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初心者のためのギター教室 〜心構え編〜
●Introduction

 この手の内容は、普通、ギターのプロなり上級者が書くものだが、この辺りを執筆している時点では、私はギターを全く弾けない

 どのぐらいの腕かというと、『えーっと、Cのコードってさ…こうやって、こうやって、ジャーン…こうだよね?』のレベルである。

(↓ちなみに、Cのコードは、こうやって押さえる)
C
|---|---|---|---|---|--- ←1弦(細い方)
|-●|---|---|---|---|---
|---|---|---|---|---|---
|---|-●|---|---|---|---
|---|---|-●|---|---|---
×--|---|---|---|---|--- ←6弦(太い方)
↑ナット(指板の先端)の部分
×は弾かない意味。

 さて、ギターの初心者のためのギターの弾き方を説明したサイトは腐るほどあるが、なぜか "練習方法そのもの" をまとめたものがほとんどない。

 「ギターはこうやって弾くんだ」という手本を見せるのはベテランでないと無理なのだが、どのように練習すればそのように弾けるようになるのかについては、何も語られていない。

 ま、ベテランになったら「一生懸命練習した(練習するしかない)」しか言えないんだろうが、全くの初心者は、その練習のしかたそのものがわからなくて困っているのが実際である。

 だから、ギターを弾けるようになるまで(入門書を終えるレベルまで)の過程を晒して、どのような練習をどの程度やって上達していくのかを明らかにしようという企画である。




●筆者のこと
 私自身、音楽センスは全くない。
 言うまでもないが「子どもの頃にピアノやバイオリンを習ってました」というような高貴なお家柄でもなければ、音楽一家というような恵まれた家でもない。

 当然、ピアノもバイオリンも弾けない。
 自慢じゃないがバイオリンは触った事はある。(そこは自慢する所ではない)

 才能だって恵まれていない。
 たとえば、小学校のとき珠算を3年間ほどやっていたのだが、最終的に10級しか取れなかった。ちなみに、珠算10級とは、普通に暗算でも何とかなるレベル(2桁の足し算・引き算、2桁×1桁のかけ算…だったかな。)である。通常、珠算をまともに3年やれば、いくら馬鹿でも4級ぐらいは取れるそうだ。
 そう。私は豊かな負の才能に恵まれているのだ。
 (ダメじゃん)

 自分の負の才能はどうでも良いが、ギターは、練習なしに弾くことができない楽器である事は確かである。しかし、漫然と練習を続けたからと言って、弾ける保証はない。少なくともいくら練習してもポイントをつかめなければ何も身につかない事は、珠算歴3年で10級という腕前が証明している。

 ギターについては、ちょっとやって挫折した経験は何度かあるという経歴がある程度で、全くの初心者に等しい。
 なお、ギター教室には通った事はない。ギターの教材を買った事もない。



●このページの目的
 おそらく、ギターという楽器は、挫折する確率が非常に高い楽器だと思われる。多くの人は、上手くいかない壁にぶち当たり、そこを乗り越えるためにどのような練習をすれば上達できるのかわからないために挫折していく。

 練習のコツを自然とつかめた人だけが弾くことができているのだ。

 逆を言えば、練習方法のコツさえつかめば、音楽センスがなくても、才能がなくても弾けるようになる。
 だから、あえて『ギターなんぞ誰でも弾ける』と豪語しておく。(いいのか?)

 なお、当サイトは教則本を読んでおけば知っているであろう用語についてはいちいち説明しないので、そのつもりでいて欲しい。(単に書くのが面倒だからという事もあるし、それについてまとめたサイトは腐るほどあるので、二番煎じになるので省略する。私も初心者である事に違いはないので、よく知らないという事情もある。)



●初心者はこうして挫折する
 ギターを独学で学ぶならば、教則本を買って、その通りに練習するのが王道だろう。

 教則本は、本という体裁の手前、初心者が陥いりやすい罠が潜んでいる。

 ギターの教則本の構成は、おおむね次のような内容である。

(1)ギターの各部の名称、構え方、楽譜(TAB譜)に書いてある記号の意味の説明
(2)コードを覚えよう(左手のコードの押さえ方)
(3)ストロークパターン/アルペジオ(右手の刻み方)
(4)実際に弾いてみよう(課題曲が数曲)
(5)コード一覧

