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楽譜の読み方 〜リズム編(1)〜

●Introduction
 ギターやベースを始めるとき

楽譜が読めません

という人は多い。
 ここは自慢する所ではない。

 この読者が中校生以上であれば、義務教育の課程で勉強してきたはず(少なくとも小学校で習っているはず)なので、本来なら読めて当たり前のはずである。しかし、実際は身につかないまま卒業してしまう事が少なくない。
 実際、先生の手本を聞いたり、周囲で歌っていたりするのを真似ていれば、どうにか卒業できたりするものである。

 楽譜の読み取りなんて、実生活で必要の無いので、読めなくても困りはしないのだが、ある時、ギターやベースに目覚めて、いざ弾こうと思った時に改めて気づく問題だ。

 ギターを買えば、楽譜が読めるようになるんじゃないかと錯覚してみるが、やはり錯覚である。


●ギター(ベース)にはTAB譜がある
 幸い、ギターやベースでは五線譜とは別にTAB譜(たぶふ)というのがある。何弦何フレットを押さえればその音が出せるかで書き直したものなので、五線譜のオタマジャクシがわからなくても済む。



 音の高さがわからなくても、チューニングが正しい限りはTAB譜のフレット番号の通りに押さえて弾けば、五線譜で指定された通りの高さの音は出てくる。
 ただ、問題は「旗」の読み方である。



 どんなタイミングでその音を弾けばいいのかという事が読めないと演奏ができない。
 しかもTAB譜でもリズムについては、五線譜と同じ表記なので、旗が読めないとリズムがわからない。


●リズムを攻略する
 ということで、リズムの読み取りを重点的に行っていこうと思う。

 一応、全音符が小節1つ分の長さであれば、二分音符が1/2の長さ、四分音符が1/4の長さ…などの理屈としての説明は学校で習ったはずだ。そういう意味は知っているのに、楽譜を見てもリズムが刻めない。



 なぜリズムが刻めないか?



 この辺が、音楽教育を受けた人間とそうでない人間に差が出る。
 四分音符が「タンタンタンタン」というリズムで、八分音符が「タタタタタタタタ」だと言われる。しかし、擬音語として「タンタンタンタン」と言うのにかかる時間と「タタタタタタタタ」と言うのにかかる時間が同じだという保証がない。その不安が払拭できないのだ。
 こういう所を音楽の先生から直接指導してもらえれば良かったのだが、学校という集団教育の中で個別指導というのもなかなか難しい。しかし、機会を逃すと、なかなか教わる機会がない。
 したがって、自分の理解が正しいのか間違っているのかの判断もつかなくなる。

 幼稚園レベルでひっかかって以降、ひっかかりっぱなしという人は少なくないはずだ。



●リズムが読めるだけでも収穫は大きい
 ギターでバッキングする場合や、ベースでルート弾きをする場合、おおむね1小節の間、同じ音を出し続ける事が意外に多い。

 実際、これはX Japanの某曲の一節の一部だが、見事に「左手を(ほぼ)固定したまま、右手でリズムを刻むだけで済む」という、お手軽パターンで成り立っている。


 ギターもベースも、小節をまたぐ時に左手が大きく動くものの、1つの小節内では左手はほとんど動かないので、左手は非常に簡単だ。
 Gt2も、Xと書いてある部分はブラッシングの指定なので、左手の指を軽く浮かせて「ガシガシ」という感じの音にすれば良い。しっかり押さえれば音が鳴り、少し浮かせてピッキングすればブラッシングになるので、左手はそれほど大きく動かす必要は無い

 問題が、リズムの読み取りである。この楽譜の場合だと、ベースは「8分音符で刻んでるだけ」なので、同じ間隔で音を出していれば済むが、ギター側は四分音符と八分音符が混ざっている。Gt2では、時折ブラッシングが入っているので、この辺のリズムの読み取りが重要になる。逆を言えば、この楽譜はリズムさえ読み取れれば、楽譜を読めてしまえる。

 メロディまで想像することは無理だろうが、指定通りにフレットを押さえれば音は出てくる。
 だから、リズムの読み取りさえできれば、TAB譜の通りに演奏が可能になる



●Step1 リズム譜とは
 リズムを理解する場合、リズム譜というのを使う。



 リズム譜とは、楽曲のうち、音の長さの部分だけを切り取った譜面である。ドラムなどのパーカッション系の譜面に使われたり、ギターのコード譜でのストロークパターンを示すのにも使われる。
 譜面は1本線で、音程が無いので、ドレミを気にする必要がない。




