61

コメコイ4 第四章

第9話 蒼薔薇と紅薔薇 後編

「…それで、なんで僕がそんなことをしなくてはならんのです」

「それは…貴方が、薫人さんと、お仲が良いからですっ」

「はあ・・・。」

作戦名、 仲良くなりましょう 作戦
…、その作戦名からして、もう見え見えです。

「…ごほん、それで協力してもらえますわね?」

「どうせ、断れないんでしょう?いいですよ」

僕は嫌々ながら彼女にそう言う。

「では、私は、行きます」

「行くってどこへ?」

「もちろん、校内ですわ?」

「あの、一つ質問」

「なんでしょう?」

片眼をつぶり、そう言う。
ウィンク好きなのか?

「ここは、どこ?」

「私の隠れ家ですわ」

え…?
待って、僕…

「僕が知っている以上、隠れ家…とは言わないのでは…?」

「フフ、そう言うことなら、貴方を監禁すればよいのです」

あの、言ってることわかってます?
それ、犯罪ですよ?
僕はそう言わず、彼女の話に耳を傾けるうち、いってきます
と一言を残し、彼女は姿を消した。

そして、残ったのは、周りが暗闇の世界。
そこに一人、僕がいる。
はぁ〜…、なんでこんなところで…というか、僕学校行かなきゃならないというのに・・・。

僕は、深くそう思う。
まあ、一人で語るのも…。

「…だぁ〜れか〜た〜すけてくれ〜」

とりあえず、やる気なしに、そう言う。
…と、どこからともなく、物音がする。
その直後、かすかに聞こえたもの音が、段々と…え?

「ちょ!…まっ!!!」

言うに遅し。
僕は、雪崩のような物の流れに流され、そのままこけてしまう。

「…っ…一体、何が…」

さっきまで、裸電球の真下にいたものだから、多少は明るかったが、今は、暗黒に引きずり込まされたものだから、…怖い。

「いったた…ぁ」

その暗黒の中から、僕とは違う声、女の子の声がする。

「誰か、いるんすか?」

「えっ、ああ、はい、すみません、少しドジりました。」


ええぇ…。
と僕は、口を開きながら、そう思っただろう。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫なんですけども…、少し怪我をしました。」

あらまぁ…。
というか、だいぶ近くに聞こえるなぁ…。
ん?というか、さっきから温い気が…。

「あにゃっ!今何か動きましたっ!」

それは多分僕の腕かと…。
僕は、確かめるために、温もりが伝わってくる腕の方を少し動かす。

「またっ!あぅぅ;」

「…っ」

少し顔が火照ってしまう。

えぇ〜と…。

「もしかして、下敷きになっちゃったり?」

はっ!ばれたか!

「すっすみませんっ!すごくにどきますのでっ!」

そう言って、女の子の声をもつ人は、そこから起き上がったのだろう。
なま暖かい感覚がまだ残るが、すぐにそれも冷めてくる。

「ありがとう、とりあえず…僕は学校に行きたいんだけど、どう行けばいいかな?」

「そぉ〜ですねぇ…あそこの扉から出れば、校内に入れますよ」

「つながってるの!?」

「ええ、だってここ…体育館倉庫ですし」

なるほど、納得だ。
通りで暗いはず…。

「じゃあ君はどこから!?ここの倉庫、入口は一つだけだよね!?」

体育館倉庫は、体育館内の端にある。
別名恋人の憩いの場とか呼ばれているのは、また別の話。

「それじゃ、即此処を出ましょう」

「あ、待ってください、今出ると…まずいですよ?」

そう彼女が言う。
それに振り向いて、僕はふと耳を傾ける。

「1,2,3,4-5,6,7,8」

と、準備運動の掛声が…。
まさか!

