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2001-4-16 反重力について
4月16日週刊誌タイム記事で、アインシュタインの反重力の考え、宇宙定数の考えが本人は大失敗と考えたが、実は最近の観測で正しいかもしれぬとのことでした。
ハッブル衛星望遠鏡で超新星との距離を測定すると、宇宙の膨張速度は更に加速しつつあるとのこと、この現象を説明するためには暗黒エネルギー(反重力)の存在が必要とのこと。140億年前のビッグバンから、ビッグクランチ(大収縮)ではなく、離散に向かうとの説です。

Time, April 16,2001
Einstein's Repulsive Idea,
He invented antigravity in desperation and abandoned it first chance he got - but it may be the most powerful force in the universe, by Michael D. Lemonick
Albert Einstein never did like the idea of antigravity.
It wasn't that he had a problem with farfetched notions. After all, his special and general relativity theories made the astonishing assertion that time, space and matter could be squeezed and streched like so much India rubber. The trouble was that some sort of antigravity force -Einstein called it the "cosmological term"- was required to make the predictions of general relativity match what astronomers believed the actual universe looked like.
The great physicist was hugely relieved when the discovery of the expanding universe in the 1920s let him cross out what he declared was "my greatest blunder" Last week scientists made a powerful case that Einstein's blunder may actually have been another Nobel-worthy prediction.
---------There will be no Big Crunch. Tens of billions of years from now, our Milky Way galaxy will find itself alone in empty space, with its nearest neighbors too far away to see.
Antigrevity(dark energy)
1.What it is: A property of empty space that exerts an outward force like a compressed spring at every point in space.
2.How it operates: A given volume of space always has the same amount of dark energy, so when the distance between two galaxies doubles, the force pushing them away from each other is twice as strong.
3.What that means: As the universe expands the volume of space increases, which means more dark energy. By now, 14 billion years after the Big Bang, antigravity has overwhelmed gravity, so the expansion will get faster and faster.

宇宙定数と「反」重力
 我が生涯最大の過ちだった---。天才科学者アインシュタインは、宇宙の大きさが、永遠に変わらないと主張するために、一般相対性理論の方程式に、わざわざ「宇宙定数」という項目を導入したが、存命中に悔やみつつも、この考えを撤回した。ところが、最新鋭の望遠鏡を使って得られた最近の驚くべき観測結果から、因縁の宇宙定数が約70年ぶりに復活の兆しを見せ始めている。
「定常説」に苦悩
 宇宙は、約150億年前、ビッグバンという大爆発によって無から誕生し、以来、現在に至るまで、ずっと膨張を続けている。ただ、このことがわかったのは、約70年前のこと。アインシュタインが相対論を発表したのは、さらにその10年以上も前。当時は、宇宙は同じ大きさを保つ「定常宇宙」であると考えられていた。
 アインシュタイン自身も定常宇宙を信じていたが、自らが打ち立てた相対論が示したのは、膨張したり収縮したりするダイナミックな宇宙だった。悩んだアインシュタインは、方程式を書き換え、定常宇宙が実現するように宇宙定数を付け加えた。
