月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第00話 1920年 『木仙が生まれた日』

 カナカナカナと鳴いていたヒグラシは雨が降りだすと鳴きやんでいく、

 ナミ木の幹分かれで二人の少年が雨宿りしていた。

 「急に降ってくるなんて、ついてないな」 仙堂 春和 (せんどう はるお) 14歳、

 「軒下に行った方がいいんじゃないか」 角浦 秋和 (すみうら あきお) 14歳

 「御神木に登ったの住職にバレたらどやされるぞ」

 「でかいカブトムシがいるのに登らないでか」

 「だよなぁ・・・」

 ピカッ!

 意識が途絶えた。

 

 濡れた土の匂い、

 全身が雨で濡れていることに気付いた。

 白く光る御神木の木片が辺りに散乱して、白く光ってるように見えた。

 「いったい、なにが・・・」

 「おい、角浦。しっかりしろ!」

 ゆさっ ゆさっ

 「い、いつっっ・・・あっ つぅ・・頭いてぇ・・・」

 二人は6、7メートルほど高さから落ちても生きていた。

 「仙堂。血が出てるぞ、大怪我じゃないか」

 「嘘っ! 頭じゃなくて、腕かよ」

 腕から血が流れ・・・

 「あ・・・あれ・・・血が止まった」

 「「・・・・」」 呆然

 御神木は、二又から割かれ、幹の半分が境内に転がっていた。

 気のせいか、御神木と木片がぼんやり光ってるように見えた。

 「こらっ!!! そこでなにしてる!!!!」

 「わっ 逃げろ!!!」

 だっーーーーー!!!!

 

 

 仙堂 春和は、木片を一つ持って逃げ、

 寝床に戻ると取り出した。

 木片が光ってるように見えていた。

 『雷に当たったからかな』

 『でも、親父も母親も木片が光ってるの気付いてなかったし・・・』

 『この木片。なんで光ってるんだろう・・・』

 

 

 

 翌日

 焼けてバラバラに砕けた御神木の回りに人だかりが作られていた。

 「樹齢2000年の御神体が雷でバラバラになるなんてな」

 「困ったもんだな」

 「取り敢えず、一か所に集めて、埋めて鎮魂祭でもするのがいいんかな」

 「村の御神木やし、そうやなぁ」

 

 

 少年たち

 「御神木は埋めるみたいだな」

 「その方が都合がいいよ」

 「なんで、御神木が光ってるのに気付いてないのかな」

 「これ、面白いよね」

 仙堂 春和は、木片を川に向けると、

 魚が跳び上がって、手で捕まえることができた。

 「あっ おれも」

 次々に魚が跳ねて、少年たちの前に転がる。

 「仙堂。この力どうしよう」 角浦 秋和

 「やっぱりさ。秘密にした方がいいよね」

 「そうだよね」

 2人は樹木の加工力と、ちっとした念動力に気付き、自分たちが木仙人になったと思った。

 そして、木仙功という名称をつけた。

 

 学校

 仙堂は小刀で木彫りのカマキリを作ると、教室が騒然となっていく、

 そして、同じように小刀で蝶々を木彫りで作った角浦も注目され、

 二人は校長室へ呼ばれ、

 その後、両親と一緒に街の顔役のところへ案内され、目の前で仏像を彫った。

 顔役たちは、少年たちが次の場所に行く様子を窓から見ていた。

 「・・・素晴らしい。彼らの仏像は、魂が籠ってますよ」

 「それだけじゃない、彼らの小刀を見てみろ」

 「・・・・」

 「仏像を彫ったというのに刃壊れ一つもない」

 「まさか」

 「ほとんど力も入れずに彫ってるし。やすりもかけていなのに滑らかに仕上がってる」

 「金で簡単に小刀を手放したのは、小刀の力ではなく、彼ら自身の力なんだろうな」

 「「「・・・・」」」

 2人の作る木工細工は、村周辺で人気となり、

 紹介状を持たされて帝都に上京すると、

 仙堂と角浦は木工所に勤めて木仙人と呼ばれるようになった。

 

 

 

 9月

  バクーで東方諸民族大会開幕。

 

  大レバノン成立。

 

  巡洋戦艦榛名の1番砲塔内で榴弾破裂事故が発生、死傷者15名を出した。

 

  ニューヨークのウォール街。

   イタリアの無政府主義者によって馬車に仕掛けられた爆弾が爆発、

   死者38名と負傷者約400名を出し、車爆弾を用いた世界初のテロとなった。

 

 10月

  日本最初の国勢調査実施

 

 11月

  アメリカ合衆国で世界初の本格的な定時ラジオ放送が営業開始

 

  ジュネーヴで第1回国際連盟総会開催

 

  32759t級戦艦長門 就航 

  全長215.80m×全幅28.96m×吃水9.08m

  機関 艦本式タービン4基4軸 85478馬力

  速力26.4kt

  航続距離5500海里/16kt

  乗員1333名

   45口径41cm連装砲4基  50口径14cm単装砲20門

   40口径7.6cm単装高角砲4門 53 cm魚雷発射管8門

   搭載機 3機(カタパルト1基)

 有力者になると特権的な方法で新造戦艦に近づける。

 仙堂と角浦は、甲板を歩き回った。

 「こりゃ凄い」

 「世界最強の戦艦なんだな」

 「まぁ 木製もあるが、鉄の塊には違いないな」

 「少ない木で利益の大きさなら軍艦より、飛行機か」

 「大手は、飛行機も金属製で機体を作りたがってる」

 「木工産業を時代遅れにしたがってるからな」

 「しかし、人材さえいれば、資本が得られるし、良いモノを作り続けられるなら航空機を木製で作れるよ」

 「それに、こいつを一時間走らせるだけで、国が傾く」

 「それはちょっと嫌だな」

 

  京都赤旗事件

 

 

 12月

 

  大杉栄・堺利彦らによる日本社会主義同盟が結成

 

  第44議会召集

 

  ニコラエフスク

   在留日本人とロシア人が共産ゲリラに虐殺される尼港事件が起こる。

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 今回は珍しく、主人公二人組

 『キミンの時代』ぽいですが、ちょっと違う。

 仙堂 春和 (せんどう はるお) 14歳 春に生まれた。積極的

 角浦 秋和 (すみうら あきお) 14歳 秋に生まれた。消極的

 

 

 

 

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第01話 1921年 『鉄工業 VS 木工業』