白色光用機材

●観測機器構成

撮影用望遠鏡:タカハシFS-102
カメラ:Nikon D70
減光フィルタ:BAADER AstroSolar(フード内)

眼視用望遠鏡:ビクセン60L(OEM品)
減光フィルタ:ビクセンサンプリズム+サンプリズム用サングラス


 カッコ良く言えばヘリオグラフ(太陽面撮像装置)という名前にはなりますが、普通の屈折望遠鏡に減光フィルタと600万画素のデジタル一眼レフカメラをくっつけだだけの、別に珍しくも何ともない構成。
 特殊機材と言えば、眼視での確認用に使っている、(今となっては入手困難な)サンプリズム+サングラスぐらい。サブスコープ脚や、6cmのF15といった、本題とは関係ない機材の方が、むしろ珍しいかもしれません。

 保証精度ではないのですが、おおむね次の精度は維持できています。
各種精度
 観測時刻:±120秒(Exifタグより取得:やや怪しい)
 回転角(東西線の傾き):±0.08度
 視直径決定:±4秒(±2pixel)
 P,B0,L0の取得:±0.05度
 透明度判定:±0.3EV
 黒点位置読み取り:0.5度(太陽表面経緯度換算)


 ちなみに、国立天文台も三鷹で撮像観測をやっているそうですが、そこにある「10cm新太陽黒点望遠鏡」は、2000×2000ピクセル(400万画素) のCCDを搭載しているそうです。デジカメの画素数がメガピクセルになったとかが話題の中心だった頃の400万画素なので、撮像ユニットだけでも想像を絶する値段だったのでしょう。
 遅れること7年。2004年には600万画素デジタル一眼レフが10万円台で爆発的に普及。性能には雲泥の差はあるでしょうが、スペック的にはアマチュアがプロ機材を追い越してしまったことになります。


2006/05/21
●なぜ太陽観測か?

 星を見るのが趣味であるなら、やはり天体観測をしたいものです。

 言葉の定義を言えば、観測とは『ある対象の状態を測定して数値化し、変化の様子を集計(意味のある情報として整理)する一連の作業のこと』です。すなわち、星を測定し、その測定値を集計するのが天体観測。ただ星を見て感動したり、美しい写真を撮ることを観測とは呼びません。(※その行為を否定している訳ではありません。観測と呼ばないというだけのことです。)

 ところが、胸を張って観測したと言える経験は、実のところ(中学時代の部活でやっていた)太陽黒点の観測しかありません。かと言って、新星や彗星の捜索をするほどの根性もないし、そもそもやりかたもよくわかりません。
 そこで、できる観測ということで太陽黒点の観測という訳。

 太陽の観測は、当たり前ですが日中の観測になります。社会人ともなると、観測する時間の確保が厄介です。しかも、家の立地条件など、様々な障害はあるものの、朝のちょっとした時間を利用するなど、ライフワークに組み込んでしまえば意外と観測は続けることができます。

 実際、仙台に住んでいたとき、1年ほど太陽を投影法で観測を続けることができました。


2006/05/21
●続けられなかったわけ

 『1年ほど続けた』と言うことは、言い方を変えれば、1年でやめてしまったということでもあります。
 やめた理由は、太陽投影板が壊れたことや、引っ越しが間近に迫って、継続が難しくなってきたこともあったのですが、最大の原因は観測記録がたまる速さに集計が追いつかなかったことにあります。

 集計作業と言っても、難しい計算をする訳ではありません。詳細は別途記載しましたので参照いただくとして、経度差を補正したり相対数を求めたりといった、つまらない足し算・引き算の繰り返しばかり。
 データの整理は比較的単純な作業なのですが、続けているとやはり飽きてきます。おまけに算数は苦手。

 表計算ソフトを使って集計作業の自動化を目指したところで、そもそも投影法による観測は、紙ベースのアナログ処理です。測定データである数字を起こすまでは手作業となってしまい、電子化・自動化のメリットがほとんどありません。
 パソコンを活用したところで能率がちっとも上がらないのです。

 それに、学生の部活動/サークル活動の一環としてやっているのと違って、社会人は毎日の生活の中に集計(部活動等)のための時間枠が確保されているわけではありません。忙しい日はもちろん記録を取るのに精一杯で、集計まで手が回りません。

 ちなみに投影法による観測にかかる時間は、経験上、
・望遠鏡の設置・撤収 … 5分(もちろん経緯台)
・スケッチ … 10分
・P,B0,L0を調べたり補正計算をする … 10分
・黒点の位置測定やL0による経度補正計算 … 20〜30分
・統計資料にまとめる … 2時間程度(1か月に1回)
といった感じです。

