第13話 -目撃-
「ウチは、南波 三露、一応婦警なんかしとります」
「婦警さん…ですか」
「おい南波…ここはお前のような新米が出る幕じゃ…」
と、南波さんに、僕の近くに二人いた警察官の内、一人が、近づく。
「3年差のある新米(ルーキー)くんにそれを言われたら、ウチ、お終いやなぁ〜」
「さっ三年!?」
「あらら?知らんかった?ウチ、もう婦警やって、9年目やで?」
と、当たり前のように、南波さんが言っている。
…というか、3年もあって、気がつかないこの警察官は、大丈夫なのか?
「しかし、貴女の顔を見たことなど…」
「それは、全国廻ってんやから、あんたみたいなのと3年ぐらい会わんの当たり前やん」
「…全国支部長…はっ!南波 三露…全国の警察を従えるほどの権力をもった絶対権限者!?」
「そう呼ばれるとテレちゃうわ〜そやなぁ、まあ、言い方に問題があるのを気にせんするとそうなるなぁ」
…そして、5分後。
「というわけで、彼が原因じゃないんや、解放してもかまへんちゃう?」
「りょっ了解です!」
潔く警察官二人が、僕から手を抜く。
そして、出口まで案内され、そこから僕は駅へ向かった。
多分、もう咲蘭歩は帰っただろう。
随分と時間もたっているはずだ。
そう、ブツブツと独り言をつぶやきながら駅へ向かう途中であった。
(−−− 新原町 ヤングストリート −−−)
駅へ向かう途中、若者がよく集うということでつけられた、ヤングストリートという場所へ来ていた。
「ここも、久し振りに来たな…」
ここに来たのは、中学生の時あたりだ。
ここに来るのも…。
「そういや、アイツ、元気してるかな?」
一人人ごみにまぎれ、さ迷うにように…。
さて…これから、行くか。
「時間もないが…」
「だよね〜」
「ん?」
声が聞こえる…。
この声は…
「サク、お前もいい加減成長したらどうだ?浮気なんてばれたら…」
「だいじょーぶ!こう見えても、被りは得意なんだからっ」
「え…」
なんで…あいつと…。
「てか…お前、あいつどうしたんだよ?」
「さぁ〜?計画通り、あの子がどうかしてくれてるんじゃないの?それよりもさ〜」
…そういうことか…なるほどな…。
被り…か
僕は、トコトコと歩いて、帰る…。
できるだけ…あいつと会わないように…。
駅へ…駅へ…。
(−−− 新原町 紅灯駅(こうとうえき) −−−)
「…ついたか」
30分ぐらいで着くことができた。
…。
「く…僕は…」
駅のホームの片隅で、僕は電車を待つ。
キップは片道160円だ。
{6番線乗り場に、列車が到着します、危険ですから---}
と、ようやく電車が来たようだ。
僕は、その場に立つと、すぐに6番線へ行く。
僕を、あの日から救ってくれたあの家へ行くために。
第14話 仲立ち作戦-実行-
その日は特に陽射しのまぶしい日。
あらゆる植物が、せっせと光合成をして、私たちに、酸素を頂戴させてくれる。
しかし、薔薇は、光合成をするのでしょうか?
「えっと…それで?」
今私たちは、薫人さんを尾行及び観察をしていた。
「だから、尾行調査と観察ですわっ!」
「あの、水を差すようで悪いんですが、僕帰っていいですか?」
「なっ何でですのっ!」
普通に帰ろうとする彼を、思いっきり止める
なんて人だろう。
こんな時ですら、こんな…。
環奈(かんな)がなぜこの人を好きになったのか…。
彼女とこの人を仲立ちさせるためにこの人の情報を集めてみようとしたものの…まったく理解しがたいですわ…。
「…」
「どうしたんです?ぼぉ〜として」
「いえ、特に何も…そっそうですわ少し、会ってもらいたい人がいるんですの」
「あってもらいたい人?」
なんだろう?
