月夜裏 野々香 小説の部屋

    

現代ファンタジー小説

『明けましてファンタジー』

 

 第02話 『バブル・クラッシュ』

 産業の拡大と公害と砂漠化は生活圏を確実に押し狭め、

 人口は飽和状態となって食料と水とエネルギーの価格インフレを起こした。

 列強は合法的に、時に非合法的に弱小国を食い潰して食糧と水を奪い、

 世界中に飢餓と暴動と戦争を蔓延させていく、

 そして、食糧自給率40パーセント以下の日本も秩序が崩壊し、

 誰かが今日より明日に希望を持ち私腹を肥やそうとするだけで人が死ぬ。

 保身と事勿れとムラ社会な派閥力学で硬直化していく組織、

 老害化した既得権は、生産力を劣化させ、未来の可能性を失わせる、

 餓死で人々が死んでいき、

 下級官吏を賄えるだけの財力はなく、

 警察組織も維持できなくなっていた。

 そして、特権階級にある者、資産家だけが生き残っていく、

 とはいえ、暴動は富裕層を軒並み散財させ、社会を荒廃させていく、

 “我々の危機的な現状は、ハイスペックと呼ばれる人種によって引き起こされました”

 “彼らは常任の数十倍の“生体素粒子”を有するモンスターで、この破局をもたらした元凶であり”

 “我々人類の敵です”

 監視カメラの映像が流されていく

 数人の男たちが女性を襲おうとした時、女性が変貌し、逆に男たちを殺し、血を吸い始める、

 “政府は、ハイスペックと呼ばれる異常人種に対し、懸賞を出しています”

 “生体素粒子の量が生体素粒子検知器に記録され、その記録分の懸賞が支給されます”

 それまで政府に向けられていた憎しみの対象は、ハイスペックと呼ばれるモンスターに向けられ、

 人々は生きるため武器を手にするとモンスター狩りに誘われ、

 世界中でモンスター狩りが始まると、

 それまでバラバラだったモンスターは結束、

 さらに自らの生体素粒子を削って人外を増やして対抗、

 魔王軍と呼ばれる勢力が幾つも現れ、人類に対し公然と戦いを挑む。

 そして、人類側で作られた対生体素粒子兵器は生体素粒子を使ったものだった。

 

 

 数10年続いたバブルクラッシュで世界人口は40億まで減少し、

 政府統計で日本人の人口は5000万となって人口比率もピラミッドの形になっていた。

 世界中で、国家権力機構が崩れさる中、

 環境の変化に耐えられない熟年層が失われていく、

 それでも日本はマシなのか、技術とノウハウの引き継ぎが行われ、

 僅かに取れる燃料とメタンハイドレート産業移行で海外貿易が細々と行われる、

 都市の周りに防御壁が作られ、モンスターの侵入を防ぎつつ、

 人々は暗い過去の記憶を押し殺し、

 少しずつ秩序と生活を回復させつつあった。

 バブルクラッシュ後、白三沢と呼ばれる場所があった。

 地名を変えることで気持ちを変えたい、

 そういう事もあった。

 弱者が殺されたマンションは少なくない。

 実のところ、モンスターに殺されることより人間に殺されることの方が多かったと言える。

 「爺さん、大丈夫か」

 「イブキ。もう、わしはもう足手纏いとなってしばらく経つ。もう十分だ。捨て行け」

 「だけど・・・ギルドに行けば仕事があるし」

 「政府も魔王討伐隊を組織してる。そこで手柄を立てることができたら」

 「ふっ イブキ。政府を作っているのも所詮人間だ」

 「偽善と大義を振りまいて、形だけの体裁を整えてるだけに過ぎん、信用するな」

 「分かったよ。爺さん」

 「武器はあるのか?」

 「バットで十分だよ」

 「・・・イブキ。ギルドで働いて金を貯め、いい武器を買い揃えなさい」

 「もし、魔王討伐隊に参加するとしても最初は、後ろにいるんだぞ」

 「うん、わかったよ、爺さん」

 「イブキ。お前に渡すものがある」

 「わしが生命科学研究所で働いていた頃の・・・・壁絵の裏を・・・がくっ!」

 「じ、爺さん」

 「・・・・」

 「爺さん」

 「・・・・」

 「爺さん、爺さん」

 「・・・・」

 「爺さん・・・やっと食い扶持が減ったぜ」

 

