月夜裏 野々香 小説の部屋

   

After Midway

  

第03話 1942/08 『アメリカ軍のガダルカナル上陸』

 1942年8月

 戦艦アラバマ 完成

  

 日本軍の撤退したガナルカナル島にアメリカ軍が上陸。

 日本軍は、航空部隊と水雷戦隊をトラックとビアクに配置しアメリカ軍の反攻に備え、

 将兵10000をアッツ、キスカに追加上陸させ、内線の要塞化を進めていた。

   

 天皇は、しがらみと利権と面子で埒の明かない規格統合を決めていく。

 次期主力戦闘機を1500馬力級金星エンジンとし、

 ゼロ戦、飛燕、彗星、天山、100式司偵、ゼロ式輸送機の開発を進めさせる、

 砲口兵器は、6.5mm、12.7mm、20mm、25mm、

 50口径47mm、50口径75mm、50口径120mm、55口径155mm、55口径203mmと定め。

 規格外生産として、7.7mm、127mm、152mmを生産。

 さらに規格外砲100mm、140mm、149mmを限定した地域に集めていく。

 戦場での柔軟性と融通が悪くなるかわりに数量を揃え、

 補給と部品の食い合いを容易にさせていた。

  

  

 赤レンガの住人たち

 「釜石製鉄所に特殊鋼の製法を伝えたんだろう」

 「ああ、かなり怪しいが少しはマシになる」

 「特殊鋼の生産は足りないからな」

 「というより全部不足してるがな」

 「おんぼろ軍艦を解体しても、規格外砲を溶かしても、まだ足りない」

 「陛下の裁断で、関係各所は大荒れだ」

 「民間が取り過ぎたんじゃないのか。つるはしと軍手は、なんに使うんだ?」

 「・・・炭鉱・・・ 土木・・・ 工場・・・ その他諸々」

 「戦線を後退させて輸送計画が楽になっても、既存の大砲を溶かす余裕はあるのか?」

 「鉄鉱石も石炭も待ち状態だからな。どちらかというと、弾薬の方が不足気味だ」

 「軍部でも奪い合い、民間でも奪い合い」

 「軍部も民間も、物資が足りないのに仲良く出来るとは思えないがね」

 「配給待ちで仕事の時間が潰されるくらいなら、血の巡りを良くすべきだよ」

 「どうなることやら」

 「しかし、陸軍省と海軍省も、がらっと態度を変えやがって」

 「仲良くしないと更迭。仲良くできる後任が実力に関係なく選任される」

 「強圧的だな」

 「だが、士官は、年功序列と鞄持ちで出世を待つ必要がないから、陛下の味方をしたがる」

 「んん・・・」

 「陛下が直接、賞罰を判断すると、将校は、陛下と士官の板ばさみか」

 「陛下に対する圧力も弱くなるな」

 「身の丈以上の権力に就くと傲慢になるし、富に溺れると根腐れする。怖いモノがあった方がいいよ」

  

  

 ソロモン沖

 アメリカ機動部隊は、占領したガナルカナル、ニューブリテンを中心に配置され、

 日本機動部隊の襲撃に備えていた。

 空母エンタープライズ 艦橋

 「日本機動部隊に動きは?」

 「いまのところ、まだ・・・」

 「日本で政変が起きたというのは、事実かもしれないな・・・」

 日本機動部隊は出撃せず、トラックの基地防衛に努めていた。

 

 

 天皇は、満州西北部4万kuと満州東北平原4万kuを北樺太4万kuと交換をソ連に打診。

北樺太(青)と満州北東部、北西部

 スターリンはスターリングラードで苦戦していたこともあり。

 要地ハバロフスク、ウラジオストック、チタ防衛のため即断で交換に応じる。

 そして、満州帝国が日本の傀儡であることを国際社会に証明してしまう。

 しかし、戦争状態にあったことから隠匿する必要もなかった。

   

 天皇の勅命で数人の将官が引き揚げられ、軍上層部の将官数人が飛ばされる。

 表向き勅命に逆らえない陸軍は、渋々と勅命に従うことになった。

 陸軍は、ソ連軍と協議しながら大興安嶺防衛線、小興安嶺防衛線、完達防衛線にまで前線を後退。

 北樺太を接収していく。

  

 赤レンガの住人たち

 「大興安嶺、小興安嶺、完達山脈は、ある程度の戦力があれば防衛しやすい」

 「ミッドウェーで負けて、最良の外交政策か・・・」

 「それも天皇のお陰とは・・・」

 「議会は?」

 「天皇の勅令で、陸軍の重圧を弱体化できると考えているようだ」

 「元から形骸化しているから沈黙しているよ」

 「軍は英霊が、どうたらと言うのはないのか」

 「まあ、英霊が眠っているのは、ノモンハンを除けば、四平までが多いからね」

 「陸軍も妥協したようだ」

 「極東でソ連が安全になれば、その分の戦力を東部戦線に注ぎ込める」

 「ドイツが怒っていたようだが」

 「ソ連軍の攻撃から、平地を守るのは、大変だよ」

   

  

 スターリングラード

 ドイツの大攻勢が始まる。

スツーカ

ソ連IL2M シュトルモビク

 

3号G型

 

 北樺太と満州の領土交換は、日本軍のソ連侵攻の可能性の低下を示し、

 ソ連側に安心感を与え、

 ドイツ側に対日不信感を増大させてしまう。

 

 日本の某工場

 「・・・んん・・・ 上がそういってもねぇ」

 「メートルを使わないと部品の互換性が合わないからね」

 「いまさらそう言われても、もう、研磨剤も、機械油も少ないし、規格を揃えるのは良いとしてもねぇ」

 「ひまし油があるだろう」

 「トウゴマ種子は植物油だよ。植物油はカビるから毎日タンクを清掃しないとな」

 「陸海軍の部品を共有化できるなら、何とかやっていけないものかな」

 「例えばだ。アメリカ製の工作機械はインチだろう。ドイツの規格はセンチだ」

 「それで、日本の設計で尺貫や度量が使われていたりするからね。いろいろな・・・」

 「まぁ 何とか合わせてくれよ」

 「陸海軍の部品を共有できるだけでもマシと言えるがねぇ うちが犠牲になるのはいただけないな」

 「いや、ここだけじゃないから・・・」

 

 

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