摂食障害とは読んで字の如く、食事を摂ることに障害をもつ心の病気です。

単なるダイエットや食べ過ぎとは全く異質の、痩せに対する強迫観念及び、発散、自己懲罰であり
その奥にはストレスや家族やトラウマなど、心の問題が背景に潜んでいます。
「大人に気に入られる良い子として振舞ってきた子供が、成長過程での挫折を機に無意識の退行として発症する」
とも言われています。

摂食障害は、色々考え過ぎてしまう頭のいい子がなりやすい傾向があります。 
考えて考えて考え過ぎて、他人の顔色を伺い過ぎてしまう。
この為、「なぜ食なのか」については、誰にも迷惑もかけず一人に行える為である場合が多いのです。

「拒食症」と「過食症」は別のものとして扱われていますが、実は極めて近い関係にあり
時には拒食症から過食症へ、反対に過食症から拒食症へ移行することもあります。
アメリカでは思春期や青年期の女子の約4%にみられ、年々増加し、若年化する傾向にあります。
もっとも発症しやすいのは10代半ば頃で、思春期女性の0.5〜1%は発症すると言われています。





 拒食症 (神経性無食欲症) 

Anorexia Norvosa

無理なダイエットが原因の多くを占めると言われています。
この場合、どんなに痩せていても「痩せ願望」が強くあるので
とにかく「食べること」を異常なまでに拒絶します。

原因がダイエットではない場合には
自己懲罰的、または女性性に対する嫌悪感が原因であるケースなどが挙げられ
この場合には「女性であることで自分の出世が妨げられた」「性的被害に遭った」など
自分の肉体に懲罰を下そうという意識が背景に潜んでいます。
他には、人間関係により心に傷を受け、食欲減退が始まるケースなどもあります。

たとえ「痩せたいから」「ダイエットの為」が動機だとしても
痩せて愛されたい(痩せてることを心配されたい)、ありのままの自分を好きじゃないと云うことが問題です。
親に期待されていたり、親を幸せにしないといけない、兄弟の中で1番愛されたいなど
幼少期からの親との関わりが重要であり密接となります。
それは幼児期のことなので、心当たり・自覚がなくて当たり前なのです。

『The Golden Cage : The Enigma of Anorexia Nervosa』の著者、ヒルデ・ブルッフは
拒食症の背景として、パ−ソナリティ形成と家族関係に問題があること指摘しました。
ブルッフによれば、拒食症患者の家庭の多くがEnmeshmentと表される家族システム下に置かれています。
(Enmeshment…もつれ、巻き込む。子供が母親や父親の代理配偶者となる等)
この家庭環境は、絆の水準が極めて高く(ベッタリ)過保護やプライバシーの欠如など、家族メンバーの自立的成長を脅かし
家族内の不調和を子供に過剰に押し付けて回避しようとする傾向があります。
このような家庭で無力の少女にとってコントロールできる唯一のものが、自己の体重である訳です。


 2つのタイプに分けられる

・「制御型」
過食発作(発作的に暴食する)または排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤、浣腸の誤用)が伴わない。「むちゃ食い/排出型」
過食発作を伴うまたは排出行動を行ったことがある。
過食発作が起こる度に吐いたり、下痢や利尿剤を使ってまで体重を減らそうと試みる。


【診断基準】

1. 体重が増えるのを嫌がる強い衝動があり、標準体重の85%以下(BMI-25%)まで痩せてしまう。

2. それほど痩せていても、なお体重が増えることを極端に恐れる。 

3. 極端に痩せているにもかかわらず、痩せていると認めない。 

4. 無月経が3ヶ月以上続く(初潮後の女性の場合)


