ギターはギター1本で完結できる楽器なので、1人で歌いながら弾く事もできる。これは「弾き語り」と言う。 一方で、ロックなどではバンド内の1つの楽器として使う。 バンドで使われる楽器をよく見るとベースという楽器もあったりする。違いは何だろうか? 音楽に慣れ親しんだ人なら当たり前にわかる事ではあるが、漠然と「ギターを弾いてみたい」と思う人にとっては、根本的に知らない事でもあったりする。 ギターがどうこう言う前に、バンド全体がどんな形で絡んでいるか説明しておくことにする。 |
ロックバンドの基本的な編成は、おおむね次のようになる。 ボーカル…歌を歌う人(0人〜数人) ギター…ギターを弾く人(0人〜2、3人) ベース…ベースを弾く人(1人) キーボード…キーボードを弾く人(0人〜2人) ドラム…ドラムを叩く人(1人) 編成によってギターが2人いたり、キーボードが居なかったりする。ただし、よほどの例外が無い限り、ドラムは1人、ベースも1人である。ドラムとベースは居ないと困るが1パートに2人は必要ない。 ギターを弾きながらボーカルを兼任する「ギターボーカル」というような場合もある。ベースやドラムがボーカルを兼任する場合も無い訳ではないが、メロディー自体のリズムと、ベースやドラムが刻むリズムパターンが違うため、非常に難易度が高い。 バンド編成を大きく分類すると、「メロディ隊」と「リズム隊」に分けられる。 ボーカル、ギター、キーボードがメロディ隊で、主にメロディ(主旋律)やコード弾き(伴奏)を担当する。わかりやすい部分の音を担当するので、どちらかと言えば花形である。 一方、ベースとドラムがリズム隊で、リズムを刻んで楽曲全体の土台を作る役目をする。ドラムはまだわかるが、ベースは音が低くてよくわからない内容を弾いている事もあり、地味に見られがちで理解してもらいにくい。 |
ギターやキーボード(鍵盤楽器)は、担当が複数ある場合、大きく分けると「リード」と「リズム」の2つに分かれる。 リードギターは、メロディを担当する。一番前で全体を引っ張っている(ように見える)ギターである。その曲の一番印象に残る音を出す。 リズムギターは、伴奏を担当し、後ろに引っ込んでコードを「ジャンジャン・ジャカジャカ」弾く。バッキングとも呼ばれる。 キーボードは、図体が大きい事もあって、ステージ中央でパフォーマンスしながら弾く事ができない。傾向としては奥に引っ込んでバッキングに徹している事が多い。 まさか鍵盤ハーモニカで前に出てくる訳にもいかないが、そんな訳でギターの形をしたキーボード(ショルダー・キーボード。)というものも1980年代に一時期流行った。(最近ではアニメの影響があってか、チラホラ見受けられる。) ショルダー・キーボードは、ギターのようにキーボードを構える関係で、右手だけで鍵盤操作をする。左手のネック部分ば、ピッチベンドなどの効果を与える機能を当てているため、出せる音域が狭く、キーボードとして期待されるだけの役目を果たせない。結果的に「見た目だけかよ」という事で、あっと言う間に廃れた。 ショルダー・キーボードの話はどうでもいい。 メロディ系楽器は、目立つ反面、音楽的には特に重要なポジションには居ない。つまり、必要不可欠ではなく、互いに補完可能な存在である。 曲調は変わってしまうが、ギターが居なければキーボードで代用可能で、その逆も可能である。人数が増えたら増えたなり、減ったら減ったなりに、アレンジ次第でどうにかなるパートである。 ロックバンドではギターは割と中心的な位置にいるが、ジャンルをもう少し広げると実は特に重要なポジションに無い楽器である。間奏のときや、オカズ的に少し演奏したりするのはまだ良い方で、ギターを全く使わない曲も少なくない。 |
言うまでもなく、歌を歌うパート。言葉によって内容を伝えられる唯一の"楽器"。 一番手軽と言えば手軽ではあるが、カラオケ気分でただ歌えば良いというものではない。 正確な音程で歌う事はもちろん、そこにきちんと情景を織り込めるような歌い方が要求される。(あまり詳しくないので申し訳ない。) ボーカルもメロディ隊なので、歌詞が無くても良いのであれば、キーボードやギターでメロディを弾いてもいいし、サックス(一番声に近い楽器と言われる)などの他の楽器でも代替可能だ。 |
「音楽とそうでないものの違いは何か」という命題を突き詰めると「音楽はリズムである」という所に行き着く。一定のリズムで音が鳴る事で音楽が成り立つ。どんなに美しい響きの音色があったとしても、そこにリズムが無ければ音楽にはならない。 ドラムは、その音楽の根幹であるリズムを担当するパートである。 これも意外に目立つパートなので、あまりどうこう言わなくてもわかるだろう。 ドラムは、一番音量が大きい楽器なので、非常に練習しにくい。他の楽器はアンプのボリウムを絞れば静かになるが、ドラムの場合はどうしようもない。 一応、練習用ドラムセットというのはあるが、結局カチャカチャ・カタカタという音が出てしまい、集合住宅での練習はほぼ不可能である。「やりたくてもなかなかできない」ため、一番人材が確保しにくいパートでもある。 リズム担当は代替できないため、ドラムはどうしても1人必要になる。どうしても確保できなければリズムマシン等で補うしかない。 |
おそらく、存在が一番よくわからないのがベースである。 素人の場合、ベースの音は耳に聞こえていない。驚くかもしれないが、最近の盆踊りの音楽にさえベースが入っている。(表舞台では笛や太鼓で演奏しているが、実は影でコッソリとエレキベースを弾いている。ベースがあると無いとでは、高揚感がまるで違ってくるからだ。) ベース(Bass)という名前からして、ベースは低い音を担当する。合唱曲で無理に言えば、女声〜テノールがギターで、一番低い声域のバスに相当するのがベースである。(字はベースもバスもどちらもBass) ただし、単に低い音を演奏するという役目だけではなく、ドラムと一緒にリズムを刻んで、音楽自体の土台を形成するという重要な役割がある。 形こそギターだが、役目はギターとは全く違う。 音楽からベースを抜くと、ダシの効いていない料理のように、何かスカスカで貧相な感じになる。ドラムのリズムに重厚な低音を加えて高揚感を与える役目がベースである。高揚感というと怪しげではあるが、音楽的にはノリとかグルーブ感と呼ばれる。目立たないが重要な役目なのだ。 ギターは見た目にも目立つし「リードギター」という音楽的にも耳に残る部分を担当するので音楽全体を取り仕切っているように思うかもしれないが、音楽全体を引っ張っているのは実はドラムとベースである。 必ずしもベースという楽器自体は無くても構わないが、低音でリズムを刻むという要素は現在の音楽では欠くことができない要素だ。ベースが居なければ、負担は大きくなるが、キーボードで補完するしかない。ギターでは音域が違うため、ベースの代用にならない。 ベースは必要不可欠なパートだが、客観的に見て地味なためあまり人気は無い。バンドのメンバー募集をしたら、ギタリストだけ3人ぐらい集まってしまい、「じゃぁ、おまえベースやれ」的にベース転向を余儀なくされる場合も珍しくない。 |