月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

   

第01話 1942/06 『げっ! 大和が・・・』

 赤レンガの住人たち

 「本当に日本の91式印字機が解読されているのかね」

 「TO諜報機関のベラスコからの情報だ」

 「信じがたいな」

 「珊瑚海戦で我が機動部隊の進出と作戦が読まれていたのではないか」

 「だが真珠湾は成功した。暗号が解読されていたら、ありえんよ」

 「昨年4月、大島駐独大使は、ドイツに “駐米大使宛の外交暗号が米国務省に解読されている” と警告されている」

 「91式印字機を確認したが、あれを解読するというのは・・・・」

 「どうだろう」

 「暗号が解読されていると仮定して、次の作戦で様子をみてはどうだろうか?」

 「次ぎ?」

 「確か、ミッドウェーだったな」

 「ミッドウェー攻撃時、アメリカ機動部隊が迎え撃って来たら暗号解読がされている」

 「ミッドウェー占領後、アメリカ機動部隊が襲撃してきたら暗号が解読されている」

 

  

  

 南雲機動部隊は、ミッドウェー作戦を開始・・・が・・・

 赤城 艦橋

 「・・・南雲提督」

 「1日遅れで、さらに1日も遅れるとは・・・・」

 「濃霧で洋上補給が遅れたのは仕方がないかと・・・・」

 計画では、6月1日〜3日、洋上補給をするはずが、

 濃霧のため洋上補給ができないでいた。

 南雲長官は、ミッドウェー島に近くの洋上補給は、危険と判断。

 北上後、補給したため攻撃が2日遅れてしまう。

 当然、通信管制で通信できなかった。

 南雲司令は、微弱な無線を主力艦隊に向け発信してしまう。

 近いはずの日本主力艦隊は受信に失敗し、

 遠くのアメリカ機動部隊が受信してしまう。

  

 

 

 大和艦橋

 「・・・・・・」 山本長官は海を睨みつけていた。

 「南雲は、どうした!!」 参謀

 「そろそろ、ミッドウェーを空襲してもいいはずですが」

 「偵察機を予定海域に送りましたが発見できませんでした」

 「どこにいるのだ」

 「長官、南雲機動部隊への無線。必要では?」

 「駄目だ。こんな近い距離で通信管制を解いてみろ」

 「敵の機動部隊にやられてしまうぞ」

 「ミッドウェー占領後。アメリカ機動部隊を迎え撃つのだ」

 「この海域にアメリカ機動部隊がいるとは限らん!」

 「南雲から無線は?」

 「いえ、まだです」

 「迷子になったとは思えませんが」

 「んん・・・あの小心者が作戦の遅れを無線で伝えないとは思えないが・・・・」

 「小心者なので? 長官」

 「ふ 南雲は実力と能力に関わらず。万端準備を揃えないと動けない小心者だよ」

 「問題なのでは?」

 「それくらいの方が空母を守れる。蛮勇過ぎて空母を全滅させられても困る」

 「山口提督をつけているのも釣り合いを取るためだ」

 「ですが、南雲機動部隊のミッドウェー攻撃は遅すぎます」

 「んん・・・もう少し、前進してみるか・・・いざとなれば、夜間にミッドウェーを砲撃してみせる」

 「よろしいので?」

 「アメリカに戦艦部隊はいない」

 「大和が主砲弾を使ったとしても支障はないよ」

 南雲機動部隊は補給で2日遅延し、

 日本主力艦隊は400km先行してしまう。

 

 

 アメリカ機動部隊は、暗号を解読しつつ待ち構えていた。

 しかし、余計な消費と海上補給で焦燥感を募らせていた。

 空母エンタープライズ 艦橋

 「日本機動部隊は本当に来るのか?」

 「情報では、そのはずですが」

 「アッツ・キスカなど惜しくもないが・・・・」

 「無線を傍受したところによると日本艦隊は北よりか、西よりのはず。移動しては?」

 「・・・アッツ・キスカを空襲した空母部隊の欺瞞工作かもしれない」

 「それに無線そのものが陽動の可能性もある」

 「まさか、日本海軍は、そのような複雑な思考などしないだろう」

 「暗号解読は間違いないはず・・・」

 「もっと近くまで来ているはず」

 「本当は、アラスカを狙っているのでは?」

 「霧の中で艦隊戦ならレーダーの強いアメリカ海軍が有利だよ」

 「・・・アラスカを占領されるのは痛いが輸送がもっと大変になる」

 「もう少し、情報を信じてみるか」

 イライラと待ち構えるスプルアンス少将の元に電報が届く。

 「提督・・・」

 スプルアンス少将は失望した表情で呟く。

 「日本の戦艦部隊だ」

   

 

 主力部隊 山下五十六大将

 第1戦隊(大和、陸奥、長門)

 第2戦隊(伊勢、日向、扶桑、山城)

 第9戦隊(大井、北上)

 第3水雷戦隊(川内)

      第11駆逐隊(吹雪、白雪、初雪、叢雲)

      第19駆逐隊(磯風、浦波、敷波、綾波)

      第20駆逐隊(天霧、朝霧、夕霧、白雲)

 第1水雷戦隊 第24駆逐隊(海風、江風) 第27駆逐隊(夕暮、白露、時雨)

 空母(鳳翔) 水上機母艦(千代田、日進)

 特務艦(鳴門) 駆逐艦(山風、夕風、有明)

 油漕船3隻

  

  

 空母エンタープライズ

 「攻撃しますか?」

 「日本機動部隊は?」

 「いまだに発見できていません」

 「主力艦隊は? ミッドウェーまでの距離は?」

 「340km・・・真っ直ぐ、ミッドウェー島に向かっているそうです」

 「・・・どうしますか? 提督」

 「ミッドウェー島まで100km地点まで待つ」

 「それまで全力を挙げて日本機動部隊を索敵する」

 日本主力艦隊は16ノットで東進中だった。

 計算だと30時間後、ミッドウェー島に到達する。

 「それでは、夕方になってしまいます」

 「・・・では、ミッドウェーの判断に任せる」

 「機動部隊は、全力で日本機動部隊を索敵せよ」

  

 

 日本機動部隊は、日本主力部隊の後方400kmを東進していた。

飛龍

 

 そして、日本機動部隊の遅延により、

 日本潜水艦部隊の進出にも繋がっていた。

  

 先遣部隊(潜水艦部隊 小松輝久中将)

 第3潜水戦隊

   第11潜水隊(伊175、伊174)

   第12潜水隊(伊168、伊169、伊171)

 第5潜水戦隊

   第13潜水隊(伊121、伊122、伊123)

   第19潜水隊(伊156、伊157、伊158、伊159)

   第30潜水隊(伊162、伊164、伊165、伊166)

  

  

 第17任務部隊(機動部隊 フレッチャー少将)

 空 母(ヨークタウン)

 重 巡(ポートランド、アストリア)

 駆逐艦(ヒューズ、ハンマン、ラッセル、モリス、グゥイン、アンダースン)

 

 “アメリカ機動部隊発見!!”

