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2000-12-23  「哲学実技」のすすめ、そして誰もいなくなった
中島義道、角川Oneテーマ21、2000年12月1日初版、600円

本屋で、あの中島義道氏がまた角川で新書、{「哲学実技」のすすめ、そして誰もいなくなった}をこの12月に出されており、どうも哲学エンタテイナーという感じです。まずまずの本でした。

○哲学することと生きること
D大学にN教授という変わり者がいる。世間では「哲学とは何か」ばかり考えていて、あまり哲学をしていないという専らの噂である。そのN教授が、最近さらに不審な行動に出た。大学の哲学科では、哲学研究者(哲学学者)ばかり養成していて全く哲学者を養成していないから、みずから哲学者を養成する塾をつくるというのだ。そのために、「市場調査」を行い、さまざまな大学やカルチャーセンターなどで教えていた人々に適当に声をかけて、哲学者を養成することができるのかどうかの「実験」をすることにしたのだ。

「被験者」が6人集まった。彼らに毎週1回教授の部屋に集まってもらい、10回にわたってみずから「哲学」と信じるところのものを伝授し、その手応えによって哲学塾を開設するかどうか決めるという段取りになった。
<略>
ぼくは思考の「体力」という言葉を使いたい。これは中野みどりさんの「体が頭いい」という言葉にヒントをえたのだけれど。「体育実技」と同様にぼくは「哲学実技」があればいいと思う。たいへん疲れると思うよ。日頃鍛えていない「からだ」、つまり哲学的「からだ」を使うのだから。

○健全なエゴイズムを育てる
ここにニーチェの主著「ツァラトゥストラはこう言った」があるが、その中で彼は次のように言っている。
「私(ich)」ときみは言い、この言葉を誇りとしている。しかし、もっと大きなものはーそれをきみは信じようとしないがーきみの「からだ(Leib)」であり、その大きな理性である。それは「私」といわないで「私」においてはたらいている。・・・きみの最善の智慧の中よりも、きみの「からだ」の中により多くの理性があるのだ。

「哲学実技」のすすめ、そして誰もいなくなった
中島義道、角川Oneテーマ21、2000年12月1日初版、600円

はじめに
1.哲学することと生きること
「からだ」で考える
2.健全なエゴイズムを育てる
3.「不幸」を糧にして考える
4.あらゆる「悪」を考える
「ほんとうのこと」を語る
5.「きれいごと」を語らない
6.他人を傷つけても語る
7.身の危険を感じても語る
自分自身になる
8.精神のヨタモノになる
9.偉くならない
10.自分から自由になる
あとがき