 そして、教則本の通りに勉強すれば一応弾くことはできるようになるのだが、最大の壁は『コードを覚えましたか? では、さっそく曲を弾いてみましょう』という所だ。

 なにげなくサラっと書いてあるが、この数行を乗り越えるのに実は余裕で数ヶ月はかかる。【重要】

 教則本を順に(1)各部の名前や構え方、(2)コードの押さえ方、(3)ストロークのやりかた までをマスターするだけなら3日とかからないだろう。単純に覚えるだけなので、そんなに難しい内容ではないはずだ。
 そして、(1)〜(3)のペースで「(4)(練習曲を)実際に弾いてみよう」という所にまで来る。一応、必要な事は覚えたので、プロ並みに弾けないのは当然としても、下手でも弾けないとおかしいと思いこんでしまう


これが罠だ。



 実際やってみるとわかるが、ギターを始めてすぐの頃は、コードチェンジのスピードが非常に遅い。

Cは…こうしてこうやって…、
………。
……。
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、
Gは…こうやって…
………。
……。
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン…
Amは…こうして…、
………。
……。
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン…
Emが…こうして…
………。
……。
またCに戻って………。

こんな感じである。

 どんなに速くコードを切り替えようとしても余裕で全音符2個ぐらいの時間がかかる。
 つまりコード切り替えに時間がかかりすぎてしまうため、リズムが途切れてしまってまるで曲にならないのだ。



 テンポが遅いとか下手クソというレベルではない



 初日がこの程度なら納得もするだろう。


 しかし、3日経っても1週間経っても全然上手くならないのである。


 
 この他にも、指先が死ぬほど痛いという、予想外の問題も起きる。通常、3日経って何の進歩もなければ飽きるのが相場である。


 
●教則本には肝心な事が書いていない
 きっと何かコツがあるに違いないと思って教則本をくまなく探すが、『何度も繰り返して練習してください』とか『何度も練習してマスターしよう』としか書いていない。『うまくコードチェンジできましたか?』に至っては、殴ってやろうかとも思う。

 私自身、漫然と練習したって何も身につかないという事は知っている。だから、多くの人もどんな練習をどのぐらいすれば良いかを知りたいはずなのだ。しかし、教則本は何をどのように、どのぐらい練習すれば(下手でもいいから)弾けるようになるのか、何も触れていないのだ。

 実際には本人の技量、確保できる練習時間等に差があり、標準的な習得時間を示す事はできない。ここまでできれば「マスターしたと言える」という基準もない。しかし、せめて「1日○時間練習して○ヶ月程度」ぐらい書いて欲しいと思う。しかし、不思議な事に、どのような教則本も練習方法も内容も全く書いていない。
 「1週間もあればできる」と書いてあって2週間経ってもできていないと落ち込む事にはなるが、実際には逆で、1週間でできそうな事ですら数ヶ月かかるというのが相場だ。しかし、そういった事すら書いていない。
 

 また、どうやって練習すれば良いか(今の練習で良いのか)わからない状態で立ち止まっているうちにやる気がなくなってしまったり、それなりの才能がないとダメなんだという事になってしまう。

 なんとなくでもいいから弾くことができれば、少しは楽しくもなるのだろうが、最低限弾けるまでの壁を越える事ができず、多くの人が挫折していくのである。


●練習の極意
 実は、練習にはやりかたがある。だから、そのコツさえつかめば、才能がなくてもほぼ機械的に身につける事ができる。

 もちろん、コツをつかんだからと言ってすぐ弾けるものではないが、練習のコツさえつかめれば、1ヶ月程度できちんと形になるものである。
 巷には「一週間でギターが弾ける」とか「三時間で弾ける」的なものもあるが、現実的な時間としてはそんな短期間で身につく事は無理だと言っておく。そんな旨い話などない。というか、その手の教材は見たことがないが、最低でもFが弾けて、自分の好きな曲のコード弾きぐらいできるようにならないと弾けたとは言えないんじゃないかと思う。
 現実的に習得に必要なタイムスケールは何週間、何ヶ月の単位である。ギター歴1年であってもまだまだケツが青いと言われるレベルだろう。

 ただ、「1ヶ月で弾ける」とまでは断言しないが、その程度の期間があれば、確実に「初心者の壁」を乗り越える事は可能だ。



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…冗談だ。(↑クリックできません)