●Step 1.1 拍(はく)
 音楽には、基本的なタン、タン、タン、タン、…と一定に刻まれるリズムがある。

【実習】
 自分の好きな曲を聴きながら手拍子を打ってみよう。この手拍子1つ1つが「拍」である。
 小学校のときに、指揮棒を振って遊んだ事があるかもしれないが、指揮棒一振りが一拍になる。
 タン、タン、と刻んでいくか、タタタタ…と刻んでいくかは、とりあえず、どちらでも良いが、曲のテンポからずれていかないように注意しながら刻んでみよう。



●Stet 1.2 拍子(ひょうし)
 1小節に何拍あるかというのが拍子である。英語ではBeat(ビート)である。
 ワルツなどは3拍子、一般に聞くポップスなどは、だいたい4拍子(4ビート)である事が多い。
 この「○拍子」を決める要素が、何回に1回強い拍が入るかで決まる。通常、1拍目が強くなり、他の拍が弱い。強拍は、物理的に音量が大きいという事の他にも、ドラムのバスドラムが入ったり、ベースがコードのルートを出したりして、拍の先頭であることを印象づけたりする。
 4拍子は:

ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー、

 という基本リズムだ。
 3拍子ならば:

ワン、ツー、スリー、ワン、ツー、スリー、

 という基本リズムになる。

 ここでは、当面、4/4拍子(1小節に四分音符が4個並ぶリズムを1小節の単位とする拍子)のみを扱う。
 本来なら、4/4拍子と8/8拍子の区別のしかたのようなものの講釈が入るが、とりあえず無視する。
 なお、そういう意味で4ビートと8ビートの区別が正確な意味とは少し違う表現をしている事はご了承いただきたい。

 ここでは、譜面を見て、その通りにリズムを刻めるようになれる事が目標である。




●Step2 4ビートと8ビートの往復
 まず、『四分音符が「タンタンタンタン」というリズムで、八分音符が「タタタタタタタタ」だ』という事を確認することから始めよう。
 このステップでは、最終的には同じテンポで四分音符のリズム(4ビート)と八分音符のリズム(8ビート)を切り替えるというのをマスターする。

 理屈の上では、四分音符が1秒の音の長さであるとすれば、八分音符はその半分の0.5秒の長さではあるのだが、ストップウォッチを見ながらタイミングを見計らうようなものではない。
 リズムとして表現できることが重要である。



●Step2.1 4ビートの演奏
 まずは、1小節に四分音符が4つ並ぶリズムの確認から。



 四分音符が4つ並ぶリズムは、単純に「タンタンタンタン」というリズムである。別に難しいことではない。幼稚園レベルだ。
「ワン・ツー・スリー・フォー、ワン・ツー・スリー・フォー」でもかまわない。「ワン・ツー・スリー・フォー」で1小節だが、続く小節に移る時もリズムが乱れないように気をつけてリズムを刻もう。
 ここでは、2小節をワンセットとして並べてあるが、小節と小節のつなぎ目でリズムが乱れないようにするため。2小節ぶっ通しで実践してみよう。

 くれぐれも「ワン・ツー・スリー・フォー」「ワン・ツー・スリー・フォー」と、小節のつなぎ目で一呼吸入れないように。



●Step2.2 8ビート
 続いて、1小節に八分音符が8つ並ぶリズムである。ロックなどではこれが基本というものが多い。


 ちなみに、八分音符が8個も並ぶと読みにくくて仕方ないので、通常は連桁(れんこう)と呼ばれる、旗を連結させた書き方をする。意味は八分音符が並んでいるのと同じだ。

 さて、8ビートでは、基本となる音符が倍に増える。リズムが同じであれば、刻みは4ビートの2倍に早くなる。
 これは理屈としては理解できると思う。しかし、本当に四分音符の倍速でリズムで刻めているのか?というところに不安が残るのではないだろうか?

 四分音符と八分音符が混ざった楽譜を見ただけで、とたんにリズムがとれなくなるようでは、四分音符や八分音符を理解したとは言えない。四分音符だけが並ぶ場合や、八分音符だけが並ぶ場合と訳が違うからだ。




●Step2.3 8ビート→4ビート変換
 まず、八分音符のリズムから四分音符のリズムに切り替える訓練である。
 今まで8ビートは単純に「タタタタタ…」とやっていたと思うが、これを強・弱・強・弱・…という具合に強さを加える。
 この強弱をだんだん極端にしていく。強拍で思い切りたたく必要はないが、弱拍をほとんど音が鳴らないぐらいに弱めていく。

 そうやって、弱拍が全く鳴らなくなったリズムが4ビートとなる。

 このようにする事に対しての音楽用語が見当たらないのだが、デジタル回路設計用語では分周(ぶんしゅう)という。パルス信号を2回に1回通過させることでパルス信号の周期を半分に落とす回路が分周回路だ。
 電子回路の話はどうでもいいのだが、8ビートに強弱をつけていって、最終的に弱拍を刻まないようにして4ビートを作るという事を何度かやって、8ビート→4ビート変換をマスターしよう。「タタタタタタタタ」を「タツタツタツタツ」と刻んで「ツ」の部分を抜いてもいいかもしれない。
 同じテンポでビートだけ変えるということがわかってくると、体感的にリズムが理解できるようになってくる。




