Sky-Watcher BKMAK180(Part2)

 なかなかレビューネタに到達しませんが、晴れてくれないので許してください(汗)

 前回は、つい熱くなって「驚愕の遮蔽率の事実」を明かすことに明け暮れてしまいました。

 さて、BKMAK180を買った理由は極小副鏡遮蔽率に釣られたからではありません。いや、正直言うと理由の2-3割は遮蔽率の小ささに釣られたことは事実ですが。

 最大の理由はグレゴリー式マクストフカセグレンは、幾何学的に光軸をチェックできるため、光軸修正がきわめて容易だからです。

 比較的中央遮蔽率が高いシュミットカセグレンでも、よく調整されたものの評価は非常に高いです。マクストフカセグレンでも調整しだいでシュミットカセグレンに肉薄できることは期待できます。


2016/07/20
●カセグレン式の問題

 望遠鏡の性能を決める要素は
・収差の少ない設計
・精密な研磨
・正確な調整
・充分な外気順応
などがあります。(他にも要素はありますが)

【設計】
 設計の優秀さという側面で言えば、グレゴリー式マクストフカセグレンよりも、シュミットカセグレンやルマック式マクストフカセグレンの方が絶対的に優れています。

【研磨】
 シュミットカセグレンは非球面補正板によって、理論上、球面収差を皆無にできます。しかし、非球面の補正板の滑らかな研磨は難しく、円滑な研磨という面においては球面で構成されるマクストフカセグレンが有利です。球面で構成される望遠鏡は球面収差を除去できないので、F値を大きくするなど球面収差を目立たなくすれば充分実用になります。

【光軸】
 どんなに優秀なレンズや鏡を使っていたとしても、光軸が狂っていては元も子もありません。最高のパフォーマンスを引き出すには、正確な光軸調整が行われている必要があります。

 理論上最高性能が出るはずのシュミットカセグレンの評判が高くない原因のひとつは、光軸が狂ったまま使われていることです。

 カセグレン式は光軸が正しく合っているかどうかの判断が難しく、光軸調整もまた極めて困難という問題を抱えています。あまりシャープに見えないことはわかっていても、外気順応が不十分なのか、研磨不良のハズレを引いてしまったか、単にシーイングが悪いのか、原因の特定ができません。

 シュミットカセグレンの光軸調整は副鏡側で行うために極めて敏感で、素人が下手に触ると収拾がつかなくなる危険があります。原則としてユーザーが触ってはいけないものです。一般にはメーカーに返送して調整してもらうことになっていますが、明らかに光軸の問題だというところになかなかたどりつけないのです。

 慣れれば難しくないと言われますが、シーイングがきわめて良い夜に、事前に1時間以上外気順応させた状態で焦点内外像を使って追い込んでいく必要があります。
 最高のシーイングとなる夜なんて年に数回もなく、冬場の光軸チェックは絶望的と言っていいです。そのようなタイミング的な問題も難易度を上げます。

 カセグレン式望遠鏡は、最高の状態に置いておくことが困難な望遠鏡です。


2016/07/20
●グレゴリー式マクストフカセグレンの優位性

 グレゴリー式マクストフカセグレンは、シュミットカセグレンやルマック式マクストフカセグレンより、性能面では劣ります。
 しかし、幾何学的手段で光軸調整が行えます。

 光軸調整法の詳細については別記したので参照してください。

 天候に関係なく光軸を合わせることができるため、ニュートン式望遠鏡並みにメンテナンスが容易になり、常に一定以上のパフォーマンスを引き出すことが可能です。
 クルマに乗せて移動させても、光軸が狂ってしまったかを容易に確認・調整ができるので、安心して遠征にも使え、稼働率を上げることができます。

 ここが、シュミットカセグレンやルマック式マクストフカセグレン、ビクセンのVMCにはない大きな優位性となります。

 調整さえすれば100点の性能を出せるはずなのに、調整のやりかたがわからないためにいつも40点、50点の性能しか出せない状態になっているよりも、がんばっても90点を超えられなくても常に85点や90点を叩き出せる方が良いはずです。


2016/07/21
●BKMAK180の光軸チェック

 手元に届いてからあまり日が経っていないので、光軸はほとんどずれていないはずですが、本当にずれていないか、チェックしてみることにします。
 具体的にBKMAK180を使って光軸のチェックが可能かどうのチェックも必要です。

 主鏡の焦点距離が450mmぐらいあるので、長さ900mm、5mm角のひのき材をホームセンターで購入。望遠鏡先端から900mm前方に光源を置いて主鏡と副鏡が正確に合っているかをチェック。



 カードに投影すると、カード自体で光源の光を遮断してしまい、判断のための像がよくわからないものになってしまったので、14mm幅の棒を突っ込んで投影させています。

 投影位置は、筒先から十数cmぐらいで主鏡・副鏡それぞれの反射光が重なりかかる状態になりました。ポケモンのボール(モンスターボール)みたいに見えていますが、外周部が主鏡反射による像、中央部が副鏡反射による像です。

 画像を見ると、0.1mmか0.2mmぐらいずれている気もしますが、ちょっと簡易的に設置した関係で光源の設置誤差も考えられます。
 とりあえず「光軸はズレていない」と見ていいでしょう。
 ※光軸調整自体のテストをする都合、上下方向は精密に合わせていませんので、上下でやや非対称になっています。

 このように、星を見ることなく、室内で光軸のチェックができるという点がグレゴリー式マクストフカセグレンの大きな特徴です。


2016/07/21
●実際の見え方

 光軸に問題が無いことが確認されたので、あとはシーイングの良い夜空を待つだけです。年に数回しかないような、すばらしいシーイングの日には、そう簡単に当たらる訳がないので、真価を充分発揮できている状況ではないという断りを入れておきますが、土星のカッシーニの間隙は、余裕で解像しました。
 エンケの間隙までは判断がつかないものの、A環、B環、C環それぞれハッキリわかります。土星本体の極部が暗くなっている様子もわかり、土星が非常に立体的に見えます。この夜は、17mm(160倍)ぐらいで解像上限という感じでした。

 月面は、バレル内反射のせいか、あまりコントラストが高いという感じではありませんが、視界をはみ出す月面は圧巻です。月面であれば14mm(192倍)でも充分楽しめます。


 


2016/07/21

[戻る]