 1日分の観測データの集計におよそ1時間が必要という計算です。これを毎日続けるのは時間的にも厳しいので、スケッチを残すのが精一杯。残りの集計は、時間を見て作業することになります。



 ところで、仙台市は太平洋側の海沿いの町なので、不幸にも(?)冬場は毎日快晴が続きます。この状態で1週間分も集計を放置してしまうと、未集計分のデータ集計のために日曜日が丸々つぶれてしまいます。1ヶ月分ためてしまうと、土日を使ってもさばき切れなくなります。

 結局、黒点数と観測日数が増えると、後に待ちかまえる集計作業がたまってしまい、観測を続けることがかえって苦痛になってしまいました。そこへ投影板の破損が重なり、それをきっかけとしてやめてしまったのです。


 やろうと思えばいつでも始められます。しかし、観測・集計の自動化や完全デジタル化が実現できない限り、再開しても、後処理で詰まってしまって続かなくなるのは目に見えています。


2006/09/09
●また始めたわけ

 2005年2月10日の夜。なんとなく西の空を見ると、空がほんのり赤くなっていました。


 現在の観測地である水沢は、北緯39度8分という位置にあり、低緯度オーロラは全く見られない訳ではありません。しかし、さすがに本州なので太陽黒点が最盛期の頃でも見られるかどうかと言われるほど、珍しい現象です。

 それにしても街灯にも負けないほどの、異様な空の赤みです。

 肉眼黒点の、しかもかなり巨大なものでも現れているのではないか――と、太陽面が気になり出しました。それが、観測を再開してみようと思いたったきっかけです。

 もちろん、「きっかけ」だけで始める訳にはいきません。再開するにあたっては、解決しなければならない問題があります。集計作業の省力化・自動化です。

 時代的は進み、一眼レフデジタルカメラは600万画素が10万円台を達成。スケッチ代わりに高精細の画像を撮像することができます。画像処理プログラムはさすがに売っていませんが、それでもC#でプログラムを組めばネイティブで動作するプログラムが意外に簡単に作ることができます。
 さすがに600万画素の画像処理は重くなりますが、パソコンのCPUも3GHzを超えたし、その気になればマルチスレッドで高速化も可能。(ここは自作プログラムの強み。)
 仕事柄データベースを使っていたのでデータベースでの集計も手慣れています。

 観測・集計の自動化やデジタル化が充分実現可能になっていたのです!

 そして、翌日から観測を開始。同時に、撮影画像に赤道を入れたり、経緯度図を重ねるプログラムを作りながら、集計処理の自動化を着々と進めていきました。


2006/05/21
●画像生成プログラム

 現在、太陽面はスケッチせずにデジタルカメラ(NikonD70,JPEG/Fine、現在はNikonD50,RAW+JPEG/Basic)で撮影しています。
 その画像を自作ソフトに取り込んだ際に、JPEG画像の中にあるExifデータから撮影日時を読み取ってP,B0,L0を自動計算。1分程度置いて撮影した画像(位置決定フレーム)との位置の差から東西方向を決定し、経緯度線の描画やトリミング、レベル補正、展開図の作成までをこなします。


 そして、展開図を見て黒点の位置と数をデータベースに入力、ワンクリックで集計表(HTML)を生成します。
 これで、手作業は、撮影、ベストショットの選択、画像の位置合わせ、黒点群の位置測定と測定結果の入力(と、アップロード)だけ。黒点数が少なければ撮影開始から最終的な集計表を得るまで10分足らずで完了します。
 実際は直視法による確認や、Hα光での撮影も行っているので、実際はもう5分ぐらい余計にかかっていますが、作業時間にして投影法の1/5以下という圧倒的な省力化を実現しました。

 繰り返しになってしまいますが、この執拗な省力化は、観測を続けていくことが憂鬱にならないようにするための、「自分への配慮」なのです。


2006/05/21
●低緯度オーロラの正体

 低緯度オーロラと思われた空の赤みですが、どうやら結局のところ、国立天文台が電波望遠鏡をナトリウム灯でライトアップしていたものが、空で散乱して赤みとなって見えていたと判明。
 国立天文台の電波望遠鏡が、水沢市の新たな観光名所になっているようですが、国立天文台が率先してライトアップするのはいかがなものかと思っています。



↑ライトアップ中の電波望遠鏡。自宅より撮影。


2006/05/21

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