 ←BMIを測定できます(美容体重などの説明も) ※外部リンク



 過食症 (神経性大食症)  Bulimia Nervosa ダイエットに起因している場合(無理な食事制限によるリバウンド) 及び、ストレスを「大量に食べる」ことで発散するべく生じやすいことが分かっています。 (心の空白を食べ物で満たそうとする等) また、身体的な苦痛を味わうことでの自己処罰の手段として用いる場合もあります。 極めて自制困難な食に対する欲求に支配され、一心不乱に食べてしまうが 過食後は食べてしまった自分自身への自責、敗北感などが沸き上がり これにより、自己評価や自尊心が著しく損なわれてしまいます。 過食症の中には、「食べるだけ」と「食べて出す」の2つの種類があります。 前者は、胃袋の限界までの過度な食べ過ぎ 後者は、過食後に自己誘発性嘔吐、下剤の使用、チューイング(噛んで吐き出す)等を伴います。 これらの代償行為を行う為、必ずしも肥満ではなく標準体重の人も多いと言われます。 過食は一度癖になると、ちょっとした事(イライラ、悲しくなった時、怒っている時)や 退屈な時にするようになっていきます。 過食症は、拒食症よりも一般的によく見られる摂食障害です。 同じ摂食障害でも、拒食症に比べると人格障害の合併率が高いものです。 またアルコール依存症、うつ病、パニック障害も合併しやすい障害です。  2つのタイプに分けられる ・「排出型」 神経性大食症のエピソード期間中、定期的に自己誘発性嘔吐をする。 または下剤、利尿剤、浣腸の誤用を行う。「非排出型」 神経性大食症のエピソード期間中、絶食または過剰な運動などの不適切な代償行為を行ったことがあるが 定期的に自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤、浣腸の誤用は行ったことがない。 【診断基準】 1. 次のようなむちゃ食い(暴食)を繰り返す。  * 普通の人が食べるのよりも明らかに多い量を一度に食べる。  *「食べずにいられない」「食べるのが止められない」といった強い衝動がある。 2. 太らないように絶食したり、自分で吐いたり、下痢や利尿剤などを使う。 3. むちゃ食いと2のような症状が一緒に、平均して週2回、3ヶ月以上続いている。 4. 体型や体重のことで自分を評価しすぎる。 拒食症の症状がある間は、過食発作があっても過食症とは言わない。
 非定型摂食障害 (特定不能の摂食障害)  1. 女性の場合、定期的に月経があること意外は、神経性無食欲症の基準をすべて満たしている。 2. 著しい体重減少にもかかわらず、現在の体重が正常範囲内にあること以外は 神経性無食欲症の基準をすべて満たしている。 3. 無茶喰いと不適切な代償行為の頻度が週2回未満である。 または、その持続期間が3ヶ月未満であること以外は、神経性大食症の診断基準をすべて満たしている。 4. 正常体重の人が、少量の食事をとった後に不適切な代償行為を定期的に用いる。 (少量の間食後の自己誘発性嘔吐 etc.) 5. チューイングを繰り返すが、飲み込むことはしない。 6. 無茶喰いのエピソードを繰り返すが、神経性大食症に特徴的な、不適切な代償行為の定期的な使用はない。
拒食症であれ過食症であれ、共通している観念 ■「達成感」や「自己処罰」を求める ex) ・体重を減らすことでしか達成感を味わえない ・食べて吐くことでしか達成感を感じられない ・食べ過ぎで苦しむことも嘔吐で苦しむことも自分に科した罰 ・低体重による身体の不調に苦しむことも自分への罰 など よって、本人にやめられる気がしなくなっていき、常習化してしまう。 ■自分なりのルールや決め事に縛られる ex) ・(拒食時)これしか食べられない。他のものを食べたらダメ人間。 ・(過食時)これをこのようにして食べる。高カロリーのもののみ食べる。 など 拒食と過食を繰り返すメカニズム 脳の食欲の中枢とストレスの中枢が側にある為、過食になったり拒食になったり食に走る。 一般の人はストレスが溜まったら発散する機能が上手に働いていたり ダイエットしても限界を感じ、身体が食べ物をきちんと求めて満足する。 ただ、摂食障害患者は脳に“加減”する力が足りず、「食べない(拒食)」か「食べ過ぎ(過食)」になる。 過食後に食べ過ぎを後悔するだけで終わればいいが、「脅迫観念」や「囚われ」で正常に考えられない。 要するに、不安解消物質のセロトニンが少ない。 ←関連事項「認知の歪み」はこちら *** 合併症状 *** 摂食障害は、他の嗜癖性疾患と合併しやすいと言われます。 ・アルコール依存 ・薬物乱用 ・窃盗癖 ・買い物依存 ・自傷行為 ・性的逸脱行動(恋愛嗜癖・セックス嗜癖など) などが挙げられます。 *** 身体面の影響 *** ・無月経、月経の不順 ・味覚鈍麻 ・胃潰瘍、胃痛、胸焼け ・白血球の減少 ・脱水症状、便秘 ・低血圧、低体温、貧血 ・心臓の不整脈・不全収縮 ・肝障害、腸管閉塞 ・歯牙破損、虫歯の誘発 ・悪液質性白内障 ・無痛の耳下鮮腫脹 ・骨粗鬆症 ・低血糖、栄養失調 etc…