 第5潜水戦隊の伊121号が発信した無線は、

 アメリカ機動部隊がミッドウェー海域にいる事を暴露してしまう。

 それは、日本の暗号が解読されている可能性にも繋がり、

 日本潜水艦に第17任務部隊を発見され、

 アメリカ機動部隊は、困窮する。

 このまま手をこまねいていたら先に爆撃されるだけ。

 南雲機動部隊の発見まで待機するはずだった主力戦艦部隊攻撃を強行するしかなく、

 アメリカ空母からF4Fワイルドキャット、SBD ドーントレス、TBDデヴァステイター飛び立っていく。

  

 日本の主力艦隊は燃料をバカ食いを避け、

 さらに夜間砲撃のタイミングを合わせるため、

 昼間の間に哨戒圏ギリギリまでミッドウェー島に接近する必要があった。

 そして、それが災いした。

 日本主力艦隊上空をB17爆撃機が旋回する。

 「・・・発見されたな」

 「千代田、千歳の索敵は?」

 「敵艦隊の発見はまだです」

 「40機も出してまだ見つけられんのか」

 2時間後、

 ミッドウェー基地航空部隊が日本主力部隊の上空を猛禽の群れの如く覆った。

 B17E爆撃機15機。

 B26B マローダー爆撃機6機。 

 TBF アヴェンジャー雷撃機4機。

 SBD ドーントレス急降下爆撃機16機。

 SB2U ビンジケーター爆撃機11機

 そして、望むままに爆撃。

 あるいは雷撃コースに侵入してくる。

 

 大和 艦橋

 「長官。どうやら、暗号は解読されていたようですな」

 「んん・・・」

 「対空戦闘用意!!」

 「射程に入り次第、撃ち方始め!!」

 鳳翔から飛び立った96式艦戦は18機が迎撃にするも数に圧倒される、

 96式艦戦の7.7mm2丁は、大型4発爆撃機に対して、蟷螂の鎌に等しいことから、

 低速の単発SB2Uビンジケーター爆撃機11機に襲い掛かっていた。

 

 大和

 掛け声と怒号が飛び交い、対空砲火が撃ち上げられていた。

 時限信管の127mm砲弾が艦隊上空で炸裂して空を点々と黒く焦がし、

 SB2Uビンジケーター爆撃機3機が海面に叩きつけられ、水柱を上げて爆発する。

 「取舵一杯! 回避!」

 25mm機銃の曳航弾が撃ち上げられ、

 火線となってB17E爆撃機を追いかけていく。

 「・・・時限信管の爆発。高度がバラバラだな」

 「敵機が速く高度を合わせるのが間に合わないのでしょう」

 「あと、貯蔵中の砲弾の劣化もあるようです」

 「・・・・・・・」 ため息

 「25mm機関砲は時々、止まるようだ」

 「・・・15発入りですから」

 「何とかならないのかね」

 「軍艦の建造をやめて、本気で予算を注ぎ込めば・・・・」

 「んん・・・・」

 権威主義では、権威が正義であり、権威を脅かす意見は悪だった。

 そのため前線部隊がいくら戦訓・正論をのたまわっても、

 教条主義的な戦略を脅かす者は地位を危うくする敵であり、

 戦略は変わらない、

 上層部が前線で戦訓を得なければ、到底、改革はなされない。

 日本海軍上層部は自ら前線に立ち、

 戦訓を得たことで、ようやく、判断ミスを実感したのだった。

 そして、集中的に狙われたのは最大最強の戦艦大和だった。

 激しい海上防空戦が続き、

 アメリカ機動部隊の艦載機も主力艦隊の空を覆い始めた。

  

 

 米艦隊兵力

 第16任務部隊(機動部隊 スプルアンス少将)

 空 母エンタープライズ、ホーネット、

 重 巡 ペンサコラ、ノーザンプトン、ニュー・オルリンズ、ミネアポリス、ヴィンセンス、

 軽 巡アトランタ

 駆逐艦デューイ、ウオーデン、モナガン、アルウィン 、フェルプス、

 駆逐艦バルチ、カニンガム、エレット、モーリ、ベナム、モンセン、

 給油艦シマロン、プラット、

  

  

 空母エンタープライズ 

  F4F戦闘機10機、SBD爆撃機33機、TBD デバステイター雷撃機14機

  

 空母ホーネット 

  F4F戦闘機10機、SBD爆撃機35機、TBD デバステイター雷撃機15機、

 計117機

  

 そして、少し遅れて、第17任務部隊の 攻撃部隊が主力艦隊上空に達する。

 空母ヨークタウン 

 F4F戦闘機6機、SBD爆撃機17機(VB-3)、TBD雷撃機12機(VT-3)

 計35機

  

 三々五々、発艦したはずのアメリカ爆撃部隊は、数に任せて96式艦戦を叩き落とし、

 生き残った96式艦戦も弾薬を使い果たして着艦するよりなかった。

  そして、アメリカ軍機は、日本主力艦隊上空を我が物の様に舞う、

 日本主力艦隊は弾幕を張り、

 回避運動を試みるが爆弾と航空魚雷の命中が増えていく、

 ドントーレス爆撃機が好きなように爆撃。

 デバステイター雷撃機も雷撃して去っていく。

  

 

 大和 艦橋

 回頭する大和の周りに至近弾が落ち、

 幾つもの水柱が立ち上る、

 一発の爆弾が艦尾甲板に命中し爆発し、 爆音と振動が艦橋まで届いた。

 爆撃回避は、二の次だった。

 正面から向かってくる雷跡をかわそうと必死に舵輪が回され・・・

 しかし、戦艦の回頭は驚くほど鈍い。

 「回避! 回避だ!」

 「くそぉ、南雲は、どうした!」

 「南雲め・・・」

 回頭する大和の側舷を雷跡が逸れて行く。

 「「「「・・・・」」」」 ほっ

 「・・・埒があかん」

 「このまま、前進して、ミッドウェー島を砲撃する」

 生き残った96式艦戦がドントーレス爆撃機を攻撃する、

 命中弾を与えても落ちない。

 「くそぉ〜 あの、96式、弾幕の邪魔だ」

 「ぅぅ・・・構うな、撃て!」

 対空火器がドントーレンスに命中して火を噴いた。

 鳳翔は、魚雷1本、爆弾5発が命中して撃沈。

 大和は、魚雷4本、爆弾8発が命中して大破していた。

 大和は注水し、水平を保ちつつ全速で回避していた。

 ドントーレスが大和の対空砲火に包まれて被弾し、

 火を噴きながら大和の艦舷近くに落ち水柱を吹き上げ四散する

 「アメリカのパイロットもやるものだな・・・」

 そのとき、大和の爆撃コースに入ろうとしていたB17爆撃機が火を噴いた。

 「「「よ〜し♪」」」

 艦橋は、喜びに包まれ、

 !?

 次の瞬間、硬直する。

 B17爆撃機は、ゆっくりと大和に向けて突進してくる。

 むしろ、何もせず爆撃させていたら良かったと思うほどの勢いで迫る。

 大和の機関砲と高角砲が迫るB17爆撃機に向かって集まり、機体を被弾させていく。

 「回避!! 面舵一杯!!」

 B17の機首に描かれた白人女性が大和の艦橋に迫ってくる。

 艦橋の将兵は怖気ずき・・・

 巨大なB17爆撃機が時速600km以上の降下速度で大和艦橋に激突、四散した。

 大和艦橋は爆炎に包まれ、

 山本長官、黒島亀人、宇垣 纏(うがき まとめ)以下、

 主だった海軍上層部を爆死させてしまう。

  

  

 長門艦橋

 ・・・呆然・・・

 「大和が・・・・」

 「「「「・・・・・・・・・」」」」

 「大和に連絡を取れ!!」

 アメリカ軍攻撃部隊が去った後、

 集中して爆撃された大和は、艦の司令とコントロールを失い進んでいた。

 そして、全速でミッドウェー島に乗り上げてしまう。

 主力艦隊は愕然とし、

 

 長門艦橋

 「艦長」

 進退窮まった日本海軍の選択肢は、一つしかなかった。

 「・・・・ミッドウェー作戦を続行する!」

 

 日本海軍兵力

 機動部隊(南雲忠一中将) (ゼロ戦84機、99艦爆84機、97艦攻93機 合計261機)

 第01航空戦隊(赤城、加賀)

       赤城(ゼロ戦21機、99艦爆21、97艦攻21機)

       加賀(ゼロ戦21機、99艦爆21、97艦攻30機)

  第02航空戦隊(蒼龍、飛龍)

