短歌のふるさと「塩尻短歌館」を訪ねる


 冬晴れの午後、かねがね行って見たいと思っていた、お隣塩尻市は広丘にある短歌のふるさと「塩尻短歌館」を訪れる。同館は国道19号線を西に少し入った広丘小学校の並びにあり、本棟造りの落ち着いた建物で、土蔵と瀟洒な庭園が併設されている。また、建物を出た松林には「歌碑公園」が整備され、「柿の村人」こと島木赤彦、大田水穂、若山牧水、窪田空穂の歌碑のほか女流歌人、若山喜志子、四賀光子、潮みどりの合同歌碑がある。日本の短歌界の錚々たる面々がどういう因縁で広丘の地でかかわり創作活動に当たったのか不思議な思いにかられていたが、同館を訪れてまさにこの地が短歌のふるさとである所以を知り、これまで遠い世界であった短歌の世界を少しばかり身近に感じるともに、生前父親が若山喜志子女史の知己を得、短歌作りを楽しんでいたことを思い出し、帰ってから当時遣り取りされた書簡を読み返し暫し感慨に浸る。

短歌館前の「短歌の里の案内図」 若山牧水と喜志子に関する展示コーナー
若山喜志子が記した書簡


    若山牧水の歌碑                      

    うす紅に 葉はいち早く萌えいでて
           咲かむとすなり 山ざくら花

                        
    四賀光子、若山喜志子、潮みどりの合同歌碑

    鉢伏の 山を大きく野にすゑて
            秋年々の つゆくさの花(光子)
    春鳥の いかるがの聲うらかなし
         芽ふきけふらふ木立の中に(喜志子)
    いく重やま みやまの奥の山ざくら
         松にまじりて咲きいでにけり(みどり) 
 
    島木赤彦(柿の村人)の歌碑

    いささかの 水にうつろふ夕映に
            菜洗ふ手もと明るみにけり 
    窪田空穂の歌碑

    あき空の 日に照るみとりにほひ出で
           見まはす四方にあふれなむとす
    大田水穂の歌碑

    命ひとつ 露にまみれて野をそゆく
           はてなきものを追ふことくにも
 


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