 

 “イブキ。これを読んでいる頃、わしは死んでるじゃろ”

 “これから書くことをよく聞くのだ。もとい、よく読むのだ”

 “わしは、生命科学研究所で生体素粒子の分離と培養に成功した”

 “その瓶の赤い液体は、軍隊が赤龍と呼ばれるハイスペックを倒し”

 “その生体素粒子を分離培養したものだ”

 “もし、飲めばイブキ。お前は常人ではなくなる。かもしれない”

 “それだけではない”

 “動物実験では100パーセント死んでるし”

 “人体実験をしていないのでお前も死ぬかもしれん”

 “成功しても人間に狩られるかもしれない”

 “それは、わしが生涯を賭けたモノだ”

 “イブキ。お前がそれをどうするか。自分で決めなさい”

 “なぁに、命を賭けることだし、早急に決めることはない”

 “世の中を見聞し、経験し、それで決めるのだ”

 “イブキ。強く生きよ”

 

 コトッ!

 ころころころ・・・

 「爺さん・・・飲んじまったよ〜」

 「ていうか、なんで、グレープジュースのペットボトルに・・・」

 「そういうのは死ぬ前に自分の口で言うもんだ・・・」 がくっ!

 目の前が真っ暗となって意識を喪失していく、

 

“PS 研究所から持ち出すときグレープジュースのペットボトルを使った”

“イブキ。飲むなよ”

 

 

 目を開けると闇の世界だった。

 「死んだのか。死んだのか。おれ、死んだのか」

 目が慣れてくると自分の部屋だった。

 「生きてるよ〜」

 !?

 慌てて蝋燭に火を灯し、顔を鏡に近付けた。

 「うぅあぁあ!!・・・蝋燭の明かりで見ると自分が怖ぇ」

 服を脱ぎ出し、

 「げっ ちっさくなってる!」 恐怖

 「いや、きっと萎縮してるだけに違いない」

 全てを確認、

 「し、尻尾もないし、角もない」

 「普通だろう。普通じゃないか」

 安心する。

 

 

 翌日、爺さんの遺体を裏庭に埋め、

 

