月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

 

第01話 1941年 『大本営 長門』

 01月

  アメリカ大統領 ルーズベルトが

  (1)言論の自由 (2)宗教の自由 (3)欠乏からの自由 (4)恐怖からの自由

  “四つの自由” 演説を行う。

  

 

 国民軍8万人が安徽省南部の共産軍の新四軍1万人を攻撃する(皖南事件)。

 

 

 東条英機陸軍相が戦陣訓 “生きて虜囚の辱めを受けず” を通達。

 アメリカ太平洋艦隊が艦隊を太平洋・大西洋・アジアの3地域に配置する。

 

 

 独ソ経済協定と国境画定協定が調印される。

 

 

 アフリカ軍団創設

 

 

 ドイツ軍がブルガリアに進駐する。

 

 

 大日青少年団が結成される。

 

 

 01/18

 台湾・高雄港

 その日、3檣バーク型機帆両用の旧式巡洋艦が入港した。

 「フランス製だっけ」

 「うん」

 「お〜い! 人がいないぞ!」

 「まるで、マリー・セレスト号だな」

  ※1872/11/07出港、1872/12/04 無人で発見。

 「漂流年月が違うだろう」

 「いまごろ54年前の軍艦が漂流して戻ってもな・・・」

 「おーい! 艦内が海水で満たされてるぞ!」

 「おいおい、そんなわけないだろう。何で浮いてるんだ」

 船内が海水に満たされていると船は浮かばない。

 それが常識だった。

大日本帝国海軍 防護巡洋艦 畝傍(うねび)
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 35口径240mm砲 35口径150mm砲 57mm砲 魚雷 乗員
3615トン 98m×13.1m×5.7m 5500 18.5 4門 7門 2門 4門 280

 巡洋艦 畝傍(うねび)はフランスで建造された巡洋艦だった。

 1886年10月18日 就工。

 日本人8人、フランス人76人の操船により日本に回航されている途上。

 1886年12月03日、南シナ海で行方不明になる。

 「・・・おい! それ以上、海水を抜くな空中に飛び上ってしまうぞ」

 「索具で畝傍を堤防に繋ぎ止めろ!」

 潜水夫が艦内から出てくる。

 「お〜い 航海日誌だ」

 「預かる。作業を続けてくれ。策具をもっと増やせ、艦体から海水が抜けてるぞ」

 「はっ!」

 航海日誌

 油性ペンで書かれた日誌が油紙に巻かれていた。

 しかし、海水で濡れており、判別がつかない部分もあった。

 “・・・我々は、南シナ海沖で転覆した。艦体構造と過重兵装が原因と思われる”

 “ここがどこかわからない。地球ではないような気がする”

 “魔物と魔法使いがいる世界らしい”

 “このような世界が海中にあると思えない、まったく違う世界に来ている”

 “我々・・・フランス人と別れた”

 “戻れない。この世界で生きていくしかない”

 “・・・わたしは、飛行石の鉱脈を発見した。たぶん、お金持ちになれるかも知れない”

 “いくつかの魔法具を載せ、畝傍で日本に送り返すつもりだ”

 “無事に送り返せるかわからない”

 “しかし、魔法使いが回帰魔法をかけてくれるらしい”

 “わたしの望郷の念と、日本人が畝傍を強く思っているのであれば回航出来るだろう”

 “よく分からない、しかし、そういう仕組みらしい”

 “飛行石は、光と熱を加えると最大10倍の重量を相殺できるだろう”

 “500トン載せたので5000トンを空中に浮かばせられる”

 “それと、魔法使いじゃないと使えないらしい。風、土、火、水魔法の杖も4本載せた”

 “大日本帝国が上手く使ってくれることを祈る”

 艦長が記していた日誌は、その後、2人の日本人に引き継がれていた。

 もう一つの文書には、異世界の地図らしきもの、

 文字体系と翻訳らしいものが書かれていた。

 どちらも濡れていて判別しにくかった、

 

 

 

 松岡洋右外相が仏領インドシナ、オランダ領東インド、タイを大東亜共栄圏に含めると表明。

 

 世界から孤立し、追い詰められていた大日本帝国は、世にも奇怪な、お宝を発見する。

 しかし、有能であれ無能であれ、現物を見なければ誰も信じず。

 当然、大本営のお偉方も現物を見ない限り、誰も信じようとしなかった。

 海軍省 千代田区霞ヶ関

  「報告は、事実でした」

  「畝傍は、わ、我が海軍省の所管だよな」

  「はっ! 海軍に優先権があるかと」

  「よーし♪」

 

 陸軍省 千代田区(永田町)三宅坂

  「反米公演会に来なかった家を5人組で警察に報告させてくれ」

  「はっ」

  「いまの日本は、村八分に遭えば生きていけないからな」

  「あとは、隣組で勝手に締め上げてくれるだろう」

  「はっ」

  「・・・それより、本当に飛行石なのか?」

  「はい、10倍の重量を宙に浮かせました」

  「じゃ 本当なのか・・・」

  「はい」

  「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 イギリス連邦軍がトゥブルクを占領する。

 

 

 東京で商店の午後9時閉店が実施される。

 

 

 日本の調停により、タイ仏印停戦協定が調印される。

 

 台湾 高雄港

 戦艦長門 艦橋

 「あれが畝傍か」

 「はっ!」

 「飛行石をすぐに “畝傍” から長門に移し替えよ。一個たりとも失うな」

 「はっ!」

 「巡忠艦 “畝傍” だな」

 「ありがたいことです」

 「陸軍には絶対に渡せん」

 「ええ」

 

 38000トン級の長門の吃水があがり、33000トン級にまで艦が持ち上がっていた。

 「黒い石か」

 「オニキス、ショール、ジェット、黒曜石、黒珊瑚」

 「ダイヤモンド、メラナイト、テクタイトのいずれとも該当しませんでした」

 「30度以上の熱と光を当てるだけで石が浮かぶなんて面白いですね」

 「まったくわからんが、どういう特性のある宝石なのだ?」

 「学者は、光の屈折率が違うとか、なんとか・・・」

 「まるで、重油を載せていないようだ」

 「長門の重油は5700トンですからね」

 「ばれないように艦底に置いてますから重心が上がっています。転覆すると事ですよ」

 「大砲を撃たなければ大丈夫だろう」

 

 

 02月

 米英豪3ヶ国で太平洋共同防衛が成立する。

 

 

 エルヴィン・ロンメル将軍がドイツ・アフリカ軍団(DAK)の総司令官に就任する。

 首相官邸

 「野村君。戦争を回避したい。アメリカとは、可能な限り妥協できるだろう」

 「本当ですか?」

 「まぁ 陸軍次第だろうがな」

 

 

 野村吉三郎が駐米大使としてワシントンに着任、日米交渉が本格化する。

 

 

 ドイツのロンメル将軍がトリポリに到着。

 

 

 米英豪蘭4ヵ国太平洋防衛会議。

 

 

 煙草屋で貯蓄・報国債券を売出す。

 

 

 和歌山市と近郊の中等学校長会議で夏休みを有害無益として全廃。

 情報局が執筆禁止名簿を総合雑誌出版社に内示。言論統制を開始。

 