「今は、女子、体育なんです…」

「もう、授業始まってたのか…これじゃあ…」

「ある裏道を知っています」

彼女はそう言う。
僕はそれに目をきらめかせる。

「私について来てください」

「うん」

こうして、体育館倉庫からの脱出が始まった。


第10話 紅薔薇の微笑み

「そういや、名前まだ聞いてなかったね」

思い出すように、僕はそう言う。
今、体育館倉庫の裏道…なぜか隠された道を発見し、そこから脱出し、地下通路のようにサブい通路に来ている。
…、大きさも、人が通れるぐらいだ。
さらに、すべて石で作られている。
まさに、牢獄から脱出(エスケープ)だ。
そんな中、歩きながら、出口へ行く。

「私は、桜咲 歩。ここの学校の生徒ですよ?」

「おおっと、これは失敬、失敬…でも、初見であることは、疑いようのない事実だな」

僕は、あわてて会話を進める。
出題者が焦るというのは、もはや崩れたも同然。
つまり、十分察するに値するということだ。

「今年からの入学者ですし、そう思われても仕方がありませんので、悪しからず」

そう彼女は微笑みながら言う。
ここは、なぜか少し明るい。
そのおかげか、彼女の姿は、はっきりではないが、見えていた。
僕らは、それから5,6分ぐらいかかり、そこから出ることとなった。

(−−− 水鳥乃学園 中庭 −−−)

僕らは、石の通路を抜け、やっと辿り着く。
そこは、校内の水鳥の水源と呼ばれている、中庭にある噴水だ。
この噴水は、公園にあるような円形に形を作られ、その円形をぐるりと一周回ると、誰もが気が付くことがある。
扉があるのだ。
以前はなかったはずなのだが、最近の工事で作られたらしい。
なるほど、ここは体育館倉庫とつながっていたのか…、だからあんなに寒気がしていた。
なぜなら、水路が通っているからである。
噴水といえど、水を汲まなければただの石の塊、コンクリートの結晶としか言えない。
たとえ、石像があったとしても、それだけでは、人は飽きるだろう。
だから、それに水を付け加えると、鮮やかなに見えてくる。
水鳥(みずどり)たちが、羽を休めるため、ここに来るのも、この水のおかげだ。
そして、その水を出しているのが、体育館倉庫の近くにある、大きな貯水タンクだ。
だから、整備をするために、この通路を作ったのだろう。

「…、それで、これからどこへ?」

「もちろん、隠れます、もうじきチャイムがなるでしょう…それまで、身を隠し、おおごとのないようにしたいと思います。私について来てください」

僕は、彼女の言うことをきき、言われるままに動いた。
そして、行き着いた先が…

「なるほど、図書室か」

「そうです、こう見えて、私は図書委員ですので、ほら、鍵ぐらいはあります」

頭を傾け、笑みを見せ、その鍵を見せる。
甘いシャンプーの香りも一緒にふわりと浮かぶように、僕の鼻まで香りが届く。

「…それに、ここは一階だから、特に誰から見つかる危険性もないと」

「ビンゴ。」

彼女は、そう言って人差し指をぴんと立てる。
そして、ウィンクをする。

「それにしても、結構本がありますね」

「ええ、一応は図書室です。さらに私立ともなるとこのぐらいないと…」

「ですかね」

僕は、ハハと笑って返す。
彼女もニコッと笑顔になる。
何と言うか、和む。
…、いかんいかん、僕には咲蘭歩がいるではないか…。
とりあえず、思考を一旦停止だ。

「ふぁ〜…」

「お疲れのようですね」

僕があくびをすると、横にいた桜咲さんが、そう言う。
まあ、たしかに眠いのもある。
朝起きた時刻が早かった。
5時起きってどないなっとんねん!
そのことを話すと、桜咲さんは、クスクスとからかう様に笑う。
この人の笑顔は、まるで例えるのなら、一番立派に咲いた紅色の薔薇、紅薔薇のようである。
紅い薔薇を連想させる彼女との話は、チャイムが鳴って、ようやく終わりを告げる。
彼女は、またいつでも と言い残す。
僕もまた、それを楽しみに待つと返し、彼女と別れを告げるのであった。


第11話 お前のものは俺のもの、俺のものは、俺のもの、だから、お前の彼女は、俺のもの

貴方は、ジャイ ンを知っているだろうか?
あのドラ もんに出てくる主人公をいじめる大男である。
時に、その性格から抜け、優しい一面を見せ、友情を第一にと考える思考も持つ人物である。