 翌々日、元区役所のギルドに向かう。

 ギルドでは政府、資本家、個人の発注物が掲示板に張られており、

 働かないと生きていけないイブキも掲示板を見ていた。

 「よう、イブキ。仕事は決めたか?」

 振り返るとクラマ、アズマ、カスガがいた。

 悪友だ。

 実名は別にある。

 しかし、最近はセカンドネームを自分で決めている者が多い。

 結局、本名を汚したくない、

 それでセカンドネームを自分で決め、セカンドネームで悪事やヤバい仕事をし、

 過去の清算と一緒にセカンドネームも捨てる。

 そういう発想が主流になっている。

 なので、どこかのファンタジー小説から抜き取ったようなセカンドネームも使われている。

 「んん・・・取り敢えず工場現場かな」

 「俺たちのパーティでバンパイアをやらないか?」

 「富士宮バンパイア・・・」

 「生体素粒子およそ150g・・って、いくらなんでも3人じゃヤバいだろう」

 「単純に考えると10g使って5人を操ると、残りは100gだ」

 「100gを能力的に考えると拳銃弾を逸らす程度か」

 「ライフルが無ければ近接戦闘しかないってことじゃないか」

 「ふふふ、ライフルがあるんだな」

 「ほら・・・」

 「げっ!」

 鉄パイプを利用したお手製の小銃だった。

 「アズマが作った」

 「でも、もっと、人材集めた方がいいんじゃないか」

 「ちっ! ちっ! ちっ!」

 「イブキ君。掃除ばっかりやってるから大事なことを忘れてる」 カスガ

 「人が増えると分け前が減るだろう」

 「こういうのはギリギリプラスアルファで懐を増やさないと」

 「つか、お前らもモンスター対峙は初めてだろう」

 「誰だって初めてはあるさ」

 軽率すぎる。

 あまりにも軽率すぎた。

 しかし、悪友たちに流されることはあるもので、

 「んん・・・それじゃバットは駄目だな。別の買ってくるわ」

 モンスターを倒すと生体素粒子が結晶化する。

 政府はその生体素粒子に高額懸賞金を付けていた。

 生体素粒子は人の命、

 そのことを知る者は政府機関と幾つかの利権団体だけだった。

 そして、生体素粒子の結晶は、貨幣経済が回復しつつある今でさえ、

 “金” 以上の価値があり、政府は必至集める。

 武器屋

 「おっ イブキじゃないか。ミヤコ爺さんはどうしてる」

 「死んだよ」

 「そ・・そうか・・・」

 「サクマ爺さん。3gで何が買える」

 「そうさな〜 バヨネットナイフはどうだ? 銃剣にも使えるぞ」

 「これでモンスター狩りか・・・」

 「モ、モンスター狩りって・・・70g以下の奴にしとけ」

 「そんなのモンスターって言えないような奴じゃん」

 「まぁ・・・そうだが・・・まだ若いし、下手をすると死ぬぞ」

 「おとなしくギルドの一般業務をしてた方がいい」

 「じゃ これに決めるよ」

 結晶3gが秤の上に置かれ、本物と確認される。

 武器と呼ばれるモノの取引は結晶が使われる事が多かった。

 「ねぇ 政府は何で、結晶を集めてるのかな」

 「ん? 噂だとな。この結晶で魔法の杖を作ろうとしてるらしい」

 「本当に?」

 「噂だけどな」

 「魔法の杖か・・・入荷したら見せてくれよ」

 「まだ噂だよ」

 

 

 イブキとクラマ、アズマ、カスガ

 「イブキ。それ軍のバヨネット(銃剣)じゃないか」

 「「「おおーー」」」

 「銃はないけど、そのうちな」

 「これで富士宮バンパイアもおしまいだぜ」

 「血湧き肉躍るな」

 移動は交通が回復しつつある鉄道だった。

 そして、武器所持者は危ないからと専用車両に押し込められる。

 「おいおい、ガキが4人でどこ行くんだ」

 「武器持ってると、危ないよ」

 「富士宮だよ」

 『おいっ! アズマ。行き先教えんじゃねぇ』

 「富士宮だとぉ お前ら死にたいのか」

 「命を大切にしろよ」

 「そうだそうだ。帰れ帰れ」

 「うるせ! お前ら俺たちに懸賞金取られるのが嫌なんだろう」

 「「「「・・・・・」」」」 呆れ〜

 

 

 文明の破局といわれたバブルクラッシュも既得権益の大半が崩れ人口が減ると終息してしまう。

 陸奥宮駅は、嘘、盗み、殺しなど暗い過去を背負った人々の営みと日常が戻り、

 それとは別にモンスターに怯えていた。

 陸奥宮は街の周囲を塀と堀で囲い、自警団を組織していた。

 しかし、権力構造をまとめるための組織であり、

 人間対人間の警察的な仕事で治安を回復させてるのが現状だった。

 そして、対モンスター戦は殉職率が高く、

 人件費的な意味でも組織ノウハウの継承の意味でも不可能になっていた。

 国軍は対モンスター兵器を開発しつつあったものの出現してからの対処であり、

 国際緊張が高まる情勢にあって、モンスター探索など費用のかかる仕事ができないでいた。

 というわけで、モンスター高額報奨金制度が作られ、

 モンスター退治は民間から現れ、

 人々は彼らを狩人。

 あるいは勇者と呼称していた。

 