 首相官邸

 防護巡洋艦 “畝傍” は厳密に日本海軍所属で、

 回航後、日本海軍に所属していた。

 そして、縦割りな軍組織は、それが全てだった。

 「その飛行石というのは、有用なのかね」

 「はっ 間違いなく大日本帝国海軍の礎となる石かと」

 「使い道は?」

 「機密保存を最優先とし、陸海空いずれにも対応できる飛行船型が好ましいかと」

 「どれほどの戦力になるのかね」

 「アメリカ本土を爆撃し、帰還を望めます」

 「無事に帰還できるのかね」

 「機銃掃射による撃墜は不可能です」

 「対空砲火による撃墜の可能性は若干あり」

 「爆装した爆撃機による体当たりが最も効果的な撃墜法かと」

 「それで・・・一番効率的なのが飛行船型というのかね」

 「要塞戦車は海軍が反対でありますし。戦艦運用は、陸軍が反対ですので・・・」

 「着陸で失敗することはないだろうな」

 「はっ! 飛行船より、航空機に近い事。何より丈夫ですので」

 「そのぉ 魔法の杖は?」

 「現在調査中です」

 「日本は対米交渉で妥協しても大丈夫だろうか」

 「妥協とは?」

 「軍縮といくつかの中国利権の放棄だよ」

 「いま戦うより、臥薪嘗胆が好ましいかと」

 「希望を見出せるだけの魔法か・・・陸軍はどう思うかな?」

 「異世界探索後、利権の振り分けを行えばよろしいかと」

 「確かに魔法は、餌になる」

 

 

 

 イギリス海軍がシンガポール海峡を機雷封鎖。

 

 03月

 日独伊3国同盟にブルガリア加盟する。

 イギリス空軍がドイツ帝国ケルンに対し1000機爆撃を行う。

 

 

 国家総動員法改正、統制と罰則が強化される。

 

  

 北アフリカのイギリス軍がギリシャ本土に上陸する。

 

 

 英豪軍がギリシャ上陸。

 

 

 日米交渉開始  野村駐米大使とハル国務長官の会談。

 

 某学校

 いつもと違う雰囲気が漂っていた。

 軍事教官が学校に訪れても、いつもは軍管区から派遣される海軍将校だった。

 しかし、この日だけは、大本営直属の海軍将校が地方軍陸軍士官を追い出してしまう。

 そして、民間人らしい、怪しげな背広のおじさんが現れる。

 「さぁ みんな〜 これから、ちょっとした実験を始める」

 「我が日本魔法社が秘密裏に開発した。この杖を持って “ライト” と叫ぶんだ」

 「日本の未来がかかっているから真剣に集中してやるんだぞ〜」

 「「「「・・・・・・」」」」 し〜ん

 『嘘くせぇ』

 『良い大人が恥ずかしくないのかよ』

 『お腹空いた・・・』

 『バカか』

 『夢見てんのか、おっさん』

 『国防意識に欠けてんじゃないのか』

 「さぁ みんな、順番に一人ずつ、隣の教室に来るんだ」

 通路で大本営直属の海軍将校たちが監視する。

 “なんで少年なんだ?”

 “子供の方が生体エネルギーが強いんだと”

 “神通力、霊力は関係ないのか、修行者がいるだろう?”

 “さぁ 神社仏閣関連は最優先で調べるがね、いろんな可能性を試さないと・・・”

 “しかし、いくらなんでも14歳以上は、まずいだろう”

 “いや、14歳以下の低年齢は、もっと、もまずい”

 “とにかく杖は4本しかないのだ。呪文も、それぞれに、いくつかあるようだが・・・”

 “もっと、送ってくれれば良かったのに・・・”

 “そうだな。しかし、あっちの世界だと高価なモノじゃないのか”

 “あと、学校に通っていない者もしらみつぶしだ”

 “地主連中に御触れを出して、14歳以上の子供は、こっちに向かわせている”

 

 

 

 アメリカで武器貸与法が成立。

 

 

 松岡外相がソビエト経由で独伊訪問に出発する。

 

 

 時間外電報・慶弔電報の取扱い停止。

 ドイツがユーゴスラビアに最後通牒をする。

 英中軍事協定調印。

 

 

 

 モスクワで松岡外相とスターリンが会談する。

 ロンメル軍団がエル・アゲイラを奪回する。

 

 

 日独伊三国枢軸同盟にユーゴスラビア加盟。

 

 

 ユーゴスラビアで三国枢軸同盟加盟反対のデモが多発する。

 

 

 ベルリンで松岡外相とヒトラーが会談、日独伊ソ4国同盟案を提唱する。

 ユーゴスラビアでクーデター。

 反独政府は国王を追放し、三国枢軸同盟加入を取り消す。

 

 

 警察署により、 東京漁商組合が配給組織となる。

 

 

 アメリカは停泊中のドイツ、イタリア商船を押収する。

 

 

 東条英機陸相を批判した石原莞爾が現役を追われ予備役に編入。

 朝鮮総督府は、国民学校規定を公布し朝鮮語の学習を禁止する。

 ドイツがユーゴスラビアと断交。

 ロンメル軍がキレナイカのイギリス軍を駆逐する。

 

 

 04月

 尋常小学校が国民学校に改称。

 

 

 ロンメル将軍の独軍が北アフリカ戦線で英軍を撃破 ベンガジを占領

 

 

 ユーゴ・ソビエト不可侵条約が締結。

 

 

 ユーゴスラビアとソビエトが不可侵条約を調印

 ドイツ東欧諸国がユーゴスラビアとギリシャに侵攻

 イギリス軍がイタリア軍を撃退、アジスアベバ占領する。

 

 

 

 野村駐米大使が第1次日本案をハルに提出する。

 イギリス空軍がベルリン爆撃。

 

 

 クロアチアは、 枢軸側で民族国家樹立を宣言。

 

 

 

 ドイツ軍がベオグラードを占領。

 

 

 

 ドイツ・イタリア軍がエジプト侵攻、トゥブルクを包囲する。

 モスクワで日ソ中立条約調印。

 赤レンガの住人たち

 「日独伊同盟は、対ソ同盟だと思ったがな」

 「独ソ不可侵条約を結ばれたら、日ソ中立条約も仕方がないだろう」

 「何で、こう振り回されてしまうんだ」

 「対処能力が高いだけじゃダメなんだよ。状況を作り出す能力じゃないと」

 「あいにく日本は、想像力が評価されないよ。謀略もね」

 

 

 

 東京府が “肉なし日” の実施を決定する。

 

 

 ワシントンで日米交渉が開始。

 ドイツ空軍がロンドンに対して猛烈な無差別爆撃を加える。

 

 

 ユーゴスラビアがドイツ軍に降伏。国王ペタル2世と政府が亡命する。

 

 東部戦線 総督大本営ヴォルフスシャンツェ(狼の砦)

 ヒットラーは対ソ作戦が近いのか、時折、ここに訪れる。

 そして、この日、ドイツ海軍将官が呼ばれていた。

 “日米会談が開始された。最近の兆候から日本がアメリカと妥協する恐れがある”

 “ギュンター・リュッチェンス中将”

 “はっ”

 “残念ながら日本は輸送船撃沈より、戦艦撃沈に重きを置く傾向にある”

 “そこでだ。もし、イギリス戦艦部隊に捕捉された場合、通商破壊作戦を中止する”

 “果敢にイギリス戦艦を攻撃し、殲滅し、帰還せよ”

 “ハイル・ヒットラー” 敬礼

 

 

 

 ギリシャのゲオルギオス2世はクレタに逃亡。

 

 

 満州国政府と朝鮮総督府が “満鮮一体化” を宣言。

 テッサロニキでギリシャ軍がドイツ軍に降伏。

 

 ギリシャ降伏

 

 

 イギリス軍がギリシャから撤退。

 

 

 ドイツ軍がハルファヤ峠を占領する。

 

 

 ドイツ軍がアテネに入城する。

 

 

 リンドバーグがアメリカの参戦に反対し、軍籍を離脱する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 帆乃風 隼人 (ほのかぜ はやと) 14歳 AB型は、凧上げが好きな少年だった。