       飛龍(ゼロ戦21機、99艦爆21、97艦攻21機)

       蒼龍(ゼロ戦21機、99艦爆21、97艦攻21機)

    *うち、各機種とも補用機は3。6空(各6機)

 第03戦隊(霧島、榛名)

 第08戦隊(利根、筑摩)

 第10戦隊(長良)

 第10駆逐隊(秋雲、夕雲、巻雲、風雲)

 第17駆逐隊(谷風、浦風、浜風、磯風)

 第04駆逐隊(萩風、舞風、野分、嵐)

 油漕船8隻

 

 日本海軍の反撃が始まる。

 千歳の水上偵察機がミッドウェー北東にアメリカ機動部隊2群を発見し、

 無電を発した。

 戦場に駆けつけた南雲機動部隊が攻撃部隊を繰り出し、

 ゼロ戦36機、99式艦爆36機、97式艦攻36機。合計108機

 第一次攻撃部隊が第16任務部隊(スプルアンス少将)を空襲する。

 空 母(エンタープライズ、ホーネット)

 重 巡(ペンサコラ、ノーザンプトン、ニュー・オルリンズ、ミネアポリス、ヴィンセンス)

 軽 巡(アトランタ)

 駆逐艦(デューイ、ウオーデン、モナガン、アルウィン 、フェルプス)

 駆逐艦(バルチ、カニンガム、エレット、モーリ、ベナム、モンセン)

 給油艦(シマロン、プラット)

 ゼロ戦36機は、迎撃に上がったF4ワイルドキャット32機を蹴散らし、

 99艦爆36機と97艦攻36機は、空母エンタープライズ、ホーネットを撃沈。

 

 

 第二次攻撃部隊、ゼロ戦24機、99式艦爆36機、97式艦攻36機。

 合計96機は、第17任務部隊(機動部隊 フレッチャー少将)を爆撃、

 空 母(ヨークタウン)

 重 巡(ポートランド、アストリア)

 駆逐艦(ヒューズ、ハンマン、ラッセル、モリス、グゥイン、アンダースン)

 ゼロ戦24機は、迎撃に上がったF4ワイルドキャット12機を全滅させ、

 99艦爆36機と97艦攻36機は、空母ヨークタウン、重巡ポートランド、アストリアを撃沈する。

 

 その後、ミッドウェー基地から爆撃部隊が飛び立ち日本機動部隊を空襲した。

 しかし、機動部隊直営機の零戦32機は、アメリカ爆撃部隊の撃退に成功する。

  

 南雲機動部隊は、さらに第3次攻撃部隊を発艦させ、

 重巡ペンサコラ、ノーザンプトン、ニュー・オルリンズ

 ミネアポリス、ヴィンセンスの5隻を撃沈、

 第4次攻撃部隊では、

 駆逐艦デューイ、ウオーデン、モナガン、アルウィン、フェルプス、

 駆逐艦バルチ、カニンガム、エレット、モーリ、ベナム、モンセンの11隻を撃沈し、

 大戦果をあげてしまう。

 

 

 日本海軍は鳳翔が撃沈され。

 山本長官以下、主要軍上層部を失い。

 大和は、コントロールを失い大破した状態でミットウェー島に座礁していた。

 

 攻略部隊(近藤信竹中将)

 第3戦隊(金剛、比叡)

 第4戦隊(愛宕、鳥海)

 第5戦隊(羽黒、妙高)

 第7戦隊(最上、三隈、鈴谷、熊野)

 第2水雷戦隊(神通)

 第15駆逐隊(黒潮、親潮、早潮)

 第16駆逐隊(初風、雪風、天津風、時津風)

 第18駆逐隊(陽炎、霞、霰、不知火)

 第4水雷戦隊(由良)

 第2駆逐隊(村雨、夕立、春雨、五月雨)

 第9駆逐隊(朝雲、夏雲、峰雲)

 第11航空戦隊(水上機母艦千歳、特設水上機母艦神川丸)

 朝潮、荒潮、三日月

 空母(瑞鳳)特務艦明石、佐多、鶴見

 特設掃海艇4隻、哨戒艇4隻、油漕船2隻、輸送船18隻

 特別陸戦隊

 陸軍 一木支隊、第11・12設営隊 4測量隊

  

  

 金剛 艦橋

 近藤信竹中将

 瑞鳳から出撃したゼロ戦と97艦攻がミッドウェー島を空襲していく、

 「大和に当てないように砲撃を続けろ」

 撃ち出される砲弾は、大和 を避け、ミッドウェー島の環礁を抉っていく、

 「山本長官が戦死されるとは・・・・」

 「敗北ですか?」

 「しばらく人事整理に明け暮れるだろうな」

 「大和艦橋にいた将校は多過ぎる」

 権力闘争を意味していた。

 「しかし、誰が司令長官になろうと、山本長官のような思い切った作戦はできまい」

 「確かに・・・アメリカ海軍を相手にするには、あまりにも博打です」

 「山本長官の仇を打った南雲長官が一番手かな」

 「戦功と年功序列ですか?」

 「一番、抵抗がないよ。文句を言う者は少ないだろう」

 攻略部隊は、作戦を続行し、

 大和が各坐上陸したミッドウェー島を占領。

 

 

 しかし、災厄も訪れる。

 「・・・右舷、3時、雷跡2本!!」

 「取舵!」

 雷跡が扶桑の艦側舷を掠めていく。

  

 哨戒部隊(潜水艦部隊)19隻

 (ナーワール、ノーチラス、ドルフイン、キャロット、カットルフイッシュ)

 (パイク、ターポン、トラウト、プランジャー)

 (タムボア、フライング・フィッシュ、グレイリン、グルーパー)

 (グレナディア、ガジョン、ガトー、フィンバック、グロウラ、トリガー)

  

 アメリカ潜水艦部隊は、ミッドウェー周辺の日本艦隊を雷撃し苦しめていく、

 アメリカ潜水艦の雷跡は日本の魚雷と違って遅く、雷跡がわかりやすかった。

 しかし、日本の対潜能力は低く、

 潜水艦の撃沈は困難だった。

 ついには、千代田と千歳から水上機を出撃させ、

 空母は99式艦爆、97式艦攻を出撃させてアメリカ潜水艦狩りを始める。

 上空からアメリカ潜水艦を見つけては、爆撃。

 ナーワール、カットルフイッシュ、タムボア、

 グレイリン、グルーパー、グロウラ、トリガーを撃沈していく、

 

 しかし、夕闇が迫ると空母艦載機は着艦するしかなく、

 雷跡も見つけにくくなる。

 伊勢、日向は、魚雷二本が命中して大破。

 日本海軍は、ミッドウェー島占領後も悪夢のような夜を過ごした。

 その後も、日本海軍とアメリカ潜水艦の戦闘が続き、

 多くの燃料を消耗させてしまう。

  

 ミッドウェー島に座礁した大和艦橋はボロボロ。

 鐘楼も、わずかに傾いていた。

 山本長官の戦死は衝撃が大きく、

 航空機の攻撃で戦艦の無力化できると確信させるのに十分だった。

  

  

 柱島

 長門2本、陸奥3本、伊勢5本、日向4本、扶桑3本、山城3本、

 主力艦の全てに魚雷が命中し傾いていた。

 戦艦6隻が帰還できたのは、不発魚雷が多かったからといえる。

 日本の戦果は、

 空母 (エンタープライズ、ホーネット、ヨークタウン)3隻を撃沈

 重巡 (ポートランド、アストリア)

 重巡 (ペンサコラ、ノーザンプトン、ニュー・オルリンズ、ミネアポリス、ヴィンセンス)7隻を撃沈

 駆逐艦 (デューイ、ウオーデン、モナガン、アルウィン、フェルプス)

