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太陽観測が1年続いたら自分へのご褒美がてらにSolarMax70あたりを狙ってはいたものの、大口径エタロンセール『空前絶後の価格で提供』に釣られて買ってしまったのが、このSolarMax60 Telescope(以下単にSolarMax60)です。 元値は588,000円。この値段だったら絶対に買いません。 空前絶後の価格と言っても決して安くありません(399,000円)。SolarMax60(<0.7Å)の米国価格は3,685ドル。税別で為替レートを算出すると、1ドル=103.12円。アメリカでの価格になっただけ。 それでも、少なくともアメリカで買うのと同じ価格で買えたのはうれしいです。(アメリカ本土ではさらにサマーセールをやっていて、2,799ドルに値下げしていたらしいですが… 買った後で詮索するのはやめよ。) 2007/02/27
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カメラ三脚+微動装置ではSolarMax60様に申し訳ないので、最終的にはVixenのポルタ経緯台と組み合わせました。ポルタ経緯台は5kgもある13cm反射を支えられるほどの堅牢性を持つので、カメラと合わせても3kg少々のSolarMax60を支えるには充分な強度。これで実売 16,800円は安いです。 鏡筒バンドが横倒しになるため、ファインダー(ソルレンジャー)は事実上横付けとなります。 2007/02/27
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言うまでもないでしょうが、手前がP.S.T.、奥がSolarMax60 Telescope。 太陽面をHα線で見るための望遠鏡は、お世辞にも安くありません。しかも、太陽しか見られないという望遠鏡です。これに対する投資は、かなり勇気が要ります。
「奮発してでもSolarMax60を買うべきなのか? あるいはPSTで間に合うのか?」その判断が悩ましい所。ちなみに、PSTとSolarMax60は、値段ではドル建てで7.4倍も違います。(つまり、P.S.T.を7本買っておつりが来るということ。) そこで、先行してPSTを買ってしまったこともあり、SolarMax60鏡筒 vs PSTの直接対決という形でSolarMax60をレポートすます。 ※なお、SolarMax60を買ったために資金難に陥ったことと、Hα望遠鏡を2本所有していたところで結局PSTがお蔵入りするのは目に見えていたので、所有していたPSTは手放すことになりました。ここに写っているPSTは所有権が既に第三者に渡っていて、事実上、その方からの借用という形になっています。直接比較企画は、今回限りであることをご了承ください。 2007/05/02
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まず、口径の差から。有効径はPSTが40mm、SolarMax60 が60mmで、直径比1.5倍、面積比で2倍強という差があります。当然、分解能には差が出てきます。 PST 口径40mmの最高倍率は無理を言って80倍まです。常用域は50-60倍なので、太陽全体が視野いっぱいにひろがったところで頭打ち。活動領域を強拡大して詳細を観察するには倍率(解像度)が少し足りない感じです。太陽全面をとらえる(太陽全体の活動を把握する)のであれば、口径40mmでも充分です。 PSTでもNaglar4.8mmで80倍まで拡大するとプロミネンスやフィラメントの詳細、リムのギザギザ(採層)やスピキュール、数分で変化していくプラージュやフレアを充分観察することができます。ただし、さすがに80倍は既に回折限界に達しており、決してシャープな像にはなりません。 活動領域の強拡大には、もう少し口径が欲しいという感じです。 SolarMax60 口径60mmとなると、像も全体的に明るく、黒点の周囲に広がるプラージュの微細な構造は一段とハッキリしてきます。リムの採層は余裕で分離し、磁場中にあるプロミネンスの微細なループ構造も明瞭。 PSTでのプロミネンスが割と平坦で形がわかる程度だったのに対して、明るさが増す分、階調が豊かになり、まさに燃え上がる炎といった感じに見えます。 しかし、口径差1.5倍にしては思ったほどハッキリ見えず、コントラストも浅く感じます。これは、おそらくエタロンをセンターで支えるインバーによる中央遮蔽(正確に言えば、インバーを隠すための化粧用アルミシールによる遮蔽)があるためと思われます。 遮蔽率の測定のためにフィルタを外す訳にはいかないので、接眼レンズのない状態で接眼部から撮影して、画像から実測してみましたが、それによると遮蔽率は直線比で27.7%。平均的なニュートン反射に近い遮蔽率があります。 インバーは、エタロンの間隔保持用だそうですが、遮蔽率はもう少し小さくても良いような気がします。 2007/02/27