 親は右翼団体で羽振りが良かった。

 軍の威光を後ろ盾に他人の土地を二束三文で買い叩き、財閥や軍に納品している。

 お陰で人から恨まれ・・・きっと、呪われてるだろう。

 構成員の多くは、世間体から切り離された人種だった。

 右翼、ヤクザは同意であり、朝鮮人、あるいは同和で構成されていた。

 しがらみのないアウトローは、日本人から土地を奪うのに適任だった。

 右翼は、日本の権力構造と密接に絡み。

 法を背景としない暴力と恐怖で庶民を縛り付けていた。

 軍と組んだヤクザが道を塞ぎ、村人を出入りできないようにする。

 それだけで土地は殺される。

 警察に言っても国家のためと愛国心を押し付けられるだけだった。

 人々の視線が突き刺さる。

 畏敬とか、恐怖とか、媚びとか、羨むような。妬むような。蔑むような、

 そして、憎しみ、殺意が混じる。

 親兄弟、仲間は、人を苦しめ殺しながら豊かに生きていた。

 自分は他人から奪った財産で生まれ、育てられた。

 近代化するため、まとまった広い土地が必要で、資財と労働者が必要だった。

 法では年月がかかり、非合法でなければ強制立ち退きを行使し難い。

 全て理解しても、まっすぐに見るのは辛く、上を見るか下を見る。

 凧上げが好きなのも、そう言った現実を見たくないからといえた。

 “自由になりたい”

 「坊、そろそろ、家に戻りませんと」

 「うん」

 帆乃風 隼人は、どことなく、妖精っぽいとか、言われる。

 喉仏がほとんどなく、

 育った環境に反発してか女性的でさえある。

 慈愛染みた空気が好きだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 少女が学校からの帰宅していた。

 野伏裏 弥生 (のぶせり やよい) 14歳 O型

 「「「「ヨイっと巻け〜!!!」」」」

 十数人が縄を引いて、滑車で槌を持ち上げ、落として地固めをしていた。

 大きな工事も人海戦術で行い。大した収入にならない。

 大日本帝国は東洋随一の列強とか、機械化とか言われている。

 しかし、ごく一部の特権階級でしか恩恵を受けられない封建的な社会だった、

 町から少し離れると舗装されていない道が続き、上下水道もない。

 貧富の格差が広がって治安も悪くなる。

 日露戦争の負傷兵は満足な補償も得られず、よろよろと動き、

 コエタメから集めたモノを田畑に撒き、肥料にしていた。

 

 「父さん、ただいま」

 「お帰り、弥生」

 家族は、借金の取り立てから逃げるように新しい土地に居ついていた。

 借金があっても金はあるのだろう。

 生活水準は平均より高く・・・不思議な事があるものだ。

 父は、売れなさそうな。盆栽をいくつも育てていた。

 元々、江戸時代の下級武士が副業で盆栽を育てていたらしい。

 それは、それで正しいと言える。

 日本は小さい家屋が多く、盆栽は悪くないのだろう。

 それでも、力量不足と、世相のせいか、盆栽は売れなくなっている。

 価値があるのは現物で、食べ物だった。

 なのでインフレが進むと暮らしは悪化していく。

 「お父さん、仕事はなかったの?」

 「お父さんは、銀行家なんだよ。人から金を借りっぱなしで逃げるのが仕事なんだ」

 「どうして?」

 「だって銀行家は、そうだろう。金を借りて返さないじゃないか」

 「でも、返してって通帳を持っていけば、返すんじゃないの」

 「ちょっとだけ返すんだ。ちょっとだけね。そして、また借りて逃げるのが銀行なんだよ」

 「本当に?」 疑いの眼。

 「お、弥生。お父さんは間違った事を言ってないぞ」

 じ〜〜〜!

 「えっへん! これでも高校まで行って、銀行も務めたんだからな」

 「大日本帝国だって、やっているんだぞ。つまり間違っていない」

 「それなのに銀行辞めたんだ。なんで?」

 「そ、それはな・・・自分で銀行をやりたいと思ったからだよ」

 「ふ〜ん あの女の人は関係ないんだ」

 「ば、馬鹿だな。そんなはずないじゃないか、お父さんを疑うもんじゃないぞ・・・あはは・・」

 わたしが夢を追うようになったのは、現実に目を背けたかったからかもしれない。

 そう、血筋に不正なものを感じた時から世界が虚ろになった事を覚えていた。

 不正や腐敗は、人から理想や希望を奪う。

 それが先天的なモノであるほどモラルが崩れていく。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 不知火 剛太 (しらぬい ごうた) 14歳は、農家の息子でメンコ収集オタクだった。

 厚紙を集め油で押し堅めて乾燥させる、

 この時、色模様を工夫して染み込ませていく。

 これをお金持ちの子供の持つメンコと交換し、印刷されたメンコを収集して喜んでいた。

 量産された紙材質の悪い稚拙な印刷のメンコ。

 手制でありながら、手間暇と色具合を掛けた一品。

 比べると取引で損していた。

 とはいえ、少年は自分で作れるメンコより、売られているメンコが嬉しかったのである。

 「剛太! 早く地主様の田畑を手伝いに行きな」

 「うん、わかった」

 ため息をつきながらいつものように地主のところに行く。

 「地主様〜」

 「ああ、剛太か、今年も来たね。よろしく頼むよ」

 「はい」

 クワを借りる。

 農具も田畑も全て地主の物だ。

 左団扇の地主の田畑を耕し、田植え、刈る。

 そうしなければ生きていけない小作人の子供だった。

 勉強は、小学校を卒業すると、お終い。

 もっとも、小学校さえ、まともに行けず、九九も半分しか知らない。

 知識レベルも低いまま、大人になっていく。

 2期作、2毛作が作れるなら、もっと食べられるだろう。

 しかし、東北だと厳しい。

 親でさえ、自分の物はなく。

 子供である自分が自分のモノと言えるのは、集めたメンコだけだった。

 この日本で拠り所のない小作人が生きていく道は少なかった。

 学もなく後ろ盾もない貧乏人と、小作人が唯一成功する道は、一つ。

 女は、奉公に出て、運が良ければ、お金持ちの玉の輿。

 男は、軍人になって戦争し、戦績を上げること。

 下級兵士どころか、下士官でさえ出世できなければ老後は悲惨だった。

 そして、戦争の足音が忍び寄っていることが分かる。

 一人っ子でも小作人の息子は、戦況次第、いなくても代わりがいた。

 簡単に徴兵されると思うと物悲しい。

 日清日露の話しは聞いており、戦地で生き残る可能性は限りなく小さい。

 徴兵されると母親の面倒は見れなくなる。

 自分が外地で戦死すれば母親は、自動的に無縁仏が決定する。

 この世から血統が絶え、生きた証も消える。

 血筋さえ残せれば浮かぶ瀬もあるかもしれない、

 しかし、御上は、小作人の血筋が失われようと、どうでもいいのだろう。

 日本は、戦争に傾いて行く。

 下士官以下にとっては、命を対価にして宝くじを買うようなもので、投機だった。

 金があれば、夢を賭け、宝くじを買うだろう。

 後ろ盾も学もなく、能力も実力もない小作人は、その程度の命でしかなく。

 戦功で出世しようと願う者も少なくない。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 呉

 「有紀、この酒を松の間に」

 「はい」

 水無月 有紀 (みなづき ゆうき) 14歳 

 奉公で料亭に働きに出されていた。

 高給将校が入り浸って金回りが良く。

 学校に行かせてもらっている幸運なメガネ子才女。

 もっとも主人と女将の目を見ると、幸運と言えないとわかる。

 そのうち、有力者か、高級軍人の貢物にされ、何かの特典と取引されるだろう。

 わかっていることだ。

 そうでなければ、誰が奉公の娘を学校に行かせたりするものか。

 “俺は、言った・・・”

