SolarMax 60で撮影するには

●SolarMax 60のピント合わせ

 SolarMax60 Telescopeのピント調整は、1回転で6mm×3回転の直進ヘリコイドと、43mm動く抜き差し式のドローチューブの組み合わせで行います。これは以前書きました。ヘリコイドが標準で付いてくれるのはありがたいのですが、このヘリコイド、目盛りがありません。

 そこで、目盛りを付けてみました。


 これで「だいたいピントが合っているらしい場所」±0.2〜±0.3mmの範囲を0.05mmピッチ掃射することで、ピントの合った画像を得られることが期待できる
 ――というのが、前フリ。


2007/08/20
●写真に撮れない

 まず、前提条件ですが、安定した連続観測のためには直焦点による撮影が必須です。太陽のHα撮影では、コリメート法による撮影が相場なのですが、最近のカメラには必ずと言っていいほどズームレンズなので、像の大きさを一定に保つのが難しいことと、きちんと固定できないと東西方向も決められないという事情があるので、あえて避けます。

 だから、何としてでも直焦点で撮らなければなりません。

 さて、根本的な問題としてピントが合うかどうかですが。
 BF10の後ろに31.7mm→36.4mmアダプタ、NSTアダプタ(36.4)という接続そのままではピントが合いません。そこで、焦点距離と焦点位置を引き延ばすためにCEMAX 2xバローの登場となります。



 ところが、これはこれで厄介でした。
 バランス的に危なっかしい場合もあるので、カメラを接眼レンズに置き換えて説明していきます。


2007/08/20
●順当に使うパターン



まず、接眼レンズの前方に配置する、順当に使うパターン。

 バローレンズがブロッキングフィルターのセルに当たって奥まで挿さりません。(一応、接眼レンズではピントは合います。)
 半端な挿さり具合を見ると、本当に純正品&専用設計なのか疑いたくもなりますが、この使い方は一応正解のようです。
 しかし、そもそもフランジバックを稼ぐためにバローレンズを買ったのだから、バローレンズのバレル自体でフランジバックの埋め合わせをされても困ります。


2007/08/20
●天頂プリズム併用パターン



 天頂プリズムに相当する、BF-10をバローレンズの後ろに配置するパターン。バローレンズのレンズから接眼レンズまでの距離が長くなるので、拡大率が上がります。
 格好としては一番しっくり来るのですが、これは、ピントが合いません。


2007/08/20
●ブロッキングフィルタの先端にレンズを付けるパターン



 バローレンズの先端を外して、ブロッキングフィルタの先端に取り付けてみた場合。
 なぜか、うまい具合にねじ込むことができます。

 これも「取り付けはできたが、ピントが合わなかった」というオチ。


2007/08/20
●バローレンズのバレルを延長筒として使うパターン



 余ったバローレンズのバレルを延長筒としてバローレンズ付きBF10で組み合わせた場合。

 画像は同じですが、バローレンズのバレル先ではなく、ブロッキングフィルタの先端にレンズ本体が付いている点が違います。
 これは、眼視ではピントが出たものの、撮影には使えません。


 …という具合。要するに、何をやってもカメラでピントが出ません。


2007/08/20
●CEMAXのレンズセルが31.7mmのフィルタネジ規格!



 いろいろやった中で、CEMAXのレンズセルが、31.7mmのフィルタネジ規格ということがわかりました。
 そこで、その応用で、31.7mm→36.4mmアダプタの先端に付けてみました。

 それで、どうにかピントが出て、しかも、全景を写せるような、ちょうど良い大きさの像にすることができました。

 ところが、CEMAXのレンズセルが邪魔で相変わらず奥まで挿さりません。これではカメラを固定するには不安定。

 そこで、31.7mm→36.4mmアダプタの先端5mmほど切断し、スリーブ長を短縮。そこにCEMAXのレンズセルを取り付けました。
 バローレンズ本体のチューブの長さとフランジバック長を近づけるため、カメラアダプタも旧規格のものに変更(フィルタが1枚しか内蔵できない分、現行アダプタより短い)した、専用アダプタを構築。
 なお、旧アダプタは、ごらんの通り固定ネジが1組みしかなく、不用意に外れやすいのでM3ネジを4セット切って、M3ネジで固定しました。


2007/08/20
●これでやっと


 これでやっとD70で太陽の全景を撮影できるアダプタが完成。


 ドローチューブの繰り出し量も、写真の通りで、無理なくピントが出ます。


 ここまで来て気がついたこと:
 「SolarMax(60)は、写真撮影に向く」と宣伝はしているものの、やはり「写真撮影を考慮していない」(標準品で一眼レフが付かない)モノだったということ。

太陽
2005年8月25日 07時00分 SolarMax60+CEMAX BARLOW 2X(f400mm F6.7)Vixen Porta経緯台 NikonD70 露出1/500 ISO400



2007/08/20
●Hαに向くカメラ、向かないカメラ

 天体用カメラとなると、Hαに対する感度が気になる所。
 普通、カラーCCDカメラのカラーフィルタは、人間の目に自然に見えるような色合いで写すために、赤い光については650nmあたりでカットしてしまいます。Hαは656nmという波長なので、大半の光がカットされて、かなり分が悪いです。

 そこで、フィルタを取り外す改造をしたり、キヤノンは公式にEOS20Daなどという、Hα感度を稼いだものまであります。
 あいにく(?)、太陽は非常に明るいので、Hαの感度が多少悪くても問題ないのですが、ローパスフィルタの違いなのか、内部処理の違いのかよくわからないのですが、向き・不向きの違いは結構あります。


2007/08/20
●Hα撮影に向く、具体的な機種

【デジタル一眼レフ】
NikonD70…×(不向き)
NikonD50…×(不向き)
 画像処理ロジックの影響か、解像度が全く足りません。100万画素級にも達しません。
NikonD80…○(白黒モード、フィルタ効果なしで写ります。)

【Webカメラ】
QV-61…×(不向き)
Qcam Pro 4000…×(不向き)
 いずれも圧縮率が高すぎて、JPEGレベルで使い物になりません。
 フィルタを外してもリークした赤外線か何かに反応して真っ白になってダメ。



風の噂では、適性のあるカメラは次の通り
BITRAN BJ-41L
 …モノクロ冷却CCDなら何でも良いかと言うと、やっぱり向き・不向きがあるどうです。この上位機種(BJ-42L)や下位機種(BJ-40L)、SBIGの方は(太陽撮影をすると)ノイズが多すぎるとのこと。

NikonCOOLPIX990
 …Hα撮影の定番機種。ところが、エタロンを使ったコロナドに比べてディスターのフィルタ(半値幅0.5Å)で使った場合はあまり良く写らないという情報。

Canon EOS 20Da
 …NikonD80相当か、それ以上には写るらしいですが、シャープに写すには一筋縄ではいかないそうです。


2007/08/20

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