には地元の理解がなく、強行すれば、嘉手納基地に県民の不信が向かう恐れもあります。辺野古 のつけが東洋一の空軍基地に回り、安定運用を揺るがしかねません。 政府は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返していますが、安定保障の問題で、この道しかないと言う国は危うい。安全 保障は国の専権事項だからこそ、地元が反対なら、別の解決策を考えるのが国の責任です。 (聞き手・古城博隆) (2018 12. 13 朝日新聞 社会欄 より) |
学び経験積む機会を 在日カンボジアコミュニティの楠木立成理事長 難民として来日して28年。自動車工場などで働き、リーマン・ ショックで失業しました。その後、職業訓練学校で学んで資格を取り、中古車輸出業を起こしました。私も仲間も日本社 会に貢献したいと思っています。サッカーの試合でも自然と日本代表を応援します。 いま技能実習で来た人たちの相談で多いのは、賃金未払いや休めないなどの問題。また、勉強時間が取れず言葉が 上達しないとコミュニケーションが上手にいかないという悩みも。一方で私たちのように滞在が長くなると子どもの教育や お墓の心配が出てきます。 日本がこれから外国人を受け入れ活用しようとするなら、来日後も勉強や様々な仕事をする機会を与えることが重要 です。例えば、ODA(政府開発援助)の一部を使ってもいいのではないでしょうか。 くすのき・りっせい 1960年生まれ。 カンボジアで教員をしていた84年、身の危険を感じてタイ国境の難民 キャンプへ。90年に難民として来日。その後日本国籍を取得。2012年、 在日カンボジアコミュニティの設立に加わり、現在は理事長。 (2018 12. 19 朝日新聞 オピニオン欄 より) |
経済気象台 日本酒のフロンティア 日本酒好きのアメリカ人男性と国際線の機内で隣同士になった。長野にある提携先の工場を視察するうちにはまったら しい。コメの産地はおいしい日本酒が多いから、新潟にも連れて行ってもらうといい、などと半ば上から目線でアドバイスし た。 食事が配られると、彼は迷わず日本酒を注文した。そして、事もあろうにカルボナーラとおぼしきパスタをほおばりながら ぐびぐびやり出したのだ。あまりに前衛的な取り合わせに打ちのめされてしまった。 パスタならワインでしょ、と言いたくなる。だが、今でこそ「SAKE(サケ)」は英単語になったが、以前はライスワインと呼ば れていた。とすれば、これはそれほど奇想天外ではないのか。そういえばアメリカのすし屋で、サケクーラーなる日本酒を 飲んだことがある。カクテルにするなんて邪道だと思いつつ、好奇心から注文したのだが、マルガリータのような癖になる 味だった。酒の味わい方は、本来限りなく自由なのかもしれない。 「カンパイ ! 世界が恋する日本酒」 (2015年) というドキュメンタリー映画では、地方の蔵元が海外に日本酒を売り込 む様子や、杜氏(とうじ)になった外国人の姿が描かれていた。日本酒の国内出荷量は減少傾向だが、逆に輸出額・数量は いずれも 8年連続で過去最高を更新し、海外からは熱い視線を浴びている。そこには日本人が考えもつかなかった日本 酒の味わい方のフロンティアが広がっているのだ。 機内で一緒だった彼は、今頃はピザと一緒に杯を酌み交わしているのだろうか。今度は私が日本酒の新たな楽しみ方を 教わる番かもしれない。あなたも日本酒の常識に挑戦してみませんか。 (海星) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2019 1. 8 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
経済気象台 外国人労働者の受け入れ 意見が分かれる時こそ、少数意見を聞きながら議論を積み重ね、物事を慎重に決める必要がある。それが民主主義の あるべき姿だろう。外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正をめぐる国会審議を見ながら、嘆息を禁じ えなかった。 まず、議論の前提がおかしいのではないか。そもそも、外国人労働者は日本に来たいと思っている人ばかりではない。 製造業の中小企業を経営している私はミャンマーで市場調査を行っているが、数年前は人材派遣会社も多くのミャンマー 人を日本に連れて来ていた。しかし最近は日本の就労条件が悪く、好条件の他国に行く事例が続出している。派遣会社の 経営が行き詰まるケースも見てきた。 ものづくりに従事する場合、3年や5年で母国に帰って何が出来るのか。従業員の育成は容易ではない。弊社は外国人 労働者を日本人と同じように扱い、入社から10年ほどかけて一人前に成長させている。上司と綿密に相談し、一つずつ技 能を習熟していくのである。技術を身につけて母国で活躍できる状態にしないと意味がないからだ。 これらを踏まえると、政府は外国人労働者の待遇と人生をもっと考えた上で、受け入れの制度を設計すべきだと思う。 今般の法改正は人手不足解消のための方策としか思えない。政府は外国人労働者一人ひとりの人生に思いを寄せるべ きではないか。 国籍を問わず、どんな社員も仕事を通して成長し、生きがいを感じて欲しい。そう考える経営者は私だけではないはず だ。働き手の成長は経営者の喜びであり、誇りでもある。そうした考えで外国人労働者を受け入れることは出来ないもの だろうか。 (削) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2018 12. 21 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
「原発事故 国なくなる危険」 小泉元首相 松江で講演 「原発ゼロ」を訴える小泉純一郎元首相(77)が16日、松江市殿町の県民会館で講演した。原発のリスクと再生可能エネ ルギーの可能性などを約1時間半にわたって熱弁。「政党は関係ない。右も左もない。近々、全政党が原発をやめようとい う時代が来ると思っている」と訴えた。 市民団体「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」(事務局長・保母武彦島根大名誉教授)などでつくる実行委が主催。 主会場の大ホール(約1700人)は満員になり、別会場ともライブ中継をつないだ。同団体によると、来場者は約2100人とい う。 首相時代に原発推進の立場だった小泉氏は、福島第一原発事故を機に考えが変わったと説明。「あんたはぶれない総 理だと言われたが、ぶれた。でもいい方向にならいいじゃない」と笑いも誘った。 小泉氏は、福島の原発事故では最悪の場合、東京まで含んだ、原発から半径250キロ圏内の人が避難しなければなら なかったとし、「原発は単なる事故に終わらず、国がなくなるような危険性を持っている」と指摘。事故後に全国の原発が 停止したまま生活できたことや、太陽光発電などの再生可能エネルギーの供給量の増加を挙げ、「原発に頼らず、新エネ ルギーでやっていく。そうなることを期待しながらあきらめずやっていく」と話した。 雲南市大東町から友人2人と来た小山資子(よりこ)さん(83)は「(小泉さんは)首相時代と、がらっと考えが変わったことが分 かった。話はとても分かりやすく、自分たちも何かできる気がした」と話した。 (市野塊) (2019. 2. 17 朝日新聞 島根 欄 より) |
経済気象台 就活生の親御さんへ 3月になると、私の経営する中小企業は、来年4月に入社する新入社員の採用活動を始める。私は長年、大企業に入る ことを喜ぶ学生や親御さんを見てきた。本人が幸せになるのであれば結構なことだ。 しかし、現実はどうか。先日、ある大学教授に聞いた話を紹介したい。教え子の資質を見極めて中小企業を勧める場合 があるが、親が「大企業に入れて欲しい」と断ってくるので、教え子の大企業志向が強まるという。他方、同窓会に出る と、卒業生は「就職に失敗した」と愚痴を言うか、大企業を早期退職しているかのいずれかが多いそうだ。 大企業への就職が目的化しているからではないか。大企業は競争が厳しい。40代になると先が見え、脱落する社員が 出る。社長に直接会うことができず、上司に目を掛けてもらうしかない。 だから、視野を広げ、中小企業も就職の選択肢に入れて欲しい。日本の全事業者の99.7%が中小企業で、全従業者の 70%が中小企業で働いている。地方は中小企業があって住民が生活でき、住民がいるので中小企業も活躍できる。この 現実を親は知らないのではないか。 中小企業は良いことや楽しいことばかりではない。どこで働くにしても、人生を切り開く力が必要なのも言うまでも ない。しかし、中小企業は社長が身近で、意見を言えばすぐ回答が得られる。会社内での自分の役割と存在価値も 実感できる。生きがい、やりがい、喜びや誇りを感じながら働ける。これは何事にも代え難いと思う。 親御さんはいま一度、子どもの人生と適性を見つめ、企業規模にとらわれない就職活動を後押しして欲しい。 一経営者からの願いである。 (削) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2019. 2. 21 朝日新聞 国際 欄 より) |
若 い 世 代 空から降ってくる宝物 「雪だるま財団」主任研究員 伊藤親臣さん 雪を「雪室(ゆきむろ)」に貯蔵し、雪の冷気を冷房のほか、コメや野菜などの農産物や食品の保存に活用しています。雪 室を造る初期投資は必要ですが、電気代は不要。甘みやうまみが増すメリットもあるのです。近年ではデータセンターの サーバー冷却にも使われ、雪は太陽光と並ぶ貴重な自然エネルギーです。 雪は空から降ってくる宝物。雪は「試練」ではなく「資源」なのに、雪国では毎年、何百億円もの税金を投じて雪を捨 てています。もったいない ! 雪を「邪魔者」と決めつけていては何も生まれない。「当たり前」を捨ててこそ、「逆転の発 想」は生まれます。 いつか必ず、「雪泥棒」が出る時代が来ます。その時、僕はようやく「一人前」になったと胸を張れる。雪の真の価値 が認められたってことですから。 (2019. 2. 9 朝日新聞 若い世代 欄 より) |
水道工事7割で不正 12年度以降 大阪市300社以上関与 大阪市は12日、水道局が発注した2012年度以降の工事約1450件の約7割で、指定より安価な資材を使った不正が見 つかったと発表した。300社以上の業者が関与を認めており、市は指名停止処分に踏み切る方針だ。市職員の関与の有 無についても調べるとしている。 大阪市水道局は03年度以降、配水管の取り換えや漏水の修繕などの工事で、掘った穴を埋め戻すときに土に石灰を 混ぜた「改良土」を使うよう指定している。 市の説明によると、17年4月、外部から「不適正な材料が使用されている」との情報提供があった。水道局が調べたとこ ろ、同年11月に改良土より安価な資材で埋め戻す手口の偽装工事が発覚したため、記録が残る12年度以降の工事の調 査を開始。当時完了していたものと工事中の案件計1445件のうち約7割で不正が見つかったという。完了した工事では、 約9割に不正が認められた。 市が行った業者らへの聞きとりに対しては、300社以上が不正を認めた。不正業者は、改良土を指定通り使ったかのよ うに偽造した伝票を市に提出していたという。市は不正業者が改良土と安価な素材の差額で利益を得ていたとみている。 今年3月に調査を終え、不正業者は指名停止処分にしたうえで、損害賠償請求も検討する考えだ。 水道局幹部は安全性について「今のところ陥没などはない」と説明。同局職員の関与については、弁護士を交えた外部 監察チームが調査中とした。 (吉川喬、新田哲史) (2019. 2. 13 朝日新聞 一面 欄 より) 業者「20年前から横行」 大阪・水道不正 市職員の関与調査 大阪市水道局の2012年度以降の工事の約7割で、不正が発覚した。不正を認めた業者は300社を超え、多くが指名停 止になる見通しだ。朝日新聞の取材に対して「少なくとも20年前から不正は横行し、市職員も知っていたはずだ」と証言 する業者もおり、職員の関与を調査している市の外部観察チームの結論も注目される。 「市指定の改良土は雨にぬれるとヘドロのようになるため、その都度購入して運んでくる必要がある。手間を省くため、 常備している砕石を使って埋めた」。今回、市水道局に改良土の購入伝票の偽造を指摘された業者は、こう打ち明ける。 本来の手順は、掘り起こした土を処分して、市が指定する改良土を購入して埋めることになっている。だがこの業者は、 掘った土を再び埋め戻すなどの不正が広がっていると証言する。 業者間では、不正が見つからないよう改良土を購入した際に受け取る伝票を偽造して、市に提出する手口が横行してい るという。この業者は、不正は20年以上前からあり、市職員も知っていたはずだと指摘する。 不正の最大の動機は、利益の確保だという。市水道局によると、配水管工事の発注は年間約120件で計120億円程度。 これに対して業者数は数百にのぼる。この業者は「実際に工事ができる業者は数十社だが、中には関連会社を多数作っ て入札の機会を増やす社もある。発注方法を改めるべきだ」と訴える。最近の入札実績によると、1億円規模の発注工事 に50社以上が入札するケースは少なくない。 市水道局OBは「不正が横行した背景には、市と業者の癒着がある」。実際に工事を任せられる業者数は限られるとして 「能力があり、役所の言うことを聞く業者に対しては、細かな不正は問題にしなかった」と話す。ただ、この日記者会見して 不正の事実を公表した市水道局幹部は「職員の関与については確認していない」と述べた。 (2019. 2. 14 朝日新聞 社会 欄 より) |
![]() 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、米国への批判を抑えつつ、国内の経済に総力を集中させる考えを 鮮明にした。朝鮮中央通信が11日、党中央委員会総会が10日に開かれ、正恩氏が報告したと伝えた。米国との協議をご 破算にしてまで強硬路線には戻れず、制裁の影響を受けている経済に集中せざるをえないようだ。 正恩氏は「自立的な民族経済を土台にし、自力更生の旗を高く掲げ、社会主義建設をさらに進める」と強調。党中央委 への報告では「自力更生」という言葉が計27回、取りあげられた。 正恩氏は昨年4月の総会で、核開発と経済再建の両方を追う「並進路線」に勝利したとして終了を宣言。経済発展に注 力する方針に転換した。韓国・慶南大学の金東葉教授は「並進路線に戻り、ミサイル発射や核実験再開といった強硬路 線には戻れない。経済優先しかない状況だ」とみる。 朝鮮中央通信が6日に伝えた正恩氏の温泉観光地区への現地視察には軍人も同行し、建設作業に動員された軍人た ちを激励。軍によって経済を改善させる姿勢も示していた。 (ソウル=神谷毅) (2019. 4. 12 朝日新聞 国際 欄 より) |
白鵬 日本国籍取得へ 大相撲の横綱白鵬(34)=本名ムンフバト・ダバジャルガル、モンゴル出身=が17日、巡業先の東京都内で取材に応じ、日 本国籍取得に向けた手続きを進めていることを明かした。白鵬は引退後に親方として角界に残る意向を示していたが、外 国籍のままでは親方になれない。白鵬は「あとは結果を待つだけ」と話した。 白鵬は顕著な功績を残した横綱に授与される「一代年寄」として親方になる希望を持っている。過去に一代年寄は大鵬、 北の潮、貴乃花と3人おり、明確な条件はないが、目安は優勝20度とされる。白鵬は歴代最多、42度の優勝を誇る。 (2019. 4. 18 朝日新聞 社会 欄 より) 白鵬 「強いお相撲さん育てたい」 横綱白鵬が日本国籍を取得した。角界の第一人者は、国籍を変えてまで親方になる夢を追った。 白鵬の取材での主なやりとりは以下の通り。 ---今の気持ちは。 「今朝、8時半ごろに知りまして。実感はあまりなかったです。寝起きっていうのもあったかもしれない」 「周りの人に『(強さが)特別だ』と思われるかもしれないけど、(15歳の来日〕当時は全く特別でなかった。痩せっぽち で。稽古を重ね、重ね、強くなった。18年間、相撲一筋でやってきたことが、今日につながったと思います」 「両国(モンゴルと日本)と相撲があるからこそ、ここまで成長した。相撲の発展のために一生懸命がんばっていきた い」 ---お母さんに連絡は。 「これからします。2、3年前から(両親に)相談していて。天国にいるおやじが(生前)、『わが道を行け』と後押ししてく れたのが大きい。 ---指導者になることが可能になった。 「今までは自分の相撲を取ることで頭がいっぱいだったけど、これからは別の道ができる。強いお相撲さんを育てた い。一つの恩返しだと思います」 (2019. 9. 4 朝日新聞 スポーツ 欄 より) |
県、無届け工事96件 土壌汚染対策手続き怠る 県(註…島根)は12日、県が発注した道路や河川などの大規模工事の96件で、土壌汚染を防ぐために法律で義務づ けられている保健所への事前届け出をしていなかったと発表した。事前届け出の対象となる県発注の工事は計179件あ り、このうちの半数強が必要な手続きを踏んでいなかったことになる。 土木部などの担当者が記者会見をし、「職員の制度の認識があやふやだった。深く反省し、再発防止に努める」と謝罪 した。 (中略) 無届けの工事は、土木部が137件中92件、農林水産部37件中2件、総務部2件中1件、企業局3件中1件だった。 (以下略) (奥平真也) (2019. 7. 13 朝日新聞 島根 欄 より) |