 陸奥宮ギルドのフロア

 「諸君。陸奥宮バンパイアは街の外にいると考えられているが確かではない」

 「犠牲者は5人に及ぶ」

 「そして、数人の手下を街に潜ませており」

 「彼らは生体素粒子検知の反応が弱い」

 「バンパイアは、通常、発見を恐れ」

 「数年分でやめて多数から寿命を奪う事が通例だ」

 「しかし、陸奥宮バンパイアは人間を憎み、必要以上に殺傷していると思われる」

 「吸血鬼は、一度の接種で1人から数十年分の寿命を得る事が出来て非常に危険だ」

 「では、契約書と誓約書にサインをした者たちから始めてくれ」

 狩人と呼ばれる一団が数組に分かれ、街の外へと出ていく、

 モンスター狩りの労力は情報と発見が6、戦闘が3、運が1と言われていた。

 根気のいる仕事であり、

 索敵にかかかる負担を入れるなら彼我の戦力比は3倍以上が理想とされていた。

 もっともそれだけ揃えると安全な一般業務と効率が変わらない、

 イブキとクラマ、アズマ、カスガ

 「陸奥宮バンパイアはどうして人間を憎んでいるんだろう」

 「お互い様だろう」

 「でも隠れて美味しい思いしてたのハイスペックの人たちでしょ」

 「発覚すると、こうなるって予想してたのかも」

 「なに? イブキ。ビビってんの?」

 「クラマだって、あいつらの後ろ歩こうとしてるじゃないか」

 「ほ、歩幅が違うんだよ」

 「あいつらと競争しても疲れるだけだし」

 「捜索しているんであって、駆けっこしてんじゃないから」

 「取り敢えず、加害者は被害者の関係者ということはない?」

 「おっ イブキ。お前、勘がいいな」

 「いや、勘とかじゃなくて、ただの初動捜査のイロハだから・・・」

 イブキは “『初動捜査』 月夜裏 野々香 著” と書かれた本を読みつつ

 4人は地図を確認し、被害者5人の家を順番に巡っていく、

 もっとも人間相手の初動捜査がモンスター犯に当てはまるのか、不明だった。

 殺人事件は、身内と関係者が89パーセント。無関係な赤の他人が11パーセント。

 バブルクラッシュを前後して、身内と関係者が3パーセントに変わり、

 無関係な赤の他人の犯行が97パーセントを超えたものの、

 今は、身内関係者の犯行が30パーセントまで回復し、

 無関係な他人の犯行が70パーセントになっている。

 これは、身内関係者の殺人が一定で、無関係な人間による殺人が不定であること、

 治安が回復していることも示していた。

 「ふむふむ」

 「親が犯人は35パーセント。配偶者が犯人11パーセント。子供が犯人6パーセント」

 「知人友人19パーセント。顔見知り10パーセント。面識なし11パーセント・・・」

 「って、イブキ。これバブルクラッシュ以前の統計だろう」

 「取り敢えず近所は見ておくべきだろう。狙われた理由があると思う」

 「んん・・・まぁ そうだな」

 「ところで、あいつらはどこ行ったんだろう」

 「分かれた場所から想像すると、西口から街の外に行ったんじゃないかな」

 「何があるんだ?」

 「・・・大きいのは昔のテーマパークの廃墟かな」

 「なんか、先越されないだろうな」

 「取り敢えず、連続殺人事件の場合は、被害者の共通する部分が重要になるよ」

 「まぁ 地道なのもいいか・・・」

 初動捜査は地道で中身を知る者なら決してドラマ化、映画化する気になれないだろう。

 適当な人間に罪を擦り付けたくなるのを我慢してやってるのが現状と言える。

 4人は被害者の家の中と外を携帯で撮りながら家族に話しを聞き、

 共通点を見つけていく、

 「被害者の共通点は20代の女性で長髪」

 「いずれも6時頃で家の近く外出時を狙われている」

 「街の東側3軒と北側2軒か・・・場所は関係なさそう」

 「こういう場合、線を引っ張らないと」

 「そんなことも本に書いてるの?」

 「距離の限界があるからね」

 「バンパイアって空飛ぶんだっけ?」

 「さぁ・・・」

 「それより、もうすぐ、暗くなる。どこか、野営しようぜ」

 「そうだな」

 4人は公園で野営し・・・

 ・・・・

 ・・・・・・

 「あ・・・もう一つ共通点があった」

 「なんだよ。イブキ。こんな夜中に言うなよ」

 「下水道のマンホールが近くにあった」

 「「「・・・・」」」 がっ!

 

 翌日

 区役所と図書館で下水道の図面を調べると、

 バンパイアのアジトを見当付けていく、

 こういう仕事は、高収入でも時間が経つほどポケットの金が減っていく

 というわけで、あまりのんびりもしていられない、

 「行くぞ」

 「「「おー」」」

 そして、無鉄砲にも4人は下水道へ降りていく、

 それは勇者だから

 「暗い・・・」

 『シー!』

 「「「・・・・」」」

 『懐中電灯つけちゃダメ?』

 『駄目だろうぉお〜』

 『つか、気配を消せよ』

 「・・・来た。正面11時2人。後ろ1人」

 「イブキ。なんでわかるんだよ」

 イブキが海中電気を付けるとその通りの男たちが浮かび上がる

 「キャー!」

 「こら、カスガ悲鳴を上げるな。バンパイアに見つかる」

 「もう見つかってるよ」

 次の瞬間、3人が襲いかかり、

 4人は、それぞれ武器で立ち向かう。

 ばぁ〜ん! ばぁ〜ん!