とした顔である。
まあ、これからその会ってもらいたい人に会えば、少しはあの子も気が晴れるでしょう…絶望とかで。
「では、行きましょう」
先行して、私が廊下からその場所へ移動する。
ちなみに、私は3年生、例の彼女も3年生である。
さて、なぜ別の学校にいるはずの私がここにいるかと言いますと、無論転校をいたしまして、今はここ、水鳥乃学園に在学していますの。
文句ありまして?
(−−− 3年4組 −−−)
「えっと、壽凪(ひさなぎ) 環奈はいるかしら?」
と、周囲にいた生徒に聞く。
無論同学年。
「ええ、あそこに座ってますよ」
「どうも」
そう言って、私は環奈の近くへよる。
すると、彼女の方から話をかけてきた。
「ん、椎雫?」
「今日は、スペシャルゲストを連れてきたのよほら」
と、物を差し出すように柳君を差し出す。
「どっどうも…えっと…」
「!!!!!ちょっといいかなっ!?」
思いっきり肩をびかつかせ、彼女は私の方を焦った眼で見る。
そして、制服をぐいぐいと引っ張って、扉の近く、つまりは柳君よりも離れた場所へ移動する。
「どっどっどっどういうことかなぁああ!?」
「どういうって・・・こういう?」
「じゃなくてぇえええ!!!」
「まあいいじゃない、こうして巡り合わせてあげたんだから・・・好きなんでしょ?彼のこと」
「そっそうだけど…う…」
彼女は、壽凪 環奈。
私の幼馴染で、少し臆病なところもある。
クラスでは、成績優秀で、周囲からも度々噂されている。
その彼女も、何度か告白をされてきたらしい。
それを幾度となく断って来ていた。
それでもモテる女はいたもんね。
「それで、どうするの?少しお話しでもする?」
「…ちょっと待って…トットイレ…」
「逃がさないわよ?」
「うわぁあん・・・」
彼女は、その臆病な性格で、幾度となくトイレと言い、逃げだす癖がある。
まあ、今のようにバッサリとみ抜けてしまうほどに脆(もろ)いけれども。
「…う…わっか…た…でも、約束…」
「なぁに?」
「一緒にいてね?」
そう、これが彼女の最後の抵抗である。
自分を逃がさないため、かつ安心させるためである。
それでも、彼女は幾度となく私に逃げられているのだが…。今回くらいは、許してあげよう。
「わかったわ、神に誓って」
手で合図する。
これで、今日は彼女の御守役となったわけだ。
さぁて、忙しくなるわ…。
そして、彼女と柳君の仲立ち役となった私…どうなる?
第15話 対(つい)
「さぁ〜てと、そんじゃ、僕は此処にでも打つかな」
トン、トン、トン…。
「…王手」
「ノォォオオオーーー!!!」
「すっごーい、舞兎空(むうあ)これで、10連続勝利だよぉ〜!」
夕空が、飛び跳ねては、わーい、わーいと手を挙げて喜ぶ。
…と見える。
ちなみに、僕の目の前にいるのこの人は、潤野 舞兎空。
同級生ではないが、夕空の馴染みらしい。
…知的+無口とはよく言ったもんだが、いたんだな…こんな近くに。
「まだやりますか?…私は、もう帰りたいんですが」
「ん、もうこんな時間か…送るよ」
「結構です」
心優しい言葉も一刀両断とは…知的+無口属性とは、化け物か!?
「ボクは大いに大歓迎なんだけど?」
「私は、あまり人の輪に入るのは苦手なんです。それと、言うのなら…」
「言うのなら?」
「男の人は、嫌いです」
…訂正。
知的+毒舌です。
「私は、これで」
「ちょっと待って」
と、夕空が夢兎空を止める。
てか、その逆転 判みたいな感じで相手に指さすのやめろ、失礼だろ夕空
「何でしょうか」
「少し、行きたいところがあるんだけど?」
「勝手に行けばいいでしょう?彼と」
と、僕を見た後に夕空に向かって言う。
…まあ、そうなんだけどもさ…。
「それに、私は忙しいんです転校してまだ間もありませんし…それにそこの女顔を見てると、なんだか腹が立ってくるんで」
「…今何て?」
怒りのボルテージ 10%
「女顔」
怒りのボルテージ30%
「よく聞こえないんだけど?」
と、僕が言うと、舞兎空は僕の耳元で、大きく
「女顔!なんなら、何度でも言ってあげる、女顔、女顔、女顔、女顔、女顔、女顔...」
怒りのボルテージ…120%
オーバーリミッター解除ぉおお!!!