私の視点 改正水道法 民営化に道 公営維持で安全な水守れ 鳥取大学教授(細菌学) 藤井 潤(ふじい じゅん) 水道事業の運営権を民間企業に譲渡するコンセッション方式など「民営化」に道を開く改正水道法が10月から施行され る見通しだ。だが民営化で「世界一」と言われる安全、安心でおいしい水道水が確保されるか、大いに疑問だ。水道事業 を担う自治体には慎重な対応を求めたい。 大阪市は今年2月、2012年度以降の水道工事の約7割で指定されたものより安い資材を使った不正が見つかったと発 表した。本紙(2月13日付、大阪本社版)によると不正は少なくとも20年前から横行、「市職員も知っていたはず」と証言す る業者もいて癒着が疑われている。 (中略) 水道法に基づく省令では大腸菌や人命に関わる水銀など51項目の水質基準を定める。110種余りの農薬についての水 質管理目標も設定されている。人口密集地では地表水が、糞便(ふんべん)に含まれる病原微生物によって汚染されやすい。 夏場にはO(オー)157など腸管出血性大腸菌などによる食中毒も多く発生するため、残留塩素の濃度を高めて対応する。 また塩素に耐性のあるクリプトスポリジウムという原虫は激しい下痢を引き起こすので、濾過(ろか)と紫外線照射で対処 する。こうした技術は、明治以来の経験を積み上げた「職人技」とも言うべきで、日本の水道は「世界遺産」に匹敵するも のだ。 少子高齢化で水需要が減る一方、高度経済成長時代に広がった水道管は老朽化し、耐震化も必要だ。コストは大きく、 水道経営が厳しくなるのは事実だ。だが、民営化論者は、聞き慣れない「コンセッション」という言葉を使い、すべてが解 決するかのような幻想を振りまき、国民の間で議論が深まらないままに法律が改正された。民営化で業者の利益が優先 されるのではないか。 (中略) 水は命の源と言われる。国民ひとりひとりがもっと関心を持つことも大事だ。水道水という世界遺産を守るため、必要な 税金を支払う覚悟も必要だ。行政当局は長期的ビジョンをたて広域化や無駄の排除などを徹底して、公営を維持すべくあ らゆる方策を探るべきだ。民営化に安易に頼ってはいけない。 (2019. 4. 9 朝日新聞 オピニオン 欄 より) |
「教委いらない」 大阪知事が批判 吹田のいじめ放置で 大阪府の吉村洋文知事は14日、吹田市の小学校が女児のいじめの訴えを1年半放置していた問題に絡み、「教育委員 会制度は廃止したほうがいい」と述べた。非常勤の教育委員が教育行政の方針を決めていることに対し、選挙で選ばれ た首長が責任を持つべきだと主張。その上で、近く府内の教委の担当者を集めて、いじめの対応について改めて協議す る方針を示した。 吉村知事は、吹田市での問題について、同市教委の対応を「(いじめへの)感度が低い。 どこまで本気でやっていたの か」と批判。「制度自体が今の時代にマッチしているのかをもう一度考えるべきだ」と指摘した。 (2019. 6. 15 朝日新聞 社会 欄 より) |
![]() 輝く海よ いつまでも 俳優・歌手 加山 雄三さん 自分にとっての「ザ・ベスト」というならやっぱり「海」ですね。 小さい頃から海岸近くに住んで海に親しみ、やがて船であちこち行く喜びを知るようになって、多くのことを学びました。 海にはしけの時もあれば凪(なぎ)の時もある。どの季節がしけで危ないかもわかってくる。 人生も海と同じ。しけの時ほど多くの人の助けがないと、乗り越えられない。 昨年4月、静岡県の漁港に係留していた私のクルーザー 「光進丸」 が全焼したときも、そうでした。沖縄でのコンサート の打ち上げの最中に火災を知らされました。自ら設計し、建造から約40年。老朽化が原因でしょう。ショックでした。相棒 のような存在でしたから。 でも地元の消防団など、みなさんが懸命に消火にあたってくれ、最小限の被害で済んだ。本当に感謝しています。その 時 「これからは人に役立つことをしろ」 と天に言われたような気がしたんです。 日本セーリング連盟と組んでこの3月18日、「海 その愛基金 海洋環境クリーンプロジェクト」を発足させました。海が 微細なプラスチックごみに汚染され、生態系を脅かす地球的問題になっている現状を、様々な活動を通じて知ってもらう のが目的です。4月からのコンサートで協力を呼びかけ、収益の一部を寄付にあてるつもりです。 日本は海産物をはじめ、海から多くの恩恵を受けてきました。何十年と海に接してきた私としては、やるべきことと思っ たのです。 (聞き手・小北清人、写真・仙波理) (2019. 3. 30 朝日新聞 be 欄 より) 経済気象台 持続的な森林管理の心 戦後荒廃した北海道の山に1950年代にかけて、炭鉱の坑木のためにカラマツが植樹された。しかし、相次ぐ閉山で、行 き場のない、しかも同時期に伐採期を迎える大量の木材資源が蓄積された。それが伐採期を迎えているのが、今の北海 道である。 50~100年という植樹から伐採までのサイクルを崩さないように、先を見越し持続的に森林を管理するのが本来の林業 である。それを無視して切り尽くし、その後、同時期に同じ樹種を植えるという目先の対応のツケが回ってきた。 先日、持続的な森林の管理に取り組む道内の林業会社の社長にお話を伺った。森林のサイクルに従った計画的な伐採、 生態系の維持など、目先の経済的利益に相反する取り組みをする理由の一つとして、社員が職場である森林や木材に誇 り・愛着を持ってもらいたいから、と話された。 社長はある思い出話をされた。自宅の庭に先代社長が大切にしてきた桜の木があり、枯れかかったため樹木医を呼ん だ。原因は接ぎ木をした際の2本の大きな鉄の釘。それを取り除き必要な処置を終えた樹木医は木にむかって、「ごめん なぁ、痛かっただろ。許してなぁ」と語りかけたという。社長は目を真っ赤にして言葉に詰まりながら話してくれた。 「自分は同じ木を扱う仕事をしていて、木に対してそんな気持ちで接してきたかと問われたら、そうじゃなかった。そのこと に気付かされた」と。 持続的な森林資源の管理を進めることは簡単ではない。だが、そこで働く人たちが自分たちの仕事に誇りを持てる働き 方とは何か考える先に、その道は開かれるのだろう。なにより、自分が家を建てるなら、そんな人が育てた森の木材を使 いたいと素朴に思う。 (着) (2019. 8. 7 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
山陰合同銀行と野村証券提携へ 山陰合同銀行は26日、証券最大手の野村証券と証券取引に関する業務提携で基本合意したと発表した。山陰合銀グ ループの証券口座をすべて来年度の上期中に野村に移管し、口座管理を野村が、顧客対応を山陰合銀が担い、業務の 効率化を目指すという。 松江市の山陰合銀本店で石丸文男頭取と野村証券の新井聡副社長が会見し、提携の概要を説明した。 石丸頭取らによると、山陰合銀とその子会社「ごうぎん証券」で取り扱う証券口座を会社法の吸収分割で野村に移し、 ごうぎん証券を解散。野村が、松江支店の個人や中小企業などの口座とともに管理するほか、支店の社員らを山陰合銀 に出向させて証券営業を支援するという。 石丸頭取は「ごうぎん証券を設立した4年前は収益性が高かったが、その後、手数料収入が下がり、経営課題になって いた。野村証券と提携して互いの強みを生かすことは、地域のメリットにもなる」と強調した。 (2019. 8. 28 朝日新聞 経済 欄 より) |
「裏切り、許さない」=トゥンベリさん、怒りの演説
【ニューヨーク時事】ニューヨークの国連本部で23日、60以上の国の首脳らが気候変動対策の具体策を表明する「気候 |
国際協調を前面 中国が白書発表 建国70年控え 中国政府は27日、「新時代の中国と世界」白書を発表した。建国70周年を10月1日に控え、過去の発展の道のりや将 来の外交方針を示すもので「国際情勢がどう変化しようと、中国は永遠に覇権を唱えず、永遠に拡張しない」と国際協調 の姿勢を前面に押し出した。 外交について、白書は「建国当初に独立自主政策を確立し、相互不可侵や内政不干渉を原則に国際社会に貢献してき た」と強調。習近平(シーチンピン)国家主席が提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」を軸に、さらに開放路線を進めるとした。 急速な経済成長や軍備増強を背景に、国際社会で高まる「中国脅威論」に対しては「根深い偏見や誤解、既得権益を 守るための意図的な歪曲(わいきょく)だ」と批判した。 3万字近い白書の中で、個別の外交関係に言及したのは米国とロシアのみ。米国については「中国は取って代わること を望まない。米国は冷戦思想を捨て、国を正しく認識すべきだ」と指摘した。 (北京) (2019. 9. 28 朝日新聞 経済 欄 より) |
海流発電 黒潮の力を手中に 世界初1年の実証試験 今秋から 日本列島の太平洋側を流れる黒潮のエネルギーを電気に変える、海流発電の実用化に向けた1年間の実証試験が今 秋から始まる。海流発電は季節や時間帯による変動が少なくベースロード電源として期待される一方、発電に適した設置 場所が限られたり、海中の発電装置を保守管理するのに手間がかかったりする。実用化には、発電コストをいかに下げ られるかが課題だ。 昼夜問わず安定供給 期待 (中略) IHIプロジェクト推進グループの長屋茂樹主幹は「台風が接近して海が荒れた場合に発電量がどう推移するのか、魚 類やイルカなど生態系への影響がないかといったデータを積み重ねたい」と話す。 黒潮のようなほぼ一定の速さの海流からエネルギーを取り出す海流発電は、安定した発電量を確保しやすいとみられ、 太陽光や風力発電と違って時間帯や天候に左右されにくい、深夜でも発電できる「ベースロード電源」として期待がかか る。IHIによると、発電能力のうち実際にどれだけ発電できるかの「設備利用率」は、太陽光約10%、地上の風力約20%、 洋上風力30~40%に対し、海流は50~70%が見込めるという。 今の技術で海流発電に使えそうな大きな海流は、世界的にも黒潮か米フロリダ沖を流れるメキシコ湾流くらいとされる。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本発のエネルギー源になりうるとして、2011年度からIHIと技術開 発や海域の調査を進めてきた。IHIの長屋さんは「日本の新たな再生可能エネルギーとして育てたい」と意欲を示す。 送電・保守管理の費用 課題 (中略) 再生エネに詳しい野村総合研究所の蓮池勝人上級コンサルタントは「海流発電が実用化しても、今後5~10年で 温室効果ガスの排出を大きく削減するほどにはならないだろう」と冷静に分析する。コスト減はいかに大規模にできるか が鍵という。 「それでも、燃料を輸入に頼らずにすむ日本ならではの新たな選択肢として、可能性を追求する意義はあ る」と語った。 (今直也) (2019. 9. 5 朝日新聞 科学 欄 より) |
ひと 広島県の過疎の集落で、まちおこしをする「宇宙博士」 井筒 智彦(いづつ ともひこ)さん (34) 広島県北広島町にある過疎の集落で、宇宙飛行士に扮し、子どもたちに宇宙の魅力を伝えている。「宇宙博士」が開く流 れ星観測会など年に10回以上のイベントはソーシャルメディアや口コミで広まり、計6千人余りが参加。「夢や希望を見つけ てほしい」と語る。 東京都出身。高校生のころ、テレビで見たオーロラ研究者の特番で、美しく謎に満ちた現象にひかれた。東大大学院でオ -ロラを研究し、理学博士号を得た。 転機は大学院生だった2011年冬。起業や田舎暮らしを学ぶため、北広島町の芸北地区で1カ月暮らした。地区に住む 2100人の半数は65歳以上で、年間に生まれる子は10人前後にとどまる。研究だけでなく、社会と直接関わる仕事がしたい と思っていた。「ここを消滅させない」と決めた。 先に東京から移住してカフェを営んでいた植田紘栄志(ひさし)さん(48)に誘われ、6年前に転居した。手がけたのが、地区 の自然と澄んだ星空を組み合わせたイベントだ。「子どもと一緒に楽しめる」「クイズが面白い」と好評で、宇宙飛行士を志 す子も出てきた。 米作りや狩猟にいそしみながら、町の「観光大使」としてテレビ出演や講演をこなし、宇宙にちなんだ本も近く出版する。 「田舎と都会を宇宙でつなぐまちおこしのモデルを確立し、世界中から人が訪れる町にしたい」 文・清水康志 (2019. 9. 7 朝日新聞 総合2 欄 より) |
技能実習 44事業所が違反 昨年 時間外労働や不払い 島根労働局は、外国人技能実習生を雇用する県内の事業所に対して昨年実施した監督の状況を公表した。63事業所で 労働基準関係法令違反の有無を調べた結果、約7割の44事業所で違法な時間外労働や賃金の一部不払いなどの違反事 項が見つかった。 監督は実習生や出入国在留管理庁などからの情報提供に基づき、何らかの法令違反が疑われる事業所に対して実施し た。主な違反事項は、労働時間15件▽賃金支払い10件▽安全管理9件などだった。 島根労働局によると、1993年の外国人技能実習制度導入後、毎年実施しているが、結果の公表は初めて。実習生の待 遇改善などを盛り込んだ外国人技能実習制度適正化法が一昨年11月に施行されたことも踏まえ、労働局の担当者は「実 習生の労働環境を確認する必要があると判断した」と話している。 (以下略) (長田豊) (2019. 9. 8 朝日新聞 島根 欄 より) 県立中央病院で医療費過大請求 患者らに320万円返金へ 県立中央病院(出雲市)(註…島根県)は29日、2018年6月~今年10月に実施した2295件分のCT(コンピューター断層 撮影)検査で医療費を過大請求していたと発表した。造影剤を安価な後発医薬品に変更したのに、システムの設定ミスで 反映されなかったという。患者らへの返還額は320万2264円という。 病院によると、昨年6月に造影剤を後発薬に切り替えたものの、電子カルテには以前の造影剤が使われたと記録され、 患者や県国民健康保険団体連合会などの保険者に過大な料金を請求していたという。 (奥平真也) (以下略) (2019. 10. 30 朝日新聞 島根 欄 より) |
新型ミライ、燃料電池一新 トヨタ自動車は24日に開幕する東京モーターショーで、燃料電池車(FCV) 「ミライ」の新型を公開すると発表し た。2020年末から日本や北米、欧州などで売り出す予定。14年に発売した現行ミライから燃料電池システムを一新し、 航続距離を約30%伸ばすことをめざす。 FCVは、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電した電気で走る。走行中に二酸化炭素を出さないため、 トヨタは 「究極のエコカー」と位置づける。現行ミライは8月までに世界で約1万台売れた。 (2019. 10. 11 朝日新聞 経済 欄 より) |
フォーラム 日韓関係どう思う ? 波風立つときこそ地域交流 韓国・江原道と友好25周年 平井伸治・鳥取県知事 鳥取県と韓国の江原道は日本海を挟んだ、お隣どうしです。1994年に友好提携関係を結び、今年は25周年です。江原 道で9月3日、崔文洵(チエムンスン)知事と会い、交流の継続を確認しました。道庁では職員の方が総出で迎えてくださりまし た。 日韓の外交関係が悪化するなか自治体交流ができるのは、積み重ねてきた信頼があるからです。スポーツや社会福祉、 文化芸術などの分野で江原道と長年、交流し、人のつながりができています。 ただ、代表団は私を含め6人だけで、文化公演など行事はありませんでした。両国民には、「なぜこんなときに交流す るのか」という声があるのも事実です。慎重に進める必要があります。 鳥取県も江原道も互いに首都から離れた「いなか」です。首都にばかり目を向けていては、展望が開けません。海をま たいだ隣人と、観光や経済交流などで人とモノの往来を盛んにしたい。それは共通の思いです。 米子と韓国・仁川を結ぶ航空便が10月から運休したのは残念です。外国人宿泊者のうち韓国人は最多で、昨年は約5万 1千人、約34%を占めました。しかし7月は前年同月比約6割減りました。 政府同士では譲れない立場があり、波風が立つこともあります。だからこそ地域交流で互いの理解を進め、対立を和ら げる。それこそが自治体外交の醍醐味であり、未来への遺産。そのためには中央の政治を持ち込まないことです。 (聞き手・桜井泉) (2019. 11. 3 朝日新聞 オピニオン欄 より)
戦後の復興期、福岡県旧古賀町に虫好きの小学生がいた。休みごとに、おにぎりと水筒、虫取り網を携えて朝5時か ら野山に入る。コガネムシやハンミョウを追いかけ、ファーブル昆虫記を読みふけった。きのう訃報が伝えられた中村哲 (てつ)さんである▼医師になって5年目。登山仲間とともにパキスタンとアフガニスタンの国境にあたるヒンドゥークシ山 脈に登る。希少種の美しいアゲハチョウが見られるという期待からだった。「もし私が昆虫好きでなければアフガンとの縁 はありませんでした」とのちに語っている▼パキスタン西部の病院で住民の診療を始めたのは、その6年後。だが干ばつ の猛威を目の当たりにして無力感に沈む。「飢えや渇きは薬では治せない」。渇水した村を捨てて人々が難民にならぬよ う、井戸を掘り、用水路を通す壮大な事業に取り組む▼持論は「100の診療所よりも1本の用水路」。清潔な水が飲め、 十分な農業生産ができる村にしたい。2千本の目標を掲げて井戸を掘り、ほかの支援団体が向かわない村々にも率先し て入った▼米同時多発テロの翌月、日本の国会から参考人として呼ばれた。「当地の事情を考えると、自衛隊のアフガ ン派遣は有害無益です」。派遣を急ぐ自民議員から発言取り消しを求められたが、動じなかった▼かの地に根を下ろし て35年。この秋、アフガン政府から名誉市民権を与えられたばかりだった。これほど強固な信念を持ち、遠い国に尽くし た医師をほかに知らない。 (2019. 12. 5 朝日新聞 天声人語 欄より) 抗菌薬処方 6割が不必要 風邪などに効果なし 耐性菌生じる原因に 国内の外来診療で出された抗菌薬(抗生物質)の6割近くが、効果がない風邪などウイルス性の感染症への不必要な処 方だったことが、自治医科大などの調査でわかった。75%は専門医らが推奨していない薬だった。抗菌薬の不適切な使い 方は薬剤耐性菌が生じる原因になるため、研究チームは適正な使い方を呼びかけている。 チームは全国の診療、処方明細書(レセプト)などのデータをもとに2012~14年度に外来診療で処方された抗菌薬と対 象の病気などを調査。年平均約8957万件処方されていた。 抗菌薬が必要とされる疾患に処方されたのは全体の8%にとどまった。56%は風邪や急性気管支炎など通常はウイルス が原因の病気だった。抗菌薬は細菌感染の治療薬でウイルス性の感染症には効果がない。また急性咽頭(いんとう)炎(扁 桃<へんとう>炎や急性副鼻腔(ふくびくう)炎などへの処方が36%あったが、細菌が原因のケースは1~2割のため、効果がない ウイルス性にも多く処方されていたとみられる。 処方された抗菌薬の86%は様々な種類の細菌に効く「広域抗菌薬」と呼ばれるタイプ。耐性菌が発生、増殖しやすいた め、欧州ではまれにしか使われない。 調査した畠山修司・自治医大教授(感染症学)は、「医師は患者に十分に説明した上で必要な場合のみ必要な種類 の抗菌薬を使うという原則をきちんと実践し、患者もそれを理解することが大切だ」と話す。 (大岩ゆり) (2020. 1. 4 朝日新聞 総合3 欄 より)
