(下記の文章は、耕雲寺機関誌「2015年1月新春号第226号」に掲載したものです)
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耕雲寺坐禅会秋の禅の集い「鳥海山国際禅堂」に参加して(2015.1.26)
2014年10月11日から13日の2泊3日にわたって、秋田県由利本荘市にある「鳥海山国際禅堂」で耕雲寺坐禅会の「秋の禅の集い」が行われました。参加者は私を含めて4名です。 「鳥海山国際禅堂」は、同市内にある高建寺の佐藤住職が、8年前浄財を集め建立した禅堂です。高建寺は、江戸時代の元禄年間に再建され300年の歴史を持つ曹洞宗のお寺です。以前、耕雲寺の坐禅会の会員であった畠山さんが、このお寺で出家・得度しました。その縁で禅の集いを開催させてもらいました。 「鳥海山国際禅堂」は、高建寺から6キロ離れ、標高700〜800メートルの棚田跡に建てられています。内堂は一畳単が16単、外堂は半畳単が8単で構成されています。禅堂正面からは、東北地方第二の高さを誇る鳥海山のすそ野までが一望できます。また遠くはなれた場所からは、山の中腹の森の一部が開けた場所に、印象的な白い壁が一目で禅堂だとわかるように建っています。
往路は、前日出発する夜行バス組と、当日に新幹線を利用する人に分かれました。禅堂のある最寄りの矢嶋駅は、羽越線羽後本荘駅を始点とする第三セクターが経営する由利高原鉄道鳥海山ろく線の終点駅です。“かかし列車イベント”が開催中であり、一車両で運行する車窓からは、各停車駅のホーム上に、多くのかかしが並べられ目を楽しませてくれます。矢嶋駅では畠山さんが車で迎えにきてくれました。
寝起きは内堂の坐禅をする場所で行います。1泊目は住職に急な檀務が入り、ご一緒できませんでしたが、2泊目は住職とともに内堂で寝ました。 事前に畠山さんから、夜中は10度ぐらいになると聞いていましたので、できるだけ厚着をし、用意してくれた寝袋にもぐり、その上に毛布2枚をかけたおかげで2泊とも快適に寝ることができました。 単を敷いたり、寝袋をひろげたり、パジャマに着替えたり、モタモタしているときに、ひょいと住職のほうに目をやると、すでに横になり熟睡しているようにみえます。 起床は朝4時。1炷坐禅のあと朝課。庫裏での応量器を使用しての粥展鉢(朝食)は、各種の偈を唱えながら玄米のお粥をいただきます。作務(掃除)、坐禅、粥展鉢と同じ作法で玄米をいただく斎展鉢(昼食)、薬石(夕食)、坐禅、9時就寝となります。 午後7時頃から始まる坐禅は、就寝前まで続きます。坐禅のあいだに行われる、眠気をさましたり身体をほぐすための経行(歩き坐禅)は、耕雲寺では全員で一斉におこないます。ここでは、各自、自由に随時に経行廊下や堂内で行ないます。 坐禅の初め、住職の短い口宣(法話)があります。その迫力のある声が堂内にわたり、それに耳をそばだてます。
禅堂の前は芝生です。畠山さんからこの芝生で坐禅をしましょうと言われました。芝生の端から先はなだらかに下がり続け、はるか下の先に民家が点在します。そのさらにはるか遠方に鳥海山が、なにも視界を邪魔することなく雄大にそびえています。 この芝生の端にゴザを敷き、坐蒲を置き、用意した毛布を途中から被り、夕暮れまで坐りました。時折、眠気をとばす冷気がほほにあたります。室内で坐るのと違う自然の息吹を直接感じながら坐り、時間の経つのを忘れます。
禅堂にはお風呂がありますが、鳥海山周辺には温泉が多く、近くの温泉に行きましょうと誘われました。また、あいまに鳥海山の五合目まで車で連れて行ってもらい、湿地帯に渡した木道を歩き、展望台からの眺望を楽しみました。 最終日に矢嶋駅まで送ってもらう途中で、高建寺に寄りお寺を案内してもらいました。敷地はゆったりしています。山門には対の仁王様、鐘楼、墓地には数多くの墓が並び、見上げるような大きな墓もあります。 本堂に続く後ろの棟は開山堂になっています。開山堂には、上下に檀家ごとの位牌檀が数百基並んでいます。この位牌檀には複数の位牌や小さな遺影も置かれています。また各位牌檀にはスイッチで点灯する灯明が備えられています。菩提寺と自宅双方に位牌を祀るのは、この地方では普通に行われているのでしょうか。檀家と菩提寺の近さが感じられました。
今回の禅の集いでは、非日常的な数日を送ることができました。この禅の集いを受け入れていただいた佐藤成孝住職、ご指導していただいた畠山禅悦師、計画していただいた耕雲寺坐禅会に感謝申し上げます。
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