LOVELY、LOVELY、HAPPY ! - autumn wind -
|
「・・・え、・・・・・あ?・・・」
竜くんが言葉を探すように口をパクパクさせる。
「・・・・・・・・・・まじか」
絶句。といった様子で竜くんは呆然とした顔で私を見た。
まじまじと見られて、居心地が悪い。
そんなにおかしなことだっただろうか。
確かに竜くんにしてみれば私がこんな勘違いしているなんて思わなかっただろうけど・・・
でもでも、竜くんが思わせぶりなのが悪いと思う。
・・・そう思うと、なんだか腹が立ってきた。
「竜くんが悪いんですよ!」
怒って言う。
「やさしくするし、なんか色々言ったりするし、」
竜くんが、わ・私のもの、だとか!
あれには本当にびっくりした。
断り文句にしたって、一応彼女がいる、とか他に言いようがあるのに。
あんな言い方したら、本当に私のことが特別なのかと思ってしまう。
「竜くんが根負けして付き合ってくれてることくらい分かってるのに、からかって!!」
ぷりぷりして言うと、竜くんは更に目を見開いて、驚いた顔をした。
「・・・・・・しん、っじらんねえ・・・まじか・・・」
竜くんは片手で額を押さえて、上を向いてしまった。
「いやまあ俺のこれまでが悪いんだろうけどそれにしたって」
ブツブツと何かを言っている。
「・・・わかるだろ、ふつー」
お手上げといった様子で竜くんがつぶやいた。
「そんなに呆れなくてもいいのに。分かってますよ!」
私が言うと、ますます呆れた目になる。
「・・・わかってねえよ」
はぁー、と竜くんは今日何度目かの溜息をついた。
「・・・伊集院」
「・・・はい」
なんだか吐き出したらスッキリした。
もう竜くんの思わせぶりな態度に惑わされないぞ。
「なんですか?」
肩に手を置かれる。
「? なんですか?」
竜くんの顔が近づいて・・・え、ちょっと、
こ・これって、キ・・・
ガブーーーッ!
「痛ーー!」
ほっぺ噛まれた!!!
「何するの竜くん!」
騙されないとか言ってすぐに騙されてしまった。
竜くんがキスなんて・・・
って、え・・・
唇も・・・
重なった、
と思ったのは一瞬。
「痛ー!」
今度は下唇噛まれた!
「ちょっと竜くん!」
「あーもう、めんどくせえ」
私の抗議の声に竜くんが被せてくる。
「もーどうでもいいわ、伊集院の今までの態度も、今後も、好きにしてくれ。俺も好きにするから」
竜くんが、とん、と壁に手を置く。
いわゆる普通の壁ドンの体勢。
私を見下ろしてにやりと笑う。
「もう、やりたいようにやる」
耳元で言われて、かぁーと頬と体が熱くなった。
がぶっと今度は耳を噛まれて、しかも耳を咥えたまま、
「ま、せいぜい勘違いしないように頑張れ」
と言う。
もう私は立っていられず、ずるずると座り込んでしまった。
顔を真っ赤にして耳を押さえて腰を抜かしてしまった私を、竜くんは満足そうに見下ろして、
「んじゃお休み〜」
と行ってしまった・・・
秋風編おわり
つづく