∇そろばんの上達を願う「新春はじき初め大会」が3日、堺市の百舌鳥(もず)八幡宮であり、市内のそろばん教室に通 う小学生ら約200人が参加した。 ∇子どもらは、約3㍍のそろばんの前に4人ずつ座り1~10桁の読み上げ算に挑戦。「願いましては」のかけ声に合わ せて真剣なまなざしで珠(たま)をはじいた。 ∇かつて読み書きと並び称されたそろばんは、「脳トレ効果がある」と見直しの動きもある。十二支がまた一巡した今 年、「原点回帰」となるか。 (2020. 1. 4 朝日新聞 社会 欄 より) ■裏千家の前家元に仏が勲章 日本とフランスの文化交流に貢献したとして、茶道裏千家の前家元、千玄室(せん・げんしつ)さん(96)が20日、フラン ス政府からレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールを受章した。千さんは「これからも両国の友好に貢献していきたい」 と話した。 東京都港区のフランス大使公邸で同日、授与式があった。ローラン・ピック駐日フランス大使は、千さんがフランス に茶室を寄贈したことや、要人を招いて茶会を開いたことなどを挙げ「フランスと日本の友好のために尽くした」と功 績をたたえ、勲章を授与した。 レジオン・ドヌール勲章はフランスで最も権威のある勲章。五つの等級があり、今回は上から3番目のコマンドゥー ルが授与された。 (2020. 1. 21 朝日新聞 社会 欄 より) |
政界ファイル ▼小泉進次郎環境相「育休取得進まないのは『空気』」 感想は、取ってよかったと思います。お風呂、おむつ替え、ミルクづくりといったことも私は担当している。(育休に)いろ んな思い、賛否両論があった。日本でなかなか取得が進まないのは「空気」と言われている。環境省の職員からも「ボト ムアップだけではなくてトップダウンが必要だから、大臣に取ってもらいたい」と言われた。そういったこともあり、取ろうと なった。 育児に参加して思うのは、育児休業という「休む」という言葉が入っていますが、ぜんぜん休みなんかじゃないですね。 子どもを育てる大仕事をやっている理解をさらに広げていきたい。 (29日、参院予算委員会で) (2020. 2. 1 朝日新聞 総合4 欄 より) |
志位氏、野党連合政権「そろそろ決断を」 小沢氏、歩調合わせる 共産党の志位和夫委員長は9日夜、東京都内で開かれた国民民主党の小沢一郎衆院議員が主催する政治塾で講演 した。共産を含む「野党連合政権」構想について、野党間で合意できるかどうかが今後の選挙協力のあり方にも関わる と主張。「もうそろそろ決断してもいいのでは」と各党首に呼びかけた。 志位氏が小沢氏の政治塾で講演するのは初めて。塾生ら約100人の前で志位氏は、小沢氏との関係について「二十 数年間は立場が異なり、お互いに批判をし合う関係にあった」と説明。「この5年間は野党共闘を進めるうえで、小沢さん を信頼し、さまざまな協力をしてきた」と語った。 志位氏は昨夏に打ち出した「野党連合政権」構想について、「政権をともにする政治的合意が大事だ。そろそろ我々と 一緒に政権を奪っていく決断をしようではないか」と訴えた。 小沢氏は志位氏の講演後、記者団に「共産党になんやかんや言う人もいるが、そんなことを言いながら、共産の票だ けが欲しいというのはとんでもない」と述べ、志位氏と歩調を合わせた。 (寺本太蔵、小林豪) (2020. 2. 11 朝日新聞 総合4 欄 より) |
政界ファイル ▼自民・中谷元氏、検察人事「恣意的介入ないように」 (黒川弘務・東京高検検事長の) 定年延長の法解釈の変更が議論されている。検察は、国民から常に厳正公平と思われなければならない組織。政権 側と一定の距離感が求められ、少しでも疑念を持たれないようにするというのは当然のことだ。かつて宮澤喜一元首 相が「権力者はできるだけ権力を使わないことが大事なんだ」と言われたことを思い出す。この人事も、あくまでも政治 的、恣意(しい)的な介入がないようにしなければならない。 (自民党谷垣グループの会合で) (2020. 2. 27 朝日新聞 総合4 欄 より) 政界ファイル ▼枝野氏と小沢氏が会談 同じホテルで野党4党の選対委員長も会合 立憲民主 党の枝野幸男代表と国民民主党の小沢一郎衆院議員が4日夜、都内のホテルで会談し、次期衆院選の候補者調整な どについて意見を交わした。 会談は枝野氏が呼び掛けた。会談後、枝野氏は朝日新聞などの取材に「自民党と大きな構えで戦っていかなければ ならないという考え方は一致している。『この選挙区はこうしたら勝てるかな』といった話をした」と明らかにした。 一方、小沢氏も会談後に取材に応じ、枝野氏に対して「予算(審議)が終われば、衆院解散はいつでもできる。野党を 結集し、頑張っていこう」と呼びかけたと述べた。 立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党の選挙対策委員長らも4日夜、同じ都内のホテルで会談。次期衆院選の 候補者調整や共通政策、夏の都知事選の候補者選定について協議したとみられ、野党は選挙準備を加速させている。 会談は野党連携を唱える中村喜四郎元建設相(無所属)が呼びかけた。 (2020. 3. 6 朝日新聞 総合4 欄 より) ♯政界ファイル ▼野田前首相、共産・志位氏に「自衛隊を肯定的に認めて」 野田佳彦前首相は26日、 共産党の志位和夫委員長と国会内で会談し、共産が自衛隊を「違憲」とする立場を取っていることを踏まえ、「私は自 衛官のせがれなので、もうちょっと自衛隊の存在を肯定的に認めて欲しい」と要請した。 会談は志位氏が呼び掛けたもので、志位氏は「野党連合政権」構想について理解を求めた。その際、自衛隊を「違 憲」とする共産の考えは「政権に持ち込まない」などと説明したのに対し、野田氏が注文をつけた。志位氏は「(自衛隊 が)災害支援で汗を流していることについて、リスペクト(尊敬)の気持ちを持っている」と答えた。 (2020. 3. 27 朝日新聞 総合4 欄 より) |
地球24時 正恩氏、韓国大統領に親書 韓国大統領府は5日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長から文在寅(ムン・ジェイン)大統領への 親書を4日に受け取ったと発表した。新型コロナウイルスへの感染者が韓国で増えていることを正恩氏が心配し、ウイ ルスに「必ず勝つと信じている」といった内容だったという。文氏も5日に親書を送った。 親書には「文大統領がウイルスを必ず克服できるよう静かに応援する。大統領への信頼は変わらない」といった内容 も含まれていた。正恩氏は朝鮮半島情勢についても触れたというが、非核化に言及したかどうかなど大統領府は内容 を明らかにしなかった。 (ソウル) (2020. 3. 6 朝日新聞 国際 欄 より) |
ニュース短信 🔶城跡に無許可道で津和野町長ら減給 国史跡の津和野城跡に国の許可なく土砂を削って作業 道を作った問題で、津和野町議会(註…島根県)は24日、下森博之町長ら特別職3人の給与を減額する条例改正案を全 会一致で可決した。4~6月の給与を下森町長が50%、島田賢司副町長と世良清美教育長がそれぞれ30%減額する。 (2020. 3. 25 朝日新聞 島根 欄 より) |
専門用語 カタカナ連発に苦言 河野防衛相 河野太郎防衛相が、政府が新型コロナウィルス対応で横文字の専門用語を多用しているとして批判している。外国要 人との会談では通訳を介さず、得意の英語で直接やりとりすることもある河野氏だが、カタカナ語の連発には苦言を呈 した。 河野氏は22日、自身のツイッターで「クラスター」を「感染爆発」、「ロックダウン」を「都市封鎖」と列挙し、 「なんでカタカナ?」とつぶやいた。 河野氏は24日の記者会見でも「日本語でも言えることをわざわざカタカナで言う必要があるのか」と持論を展開。 「分かりやすく説明するのが大事だ」と、厚生労働省に対して言い換えを求める意向も示した。 (山下龍一) (2020. 3. 26 朝日新聞 総合4 欄 より) |
経済気象台 株価暴落どう対処すべきか 2月半ばから始まった世界的な株価の暴落は、3月に入ると前の高値から最大30%の下落を記録した。このような状況はも はや単なる株価の調整ではなく弱気相場の始まりと呼ぶべきだ。 今回の株価暴落の理由だが、その前半部分は昨年秋から特別な理由もなく株価が上がり過ぎたことの反動と言える。その 上昇が世界的な新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに修正されたとみなせる。しかし暴落の後半部分は間違いなく、今 後コロナが経済に与える悪影響を先読みした動きだ。 これだけ世界で経済活動の自粛などが続けば実体経済は今後景気後退に陥り、少なくとも半年は経済成長率がマイナスに なるのではないか。しかし、多少時期は先にずれるにしても、その後経済は回復するだろう。株価はもうしばらく乱高下するだ ろうが経済回復よりも早い段階で回復へ向かうだろう。ただし今年初めの高値を取り戻すまでには数年かかるかもしれない。 感染拡大の最中に回復を語るのは楽観的過ぎるように聞こえるだろう。しかしワクチン製造は可能だろうし、人類はこれま でも新しい病気を克服して存続し繁栄してきた。やがて人々の活動は回復し、そうすれば経済も回復する。 今回の株価暴落と乱高下で、多くの個人投資家も損失を被って自信を喪失しているかもしれない。しかし、こういう時にどう すべきかについては世界的に良い経験則がある。長期投資ならば保有と投資を継続することだ。理由は簡単で、この先実体 経済は回復し、それよりかなり前に株価も回復に向かう。もし下落したところで保有分を売ってしまえば、その後にやって来る 回復を享受できないからだ。 (義) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2020. 4. 3 朝日新聞 金融・経済 欄 より) |
7歳と5歳の子どもが父親と公園にいると、警察官に職務質問された--。本紙の「声」欄に先日、そんな投稿が載った。「自粛 中に遊んでいる」との通報があったという。この春、公園の光景が各地で一変した▼そもそも公園は何のためにあるのか。近 代史を調べて驚いた。明治時代、政府が初めて公園を造ったのは主に防疫のためだった。コレラの伝染は空気中の湿って汚 れた「瘴気(しょうき)」によるものと考えられ、土地を乾かすには空間を開放するのが良策とされた▼「公園は都市の肺である」。 伝染病に苦しんだ欧州で唱えられた説が、維新後の日本にもたらされる。「公園は腐を転じて鮮となす」「精神の洗濯場、空気 の転換場であれ」。文豪幸田露伴も著書で熱く訴えた▼なお多くの人々が巣ごもり生活を送る都市部では、 公園は数少ない 憩いの場である。とりわけ子どもたちには貴重な居場所だ。「立ち入り禁止」のテープが巻かれた遊具は、見るたび悲しい。こ ぞって使用禁止とされたのは自治体の横並びのゆえか▼「批判を恐れた行政が過敏に反応した結果かもしれません」と話す のは立教大の小野良平教授(57)。公園の歴史や設計に詳しい。「そもそも公園はゆとりの場。だれもがふらりと立ち寄って、 ボーッと過ごすことのできる空間であってほしい」▼行く先として公園しか浮かばないのに、行くのがはばかられる。百五十余 年前に「都市の肺」として生まれた場所で、深呼吸も自由にできないのは、皮肉な話であろう。 (2020. 5. 21 朝日新聞 天声人語 欄より) |
米朝首脳会談 北朝鮮が否定 北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)第1外務次官は4日、「米国とは対座する必要がない」などとする談話を発表し、11月の米大統 領選までに米朝首脳会談が行われる可能性を否定した。朝鮮中央通信が伝えた。 崔氏は、米国が北朝鮮への敵対視政策を変えておらず、「対話や取引が成立するのか。会わなくとも明らかだ」と主張。 新型コロナウイルス対応でトランプ政権が米国内で評価を落としていることなどを念頭に、「朝米対話を自分らの政治的危 機を処理するための道具としか見なさない」と酷評し、協議に否定的な考えを示した。 そのうえで、「既に米国の長期的な脅威を管理するためのより具体的な戦略的計算表を練っている」と言及した。「戦略的 計算表」が何を指すのかについては触れていない。 崔氏は、数日前から米朝首脳会談が国際社会で話題になっていたとし、「朝米関係の現実を無視した説で、あぜんとする」 と述べた。 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が最近、米大統領選までに米朝両首脳が「もう一度対話を試みる必要がある」との見解 を示しており、これに反発したとみられる。 (ソウル) (2020. 7. 6 朝日新聞 国際 欄 より) |
「ブラック企業」 呼び方に異論 「黒=悪」 差別に使われてきた経緯 働き手にとって問題のある会社を「ブラック企業」と呼ぶことに、異論が出ています。悪質な職場を分かりやすく共有 ・追及する上で役割を果たしてきた言葉ですが、黒人(Black)などから不快に受け止める声が上がっており、意図はな くても差別を助長しかねないとの指摘も出ています。 (中略) 米国で教えたこともある桃山学院大学の尾鍋智子・准教授(比較思想)は「公民権運動を経た米国などでは、当時の 標語『ブラック・イズ・ビューティフル』が歯止めとなり、黒を悪く表す新たな造語はしない配慮がある。日本語も、英語を 借用するからには責任がある。日本で生まれ育ったり働いたりする黒人も増える中、無神経な和製英語は見直すべき だ」と話す。 かつて日本では特殊浴場を指す言葉として、「トルコ風呂」が定着していたが、トルコ人留学生が「変なイメージを持た れて不愉快」と政治家などに訴え、改称された。最近は米国で起きた黒人暴行死事件などを機に、差別につながる行 動への反発が高まり、欧米の化粧品大手が商品やブランド名から「美白」にあたる文言を外す動きも出ている。 (以下略) 視/点 別の誰かを踏んではいないか 「ブラック企業」という表現に黒人の方々が心を痛めていると初めて知ったのは1年以上前のことだ。以前駐在してい た米国で人種差別問題を何度も取材し、人権をめぐる表現には敏感なつもりでいたのに、なぜ思い至らなかったのか。 ハッとし、猛省した。 複雑な商品も多く、この言葉を使う方々の多くは、劣悪な環境に置かれた働き手を救おうと闘ってきた。でも、その一 方で、別の誰かが「踏みつけられている」と感じているなら、見直す必要はないのだろうか。例えば、自分のアイデンティ ティーを示す名前などが悪い意味の言葉に使われ、「悪気はない」と言われたら? 「言葉狩りだ」と反論する人もいる。だが、移住連の鳥井代表理事は「差別の糾弾は言葉から。そこにどんな意味があ るのか、使う側はブレーキをかけて考えなきゃいけない」と話した。単純な是か非かの議論を超えて、みなさんも立ち止 まって、考えてみませんか。 (藤えりか) (2020. 8. 3 朝日新聞 生活 欄 より) |
金融機関は終了まで適切なフォローを 全国地域生活支援機構 尾川宏豪(ひろひで)理事 顧客のことを知り深く理解しようと努力を重ねる。その姿勢が金融機関側にあれば大きな問題は起きないはずだが、勧誘な ど都合のよい時だけ会おうとするとトラブルはなくならない。 現在、高齢者への販売ルールを持たない金融機関はないはずだが、現場ではルールが形骸化し、トラブルの温床になって いる。例えば、契約時に家族が同席するルールについても「本人が同席は無理と言っている」で済ませず、家族に会う、確認 する努力を金融機関側はどこまでしているだろうか。 金融商品販売では「(顧客の知識・経験・財産の状況などに照らして不適当な勧誘をしてはならない) 適合性の原則」があ る。現状のルールでは、勧誘時の個別商品の判定にとどまっているが、顧客の生活環境や能力は変化するし、運用成果も 変わる。高齢顧客の多くは運用状況を毎日確認するような「セミプロ」ではない。複雑な商品も多く、契約時の内容をいつま でも覚えているとは限らない。一方で、金融機関は頻繁に担当者が変わり、契約時の状況もわからなくなる。これでは問題 がいつまでもなくならない。 金融機関は「売ったら終わり」となりがちだが、顧客にとっては契約時がスタート。金融機関は運用結果を保証できないだ けに、契約段階から終了までの適切なフォローが求められる。 (聞き手・柴田秀並) (2020. 8. 24 朝日新聞 経済 欄 より) |