 駆逐艦 (バルチ、カニンガム、エレット、モーリ、ベナム、モンセン)の11隻を撃沈。

 潜水艦 (ナーワール、ノーチラス、ドルフイン、カットルフイッシュ、トラウト)

       (タムボア、フライング・フィッシュ、グレイリン、グルーパー、ガジョン)

       (ガトー、グロウラ、トリガー)13隻を撃沈

  そして、ミッドウェー基地の占領だった。

 

 

 真珠湾

 アメリカ艦隊が帰還していた。

 軽 巡(アトランタ)、

 駆逐艦(ヒューズ、ハンマン、ラッセル、モリス、グゥイン アンダースン)、

 潜水艦(キャロット、パイク、ターポン、プランジャー、グレナディア、フィンバック)、

 損傷艦は少なかった。

 しかし、撃沈された艦艇は多く、実質、壊滅していた。

 アメリカ太平洋艦隊は日本海軍艦隊長官山本五十六を戦死させ、

 主力艦隊を大破させたもののアメリカ海軍将兵の士気は、著しく低下していた。

 

  

 ミッドウェー海戦後、

 日本は、軍上層部の人事異動と整理を繰り返していた。

 その間、攻勢はなく守勢となり戦線は消極的になっていく。

 もっとも、アメリカ軍も日本軍への攻勢力を喪失し、

 太平洋艦隊はハワイ防衛のため、輸送作戦が主任務となり、

 ガナルカナルは、日本軍の航空基地が建設され、拡張されていく、

  

 南雲司令は、山本長官の仇を討った功績で長官となり、

 山口提督は、日本機動部隊の長官となっていく、

 とはいえ、南雲長官は前線への進出が遅れたこと、

 距離が遠くて護衛機を出せなかっただけなのだが、

 山本長官を守れなかったなど立場は強くなかった。

 そして、勘ぐろうと思えば、勘ぐることができる。

 たとえ、勝てる人間を野に出し、国が滅びても自分の地位が保ち、出世できれば良い。

 そう思う人間は少なくなかった。

 長官と将校の立場が強いときは、いろんな口実で、

 こいつでなければ勝てないと、おべっかを使い。

 長官や将校の立場が弱くなると、

 いろんな口実をつけて、こいつでは、勝てないと言って足を引っ張る。

 上にいる者の必罰必賞など口先だけであり、

 地盤堅めの派閥を守ることに余念はなく、悪貨良貨を駆逐するだった。

 人間関係や派閥に囚われず、

 まともな戦略眼を持っている者ほど摩擦を起こし易く、

 組織から排斥され淘汰されていく、

 人事異動が間近になれば、権謀術数に関心がない者まで意識しするよりなく、

 派閥抗争に巻き込まれていく。

 負け組みは飛ばされ、中立組みは風下。

 己が保身のため、寄らば大樹の何とかで平気で嘘をついたり、

 自分を高めることは難しく、他者を貶めることは楽だった。

 戦争で負けたとしても、組織の敗北者になるわけにはいかない。

 仮に戦争に勝てる将校が石原 莞爾でも、

 彼のため己が地位と出世を捨てる気などサラサラない。

 たとえ、頭の程度が軍曹でも人心掌握に長けた者が出世していく。

 セクト主義が蔓延すると国家より軍部を重んじ、

 軍部より海軍を重んじ、海軍より戦艦を重んじる。

 逆に戦艦より海軍を重んじ、海軍より軍部を重んじ、

 軍部より国家を重んじる者は消される運命にあった。

 たいていの者が、そうなのだから非主流派に可能性はない、ということになる。

 そして、南雲長官も後の人事計算をする。

 山口提督が自分以上に手柄を立てると面白くなく、

 後塵に自分の戦績を超えさせないため、

 機動部隊を二つに分割し、

 航空部隊を磨り潰して自分の功績を最大にまであげようと目論む、

 山口提督も後先考えず戦果の拡大を狙って、航空部隊を出撃させ、

 ミッドウェー海戦以前、

   機動部隊(ゼロ戦84機、99艦爆84機、97艦攻93機 合計261機)は、

 ミッドウェー海戦後、

   機動部隊(ゼロ戦34機、99艦爆24機、97艦攻21機 合計79機)まで、

 3分の1以下に消耗していた。

 機体は作れば済む、

 しかし、戦死したベテランパイロットは戻ってこない。

 身体障害者となったパイロットも後方に下がるよりなかった。

 アメリカ機動部隊壊滅と引き換えに艦隊航空部隊は、文字通り磨り潰されていた。

  

 

 赤レンガの住人たち

 「戦艦は燃料不足で動きにくいな」

 「しかし、当分はアメリカ海軍の攻勢もないだろう」

 「陸軍はニューカレドニア占領を画策しているが南雲長官が渋っているらしい」

 「まあ、万全の体勢じゃないと動きたがらない人だから」

 「それはそうと、戦艦が潜水艦に撃沈されそうじゃないか」

 「もうちょっと対潜能力を強化しないとな」

 「本当は、対空用の駆逐艦が助かるんだけどな。秋月型だっけ」

 「魚雷はいらないな」

 「護衛艦は大和の艦橋を守れる対空兵装と」

 「対潜水艦用の爆雷が欲しいよ」

 「4発爆撃機に体当たりされて、艦隊指揮ができなくなると戦争にならないか」

 「だけど大和がミッドウェー備え付けの要塞なんて厳しいな」

 「アメリカ機動部隊と潜水艦部隊に、日本近海まで追い詰められ」

 「渋々、出撃して撃沈されるより、マシかもしれない」

 「それは、そうだけど・・・」

 「当面は、ミッドウェー島の倉庫代わりに使って対空砲を配置するそうだ」

 「アメリカ軍機で、体当たりの真似をするやつが出てくるだろうか」

 「あれは、やばいよ。4発爆撃機の体当たりは防げない」

 「日本の作戦遂行能力を疑われたな」

 「長官の戦死で撤退しなかったのは失敗だったかな」

 「普通は、指揮官がやられたら撤退するだろう」

 「軍隊としては当然だがね・・・・」

 「しかし、大和をそのままにしては撤退もできないし、あれでは自沈も無理だ」

 「だよな」

 「当分は、潜水艦で通商破壊をしながら、内線を固めるのがいいだろうな」

 「仕方がないか・・・」

 「ベテランのパイロットも、だいぶやられたし」

 「しばらく、パイロットの養成になるよ」

 

第一機動部隊 (山口多聞) 第二機動部隊 (小沢治三郎)
空母 瑞鶴 翔鶴 飛龍 蒼龍 空母 赤城 加賀 瑞鳳 龍驤
戦艦 比叡 霧島 戦艦 金剛 榛名
重巡 利根 重巡 筑摩
重巡 高雄 愛宕 摩耶 鳥海 重巡 最上 三隈 鈴谷 熊野
第10水雷戦隊 長良 第02水雷戦隊 神通
第04駆逐隊 萩風 野分 舞風 第15駆逐隊 早潮 黒潮 親潮 夕風
第10駆逐隊 風雲 夕雲 巻雲 秋雲 第18駆逐隊 陽炎 不知火
第16駆逐隊 初風 雪風 天津風 時津風 第24駆逐隊 海風 山風 江風 涼風
第17駆逐隊 浦風 磯風 谷風 浜風 第06駆逐隊

  

第三機動部隊 (角田覚治) 第四機動部隊 
空母 飛鷹 隼鷹 龍鳳 空母
戦艦 戦艦
重巡 妙高 那智 足柄 羽黒 重巡 衣笠 青葉 加古 古鷹
第03水雷戦隊 川内 第04水雷戦隊 由良
第11駆逐隊 吹雪 白雪 初雪 叢雲 第02駆逐隊 村雨 五月雨 春雨 夕立
第19駆逐隊 磯波 浦波 敷波 綾波 第09駆逐隊 朝雲 山雲 夏雲 峰雲
第20駆逐隊 天霧 朝霧 夕霧 白雲 第27駆逐隊 有明 夕暮 時雨 白露
          第01水雷戦隊 阿武隈 北上 大井  
          第21駆逐隊 初春 子の日 初霜 若葉
                   

