100のお題・千と千尋の神隠しより
023.残り香
由良はいつも思うのだ。
あの主の熱い想いを全身で
受け止めている
ちー様の偉大さを。
そして偉大な力とその命をかけて
激しく愛を注ぐ
ことのできる主様の熱情を。
そうして、憧れるのだ。
主様に愛されているちー様に。
ちー様に愛されている主様に。
森の小道や花畑 龍穴の泉のほとりや
苔の絨毯の広がる輝きの間。
森の館の其処彼処。
お二人で、過ごすその場所は、
お二人の想いが重なり合って
幻のような残り香が、いつも漂っている。
それは、確かに存在するのに
追い求めるものには
決してつかむことの出来ない
蜃気楼のようで。
由良は憧れる。
まるで、御伽噺のような二人のあり方に。
そうして、願うのだ。
いつか、主様のように
熱い想いでもって愛しぬくことが
できる存在を得たいと。
いつか、ちー様のように
命かけて愛してくれる
存在を得たいと。
ちっぽけな木霊は、ため息をつく。
そうして、その瞳を輝かせる。
愛したいのか。
愛されたいのか。
その両方なのか。
今はまだ、憧れは憧れのままで、
その愛の美しい上着だけを見つめていて
それをまとう体が受けた傷に気付かない
その幼いがゆえの純粋さ。
しかし、誰が知ろうか。
いまだ目覚めぬその幼く無垢な
心が、愛し愛されることの真の喜びと苦しみを知り、
そうして、重なり合う想いの残り香を放って
幼いものたちの憧れをかきたてることが
できるようになることを。
今はまだ、はるか遠い未来の夢・・・
完
由良ちゃんはドリーマー。
その性が決まるのは初恋をしてからかも?
お相手が現れるのはいつになることやら。