「新庁舎再考を」 署名1.5万筆提出 松江、住民投票要望 松江市新庁舎の建設中断の賛否を問う住民投票条例の制定を求めている市民団体のための新庁舎建設を求める会」は24 日、1カ月で集めた署名簿1万5314筆を、地方自治法に基づき市選挙管理委員会に提出した。条例制定の請求には有権者 の50分の1以上の3千数百筆の署名が必要だが、それを大きく上回った。 市選管は、25日から20日以内に、署名を選挙人名簿と照らし合わせて有効か無効かを判断する。7日間の署名簿の縦覧期 間を経て、会は松浦正敬市長に対し住民投票条例を本請求。市長が条例案を提案し、市議会が賛成多数で可決すれば住民 投票が実現する。 呼びかけ人の関耕平・島根大教授は「これだけの署名が集まったのは、行政にお任せになってしまって声が上げられな かった市民の不満が顕在化したのではないか」。片岡佳美・同大教授は「市長との対話も呼びかけたい。市長や市議の皆 さんの考えを聞きたい」との考えを示した。 松浦市長は予定通り12月に着工するとしている。 (奥平真也) (2020. 8. 25 朝日新聞 島根 欄 より) |
パナ おいしい土づくり パナソニックはITを活用した土づくりで、全国の中小農家の支援に乗り出す。農家の経験や勘に頼ってき た技術を見える化し、より味や栄養価の高い農産物の生産をめざす。農薬や化学肥料を減らすことも期待でき、 環境に配慮した持続可能な農業につなげるねらいもある。 「味の原点は食材」畑違いの挑戦 IT活用 農家向けサービス 「ニーズがあるのに供給できない。今までのやり方では、この大きな気候変動に対応できない」 今夏に入り、香川県丸亀市で野菜農家を営む鈴木茂昌さんは、こんな悩みを抱えていた。全国的な天候不順で野菜は高 騰。ナスを生産する鈴木さんも出荷を増やしたかったが、思うように収量を上げられなかった。7月は雨続きで8月は逆にほとん ど降らない。「収量や形といった農産物の出来を左右する土づくりを根本的に見直したい」と考えた。 そんな時に農業仲間を通じて知ったのがパナソニックが5月に始めた新サービス「栽培ナビ ドクター」だった。農業の「お 医者さん」をイメージしたサービスで、光合成に欠かせないマグネシウムや有機栽培に必要なミネラル群など27項目を数値で 示し、作物ごとに適した土の改良をアドバイスする。必要な肥料を買うこともできる。 鈴木さんは農地の土を同社に提供し、分析結果が8月下旬に出た。それによると、「マンガンが欠乏」「亜鉛が過剰」など、 ナスが理想とする土壌からはかけ離れた内容だった。鈴木さんは農地の実態を把握できたことから、「アドバイスを元に肥料を 加え、定期的に土の状態をチェックしたい」と話し、ホウレンソウやアスパラガスの土づくりにも生かしたいという。 パナソニックはなぜ、このサービスを始めたのか。 サービスの責任者を務める新居道子さんは「調理器だけでは限界がある。おいしさを追求したら、食材にたどり着いた」と 説明する。新居さんは、もともとは同社で電子レンジの調理機能などの開発を担当していたが、2014年にこのサービスのメン バー募集に手を挙げた。当初は滋賀県のメロン農家に「弟子入り」し、農業を一から学んだ。そして農産物と土づくりの関係が 直結していることを実体験で確認し、数値化などに取り組んだ。「ど素人だったからこそ、なぜを追求し、優れた農家の経験を 新規就農者でも実現できるサービスにつなげられた」と新居さんは振り返る。 サービスの主なターゲットは、こだわりのある農産物づくりをめざす中小の農家だ。収量を増やしたり、形をそろえたりするの はもちろん、糖度の高いモモや酸味のあるトマトといった味の調整も土壌の準備段階からサポートする。農薬や化学肥料の無 駄な使用も少なくなり、環境負荷を抑えられるという。 土壌診断の料金は1回につき税抜き5千~1万5千円(現在は初回のみ無料)。北海道のコメや熊本のトマト、長野のブドウ などを栽培する約300軒の農家からすでに依頼を受けているという。生産に関するデータが集まれば集まるほど、土壌改良の 精度も向上する仕組みで、事業を広げて3年後に売上高を30億円にする計画を掲げる。同社はトマトの自動収穫ロボットの実 験や、調理家電と関連する食材の宅配サービスの事業も始めており、土づくりとの連携も視野に入る。 国も農業とITを融合した「スマート化」に着目する。農林水産省中国四国農政局の森寛敬・香川支局長は「無人トラクター やドローンなどハード面のビジネスは増えてきたが、農地に根ざしたものは新しい。土づくりは農業の基本で、こうした取り 組みの広がりを期待している」と話す。 (西尾邦明) (2020. 9. 2 朝日新聞 経済 欄 より) |
ニュース短信 🔶郵便物など4千件配達せず 日本郵便中国支社は1日、江津市跡市町の跡市郵便局の20代の女性社員が、2018年6月~20年8月ごろ、郵便物やゆう メール計約4千件を配達せず、自宅と自家用バイクに隠匿していたと発表した。同社によると、女性社員は隠匿を認め「配達 しきれず、隠してしまった」と話しているという。 同社によると、8月27日に「郵便物が届かない」と連絡を受けて判明したという。同社は「関係者に多大なるご迷惑をおかけ することになり深くおわびする」とコメントを発表した。 (2020. 9. 2 朝日新聞 島根 欄 より) |
元慰安婦支援団体 補助金不正か 韓国 前理事長を在宅起訴 韓国の元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(旧挺対協)による寄付金の不正流用疑惑で、ソウル西部地検は14日、団体の前 理事長で与党「共に民主党」の国会議員、尹美香(ユンミヒャン)被告(55)ら2人を補助金管理法違反や詐欺、義務上横領などの罪 で在宅起訴した。国や地方公共団体から計約3億6500万㌆(約3268万円)の補助金を不正に得たなどとされるが、尹氏は全面 否認している。 地検の発表によると、尹氏らは、運営する「博物館」に学芸員がいないなど、国が定める博物館の登録要件を満たしていない のに、事実を隠して文化体育観光省とソウル市に補助金を申請。2013年から今年にかけて、計約3億㌆を不正に得た。元慰安 婦支援事業を行う女性家族省からも、実際の目的とは異なる名目で補助金計約6500万㌆を不正受給した。 さらに、尹氏らは認知症の元慰安婦に本人の意思を十分に確認せずに、団体に計7900万㌆を寄付させたという。尹氏は11年 1月から今年5月にかけて、団体に集まった寄付金や経費などを自らの口座に送金し、計約1億㌆を個人的に使ったとされる。 このほか、尹氏は民間企業から慰安婦支援事業の目的で寄せられた寄付金を使い、13年にソウル郊外の京畿道安城市にあ る土地と家を、市場価格よりも高値で購入し、団体に損害を与えた罪にも問われた。尹氏はこの家を市民団体や個人などに約 50回貸し出し、宿泊業の届け出をせずに宿泊料計約900万㌆を受け取ったという。 尹氏は在宅起訴後にコメントを発表し、「裁判で潔白を証明する」と全面否認。 「30年の運動の歴史と大義は否定されない」として、今後も活動に関与していく考えを強調した。 支援団体は1992年以降、毎週水曜日にソウルの日本大使館近くで「水曜集会」を開催するなどして、日本政府に謝罪と法的 賠償を要求。尹氏は理事長を務めていたが、今年4月の総選挙に当選し、国会議員に転身した。ところが、活動を共にしてきた 元慰安婦の李容洙(イヨンス)さん(91)が5月に、団体が募った支援金は「(元慰安婦のために)使われていな い」と告発。「(尹被告 は)国会議員をやってはいけない」とも訴えた。 この後、検察は団体事務所の家宅捜索や、尹氏ら関係者への任意聴取を行うなど、捜査を続けてきた。(ソウル=鈴木拓也) (2020. 9. 15 朝日新聞 国際 欄 より) |
♯政界ファイル ▼立憲・枝野代表、当面の政策課題「共産と相当共通点ある」 立憲民主党の枝野幸男代表は23日、日本外国特派員協会での記者会見で、共産党との連携について「天皇制、日米同盟に 対する考え方など我々とは明確に違っている」とする一方、「3年、5年、10年くらいの間にやらなければいけないことにつ いて相当な共通点がある。どこまで連携できるのか、双方に最大限の努力をするという認識では一致している」と語った。 これを受け、共産の小池晃書記局長は同日の記者会見で「大変心強い発言だ。最大限連携できるよう努力したい」と歓迎した。 (2020. 9. 24 朝日新聞 総合4 欄 より) |
∇ 戦国武将の織田信長が築いた安土城(滋賀県近江八幡市)の跡近くで14日、新しい自動販売機がお目見えした。 「安土 織田信長自販機」だ。 ∇ 硬貨を入れると、信長を思わせる声で 「おぬしはどれを所望であるか、選ぶがよい」 などと流れる。商品が出 ると 「この度の活躍、誠に見事であった」。 ∇ 威厳のある声の主は、観光客をもてなす武将隊で信長役の加納学さん(57)。 「わしの声が聞け、みな満足であ ろう」。 自慢の声は天下にとどろくか。 (2020. 10. 15 朝日新聞 社会 欄 より) |
日朝交渉 「良い機会」 首相、五輪・パラで 菅義偉首相は5日の参院予算委員会で、来夏に予定されている東京五輪・パラリンピックが日朝交渉の「良い機会」になる との認識を示した。立憲民主党の白真勲氏の質問に答えた。 白氏が「金正恩(キムジョンウン)氏(朝鮮労働党委員長)が(五輪に)来たら会談するか」と尋ねたのに対し、首相は「仮定の質問 にお答えすることは差し控える」としつつも「良い機会だなというふうには思う」と述べた。 橋本聖子五輪相は金氏の招待について、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都などの判断によると説明。「政府として(招 待する)ということにはならない」と強調した。 菅政権は前政権の方針を継承し、拉致問題の解決を最重要課題に掲げる。首相は先月所信表明演説で「私自身、条件を付 けずに金委員長と直接向き合う決意だ」と語っている。 (2020. 11. 6 朝日新聞 総合4 欄 より) |
地球24時 小泉環境相、米の協定復帰に期待 小泉進次郎環境相は7日、米トランプ政権が脱退した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」について、「誰が大統領になっ ても、パリ協定のように地球規模の課題に米国がいないと実効性が間違いなくそがれる。国際協調、地球規模の課題に米国がし っかりと入ることは間違いなくプラスだ」と述べた。 都内の視察先で記者団に米大統領選の受け止めを問われて答えた。小泉氏は「仮に(民主党の)バイデン候補が勝てば(パリ協 定に)復帰をされる。しかも77日と日数まで宣言している」とも述べ、米国が政策を転換して協定に復帰することに期待感を示し た。 (2020. 11. 8 朝日新聞 国際 欄 より) |
クリーンに、スマートに~すぐそこまで来ている 水素社会 「脱炭素」へ いまが転換点 毎年のように私たちの生活を脅かす異常気象を防ぐには、どんな手立てがあるのか。パネル討論「クリーンに、スマートに~す ぐそこまで来ている水素社会」では、二酸化炭素(CO2)を出さないエネルギーとして期待される水素について話し合った。 九州大学水素エネルギー国際研究センター長の佐々木一成さんは、エネルギー源が高度成長期の石炭から石油の時代を経 て、いまが「脱炭素」という転換点にあると説いた。 佐々木さんは、水素で発電する燃料電池をやさしく解説。事例として水素自動車を挙げた。九大には、10年後の水素社会を体 験できる設備があり、「大学は未来が見えるタイムマシン。子どもらに体験して欲しい」と呼びかけた。 岩谷産業は液体水素を供給している。取締役水素本部長の津吉学さんは、オーストラリアで褐炭から水素を作る事業や、福島・ 浪江町で太陽光から水素をつくる最先端のプロジェクトを説明した。同社の創業者岩谷直治さんが80年前から水素に注目してい たことを紹介。「水素社会の実現が我々の夢」と結んだ。 パナソニックは燃料電池の製造・販売を手がけている。スマートエネルギーシステム事業部長の寺崎温尚さんは「災害が起きて も停電しにくい社会を整えたい」と事業の意味を強調。会場に持ち込まれた燃料電池を前に、来年の東京五輪の選手村跡地に 5㌔ワットの燃料電池を24台設置する構想を説明した。2年後には700㍗機を出荷する計画も明らかにした。 大学人と企業人 連携が欠かせぬ 「現実的な議論がしたい。水素社会の夢を語るだけでなく、課題もきちんと説明しよう」。事前の打ち合わせで佐々木一成さんか ら提案があった。共通に挙げたのが価格だ。岩谷産業が自動車に提供している水素価格は1立方㍍、約100円。ただ、これはガ ソリンを意識した価格。政府は10年後の目標価格を現在の3分の1にする。将来の水素社会を支え、リードするのは、いまの20代 が中心だろうか。よりよき未来社会を継承するためにも、大学人と企業人の連携が欠かせない。(コーディネーター・多賀谷克彦) (2020. 11. 4 朝日新聞 13版 S 欄 より) |
▼共産の志位氏、委員長就任20年 共産党の志位和夫委員長は24日、委員長就任20年を迎えた。2000年の 就任後、自民党、民主党の両政権で計9人の首相と対峙(たいじ)。安倍政権下で安全保障法制が成立した15年には、野党共闘路 線へと大きく転換した。 共産は最近、日本学術会議の任命拒否や「桜を見る会」などの問題で、党独自の調査力を生かした追及を見せ、野党内での 存在感を高めている。小池晃書記局長は24日の記者会見で「市民と野党の共闘で、共産党を除くという壁がなくなり、政権を奪 取するというところまでやってきた」と、志位氏の路線を評価した。 (2020. 11. 25 朝日新聞 総合4 欄 より) |
経済気象台 トランプの遺産 米国の新大統領はバイデン氏にほぼ決まった。内外で分断と対立をあおり、公然とうそをまき散らしたトランプ氏はホワイ トハウスを去る。バイデン氏は新型コロナ対策の強化やパリ協定復帰などを進め、現政権下で傷付いた信頼を取り戻そうと するだろう。多くの人々がホッとしているはずだ。 しかし、7400万人(47%)もがトランプ氏に票を投じた事実を忘れてはいけない。出口調査によれば、男性、白人、非大卒・ 低所得労働者がトランプ支持層の岩盤といわれるが、彼が敵視した移民の間でも支持が増えていた。想像以上に広く強固 な基盤の上に立っていたということだ。 背景にあるのは、これまでないがしろにされてきた「普通の労働者」の怒りではないか。レーガン以降の政権や専門家は、 市場競争やグローバリゼーションが皆を豊かにすると主張し、規制緩和や自由貿易を進めた。だが、豊かになったのは資 本家や高学歴エリートなど国民の一部。労働者の多くは不安定な低賃金労働を甘受させられた。所得水準が親世代を上 回る子供世帯の割合は8割から5割へ落ち、アメリカン・ドリームはしぼんだ。政治家らはそれを放置してきた。 こうした状態に異議を唱えたのがトランプ氏だった。中国への敵意や自由貿易からの離脱、新型コロナ感染拡大リスクの 軽視と早急な経済再開は、いかに非合理でも、自らに寄り添うものと「普通の労働者」には思えたに違いない。 だとすれば、彼らを重視しなければ政権を維持できないという政策的遺産を、トランプ氏が残したことになる。バイデン新 大統領だけでなく、日本を含む世界の指導者が考慮しなければならない現実である。 (山人) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2020. 12. 8 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
水素の商用化へ 88社が団体設立 国へ提言めざす 水素を活用した技術の普及などに取り組む新たな業界団体「水素バリューチェーン推進協議会」が7日、発足した。トヨタ自 動車や三井住友フィナンシャルグループなどを中心に、石油元売り大手や金融大手、電力大手、物流など幅広い分野の民間 88社で構成。温室効果ガスの削減につながる水素を車や発電所で使う燃料として普及させる規制緩和などについて話し合い、 来年2月に政府へ提言することをめざす。 政府は2030年ごろの水素の商用化をめざし、販売価格をいまの3分の1以下に下げる目標を掲げる。 (2020. 12. 8 朝日新聞 経済欄 より) |
「省庁 電力の30%を再生エネで」 河野氏・小泉氏訴え 河野太郎行政改革相と小泉進次郎環境相が10日、すべての府省庁の施設で使う来年度の電力について、30%以上を再生可能 エネルギーで調達するよう呼びかける共同会見を開いた。 河野氏は防衛相だった昨年、自衛隊の施設で再生エネの比率を上げていく試みに着手。151施設のうち115施設で30%以上の 調達ができたという。「若干コストが上がるのかと思ったが、結果として下がった」と振り返り、「多くの基地や駐屯地で達成 できたのでそんなに難しいことはないと思う」とした。 環境省は今年度、所管する新宿御苑(東京)などの9施設で、すべての電力を再生エネでまかなう「RE100」を達成した。環境 省全体としては再生エネの比率は10~15%で、来年度は35~40%になる見込みという。 ただ政府全体で再生エネ比率を把握する仕組みはなく、防衛省や環境省以外の府省庁の実態はわからないという。 小泉氏は公用車も電気自動車(EV)や燃料電池車に切り替えるべきだという考えを示した。また小泉氏は「ちなみにEVに乗って いるのは菅内閣で私だけ。河野大臣もいつかぜひ」と河野氏の「変革」を促した。 (戸田政考) (2020. 12. 11 朝日新聞 総合4 欄 より) |
■「再生エネ比率4割に」 小泉進次郎環境相は15日の閣議後会見で、2030年度の電源構成の目標について「再生可能江エネルギー比率40%以 上を目指す」と述べた。現行のエネルギー基本計画では22~24%が目標だが、日本の国際公約にもなった「50年に温室効果ガス 排出の実質ゼロ」を達成するには、倍の目標設定が必要との認識を示した。 (2020. 12. 16 朝日新聞 総合4 欄 より) |
