<補足説明>

消えものが多いと、不正を見つけるのが困難
補助金の不正というのは、ある程度のパターンがありまして、製造業の場合、試作品を作ると偽って原材料費を補助してもらったのに、その原材料を横流しするとか、正規の製品として販売ルートに載せてしまうとかいうことが多いです。
しかし、要するに<モノ>ですから、そうそう隠し通せるものではありません。

ところが、商業・サービス業の分野では、補助対象が<消えモノ>であることが多く、このため、不正を働かれても、簡単に発見することができません。
だから、支援団体としては、商業・サービス業に対する補助制度が嫌なのです。

ところで、商業・サービス業の企業さんとお話すると、補助対象としてもらいたい経費の3大要素が浮かび上がってきます。
1つ目は、事業を実施する「場」に対する経費。例えば家賃や内装経費です。
2つ目は、事業の周知に要する経費。いわゆるPR経費です。
3つ目は、事業を実施するのに必要な人を雇う経費。つまり、人件費です。
しかし、補助事業を行う行政側から見ると、それぞれに難しさがあります。
人件費補助の不正→

内装経費ですが、賃貸の事業所だった場合、その区分けをどこまで見るかとか、途中で事業転換してしまった場合、例えば「福祉施設と称して補助金をもらって事業開始したが上手くいかなかったので食堂にしてしまった」とかいった場合に、補助金返還を求めるべきなのですが、そうすると企業自体が潰れるといったケース。
そんなことは、わりと発生しやすいです。

2つ目のPR経費ですが、チラシやポスターを作る費用は対象にできますが、最近はウェブ広告やアクセス向上対策、フェイスブックの活用など、いわゆる<消えモノ>が増えてきており、実際にそういうものを活用すると、裏づけ証拠(役人は好んでエビデンスと呼ぶ)が取れないので、補助対象にはできない場合が多くなっています。 ちなみに、都公社は、このような理由で「ダイレクトメール」を補助対象経費から除いていますが、補助金によっては認められるケースも少なくありません。

ソフトウエアも消えモノの代表格でしょう。
プログラムを外注すると、一般的には既存のソフトウエアをカスタマイズする方が安上がりとなりますが、補助対象となる部分と、そうでない部分の区分けが難しくなります。
プログラムそのものの所有権という問題も発生します。 
また、ウェブデザインの場合、目に見えない部分にアクセス向上の仕組みを織り込まれているので、費用がどのようにかかっているのか、簡単には確認できません。

とりわけ商業・サービス業の事業者にとって、補助してほしいのは「人件費」です。
個人的には、商業・サービス業向けの本格的な支援策が必要だと思いますが、不正が働かれる可能性が高いのも人件費補助でして、新聞紙上をたびたび賑わすのが、いわゆるピンハネ問題です。
人件費は、まさしく<消えモノ>ですから、不正を働く側も、「ひょっとしたら見つからないかも・・・」と思ってしまうのかもしれません。


閉じる