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00-08-13 堀の中の懲りない面々、1986年8月15日、阿部譲二、文芸春秋、1000円

(感想)

現在は、かなりエスタブリシュされた著者のベストセラーとなったデビュー作とも言えるもので、面白く一気に呼んでしまった。著者の飾らない素直な人柄が良く出ている。「泥棒にだって三分の理」はあるという点で、生の声も聞ける。

本年の6月11日にNHK-衛星放送;父をみつめる追憶の旅、世界わが心の旅、で阿部譲二氏が出ていました。現在63才、47年ぶりのロンドンとか。1939年に英国のハムステッドに住んでおり、そこを尋ねたり(当時、父親がロンドンで日本の海運会社の支店に勤めていたとのこと、母親は外交官の娘で、兄は出来が大変によい)、ウインブルドンにある当時入った寄宿学校(日本で中学で成績がわるく、やくざの世界に入り刃傷事件を起こしており、父親がロンドン支店長にたまたまなったので英国につれていかれる)を訪ねたり、その寄宿学校を素行が悪く追放処分で16才で勘当、家出してソーホーでの働き、サザンプトンでのボクシングマッチをたどりました。
本人の裁判に出廷すると、普通は裁判官に情状を求めるがが「親としてなすすべをしらない」と発言して、そのまま出てしまう、という面もあったが子供想いの父であった、という感銘深い番組でした。

堀の中の懲りない面々、1986年8月15日、阿部譲二、文芸春秋、1000円
目次;
木工場のベテランたち、赤軍派兵士の脱獄、大泥棒とトップ・スター、「メエ」と呼ばれる男、ああソフト・ボール開幕、ニセ医者日本一の腕前、結婚行進曲は仕事のメロディー、外人懲役・い駄天カルボ、散髪屋パピヨンの憂鬱、相撲は寄切りに限るわけ、密告屋爺さんに謎の一言、寡黙な男の二度目の殺し、老エゴイストのスゴイ理屈、熱中式錯乱予防術、五人に曳かせたゴムボート、モノクロパンダで2年六月、サムライ工場への出役、プロフェッショナル・トゥール、ダックスフント・その名はケンジ、学士さまは駅伝ランナー、かくしだまの健チャン、泣きバイ脱腹巻次第、面会ぎらいの仕合わせ、あとがき

著者;1937年生れ、麻布中学2年でぐれ16才から渡世生活1975年の秋に小菅拘置所から府中刑務所に送られる。44才で堅気。

(あとがき、抜粋)

再犯刑務所を出所した受刑者の再犯率は80%もの高率だということです。周囲にいてくださった方々のご尽力で懲役大学との縁を切るチャンスに恵まれました。親しかった他の「懲りない面々」にも、それぞれチャンスを掴んでもらいたいと願うのは、人情というものでしょう。