 松の間、襖の向こうから声が聞こえる。

 「酒をお持ちいたしました」

 “おお、来たか、運んでくれ”

 「はい」

 襖を開けて一礼し、食事を運び込む

 「・・・だから言ったんだよ。我が海軍航空部隊は、決して負けないとね」

 「そうかね。俺には、無理な作戦で燃料切れ」

 「パイロットが鮫に追いかけられている光景が目に浮かぶね」

 「まぁ 上官の資質に疑いは持つがイザ戦闘になれば勝てる」

 「だいたい、正面戦力はともかく、食料、燃料、弾がなけりゃ戦えんからな」

 「アレだけ削減されたらどうにもならんわ。上層部のへっぴり腰が・・・」

 「それがな。どうも秘密兵器があるらしくてな」

 「本当に?」

 「まぁ 詳しくは、わからんがな・・・あ、もう良いよ」

 「はい、失礼します」

 国家権力を嵩に着た海軍将兵が肩で風を切って、歩いて行く。

 弾が避け、自分だけが戦功を上げ、出世できると思い込んでいる主人公たち。

 一握りの精鋭が燃料と弾薬を奪って訓練し、自信過剰な夢を見ていた。

 精鋭以外は標準以下の訓練しかできず、卑屈に従っていく。

 外国の慰安婦、強制徴収、強制労働・・・

 どうでもいいことだった。

 問題は、国内。

 軍人と軍属の強盗・恐喝、障害・暴行・殺人は、後を絶たず。

 自殺、病死、野垂れ死になど、枚挙のいとまもない。

 軍人の不祥事を告発しても揉み消される、

 それどころか、逆に弾圧され、

 下手をすれば闇から闇へ追い詰められ野垂れ死んでいく、

 日本で特高は珍しくなく、隣組で相互監視し合い、密告が奨励され、

 不敬が発覚すれば村八分。

 二分の付き合いは火事と葬式だけ、

 死ぬまでいびり抜かれた生き地獄で、最終的に村全体で私財が分配されてしまう。

 『楽になりたかったら火事で無理心中か、死ねってことね』

 『そういえば火事も多い』

 少女は冷静に呟く。

 「有紀、次は、桜の間にお出しして」

 「はい」

 隣組同士で疑心暗鬼。

 言論、会合、思想、宗教の自由を奪われる。

 見ザル言わザル聞かザルが処世術の基本だった。

 国家防衛という大義名分で警察は、軍人の家来と化し、国民生活を疲弊させている。

 住民たちは国家権力を背景にした暴力に戦々恐々と生活する。

 国家予算の多くが軍人と軍属から流れ、軍人に生活を依存しなければ生きていけない。

 「愛憎とは、こういう事をいうのよね」

 「誰もが本当のことを言えず馬鹿の振り。死んだように生きて、本当に死んでいく」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 05月

 イラクでラシュッド・ガイラニの反英反乱が起こる。

 

 

 イギリス軍が、イタリア軍占領下のエチオピアを解放する。

 

 

 イギリス軍部隊がイラク軍を撃破してバグダッドに進軍を始める。

 

 

 医師会が全国の無医村は1500余りと発表する。

 

 

 アメリカが中国に武器貸与法を適用する。

 

 

 ドイツ空軍がロンドン市内を爆撃。

 ドイツ帝国副総統ルドルフ・ヘスがメッサー・シュミット110Dでアウグスブルクを飛び立ち、

 スコットランドにパラシュートで降下する。

 

 

 野村駐米大使がハル国務長官に修正案を提出する。

 

 

 フランスでレジスタンス国民解放戦線が結成される。

 クロアチア王国が樹立される。

 

 

 情報局が総合雑誌の編集企画案と執筆予定者リストの事前提出を通達する。

 

 

 ドイツ軍がクレタ島に空艇部隊を降下させる。

 

 

 農林省が家庭用米の外米混入率を63%に増量する。

 

 

 北大西洋

 大口径砲弾が降り注いで海面叩き、

 吹き上がる海水が雨となって落ち、辺りに靄を作った。

 戦艦ビスマルク 艦橋

 「捕捉されたか・・・」

 巡洋戦艦フッドの381mm砲弾が23000mの距離を飛び、壮大に海水を吹き上げる。

 「長官、攻撃すべきです」

 「・・・・」

 「長官!」

 「T字戦をとる。全力で反撃せよ」

 「はっ」

 彼我の戦闘力差は、2対2だった。

 イギリス艦隊は南方から迫ってくる。

 

 46000トン級ドイツ戦艦ビスマルク         47口径381mm連装4基8門。

 15000トン級ドイツ重巡洋艦プリンツ・オイゲン  60口径203mm連装4基8門。

                   VS

    42700トン級イギリス戦艦フッド            42口径381mm連装4基8門。

    38000トン級イギリス戦艦プリンスオブウェールズ 45口径356mm4連装2基+連装1基10門。

 

 戦艦比は1対2。

 ビスマルクが不利だった。

 しかし、T字戦で戦えるのなら状況が変わる。

 ビスマルクは主砲8門全て使用できた。

 イギリス戦艦部隊は、ビスマルクを追い詰めなければならず、

 艦首砲塔だけフッド4門とウェールズ6門でほぼ砲力が拮抗する。

 ビスマルクが緒戦で先制ヒットできれば、平行戦に移行しても互角に戦う事が出来た。

 双方の大口径砲弾が敵艦に向かって降り注ぎ、海水を派手に吹き上げる。

 「フッドに集中せよ」

 ビスマルクの5斉射目、

 17000m離れたフッドに吸い込まれるように砲弾が直撃する。

 炸裂、閃光、爆音、衝撃波を押し広げながら・・・

 艦体を真っ二つに圧し折り轟沈していく。

 ドイツとイギリスの将兵は絶句、しばし、呆然。

 「・・・プリンス・オブ・ウェールズに砲撃を集中させよ。追撃する」

 「はっ!」

 形勢が逆転しつつあった。

 ビスマルクとプリンスオブウェールズは、3発ずつ砲弾が命中していた。

 とはいえ、47口径381mm砲弾3発と45口径356mm砲弾3発は破壊力が違う。

 46000トン級ビスマルクと、38000トン級プリンスオブウェールズの受けるダメージの大きさも違う。

 ビスマルクは2000トンが浸水し、

 プリンス・オブ・ウェールズは、司令塔が破壊され、指揮系統が混乱していた。

 重巡プリンツ・オイゲンの支援砲撃がプリンスオブウェールズに命中し、

 ビスマルクは明かに有利だった。

 プリンス・オブ・ウェールズは、接近する重巡プリンツ・オイゲンに反撃できず。

 ビスマルクの艦首主砲4門とプリンセスオブウェールズの艦尾主砲4門が火を噴く。

 プリンセス・オブ・ウェールズは、左舷側に傾き。

 ビスマルクの12斉射がプリンセンス・オブ・ウェールズを襲う。

 381mm砲弾2発がプリンセスオブウェールズに命中すると紅蓮と黒煙を盛大に巻き上げ、

 誘爆しながら沈んでいく。

 「長官、ソードフィッシュです」

 「帰還する。逃げるぞ」

 戦艦ビスマルクと重巡プリンツ・オイゲンは、イギリス空母に空襲されながらノルウェーに帰還する。

 

 

 ルーズベルト大統領が国家非常事態・臨戦体制を宣言する。

 

 

 イギリス軍がクレタ島から撤退。

 

 

 神戸市滞在の亡命ユダヤ人が中東に向けて神戸を出港する。

 

 

 イギリス軍がイラクのラシュッド・アリー軍を鎮圧。バグダッドを占領する。

 