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PSTではERF(エネルギー遮断フィルタ)が対物レンズに直接コーティングする形になっていて、エタロンは対物レンズ後方の光路中に配置してあります。 一方、SolarMax60では、ERFとエタロンが対物レンズの前方に配置されるため、鋭い半値幅(<0.7Å)を維持することができ、ここもPSTに対してアドバンテージがあることになります。 エタロンの傾斜調整は、PSTでは鏡筒の付け根にあるティルトダイヤルを、SolarMax60ではエタロンと対物レンズセルの中間にあるT-MAXテルトアダプターで行います。SolarMax60のアダプタから突き出ている耳のようなダイヤルが調整ネジです。 さて、フィルタ構造はさておき、PSTの1.0ÅとSolarMax60の0.7Åの半値幅の違いによる見え方の違いが気になる所でしょう。 実際に見比べてみたところで、率直に言って大差ありません。むしろPSTの方が太陽面の模様がわかりやすいほどです。 PST PSTの方が模様が見やすいのには理由があります。最近の太陽は極小期にあって、光球面には目立った模様が現れません。この場合、エタロンを意図的に大きくティルトさせて(傾けて)Hα線(プロミネンスが最もハッキリ見える状態)から離すことで光球面の模様が見やすくなる場合があります。あまり波長をシフトするとただの真っ赤な太陽になってしまうのですが、実はこのティルト量がPSTの方が圧倒的に大きいのです。模様の見やすい波長までシフトして見ることができるという点でSolarMaxよりもPSTの方が太陽面を楽しめる望遠鏡と言えます。 しかし、エタロンが光路中にあるということが災いしてか、Hαにマッチングして見える範囲が狭いのが難点。Hαに厳密に合致している範囲は、太陽直径の1/3〜1/4の帯状の範囲に限られます。このため、たとえば、東側のプロミネンスを詳しく見ようとしてティルトダイヤルを回してプロミネンスが良く見えるように調整すると、西側のプロミネンスが消失します。 Hαから外れるほど太陽面が明るくなる(水素の吸収線の帯域で見ているので合致すると暗くなる)ので、写真に撮ると露出が不均一になりやすいというのも難点です。 眼視によるスケッチの場合ならば、見たい部分を視野中央に持ってきて観察するなどの工夫をすれば安定した観察はできるのですが、写真撮影では露出バランスがとりにくいため、余計な努力を強いられるかもしれません。 写真撮影を視野に入れる場合は、少々奮発してでもSolarMax40あたりが良いかと思います。 SolarMax60 SolarMaxシリーズでの見え方ですが、こちらはエタロンが対物レンズ前方にあるため、Hαに合致して見える範囲も非常に広く、撮影しても露出が不均一になりにくい特徴があります。ブロッキングフィルタもBF10で実視界も充分に広い(焦点距離400mmなので、むしろ無駄に広い)のも特徴の一つです。 SolarMax60ではテルトアダプターによる調整範囲はきわめて狭く、ダイヤルを目一杯回してもプロミネンスが淡くなる程度の範囲しかシフトできません。ちなみに、SolarMax40ではシフト量は同じなのですが、口径が小さい分、フィルタの最大傾斜角はSolarMax60より大きくなります。 これはT-MAXアダプタの仕様による制限のようですが、そういった面ではSolarMax60のフィルタはPSTより「つまらない」フィルタと言えます。 しかし、Hα線からほとんどシフトしないため、毎日の安定した観測を続けるには、この方が適しているとも言えます。 ティルトアダプタは、太陽大気の移動によるHα線からのドップラーシフトを観察するためのものなので、Hα線に合致した像だけ欲しい場合はティルトアダプタは必ずしも必要ありません。しかも、ティルトアダプタ自体安くありませんし。 もし、SolarMaxのフィルタだけを購入して手持ちの望遠鏡に取り付ける場合は、個人的にはティルトアダプタは要らない気がします。 PSTではHαに合致して見える範囲が狭いのと、ティルトダイヤルのシフト量が大きすぎて、どこに設定して観測を続けるのがベストなのかよくわからない所が難点と言えば難点です。もし、本格的な観測を目指すなら、観測の安定性という面ではPSTよりもSolarMaxが優れています。 この辺にPSTとSolarMaxのコンセプトの違いが現れているようです。 2007/02/27