 正面の二人が倒れ、

 『こ、こら、アズマ、全弾発射してどうする』

 『いま弾込めるから』

 「イブキはアズマをガードしながらバンパイアを探してくれ」

 「こいつは、俺とカスガでやる」

 「大丈夫か?」

 「ああ、怖いのは使い魔じゃない、バンパイアの方だ」

 『ゆ、揺らすなよ』 アズマ

 「誰も揺らしてないだろう。お前の手が震えてんだ」

 !?

 瞬間的に体が動いて、バヨネットナイフが暗闇を一閃する。

 手応えがあっても、相手は怯まず。

 数度斬ったのち、後退した。

 イブキがいなかったら全滅しそうなほど速い攻防だった。

 「・・・人間・・・おまえ、変わってるな」

 「イブキ! 誰かいるのか」

 「バンパイアだ!」

 パーティに恐慌が走る

 使い魔は人間とほぼ同等だった。

 しかし、本体は明らかに格が違う。

 ハイスペックと呼ばれる人種は、人間の能力をはるかに超えていた。

 バンパイアクラスになるとフル装備の分隊と戦えるとまで言われていた。

 「よし! バンパイアはどこだ。イブキ」

 アズマが銃を向ける。

 「・・・逃げた」

 使い魔の男もいつの間にか引き下がって消えていた。

 パーティのメンバーはへたれ込み、

 生き残ったことに安堵していた。

 

 そして、怖気づいた少年たちは大人の勇者たちに情報を売る。

 そう、モンスター狩りの労力は情報と発見が6、戦闘が3、運が1。

 早い話しモンスターの情報を売るだけで報奨金の分け前に与かれる。

 「まぁ しばらくは金に困らないし、白三沢に帰るか」

 「モンスター対峙は、次の機会にしよう」

 「そうだね」

 そう、人はなかなか勇者になれない。

 勇者人口は5000万人中、1万人に満たず、

 本物の勇者はさらに一握りだった。

 

 

 高台のカフェテラス

 バヨネットに傷付けられた腕の傷が薄れていく、

 生体素粒子を使えば、傷の治療と再生は容易だった。

 「サナエ。どうだった」

 吸血鬼と使い魔の間は以心伝心。

 しかし、テレパシーは直情過ぎる場合があり、

 理性的な調整で言葉を使う習慣が残っていた。

 「ギルドで調べたところ、白三沢のイブキと呼ばれる少年です」

 「ふ〜ん」

 「シオリ様。どうされます?」

 「白三沢か・・・あの辺は・・・蒼鬼のテリトリーじゃない」

 「よくないのですか?」

 「テリトリー荒らしは殺し合いになるし」

 「つまらないことで生体素粒子を失うのも惜しいし」

 「あの少年。お気に入りなので?」

 「そうねぇ 彼の生体素粒子は、300gを超えてるのに不安定過ぎて食えそうにない」

 「それでいて、ハイスペックでさえない・・・」

 「コントロールできていない?」

 「そういうこと。コントロールできるとこちらが殺される」

 「コントロールできない間に食っても、こちらのメリットにならない」

 「それが見逃した理由ですか」

 「まぁ 子供のパーティだから見逃して、ツケを払わされたけど」

 「仲間を二人失いました」

 「あとから来たパーティを全滅させて二人補充したからいいわ」

 「そろそろ、自重されては?」

 「あの連中は、私の友人を殺したもの」

 「突き止めるのに苦労したけど、敵を討つことができたわ」

 「あと一人残ってる・・・」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 登場人物の名前に気付いたでしょうか

 イブキ、クラマ、アズマ、カスガ

 装甲巡洋艦です (笑

 もう、名前考えるのが・・・

 

 そうそう、バットはバヨネットより強いかもとかは無しで

 持ち運びも含めた総合力ですから

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

 
第01話 『さよならリアル』

第02話 『バブル・クラッシュ』