 少年2人、少女2人の4人が選抜された。

 風系統 帆乃風 隼人 (ほのかぜ はやと) 14歳 AB型 凧上げが好き

   「い、いや、軍の慰安婦なんて、いや〜」 しくしく

   「それ、いろんな意味で違うから」 軍のおじさん

 

 土系統 野伏裏 弥生 (のぶせり やよい) 14歳 O型 夢想家

   「・・・アジサイの冬美がね、夢は大切なんだって」

   「それでね、キャベツの青菜がね、平和が良いなって・・・」

   「・・・その話しはいつまで続くのかな」 軍のおじさん

 

 火系統 不知火 剛太 (しらぬい ごうた) 14歳 B型 メンコ収集オタク

   「ぼ、僕は、甲種、無理です。お、お腹が痛い・・・げぇえええ〜」

   「・・・醬醤油かよ」 軍のおじさん

 

 水系統 水無月 有紀 (みなづき ゆうき) 14歳 A型 才女・メガネ

   「お腹一杯食べさせてくれるなら、何でもする」

   「ありがとう。実に堅実、且つ、一般的な要求で、おじさん、感動したよ」 軍のおじさん

 

 兵舎

 「・・・揃いも揃って、ガキばかりか」

 「適格者の中で、あの4人が一番まともだ。泣きたいよ」

 「日本で高等教育を受けている人間は少ないよ」

 「中学・高等女子学校生114万人。高校生16万人。大学生8万人」

 「日本人の大半は中学以下のレベルだ。総力戦などおこがましい」

 「そう言えば、教育費切り崩して、軍事費で取ったっけ、馬鹿ばっかりだな」

 「学校に行っても奉公や農作業ばかりで、まとも勉強していやつなんかいるものか」

 「ふ まだ、青っぱな垂れていないだけマシのようだ」

 「結核にならないように食べさせておけよ」

 「しかし、予備を入れて20人か」

 「まぁ 日本民族は7500万。20人くらいの適格者がいるだろう」

 「客観的にみると人生の不適格者な気がするが」

 「20人とも魔法系列と血液型が一致しているのは偶然なのか?」

 「さぁ〜」

 「生体電気とは?」

 「杖は、機械的な発電は受け付けない、生体電気だけを吸収する、ようわからん」

 「優秀な4人でローテーションを組めばやっていけるだろう」

 「優秀?」

 「あ、適格者」

 「しかし、いまのところ、モノを持ち上げたり、鍵を開けたりだ。戦争の役に立つのか?」

 「水系統は、医療、精油関係」

 「火系統は、製鉄か、他と協力するサポータかな」

 「土系統は、農業、精錬関係」

 「風系統は、通信、索敵で優れているらしい」

 「しかし・・・この規模の魔業で、第三次産業革命は遠くないか」

 「そういうな。せっかく欧米列強に対抗しうるインチキ駒を見つけたんだ。切っ掛けになる」

 「まぁな」

 

 

 06月

 ゾルゲがドイツのソビエト攻撃が6月15日であると打電する。

 ドイツ軍がクレタ島を占領する。

 

 

 ヒトラーが大島大使に独ソ開戦は不可避と通告する。

 

 

 元ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がオランダで没

 イラクでヌーリー・サイードが親英政府を樹立する。

 

 

 イギリス連邦軍と自由フランス軍がシリア、レバノンに侵攻する。

 

 

 イギリス軍がシリアに進攻。

 ドイツ歩兵師団がフィンランド上陸。

 

 

 日ソ通商協定・貿易協定が成立する。

 

 

 ルーズベルト大統領が独伊の在米資産凍結を命令する。

 

 

 クロアチアが日独伊3国同盟に加盟する。

 

 

 ルーズベルト大統領がドイツ領事館に閉鎖命令を出す。

 

 

 ドイツとトルコが友好不可侵条約に調印する。

 

 

 自由フランス軍がマダガスカスを占領する。

 

 

 バルバロッサ作戦

 ドイツ軍が宣戦布告なしにソビエトに侵攻

 赤レンガの住人たち

 「なんてこった。日ソ中立条約を結んでから、ドイツは対ソ侵攻だと」

 「まったく、ドイツの国際信義は滅茶苦茶だな」

 「付き合いきれんな」

 「それはともかく、中立条約を守るのか」

 「アメリカには、日独伊同盟を攻撃された場合に限定されたモノと伝えている」

 「それに日米交渉の真っ最中だ」

 「やれやれ、アメリカに時間稼ぎされているんじゃないか」

 「それはあるかもしれないな」

 ドイツ軍はバルト3国を占領する。

 イギリスのチャーチル首相がラジオ放送でソビエトを同盟国と呼び、

 ソビエト援助を明らかにする。

 イタリア、ルーマニアが対ソ宣戦布告する。

 

 

 アメリカのルーズベルト大統領がソビエトへの援助を約束する。

 

 

 フィンランドがソビエトに宣戦布告する。

 

 

 ハンガリーがソビエトに対して宣戦布告

 チトーがパルチザンを組織し、ドイツ軍に対するゲリラ戦を開始

 

 

 ドイツ軍がミンスクを占領する。

 

 

 

 ドイツが日本に対ソ参戦を申入れ、日本は拒否

 ソビエトが、国家防衛委員会を設立する。

 

 07月

 御前会議

 「このままではまずいのではないか?」

 海軍軍令部総長 永野修身大将が立つ。

 「・・・帝国は各般の方面において物が減りつつあり、すなわち痩せつつあり」

 「これに反し敵側は、段々強くなりつつあり。時を経れば帝国はいよいよやせて足腰立たぬ」

 「また外交で忍ぶ限りは忍ぶが、適当の時機に見込みをつけねばならぬ」

 「到底外交の見込みなき時、戦を避け得ざる時になれば早く決意を要する」

 「今なれば戦勝のチャンスあることを確信するも、この機は時と共になくなるを虞れる」

 「戦争については海軍は長期短期二様に考える。多分長期になると思う」

 「従って長期の覚悟が必要だ」

 「敵が速戦即決に来ることは希望する所にして、その場合は我近海において決戦をやり」

 「相当の勝算があると見込んで居る」

 「しかし戦争は、それで終わるとは思わぬ、長期戦となるべし」

 「この場合も戦勝の成果を利用し、長期戦に対応するが有利と思う」

 「これに反し決戦なく長期戦となれば苦痛だ」

 「特に物資が欠乏するので之を獲得せざれば長期戦は成立せず」

 「物資を取ることと戦略要点を取ることにより、不敗の備をなすことが大切だ」

 「敵に王手と行く手段はない」

 「しかし、王手がないとしても、国際情勢の変化により取るべき手段はあるだろう」

 「要するに国軍としては、非常に窮境に陥らぬ立場に立つこと」

 「また開戦時機を我方で定め、先制を占める外なし」

 「これによって勇往邁進する以外に手がない」

 海軍軍令部総長 永野修身大将が応える。

 「だが、日本が足腰の立たなくなったのは、無理な軍事費であろう」 ポツリ

 「ぅ・・・」

 「永野・・・戦うと日本が滅ぶのではないか?」

 「戦わざれば亡国。戦うもまた亡国につながるやもしれぬ」

 「しかし、戦わずして国滅びた場合は魂まで失った真の亡国である」

 「しかして、最後の一兵まで戦うことによってのみ、死中に活路を見出だしうるであろう」

 「戦ってよしんば勝たずとも護国に徹した日本精神さえ残れば、われ等の子孫は再起三起するであろう」

 「そして、いったん戦争と決定せられた場合・・・」

 「われ等軍人は、ただただ大命一下戦いに赴くのみである」

 海軍軍令部総長 永野修身大将が応える。

 『絶対に戦争と決定していやらん・・・』

 「杉山・・・汝は支那事変勃発当時の陸相であるが」

 「あのとき事変は1ヶ月程度で片付くと申したのに今になっても終わっていないではないか」

 「し、支那は奥地が広うございますので・・・」

 「支那の奥地が広いというなら太平洋はなお広いではないか」

 「国軍は尚余力を有し志気も旺盛なれば、なおも抗戦してアメリカ軍を断乎撃攘すべき」

 陸軍参謀総長 杉山元大将が応える。

 「しかし、アレの海軍独占は、困る」

 「海軍だけで使うつもりはない、飛行船型を検討しており、対米対ソ両用だ」

 「陸海軍で半分に分けるべきだ」

 「機密保持に付き断る」

 「「・・・・・」」 殺意

 