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PST PSTでは、鏡体のカドに突き出たツマミがピント調整ハンドルになります。このツマミを回すことで内部のペンタプリズム(推定)をスライドさせてピントを合わせます。このため、接眼部は移動しません。 シュミットカセグレンのように、摺動部がないため堅牢性はかなり高いです。しかし、ピント合わせ時に光学系をシフトさせる方式の宿命で、シュミットカセグレンなどに見られる「ミラーシフト」のような現象が起きます。もっとも、太陽の視直径はかなりあるので、シュミットカセグレンで惑星を見るときに見られるような「ピント調整中にミラーシフトで惑星が視界から外れる」という心配はありません。 ピント合わせのツマミのトルクは不均一で、緩い・渋いの差があります。眼視目的ならば感触的な差だけで済むのですが、写真撮影用途で微妙なピント合わせには向きません。ここはPSTの弱点の一つと言えるでしょう。 合焦範囲は不明ですが、20〜25mm前後でしょうか。それほど広い訳ではありません。 SolarMax60 金色の天頂プリズム風のもの(ダイアゴナルミラーだそうだ)がブロッキングフィルタBF-10で、ここに直径10mmのブロッキングフィルタが内蔵されます。なお、フィルタは光の入り口と出口の2カ所に配置されているのですが、それぞれ特性が異なるのでしょう。当たり前のことですが、同一形状の別の天頂プリズムに差し替えての利用は禁止されています。 さて、SolarMax60 Telescope接眼部ですが、ピント調整は、1回転で6mm×3回転の直進ヘリコイドと、43mm動く抜き差し式のドローチューブの組み合わせで行います。調整範囲が広く、しかもヘリコイドでの微動も可能。ヘリコイドのピッチは細かいので、写真用途でのピント合わせはずっと容易です。ちなみにBORGヘリコイドは1回転で25mmも動きます。 総アルミ削りだしなので、下手な冷却CCDより軽いNikonD70程度ではビクともしません。 ドローチューブもアルミ削りだしでスリ割りが入っていて、金属製のネジでBF-10をガッチリロックしています。ネジをゆるめても抜くのに苦労するほど強く締め付けているので、割と重量のあるアクセサリも意外と大丈夫です。 では、お待ちかねの欠点。 まず、ドローチューブを止める2本のネジをゆるめると、伸縮・回転とも完全にフリーになってしまいます。接眼部をきちんと持っておかないと粗動させるとき接眼レンズやその他の機材を落下させる危険があります。 また、ヘリコイド部にはワセリンに近い、かなり柔らかめのグリスが使われているようで、加重するとかなり渋くなります。場所によっては食いついている感覚すらあって、こういった点の作り込みについてはBORGヘリコイドの方がはるかに良い感じがします。 また、ヘリコイドに目盛りがふられていないので、たとえば「0.1mmずらす」といった技が使えません。 2007/05/02
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SolarMaxのヘリコイドは交換不能なので(実は交換可能というのが後日わかるわけですが)文句を言っても仕方ありません。そこで、対策を施すことにしました。 まず、加重時の渋さ対策。ヘリコイドリングの裏側がネジになっているので、そこに二硫化モリブデングリスを塗りました。これは意外と効果があって、渋さやトルクの不均一さはだいぶ取ることができました。 ヘリコイドを目一杯に伸ばした所に、つまようじの先にグリスを付けて塗って、何度か回してなじませる、というのを繰り返します。 この手のグリスは、たっぷり塗らないのがコツと言えばコツかもしれません。
次にヘリコイドリングに目盛りがない問題ですが、0.1mm相当量の目盛りをプリンタで印刷して両面テープで貼りました。 マイクロメーターのように、シンブル(回転リング)側にキチンと目盛りをふれるのならいいのですが、残念ながらそこまでの技術はありません。テーパーがかかっていることもあって、それに合わせて目盛りを作るのも難しいです。 もっとも、具体的に何mmの位置にあるかを測定できるほどの精度は必要はなく、±0.2mm以上の範囲で0.03〜0.05mmピッチで正確にピントを移動できれば良いだけです。少々見えにくいのですが写真のようにシンブル(回転リング)側は1/6周ごとに指標を刻み、スリーブ(本体側)に目盛りをふっています。 これで「だいたいピントが合っているらしい場所」の±0.2〜±0.3mmの範囲を0.05mmピッチ掃射することで、ピントの合った画像を得られることが期待できます。 2007/05/02