●練習の極意

 極意を伝えよう


 我々日本人は、食事の時に無意識に箸を扱う。別に指をどう動かすかは考えていない。要するにギターも同じである。

 ギターが上手い人は、指が手癖になって動いていて、どのように指を使えば良いか自体は考えていない。

 ド素人がギターを覚える時も同じである。CとかFといったコードの押さえ方を指が覚えていないからスムーズに弾けないのである。

 ギターを習う時、他の習い事のように、『コードの押さえ方(何かのやりかた)を覚えて、その通りに指を正しく押さえていけば、なんとか弾けるようになるはずだ』という意識は捨てて欲しい

 形の上では確かに「覚えたとおりに手を動かす」事になるが、暗記した事を即座に思い出して、その通りに手を動かすという感覚ではない。

 あくまでも、『動きを覚えるのは手』である。反復練習によって手に動きを覚え込ませておいて、最終的には手に任せて弾いていくようなイメージだ。

 繰り返す。
 上手く弾けないのは、あなた自身の努力が足りないせいではない。単にあなたの指が動きを覚えていないからである。

 だから、手に覚え込ませる段階では、『コードの正しい押さえ方やコードチェンジをゆっくり確実に動かす』という事をやる。
 何度も「正確な動き」を意識しながら指を動かすことで動きが固定され、正確に動くようになる。このために必要な期間は、最速で2週間、おおむね1ヶ月かかる。ギターを弾くための神経回路を構築する事になるので、2週間ぐらいで何とかなってきたとしても、なるべく1ヶ月程度じっくりやってほしい。
 だから、手が動きを覚えて、スムーズに動くようになるまでの1ヶ月間は、まともに曲にならない事は覚悟してほしい。


 したがって、練習の内容は、コードの押さえ方などを全て手癖として手にたたき込む訓練になる。

 無意識的に指が動かせるようになるには、毎日練習をして「いつもやっている事」というのを指に教え込ませる。だから、練習は短時間で構わないので毎日行う必要がある。一度に何時間もかけて練習しても意味がない。
 
考えて欲しい。人間は、片っ端から忘れていく。3日前の昼に何を食べたかぐらいは思い出せるだろうが、10日前の夕食のメニューはどうだろう? 放っておくとどんどん忘れていくのだ。だから、毎日少しずつ練習した方が、週一回のまとまった練習よりも圧倒的に上達が早い。可能ならば12時間置きぐらいの方がいい。

 特に、ギター教室に通う場合は要注意だ。練習は毎日する事が鉄則である。だから、練習の9割は自宅で行う事になる。教室に通ったとしても独学でやるつもりで練習し、週1回アドバイスを受けたり、課題をもらいに教室に行くつもりでいた方が上達は早いはずだ。

 練習はスピードよりも正確性を重視する。いくら速く弾けても間違えてばかりでは元も子もない。だから、間違えようがないほど馬鹿みたいに遅いテンポで練習をする。速く弾く練習は禁止である。速く弾く事は目指さない。むしろゆっくりしたテンポに合わせる事を意識する。
 さしずめ、書き取り練習のために、手本をゆっくりなぞるようなイメージだ。英語の筆記体も、最初はゆっくり書いて字形を覚えて、少しずつスピードを上げていけば、スラスラときれいに書ける。最初からスラスラと書こうとするとミミズが這ったような、読めない字になってしまう。スラスラ書けても文字が読めないと意味がない。演奏も聴き取れるように弾かないと意味がない。

 エアギターは禁止である。早く上手くなりたいからといって、ギターがない時にも弾いたふりをして練習する人が多いかもしれないが、それは無意味であるばかりか、下手をすれば有害である。繰り返すが「正しいフォームを指に覚え込ませる」という事が必要である。現物がないと指は動きたいように動いてしまう。指はその方が楽なので、楽な方に動きを変えようとする。すると、いざ現物で練習しようとすると弦を1本間違えたりする。休んで頭を整理するのも練習の一つである。

 くどいようだが指が動きを覚えてくるのにかかる期間は、約1ヶ月程度である。少なくともテンポを少し落とせば間違えずに弾けるようになる。ほとんど間違えずに弾けるので、スピードを上げていくための練習は単純に楽しい。そういう意味でスピードを上げるのは簡単だ。だからこそ、指に動きを覚え込ませる段階では、正確な動きができる範囲レベルまでテンポを落とし、正確に動けるテンポの範囲でのみ練習する。
 一方で、実際に誰かに対して演奏する場合は、逆にリズムを崩さない事の方が重要になる。コードを思い出せずにひっかかっても左手を間違えても右手のカッティングのリズムは崩さない。極論を言うと音楽はリズムが重要であって音程は二の次である。だから、練習は左手(音程)重視、実戦は右手(リズム)重視である。両方が完璧である事が望ましい事は言うまでもない事だが、こういった話はずっと後の事である。