コロナ中傷 削除促す条例 和歌山県 プロバイダーに協力要請 和歌山県議会は17日、新型コロナウイルスに関する誹謗(ひぼう)中傷を禁止する条例案を可決した。インターネット上で感染を言 いふらしたり、名誉を傷つけたりする投稿をした人に削除を促すほか、プロバイダーに削除協力を求めることなどが盛り込まれてい る。 一般財団法人の地方自治研究機構によると、投稿の削除を促すことやプロバイダーに協力を求めることをうたった条例は全国初 という。 条例は、感染やその恐れがあること、店などが感染防止対策を取っていないことなどについて、それが事実かどうかにかかわらず、 ネットや貼り紙などで誹謗中傷することや、本人の同意なく公表されていない情報を公にすることを禁止する。また、県は市町村と 連携して、違反行為をした人に情報の削除を促すほか、プロバイダーに削除協力を要請する。県によると、条例制定の検討を始め た10月13日から11月末までに、県内の特定の団体や個人に対し、感染を批判するなどの悪質な書き込みが4件見つかったという。 ネット上の人権侵害問題に詳しい神田知宏弁護士は、プロバイダーへの削除協力について「新型コロナの感染を公表するようなプ ライバシー侵害やサイトの利用規約に違反する書き込みは削除しやすいのではないか」とみるが、「名誉毀損(きそん)を理由に削除 依頼をすることは表現の自由を制約することにもつながる。削除するかどうかは、プロバイダーの判断になる」と話した。 (西岡矩毅) (2020. 11. 18 朝日新聞 社会 欄 より) |
■日弁連会長「罰則反対」 新型コロナ対策として、休業や営業時間短縮の命令に応じない店に過料を科したり、入院措置を拒んだ感染者に懲役刑を科したり する特別措置法と感染症法の改正案について、日本弁護士連合会の荒中(あら・ただし)会長は22日、「人権を軽視するもので、抜本的 見直しがない限り強く反対する」との声明を出した。 (2021. 1. 25 朝日新聞 社会 欄 より) |
■両陛下、国際オンライン会合 天皇、皇后両陛下は12日、お住まいの赤坂御所(東京都港区)で、国際オンライン会合に臨んだ。国連「水と衛生に関する諮問委 員会」の元委員が主催した非公開の会合で、世界の水衛生の現状などをオンラインで情報交換した。 同委員会は2015年まで11年間活動し、天皇陛下は07年から名誉総裁を務めた。今回の会合で、陛下は、06年から同委員会の議 長を務めたオランダのウィレム・アレキサンダー国王に続き、あいさつした。 (2021. 2. 13 朝日新聞 国際 欄 より) |
ニュース短信 (註…島根県) 🔶松江市立病院が課税ミス 松江市立病院は10日、非課税となっている出産入院に関する費用のうち、個室使用料と病衣 料、新生児聴覚検査料に課税していたと発表した。県立中央病院の課税ミスを受けて調査し判明した。対象者は会計データが 確認できる2013年1月~21年2月の計2138人で、返金額は計343万5980円。 🔶大田市立病院も課税ミス 太田市立病院は10日、病衣代と特別室利用代金に誤って課税していたと発表した。県立中央 病院の課税ミスを受けて調査したところ判明した。誤って徴収した分を今後返還するが、人数と金額は調査中という。 🔶済生会江津総合病院でも課税ミス 江津市の済生会江津総合病院は11日、非課税扱いとすべき差額ベッド料と新生児 聴覚スクリーニング検査代金について誤って課税していたと発表した。同病院によると、2020年4月から今年2月の分娩(ぶんべん) は79件で、差額ベッド料を徴収する個室病床は4床あり、対象者の総数を調べて返金するという。 🔶隠岐病院も課税ミス 隠岐の島町の隠岐病院は11日、出産時の差額ベッド料や病衣代などの消費税を誤徴収していたと 発表した。県立中央病院の課税ミスを受けて調査した結果、少なくとも過去5年間、約440人から24万円余りを誤徴収してい たという。返金を進めるとともに、それ以前の徴収状況も調べるとしている。 (2021. 3. 13 朝日新聞 島根 欄 より) |
国内外の全電力 再エネに変更へ セイコーエプソン (EPSON) セイコーエプソンは16日、2021年度中に、国内の工場や事業所で使う電力をすべて再生可能エネルギーに切り替えると発表した。 23年には海外の全拠点も、すべて再エネとする。国内の拠点をすべて再エネだけでまかなうのは「国内の製造業大手では初めて」 (同社)という。 水力や風力などで発電した電力の購入を増やす。不足分は再エネを調達したとみなせる「グリーン電力証書」を購入してまかなう。 電力の購入費などで23年までに計約39億円の費用増を見込む。電力に由来する二酸化炭素は年間約36万㌧だが、再エネを100%に することでゼロになるという。 (2021. 3. 17 朝日新聞 経済 欄 より) |
あの日 あの時 ~過去の投稿から~ 旅館の悲鳴 お役人仕事の国際観光事業が漫遊客を満足させ得るかは疑問で、観光ホテルも低利資金の融通損、建ちぐされに終(おわ)り はしまいか。一体外国からの漫遊客が郷国と同じ生活様式を求めるだらうと考へることが間違ひで、彼等(かれら)は日本の伝統 的な生活様式にふれたいのだ。 従つてホテルの新設より既設旅館の設備の改良の方が適切で、むしろ昔ながらの旅館におけるサービスが、どれほど旅情を そゝるか。タタミの上に敷く寝具もおもしろい。たゞ困るのは日本の便所で、おそらくこれほど非文化的なものはない。日本の旅 館でも、これを文化的にしてもらひたいことは、日本人すら要望してゐる。 外国人誘致にあせつて、むやみにたゞ新しく、新しくとばかり金さへかければいゝやうに思ふのは見当外れ。在来の旅館が観 光ホテル新設に悲鳴をあげてゐるが、静かに設備の改良を策するがいゝ。 (北八生寄) =1931(昭和6)年4月1日 ◇ ◇ 東京本社版をもとに、漢字の字体を改め、一部省略しています。 (2021. 4. 17 朝日新聞 オピニオン 欄 より) |
「原発ゼロ」 元首相3氏、そろい踏み 小泉純一郎元首相は、東日本大震災から10年を迎えた11日、東京都内で講演した。東京電力福島第一原発事故について「人災」 と述べ、持論の「原発ゼロ」を改めて訴えた。 小泉氏は「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が開催したイベントに登壇。原発事故後、国内の全原発が停止していた期間があ ったことに触れ「原発ゼロは無鉄砲でも非現実的でもない」と強調。「野党のみなさんが原発ゼロにしようと言い出して、自民党は原 発必要だ、とやれるかどうか。選挙民は原発をやらせようという方に投票するか、疑問に思っている」と述べた。 小泉氏の講演後には、鳩山由紀夫、菅直人の2人の元首相もあいさつ。鳩山氏が「小泉(元)総理ももう一肌脱いでいただいて、脱 原発で政党をつくって党首になっていただければ、参上したい」と語ると、小泉氏が笑う場面もあった。菅氏は「将棋でいえば完全に 投了の場面なのに、投了しないと言って原子力ムラが頑張っているだけだ」と指摘した。 会議では、細川護熙、村山富市の2人の元首相もそれぞれ「脱原発」「原発ゼロ」求める声明を発表した。 (吉川真布) (2021. 3. 12 朝日新聞 総合4 欄 より) |
津和野社協職員 400万円不正出金 (註…島根県) 津和野町社会福祉協議会は22日、50代の男性職員が、認知症などの人を対象に日常生活を支援する事業の利用者2人の口座か ら計409万5千円を不正に出金したと発表した。町社協はこの職員を20日付で懲戒解雇した。近く刑事告発する方針。 町社協によると、職員は、高齢者や障害者らの生活費の管理などをする自立支援事業を担当。2015年12月から今年2月にかけて、 利用者2人から現金を借りたり、預かったキャッシュカードを使って生活必要額以上を引き出したりしていた。職員は社協の調べに対 し、「借金の返済や生活費などにあてた」と話しているという。 利用者の1人が今年2月、別の福祉施設職員に相談して発覚。被害額は全額町社協が弁済する。同社協の内谷澄男会長は会見で 「社会的弱者を支援する立場の社会福祉協議会の根幹を揺るがす事態で信頼を失墜させた」と陳謝した。 (水田道雄) (2021. 4. 24 朝日新聞 島根 欄 より) 自動車保険金 支払い漏れ1100件 損保ジャパン 損害保険ジャパンは26日、自動車保険金の支払い漏れが約1100件、計約5500万円分生じる見込みだと発表した。車同士の事故 などで、修理費の自己負担額をゼロにする特約を付けていた顧客の情報を担当者が見落とし、本来より少ない保険金を支払ってい た。今後、追加で保険金を支払う。 今年2月中旬、顧客からの問い合わせで発覚した。昨年4~12月だけで72件(約360万円)の支払い漏れが判明しており、さかのぼ れる2013~20年度では約1100件に上る可能性があるという。他の特約も含めて調べ、13年度より前でも誤りがわかれば支払う。問 い合わせは0120・018・863(土日を含む午前9時~午後5時)へ。 (2021. 4. 27 朝日新聞 社会 欄 より) |
■天皇陛下、皇居で田植え 天皇陛下は26日、皇居内の生物学研究所脇の水田で、田植えをした。4月に陛下自身がまいた種もみを栽培した苗で、長さ約 30~35㌢に育ったニホンマサリ(うるち米)とマンゲツモチ(もち米)計20株を植えた。 (2021. 5. 27 朝日新聞 社会 欄 より) |
■土石流 土地所有者らを告訴 20人以上が犠牲になった静岡県熱海市の土石流で、被害者の会が設立され、13日、土砂崩落の起点付近にあった盛り土の安全管 理を怠るなどして住民を死傷させたとして、土地の新旧所有者2人を重過失致死傷容疑などで県警に刑事告訴すると発表した。 盛り土は、神奈川県小田原市の不動産会社が2007年に熱海市に届け出た計画に基づいて造成。県によると、計画通りに造成されず 条例の基準の約3倍(約50㍍)の高さになったと推定されている。土地は11年に現所有者に譲渡された。 被害者の会はこの日会見で、盛り土の安全管理のほか造成工法にも過失があり、土石流の原因になったと指摘。現所有者を重過失 致死傷、前所有者を業務用過失致死傷の容疑で来週にも告訴する方針を示した。 (2021. 8. 14 朝日新聞 社会 欄 より) |
▼小泉氏、再エネ 「36~38%以上を」 小泉進次郎環境相は26日、政府が今秋に改定するエネルギー 基本計画案で、2030年度の再生可能エネルギーの導入目標を「36~38%」としたことについて、「上限は38%ではない」との見 方を示した。計画案を取りまとめた経済産業省に対し、「36~38%以上」とするよう求めていくという。朝日新聞のインタビュー に答えた。 経産省が今月上旬に示した計画案は、意見募集したうえで10月までの閣議決定を目指している。 (2021. 8. 27 朝日新聞 総合4 欄 より) |
経済気象台 固定資産税への疑念 固定資産税という税金の名を聞いたことがある人は多いだろう。 土地・家屋にかかる保有税である。地方自治体は各資産の評価額をもとに算出した税額を通知し、所有者が毎年納税する。 この税金のすごいところは、3年ごとに評価替えをする点だ。約1億8千万筆の土地と6千万棟の家屋を定期的に評価し直してい るのである。 これがいかにすごいことか。同種の税制を持つドイツでは、法律上6年ごとに評価替えを行うことになっていたが、膨大な手間ひ まがかかるため、実際には断念し、旧西ドイツ地域では1964年の評価を使い続けてきたという例があった。ついに憲法裁判所が 違憲の判断を下し、現在はどんな課税標準を使うかで頭を悩ませ、もう時価を基準にするのはやめようという議論も起きている。 日本の固定資産税も「適正な時価」を課税標準としている。土地バブルの時は「地価が高いのは固定資産税が安いからだ」とい う(私見では誤った)議論に踊らされ、評価額を相当引き上げた。その後バブルが崩壊し、地方の不動産はどんどん値下がりした ので、自治体の税収も相当減ってきているはずなのである。 ところが、現実は必ずしもそうなっていない。評価額が実勢を大きく上回る例も目につく。なぜだろうか。 多くの要因が考えられるが、土地では不動産鑑定士に評価を委ねる仕組みにしたことが大きそうだ。鑑定士は課税する自治体 から評価の報酬を得ており、第三者性が薄い。税収を維持したい市町村への忖度(そんたく)が働いているのではないか、との指摘 もある。 時価との連動自体を改めないと、この税制は維持できないのではないだろうか。 (比叡) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2021. 9. 10 朝日新聞 金融・経済欄 より) |
■天皇陛下が皇居で稲刈り 天皇陛下は21日、皇居内の生物学研究所脇の水田で稲刈りをした。 イネは5月に陛下が植えたもので、うるち米のニホンマサリともち米のマンゲツモチ計20株を刈り取った。 皇居内での稲作は、昭和天皇が始め、上皇さま、陛下と引き継がれてきた。陛下はこれまで、稲作の際は長年住んでいた赤坂 御所から車で皇居へ移動していたが、この日は20日に入ったばかりの新御所から水田を訪れた。 (2021. 9. 22 朝日新聞 社会欄 より) ■天皇陛下、オンライン出席へ 宮内庁は27日、10月3日に宮城県で開かれる「第40回全国豊かな海づくり大会」に、天皇陛下が皇居・御所からオンライン で出席すると発表した。皇后雅子さまも体調が良ければ出席する。同大会は、昨年は新型コロナの影響で中止になった。今 年は規模を縮小しての開催となり、陛下もオンラインでの出席となった。 (2021. 9. 28 朝日新聞 社会欄 より) |
白鵬 引退へ 横綱84場所 ・ 優勝45度 大相撲で歴代最多の優勝45度を誇る横綱白鵬(36)=宮城野部屋=は27日、日本相撲協会に現役を引退することを伝えた。 モンゴル出身の白鵬は、親方になるための条件である日本国籍をすでに取得しており、今後は角界に残って後進の指導に 当たる意向だ。 (以下 一部抜粋) 愛した2国 国籍の決断 白鵬の表情を忘れられない。誇らしさと安堵(あんど)に、寂しさと悔しさが混ざっているように見えた。 「わたしは日本人になります」 2017年夏、名古屋。横綱が、ある酒席で口にした。日本国籍は、夢である親方になるのに必要な条件。モンゴルから15歳 で来日し、日本人女性と結婚し、父となり、32歳になっていた。 重い決断だった。白鵬は母国で、「国民的英雄の子」だからだ。 父はモンゴル相撲の横綱で、レスリング選手としてメキシコ五輪で同国初のメダリストになったジジド・ムンフバトさん。 我が子の日本国籍取得に反対していた。でも、親方になって弟子を育てたい。日本と、相撲への恩返しのためだ。 11年3月11日、東日本大震災が26歳の誕生日と重なった。津波で相撲道場が流された街に、力士会の会長として土俵を贈 った。 白鵬の思いにムンフバトさんが折れた。「我が道を行け」と父から背中を押された白鵬は19年、日本国籍を取得。ムンフバト ・ダバジャルガルから白鵬翔となり、言った。「自分の国を愛しているから、日本という国を愛せる」 審判の判定に不満を示したり、千秋楽の優勝インタビューで観客に万歳三唱を促したりした言動を問題視された。だが、白 鵬に問題だという認識はなかったと思う。 横綱になって数年がたった夏、朝稽古後の囲み取材の最中、白鵬が報道陣に尋ねた。「このうるさいの、なんて言うの?」。 セミだった。 日本で生まれ育てば自然と染みつく習慣や知識が白鵬にはない。セミを知らない国から来た白鵬が、日本の伝統文化の 頂点を務めているすごさを改めて感じた。近年、引退していく力士からよくこんな言葉を聞く。「白鵬と同じ時代を生きる事が 出来てよかった」 双葉山の生き写し 大相撲報道に携わって68年目の元NHKアナウンサー杉山邦博さん(90)が印象に残るのは、連勝が63で途絶えた2010年 の取組後の姿だ。双葉山の69連勝の大記録に迫っていたころ。「何事もなかったように淡々と引き揚げた姿は双葉山の生 き写しのようだった。大相撲の伝承文化について一番考えた、白鵬が一番輝いていた時期」と振り返る。八百長問題などで 揺れた角界を一人横綱として引っ張ってもきた。「あの時、白鵬が孤軍奮闘してくれたから今日の相撲界がある。心から 『ありがとう』と言いたい」 (鈴木健輔) (2021. 9. 28 朝日新聞 1面 と 社会欄 より) ㊌ 後藤正文の朝からロック 孤高の横綱 忘れない 横綱白鵬が引退した。 プロのミュージシャンとしての生活をスタートさせたころは、町の練習スタジオに集まって仲間たちと曲作りをする以外に ほとんど仕事がなかった。午前中から近所のスタジオへ行き、夕方には自宅に戻るという日が多く、夕食までの時間を持 て余す生活のなかでテレビの大相撲中継を熱心に観(み)るようになった。 妙に目に留まったのが白鵬だった。しなやかな体つきが印象的だった。上位に定着するにつれて、しなやかさに力強さ が加わり、みるみる体が大きくなっていくのがわかった。 立ち合いの踏み込みから左の前回しを取る相撲が好きだった。彼が鮮やかに相手の前回しに手をかける度、テレビの 画面に向かって「入った」と大きな声をあげた。白鵬の活躍を追いかけながら、僕は大相撲の大ファンになっていった。 2008年の初場所、千秋楽の朝青龍戦は忘れられない一番だ。大相撲史に残る一瞬を目撃しているという実感があった。 ここ数年の白鵬はどんな境地だったのだろう。孤高とも言える強さのなかに、痛みや悲しみを感じることも少なくなかった。 しばらくは、これまで背負ってきた様々な重荷を下ろして、身も心も休めてほしい。素晴らしい成績だけでなく、諸問題に 触れ、空席が目立った大相撲の苦境を支えた横綱であったことを僕は忘れない。 (ミュージシャン) (2021. 10. 6 朝日新聞 文化欄 より) |
共産、候補22人取り下げ 小選挙区 3分の2超で一本化へ 共産党と立憲民主党による選挙協力がほぼ完成した。共産が13日、競合していた22の小選挙区で候補予定者を 取り下げた。衆院選で初めて野党第一党と共産などが協力する「野党共闘」は全国の3分の2以上の小選挙区で候補者 が一本化される見通しになった。 この日、候補者調整に当たっていた立憲の福山哲郎幹事長と共産の小池晃書記局長が国会内で会談。その後、小池 氏が記者会見で取り下げを発表した。 (中略) 今回の取り下げの結果、全国289の小選挙区のうち、立憲、共産、国民民主、社民、れいわの5党の候補者が 一本化される選挙区は200以上になる見通しだ。 共産はこの日、次期衆院選の公認候補として、新たに愛媛4区で新顔の党愛媛県委員、西井直人氏(64)を擁立すると 発表した。 (横山翼、神沢和敬) (2021. 10. 14 朝日新聞 総合 4 欄 より) |
