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ニッポンFSXを撃て

ニッポンFSXを撃て、日米冷戦への導火線・新ゼロ戦計画;手嶋龍一(NHK前ワシントン特派員)、新潮社、1991.10.15、1400円

著者;1949年、北海道生れ、NHK政治部記者、外務省、総理官邸、自民党の取材を担当。87ー91年までNHKワシントン特派員。この間、主としてホワイトハウス、国防省などを担当し、ワシントンやマルタ島での米ソ首脳会談の取材にあたる。TVドキュメンタリーには、「消えた哨戒艇ケデュマ」「米ソ艦艇謎のUターン」等、著書には「中ソ国境、国際政治の空白地帯ー」(共著)がある。

第1章;ケビン・カーンズのたったひとりの反乱
あるパーティ、究極の任地(カーンズ1986.1日本大使館・相互安全保障援助室着任)、罪深きニッポン、それぞれのFSX、焦燥、不死鳥の再生、狙われたラビ戦闘機、怒りのカーンズ公電、菊倶楽部

第2章;日の丸FSXの墜落
ジレンマ、ニュー・ゼロファイター、FSXへの道、栗原の怒り、アーミテージの拒絶、オークラ会談、腹芸、三つ巴の空中戦、MOUに勝利せよ、マラソン交渉、クリスマスと正月

第3章;反FSX包囲網
キャピトル・ヒル、権力の真空地帯、仕掛けられた罠、ローズ・ガーデンの出発説明、12人の上院議員書簡、反SFXの政治地図、日本への施し物、迫り来る包囲網

第4章;政権内部のFSX戦争
モスバッカーの野望、隠されていた切り札、洩れた決定、違っていた宛て名、オーヴァルオフィスの対決、リビア疑惑、ターゲットはスリーダイヤ

第5章;舵をきるブッシュ政権
弔問、大喪の礼、エアフォースワン、パワーシェアリング、相互不信の哲学、FSXの前哨戦、秘密サイドレター、管理貿易への誘惑、揺れるモスバッカー、3.15国家安全保障会議
第6章;フォギー・ボトムの憂鬱
FSXのお葬式、会談前夜、4閣僚・松永会談、クラリフィケーション、沈黙するベーカー、反米感情、小沢調停、大統領特別声明、玉虫色の合意文書

第7章;対決は議会に
議場の白兵戦へ、最も無名の上院議員、グレィゾーンへの変化球、大統領権限への挑戦、票よみ、松永・シンプソン連合、電話魔、密約、切り崩しと防戦、反乱票成否を決めたグラスリー票

第8章;勇気ある人々
布石、マンスフィールドの贈り物、勇気ある人々の肖像、ゲームを投げるな、新たな敵を探してはならない。偏狭なナショナリズム

第9章;すべては東芝事件から始まった。
反日の原像、告発、知っていたCIA、リーク、東アジアの国防長官、アーミテージ追放劇

第10章;黄昏の日米同盟
国防省を去るカーンズ(1989.12国務省の発行する雑誌に「FSX後、日米関係の新しいアプローチ」という国務省の対日外交を批判する論文発表)、日米同盟の墓標、日本製ゴーリスト、ワシントンから自立せよ、日米安保の2つの顔、ニッポン抑止戦略、チャイナカード、賢者ハロルド・ブラウンの警告

エピローグ;迷走する日米同盟
著者ノート;あとがきにかえて

感想;NHKTVでよく顔を見る手嶋氏の労作である。FSXは一時は日米摩擦の焦点となったが、今となっては過去の話題である。FSXという戦闘機自体は昨今の軍事情勢や国際情勢からみて、時代の先端の話題と言えないところに、この10年間の時代の激変を感じる。
しかし、ソフト面での日米関係のあり方にについて、この本に描かれているところは余り変わりなく、本書の意義はあると思える。

FSX 
航空自衛隊次期支援戦闘機 fighter support X の略称。従来の主力機F-1の後継機として、アメリカのF-16をもとに日米が初めて共同開発したものでF-2とよばれる。1988年(昭和63)11月、両国政府が了解覚書を締結、日本が60%(価格計算上)を負担する。行動半径830キロメートル、最大速度マッハ2.0、最大搭載量10トン。コンピュータで戦闘機の姿勢制御するCCVや、レーダーに映りにくいステルス性などの最新技術を取り込む。95年10月に初飛行。1996―2000年度の新中期防衛力整備計画では47機導入される。

◆F‐2支援戦闘機(Fighter Support)〕
FSXの制式名でF‐1支援戦闘機の後継機。F‐16をベースにした日米共同開発機で、試作四機(単座二複座二)を製造した。一九八八(昭和六三)年に開発を開始し、九五年一○月に初飛行。現在飛行開発実験団で技術/実用試験を実施中で、九九年に部隊運用開始の予定である(調達は合計一三○機)。F‐2の任務は、主として航空阻止、進攻艦船の洋上での撃破、陸自・海自の行う作戦への支援であるが、状況によって要撃戦闘にも使用する。主要改造点は次のとおり。(1)複合材の一体成形主翼および二五%面積増加、(2)胴体の一六インチ延長、(3)アクティブフェーズドアレイレーダー搭載、(4)高速ミッション・コンピュータ、リング・レーザー・ジャイロ方式の慣性基準装置、統合電子システムの装備、(5)エンジンをF一一○に換装、(6)CCV機能。武装は、ASM、AAM、赤外線誘導爆弾、通常爆弾、二○ミリ機関砲の各種組み合せ。全幅一一・三メートル、全長一五・五二メートル、全備重量二二・一トン、最大速度約二マツハ。