…、さてここまからが本題だ。
だれもがこの言葉を知っているはずだ。
お前、俺のものは、俺のもの。
この強欲な言葉は、僕の学校でも知れ渡っている。
もう、感づいている人もいるだろう…。

「つうわけだ、俺様は、ありがたく、お前の彼女、嫌々ながらお前に付き合わされている千代島さんを、俺様の彼女にさせてもらうっつうわけだ。うれしいだろ?なぁ?そりゃ〜そうだよなぁ〜だって、お前は、ザコキャラなんだもんなぁ〜ひゃははっ!!!」

相変わらず、うざったらしい…。
最初は、無視をしていたこのジャイ ンモドキにも、そろそろうんざりしてきたところだ。

「さらに、千代島さんは、お前と別れるのを惜しんでなかったぜぇ〜ひっひっひっ、愛そうつかされたなぁ〜はははっ!」

黙れス オ。

「てめぇ!チャームポイントのネを外すんじゃねぇ!」

ス オに、一発蹴られる。
さらに、みぞうちか。
少しはいった。

「おい、さっさとこいつを移動させっぞ!」

指揮官は…やはり、ジャイ ンか。
ジャイ はどした〜お前の妹どした〜?
僕は、腕を後ろに縄で締め付けられ、文字通り、つかまっている。

「ちょっと、待ってください」

そこに、図書委員長もとい、桜咲さんが登場する。
そもそも、ここは公共(あくまで生徒的意味での)場、廊下でございますので、そんな騒ぐと、周りも騒ぎ声が聞こえるわけでございます。
だとしても、A、B、C棟と言って、3つに分断された校舎、そしてここの仮にC棟は、一階から3階まであるにしても、職員室がないため、別名 生徒群棟とも呼ばれている。
よく、サボる人なども、此処を活用したりするわけだ。
というか、桜咲さん、貴方は確か…B棟では?なぜここで騒いでいるとわかったのです?

「生徒会執行部、会長の名に命じます。即刻 彼、柳 美琴君を解放してあげないさい」

「会長!?」

僕は、真に驚く。
会長だったんすか!
そもそも、ここの学校の会長と言うのも、容易く多数決で決まるものではない。
教師からの評価、生徒会執行部としてのプライドがあるか否か。
など、様々な点から、最も栄光に輝かしい人を選抜し、学校の中から一人、選ばれる。
それが、生徒会執行部、会長。
別名、生徒裁判官とも呼ばれ、校内の生徒であれば、命令一つで、即動かなければ、生徒会執行部より、とんでもないことが…。
と、前に噂を耳にしたことがある。

「ええ、私が、生徒会執行部、会長 桜咲 歩です。以後、改めてお見知り置きを」

彼女は、縄を解かれた僕に対し、こうの述べ、手を差し出す。
それは、起き上がるのを手伝うことと、生徒会執行部 会長として、改めての挨拶なのだろう。
上品にもきれいな手に、僕の手を置く。
それに対して、彼女は握り、僕をおきあがらせる。
以外と力があることを、此処に記す。

「ウっ…聞いてねぇ!なんで執行部会長がこんなところに!?」

「会長とて、忙しい身のはず…と思いましたの?そうでもありませんよ、ざっと3000ページ分の仕事をしているだけです」

それは、だけ とは言わないと思う。
…だが、こんなことを言えば、少し面倒なので、あえて口には出さなかった。

会長基(もとい)、桜咲さんに助けてもらった僕。
この後に、やられることを想定すれば、救出してもらえたことは、感謝すべきだろう。
しかし、今日あの人にさらわれた後に、僕は咲蘭歩と会っていなかった。

「咲蘭歩どこにいるのかな」

なんて独り言ももらしつつあった。

(−−− 水鳥乃学園 1年3組教室 −−−)

水鳥乃学園は、1年が3組、2年が2組、3年が3組という構成だ。
もっとも、一クラスの人数が、ざっと40人くらいいるわけだ。
私立なだけあって、教室も広い。
そのため、60人ぐらいいても、80人ぐらいいても、空きが出るぐらいだ。

