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太陽観測の範囲を広げたいのであれば、当然(?)Hαでの観測も視野に入ってきます。 気持ちとしてはSolarMax60〜SolarMax70ぐらいは欲しいと思うのですが、SolarMax60が588,000円、SolarMax70で483,000円では手が届きません。 というわけでCORONADO(コロナド) P.S.T.(以下PSTと書く)。 PSTは、太陽の光のうち、水素α輝線(Hα線)だけを半値幅1.0Åで透過するフィルタを搭載した、太陽観測専用望遠鏡です。 仕様だけで言えば、SolarMax40とほとんど同じで、半値幅が少々違うだけなのですが、外観はかなり違います。 写真で見る限り、厚紙か塩ビで作ったかのような安っぽさがあるのですが、実物は鏡筒も金属製で筐体はアルミ削りだし。この辺はアメリカ製らしく無駄に堅牢で手抜かりがありません。対物レンズフード兼セルもアルミ削りだしです。 2007/02/22
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PSTは、低コスト化のために、ERF(エネルギー遮断フィルタ)は、対物レンズ表面に直接コーティングすることで済ませています。フィルタ面が平面ではないので、ゴーストの発生がない分、SolarMaxより優れているのだそうだが、ホームセンターあたりで1,000円前後で売っているナントカコートをしてある双眼鏡の対物レンズみたいで、今ひとつ高級感を感じられません。 メインフィルタとなるエタロン板は対物レンズ前面ではなく光路中に置かれているため直接見ることはできませんが、光路中に置くことでエタロンが小口径で済み、コストが抑えられています。 接眼レンズを外して見た限りではエタロン板は、中央部に直径コンマ数mm程度の微小なコーティングをして間隔を保っているらしく、(インバー支持などによる)中央遮蔽はありません。 接眼部には、ブロッキングフィルタ(BF5相当)があります。思い切り蹴られそうなフィルタ直径ですが、対物レンズの焦点距離が400mmなので、太陽は直径 4mmで投影されます。ということで、フィルタ径は5mmあれば太陽全面を見るのに十分な大きさです。もし支障があるとすれば超巨大プロミネンスが出た時ぐらいでしょうか。 写真上部には、ファインダー窓が見えます。ここにピンホールカメラの原理で太陽が投影され、方向を定める目安になります。とても便利なのですが、建て付けの問題からか、微妙に方向がズレているのが残念。 また、接眼レンズを押さえるネジがプラスチック製で、少々心許ないです。 2007/02/22
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PSTで太陽をのぞくと、真っ赤な太陽面が見えます。完全な輝線の単色光の状態なので、全くの純粋な赤にしか見えません。 さて、その真っ赤な太陽面をよーく見ると、ダークフィラメントと呼ばれる黒い筋や、黒点の周囲に明るく見えるプラージュ、そして周縁にはプロミネンスなどを観察することができます。(極小期では見えない事もありますが。)
白色光で見るのと世界がまるで違っていて、太陽は実に活動的な星だというのがわかります。 普段、大きな口径で月面などを見ている感覚からすると4cmという口径はかなり小さく感じるのですが、それでも精細度は双眼鏡で月面を見るのと同じぐらい明瞭に見えます。また、口径が小さい分、シーイングの影響を受けにくく、想像以上にシャープ。スケッチするとなれば1時間あっても足りないかもしれないと思えるほどの情報量があります。 白色光の場合は、白斑は周縁部でしか観測できず、よほど活発でもない限り中央部で観察されることはありませんが、Hα線ではプラージュという形で活動域が太陽面のどこにあっても見えます。群分けが困難な黒点群は、このプラージュの広がりである程度判断がつくと期待できます。 また、周縁部でもプロミネンスやスピキュールといった現象を見ることができ、非常に興味深い像を見せてくれます。 2007/02/22
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鏡筒部の付け根にティルトダイヤルと呼ばれるリングがあり、これを回すことでメインフィルタを微妙に傾斜させ、透過する波長をシフトすることができます。どちら側に回したときに波長でどちら側にシフトするのかがよくわからないのですが、これを目一杯回すと単なる真っ赤な太陽になってしまい、白色光と同様、黒点と一部の濃いダークフィラメントしか見えなくなります。 ティルトダイヤルをゆっくり回していくと、次第に太陽面が暗くなり、代わりに表面の模様やプロミネンスが明瞭に現れてきます。全体的に暗くなるのは水素による吸収のためでしょう。一方、黒点の周囲にあるプラージュは、ほとんど暗くならない事から、水素の雲が吹き飛んでいるのではないかと思われます。 さて、説明書によれば、プロミネンスが一番明瞭に見えるポイントがHα線に合致している状態なのだそうですが、意図的に少しずらすと模様が変わっておもしろいです。プロミネンスなどの活発な(高速な)現象は、ドップラー効果でHα線の波長のシフトが起きるのか、たとえば、右回りに回した状態でも見えるダークフィラメントは、逆回しでティルトさせると消えてしまいます。(それと対をなすダークフィラメントは、逆の見え方をする) 黒点の周囲にあるプラージュの領域も、ティルトダイヤルで見え方が変化します。 見ていて飽きないどころか、白色光慣れしていると何に着目して良いのか混乱しそうなほどです。 2007/02/22