 肝心の練習方法だが、効率的に指に動きを覚え込ませるために、指の感覚だけでコードチェンジしていく訓練をする。いちいち指が正しく押さえたかを目でチェックしない。せいぜい確認の意味で、目の前にある譜面やコードの押さえ方の図の方を見る。
C
|---|---|---|---|---|---
|-●|---|---|---|---|---
|---|---|---|---|---|---
|---|-●|---|---|---|---
|---|---|-●|---|---|---
×--|---|---|---|---|---

 いきなり無茶を言うが、Em、Am、Gなどは意外に勢いで押さえてしまえるものだ。
 それに、間違えたかどうかは、弾けばわかるのだから、指の動きを目で追う必要はない。どうしても位置がわからなくなった時と、間違えた時だけ目でチェックする程度にする。
 この訓練はかなり集中力を必要とし、脳にかなり負担がかかるため、あまり長時間できない。だから、毎日の練習は、集中力が持続できる30-40分程度しかしない。その程度で充分である。
 それに、練習にたっぷり時間をかけられる恵まれた人は多くないのだから。

 『指の感覚だけで弾け』というのは、初心者にとってかなり負担の大きい要求である。間違える事も多いだろうが、間違えてしまった事は、いちいち気にしない。動きを覚えるのは指の方である。だから、うまく指が動かない事で自分を責めても意味がない
 「あ、間違えた。えへへ」ぐらいの無責任な気持ちで充分である。間違えるという事は指がまだ正しく位置を覚えていないだけなのだ。手には目も耳もない。指板を見ないで正確に指を動かすためには、経験と勘だけが頼りだ。だから、指の感覚(指先ではなく、指全体の感覚)を研ぎ澄まし、どのように押さえているかをイメージしながら、正確に押さえる練習をするのだ。

 毎回ギターを構えた時のギターの位置を安定させないと指や腕がフレットの位置を正確に覚えられないため、(面倒に感じるだろうが)ギターは必ずストラップを付けて練習する。
 
これは、同時に『立って弾こうとしたら全然弾けない』という事を防ぐ目的もある。
 クラシックギターの場合は、基本的にイスに座った姿勢で弾く(ストラップは付けない)が、ギターの構え方が厳しく指定されているはずなので、その姿勢に従って欲しい。
 しかし、ロックやフォークソング系ではクラシックほど姿勢が厳しく指定されないため、とりあえずアグラをかいてギターを構えたりする事が多い。しかし、座り方や姿勢でギター自体の姿勢が安定しないため、どうしても、習得も遅くなるという悪循環が起きる。
 しかも、座って練習を続けて、いざ立って弾こうとすると、ギターが垂直になって指板が見えず、フレット自体の位置も2フレット分ぐらい変わる。しかも、ピックアップ(サウンドホール)が下に行ってしまい、ピッキングの感覚が完全に変わってしまい「弾けないよ〜」と泣く事になる。
 立った時と座った時の位置の差を最小にするために、ストラップの長さは、座ったとき、ボディが軽く足に触れるか、少し浮く程度まで短くする。ギターが上すぎるとビジュアル的に格好良くないが、今はそれを気にする段階ではない。
 座って弾く場合も、床にベタっと座るよりは、できればイスに浅く座っておくと立った姿勢に近いし、ギターは足から滑り落ちやすくなるのでストラップを付けざるを得なくなる。
 そうして練習しておくと、そのまま立ってもポジション移動がほとんどないため、立ってもほぼ違和感なく弾ける。
 
 ギターを構える姿勢は、背筋を伸ばしてまっすぐ前を見るような姿勢にする。ちょうど、昭和の歌謡曲の後ろで棒立ちしているギタリストのように、「姿勢を正しくまっすぐに」である。どこぞのロックギタリストみたいに猫背で指板をのぞき込む姿勢は、肩や腰に大きな負担をかけるため、好ましくない。
 当面はローコードによるコードチェンジが練習の中心である。腕はほとんど動かない。だから、指板なんぞ見なくても弾ける。
 見るのは正面にある譜面や資料(指の押さえ方のメモなど)である。