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太陽観測は、常に危険と隣り合わせであるという事は忘れてはいけません。 太陽光の熱でフィルタが破損したり、その他の機材が焼損するといった程度の被害で済めば良いのですが、一歩間違えば失明や不可逆的な障害を残しかねません。太陽観測は投影法が一番安全だと言われますが、接眼部を覗こうとしたり、ファインダーのキャップを取って見ようとする子供も多いので注意が必要です。 PSTやSolarMaxも例外ではなく、絶対に安全が保証されている訳ではありません。取り扱い説明書の中には、未成年を対象にする場合、保護者や先生の指示監督の下で使用するよう指示されています。 PST,SolarMax40basic,SolarMax70(Hα/CaK)は、学校などでの利用を考え、イタズラ防止のため、対物レンズセルが分解できない(あるいは対物レンズごとはずれる)ようになっています。SolarMax70(Hα/CaK)に至っては、ブロッキングフィルタもはずせません。一方、SolarMax60,90は、対物レンズの先にティルトアダプタを経由してエタロンがつながっているだけという構造のため、その気になれば外してしまうことができるし、ブロッキングフィルタをはずして天頂プリズムに換装することも可能です。 SolarMax60のエタロンが外れているかどうかは見ればわかりそうなものですが、エタロンを外したSolarMax60は、SolarMax70 そっくりになります。そして、ブロッキングフィルタを天頂プリズムに交換されても、おそらく気がつかないでしょう。 もし、学校の管理下で保管され、それほど機材の特徴を把握していない人が扱う可能性があるのであれば、そういったイタズラが根本的にできないもののが良いでしょう。 万が一に対する安全性という面では、PST,SolarMax40basic,SolarMax70の方が有利と言えます。 2007/05/02
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PSTのフードやSolarMaxのエタロンの横には、丸い、アメリカ国旗のようなシールが貼ってあります。(ちなみに、BF-10の裏にもアメリカ国旗風のシールが貼ってあります。) アメリカ製であるという主張のようです。 エタロンは、1/100λ以内という超高精度平面研磨の技術がないと作れません。世界でもエタロンを磨ける国はそう多くありません。 ところで、私自身、気にしていないのですが、SolarMax等を購入後に気がついてしまって、妙に気にする人がいるかもしれないので、あえて書いておきます。 改めてSolarMax60の開口形状の画像を見ると、2〜3カ所ほどポツポツと、ゴミのようなものが見えています。これはフィルタ内の微小な(0.1mm程度か、それ以下の)気泡が写ったものです。 微小気泡は、ERFに1箇所、エタロンに3カ所は確認できています。ERF、エタロンのどちらにも確認できるということは、検査漏れと言うよりは、コロナド社の品質基準はパスしたと判断していいでしょう。こういった微小な気泡はMade in Japanなら品質管理上絶対に許さない欠陥にするのでしょうが、コレはMade in U.S.A.です。 微小な気泡の何が問題か? ――答えを先に言ってしまえば、こういった微小な気泡は実使用上全く問題がありません。 もし、SolarMaxを購入後に、数カ所の微小な気泡がフィルタ内に点在していることに気がついたとしても、気にしないことです。日本人の感覚から言って、気分が良くない/あるいは、明らかな欠陥だと認識するかもしれませんが。 まず、気泡は遮蔽物として扱えます。SolarMaxは普通の望遠鏡と異なり、別の明るい光源からの光を乱反射することはあり得ません。そもそも太陽自体が強い光源で、それ以外観察することはないからです。 フィルタ内に気泡があったとしても乱反射によってコントラストを落とすような事は起こりえません。よって、気泡はニュートン反射などに見られる中央遮蔽やスパイダーによる遮蔽と等価に扱えます。 という事は、数カ所に気泡があるという事よりも、インバーによる中央遮蔽があるという事実の方が圧倒的に問題が大きいことに気がつくでしょう。微小な気泡の1つや2つ、遮蔽率がコンマ数%増えた程度の影響しかありません。 その辺、Made in U.S.A.であることを念頭に置いて、アバウトに考えておくのが吉という事です。 2007/05/02