  

  建造・予備・修理・改装・解体
空母 空母 千歳 千代田 日進
戦艦 戦艦 長門 陸奥 武蔵
戦艦 伊勢 日向 扶桑 山城
重巡 重巡
第21水雷戦隊 第水雷戦隊 多摩 木曽 名取 鬼怒
五十鈴 球磨 天竜 龍田
第駆逐隊 第駆逐隊
第駆逐隊 第駆逐隊
第駆逐隊 第駆逐隊
第水雷戦隊
鹿島 香椎 香取 第駆逐隊
神川丸 粟田丸 赤城丸 浅香丸 君川丸

   

                       
第01潜水戦隊 平安丸 伊09 15 17 19 25 26 31 32 33  
第02潜水戦隊 さんとす丸 伊07 01 02 03 04 06        
第03潜水戦隊 靖国丸 伊11 174 175 168 169 171 172      
第08潜水戦隊 日枝丸 伊10 16 18 20 21 22 24 27 28 29
第07潜水戦隊 迅鯨 伊121 122 呂33 呂34            
第30潜水戦隊 神威 伊165 166 08              
                       
                       
                       
第1南遣艦隊   05春風 朝風 旗風              
  秋津州 春日丸 八幡丸 矢風 摂津 厳島 八重山        

  
  

  

 ミッドウェー海戦後、日本海軍は戦果を拡大することなく、防衛線を構築していく。

 一方、アメリカ海軍も残った空母サラトガとワスプで太平洋の防衛を行なう ものの戦意は低下し、

 互いに潜水艦を利用した通商破壊戦と海上護衛戦に明け暮れていく。

  

  

 ミッドウェー島

 イースタン島とサンド島の間の水路、

 大和は、巨大な艦体をサンド島に押し上げていた。

 艦首艦底は座礁で破られ、

 付け焼刃の修理で浸水を食い止めていたものの、

 再浮上は厳しい状態だった。

 皮肉だったのは、魚雷の爆発で開いた穴が大和の新しい出入口になっていること、

 そして、輸送船から揚陸した資材が倉庫代わりで大和の中に入れられていく、

 滑走路は修復され、飛行場も少しずつ拡張され、

 機動部隊から降ろされた艦載機が翼を休めていた。

 大和艦尾の司令塔は、イースタン島の滑走路を見やすかった。  

 伝令兵からの電文が艦長に手渡された。

 大和は軍艦としての機能は失っており、

 艦長は仮の官職、

 「・・・やはり、そうなるか」

 「大本営は、この大和をミッドウェー島の要塞にするそうです」

 「では、それらしくせねばならんな」

 「理想は、機関室を縮小して倉庫として使うことでしょうか」

 「・・・・・・・・・・」

 「土嚢で周りを覆えば艦体を半埋め立てで固定でき、主砲の命中率も向上するはず」

 いったいどのくらいの土嚢が必要になるか、

 人足が、どれほど必要になるのか、

 水は、どうするのか? 食料は? 兵舎は?

 考えたくもない事ばかり・・・・

 本音は、艦を土嚢で埋め立てるより、

 海岸を埋め立て、滑走路を延長したい、

 「・・・・しかし、燃料を燃やして飲料水を作るとは、皮肉なものだな」

 「日本じゃ 水を燃やしてでも燃料が欲しいと言うのに・・・・・」

 「燃料を燃やして、ミッドウェーに水を運んだ方が良いか、検討すべきだろうな」

 水の総量で、一人当たりの水の割り当ても決まってくる。

 少なくとも海で泳いだ後、体を拭く程度はできる。

 「だが・・・本当に大和ホテルになったな」

 「しょうがないよ」

 「今ある機体は少ない」

 滑走路に並べられている機体は、

 ゼロ戦34機、99艦爆24機、97艦攻21機、1式陸攻30機だった。

 「・・・上手く運用できれば良いのですが・・・・」

 「それも、あのアホウドリを何とかしてからだ」

 小さな島は泣きたくなるほどアホウドリがいた。

 「アメリカ潜水艦は相当数撃沈しているはずだ」

 「戦果報告を信じるなら10隻以上の撃沈を確認しているはずです」

 「戦果報告を鵜呑みにはできないと思うね」

 「余計に報告すれば出世できるからな」

 「たしかに・・・・」

 「今のうちに物資と人材を集め、可能な限り基地を整備して人間を本土に下げよう」

 「人間が多過ぎては、補給と排泄もままならない」

 「伊号の艦長がミッドウェーは、潜水艦と同じだと、ぼやいてましたよ」

 「日本の潜水艦は、アメリカやドイツの潜水艦より居住性が良いよ」

 基地防衛上、兵が多いに越したことはない。

 しかし、この島は自給自足できない広さであり、

 人が生きていく上で食事と排泄は人間が生きていく上で必須だった。

 こんな小島に何千人もいられるわけがなく、

 基地の整備が終れば人減らしで帰還させるしかなかった。

 とはいえ、大和要塞は悪くはない。

 防衛の観点で3個師団で守っているに等しく、

 機関員と航海関係の将兵は要らない、

 大和は、ミッドウェー島の基地司令部となり、

 ミッドウェーに配備された航空隊に指令を出し、

 ミッドウェーを基地とする潜水艦部隊の司令部ともなった。

 敵艦隊が来れば主砲で撃退することもできた。

 

   

 日本 川崎市、

 日本が絶望的になるのは資源だけでなく、工業力もだった。

 マザーマシンは外国製であり、

 マザーマシンで作られた工作機械で新たな工作機械を製造し、

 最優秀な工作機械が和製マザーマシンとなった。

 これが外国製と比べると見劣りし、

 ほとんどがデットコピーといえるものだった。

 そして、最優秀でないデットコピーの工作機械が兵器・武器弾薬を製造する、

 見劣りする和製デットコピー工作機械でさえ、

 最優秀工作機械は、兵器と武器を製造できないほど貴重だった。

 マザーマシンの代用で工作機械を製造するしかなく、

 外国製工作機械が壊れたらジリ貧、

 というよりジリ貧に追い詰められての開戦だった。

 外国から取り寄せなければ修復不能な部品もあった。

 さらに南洋から送られてくるはずの資源は滞り、

 どんなに “生産せよ” でも原料と材料がなければ無理だった。

 そして、泣きっ面の上にベテラン工員が軍隊に引き抜かれていく、

 “前線で修復しないと困る”

 と言うが、それだと製造する部品が劣化し、堂々巡り、

 前線は、修復不能な部品が送られ、さらに困ることになった。

 日本の工業製品は、品質が低下していく宿命にあり、

 国民生活に回す工作機械は切り詰められ、

 社会生活は、さらに悪化していく、

 前線に輸送したくても本土さえ物資不足でナイナイ状態、

 日本軍の支配権がミッドウェーやガダルカナルに及んでも、

 品質劣化による戦力低下は目に見えてた。

 ゼロ戦は絶大な航続距離を誇っても

 品質不良で前線まで辿り着けなくなる。

 現状は、運が悪くなければ前線まで飛んで行けるレベルでも、

 いずれ、運が良くなければ前線まで飛んで行けなくなる。

 飛んでいる途中でエンジンが故障すれば落ちてサメの餌だった。

 信頼できないエンジンで、航続力に何の意味があるのか、

 航続力を落としても防空戦闘機で基地を守るべきといえた。

 工業の実態を知る人間なら絶望的な気分にしかならない、

  

