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誰も書かなかったソ連、鈴木俊子、1970年、830円、サンケイ出版 (第2回大宅壮一賞受賞作)

100円古本で見つけた1970年の古い本で、題名だけは見た覚えがあるのですが、3年間のモスクワ生活(サンケイ特派員の妻)のモスクワ市民の生活の詳細をかたるものでこれでは、ソ連体制が崩壊するのも当然という、ソ連の不具合をあばくものでした。

1)外国人はソ連当局の監視されており市中心から40km圏内以上に離れるときは許可がいること
2)市民の住宅事情が悪く、何家族か共同で3LDKのようなところに住んでいること
3)自由市場以外にはよいものがなく、買い物やサービスには長い行列や時間が必要なこと
4)製品は不良品が多く、修理もままならぬこと。
5)市民は監視され、情報が統制されていること。
6)特権階級が存在して、庶民とかけ離れた生活をしていること。
など、身近な経験で具体的に述べられています。勿論、社会保障が比較的進んでいること、医療費が安い、男女平等が根付いてなどのプラスの面も書かれています。
当方は1979年に2週間ほどソ連に滞在した経験がありますが、ここでの記述はいずれも思い当たるところばかりでした。えらく窮屈で不合理な体制と思ったのでしが、一方で国民は飢えているわけでもなく酒があり、音楽や踊りで楽しみまた、米国と対立する超大国の自負を持っているようで、強固な体制と見えました。ところが、1990年に脆くも崩壊で、原因は、内部的には国民が西側の社会についての情報を知っのが一番大きいのでは思います。
ところで、これからのロシアがどういう方向にいくかは、昔のソ連の体制には戻らないと思いますが、どうなるかはわかりません。

○大宅賞受賞のことば

素人まるだしの私の作品が賞をいただけたのは、どうしても書かずにはいられない衝動にかられて、ソ連社会についての思いのたけを率直に書き綴ったからでしょうか。モスクワ生活をはじめた人々にこの本が重宝がられていると聞いて、私はああやはり書いてよかったと、思っています。

誰も書かなかったソ連、鈴木俊子、1970年、830円、サンケイ出版 (第2回大宅壮一賞受賞作)

著者;s23年共立女子薬専卒業、S30年まで共立女子薬科大学に助手として勤務。結婚とともに退職。1966-1969年まで夫とともにモスクワに滞在

もくじ

I.モスクワの外国人
外人専用アパート、ドライブ制限、ドルショップ、たのみの輸入物資、招待旅行、日本人学校、

II.素顔の庶民生活
モスクワ市民の生活、買い物風景、5日制と土曜日、当世胸算用、もちつもたれつ

III.国産品と輸入品
活気に満ちた自由市場、ステキなガスレンジ、合唱が消えた第九

IV.サービスということ
行列のシッポ、銀行にて、クリーニング店、セルフサービスショップ、レモント、旅に出たら

V.働く主婦たち
低下する出生率、男性をいたわれ、最高の離婚率、病気になって

VI.モータリゼーション
免許証をとる、わがモスクビッチ、部品さがし、のんびりした歩行者、チャイカのお通り

VII.扉の中で
高い選挙投票率、中国人に間違えられて、老婆の呟き、外国紹介

VIII.社会主義の贈り物
貯める必要のない社会制度、音楽を楽しむ老人たち、金のかからぬ教育、診療・入院も無料、1年の1/3は休み、女同士の付き合い

IX.モスクワ風物詩
秋から冬へ、革命記念日、雪かき、ヨールカ祭、マロースと戦う、冬のレストラン、春から夏へ、冬に備えて日光浴、ボルガに夕陽がおちて

X.物価表について
モスクワ物価表