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2005年の胎内星まつりで、テレビューのブースでSolarMax60を展示していました。ところがこのSolarMax60。明らかな非点収差(対物レンズが斜めになったような)が起きていて、全くまともな像を結べず、SolarMax40やPSTとの比較どころではありませんでした。 東京から搬送したときに不具合でも起きたのでしょう――。 そう思っていました。 しかし、2005年9月19日、ついに私のSolarMax60でも同じ現象が発生しました。 既に何度か運搬もしているのですが、それで異常が起きたことはないし、炎天下でフィルタ部分が50度近い温度になった時も平気でした。 それなのに突然。 驚いたことに、胎内星祭り会場で見たSolarMax60の像とそっくりです。 屈折式望遠鏡は、ご存じの通り、光軸調整を一度やってしまうと、半永久的に調整不要です。ついでに言えば、SolarMax60 Telescopeには光軸調整ネジはなく、狂う要素はありません。いや、少なくとも普通の屈折望遠鏡で同様の現象が起きた経験は一度もありません。 したがって、原因はメインフィルタ(エタロン/ERF)か、ブロッキングフィルタの不具合としか考えられません。 とりあえず接眼部から接眼レンズを抜いて見ると、明らかに光軸がズレており、開口部が部分的に蹴られてわずかに楕円形になっています。エタロンを押さえる遮蔽部もセンターがズレて見えました。 分解は禁止されているのですが、試しにメインフィルタを外し、振ってみました。しかし、カタカタ音がする気配はありません。 ところが、元通りに取り付けたら、異常は解消しました。 この現象が頻繁にあることなのか、たまたまそうなっただけなのか…。 原因は、未だに謎です。 2007/05/02
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エタロンによるHαフィルタは、宇宙空間でも耐えられるほどの高い耐久性を持っているのだそうで。(ここが10年程度しか寿命を持たない他のHαフィルタより優れている点の一つなのだそうです。) その一方で、実際にはブロッキングフィルタのコーティング面にヤケが入って失透している個体が多く観察されています。
PSTではブロッキングフィルタが対物レンズにコーティングされる形になっているため余計に目立つのですが、SolarMaxでもブロッキングフィルタが劣化する可能性があります。今のところ手元にあるBF-10にはヤケは見られないのですが、BF-15は納入時点でコーティングのムラが見られました。
SolarMaxのブロッキングフィルタのコーティング面は内側に配置されていて外気に直接触れない分だけ耐久性は高いと思われるのですが、エタロンに比べてブロッキングフィルタはかなりデリケートなフィルタである事には間違いないようです。 2年後。 さすがにここまで浸食が進むと観測に支障が出てきます。 修理依頼しようとしたら「修理不能」との回答。結局「2年でこれは無いだろ」とゴネて修理させました。「実はストレートタイプがあるんですよ」と蔵出ししたものなので、おそらく初期型ではないかと思われます。 修理後のBF-15。 高耐久型に換装されたのかどうかわかりませんが、現在、何事もなく使えてます。(海外サイトを見ると、PSTのコーティングが割と頻繁に変更されているらしく、耐久性を上げてきているようです。) さらに4年後(2014)。 やっぱり劣化してきました。いますぐ支障が出るほどではないにしろ、来年ぐらいを目処に修理した方が良さそうです。ちなみに普段、乾燥させたケース内に保存してあるBF-10は無事。やはり湿気が中に入って浸食しているという感じがします。 ↑SolarMax60に付属していたBF10は、普段乾燥材入りのケースに保管していて全くと言っていいほど使っていません。そのためか、ほとんど劣化していません。改めて良く見たら、わずかに劣化してましたが。 このことから、たぶん、湿度でダメになってますね。 ↑こちらは奥州宇宙遊学館所蔵のフィルタ。保管状態や経過年数は不明ですが、かなり浸食が進んでいます。(これでも透過率が幾分落ちるだけではあるのですが…。) 2014/08/10
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PSTで充分なのか? 奮発してまでSolarMaxを買った方がいいのか? この判断は、簡単に決められるような事ではありません。用途によっても変わる上に、値段も大きく違います。 しかし、こうして比較してみると、PSTにはSolarMaxにはない優れた面が数多くあり、特に眼視による太陽面全体の把握という面では SolarMaxに引けをとらないことは意外でした。もし、眼視で楽しむ・観察するという用途に限ってしまえば、SolarMax40(40mmの方)よりもPSTの方が優れていると言っていいかもしれません。 SolaMax60になると、口径のアドバンテージが出てくるのですが、中央遮蔽がどうしてもあるため、同一気流でのシーイング低下が起きます。また、回折限界近辺では40mm→60mmの差ほどの差が期待できない点が惜しい所です。 それでも絶対的な口径を利用した活動領域の拡大や写真撮影を試みるならSolaMax60という選択もOKでしょう。 太陽全面の把握を中心とした写真撮影をするならSolarMax40、眼視用に限ってコストパフォーマンスを重視するならPSTで充分という感じではないでしょうか。 2010/09/25