 指が動きを覚えるまでにおよそ1ヶ月程度かかる。途方もなく遅い。ただし、音楽センスも、才能も、暗記力も要らない。コツは上に示した通りだが、形式的には毎日ギターをいじっていれば勝手に身についてしまうというだけだ。


 練習のコツは、だいたいこんな感じである。



●上手くできない事の切り分け
 「上手くできない」には2タイプあって、練習の積み重ねでしか得られない事と、コツをつかめば難なくできてしまうものがある。この切り分けができないと時間を無駄に消費する事にもなる。

 さきほど掲げたコツは、基本的に「繰り返し練習する」事で上達できるものの習得方法のコツである。ゆっくり時間をかければできるが、早くやろうとするとできない場合は、そうやって体に覚え込ませる。
 形になるまで1ヶ月前後という長い期間が必要になる上に、成果が現れるまででさえ2-3週間かかる練習(訓練)であるため、理屈がわからないとやる気が続かない。だから、長々とコツを書いた。

 もう一つ、「コツをしっかり把握する」という事で克服できる場合もある。どうやれば良いのかわからず、闇雲にやっていたら、あるときスッとできるようになった、というタイプである。ある瞬間から100%確実にできるようになる事は滅多にないが、10回中1回成功が、10回中2回は成功になって、そのうち毎回確実にできる、という具合に上達する。

 たとえば、ギター初心者が必ず経験する「Fの壁」というのがある。Fを押さえる事ができずに、悩みを抱えるのは珍しくない。

F
|-●|---|---|---|---
|-●|---|---|---|---
|-●|-●|---|---|---
|-●|---|-●|---|---
|-●|---|-●|---|---
|-●|---|---|---|---

 Fのコードはバレーコード(人差し指で全部の弦を押さえておきながら、他の指でも押さえる形式のコード)なので、他のコードよりもずっと難易度が高い。簡略形で逃げるのも一つの手ではあるが、それではいつまでもFは押さえられないし、BやC#mなどの他のバレーコードを弾くときの基礎でもあるので、必ず習得しなければならないものだと心得て欲しい。

 Fがうまく押さえられないという悩みは、2種類の悩みが混在している。
 まず、バレーコードという特殊な形に瞬間的に指を変える動作ができないという悩みである。これは、他のコードからFに移る練習を何度もやって、指に動きの流れを覚え込ませるように練習する。無意識的にスムーズに動くには数ヶ月というオーダーで時間がかかるが、毎日やっていればそのうちできるようになる。

 もう一つが、Fのコードの形はできているのに音がきれいに鳴らないという悩みである。これは、押さえ方のコツを把握していないパターンだ。これは、力のいれ具合(どこに力を入れて、どこの力を抜くか)、指の角度などの問題があるため、うまく鳴らない。
 しっかり押さえようとすると、握力がいくらあっても足りない。(ちなみに、握力が50kgfもあるが、うまく鳴らないものは鳴らない。)
 この辺は「どうすれば少ない力できれいに鳴るか」をいろいろ試すしかない。
 たとえば、人差し指の中央を浮かせて、○の部分の力を抜き、両端だけ押さえるつもりで弾くと、幾分楽になる、といったコツを見つけたりする。
F(脱力型)
|-●|---|---|---|---
|-●|---|---|---|---
|-○|-●|---|---|---
|-○|---|-●|---|---
|-●|---|-●|---|---
|-●|---|---|---|---

 まず、いろいろ微調整しながらきれいに音が鳴るポイントを探す。次に、それを再現できるように練習する。「失敗する確率を減らす」という方向の練習である。これは、Fに限った話ではなく、他のコードでも言える事である。

 ただし、いくらコツをつかんでも、「瞬時にバレーコードのスタイルにする」という動作はできない。この訓練は毎日少しずつ繰り返すしかない。

 一応コツは示しておいたが、予言しておく。
 どうせ後で「Fが弾けないよぉ」と泣くはずだ。
 しかし、そのとき、何がどうできないのか、どうすれば上手くなるかの分析ができるはずだ。



●三日坊主にならないために
 基本的な練習のコツは伝授した。
 一番肝心な事は『毎日少しずつ練習する』である。他のいかなる教材でも、この点だけは変わらない。
 よほどの才能があればすぐ弾けるかもしれないが、少なくともこんな文章を読める歳になってしまっては、才能はもう開花しない。
 才能のない人(開花できなかった人)は、地道な練習以外にギターを習得する方法はない