●Step2.4 4ビート→8ビート変換
 続いて、4ビートを倍速で刻んで8ビートを作り出す訓練である。電子回路用語では逓倍(ていばい)という。
 8ビートを分周した状態の4ビートでは、裏拍が感覚として残っているのですぐ8ビートに戻せるが、普通に4ビートを刻んでいる状態から倍速のテンポを作るのは意外にやりにくい。
 ここでは2つ方法を示す。

【ビートの間に音を挟む方法】
 まず、8ビートを少しテンポを遅くして「ワン・アンド・ツー・アンド・スリー・アンド・フォー・アンド…」と、アンドを挟んで刻む。「アンド」は2音節で言いにくいので「ワン・エン・ツー・エン・スリー・エン・フォー・エン…」の方がいいだろう。

 続いて、遅めの4ビートを「ワン・ツー・スリー・フォー」と言いながら刻む。何度か繰り返した後で「ワン・ツー・スリー・フォー」を言いながら、心の中でアンドを挟んでいく。
「ワン・エン・ツー・エン・スリー・エン・フォー・エン…」となってきたら、「タタタ…」に言い換えていく。



 このリズムが4ビートの時の倍速の8ビートになる。



【アップストロークで音を出す方法】
 ギターやベースをリズムを取る道具として活用してみる。
 奏法としてはピック弾きを推奨する。ギターやベースで言えば、右手(弦をはじく方の手)の訓練であるため、左手が暇になる。ミュートしてゴーストノートにしても良いが、1小節ごとにCとGを(ギターならコードで、ベースなら単音で)交互に弾くと、少し音楽っぽくなるだろう。

 ギターではピックを上から下に振り下ろす弾き方をダウンストロークという。ベースは単音なので弦1本だけのダウンピッキングとなる。逆に下から上に振り上げるストロークがアップストローク、アップピッキングである。
 アップとダウンを交互に繰り返す事をオルタネイト奏法という。

 要するに、4ビートをダウンのみで、8ビートをオルタネイトで弾くというだけの話である。


オルタネイト奏法をしつつ、アップするところを弾かないようにする「空ピック」(からピック。ピックを振り上げたり、振り下ろしたりするが、弦には触れずに通過させるだけにすること。)を混ぜる事で、テンポを崩さずに簡単にビートを切り替えられるはずだ。

 テンポを崩さずに4ビートと8ビートを自在に切り替えられるように弾ければ合格だ。



●Step3 四分音符と八分音符の混合パターン(1)
 四分音符と八分音符が並んでいるような楽譜のリズムの読み取りは、先ほどの4ビートと8ビートの切り替えを連続で行う事になる。
 このリズム譜がどんなリズムになるかを読んでみよう。必ずストロークは「一定のペースで上下の繰り返し」で、音符の無いところは「空ピック」で音を出さない事が肝になる。

 楽譜がちょっとだけ複雑になったが、意外に「あっ、なーんだ、こんなもんか」という感じになるのではないだろうか。

 四分音符と八分音符が接する部分で迷う場合は、前に戻って4ビートと8ビートの切り替えを練習して、切り替わる部分の様子を確認しよう。



●Step4 四分音符と八分音符の混合パターン(2)
 もう少し込み入った譜面を読み取ってみよう。


 結構「読めるものだ」という感覚が身についてきたと思う。
 リズム譜が攻略できたも同然、という感じがしないだろうか?(だいたい、そんな難しいものではない。)




●Step5 付点
 音符の横に点が付いたものが付点で、音の長さが1.5倍になる。これに音の長さが0.5倍の音符が付いた形は、よく出てくるパターンである。
 1.5倍という時間感覚は非常につかみにくいので、倍速でリズムを刻んだときの3拍分という感じの方がタイミングが取りやすい。




●Step5.1 付点八分+十六分
 先ほどの例題を倍速にしたパターン:

 これは、非常によく見かけるリズムパターンである。あえて音符を整然と並べてみたので、リズムが読みにくいかもしれない。

 聞いた感じとしては「タッタタッタ」という感じに近いリズムになるが、シャッフルではない。実際は、タッッタタッッタという刻み方になる。これも、一度16ビートの倍速で刻んでおいて、タ(↓)ッ(↑)ッ(↓)タ(↑)タ(↓)ッ(↑)ッ(↓)タ(↑)とリズムを刻むと、理解しやすいだろう。






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