 平時でさえ、生きていくのが大変な日本だった。

 移民を止められ、間引きも口減らしもできなくなり、

 機械・油の輸出入を止められるだけで近代的な生活どころか、

 食糧自給すら怪しくなった。

 それが戦争しながらとなれば悲惨の極み、

 単純に国力だけでは近代生活を営むことすらできない国であり、

 それが国力の差ともいえた。

 中立国の情報で、アメリカも女工が工業部品を作っている話しが伝わってくる。

 だからどうだと言うのだろうか、

 基礎のマザーマシンで負けている。

 女同士で部品を作っているからといって安心できるわけがなかった。

 原料も不足がち、材料の搬出搬入も慢性的に遅延していた。

 機械油、削り油は急速に減り、

 生産ラインの規模で掛け合わせていくと品質管理はままならず、

 不良品の出現を歩留まりというが、当然、アメリカより多く、

 生産性は悪化の一途を辿っていた。

 新型機ともなれば生産工程は、雪達磨式に膨れ上がり、

 歩留まりは目を覆うばかりとなっていく、

 生産規模が大きくなるほど不良品が山の如く増え、

 アメリカで粗悪品に分類される物でも、日本は使わずにはいられない、

 日本とアメリカは、社会基盤で離れ過ぎていた。

 また資源と基礎工業力で太刀打ちできず、

 比較項目を増やせば、日米国力比は1000倍以上に広がり、

 比較項目を減らしても100倍となり、

 さらに減らさないと勝ち目がない。

 単純な総合力で負けと言えた。

 日本の希望は最初からドイツ頼みだった。

  

 ・・・・・・・・・・・・・。

 日本の巷ではミッドウェー占領と、

 アメリカ機動部隊壊滅の号外で一杯だった。

 こちらの損失は、小さな記事で書かれている。

 戦艦6隻の大破が、どう受け止められているやら、

 大和も撃沈と変わらない、

 要塞戦艦という名目で戦略勝利として記述されている。

 日本国民は喜び、はしゃぐ、

 そうでもしないと民衆は、やり切れないともいえた。

 結核者は増え、労働資源も安定しない。

 輸出入が減少した日本で生きていける人口は限りがあった。

 軍部が権力を掌握し、

 反対する者は非合法的な手段を講じても排斥され、

 現実に目を向けるだけで敗北主義者と烙印を押され、非国民。

 あるいは、売国者にされる。

 非合法活動ができる右翼の中核は、日本人としがらみのないアウトローたちだった。

 アウトローはヤクザであり、ヤクザは朝鮮人であり、

 土地と財産と生命が危険に晒される。

 家族、妻、子供を村八分から守るため、

 非国民、売国奴と呼ばせないため、目を塞ぎ、耳を塞ぎ、万歳を叫ぶ、

 とはいえ。とはいえ、なのである。

 アメリカ空母3隻撃沈で、少しばかり戦局に余裕が生まれる。

 それが蝋燭の灯火であっても、蛍のような淡い光でも、

 民衆は、万歳を叫ばずには、いられない、

 勝利を疑うより信じる方が楽で気分が良かった。

 仮に疑ったとして、何も変えられない、

 村八分で、社会から抹殺されるくらいなら嘘偽りの流れに乗る。

 もし、負けたら、強い側に媚びても生きていく。

 事勿れ、慣れ合いのまま、強い相手に尻尾を振る権威主義の国、

 

 それでも日米の国力差を埋めようとする者がいた。

 日本国の体質的な問題点を変えるため、何人もの人間が立ち上がる。

 そして、疎外されて淘汰され消えていく、

 中には大きな力関係のうねりにより、

 たまたま、成果を上げていく者もいた。

 それが権力側、大勢の望まない。遺憾な事であったとしても・・・・

   

 武蔵 艦橋

 南雲長官は武蔵を連合艦隊の旗艦とするかで思案中・・・

 大和でさえ、爆撃機と雷撃機の波状攻撃によって大破炎上。

 艦橋がB17爆撃機の体当たりで破壊され、山本長官以下、全て死亡。

 操舵不能でミッドウェーに座礁し乗り上げてしまう、

 そして、運が悪いことに満潮時の座礁で離岸させることもできない。

 この武蔵を旗艦にしたところで安心というわけではない、

 旗艦とするのなら、後方で作戦指揮ができる空母が望ましい。

 「艦載機パイロットの育成は?」

 「ミッドウェー海戦のあと、艦載機パイロットの育成に勤めています」

 「半年もあれば、800名ほどには・・・」

 「半年後のアメリカは、毎日800人ずつパイロットが増えていくんじゃないのか?」

 「まさか」

 「・・・基地航空隊に艦載機パイロットを取られたくないが・・・・」

 「厳しいようですね」

 「わたしは、分の良い博打も出来ない方だ」

 「しかし、例え戦艦を失ってでも装備を拡充させたい。」

 「民間は助かるかもしれませんね」

 「潮を被った機関だ。使えない戦艦より、使える装備が欲しいよ」

 「工作機械の都合は付きそうですか?」

 「・・・連合艦隊も見る影もなくなったな」

 「この戦争が終わる頃、我が日本海軍に大型艦が残っているだろうか」

 「日本海軍を磨り潰しても日本を残すべきでは?」

 「本気で君が、そう思ってくれるのなら嬉しいがね・・・・」

 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 海軍で職場を失うは、地位も、名誉も、財産も、失うことに等しかった。

 「陸さんとの調整は?」

 「日本は、陸軍と海軍の争いで磨り潰されそうだな・・・」

 「長官。やはり、折れたので・・・・」

 「くっそぉ〜 あいつら、俺のことをバカにしやがって大和まで人質に取りやがる」

 交渉ごとは、人間対人間。

 いつも、遣り合っていた者同士が向かい合うのであれば力量も分かる。

 しかし、海軍は上層部の人事移動の隙を突かれ、

 陸軍の利権が強化してしまう。

 海軍は代わりに石油と船舶を得られたものの、一時的だった。

  

 日本軍は力不足、

 しかし、アメリカ軍は準備不足だった。

 どちらも決め手がない状態で時間が過ぎていく。

 ガナルカナル基地は、次第に拡張され、

 ブーゲンビル島に中継の航空基地が建設されると輸送船の安全性も高まっていく、

 赤レンガの住人たち

 「船舶が足りないぞ」

 「荷揚げだよ。輸送船からの荷揚げが進まないんだ」

 「堂々巡りだな」

 「それより、新型戦闘機はまだか。いつまでも零戦じゃないだろう」

 「それなんだがね・・・・」

 海軍は大量の損傷艦を抱えて身動きがとれず。

 山本長官戦死と人事異動のゴタゴタ・・・

 そして、陸海軍で船腹の取り合い。

 海軍は、戦艦6隻を修復改装、ミッドウェーと大和を守るため、航空機開発で陸軍に妥協した。

 陸軍は航空機開発で主導権を握ってしまう。

 いわゆる。陸軍主導、海軍補助による航空機開発。

   

