<補足説明>

補助金の不正行為の例
(1)架空請求

買っていないものを買ったことにして書類だけ整える。
こういう不正はすぐに見つかります。支援側は「現物確認」をするからです。確認できなかった部分は補助金が出ません。
実際に買っていて、現物が存在していたとしても、領収書などが存在しないと出ません。

(2)原材料の横流し

ベテラン職員は帳簿を見ただけで、これに気づくそうです。
買った原材料の分量と、作られた試作品の数があまりにもアンバランスなので、おかしいと感じるらしいです。
私にはムリです。

(3)量産品を試作品と偽る

原材料費に補助金を投入できれば、その会社は確実に儲かります。補助金のことをよく知らない企業さんたちは、そういうものだと思っているようです。
もちろんそれでは支援制度の主旨に反します。
とはいっても、「試作品のテスト販売をする」ことをマーケティング活動の一種だと位置づけ、その経費を補助対象とするというのは、ありえるところです。
製造業の場合、試作品は「設計通りに動くかどうか確かめるもの」です。つまり、販売するものではありません。
しかし、商業・サービス業の場合、試作品は、「1個1,000円って値札を付けたけど、本当に1,000円で売れるかどうか確かめるためのもの」です。つまり、売ることが前提です。
しかも、経営者の多くは、「良い商品は値段が高くても売れる」と信じています。その願望を現実とすり合わせるためには、試作品販売はとても大切になってきます。

ところが、これを認めると、テスト販売用として作った試作品だと偽装をして、量産品に混ぜて売り、本業の収益に流し込むという不正が生じる可能性があります。

テスト販売部分については、きっちりと経費を区分けして、ここで収益が生じた場合は、同額を補助金から差し引くといった対応が行われます。
新製品の場合、実際に値札をつけて販売しないと、顧客の手ごたえがどのくらいあるのかわからない場合がありますので、こういう取扱いも必要です。

(4)架空の人件費請求

人件費はいわゆる“消えもの”の代表格です。このため、裏付けとなる作業日報が必要になってくるんですが、これを整備するのはとてもたいへんです。
人件費に補助金が充当されるといっても、その仕事をやっている人の給料が上積みされるわけじゃありません。補助金は会社に入ります。給料は増えないのに、作業日報を作るのは従業員本人になります。後から作成すると、いろいろと記憶違いも出てきてしまって、さまざまな不整合が起こります。だから、企業側がきちんと確認する必要が出てきます。
そうするとですね、最初から最後まででっち上げで作ってしまえばウソでもわからないんじゃないか、という気持ちが出てくるのです。「形式さえ整っていればいいのだろ」という居直りです。

そんなことで、安心するなんて甘い。
現代は、誰でも密告できるIT社会なんです。
人件費補助の不正→

みなさんも思いあたるでしょうが、小学校の夏休みの日記を数日間サボってしまうと、後からさかのぼって書くのって、とても億劫なんですよね。

昔、雇用の助成金で、「失業者が民間のスキルアップ講習などを受けると講習料として40万円出る」というのがありました。案の定、書類だけ揃えて講習を受けたことに仕立てて、口裏だけ合わせれば「40万円山分けじゃん」という、悪質な失業者+セミナー業者のタッグが出現しました。
当事者が口をつぐんでいれば、発覚しないと思ったみたいです。でも、見つかっちゃうんですよね。

(5)過大見積と循環取引

こいつはかなり見つけにくい不正です。
日頃から取引のあるA社とB社がつるむ。
A社はもらった補助金で部品作成をB社に委託します。ここまでは真っ白。
その際、委託料を相場より高めに設定します。B社はその過大見積部分をプールしておいて、別の取引の際、その金額をディスカウントしてA社と取引をする。

公費が絡んでいなければ、民民の契約ではあり得る話ではないかと思いますが、不利益を受けるのは公費(すなわち税金)なので、明らかに不正となります。

このほかにも、日頃つき合いがある会社にお金を流すために補助金申請するという、本末転倒な事業があるように思えてなりません。

今回の提案では、循環取引のうま味を減らすために、「限度額制度」と導入しました。







自社で内製化できる仕事を、あえて他社に発注するというような内容だと、何やら怪しげな臭いがします・・・。

(6)新規性偽装

本質的には同様な事業なのに、ちょっとだけ仕様を変えて「新製品開発」と銘打ち、あちこちに応募する。
こうなってくると、どこまでが適正でどこからが不正なのか、わからなくなります。

「赤ちゃん用に製造されたおむつの素材を、高齢者用に転用する」と言われてしまう。それは既存事業の延長なのかというと、そうは思えません。しかし、まったくの新規かと言われると、そうでもないような気もします。
このように突き詰めて考えていくと、「新規性」を条件にすること自体が、本当に必要なのかどうかが疑わしく思えてきます。

こういう紛らわしいのは、いったん採択してしまうと、「変じゃない?」というクレームは付けにくいものです。ですが、その会社は以降、ずっと警戒され続けることになります。

今回の提案で、社会貢献型を設けた理由は、こんなところにあります。

(7)その他

このほかにも、もろもろの不正手段があります。
あまり解説してしまうとまねる人がでるので自重しますが、支援団体側もいつもこういうことに目を光らせていることを覚えておいてください。
そして、ただちに補助金返還命令に至らないとしても、不正が疑われるグレーな案件があれば、次からの応募条件が厳しくなります。
結果的には、企業の利益に繋がらないのです。


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