 

 スターリンが独ソ戦を大祖国戦争と規定し、パルチザン戦をラジオで呼びかける。

 

 

 ドイツ軍がソビエトのスターリン防衛線を突破する。

 

 

 朝日新聞が用紙節約のため夕刊を2ページとする。

 

 アメリカ=アイスランド防衛協定 アメリカ軍がアイスランドに進駐する。

 

 

 フランスのペタン政府が国民革命を宣言する。

 アメリカの暗号解読室が、2日の帝国国策要綱の解読に成功する。

 

 

 ドイツ軍がミンスクを占領する。

 

 

 イギリス・ソビエト VS ドイツ・イタリアの欧州大戦は続き。

 日本とアメリカは、まだ、蚊帳の外で居続けた。

 

 御前会議で日本はソビエトに攻撃しないと、ゾルゲからスターリンに届く。

 

 関門海底鉄道トンネルが貫通する。

 

 

 英ソ相互援助協定が調印される。

 

 

 イギリスと自由フランス政府にシリア全土が引き渡される。

 

 多連続ロケット発射機カチューシャが初めて実戦で使用される。

 

 

 近衛首相と松岡外相が日米了解案をめぐり対立する。

 

 

 第2次近衛文麿内閣。

 対ソ政策・対米交渉の不一致で総辞職する。

 「陸軍は、アレの半分を得るまで陸軍大臣を内閣に出さない」

 「「「・・・・・」」」 殺意

 

 

 戦艦 長門 艦橋

 海軍は、飛行石を陸軍に渡したくないため、長門の中に保管していた。

 そして、陸軍の魔法力強奪の度重なる圧力に対し、

 海軍首脳部は陸軍に対する殺意を高めていた。

 「それでは・・・」

 「やるしかあるまい」

 「大丈夫だろうか?」

 「やるしかありません」

 「皇国の財政を破綻させるほど増長し、恐れ多くも陛下を蔑にし、臣民の生活を脅かし」

 「国難の時に至っても、保身に明け暮れ、政治権力を欲しいまま地位と権力に慢心し」

 『永野ぉ お前が言うなよ』

 「日本が敗北するという正確な情報があるにもかかわらず、自らの過ちを認めず・・・」

 『お、お前のことだろう』

 「己の権力を得んがため、大日本帝国を戦争に駆り立てるような単細胞馬鹿を認めてはなりません」

 『ていうか、同類だろう』

 「こと、この局難に至っても、地位と新たな権勢を求め大臣を出さないなど不忠極まれり」

 『それは言えるが・・・』

 「あのような外道の輩が、この国難に当たって、日本国の国策を誤らせている元凶です」

 「陛下、次第です」

 「・・・そうか、ではそうしよう」

 「分かりました」

 艦橋には天皇もいた。

 日本の権力構造は、むかしから天皇を保護している側が勝った。

 

 

 

 アメリカ軍がアイスランドを占領する。

 

 国会に向かって、記者たちが走っていく。

 「邪馬ぁ お前の寝坊のせいで遅れたんだぞ。早く来いよ」

 「は、は〜い」

 17、8歳くらいの娘が機材を持って走る。

 「ったくぅ〜 紹介されてなかったら、お前なんか雇ってなかったぞ」

 「す、済みません」

 「おっ 始まってる」

 国会議事堂前に近衛首相が立ち、マスコミが集まっていた。

 「陸軍が大臣選出を渋っていると聞きましたが?」

 「・・・陛下の勅命により、大日本帝国は、陸軍大臣を公募する」

 「我は陸軍大臣足らんと思う者は手を上げよ」 近衛文麿

 「「「「「「・・・・・」」」」」」

 ・・・・絶句・・・・

 『大臣の、現役制度は?』 記者

 『い、いや、というか、殺されるぞ』 記者

 『へ、陛下の勅命って・・・』 記者

 『この大変な時に第3次軍事クーデター事件かよ』 記者

 し〜〜〜〜ん!

 「はい!」

 ぴょん! 

 「はい!」

 ぴょん! 

 「あっ 馬鹿!」

 「はい! はい! わたし、わたし、陸軍大臣なりま〜す」 女の子

 ぴょん! ぴょん! ぴょん!

 「き、君名前は?」

 「はい、××新聞社でアシスタントをしてま〜す! 邪馬ひみこ 18歳です!」 敬礼!

 「!? はい! 君、陸軍大臣、決定!」 近衛首相

 「えっ!」

 ばしゃ!  ばしゃ!  ばしゃ!  ばしゃ! 

 新聞各社で一斉に近衛首相が陸軍大臣を民間から選出したと報道。

 

 その夜、陸軍部隊が総理大臣宅向った時、

 近衛邸宅は、もぬけの殻となってた。

 邸宅

 「総理。き、来ました。陸戦隊です」 使用人

 “そ、そうか。ありがとう、感謝する”

 「はっ!」 敬礼

 東京湾 戦艦長門

 その夜、長門の50口径140mm副砲が火を噴いた。

 砲弾は大気を切り裂きながら10kmほど飛び、

 千代田区(永田町)三宅坂の陸軍省参謀本部を吹き飛ばしてしまう。

 東京湾で砲声が轟いていた。

 長門艦橋

 「三宅坂を完全に破壊するまで撃ち込め」

 「はっ!」

 「近衛邸に向かった海軍陸戦隊は、陸軍将兵を逮捕せよ」

 「永野。これで良かったのかね」 陛下

 「仕方がありません、この緊急時に陸軍大臣を出さないなど逆賊です」 永野

 「しかし・・・この娘・・・」

 「縁起の良い名前なので問題ないでしょう」 近衛

 「・・・・・」 恐縮

 「・・・海軍としては好都合ですな」

 ××新聞社のアシスタントをしていた邪馬ひみこは、陸軍大臣を冗談だと思っていた。 

 天皇は、危急かつ重大時に陸軍大臣を選出せず。

 総理の選出した陸軍大臣に異を唱えるは逆賊行為と陸軍を処断。

 今後、長門を逆賊陸軍が降伏するまで大本営とすると宣言。

 陸軍省参謀本部が破壊され、

 陸軍は、大義名分を失ってバラバラにされ、急速に力を失っていく。

 

 

 

 第3次近衛文麿内閣成立。

 山本国防大臣が陸海軍を統括

 永野修身海軍局長

 邪馬ひみこ陸軍局長(役職中のみ 大将)