 開発中の隼V型は、陸軍主導、海軍が補助の形で進められていく。

 ロケット式排気管が採用され、洋上での運用を加味し浮き袋などが装備される。

 ハ115-2エンジン 1300馬力

 速度570km/h

 自重2000kg/総重量2642kg

 全長8.95m×全幅10.83m

 翼面積22u

 航続距離1100〜2200km。

   甲型 7.7mm × 6

   乙型 12.7mm×2 + 7.7mm×2

 計算上は、570kmという速度が見込まれる。

 日本海軍は操縦桿を海軍式に変え、

 隼に浮き袋をつけて着艦フックを装備し艦載機化を進める。

 翼面積も、ゼロ戦22.438uと隼22uとそれほど変わらない。

 翼面荷重(kg/u)では、ゼロ戦128、隼124。

 離着艦距離は、ともかく、

 寸法だけなら小型の隼が有利だった。

 そして “もう、隼の時代じゃないよ” と言われながら・・・・

 程度の低い日本の工業力に見合った陸海共同戦闘機として大量生産されていく。

 「隼じゃ勝てんよ」

 「こうなったら数で押し切る」

 「数じゃ負けるだろう。工作機械も磨耗して精度が落ちているし」

 「逆をいうと精度が落ちているのに高性能機が製造できるわけがない」

 「それなら空母を建造するより、飛行場を拡張する方が楽たい」

 『それでも、負けそうじゃ・・・』

 国力の違いが泣きたくなるほど身に沁みる。

 山本長官が博打を打ちたくなる気持ちも分からなくない。

 しかし、今の日本海軍に博打うちはいなかった。

 それでも、ミッドウェー海戦でアメリカ空母3隻を撃沈し、

 天秤は、日本に微笑んでいるように見えた。

 「・・果たして、戦艦を修理改装する価値があるものだろうか」

 「解体して基地建設の材料にするほうがマシかもしれないな」

 「当面は、空母を中核に艦隊編成を変える事ができたよ」

 「編成の問題ではないよ」

 「対潜、対空で予算の割り振りが利かない」

 日本海軍は、航空機と潜水艦の攻撃だけで主力戦艦7隻が大破させられ、

 対空と対潜で根本的な戦略的転換を迫られていた。

  

  

 ミッドウェー島

 伊号潜水艦が出撃していく、

 大和は、燃料タンクでもあった。

 潜水艦は、ミッドウェーで燃料を補給すると、その分、余計に遠征できた。

 魚雷、燃料、物資をミッドウェーで補給し、

 工作艦「明石」により修理もできた。

 小さい島でも陸地が踏めるなら乗員の休養になった。

 2式大艇が索敵に飛び立ち、潜水艦隊を支援をする、

 真珠湾で戦艦を撃沈し、ミッドウェー海戦で空母3隻撃沈したことで、

 日本海軍は、伊号をハワイ監視から通商破壊に切り替えることができていた。

 

  

 ミッドウェー島の整備が進むと人手を内地に戻し、

 手軽にミッドウェーを守る方法を検討する。

 割安なのは機雷だった。

 機雷は、戦果がわかり難く、戦績も記録されにくい。

 出世に繋がらないことから嫌がる艦隊将兵は多い、

 しかし、背に腹は変えられない、

 そして、ここは最前線、

 軍事機密の塊の大和を守るべし、という気持ちも働き、

 機雷を敷設するとすれば、大和の艦尾いなった。

 ミッドウェー島は、遠浅でないため、

 一定の海域に機雷を固定させると余計な費用がかかる。

 46cm砲の射程内に機雷を敷設した場合、

 アメリカ艦隊は、大和の砲撃で掃海も困難なまま、進撃しなければならなくなる。

 アメリカ海軍は、数に任せ高速で機雷源を突破し、

 大和の射程内に入らなければならず。

 損害は、機雷の数にもよるが運・不運が絡む、

 720トン級機雷敷設艦 平島

 「・・・・上手く行くかな」

 「さぁ 成功すれば、安上がりなんだが・・・・」

 機雷は、防御ばかりではなく攻撃にも使える。

 ハワイ沖に敷設すれば、戦果も期待できた。

 少なくとも潜水艦をハワイ沖に張り付かせるより

 機雷をばら撒く方が安上がりに思えた。

 そして、それは、逆にも使われる。

 おかげでミッドウェー島は、定期的に哨戒機を飛ばさなければならず。

 ミッドウェー島の維持費は高くついた。

 ・・・・・・・・・・

  

 

 赤レンガの住人たち

 「・・・・物価統制も、賃金統制も、駄目駄目だな」

 「庶民生活で物資が少なくなれば物価が上がるのは当然」

 「消費財を購入するため賃金も上がる」

 「そして、賃金が上がれば物価もあがる。実に自然な動きだね」

 「賃金が倍に上がって生計費が5倍だと弱者は死ねだな」

 「英霊の未亡人は女郎行きだよ」

 「戦前より、はるかに酷いね」

 「だが人が死ねば、その資産が振り分けられる」

 「悪魔に魂を売った人間の発言だな」

 「ふ、兄弟げんかの話しだよ。兄弟が少なければ、お小遣いも、おやつも増える」

 「収入が決まっているのだから、単純な理屈だよ」

 この頃、最低限必要な民需物資用輸送船舶300万トンが260万トンに減らされる。

 庶民生活は、さらに困窮を極め、死活問題となっていく。

 日本経済は、ナイナイ状態でボロボロ、

 分かりやすく言うと “弱者は死ね” に近付いていく、

 「問題は、日本が守れるか、どうかだよ。負ければ、もっと悲惨だ」

 「勝っても、悲惨だよ。国債も、軍票も踏み倒すしかないね」

 「まっとうに働いても輸出先などないよ。奪うしかない」

 「望む、望まざるに関わらず。侵略国家か・・・」

 「強国の外交戦略ゲームに引っ掛かると、こうなってしまうという見本だな」

 「んん・・・・結核の死亡も40年度だけで15万近い」

 「もっと増えるよ。このジリ貧状態を何とかしないと」

 「上が身を切る事ができなければ、ボロ負けだよ」

 「切ったところで焼け石に水だよ。元々、足りない上で奪い合っている」

 「そして、資本を集中しなければ設備投資もままならない」

 「陸軍と海軍か。セクト主義で日本の外交戦略を狭めて傾けやがって」

 「どんなに優秀でも関係ない。あいつらこそ穀潰しだ。万死に値する」

 「とにかく戦争が始まった以上、兵装だけでも統合しないと・・・・」

 「そうだな、ベストでなくても、ベターでもいい。仮にどっちであっても別々よりマシだ」

 「それはそうと陸軍の日本電気の無線が聞こえ」

 「海軍の日本無線の無線が聞こえないのは調整できそうなの?」

 「なんとかね。陸軍主導で規格を揃えて、良かったのやら、悪かったのやら」

 「全面的というわけじゃないさ」

 「そうだ。高角プロペラ(フェザリング・プロペラ)機構を捕獲したんだよね」

 「取り入れられないの?」

 「双発機が片発でも飛べる機構か・・・んん・・・カムがね。作れそうにないよ」

 「リバースピッチを検討しているけど・・・」

 「住友ハミルトン油圧式定速プロペラだと片発になると落ちるからね」

 「しかし、隼の艦載機化も含めて機動部隊の再編成は遅れるな」

 「艦隊のオーバーホールは必要だよ」

 「そうだろうが・・・」

 

 

 第一機動部隊の山口提督は、艦隊の編成、艦載機の配分。

 そして、パイロットの質の低下で頭を抱える。

 位置が変われば言うことも変わる。無鉄砲な闘将でいられない。

 南雲長官の艦隊保存の意図も、だいたい気付く。

 しかし、それに乗らなければならないのも癪だったりする。

 南雲長官の戦功の為、完全に磨り潰された第一機動部隊航空部隊で、どう戦っていくのか。

 さらに保身のため第一空母戦隊(赤城、加賀)と第二空母戦隊(飛龍、蒼龍)に分割されていた。

 瑞鶴と翔鶴の性能は良かった。

 新編成では、人心掌握を含め、練度も不安だった。

 基地パイロットを艦載機パイロットに移行できるかといえば、すんなりとは行かない。

 艦載機パイロットは、艦内生活に支障をきたす気質だと難しく、

 船乗りの気質も求められる、

 そのため空母パイロット選考と補充は慎重に行われる。

 また、艦載機パイロットは基地パイロットより飛行時間を余計に必要とし、

 ドラム缶数百個分の燃料を余計に消費して養成する国家の至宝と呼べる人材だった。

 そのためか、艦載機パイロットを基地に置くこと自体惜しいと考えやすかった。

 「・・・・なんで、ゼロ戦が駄目なんだ」

 「船舶の関係で陸軍に押し切られたそうです・・・・」

 「このまま押し切られて、大陸侵攻じゃないだろうな」

 「当面は、今あるゼロ戦を艦載機で使って、海軍基地航空部隊は、隼を使わせるしかないか」

 「アメリカ軍の反攻は、遅れると思われますので、しばらくは、余裕があるかと」

 「「・・・・・・・・・・」」 憮然

 「・・・隼の艦載機化の様子でも見てくるか」

 「ええ」

  