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直接ツッコミが入った訳ではないですが、事実上ウチしかSolarMaxのレビューをしておらず、時代も進んで状況が変わっている事による誤解もチラホラ出てきているようなので、補足。 ・SolarMax60とPSTは大差無い? まず、PSTとSolarMax60では単純比較すれば圧倒的にSolarMax60の方が良く見えます。SolarMax60の方が絶対的に口径が大きいですから、光量差によるプロミネンスや光球面の模様のディテールが全く違います。 「(低倍率での)眼視による太陽面全体の把握という面では SolarMaxに引けをとらない」という、低倍率に限った場合において、PSTはかなり健闘するという意味であって、見え方に大差ないという事ではないです。 また、フィルタ自体の品質のバラツキの問題なのか、おそらく持っていたPSTは激しく良く見えた部類で、SolarMax60側は普通レベルである可能性もあります。そんなに多くの太陽望遠鏡を見てきた訳ではないので、あくまでも個人的な感想ととらえてください。 実際、他のSolarMax60でシングルフィルタなのにダブルスタックに肉薄する見え方をする個体も見たことはあるので、選別が可能であれば、かなり良く見える「極上の」個体もあることは事実です。 逆に、風の噂では、期待したほどの性能が出ていない個体もあるらしく、アメリカからの個人輸入品ではプロミネンスが見える程度で光球面の模様がほどんど見えないものが送られてくることもあるそうです。日本製ではないので「どれ買っても性能は一緒」と考えないことです。 また、そういう「ハズレ」のものがオークションに流れていくこともあるので、本国からの個人輸入や、オークション等の個人売買は、大きなリスクを伴うこと覚悟しておいてください。 ・アフターサポートについて 再三語られていることですが、海外からの個人輸入やオークションは、完全に自己責任です。基本的に一切のサポートは無く、自分でどうにかするしかありません。 ブロッキングフィルタは、だいぶ劣化しにくくなったとは言え相変わらず経年劣化するので、何年かに1度はディーラー経由で修理する必要がありますがディーラーから正規に買った場合でしか修理を受け付けてくれないそうです。 個人輸入やオークション等、国内正規ディーラー(または、正規ルートを持つ代行業者)を経由せずに購入された場合は、日本にあるディーラーに掛けあっても、基本的に修理受付してくれませんので、ご注意ください。 個人輸入の場合は購入元の国のショップに直接掛けあって対応してもらってください。(もちろん、英語での交渉になりますし、発送も個人で海外発送して対応することになります。) オークション落札したものの場合であれば、一切のサポートはありませんので、フィルタ劣化の際は、ブロッキングフィルタ自体を買い直す羽目になることを覚悟で購入してください。あるいは、メインフィルタだけ売り飛ばすか。 なお、ダブルスタック化の所でも少し述べていますが、オークションに出されているメインフィルタをダブルスタック用として使う場合に注意が必要です。 というのも、フィルタ相互の相性もあるので、適当に買ってきたメインフィルタを追加しても所定の性能が出ない場合があるからです。(合う場合もありますが、性能的に合わない場合もあります。) 値段が高いため、高い性能を期待しがちですが、元々エタロンなどというものがこの価格で売られている事自体が驚異的なのです。したがって(?)品質のバラツキが非常に大きいそうなので、アフターサポート無しで買うのは非常にリスクが高いです。個人輸入で安く買って、粗悪品を掴まされて国内ディーラーに持ち込んで火の粉を飛ばす行為は慎んでいただければと思います。 また、フィルタの修理料金は、一例でしかないので、ご注意ください。そもそもSolarMax60は「空前絶後」すなわち、メーカーとしてのコロナドが消失することが確実となって投げ売りしていた時期に買ったものなので、修理経路が確立していなかった可能性もあります。現在はミードのブランドとしてコロナドが残る形になっているので(一時期ミードも日本から撤退しましたが)、現時点での実際の修理料金については、ディーラーに都度ご相談ください。 2015/03/22
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