 豊田海軍大将が外相となる。

 「陸軍の縮小ですか?」

 「ここにサインを・・・」 山本国防大臣

 「はい♪ お仕事、お仕事・・・」 ひみこ

 書き、書き、書き

 『アホな女でよかったよ〜』 山本国防大臣 つぅー 涙

 『神様、ありがとう。永年の苦労がようやく報われました』 永野海軍局長 つぅー 涙

 「!? どうしました?」

 「い、いや、君の仕事ぶりに感動したよ」 涙々

 「うんうん」 涙々

 「そんなぁ 照れますぅ〜」

 「「君は、間違いなく昭和の大和撫子だ」」

 「きゃっ♪」

 日本帝国は、陸軍を弱体化させ、

 中国大陸からの撤収を前提としてアメリカと交渉すると宣言。

 大本営 長門

 「陸軍は、大本営 長門に恭順、中国から撤収するそうです」

 「やれやれ、アメリカの犬ポチとか散々言われてきたが、これまでか」

 「陸軍の大陸撤退と道連れなら本望では?」

 「陸軍は、まだ、あの魔法を手に入れたがっているようだ」

 「懲りないですな。しかし、良いのですか安請け合いして?」

 「異世界があるかなんて、わかるまい。それより大陸撤収だよ」

 「公共投資で内需需要は良いようですが必要な資本と資源は・・・」

 「金本位制を捨てた円は海外で紙くず。あとは、米内に任せたよ」

 

 

 

 ドイツ軍がスモレンスクを占領する。

 

 

 要人暗殺の拳銃が永田町に響いた。

 新聞各社が号外を刷り出し、巷を賑わせていた。

 “陸軍局長 邪馬ひみこ 銃撃距離5メートルで襲撃さる”

 “奇跡の無傷生還、蘇る巫女伝説”

 一面を飾った見出しは、日本国民全体に神託として認識される。

 “なぜ、弾が外れたのかしら?” 邪馬陸軍局長の談話

 日本人全体が奇跡の巫女陸軍局長に萌え上がる。

 

 

 

 日・仏印防衛協定成立。

 ドイツ空軍がモスクワを爆撃。

 

 

 アメリカの大統領が中国空軍援助を承認。

 

 

 マッカーサーがアメリカ極東軍総司令官に任命。

 

 08月

 アメリカとソビエトの経済援助協定が調印、計107億ドルの対ソ武器・経済援助を決定。

 

 

 非常時の食糧確保が目的で中央食糧協力会設立。

 

 

 結核患者が激増、厚生省が工場労働者15万人の半強制的検診を決める。

 

 

 ソビエト空軍がベルリンを空襲する。

 

 

 タイが中立宣言。

 

 

 チャーチルとルーズベルトの大西洋上の会談が始まる。

 

 

 鉄道省がガソリン節約のため車の運転を削減する。

 

 千代田区(永田町)三宅坂

 陸軍省参謀本部跡地は、残骸が残されていた。

 邪馬ひみこ陸軍局長(役職 大将)は、陸軍将校、新聞記者を率いて跡地を見学。

 「奸ぞ〜く〜!! て〜ん〜ち〜ゅ〜う〜〜!!!!」

 「・・・・」 ぼんやり

 十四年式拳銃を持った右翼青年が邪馬ひみこを襲撃。

 ば〜ん! ば〜ん! ば〜ん! ば〜ん!

 ば〜ん! ば〜ん! ば〜ん! ば〜ん!

 10mほどの距離にもかかわらず、すべて外れ、

 へたり込んだ右翼青年は、将校たちに取り押さえられた。

 「えっ えっ な、なんで、なんで、わたし、銃で撃たれるの? なんで?」

 「「「「「・・・・・」」」」」 しら〜〜〜

 杖を持った4人の魔法使いたちが離れた場所で見ていた。

 「拳銃って簡単に軌道が変わるんだ」 野伏裏

 「ああ、全部、頭上を越えていった」 不知火

 「これで終わりかな」 海軍将校

 「終わりだね」 帆乃風

 「でも・・・バカな女・・・」 水無月 ぼそ

 

 

 

 東京湾沿岸住民3万人のコレラ予防接種を開始する。

 

 

 ドイツ軍がオデッサを包囲する。

 ビシー・フランス政府ペタン主席がドイツに全面協力の声明を出す。

 

 

 ルーズベルトとチャーチルが米英共同宣言の大西洋憲章を発表。

 

 

 映画の国家管理が決定され、製作中の娯楽映画が製作中止になる。

 

 

 野村駐米大使とルーズベルト大統領の会談。

 

 

 イギリスで国民消防隊が結成される。

 中国大陸から日本軍の撤収が始まる。

 豊田外相が日米首脳会談をグルー駐日米大使に要請。

 「本当に大陸利権を?」

 「はい・・・」

 

 

 

 ドイツ軍がレニングラードまで20キロの地点まで迫る。

 ヒトラーがモスクワ進撃を中止しクリミア半島占領を命令する。

 

 

 ソビエト軍がカレリア地峡を撤退する。

 

 

 イギリス・ソビエト両軍がイランへの進出を開始する。

 カンボジアのシアヌーク国王(18)が日本への忠誠を発表する。

 

 

 ドイツ軍がドニエプル・ペトロフスクを占領する。

 ソビエト軍がテヘランを爆撃する。

 

 

 ドイツ軍がドニエプルを渡河する。

 

 

 野村大使がルーズベルト大統領に日米首脳会談を申し入れる。

 イラン、アリ・フルギ政府が成立する。

 

 

 住宅営団が傷痍軍人を管理人として採用する。

 

 

 金属回収令が公布される。

 

 09月

 ドイツ領内のユダヤ人に “ダヴィデの星” 標識着用を義務付ける。

 

 

 ポーランド・アウシュヴィッツ収容所、

 ユダヤ人とソビエト兵捕虜の毒ガス処刑が始まる。

 

 

 アメリカが日米首脳会談を承認。

 首相官邸

 「首脳会談承認で紙一重か、危なく退陣だったよ」

 「まったくもって、冷や冷やです」

 「くっそぉ 人の気も知らんで、あの穀潰しどもが戦争で死ねばいいんだ」

 「国を守る事と軍組織を守ることは、違いますからね」

 「軍組織は国を守る手段だよ」

 「戦国時代じゃあるまいし、下剋上しやがって、馬鹿どもが」

 近衛文麿内閣は、軍部の異世界魔法への関心、

 そして、日米首脳会談の開催で救われたと言えた。

 大本営は、魔法資源を狙って陸軍急進派を押さえているであり。

 対米英戦争は、どうしても避けたかった。

 さらに危険な動きを見せようとする陸軍縮小で保身を固め始める。

 「陸軍は、どうすると?」

 「邪馬ひみこ陸軍局長に従い。満州の妥協も容認すると」

 「結構な話しだ」

 「その代り・・・」

 「例の世界だな」

 「まぁ 国防省が妥協してくれるのなら、異世界がどうなろうと知ったことじゃないがね」

 「一時は、山本大臣の賭けで戦争が始まるかと思いましたがね」

 「いくら山本大臣が賭けに強くても、紙幣を印刷してる世界の元締めと賭けで勝てるわけがない」

 「結局、田舎ヤクザは、地元から出るなってことですかね」

 「シマが増えても有力者の懐が膨らむだけ、国民の税は軍事費に吸い上げられるだけだ」

 「シマを明け渡したからって、国民の困窮が変わるわけじゃないからね」

 「有力者が貧富の格差を望んでいるのだ。そう簡単に国民が豊かになれるわけがない」

 

 

 ワシントン 白い家

 「日本は、アメリカが支配を望んでいるのであり、戦争や侵略を望んでいない事に気付いたかな」

 「問題は、どこまで日本から譲歩を引き出せるかだが・・・」

 「しかし、日本は意外とすんなり、こっちの思惑に乗ってくる。気持ちが悪いほどだ」

 「日本は、大陸に依存しなければ生きていけない」

 「日本の牙を取り除いたのち、アメリカが日本の国力を調整できるのなら目的を達成できる」

 「我々が日本の工業力を高めたのち、飢餓状態にすれば、いいように操ることができるだろう」

 「日本人がアメリカ合衆国のために働いてくれるのであれば生かしとくよ」

 「日本の統治方式で “生かさず、殺さず” って奴だな」

 「そんな野蛮なものか、我々は “寝かせず、休ませず” くらいだよ」

 「「「「あははは・・・」」」」

 