  

 太平洋、

 広大な太平洋に焦点になりそうな戦場はなかった。

 まず互いの輸送船が撃沈され、

 前線の備蓄が少ないのか作戦が進まない。

 ミッドウェー島とハワイは、離れすぎている。

 一番近いニーハウ島でさえ1860km。

 ジョンストン島のほうが1500kmでまだ近い。

 どちらにしろ交戦距離というには遠すぎた。

 ラエとポートモーレスビーは、307km

 ガダルカナル島とエスピリットサント島は、960km

 チモール島とダーウィンは630km

 ビルマ戦線は、マンダレとチャッタゴン、430km。

 これらは、交戦距離といえたものの、

 双方とも作戦活動が低調で攻勢に出られず。

 互いのパトロール部隊同士の航空戦が行なわれる程度だった。

  

 ビルマ

 ビルマの防衛は、内陸部への大動脈であるイラワディ川防衛だった。

 日本の小型船が河川の上流まで物資を運び、

 ビルマ資源を運んで河口まで往復する。

 そして、イラワディ川を往復する日本船舶の動きは、ばれているらしく、

 イギリス軍の作戦は、この大動脈を攻撃する。

 イギリス軍機が出撃して船を狙い、

 日本は迎撃機を刳り出し、航空戦になっていく、

 航続力の短いスピットファイアは侵攻作戦で不利であり、

 アメリカから貸与されたライトニング戦闘機が使いやすかった。

 隼45機とP38ライトニング25機がイラワディ川上空で空中戦を開始する。

 P38ライトニングは河川の船を襲撃するため高度を下げ、

 隼に被られてしまう。

 高高度では無類に強いライトニング戦闘機も低空だと苦戦する。

 「いくそ!」

 日本陸軍の無線は、比較的、良く聞こえるらしく。

 相互支援と連係が可能だった。

 12.7mm機銃と7.7mm機銃は威力が小さった。

 しかし、射程と初速、命中率は良いらしく、

 弾道がライトニングに吸い込まれていく、

 この時の空中戦は、高度、位置、数で隼が有利だった。

 とはいえ、高速で逃げ回るライトニングに機銃を命中させ、

 防弾に優れたライトニングを撃墜するのは容易ではない。

 河川を走る船は、矢継ぎ早にライトニングに銃撃され大破していく、

 そして、爆弾が川と川岸に落ちて爆発、水柱を上げ、周囲の木々を吹き飛ばした。

 あたり一面に水柱と木々と土砂が巻き上がる。

 それでも船は沈まず。ほっとする。

 隼の12.7mmと7.7mm弾がライトニングに吸い込まれて命中していく、

 そして、ライトニングは穴だらけボロボロになりながら逃げていく、

 速度が落ちれば数機がかりで、銃撃し撃墜できた。

 基本的にライトニング戦闘機が速く、防弾は強靭だった。

 エンジンか、パイロットに命中しない限り撃墜できない。

 ライトニングの半分以上が逃げ切ってしまう。

 この空中戦で隼の損失はゼロだった。

 航空戦は、航空機の高性能が求められる。

 しかし、戦局を有利に展開させる状況を作り出せるなら

 低性能機でも補える要素があった。

  

  

 白レンガの住人たち

 ハワイの日差しは、厳しい。

 しかし、それ以上に戦局は厳しかった。

 「・・・ハワイ向けの輸送船が撃沈されたらしい。ポートモレスビー向けの輸送船もだ・・・」

 「太平洋でも、護送船団方式をとるしかないな」

 「サラトガとワスプはフル稼働なんだがな」

 「こっちの潜水艦も結構やられたよ」

 「戦艦と空母の交換は割に合わん」

 「輸送船や駆逐艦を狙えば良かったんだ。短絡過ぎる」

 「日本の新型戦艦の座礁とミッドウェー攻撃で、ちょうど良い隙があったのだろうな」

 「もう少し、潜水艦隊が頑張れると思ったが」

 「味方潜水艦撃沈の原因は敵空母の艦載機らしい」

 「あと魚雷の不発もあるようだ」

 「日本は、内線を固めているのに今のところ、打つ手はない」

 「日本は、鉄鋼類・石油資源も、工作機械類も輸入に頼っている」

 「ジリ貧を待つこともできるだろう」

 「日本では、“欲しがりません勝つまでは” となっているようだがモラル低下は?」

 「日本人は、不幸慣れしているらしいがね」

 「生活苦に喘いで、犯罪は増えているようだ」

 「モラルはともかく、反乱が起こる気配はないよ」

 「どちらにしろ、エセックス空母とインディペンデンス空母の量産が進むまで、手を出せそうにない」

 「それにしても、チビメガネの日本軍も随分と戦線を広げたものだ」

 「日本男子の平均身長が158cm。体重が53kgだったな」

 「ふ アメリカじゃ 中学生だ。女に組み伏せられるぜ」

 「そいつらに機動部隊がやられたんだろう」

 「2mくらいの大男にしておこう」

 「現代戦では弾が当たらないくらい体が小さい方が有利なんだ」

 「弾があれば、だろう」

 「日本軍は、燃料もないはず」

 「ミッドウェーとガナルカナルまで水や食料、武器弾薬を運んでこれるかな」

 「日本は長くないだろう」

 

 


 月夜裏 野々香です。

 ミッドウェー海戦で、負けませんでした。

 天皇は、怒りません。

 硬直した軍官僚体質は、まったく変更なし。

 ただし、大和艦橋にいた山本長官。

 参謀長の宇垣少将、主席参謀の黒島大佐、作戦参謀の三和大佐、

 航空参謀の佐々木中佐。航海参謀の永田中佐、水雷参謀の有馬中佐、

 通信参謀の和田中佐、機関参謀の磯部中佐。戦務参謀の渡辺中佐

 戦死者としては、少ないくらいものの大混乱。

 日本海軍は、一時的に機能不全。

 穴を埋めるべく、混乱しながら組織が立て直されていく。

 また、戦艦が、やられたことで、対空・対潜に対する認識。

 そして、暗号は、変更されるはずですが外交も、戦略も、帝国軍のままです。

 

 因みに4空母は無事。航空機はそれなり残存。

 ですが、史実のミッドウェー海戦(100人)以上、

 第1級パイロットが(230人)が失われてしまいました。

  

 捕虜無償返還による連合国側との交渉もなく。

 インド作戦による拿捕作戦もなく。

 ドイツとの交流もないような、です。

 日本は、孤立した状態で陸海軍の内紛に悩まされながら、

 清く、正しく、潔く、美しく、戦って行きます。

 アメリカ、イギリス、ソ連を相手に外交戦略抜きでしょうか。

 かなり絶望的な気分で、途中、投げてしまったのを焼き直しです。

 戦術的勝利で、がんばっていくので、応援してあげてください。

 

 

 右翼とヤクザと朝鮮人

 右翼の中核はヤクザ、ヤクザの中核は、日本人に対し非合法活動が平気な朝鮮人です。

 意外と知らない人が多いので書いておきました。

 因みに軍隊を右翼に含めないでくださいね。

 

  

 ちなみに戦前の日本の工業力に関して、疑問を感じられた方は、こちら

  

   

 

仮想戦記 『白き炎のままに』

第01話 1942/06 『げっ! 大和が・・・』

第02話 1942/07 『国力の差が身に沁みる』