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標準でK12mmが付いていますが、どうやら直径10cmのスケッチ用紙にスケッチするのを想定してK12mmが選択されたようです。LV15mmではスケッチ用紙を40〜50cmほど離すと、スケッチ用紙の10cmの円と太陽が重なります。 片方の目で太陽を見て、もう片方の目でスケッチすることで、プロミネンスの位置などは意外と正確にスケッチができます。 うれしいのは、ペンタプリズム(?)で折り返しているため、倒立像のままという点。上位のSolarMaxシリーズは、ブロッキングフィルタが天頂ミラーになっているので、裏像になってしまいます。 ナグラー7mmで見ると、詳細を見るのに充分な倍率な上、太陽全体も見わたせて、なかなか良いです。 低倍率であるLV25mmなどでは全体的に明るくなり、プロミネンスなどはかなり見やすくなります。また、コリメート法による撮影をするにも適しているかもしれません。(カメラによって、写りが全く違います。) 低倍率で注意しなければならないのは、ブロッキングフィルタ口径で実視界が制約されるため、普通の望遠鏡のように「倍率が低い分だけ実視界が広くなる」訳ではない点。低倍率接眼レンズは導入用に使えません。 もっとも、ファインダーが標準装備なので、導入に困ることはありませんが。 2007/02/22
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膨大な情報量を持つHα画像。正確な記録という意味では、撮影して残しておきたいものです。しかし、撮影する場合はコンパクトデジカメのコリメート法か、CCDカメラ(Cマウントのビデオカメラ or 冷却CCD)での撮影が推奨されています。 一眼レフのようなラージフォーマットCCDには(あえて)対応していません。 せめて36.4mmP1ネジが切ってあれば、いろいろとアクセサリーが使えるとも思うのですが、冷静になって考えると対応するのがかなり困難だとわかります。 まず、一眼レフカメラはフランジバックが40〜50mmと長大で、接眼レンズの取り付け面よりも、ずっと前方にカメラアダプタやフィルタ類を配置しなければなりません。 PSTは、眼視用に設計されているため、ピント移動範囲がそれほど広くありません。よって、カメラアダプタがあったとしてもピントが合いません。おまけにBF-5のような豆粒のようなブロッキングフィルタでは(焦点面の近傍に配置しないと)ケられてしまいます。 仮にピントが合ったとしても望遠鏡自体の焦点距離が400mmしかないために、焦点面に直径4mmでしか投影されません。となれば、直焦点撮影するなら1/3インチ CCD(対角6mm)で充分であり、(従来、たいへん高価であった)ラージフォーマットCCDを使うまでもない、となります。 もう一発トドメを刺すと、合焦つまみの回転が今ひとつスムーズでありません。回転が渋かったり緩かったりの差が結構大きく、写真用に細かいピッチでスムーズに調整するのは難しいというのもあります。(もちろん、眼視で使う限りは問題ないのですが) コンパクトデジカメによるAFのコリメート法撮影ならともかく、一眼レフでのMF撮影は相性が大変悪いという望遠鏡です。 2007/02/22
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相性が悪いのは承知の上で、無理にでもD70で直焦点撮影ができないかを考えてみました。 まず、直焦点撮影ができたとしても像が小さすぎます。接眼部の懐が浅いためにバローレンズでの拡大もできないのですが、それ以上に拡大する必要があります。 そこで拡大撮影となる訳ですが、オーソドックスにカメラアダプタを取り付けられるだけ合焦範囲は広くありません。 ただし、手法としては拡大撮影しかなく、要するに接眼レンズと一眼レフを筒で直結する手段を考えるしか一眼レフを取り付ける方法がありません。 そこでいろいろ考えたが、結局こうなりました。 LVシリーズの外径と、カメラアダプタの拡大撮影用の筒の内径がほぼ同じという所に着目。そのままネジで接眼レンズに直接固定するという方法です。 他の接眼レンズは小さすぎたり大きすぎたりして、この方法が使えないという絶妙な組み合わせ。 この状態でPSTに取り付けて、撮影します。 『接眼レンズを押さえるネジがプラスチック製で、少々心許ないです。』と言ったのは、このため。 バランスは最悪。高度のある昼に撮影するとなると、カメラ固定用三脚が別途必要になるほど。 像の大きさは、LV25mmでかろうじて全体を写すことができます。 もう1本のLV接眼レンズがあるのですが、15mmなので構図も中途半端なら拡大率も中途半端。30mmぐらいの焦点距離だとうれしいのですが、LV30mmは2インチサイズで、適切な筒がなく、拡大撮影に使えません。 この画像は、サイズ変更以外の処理をしていない、素の画像です。これを加工(コントラスト調整や、色の削除)して冒頭にあるような画像に仕上げました。 今まで何度かチャレンジしているのですが、今ひとつシャープな像になりません。 E5700でのコリメート法も試みたものの、シャープさという点では結果に差は見られませんでした。 2007/03/02
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