(註…共産党との野党共闘は、かつてない、我が国史上初めての、といっても過言ではない、朗報だ。
今後、発生するであろう、世論による単純解釈・反論は、極力、避けたいものである。)
![]() 高額の手数料を請求 苦情相次ぐ 1700件 総務省が注意喚起 光回線を解約してアナログ電話に戻す「アナログ戻し」をめぐる苦情相談が全国で相次ぎ、総務省が注意を呼びかけている。 NTTを装った電話で「料金が安くなる」などと勧誘し、事後に数万円の手数料を請求する手口が目立つ。 1日、同省がホームページに注意喚起の文書を載せた。代表的な事例では、NTTを思わせる名前の業者から「インターネッ トを使わないならアナログ電話に戻しませんか」と電話で勧誘があり、契約を結ぶと高額の手数料を請求される。解約を申し 出ても違約金を請求されるという。総務省によると、4万円を超える初期費用に月2千円のサポート料を請求された事例もあり、 直近1年だけで少なくとも約1700件の相談が消費相談窓口に寄せられているという。 NTT東日本は「NTTから『アナログ戻し』を呼びかける営業電話はしていない」としている。総務省はアナログ戻しを希望 する消費者は、局番なしの「116」でNTTに問い合わせるよう呼びかけている。 (山本知弘) (2021 11. 4 朝日新聞 経済 欄 より) |
リチウムイオン電池 材料は水 横国大など開発 横浜国立大学や住友電気工業などの研究チームが、可燃性の有機溶媒の代わりに水を材料に使って安全性を高めた新型リ チウムイオン電池の開発に成功した。電池としての性能はやや落ちるが、弱点だった発火事故の心配がなく、急速充電もできる。 3年後の実用化をめざすという。米科学アカデミー紀要に23日発表する。 スマホや電気自動車などに使われるリチウムイオン電池は材料の電解液に可燃性の有機溶媒を使うため、発火事故の恐れが ある。そこで、研究チームは安全性を高めるため電解液に水を採用し、電池の性能を落とさずにすむ電極の材料などを探った。 その結果、モリブデン系酸化物を負極に使うと実用化につながる性能を出せることを発見。急速充電も可能で、充放電を2千回繰 り返しても電池の容量は3割以下しか減らなかったという。 水は高い電圧をかけると電気分解する性質があり、試作した電池は有機溶媒を使う現在の電池に比べると低い電圧でしか使え ない。電池の性能を示す値のひとつ「重量エネルギー密度」は現在の電池のおよそ半分で、同じ容量の電池を作るには、本体の サイズを大きくする必要がある。 それでも、発火の心配はなく、耐久性も高いため、太陽光や風力発電で作った電気をためる蓄電池や、近距離用の電気自動車 などへの応用が見込めるという。横浜国立大の藪内直明教授は「電圧はやや下がるが、安全で寿命が長く、実用化が期待さ れる電池ができた」と話す。 (小堀龍之) (2021 11. 23 朝日新聞 総合3 欄 より) |
共産・穀田氏 「同じ立命大」 泉氏と同窓アピール 共産党の穀田恵二・国会対策委員長(74)は1日の記者会見で、立憲民主党の泉健太新代表(47)に対して「私と同じ立命館大学 の先輩後輩。良き同窓としてつながりがもてればいい」などと述べ、祝意を示した。泉氏が共産との「野党共闘」のあり方につ いて見直す方針を掲げるなか、「同窓」をアピールして秋波を送った。 穀田氏はさらに同大出身者として共産の市田忠義副委員長(78)を挙げ、同大出身者には教学理念の「平和と民主主義」が「共 通する土台」としてあるなどと解説。そのうえで「これからも今の自公政治を変えるためにもともに力を尽くしていきたい」と 続けた。 (2021 12. 2 朝日新聞 総合4 欄 より) |
経済気象台 理解できない税 競売で土地と建物を一括取得した場合、土地と建物の値段をどう案分するか。計算のやり方いかんでは、その後の税負担も だいぶ変わってくる。 この点が争われたケースで、税務署は固定資産税評価額をもとに案分したが、東京地裁は昨年、個別事情を考慮した適正な 鑑定が行われた場合は、その鑑定評価額を使う方が合理的として、納税者側に軍配をあげた。 固定資産税に対しては、このように評価額の合理性をめぐる不満が噴出している。しかし、市町村が適切に対応できていると は思えない。 なぜなら、土地の評価は不動産鑑定士に、建物の評価も大型物件は道府県に丸投げし、そこから資料をもらうだけだからであ る。ひどい場合は、資料を紛失していることもある。特殊事情についての判断も自分でせず、総務省の基準を形式的に当てはめ るだけという情けない状態だ。 納税者からすると、たとえば住民税では、所得は自分でわかっているので、誤って過大に課税されてもチェックできる。とこ ろが固定資産税の場合は、土地も建物も、「適正な時価」とうたいながらも一般の人にはわからない基準で課税されている。 土地の評価額が正しいか、確かめるのは大変だ。情報開示を通じて鑑定資料を取り寄せても、どこの取引事例をもとに算定し たのか、根拠が見えない。建物は「再建築価格」という特殊な評価方法なので、住民はちんぷんかんぷんである。 租税には、予測可能性を通じて恣意(しい)的課税を封じる「課税要件明確主義」が求められる。固定資産税は、この基本原則を 守れていないのではないか。そろそろ抜本的な見直しが必要だ。 (比叡) (この欄は、第一線で活躍している経済人、学者ら社外筆者が執筆しています。) (2021 11.30 朝日新聞 金融情報 欄 より) |
共産への「不安」解消へ資料作成 共産党が、安全保障政策や天皇制に関する党綱領への疑問や批判に応えるリーフレットを作成した。有権者に広 がった「不安」を解消する狙いがある。 「あなたの『?』におこたえします」と題した資料では、天皇制について「与党になったら天皇制は廃止? そんなこと は絶対にしません」と明記した。日米安保条約破棄や自衛隊違憲論を掲げていることについても、「いますぐ自衛隊 をなくそうなどと考えていません」と主張。安保政策の違いを批判され、衆院選で選挙協力の合意を結んだ立憲民主、 共産両党がともに議席を減らしたことも念頭に、「他の野党と意見のちがう問題を政権には持ち込みません」と強調し ている。 (2022. 1. 29 朝日新聞 総合4 欄 より) |
国会で連携強化 野党4会派合意 共産は外れる形に 立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、有志の会の野党4会派は14日に国会対策委員長代理らが会談し、国会での連携 を深めていく方針を確認した。昨年10月の衆院選後に立憲や国民のほか共産党も参加する「野党国対委員長会談」の枠組み がなくなり、野党の協力体制構築が課題だったが、共産が外れる形となった。 会談は立憲が呼びかけた。立憲の奥野総一郎国対委員長代理は記者団に「情報共有の場として、できれば毎週やりたい」と 語り、4会派での会談を定例化したいとの考えを示した。 共産が外れたのは、4会派の一部から難色を示す声が上がったためという。立憲は別途、共産との2党会談を定期化する方 針。共産の小池晃書記局長は同日の会見で「野党としての立場が根本から問われる」との考えを立憲に伝えていることを明ら かにした。 (2022. 2. 15 朝日新聞 総合4 欄 より) |
東急、「100%再エネ」で電車運行 私鉄大手の東急電鉄は28日、4月1日から全8路線で電車に使う全ての電力を実質、再生可能エネルギーに置き換える と発表した。太陽光などで発電されたことを証明する「非化石証書」を電力会社から購入することで、二酸化炭素(CO2)の排 出を実質ゼロにする。全路線で再エネの電気を使うのは国内で初めてという。再エネに置き換えるのは、東横線、目黒線、 田園都市線などの計104㌔で、電車の運行や駅などの施設で年間に使う電力量は約3億5千万㌔ワット時に及ぶ。 (2022. 3. 29 朝日新聞 経済 欄 より) |
志位氏が党綱領解説本 「現実路線」アピール 野党協力につなげる狙いも 共産党の志位和夫委員長が、党綱領を開設した「新・綱領教室」を15日に出版する。昨年の衆院選で党の安全保障政策な どへの批判に十分反論できなかったとの反省から、自衛隊や天皇制の当面の存続を認める「現実路線」をアピール。進展し ない参院選の野党協力にもつなげたい狙いもありそうだ。 「綱領を知ってもらうビッグチャンス。野党共闘でもプラスになる」。13日、志位氏は書籍出版をPRするという「異例」 (党職員)な名目での記者会見を開き、そう強調した。 本では「天皇制廃止」「自衛隊解消」を当面棚上げするなどした2004年の全面改定、中国の覇権主義への批判やジェンダ ー平等の実現を盛り込んだ20年の一部改定を経たいまの綱領を解説した。 昨年の衆院選は政権枠組み合意を立憲民主党と結んだが、「政策が違う党の野合」との批判にさらされて両党とも議席を 減らした。この影響で夏の参院選は協力のめどが立っていない。 志位氏は7日にウクライナ侵攻に関して「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する」と綱領の意図に沿った発言 をしたが、「自衛隊は違憲、日米同盟破棄って言いながらご都合主義」(日本維新の会・松井一郎代表のツイッター)などと議 論を呼んだ。 立憲の泉健太代表は「自衛隊や日米安保は国民共通の前提という認識を共産党も踏まえつつあるのでは」と歓迎した。た だ、日米同盟を外交の基軸とする立憲と考え方に開きがあるのは事実で、共産の発信強化が両党の溝を浮き彫りにする可 能性もある。 (横山翼) (2022. 4. 14 朝日新聞 総合4 欄 より) |
沖縄振興基本方針案を策定 鉄軌道の整備「調査・検討する」 政府は13日、今後10年間の沖縄振興策の指針となる沖縄振興基本方針案をまとめた。領海や排他的経済水域(EEZ)の保全 などをめぐり、沖縄の多数の離島が果たす重要性を強調。観光や情報通信、農林水産業の振興促進をめざすほか、陸上交通 や海運など社会資本の整備も盛り込んだ。 同日開かれた沖縄振興審議会(会長=高橋進・日本総合研究所チェアマン・エメリタス)で「適当」と認められた。今後、 各省との協議を経て、政府方針を正式に決定し、その方針に基づいて県が5月中旬に振興計画を策定する見通し。 方針案では、アジア・太平洋地域と近接する沖縄について「我が国全体の経済成長を牽引(けんいん)する役割も期待される」 と指摘。「海洋資源の利用や領海、排他的経済水域の保全など、海域に点在する離島が担う重要な役割も改めて認識されて いる」と明記した。沖縄の悲願である鉄軌道の整備については、全国新幹線鉄道整備法を参考に調査・検討を進めるとし、 「一定の方向を取りまとめ、所要の措置を講ずる」と記した。 沖縄の振興計画の根拠となる沖縄振興特別措置法は、沖縄が抱える歴史的、地理的な特殊事情などを考慮し、1972年の本 土復帰後、10年ごとに延長を重ねてきた。 (高橋杏璃) (2022. 4. 14 朝日新聞 総合4 欄 より) ▼原子力相「ミサイル防げる原発は世界にない」 山口壮原子力防災相は13日の閣議後会見で、原発 への武力攻撃に対する防衛について 「ミサイルが飛んできてそれを防げる原発はない。世界に1基もない」 と明言した。 ロシア軍がウクライナの原発を攻撃した事態を受け、自民党や自治体などから原発の防衛力強化を求める意見が出てい るが、担当相として厳しい見方を示した形だ。 (2022. 5. 14 朝日新聞 総合3 欄 より)
先の大戦で地上戦の舞台となった沖縄は戦後、連合国による占領が終了した後も長きにわたり、米国の施政下に置かれた。 沖縄復帰はこのような苦難を乗り越え、沖縄県民そして国民全体の悲願として実現した。戦争によって失われた領土を外交交 渉で回復したことは史上まれなことであり、日米両国の友好と信頼により可能となったものだ。 1人当たりの県民所得の向上、子どもの貧困の解消などの課題は、今なお残されている。沖縄の潜在力を最大限に引き出し、 「強い沖縄経済」を実現していく。 復帰から50年が経つ今もなお、沖縄の皆様には大きな基地負担を担っていただいている。政府としてこのことを重く受け止 め、引き続き基地負担軽減に全力で取り組む。これからも、日米同盟の抑止力を維持しながら、基地負担軽減の目に見える 成果を一つ一つ着実に積み上げていく。
沖縄県は多くの国々との交流の中で独特の文化を育み、歴史を刻んできた。しかし先の大戦では凄惨(せいさん)極まる地上戦 により、県民は耐えがたい苦難を経験した。戦後、米国の統治は27年間に及んだが、50年前の本日、日本復帰を果たした。 本土との格差は縮小され、社会経済は着実に進展。今後の発展がますます期待されている。 しかし全国平均に満たない県民所得や、子どもの貧困など、克服すべき多くの課題が残されている。 現在も、米軍専用施設の70・3%が集中し、米軍人・軍属による事件・事故、騒音、環境汚染など、県民は過重な基地負担を 強いられ続けている。 県と政府が共有した「沖縄を平和の島とする」という目標は達成されていない。政府は、国民全体の認識の共有を図り、平和 で豊かな沖縄の実現に誠心誠意取り組んでいただきたい。 (2022. 5. 16 朝日新聞 社会 欄 より) |
■両陛下、みどりの式典出席 天皇、皇后両陛下は18日、東京・丸の内のホテルで開かれた第16回みどりの式典(内閣府主催)に出席した。上皇ご夫妻 から引き継いだ公務の一つで、昨年に続いての出席となった。式典は5月4日のみどりの日にちなんだもの。植物や緑地な どの研究や技術開発、緑化推進運動などで功績のあった人や団体に賞の授与や表彰があった。 (2022. 4. 19 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■陛下、イネの種もみまき 天皇陛下は19日、皇居内の苗代にイネの種もみをまいた。天皇による稲作は、昭和天皇が品種研究や農家の苦労をし のぶために始めたもので、上皇さま、陛下へと受け継がれている。 (2022. 4. 20 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■皇居にカフェ付き休憩所 宮内庁は13日、皇居・東御苑の大手門近くに初のカフェ付きの「大手休憩所」(仮称)を整備すると発表した。コロナ過前 の東御苑は外国人を中心に来訪者が急増し、三の丸尚蔵館の大幅拡充も予定していることから、カフェや売店を備えた 休憩場所のほか、皇室の活動などの情報提供スペースを設ける。運用開始は、三の丸尚蔵館の全館が開館する2026年 を予定している。 (2022. 5. 14 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■天皇陛下が皇居内で田植え 天皇陛下は18日、皇居内の生物学研究所脇の水田で田植えをした。陛下は水色の長袖シャツに紺色のズボン、黒の長靴 姿で水田に入り、4月に自身がまいた種もみを栽培したニホンマサリ(うるち米)とマンゲツモチ(もち米)の苗計20株を植え た。順調に育てば9月に稲刈りをする。 (註…宮内庁提供の写真は省略) (2022. 5. 19 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
■天皇陛下、米大統領と会見へ 宮内庁は20日、天皇陛下が来日予定のバイデン米大統領と23日午前に皇居・御所で会見すると発表した。陛下が外国の元 首らと会見するのは、東京五輪の開会式に出席する各国首脳らとの昨年7月の会見以来。米国の大統領との会見は、2019年 5月に即位後初の国賓として迎えたトランプ大統領夫妻以来となる。 (2022. 5. 21 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■つどいに秋篠宮ご夫妻 秋篠宮ご夫妻は21日、奈良県で開かれた第33回全国「みどりの愛護」のつどいにオンラインで出席した。皇太子時代の 天皇陛下が毎年出席し、代替わりに伴ってご夫妻が引き継いだが、新型コロナの影響で出席は3年ぶりとなった。 式典で、秋篠宮さまは「みどりの愛護活動への取り組みは大変意義深いものであり、皆様のご努力に対し深く敬意を表し ます」と述べた。ご夫妻は式典で表彰された人たちとオンラインで交流。緑と環境を守る活動を継続していくことへの期待を 伝えたという。 その後、関係者が別の会場で記念植樹をする様子を視聴。会場では、事前に収録された、ご夫妻がナラノヤエザクラの 苗木を植える「お手植え」の様子が上映された。 (註…奈良市提供の写真は省略) (2022. 5. 22 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下、沖縄復帰特別展鑑賞 天皇、皇后両陛下は25日、東京都台東区の東京国立博物館を訪れ、「沖縄復帰50年記念 特別展『琉球』」を鑑賞した。 両陛下が展覧会鑑賞などで皇居からお二人で外出するのは約2年3ヵ月ぶりとなる。両陛下は、琉球王国時代に造られ、国 の重要文化財に指定されている「銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁<ばんこくしんりょう>の鐘)」を鑑賞。琉球王国時代の歴 史資料や工芸作品などを興味深そうに見て回り、天皇陛下は関係者との懇談で「色々な地域と交流があって独自の文化が 築かれていることがよく分かりました」と話したという。 (註…奈良市提供の写真は省略) (2022. 5. 26 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