「僕は、それを言われるのがだいっきらいなんだ!」
「私も先ほどから貴方と話すのは嫌だと言っています女顔」
「僕の名前は、柳 美琴だ!いい加減覚えろ!」
「何を怒っているのやら」
「原因はお前にあるだろうが!潤野 舞兎空!」
「フルネームで覚えないでください、警察呼びますよ?」
「はぁ!?なぜ?」
「無論、セクシュアル・ハラスメント 略してセクハラです」
ムキィーー!
なんぞこの怒りはぁああ!!!
「僕は触れてもいない!まず、それは僕に適応されるべきものだ!お前がセクハラと言える立場にない!」
「ごちゃごちゃうるさいですね…」
ピピピ…
おいちょっと待て!
「何本当に電話掛けてん「ああもしもし( )さん?」」
何かと思えば友達に…ん?
ここ、思えば校舎だぞ?今に生徒会執行部が来てくれるはず…
しかし、いつになっても、来ない、来ない、一向に来ない…。
おいおい、目の前に校則違反者がいるってのに…。
「うん、では切りますね、はい、はい」
プツッと、結局執行部は来なかった。
「あ、それと…言い忘れましたが、私は男ですので」
最後に残したそれは、僕と対なる男と認識させられた。
第16話 二人の美琴
それは、ある日の帰り…。
何事もなく、ただ平凡に時が過ぎて、それが珍しくも思えた日であった。
…が、今は違う。
目の前にいるこの人物…僕の友達がいる時点で、すべてが変わった。
平凡な日常…それが崩れてしまうぐらいに。
「…、あの日以来だね…何年ぶりになるかな?ミコト」
そう、彼は言う。
僕とよく似た、いやむしろ鏡でも見ているのではないか、鏡に反射した自分がしゃべっているのではないか?と思えても来る。
服装は違えど、外見は、瓜二つであった。
「…少し、話がある…時間取れるか?」
「フム、なるほど‘あの件‘について…かな?」
いや、似ている。
声、身体、顔…何もかも
傍からみれば、それは、再開した双子がいるように思えてくるだろう。
(−−−四、五年前のある日の冬 万橋(もんばし)街−−−)
それは、たしか…四、五年も前となる。
春には、満開の桜が立ち並ぶこの桜道と呼ばれる程に、果てしない桜が咲き乱れるその場所に、僕らはいた。
ここは、夏には緑葉が咲、秋には紅葉が咲く。
変な話だ。
桜の木のはずなのに、秋には紅葉が咲く木になってしまう。
そして、紅葉が散り、より一層秋を感じさせてくれるこの道…。
オレンジに等しいその色合いと、鮮やかな宙返りを演出させては、演技の終了を意味する地面へと何事もなかったかのように静かに、音もたてずにただただ…ヒラヒラと蝶のように停まる。
その蝶たちを、レレレのお さんのように、せっせと一人、また一人と枯れ葉をかき集めに来てくれるボランティアたちもまた、この季節に欠かせない色だろう。
そんな中、僕らはその道に冬を迎えた新しき道に、足を踏み入れていた。
景色は、まさに白の結晶、もとい白き世界が広がっている。
幻想的なその世界に、終わりがないかのような感覚を持たせようとしているのか先が曇ってうまく見えない。
木々にかかった雪がズルズルと落ちてはまた雪をためている。
「成る程、入れ替えか」
「そ、僕にそっくりな君にしか、このことは頼めない」
「それはいいが、本当にそんなことをしていいのか?ミコト」
「違っているのは、髪型と服装だけだ問題なんてない」
「そういうことではなく、得をするのはボクだけだということだ」
「構わない、僕も少しは外の空気を吸っておきたいんだ」
「そうか…じゃあ、最後に」