 ただ、『毎日少しずつ練習する』という事自体、進歩が実感できないと三日坊主を招きやすい。言っちゃ何だが、ダイエット機械と同じで『毎日たった○○分で○○kg痩せられる』みたいなモノである。
 本当に毎日きちんとやれば効果があるのだろうが、現実的には「すぐに効果が出ない」「めんどくさい」で、いつのまにかやめてしまいがちになる。

 先に示した通り、指が動きを覚えるまでに数週間というスケールで時間がかかる。

 おそらく、1年や2年では初心者の域を出ないだろう。それほどギターは長い期間の練習が必要な楽器である。だから、ギターをやるならば、日常生活の中の日課として練習時間をキープしておく事が重要でもある。
 食事をする、出かける準備をするといった生活で必要な事の一つとして練習の時間を設けておくのだ。
 プロを目指すなら完全にギター中心の生活に変えなければならないとさえ言われている。

 理想的には毎日1時間〜2時間程度確保したいところだが、学生は学生で勉強が忙しい。社会人は社会人でなおさら仕事で忙しい。むしろ、「1-2時間は充分確保できる」という人はとても恵まれていると思った方がいい。

 ただ、いくら忙しくても10分ぐらいはどうにか工面できるだろう。10分あれば(もし、まともに曲が弾けると仮定すれば)2-3曲は弾ける時間だ。10分ですら、ギターの練習にとってはかなりまとまった時間になる
 私自身、ギターを始めたのが仕事で猛烈に忙しい時期だった。ストレスで寝られないので、寝る前にギターをいじってクールダウンして寝るというようなタイミングで練習していた。練習時間はどうにかなるものである。

 あと、ギターを買うときスタンドも一緒に買って、すぐ弾けるようにしておく事もいいだろう。ケースに入れておくと『出すのが面倒』というつまらない理由でやめてしまいがちになる。



●シナリオを考える
 ギターを覚えていく方法としては主に2通りあって、
(1)基礎をきちんと積んでいく方法
(2)好きなアーティストの曲で覚える方法
がある。
 どちらが良いかという議論はあるが、正直言ってどちらでも良い。いずれにせよ「弾きたい曲を弾けるようになる」のが目標なのだから、弾きたい曲を最初からやるか、後のお楽しみにしておくかの違いしかない。
 それに、先に示したように、どちらにしても最初の1ヶ月はまともに曲が弾けない以上、客観的に見てどちらをやっているかの区別がつかない。
 心構えの違いだけで、要するにやっている事は同じなのだ。

 どんなに簡単な曲でも、全くの素人が1曲弾けるようになるまでは、(曲の内容にもよるが)最速でも1ヶ月前後はかかる。
 典型的フォークソングでも「下手くそ〜」と評価してもらえるレベルになるにはもっと長い練習を積まないといけないだろう。
 上達のスピードそのものは非常に遅い。どうせ遅いなら、両方やった方が効率的だ、というのが私の考え方である。


 「基礎をきちんと積んでいく」側のシナリオだが、さらに2タイプに分かれるようだ。
(1)基礎を積み重ねる方法
(2)簡単で上手く聞こえる技術からやる方法
 基礎を積み重ねる方法では、基本中の基本を何度も繰り返す事になる。正直に言ってつまらない。簡単で上手く聞こえる技術からやるのは、達成感が得られやすいが、プロによる指導か、DVDなどのビデオがないと難しい上に、内容によってはネタのオンパレードになってしまい、応用が利かない事もある。

 私自身が初心者なので、例題を示す事ができない。よって、本編では「基礎をきちんと積んでいく方法」と「好きなアーティストの曲で覚える方法」を組み合わせる

 基礎練習側では、まず最初の1ヶ月はひたすらコードチェンジ(あるコードから別のコードに切り替えること)に費やす。ストローク(右手で弦をジャンジャカジャンとやる動き)は2ヶ月目以降というメニュー配分になる。

 すぐに弾けるようになりたいと思うかもしれないが、ギターという楽器は根本的に左手が動きを覚えないとまともに弾けない楽器である。
 それに、指が動きを覚えるまでには1ヶ月、2ヶ月という長い期間がかかる。覚える事が多少前後したってたいした影響はない。「ギター歴1年」と聞いたとき、まだ初心者の域だという感じはしないだろうか? 1ヶ月程度で何らかの成果が出る方が奇跡のようなものだと思えないだろうか。



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