「渋谷マルイ」、建て替えへ 丸井グループは27日、運用する商業施設「渋谷マルイ」を8月28日で休業すると発表した。ビル建て替えのためで、跡地 には地下2階、地上9階の木造建て商業施設を建設、2026年に開業予定という。 現在の渋谷マルイは1971年開業。ファッションの発信基地となったほか、近年はアニメイベントなども手がけてきた。 新しい施設では約6割に木材を使用。鉄骨造りと比較し、約2千㌧の二酸化炭素排出量が削減できる見込み。開業後 は再生エネルギー由来の電力を使うなど、環境負荷の軽減に取り組む。 (2022. 5. 28 朝日新聞 経済 欄 より) |
■両陛下、植樹祭に出席 天皇、皇后両陛下は5日、滋賀県で開かれた第72回全国植樹祭に皇居・御所からオンラインで出席した。新型コロナの影 響により、両陛下が植樹祭にオンラインで出席するのは昨年に続いて2回目となる。式典で天皇陛下は「これからも健全な森 林を育み、木々を木材として循環利用しながら、次の世代、またその次の世代へと引き継いでいくことは、私たちの果たすべ き大切な使命」と述べた。 (註…皇居・御所提供の写真は省略) (2022. 6. 6 朝日新聞 社会 欄 より) |
■東電が社長名で謝罪 東京電力は5日、福島第一原発事故で避難した住民が「ふるさと喪失」の慰謝料を求めた集団訴訟の原告らに対し、「人生 を狂わせ、心身ともに取り返しのつかない被害を及ぼした」と小早川智明社長名で謝罪した。東電が集団訴訟の原告側に社 長名で謝罪するのは初めて。 (2022. 6. 6 朝日新聞 社会 欄 より) |
韓国 新駐日大使に尹徳敏氏 韓国大統領府は7日、新しい駐日大使に尹徳敏(ユンドンミン)・元韓国国立外交院長を起用すると発表した。大統領府関係者は 「いま、駐日大使の最も重要な業務、課題は韓日関係だ。大使として関係改善に重点を置くと考えている」としている。 尹氏は1959年生まれ。米国留学を経て、慶應義塾大で博士号を取得。日本語が堪能で、日韓関係にも詳しい外交研究者と して知られる。2013年から17年まで国立外交院長。日韓関係を重視する尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の対日政策のブレーン でもあり、駐日大使への起用が有力視されていた。 松野博一官房長官は7日の会見で、「日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づき、韓国新政権と緊密 に意思疎通をしていく」と話した。 (ソウル=稲田清英) (2022. 6. 8 朝日新聞 国際 欄 より) |
リンナイ、水素燃料給湯器開発 ガス機器大手リンナイは、水素を燃料に使う家庭用給湯器を開発したと発表した。水素100%で燃焼する家庭用給湯器 の開発に成功したのは世界初だという。水素は燃焼しても二酸化炭素(CO2)を出さず、普及すれば脱炭素につなげられると している。 リンナイの試算によると、日本全体のCO2排出量のうち、約1.5%(約1680万㌧)が同社製のガス機器によって排出されてい る。内藤弘康社長は「化石燃料を使う給湯器を中心にやってきたため、脱炭素で矢面に立たされてきた」と開発の理由を語 る。 リンナイは豪州で実証実験を始めており、2030年ごろの商品化を目指す。 (2022. 6. 30 朝日新聞 経済 欄 より) ■皇后さまが「初繭掻き」 皇后さまは11日、皇居内の紅葉山御養蚕所で、繭を初めて収穫する「初繭搔(か)き」を行った。皇后さまは「わたあめみ たい」などと語りながら、「蔟(まぶし)」と呼ばれる器具から繭を丁寧に外した。順調に育ったことを喜んでいる様子で、作業 にあたった主任らを「大変でしょう」とねぎらったという。 皇室の伝統行事「養蚕」は明治以降、歴代皇后が継承し、約150年続いてきた。皇后さまは2020年から取り組んでいる。 今年は5月11日に「御養蚕始(はじめ)の儀」に臨み、同月19日には天皇陛下とともに蚕に桑の葉を与える「御給桑(きゅうそ う)」を、今月1日には長女愛子さまも加わってご一家で、御給桑と、繭作り用の器具である蔟に蚕を移す「上蔟(じょうぞく)」 も行った。 (2022. 6. 12 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下、交流記念式典に出席 天皇、皇后両陛下は1日、東京都内のホテルで開かれた「日米フルブライト交流計画70周年記念式典」に出席した。同計画 は、学生や研究者らの交流を通じて日米間の相互理解の増進を目的としており、これまでに日本から米国に6600人以上が、 米国から日本に2900人以上が派遣されている。 (2022. 7. 2 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、子どもたちと交流 天皇、皇后両陛下は8日、皇居・御所から青森県むつ市の幼保連携型認定こども園の「よしのこども園」をオンラインで訪問 した。「こどもの日」にちなむ訪問で、これまでは都内の施設が選ばれることが多かったが、コロナ禍の昨年に続いて今年も、 オンラインの利点を生かして遠隔地の施設を訪れた。 両陛下は、施設や事業概要の説明を受けた後、子ども食堂や学習支援などの活動状況を動画で視察。天皇陛下は、利用 する小学生に「外で遊ぶのは何が好きですか」と声を掛けたほか、皇后さまは、子ども食堂の手伝いや学習支援をボランティ アで行う高校生らに「皆さん、もともと、子どもと話すことに関心があったのですか」などと尋ねていた。 (2022. 7. 9 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■天皇陛下、皇居で稲刈り 天皇陛下は6日、皇居内の生物学研究所脇の水田で稲刈りをした。宮内庁によると、今年は天候も良く、実りがいいという。 収獲された米は祭祀(さいし)などに使われる。 (2022. 9. 7 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、パラオ大統領と会見 天皇、皇后両陛下は9日、皇居・御所でパラオのウィップス大統領夫妻と会見した。宮内庁によると、天皇陛下は、パラオの 人々が戦後、戦没者の遺骨の収集などに尽力してきたことに感謝の意を伝えた。大統領は、上皇ご夫妻が2015年に天皇、 皇后両陛下としてペリリュー島を訪問したことは「パラオにとり、誇りであり、和解と平和の大切さを再認識するための重要な 機会となりました」と述べたという。 (2022. 9. 10 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
水素列車 独で運行 1路線すべては「世界初」 水素を燃料にする燃料電池で走る「水素列車」が、8月下旬からドイツ北部で本格的な運行を始めた。1路線をすべて水素 列車で営業するのは世界初という。4年前から試験運転などが重ねられ、安定的に水素を供給する態勢が整った。 この列車はフランスの鉄道車両メーカーのアルストムが開発。ドイツ北部ニーダーザクセン州の公社の下で運営する約 123㌔の区間を走る。1編成で最大約300人が乗車でき、最大時速は140㌔。数カ月後に14編成すべてがディーゼル 列車から入れ替わる。 一度の燃料補給で1千㌔走れるといい、区間の途中に水素ステーションが置かれる。水素1㌔で4・5㍑のディーゼル 燃料の代わりになり、温室効果ガス排出削減が期待される。今後、再生可能エネルギーで水素をつくる「グリーン水素」 に切り替える計画だ。 水素ステーションがあるブレーマーフェルデでの8月24日の式典で、ドイツ経済気候省のウェンツェル政務官は「天然ガ ス価格の高騰で、今はグリーン水素の方が化石燃料より安い。チャンスがある」と語った。 ドイツでは鉄道網の約40%が電化されておらず、欧州各地の地方路線も非電化区間は多い。アルストムの車両はイタリ ア、フランス、オーストリア、オランダなどで導入が検討されている。プパールラファルジュ会長兼最高経営責任者(CEO) は朝日新聞に「普及するための課題は水素の供給態勢など、この事業が回るエコシステムをどう構築するかだ」と話した。 日本では、JR東日本などが水素列車の走行試験をし、実用化をめざしている。 (ブレーマーフェルデ=野島淳) (2022. 9. 11 朝日新聞 国際 欄 より) |
■両陛下が沖縄へ 即位後初 宮内庁は29日、天皇、皇后両陛下が10月22~23日、第37回国民文化祭と第22回全国障害者芸術・文化祭の開会式出席 などのため沖縄県を訪問すると発表した。 両陛下が沖縄県を訪れるのは代替わり後初めて。天皇陛下の訪問は6回目で、皇太子時代の2010年7月に訪れて以来。 両陛下での訪問は2回目で、皇太子ご夫妻として訪れた1997年7月以来となる。 (2022. 9. 30 朝日新聞 社会・総合 欄 より) 戦後生まれの天皇として沖縄初訪問 天皇、皇后両陛下は22日、特別機で沖縄県を訪れた。天皇陛下の沖縄訪問は即位後初めて。戦後生まれの 初めての天皇として、沖縄戦の遺族らと対面した。 両陛下は、18万人以上の遺骨が眠る、糸満市の国立沖縄戦没者墓苑を訪れた。出迎えた遺族らに歩み寄り、 声をかけた。県遺族連合会顧問で前会長の照屋苗子さん(86)は、沖縄戦で父ら家族5人を亡くした。これまで 上皇さまを5回出迎えた。当初抱いていた複雑な思いは、遺族に寄り添う姿勢を見て変わった。「戦争の悲惨さ と平和の尊さを全国に伝えていただき、平和を求める象徴であって欲しい」と話す。 (多田晃子、比嘉展玖) (註…沖縄県糸満市、山本裕之撮影の写真は省略) (2022. 10. 23 朝日新聞 13版 欄 より) 陛下「沖縄への理解 期待」 国民文化祭など出席 天皇、皇后両陛下は23日、沖縄県宜野湾市で開かれた第37回国民文化祭と第22回全国障害者芸術・文化 祭の開会式に出席した。 ミンサー織のネクタイを着用した天皇陛下は「地域や世代を超えた交流の輪が広がるとともに、広く国民の間 に沖縄に対する理解が一層深まる大会となるよう期待しています」などとあいさつ。皇后さまと共に、民謡や琉球 舞踊などで構成されたフェスティバルを観覧し、拍手を送った。 出演者らとの交流もあり、陛下は「島ことばも大切な文化ですよね。大切に使われていくといいですね」と話して いた。 その後、陛下はかりゆしのシャツ、皇后さまはかりゆしのワンピースに衣装替えをし、同市立体育館などを訪問。 三線(さんしん)の練習風景を観覧し、両陛下は「頑張って下さい」と演奏者らを激励していた。 (多田晃子) (註…沖縄県豊見城市、山本裕之撮影の写真は省略) (2022. 10. 24 朝日新聞 社会 欄 より) ■鉄道開業150年 両陛下祝う 日本に鉄道が開業して150年になるのを記念し、国やJR各社などが主催する式典が6日、東京都内で開かれた。天皇皇后 両陛下や政府関係者、鉄道事業者ら約100人が参加し、鉄道文化の発展を祝った。 日本初の鉄道は1872年10月14日、新橋ー横浜間で開業した。式典では、天皇陛下が「おことば」で、「これまで鉄道の発展 に尽力されてきた鉄道事業者をはじめとする関係者の皆さんに深く敬意を表します」と述べた。 (註…代表撮影の両陛下のお写真は省略) (2022. 10. 7 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
「ヤフコメ」投稿 携帯番号登録必須に ヤフーは18日、「ヤフーニュース」のコメント欄について、携帯電話の番号を登録した利用者だけが投稿できるようにする と発表した。11月中旬に設定を変える。不適切なコメントを繰り返すアカウントに「投稿停止」の措置を講じてきたが、同じ利 用者が別のアカウントから投稿を続けるケースがあったとみられる。電話番号の登録を必須にすることで投稿管理の実効性 を高める。 「ヤフコメ」と呼ばれるコメント欄は、ニュース記事とともに閲読者が多く、影響力が大きい。誹謗(ひぼう)中傷や差別的な投 稿への対策が不十分だとの批判があり、対応を迫られていた。 (以下 省略) (渡辺淳基) (2022. 10. 19 朝日新聞 社会 欄 より) |
■両陛下が国際会議に出席 天皇、皇后両陛下は27日、東京都内のホテルで開かれた「GEA(地球環境行動会議)国際会議2022」の開会式に出席 した。 天皇陛下は、地球環境問題に対処し、かけがえのない地球を守っていくことは「喫緊の課題」とし、「末永く地球環 境の惠みを受けることができる未来の実現に向け、活発な議論が行われ、その成果が広く世界に発信されることを期待 しています」と述べた。 (2022. 10. 28 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■ウルグアイ大統領と会見 天皇陛下は28日、皇居・宮殿でウルグアイのラカジェ・ポウ大統領と会見した。 宮内庁によると、陛下は、大統領が新型コロナ対策で難しい取り組みをしてきたことへの敬意を表したという。 大統領 は「ロックダウンや強制的な隔離措置をとらずに国民を信頼し、責任ある自由を呼びかけてきました」と発言。陛下は、日 本も同様に国民を信頼し、様々な対応を行ってきていると紹介し、「しかしまだ完全に乗り切っているとは言えません」と 述べたという。 (2022. 10. 29 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、独大統領夫妻と会見 天皇、皇后両陛下は2日、皇居・御所でドイツのシュタインマイヤー大統領夫妻と会見した。宮内庁によると、大統領は 2011年に天皇陛下が皇太子として訪独時、ベルピュー宮殿に植樹した桜の木が毎年春に花を咲かせることを紹介。「再 びお越し頂き、桜をご覧になって頂ければ」と伝えると、陛下は、当時の温かい歓迎は「良い思い出となっています」と応 えた。 (註…宮内庁提供の写真は省略) (2022. 11. 3 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、元協力隊員と懇談 天皇、皇后両陛下は4日、皇居・御所で、派遣先から帰国した青年海外協力隊の元隊員らと懇談した。宮内庁によると、 懇談した3人の元隊員は、ラオスやルワンダ、ドミニカ共和国に派遣されていた。両陛下は、現地で経営指導をしていた元 隊員や、日系移住者の子どもたちに日本語を教えていた元隊員などから活動の様子を熱心に聞き、苦労をねぎらった。 「どうして隊員に応募したんですか」などと質問し、和やかに懇談したという。 (2022. 11. 5 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、老人クラブ大会出席 天皇、皇后両陛下は8日、東京都墨田区の国技館で、全国老人クラブ連合会の創立60周年を記念した全国老人クラブ大 会に出席した。 天皇陛下は「皆さんのこれまでの経験と知恵を若い世代に伝えつつ、老人クラブが我が国における高齢者の社会参加や 明るい地域づくりのために重要な役割を果たしていくことを期待しております」と述べた。 (2022. 11. 9 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、スパコン見学 天皇、皇后両陛下は12日、兵庫県で開かれる「第41回全国豊かな海づくり大会」に出席するため、羽田空港発の特別機 で同県入りした。海づくり大会は両陛下の定例地方訪問「四大行幸啓」の一つで、両陛下が大会に足を運ぶのは2019年 9月以来。 この日、両陛下は神戸市の理化学研究所計算科学研究センターを視察した。スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を 見学したほか、新型コロナを対象とした飛沫(ひまつ)飛散シミュレーションの説明を聞いた。 (2022. 11. 13 朝日新聞 社会 欄 より) ■秋篠宮ご夫妻、大分へ 秋篠宮ご夫妻が12日、「第45回全国育樹祭」に出席するため大分県を訪れた。新型コロナ禍の影響で、ご夫妻が育樹 祭のために現地入りしたのは3年ぶり。1泊2日の日程。ご夫妻は12日午後、豊後大野市の平成森林公園で樹木の枝打 ちや施肥を行い、補助をしたみどりの少年団員に「いつから少年団に入っているのですか」と話しかけた。 (2022. 11. 13 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下と愛子さま 国宝鑑賞 天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは24日、東京都台東区の東京国立博物館を訪れ、同館創立150年記念、特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」を鑑賞した。天皇ご一家で公の場を訪れるのは2020年1月以来。特別展では、同館の所蔵品の 中から「檜図屏風(ひのきずびょうぶ)」をはじめ国宝の名品などを展示。ご一家は熱心に見て回った。 (2022. 11. 25 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■100周年記念式典に出席 天皇、皇后両陛下は26日、東京都渋谷区の明治神宮会館で「ボーイスカウト日本連盟創立100周年記念式典」に出席し た。天皇陛下は、スカウトの人たちとキャンプや富士登山をしたことは「今でも良い思い出」と述べ、「自然への理解を深め、 自然を友として親しむ心や能力を育むスカウトの活動は、大変意義深いものと思います」とあいさつ。両陛下は、代表スカウ トによる決意の言葉などに拍手を送った。 (2022. 11. 27 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下、障害者週間の表彰式 天皇、皇后両陛下は5日、東京都江東区で「障害者週間」(3~9日)に合わせて開かれた作文やポスターなどの表彰式に 出席した。天皇陛下は、新型コロナの感染拡大による障害のある人や関係者の苦労に言及し、「生涯のある人への支援が 継続され、そのような人々が様々な分野で活躍されていることは大変意義深いことであり、その努力に対し、心から敬意を 表します」と述べた。 (2022. 12. 6 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■陛下、セネガル大統領と会見 天皇陛下は19日、皇居・御所でセネガルのサル大統領と会見した。宮内庁によると、大統領は3月に同国で開かれた「第 9回世界水フォーラム」に、天皇陛下がビデオメッセージを寄せたことなどに謝意を伝えた。陛下も感謝を伝え、同国が直面 する水問題について質問した。 (2022. 12. 20 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
