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NikonD70は、今更言うまでもありませんが、600万画素CCDを搭載しています。 他社のデジタルカメラと比べて、特別高精細という訳ではないのですが、これだけ画素数があるとピンぼけも目立ちます。 画素数に恥じない、シャープな像を得るには、オートフォーカス(AF)に頼らないとどうにもならないのが実情。マニュアルフォーカス(MF)も機能的には可能ですが、もはやMFでシャープにピントを出すのは不可能と言って良いでしょう。 しかし、望遠鏡に取り付けた場合、望遠鏡はAFレンズではないためMFでのピント合わせが余儀なくされます。 2006/05/21
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一応、D70は、MF動作時もAFセンサーが働いていて、フォーカスエイドの機能がつかえます。 ただし、望遠鏡は一般に、カメラレンズに比べてF値が数段暗いため、ほとんどの場合、使えません。(確か開放F値が5.6より明るくないと動作しなかったはず。) 明るい光学系を使えばセンサーは働いてくれますが、光学系が明るい分、ピント合わせはシビア。 実際、使ってみると1段程度絞りを絞った場合の合焦範囲ほどの誤差があるようです。カメラレンズなら1-2段絞って撮影すれば充分シャープに写るはずなのですが、開放Fでしか撮らない天体撮影では頼りになりません。 2006/05/21
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精密なピント合わせと言えば、マグニファイヤーを使ってピントスクリーンを拡大する方法があります。 マグニファイヤーは(後述する理由で)持っていないのですが、単眼鏡(6倍18mm)をマグニファイヤー代わりに使ってピント合わせを何度か試みてみました。 しかし、D70のフォーカススクリーンは、フレネルレンズや液晶面なども入り組んでいることもあり、どうなった時ピントが合っているのか、よくわかりません。スクリーン中央約2mmの部分はフレネルレンズがないため、直接マット面を見ることができるのですが、やはりピントが合っているかの判断が難しいです。 聞くところによれば、今の一眼レフカメラのファインダースクリーンは、グラスファイバーの束を輪切りして作られた、明るいタイプになっているそうで、ファインダー像は明るく見やすいがピント合わせに向かないのだそうです。(つまり、ピント合わせはカメラがやるので、カメラマンは構図だけ気にすればいい、という発想のようです。) 要するに、MFで精密なピント合わせを期待してマグニファイヤーを買うのは(ある程度の深度のあるマクロ撮影ならともかく、天体撮影では)無駄な投資ということ。(だから、買ってません。) 2006/05/21
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天体写真は、対象が無限遠固定です。一番近い天体(もちろん地球を除いて)である月も、何万光年も先にある星雲もピントの位置は同じ。原理的には一度ピントを合わせてしまえば、ピントの合わせなおしをする必要はありません。 そこで、一度、時間のあるときにたっぷり時間をかけて精密に合わせておいて、ピントの位置を固定しておく方法が考えられます。 しかし、残念ながら「気温による鏡筒伸縮」という問題があって、この方法は使えません。 アルミニウムの線膨張率は1度あたり23.1%の1万分の1(正しく単位を書けば、23.1×10^-6/K)。レンズセルからカメラまで1メートルある場合、10度の気温差で0.231mmほど筒が伸びる計算になります。夏の昼と冬の夜の気温差は40〜50度もあるので、フィルムカメラであっても無視できない量です。 もちろん、光学系自体も温度によって伸縮します。考え方としては、仮に温度上昇でレンズや鏡の寸法が1%大きくなったとすれば、焦点距離も拡大コピーされたように比例して1%長くなります。 鉄板(11.8×10^-6/K)を丸めた筒で作られた反射望遠鏡で、主鏡に青板ガラス(8×10^-6/K)を使った場合、ガラスと鉄には膨張率にほとんど差がないので、実質的に焦点移動はほとんど起きません。 しかし、屈折系、特にフローライトレンズは、気温によっても焦点移動が起きてしまいます。フローライトが19×10^-6/K、凹レンズに使われるフリントガラスが 8〜9×10^-6/Kなので、フローライトの方が熱膨張率が大きいのです。これは、気温によって凸レンズと凹レンズにパワーの差が出てしまうことを意味します。ついでに言えば、熱膨張による伸縮とは無関係に気温で屈折率が変化します。詳しい計算は割愛しますが、この気温による伸縮と屈折率変化で焦点距離が変わり、焦点移動が起きます。EDガラスでも似たような傾向があるそうです。 よって、特にフローライトレンズでは「無限遠を探して固定しておけば、あとはいつでもピントが合う」ということは、残念ながらありません。 気温差の激しい春や秋では、同じ時間帯ですら昨日と今日では気温が10度近くも違うことがあり、毎回ピントを合わせ直さざるを得ないのが実情です。 ※熱膨張率の値は、いずれも理科年表より 2006/05/21
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結局、原始的で地味な方法ですが、デジタルカメラでは、写してすぐ画像を確認できるという利点を活かして、試写と確認を何度も繰り返し、ピントを追い込んでいくしかありません。面倒ではありますが、できあがりの画像で確認するため、確実です。 最近は、その辺の作業に特化したソフトも登場し、話題を集めています。 しかし、太陽観測では観測可能な時間帯の制約もあり、ピント合わせにじっくり時間をかけている暇もありません。数分程度の撮影で充分シャープな画像を撮る必要があります。 確実なピント合わせ方法をいろいろ考えてきましたが、結局のところピント合わせという行為そのものをあきらめるしかないようです。 2006/05/21
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太陽は長時間露出が不要なので、星雲星団と違い、常に本番の撮影ができます。 そこで、直進ヘリコイドを使ってピント位置を一定の割合でずらして数カットずつ撮影し、撮影し終わった画像の中からピントの合った画像を選抜した方が(画像を見てピント確認するのを繰り返すよりも)短時間で確実に撮れます。 さて、問題は、どれだけのピッチでピント位置を刻めば良いのか?である。 一応、BORGのヘリコイドには0.1mmを読める目盛りは付いています。0.1mm単位でシフトすれば良いのでしょうか? 0.05mm単位は細かすぎるのでしょうか? それとも、もっと細かく刻まなければならないのでしょうか? その辺はハッキリさせなければなりません。 2006/05/21
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最小散乱円は、フィルムカメラの場合は0.03mmが用いられるますが、デジタルカメラではさらに厳しくなります。 D70の場合、ニコンDXフォーマットで600万画素の画素数があります。CCDの寸法を画素数で割って逆算すると、1画素のサイズは約0.008mm四方。ボケの許容量を1画素分とすれば、最小散乱円は0.008mmとなります。 レンズとしてFS-102を使っている訳ですが、F値は8。ピント位置の前後の許容誤差は、最小散乱円直径(0.008mm)のF値(8)倍になるので、レンズとカメラの間隔は±0.064mm以内の精度で位置決めしなければならない、ということになります。 よって、都合0.1mm単位ぐらいの余裕はある計算になるので、0.05mm単位でピントをずらしながら何枚か撮影すれば、かならずどれか(事実上の)ピントが合った写真が撮れている計算になります。 鑑賞用の作品を撮るわけではないので、これ以上の追い込みはしません。 現在±0.2mmの範囲を0.05mmピッチで3〜5カットずつ(計15〜25カット+位置決定フレーム1カット)撮影し、ベストショットを選別しています。 2006/05/21
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