今は、3時間目。
僕はいつも通り、寝ていた。

「くぅ…くぅ…」

多少いびきをかきながら寝ていたため、担任の先生にばれた。

「さぁ起きて、柳君授業サボっちゃだ〜め」

「ん・・・んあ〜…」

欠伸を漏らし、少し体を起して、数秒で目が覚める。

「すんません、いい天気なので、つい睡魔に襲われました。」

「そうですか、でも、授業はちゃんと聞いてくださいね?」

僕は、頷いた。
すると、薫人が笑う。
小声で、だっせ と言われたことが妙に腹立たしかった。


第12話 小学生VS高校生

…なぜ!?
僕は、尋問を受けていた。
警備員さんに、問題を起こした張本人として扱われ…つまりは、犯人逮捕と言ったところだ。

(−−− 新原町 −−−)

「千島 雄恋治君?」

「そ、実は、この子迷子らしくて…」

「そうなんだ」

今日は日曜日。
久し振りに、咲蘭歩とデートをしているところだ。
だが、その途中、咲蘭歩の買い物で、デパートに寄っている時、この小さな小学生くらいの男の子、千島 雄恋治君と出会ったのである。

「えっと…、雄恋治君…かな、お父さんや、お母さんはどうしたの?」

「…な」

「…え?」

「オレンジって呼ぶなぁあああ!!!」

「うわああ!」

僕にいきなり飛びかかって、猛攻撃を受ける…。
痛い…痛い…頭うったかも…。

「美琴、大丈夫?」

「なんとか…そっそれじゃあ、千島君…両親は…どうしたの?」

恐る恐る聞いてみる。
飛びかかられそうなら、逃げるのみ。

「俺は、一人で来たんだ。もともと親なんていねぇ!つか、勝手に迷子扱いするなっ!」

なんと、一人か

「家は近いのかしら?」

「はい!近いです」

…て、おい!
なんだその態度の違いはぁああ!!!

「俺は、お前が嫌いだ女顔」

「うぐっ…おのれぇ…気にしているところをぉお・・・」

ストレスゲージ、急上昇中!このままでは!
皆、衝撃に備えろ!
僕の思考では、会話が成り立っていた。

「姉ちゃん、こんな ヤツ よりも、俺の方がカッコいいぜ?」

「なっなに人の彼女をナンパしてるんだこの小学せぇ!」

「ムッ!んだと女顔!」

「やるかぁ〜!?」

「上等だ女顔ぉ、表へ出な!」

まだ背も小さな小学生と、本格的なケンカをする高校生の図が、そこにあった。
…というか、僕だった。

「ちょぉ〜と待って!そこのお二人さん!」

小学生と高校生の目の前に、スタイルのいい、三つ編みのセーラー服を着ている女性が、それを止めようとしていた。
僕らは、そちらを見ると、同時に

「「これは、男の戦いだ!」」

と発した。
無論、それを聞きつけた警備員さんによって、僕らは捕まえられ…。
今に至る。

「だから!僕はやってません!」

「ちゃんと、証言者がいるんだよ!」

「だから、それは、小学生が突っかかってきて…!」

「言い訳無用!」

…まるで、痴漢でもしたかのようなこの尋問。
少し、僕に不利な状況だということは、言わずともわかるだろう。
というか、僕の彼女である咲蘭歩は何処(いずこ)へ?

「とりあえず、これでも食って、頭冷やせ」

と、渡されたのは、かつ丼、親子丼、???丼。
最後のは、意味不明な、テレビでは、モザイクでもつけられそうなのが、動いてたので、カット。
まず、なぜ三つ?

「…ここは、サービスでもしてるんですか?二つも出してくれて」

「三つだ。そのうち、かつ丼とみられるもの、親子丼にみられるものは、俺らが食う。」

「僕を殺す気ですかっ!」

「無論だ」

「あんた、それでも警察…」

「まぁまぁ、それは、同意見ですね」

と、そこにドアのノックもなしに、先ほどの三つ編みの女性がいた。




南波(ななみ) 三露(みつゆ)

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]