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2001-01-03 「文明の衝突」、サミュエル・ハンチントン著、鈴木主税訳

古本屋で見かけた有名な本、まずまず面白いものでした。冷戦終了後の世界を8つの文明の対立という視点から見るものです。西欧人の本音からみた世界観とも言えるもので、将来は日本は中国に従うようになると、やや?という見解を述べています。
言語、宗教、人口、生産力、軍隊で、比較している数値は参考となります。

文明の衝突、サミュエル・ハンチントン著、鈴木主税訳
The Clash of Civilizations and the Remarking of World Order、by Samuel P. Huntington 集英社、1998年6月30日初版、2800円 Copyright, 1996.

第五章、経済、人口動態、そして挑戦する文明圏
○アジアを見直す、儒教の価値体系である、倹約、家族、規律を共通に持つ。

○イスラムの復興、「イスラムが解決策である」
第六章、文化による世界政治の構造変化
1990年代に入って、世界的にアイデンティティに対する危機感が噴出している。ほとんどいたるところで、人々は自分にこう問いかけている。「我々は何者か?」「我々はどこに属するのか」「我々と違うのは誰か?」
人間は敵意を抱く存在なのだ。自己を規定し、動機づけするために、人は敵を必要とする。
○文明の構造;最も重要な孤立国は日本である。日本の独特の文化を共有する国はなく、他国に移民した日本人はその国で重要な意味をもつほど人口が多くないし、かと言って移民先の文化に同化することもない(たとえば日系アメリカ人がそうだ)。日本文化は、広く支持される可能性のある宗教(キリスト教やイスラム教)やイデオロギー(自由主義や共産主義)を伴わないという事実から、他の社会にそれを伝えてその社会の人々と文化的な関係を築くことができないのである。

○第四部、文明の衝突
中国の台頭は日本にとって大きな難題で、日本はどちらの戦略をとるべきか意見が大きく割れている。中国の政治的・軍事的優位を認めるかわりに、経済問題での日本の優位を認めさせるなどして、中国に順応しようとすべきだろうか? 中国からの侵略に備えて自国の軍備拡張を試みるべきか?日米軍事同盟に新しい意味と活力を与えるべきか。
米国がはっきりした決意も公約も示していないので、日本は中国に順応することになるだろう。
1930年代と40年代に日本は東アジアを征服するという一方的な政策を追求して、壊滅的な結果を招いたが、この時代を除いて、日本は自国が適切と考える強国と同盟して安全を守ってきた。日本の同盟に対する感覚は「最強国との連携」だった。

○訳者あとがき
著者は文明を、中華文明、日本文明、ヒンドゥー文明、イスラム文明、西欧文明、ロシア正教会、ラテンアメリカ文明、アフリカの8つに分類する。
そして世界に「普遍的な文明」が生れつつあるという考えに反論し、西欧のリベラルな民主主義を普遍的なものとするのは西欧の考え方であって、他の文明国から見ればそれは帝国主義とうつるという。東アジアの経済成長とイスラムの人口急増によって、中国文明とイスラム文明の勢力が拡大し、「儒教・イスラムコネクション」を形成し西欧に敵対する。こうして、今後の世界は「西欧対非西欧」という対立の構造になるというのが本書の主張だ。

中華文明、日本文明、ヒンドゥー文明、イスラム文明、西欧文明、ロシア正教会、ラテンアメリカ文明、(アフリカ文明)
主な言語の分類(世界人口に占める比率 %)
1958 1992
アラビア語 2.7 3.5
ベンガル語 2.7 3.2
英語 9.8 7.6
ヒンディー語 5.2 6.4
マンダリン語 15.6 15.2
ロシア語 5.5 4.9
スペイン語 5.0 6.1
ポルトガル語 2.6 3.0
独逸語 4.2 2.0
フランス語 2.5 2.1

表3.3 主な宗教の人口比
宗教    1900年 2000年推計
西欧キリスト教 26.9 29.9
当方正教会 7.5 2.4
イスラム教 12.4 19.2
無宗教 0.2 17.1
ヒンドゥー教 12.5 13.7
仏教 7.8 5.7
中国民間宗教 23.5 2.5
部族信仰 6.6 1.6
無神論 0.0 4.2

表4.2世界の主要文明圏の人口(単位1000人)
中国  1、340、900 ラテンアメリカ 507、500
イスラム 927,600 アフリカ 392,100
ヒンドゥー915,800 東方正教会 261.300
西欧 805,400 日本 124,700

表4.5文明圏別にみた世界経済総生産の割合 1950-1992
 西欧 アフリ 中国 ヒン イス 日本 ラア 東方 他
50 64.1 0.2 3.3 3.8 2.9 3.1 5.1 16.0 1.0
92 48.9 2.1 10.0 3.5 11.0 8.0 8.3 6.2 2.0

表4.6 文明圏別にみた世界総兵力の割合(1900-1991)
 西欧 アフ 中国 ヒン イス 日本 ラア 東方 世界合計兵力
00 43.7 1.6 10.0 0.4 16.7 1.8 9.4 16.6 10,086千人
20 48.5 3.8 17.4 0.4 3.6 2.9 10.2 12.8 8,645
70 26.8 2.1 24.7 6.6 10.4 0.3 4.0 25.1 23,991
91 21.1 3.4 25.7 4.8 20.0 1.0 6.3 14.3 25,797