<補足説明>

補助金限度額という幻想

多くの場合、補助金には「補助率」というものと、「限度額」というのが設けられています。
例えば1,000万円という高めの限度額が設定されていたとしても、補助率2分の1だと、少なくとも2,000万円規模の事業計画を作らなくては限度額いっぱいの補助金を手にすることはできません。
しかも、申請事業は、補助金額よりも自己負担部分の方が大きくなるのが普通ですから、当初の自己負担は2,500万円になったりします。
自己負担額+補助金額を、いったんは企業が全額負担しなければなりません。

通常、そんなお金を自分の財布から出すのはムリです。
そこで、金融機関から融資を受けることになり、当然それには利子がかかります。しかも、金融機関が無条件に2,500万円をポンと出してくれることはあまりありません。

実際に補助事業を完遂してみると、補助対象経費の制約などから完了時には実際の事業経費が小さくなってしまい、これと連動して補助金の額も小さくなってしまいます。このことを金融機関もよく知ってるからです。




補助金では、最初の決定額が全額出ないのが普通→

補助制度を利用する商業・サービス業の方々が、「金額は少なくても使い勝手がいい補助金」を求めているのに、どうして限度額が大きくなるかというと、それは予算担当側の都合があるからです。

役所の予算は<積む>という言葉でよく表現されます。
予算要求する立場とすれば、できるだけ総枠は大きくしたいというのが本音です。
事業執行する側でも、細かい補助金をたくさん出すより、それなりにヴォリュームがある補助金を少ない件数出す方が楽です。
こうした思惑が絡み合って、予算単価=すなわち1件あたりの限度額が大きくなります。
そして、「限度額はそれなりの額になっているけれど、使い勝手が悪い補助金制度」ができてしまうのです。

しかし、「限度額1,000万円」というキャッチコピーで補助金申請をしても、確定後に1,000万円がポンと出ることは、ひじょうに少ないです。

限度額というものは、例えていうなら、車の性能と実際の運転との関係に似ています。
あなたが新車を買ったとして、ディーラーさんは、「この車のエンジンなら最高速度180キロは楽勝ですよ。」と説明されるかもしれません。しかし、実際の運転では、そんな性能限度一杯までスピードを出すことはできません。交通法規によって制限されているからです。


補助金の場合、この交通法規に該当するものが、「補助対象項目」です。
ですから、申請を決める前にこの補助対象項目については、必ず確認するようにしましょう。

補助金限度額の設定は、前述のように絵に描いた餅のような存在なのですが、参考にできる点もあります。それは、補助金の制度設計した者が「どのくらいの規模感の事業を想定しているか」が、推測できることです。

例えば、限度額を1,000万円に設定するということは、補助率2分の1だと、企業の自己負担が1,000万円必要だということです。
つまり、当座は少なくとも2,000万円の資金を用意してほしいと、制度を作った人が考えていることがわかります。
そのくらいの力のある企業を支援元は求めているのです。
ですから、限度額が大きい事業、例えば「1000万円限度、2分の1補助」という事業規模が設定されている補助金に、「限度額以下だからいいだろう・・・」と、100万、200万の事業計画を申請したのでは、簡単に採択してもらえないと予想できます。

このため、最近では、申請額の「下限」を設定する補助金も増えてきています。しかし、実際に事業を実施してみると、申請額以下の事業しか実現できないという場合があります。その時も、補助金は交付してもらえるようですが、それはそれでどうかな・・・、と。

やはり、申請額―決定額―執行額―確定額の乖離が少ないのが、いい補助金制度なのではないでしょうか。


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