 しかし、その後、観測になって、明らかになった膨張する宇宙の姿はまさしく、宇宙定数を付け加えない相対論の方程式が予言していたものだった。宇宙定数は、世紀の大天才が犯した誤りとして科学史に記録されることになった。
 ところが最近、世界の天文学者を驚かせる観測結果が発表され、宇宙定数が、再び大きな脚光を浴びるようになった。やはり宇宙定数は、存在するようだった。
減速でなく加速
 宇宙の膨張が発見された後の天文学者の最大の関心は、その膨張速度だった。あらゆる物質は、ものを引き寄せる重力をもっているので、宇宙全体の星やガスをあわせると、その重力は大変なものなる。そのため、宇宙の膨張には重力による「ブレーキ」がかかって、速度は徐々に落ちているだろうと考えていた。
 そこで天文学者は、減速の証拠をつかもうと、ハワイの天文台にある高性能望遠鏡や、宇宙に浮かぶハッブル望遠鏡を使って遠い銀河ので起きている星の大爆発「超新星」の輝きを観測した。
 遠くの宇宙は、それだけ遠い昔の宇宙の姿でもあるので、そこでの超新星の輝きを調べれば、その当時、宇宙がどのくらいの速度で膨張していたかがわかる。そして、近くの星の観測から求めた最近の宇宙の膨張速度と比べれば、減速が、どの程度のものかを求めることができる。
 しかし、得られた結果は天文学者の予測を完全に裏切った。宇宙膨張は減速しているどころか、加速していたのだ。宇宙には、全重力を上回るほどの未知の強力な反発力が存在することを、この観測結果は物語っていた。私たちの宇宙観は今、塗り替えられようとしている。
真空から反発力
 では、宇宙を支配している未知の反発力は何か。宇宙論の研究者は、真空が、ある種のエネルギーをもっており、それによって反発力が生まれると考えている。つまり、物質が、まったく存在しない、空っぽの空間が力を生み出しているのだ。
 この真空のエネルギーの存在は「数学的には宇宙定数が存在することと同等」と東京大学の佐藤勝彦教授は日経サイエンス4月号の特集「揺れ動く宇宙論」の中で述べている。 そもそも、宇宙定数は、宇宙が重力によって、つぶれないための「つっかえ棒」としてアインシュタインが考案したものだったが、実際には、つっかえ棒以上の働きをしているようだ。天国のアインシュタインは、この逆転劇をどんな思いで眺めているだろう。(日本経済新聞 1999年3月14日より)

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「反」重力  
 遙か彼方の宇宙で最近観測された事実は、科学者たちを驚かせている。彼らが注目したのは超新星だった。超新星は重力によって押しつぶされ、爆発を起こした星である。ある科学者たちのグループは、今後、宇宙がたどる運命について、超新星が重要な手がかりをにぎっていると確信している。
 「われわれは、宇宙の新たな力、新たなる遠隔作用らしきものを観測したようです。何か恐ろしい気さえします。これは根本的な新発見かも知れません。これほどの興奮を感じたのは、私の研究人生において初めてのことです。」
 超新星爆発は、一つの銀河で、一世紀に一度ほどしか現れない。その明るさは、星の10億倍にもなり、非常に遠い場所にあっても観測することができる。調査チームは、特に白色わい星が、超新星になったものに焦点を絞った。彼らはそこから、宇宙の膨張についての詳しいデータを得ようとした。
 「宇宙が、およそ140億年前のビッグバンで始まり、それ以来膨張し続けていることについては、すでに、確かな証拠があります。問題は宇宙が永遠に膨張するかどうかということです。これまでにも、様々な推測が、なされてきました。しかし、わたしたちは、この形而上学的にも見える問いを、実証科学として、とらえなおそうとしたのです。つまり、この問題について答えを出すには、単なる議論ではなく、観測することが重要だと考えました。」
 宇宙論はアインシュタインの相対性理論によって新たな段階を迎えた。彼の理論は、重力を解明するものであったが、それによって、宇宙全体について、革命的な見方を示すことになった。彼は重力が、たんに、物同士を引きつけあう力ではなく、時間と空間のゆがみとして表される力だと結論づけた。1915年、アインシュタインは、一般相対性理論を定式化した。おそらく物理学で最も美しい理論であろう。ところが、彼は、自分の式を宇宙に当てはめると、宇宙が膨張したり収縮したりすることに気づき、こんなことがあり得るのかと自問した。アインシュタインは天文学者を訪ね歩き、こう聞いた。私の宇宙モデルは、宇宙の膨張と収縮を示している。どちらが正しいだろう? 天文学者たちは、こう答えた。「いや、宇宙は静止しているんだ。」アインシュタインは、一般相対性理論に新しい専門用語「宇宙項」と呼ばれるものを付け加えた。それは、あらゆる星と銀河の間に反発しあう作用を与えるものであった。互いに引き合う力を帳消しにするためである。宇宙に働く力が重力だけだと、自分の方程式では、宇宙は膨張するか収縮してしまう。そこで彼は、重力に対抗する力を導入し、静止している宇宙のモデルを作り上げることに成功した。
 アインシュタインは、最初の結果を素直に信じるべきだった。1929年、天文学者のハッブルが、最新の望遠鏡を使って、宇宙の膨張を発見したのだった。後にアインシュタインは、宇宙項を付け加えたことを、「人生最大の失敗」と語り、それを抹殺した。それ以来科学者たちの問いは、「宇宙の膨張はあるか」ではなく、「宇宙の膨張はいつまで続くのか」に変わった。
 「宇宙の膨張は、ビッグバンで始まりました。その後は、ちょうどリンゴを放り投げたときのように、重力が宇宙の膨張の速度を落として行くはずです。重力は、リンゴが上に向かう速度を弱めて、最後にはもとの場所に戻します。ですから、まず、われわれは、宇宙の膨張が、遅くなっていることを、確かめたいと思ってきました。減速の度合いがはっきりすれば、それがはっきりします。しかし、減速する場合でも、永遠に膨張し続けるという可能性も考えることはできました。」