米でメタン作って輸入 検討 東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事の4社は29日、米国で再生可能エネルギー由来の水素と二酸化炭素(CO2)からメ タンガスを生産し、日本に輸入するプロジェクトの検討に入ると発表した。2030年までに都市ガス3社の国内供給量の1%に あたる年13万㌧の生産をめざす。世界最大のプロジェクトになるという。 風力発電や太陽光発電がさかんな米テキサス州やルイジアナ州で水を電気分解して水素を製造し、工場などから出るCO2と 合成させてメタンをつくる。三菱商事が出資する液化天然ガス(LNG)基地の設備を活用し、液化して日本へ運ぶという。合成 メタンは原料にCO2を使うため、燃やしても実質的に大気中のCO2を増やさない「カーボンニュートラル」の燃料として注目さ れている。 (2022. 11. 30 朝日新聞 経済 欄 より) |
■両陛下、比大統領夫妻と会見 天皇、皇后両陛下は9日、皇居・御所でフィリピンのマルコス大統領夫妻と会見した。両陛下が大統領夫妻と対面するのは初 めて。 宮内庁によると、天皇陛下は「先の大戦において多くの人たちが犠牲となったことは残念」としたうえで、今では同国から多く の人たちが来日し、「特に看護師や介護福祉士の候補者が活躍されていることを大変うれしく思います」と発言した。「大統領 夫妻の訪日が両国の友好親善関係の増進に寄与するものと確信しています」と陛下が伝えると、大統領は「自分は両国関係 がさらに広範で深いものとなることについて楽観的であります」などと応じたという。 (2023. 2. 10 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■陛下、トルコへお見舞い電報 トルコで発生した地震による災害について、天皇陛下が同国大統領にお見舞いの電報を送った。宮内庁が9日、発表した。 (2023. 2. 10 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■陛下、水問題シンポに 天皇陛下は18日、東京・六本木の政策研究大学院大学を訪れ、「水と災害に関するハイレベルシンポジウム」を聴講 した。陛下は水問題についての取り組みをライフワークにしている。 聴講後は講演者らと懇談し、陛下は「非常に興味深かったし、これからの研究にとっても非常にためになった」と話し たという。 (2023. 2. 19 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下、受賞者らねぎらう 天皇、皇后両陛下は3日、優れた農林水産業の事業者に贈られる「農林水産祭天皇杯」の受賞者ら7人と皇居・宮殿で面 会し、業績や取り組みをねぎらった。天皇陛下は、ドローンなどを使って水稲や小麦、大豆などの生産作業効率化を図っている 福島県の会社の代表に「東日本大震災の時は大変だったのではないですか」と尋ねていた。 (2023. 3. 4 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、大統領夫妻と会見 天皇、皇后両陛下は7日、皇居・御所でルーマニアのヨハニス大統領夫妻と会見した。宮内庁によると、大統領は 「ルーマニアが直面している重要な問題はウクライナ問題」と言及し、隣国として多くの避難民を受け入れ、人道的な観点か ら生活を支援していることなどを説明。これに対し、天皇陛下は「大統領が人道的な見地から支援をされていることに敬意を 表します」と応じたという。 (2023. 3. 8 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
長引かせた裁判所 猛省を 元刑事裁判官・木谷明弁護士の話 袴田さんを犯人とすることに対する合理的な疑いはとうに生じており、再審開 始の決定は当然だ。裁判官は、警察が証拠を捏造(ねつぞう)するわけがないという固定観念から、無条件に検察が提出した証 拠を信用してきたように思う。 裁判所は、裁判を長引かせて、袴田さんの人生を台なしにしたことを猛省すべきだ。裁判官は、一度出した判決が間違っ ていることを認めたくないとの意識を持ちやすいが、人の判断は間違うこともある。無実の人を救済するという意識を持てるか どうかが、刑事裁判官には問われている。 新旧の証拠 総合的に判断 笹倉香奈・甲南大教授(刑事訴訟法)の話 今回の再審開始の決定は、「新証拠と旧証拠を総合的に判断する」とし た最高裁の理念を踏まえた判断だ。近年はこの理念に反するような判断が見られたが、原点に立ち返った妥当なものだ。検察 官は抗告せず、すぐに再審が開始されるべきだ。 一方、最初に再審開始を認めた静岡地裁決定から9年が過ぎた。再審の規定は刑事訴訟法の制定から75年経っても改正さ れず、不備は明白だ。死刑事件ですら冤罪(えんざい)のおそれがあると改めて示された。救済のあり方の国民的な議論が必要だ。 小沢一郎氏に無罪判決も 東京高裁・大善文男裁判長 再審開始決定を出した東京高裁の大善文男裁判長(63)は、東京地裁の部総括判事だった2012年には、検察審査会の議決 に基づいて政治資金規正法違反の罪で強制起訴された小沢一郎衆院議員に無罪判決を言い渡した。公判では、検事が事実 に反する内容の捜査報告書を作っていたことが判明。判決で「検察庁などで十分調査し、対応がなされることが相当だ」と指摘 した。 今回の再審請求審では、22年12月の三者協議の前に高裁内で巌さんと面会した。同席した姉の秀子さんらによると、 巌さんは「自分は既に無罪になっている」などと話し、大善裁判長は「『うんうん』と聞いてくれた」という。 (2023. 3. 14 朝日新聞 社会・総合2 欄 より) |
日韓トンネル構想 金日成氏は拍手した 旧統一教会創始・文鮮明氏 91年訪朝時 韓国政府が6日、30年が経過した外交文書を公開し、1991年に北朝鮮の故・金日成(キムイルソン)主席と世界平和統 一家庭連合(旧統一教会)を創始した故・文鮮明(ムンソンミョン)氏が会談した際の記録が明らかになった。文氏は東京と ロンドンをつなぐ高速道路をつくる案を提示し、その一部に「日韓トンネル構想」を含めていた。金氏は拍手で応じ ていたという。 公開された文書によると、文氏は91年11~12月に国賓に準ずる待遇で訪朝。教団の関連団体が発行する日刊紙 「世界日報」の故・朴ボヒ社長が同行しており、訪朝後に報告書を提出した。当時、訪朝した人は韓国政府側に報告 することになっていた。 報告書には金氏と文氏が12月6日にハム鏡南道にある公館で会談した際、文氏が自ら提唱していた「世界平和高 速道路建設計画」を説明したと記されている。 文氏は「日本・東京からロンドンまで車で走れる高速道路をつくる案」とした上で、「すでに九州で韓日間の海 底トンネルの建設工事を試験的に開始している」と述べた。さらに、ソウルと平壌を結ぶ4車線の高速道路を建 設し、「『統一路』と呼ばれるのを願う」と語ったという。 文書では、金氏は拍手をしたが「発言はなかった」と記されており、「とても良いという印象を漂わせた」とも されている。 文氏が提唱した日本と韓国を海底トンネルで結ぶ「日韓トンネル構想」には、計画推進のための会合に日本の国 会議員らも参加していたことが明らかになっている。 文氏は1920年に現在の北朝鮮平安北道で生まれ、朝鮮戦争の際に韓国側に逃れた後、54年に教団を創始した。 「反共産主義」を掲げる政治系団体も組織したが、91年の訪朝以降、教団の関連企業が北朝鮮で事業をするなど同 国側との関係を深めた。 韓国外交文書 92年の文氏訪日「入国へ金丸氏保証」記述も 公開文書の中には他にも、92年の文氏の訪日にあたって、自民党副総裁だった故・金丸信氏が「保証」するとして 働きかけ、入国が認められたとの経緯を記した駐日韓国大使が韓国外相に宛てた文書もあった。大使館が日本の外 務省に非公式に問い合わせて得られた情報だとされている。文氏は米国で脱税罪で有罪判決を受けたことがあり、 当初は法務省が日本への入国を許可しない方針だった。 (2023. 4. 7 朝日新聞 国際 欄 より) |
■両陛下、ヨルダン国王と会見 天皇、皇后両陛下は11日、皇居・御所でヨルダンのアブドラ国王夫妻、フセイン皇太子と会見した。宮内庁によ ると、天皇陛下が「ヨルダンは多くのシリアの難民を受け入れたりして、人道面で大変な努力をされていることに 敬意を表します」と伝えると、国王は「中東和平について日本が一貫して積極的に支援し、協力してくれていること を高く評価している」などと応じたという。 ■天皇陛下、イネの種もみまき 天皇陛下は11日、皇居内の生物学研究所脇の苗代にイネの種もみをまいた。((註…宮内庁提供写真省略) 天皇による 稲作は昭和天皇が品種研究や農家の苦労をしのぶために始めたもので、上皇さま、陛下と受け継がれている。陛下 はニホンマサリ(うるち米)とマンゲツモチ(もち米)の種もみ約720粒をまいた。順調に育てば5月中旬に田植えをし、 9月に稲刈りをする。収獲されたコメは祭祀(さいし)などに使われる。 ■秋篠宮ご夫妻訪英 閣議了解 政府は11日の閣議で、秋篠宮ご夫妻が英国のチャールズ国王の戴冠(たいかん)式に参列するため、5月4~7日の 日程で同国を訪問することを了解した。天皇陛下に代わってご夫妻が参列する。4日午前に羽田発の政府専用機で 出発。5日午後(日本時間6日午前)から国王主催のレセプションに出席し、6日午前(同日午後)から戴冠式に参列。 7日午後帰国する。 (2023. 4. 12 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
「水素列車」 2030年代に導入へ JR西、全ディーゼル車を置き換え 鉄道の脱炭素化を進めるとして、JR西日本は12日、約450両あるディーゼル車を、水素を燃料にする燃料電池で 走る「水素列車」に置き換える計画を発表した。水素列車は2030年代の導入をめざす。 JR西によると、ディーゼル車は、中国地方を走る山陰線や芸備線など電線のない「非電化区間」がある路線で使わ れている。30年代にディーゼル車の更新がピークを迎えるという。最終的には全てのディーゼル車を水素列車に置き 換える方針。 水素列車は、JR東日本が昨年、燃料電池と蓄電池を併用する試験車両「HYBARI(ひばり)」を公開し、実証走行を 始めている。 (松永和彦) (2023. 4. 13 朝日新聞 経済欄 より) |
最後の3基停止、脱原発完了 与党内にも温存論、残る火種 ドイツ 【ベルリン時事】 段階的な原発の廃止を進めてきたドイツで15日夜(日本時間16日朝)、最後の原子炉基が送電 網から切り離され電力供給を止めた。 (中略) (図解) ドイツの稼働停止3原発 今後は廃炉の手続きに移る。初めての供給から60年超にわたった原子力事業に終止符が打たれ、脱原発の支持者 らは、「歴史的な日だ」と歓喜に沸いた。一方、エネルギー危機に対する不安は根強く、連立与党内にも温存論が くすぶっている。 (2023. 4. 16 (日) 7. 36 配信 時事通信社 YAHOO! JAPANニュース より) ■天皇陛下の著書、新装復刊 天皇陛下が英国留学中の体験をつづった著書「テムズとともに 英国の2年間」の新装復刊本が22日、刊行 される。1993年に出た旧版に、最小限の手直しや新たに陛下が書き下ろした後書きが加わった。 宮内庁によると、学習院創立150周年の記念事業として復刊の提案があり、陛下の了解のもと、作業を進めてきた。 浩宮時代の83年から約2年間、英オックスフォード大に留学した際の生活、学友や英王室との交流がつづられている。 陛下は復刊本の後書きで、海外へ行ってみたいと思う人が一人でも増えれば、「私にとって大きな喜び」とつづった。 232㌻、税込み1100円。電子書籍版は税込み990円。 (2023. 4. 20 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下が障害者雇用企業訪問 天皇、皇后両陛下は25日、障害者らが働く「サンキュウ・ウィズ」(東京都中央区) を訪れ、視察しながら障害者 と交流した。社内カフェでの業務で、飲み物の表面にミルクで絵を描くラテアートを見て、天皇陛下は「とてもお上 手ですね」、皇后さまは「すごーい」と感心。休憩中にはカフェラテなどを味わい、皇后さまは「体も心も温まりまし た」と話したという。 (2023. 4. 26 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■両陛下、みどりの式典に出席 天皇、皇后両陛下は28日、東京都内のホテルで開かれた第17回みどりの式典に出席した。式典は5月4日のみどりの 日にちなんだもの。植物や緑地などの研究や技術開発などで功績のあった人や団体に賞の授与や表彰があり、両陛下 は拍手でたたえていた。 (2023. 4. 29 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■上皇ご夫妻 京都・奈良訪問へ 宮内庁は1日、上皇ご夫妻が14~18日、京都府と奈良県を訪問すると発表した。上皇さまの退位後、引っ越し作業な どに伴う滞在を除き、ご夫妻が地方を訪れるのは、2019年6月以来となる。 (2023. 5. 2 朝日新聞 社会・総合 欄 より) |
(特派員メモ …………………… 🔷キーウ 「世界2位」すし好きの国で 「ウクライナはすしの年間消費量が日本に次いで世界第2位です」。2月、コルスンスキー駐日大使が投稿した ツイートを出張先のキーウで思わず二度見した。 発言を裏付けるデータは見つけられなかったが、グーグルトレンドによると、2021年にすし関連の検索が多かっ た日本を除く世界の都市トップ5に、ウクライナからオデーサ(3位)、ハルキウ(4位)、キーウ(5位)と3都市も入って いた。 これは試すしかない。キーウのラーメン屋で頼んでみた。巻きずし中心で、サーモンやクリームチーズを具材に使 ったものが多いようだ。シャリは酸味が強く、かつ若干甘め。それでも、私には日本で食べるすしと大差なかった。 キーウを中心に17軒のすし屋を経営するオクサナ・ティホネンコ(46)は昨年、キーウを守るウクライナ軍の兵士 にすしを差し入れた。「こんなにたくさん食べたのは初めて」と喜ばれたという。「鮮度が落ちなければ、東部や南 部の前線にも差し入れたいのですが……」。侵攻前、すし熱が高かった南部オデーサや北東部ハルキウの人た ちが「日常」ですしを楽しめる日が早く戻りますように。 (牛尾梓) (2023. 5. 9 朝日新聞 国際 欄 より) |
全国植樹祭出席 両陛下岩手へ 宮内庁は12日、天皇、皇后両陛下が6月3~4日、第73回全国植樹祭の式典に出席するため、岩手県を訪問すると発表した。 両陛下が岩手県に足を運ぶのは約7年ぶり。合わせて東日本大震災の関連施設も訪問し、被災者らとも交流する。 (2023. 5.13 朝日新聞 社会・総合 欄 より) 天皇陛下、皇居内で田植え 天皇陛下は16日、皇居内の生物学研究所脇の水田で田植えをした。陛下は長袖の水色のシャツに紺色のズボン、黒の長 靴姿で水田に入り、4月に自身がまいた種もみから育ったニホンマサリ(うるち米)とマンゲツモチ(もち米)の苗計20株を植えた。 順調に育てば9月に稲刈りをする。 (2023. 5.17 朝日新聞 社会・総合 欄 より) 天皇陛下、水問題関連施設視察 水問題の研究をライフワークにしている天皇陛下は22日、東京都江戸川区にある閘門(こうもん)「荒川ロックゲート」 を視察し た。水問題に特化した視察や関連施設への訪問は、即位後初めて。 荒川ロックゲートは、最大約3㍍の水位差がある荒川と旧中川の間を船が行き来できるように水面の高さを調整する施設。陛 下は船で閘門内に入り、ゲートの開閉によって水位を調節する様子を、説明を聞きながらカメラで撮影。一定になった水面を船 で通過した。 (2023. 5. 23 朝日新聞 社会・総合 欄 より) ■陛下、戦没船員を追悼 天皇、皇后両陛下は24日、神奈川県横須賀市の県立観音崎公園で開かれた「第50回戦没・殉職船員追悼式」に出席した。 天皇陛下は「先の大戦において志半ばで船と運命を共にすることとなった数多くの船員と戦後、殉職した船員の御霊に深く哀 悼の意を表します」などとあいさつ。太平洋戦争で犠牲になった商船の船員など、約6万3千人がまつられた碑に花束をたむけ 深々と拝礼した。 (2023. 5. 25 朝日新聞 社会 欄 より) ■両陛下、植樹祭に出席 岩手県を訪問中の天皇、皇后両陛下は4日、陸前高田市で開かれた第73回全国植樹祭に出席した。大船渡市の復興商店 街も視察し、集まった人々に久々の予定外のお声がけをし、被災者らと交流した。 植樹祭の式典では、参加者とともに東日本大震災の犠牲者に黙禱(もくとう)。天皇陛下は、「復興に向けた地域の人々のこ れまでのたゆみない努力と大会関係者の尽力に深く敬意を表します」と述べた。両陛下はお手植えとお手まきをした。 陛下はかつて「奇跡の一本松」などから作られたビオラを演奏したことがあり、お手まきの際にはこのビオラも使った演奏が 披露された。 (2023. 6. 5 朝日新聞 総合3 欄 より) |