「ありがとう…そして、さようなら」
茶色のレインコートに、水色のマフラー、青いジーンズをはいた彼と、また僕は黄色いマフラーを首から肩、背中へ余った部分を回し、襟から下へ三つボタンをつけ、腕と肩より下は、白、上は蒼と言ったところ。
ズボンは同じだ。
が、所々に破けた部分があるのは、少し残念なのか否かは、あまり考えてはいなかった。
(−−−現在−−−)
「あの日以来だねミコト」
「今にして思えば、自分の愚かさに目を覆いたくなるよ…そして、これからもね」
「…異言はないよ」
「…」
こちらも…とも言えず、黙り込む僕。
少し、情けなく、悔しかった。
「さて、話の続きと行こうか…ミコト」
第17話 水鳥乃学園運動会 -開幕-
「それではぁああ!第一回、水鳥乃学園運動会を開始する!」
「うおおおお」
歓声の叫びが、学園を覆い尽くす。
その中で、一人重い表情をする美琴。
昨夜、彼との話に、何かあったと物語る。
「美琴?どうしたの?元気ないよ」
「…」
「返事ぐらいしてよ具合が悪いなら、保健室にでも…」
「…といてくれ」
「え…?」
「ほっといてくれ!僕のことは!」
大きくそう叫ぶように、だが、歓声の声には程遠く、他の誰も美琴の声には反応しなかった。
「…わかった」
その声に体を震わせ、二歩さがり、そう言って咲蘭歩はっ去って行った。
季節は、もうじき秋となろうとしていた。
その前には夏休みがあったが、美琴自身、その中で特に楽しいと言ったこともなく、最終日になり、ついにはその日まで家から出ることはなかった。
それから数日が経ち、彼と出会い、話し、そして今に至る。
「はぁ…まさか…なぁ…」
自分の手に映る彼の顔、いや自分の顔かもしれない。
そして、走馬灯のように、過去が浮き出る。
あまりに悔しい、そんな感情が手から汗となって、こぼれおち、それを逃さず手を握りしめる。
「…まあいい…のか」
「おーい、美琴〜」
「みっちぃ〜次、共同マラソンだよ〜」
「…」
(まあ、いっか…僕は、今を…今日を楽しまないとな)
学園の窓辺から、一つの影が、運動場を見つめていたことを、誰も知らない。
「ねぇ〜みっちぃ元気ないね?」
「そんなことないよ百合姉(ゆりねえ)」
「そう?何かあったら、言ってよね〜」
この人は、川梛(かわなぎ) 百合人(ゆりと)さん。
薫人とは、歳差の変わらない姉弟だ。
「そういえば、さっきから さくらん 全然見かけないんだけど、見てない?美琴」
「…見てないよ」
「そぉ〜?わかった」
「おーい姉御、美琴〜そろそろスタート地点につけよな〜!」
「うっさいわねぇシゲ男!待ってなさい!いくよみっちぃ」
「うん」
そして、運動会はスタートの合図を知らせるピストルの音で始まった。
第18話
「よぉ〜い、ドン!」
パンッ!と、ピストルの音とともに僕らは一斉に走る。
スタート地点で、僕の左右は川梛姉弟になっている。
今年の運動会では、顔を見せることなどほとんどない1,3年の人たちと顔を合わせることとなり、いつもよりも多人数で行うこととなる。
僕が通うこの水鳥乃学園は、基本的には学年によってそれぞれが別々なことをしている。無論運動会も例外ではない。
今年は校長先生の入れ替えがあり、大宮王学園の校長が今はこちらに来ている。
唯一その校長と面識があるとすれば、粕壁先輩ぐらいだろう。
ちなみに、僕が彼女のことを先輩と呼ぶようになったのは、
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