 調査チームには、確かな測定手段が必要であった。その時利用されたのが、白色わい星の超新星であった。白色わい星自体は、死にかけの星であり、弱い光しか発しない。しかし、周囲を回る伴星から、ガスを奪い、やがてその重みでつぶれ、大爆発を起こすのだ。この現象は、毎回まったく常に同じで、明るさも常に同じだと考えることができた。天文学者たちは、こうして測定の基準となる光源を定めたのだ。超新星は、非常にまれな現象であり、それを探すのは10年前なら、ほぼ不可能だった。でも、いまや、望遠鏡やコンピュータなどの進歩で、観測の能力は大きく向上している。
 「当初の問題は、誰もまだ、必要に応じて、超新星を発見できる人などいなかったことです。超新星の爆発も予測できませんでした。そこで、われわれは明るさと色とスペクトルを正確に把握するため、世界最大級の望遠鏡をリストアップしました。たくさんの銀河を観測するために、大型の望遠鏡に大型の高感度カメラを取り付けることにしました。この方法は、効率がとてもよく、一晩に数千の銀河を調査できます。超新星はかなりまれですが、これなら、一晩で一つは、発見できると期待できたのです。最初は、超新星を一つ、つぎに五つ発見しました。年に2回ずつ観察して、これまでに、遙か彼方の超新星を80近く発見し、一つ一つを研究してきました。」
 超新星が放つ光のスペクトルには、星の成分など様々な情報も含まれている。そこから、調査チームは、超新星がいつどこで爆発したかを割り出した。
 「私は、超新星の特徴をグラフに表す仕事を担当していました。超新星は約2週間で、目に見えないほど暗い状態から、銀河全体と同じほどの明るさにまでなります。その後、1ヶ月以上かけて明るさを失っていきます。私は超新星の光度曲線を測定し、その値をもとに、超新星との距離を測定します。最終的にわれわれは数多くの超新星のデータを総合して、その時、宇宙はどのくらいの速度で膨張していたかを示す値を導き出しました。どの距離にその星が存在するかを知っているので、時間にして、どのくらい前のものを見ているかがわかります。つまり、超新星の見かけの明るさの違いから、距離を決定し、そしてそこから爆発の時期を知るわけです。」
 調査チームが発見した超新星は、近いもので40億光年の距離にあり、もっとも遠いものは、およそ80億光年もの彼方にあった。調査チームは、宇宙の膨張が実際に減速しているかを調べようとした。重力は、引きつけ合う力であり、宇宙を収縮させるように働く。その証拠が得られるはずだった。
 「われわれは、宇宙が減速していると仮定し、その減速率を測定しよう。割り出す価値のある値だなどといっていました。宇宙の膨張がどのように減速しているかという正確な割合を算出したかったのです。ところが、われわれは全く逆に宇宙が膨張の速度を上げていることを発見しました。これに対する最もシンプルな説明は、アインシュタインの宇宙項の様な力が存在すると考えることでしょう。宇宙の進化を表す一般相対性理論の方程式に、付け加えるべき項があるということです。教科書を書き直さなくてはならないかも知れません。ハッブルの発見以後、何十年もの間、まったく省みられなかったこの宇宙項が、パズルのかけていた部分であり、宇宙の運命を決定するかも知れないのです。」
 アインシュタインの導入した宇宙項は、当時の考えと矛盾しない静止した宇宙を作るためのものであった。もし、膨張する宇宙モデルに、この宇宙項を加えると、膨張は必然的に加速される。調査チームは、計算結果を何度も確かめたが、結果は同じだった。彼らが観測したもっとも遠い超新星は、予測された明るさより20%も暗いのだ。何らかの力が、科学者が予測したよりも遙かに大きく超新星を加速していた。
 「重力は何をするかと街で聞いたら、互いに引きつけあう力といった答えが返ってくるでしょう。だれも、反発し合う力だとはいいません。でも、われわれは、そのような力を測定したのです。われわれは、宇宙が実際に反発しあい、加速的に膨張しているのを測定しました。しかし、こうした観測結果が出ても、人は、そう簡単には自分の知識を変更することなどできないものです。遠くの銀河と遠くの超新星を、互いに引き離すように働く力を、われわれは、発見したようです。重力は、銀河同士を引きつけ、宇宙をもとの状態に引き戻すように作用する---つまり、重力は、少なくとも、宇宙の膨張速度を落とすはずでした。が、実際はその逆でした。」
 超新星の調査チームは膨張速度の測定から、宇宙を支配する別の力を発見したと主張している。それは、宇宙に恐ろしい運命をもたらすことになるという。
 「いまやわれわれは、重力に邪悪な双子の兄弟がいるかも知れないことを知っています。重力に対抗する力は、究極的には、宇宙の運命をも決定します。われわれは、これまで、重力が持つたくさんのトリックを見抜き一つ一つ解明してきました。しかし、今回の発見は、多くの物理学者に衝撃を与えています。われわれが発見したことは、宇宙が永遠に膨張を続けるということです---しかも速度を増しながら---。このことは、銀河が互いに、だんだん遠く離れて、散らばっていくことを意味しています。ついには、銀河は互いにとてつもない速度で離れていき、遠くの銀河は、一つずつ見えなくなって行くでしょう。というのも、銀河はわれわれから、あまりにも遠くに移動してしまい。その光がわれわれに届かなくなるからです。やがて、近くの銀河も見えなくなり、宇宙にはわれわれしか存在しないように感じるでしょう。その後、すべてが、さらに冷たく空虚になっていきます。あまりにもむなしい終末にも思えます。でも、それが現にわれわれが住んでいる宇宙なのかも知れないのです。重力は、宇宙に多くのエネルギーと生命を生み出しました。しかし、その双子の兄弟は、宇宙に冷たい結末をもたらすかも知れないのです。」(重力を解き明かす チャンネル4 イギリス 1998年より)