 

 

 御前会議

 「時機を逸して数年の後に自滅するか、それとも今のうちに国運を引き戻すか」

 「医師の手術を例に申上げれば・・・」

 「まだ、七、八分の見込みがあるうちに最後の決心をしなければなりませぬ」

 「相当の心配はあっても、この大病を治すには大決心を以て国難排除を決意する外はない」

 「思い切るときは思い切らねばならぬと思います」

 「絶対に勝てるのかね?」

 「絶対とは申し兼ねます」

 「事は単に人の力だけでなく、天の力もあり、算があればやらなければなりませぬ」

 「必ず勝つかときかれても奉答出来かねますが、全力を尽くして邁進する外はなかるべし」

 「外交で対米妥結といっても、一年や二年限りの平和では駄目で」

 「少くも十年、二十年でなければなりませぬ」

 「一年や二年の平和では、第一国民が失望落胆すべし」

 軍令部総長の永野修身大将が応える

 「しかし、永野・・・陸軍を復活させるのかね・・・」

 「あっ・・・・」

 視線が集まる

 「はい?」 ひみこ

 「「「「・・・・・」」」」

 御前会議で対米非戦の帝国国策遂行要綱を決定する。

 日本陸軍局の総数は18個師団となっていた。

 

 ソビエト軍がイェルニャを奪回する。

 エジプトへ向かうアメリカの商船が紅海でドイツ軍機に撃沈される。

 

 

 ドイツ軍がレニングラードを包囲する。

 

 

 イギリスとソビエトが協定を結び、南部イランをイギリス、北部イランをソビエトの占領地域とする。

 

 

 農林省が魚介177種の新公定価格を決定する。

 ドイツ空軍がレニングラードを爆撃する。

 

 

 アメリカ大統領は、アメリカ海軍が護衛する船に脅威を与える敵を攻撃すると言明。

 

 

 ヒトラーが機甲部隊をモスクワ攻略に転換させる。

 

 

 ゾルゲは、日本の対ソ攻撃はないと報告。

 スターリンは極東ソビエト軍をドイツに向ける。

 

 

 イランで、レザー・シャーが退位し、ムハンマド・レザーが即位する。

 ド・ゴール・自由フランス政府がシリア独立を宣言。

 山陽本線の網干駅

 「危なく接触するところだったよ」

 「インフラ整備が不足気味でしたからね」

 「赤紙で引っ張られていたら、間違いなく事故だったよ」

 

 

 

 ドイツ軍がキエフを陥落。

 

 

 ロンドン、シャルル・ド・ゴールのフランス・レジスタンス国民会議(自由フランス)創設される。

 イギリス、フランスなど15ヵ国が大西洋憲章参加を表明する。

 

 

 モスクワでアメリカ、イギリス、ソビエト3国の会談が始まる。

 

 

 ドイツ軍がモスクワ攻略作戦を開始する。

 

 10月

 モスクワで対ソ援助のための米英ソ議定書が調印される。

 ドイツでユダヤ人の国外移住が禁止される。

 

 

 アメリカが日本に対して強硬な「覚書」を提示する。

 ドイツ軍がモスクワ大攻撃を開始する(台風作戦)。

 

 

 ゾルゲは、日米開戦の可能性が低下していると報告。

 

 

 山口県厚東川ダム工事現場で朝鮮人労働者330人が待遇改善を要求、一斉罷業に入る。

 

 

 農林省が芋類の増産と桑園の整理を通牒する。

 イギリスが貸与条項によりソビエトへの物資供給を決定する。

 

 

 ソビエト政府がモスクワの女性と子供を疎開させる。

 

 

 近衛別邸

 対米和戦会議が開かれていた、

 邪馬ひみこは “平和が良い” と。

 「・・・しかし、邪馬陸軍局長。アメリカは、日本を滅ぼそうとしているのだ」

 「どうして?」

 「白人はそういう生き物なのだ」

 「滅ぼして、どうするつもりなのでしょう?」

 「星条旗を日本列島に立てるために決まってる」

 「なんで、もっと近いメキシコとか、南米に星条旗を立てないの?」

 「そ・・れ・・は・・・」

 

 

 レニングラードに初雪が降る。

 

 

 ドイツの新聞社の特派員リヒャルト・ゾルゲのスパイ行為が発覚し、尾崎秀実が逮捕される。

 ノモンハン国境協定が調印される。

 

 

 ドイツ・ルーマニア連合軍がウクライナ地方のオデッサを占領する。

 ソビエト政府がクイビシェフへ移転する。

 

 

 ゾルゲ事件。

 ソビエト籍ドイツ人でドイツ新聞社特派員ルヒャルト・ゾルゲがスパイ容疑で逮捕される。

 

  

 モスクワで戒厳令が施行される。

 

 

 ドイツ軍がハリコフを占領する。

 ドイツが在住ユダヤ人の国外移住を禁止する。

 

 

 ソビエトが中国国民政府への援助停止を発表する。

 

 

 モスクワ周辺に大雪が降る。

 

 

 ルーズベルト大統領が議会に中立法全廃を要求する。

 ソビエト軍がモスクワ周辺で反撃に出る。

 

 

 閣議が鉄鋼など重要産業第1次指定を決定する。

 イギリス戦艦プリンス・オブ・ウェールズとレバルスがコロンボに到着する。

 

 

 ドイツ軍がクリミア半島に侵入する。

 

 

 アイスランド沖、アメリカの駆逐艦リューベン・ジェームズが撃沈される。

 

 11月

 チトー派パルチザンとチェトニク・パルチザンに内戦が発生する。

 

 

 ドイツ軍がクルスクを占領する。

 

 

 御前会議で大陸利権売却案(甲・乙案)が決まる。

 「問題ありだが・・・」

 「構うものか、この際、陸軍はいらん」

 「では、サインを・・・」

 「はい♪ お仕事、お仕事・・・」 書き、書き

 「「「「・・・・・」」」」 涙々 感動〜〜〜!!!

 

 

 アメリカが対ソ武器貸与借款10億ドルを決定する。

 

 

 野村駐米大使が対米交渉、甲案を米側に提示する。

 

 

 ドイツ軍がレニングラードを完全包囲する。

 

 

 スターリンが革命記念集会で聖なるロシアを守ることを呼びかける。

 

 

 ドイツ軍がヤルタ占領。

 

 

 アメリカの大統領が対独参戦を辞さずとの声明を出す。

 

 

 アメリカ下院で中立法修正案が通過し、アメリカは中立政策を放棄する。

 

 

 イギリス空母アーク・ロイヤルが雷撃で沈没する。

 

 

 栗栖三郎特命全権大使がワシントンに着任する。

 

 

 ドイツ軍がケルチを占領する。

 

 

 邪馬ひみこ陸軍局長が降伏に関する規定を発表。

 現地指揮官が大本営に降伏の許可を求め、大本営が降伏の日時を指定する。

 “生きて虜囚の辱めを受けず” を撤廃。

 

 

 イギリス第8軍がクルーセイダー作戦を開始。

 ロンメル軍を一時的にキレナイカから駆逐する。

 

 呉

 「陸軍だけでなく、海軍も縮小か」

 「海軍艦艇の売却は、金になるそうですから」

 「世界第3位の海軍大国を・・・国民も失望してるな」

 「ふん、日本人全部を好戦的な戦闘民族と思わせたいのは、一部の間抜けだけだ」

 「ドイツが怒るのではないか?」

 「ヒットラーに振り回されて喜んでるのはマゾだけだ」

 手が上がる。

 「はい! 日本が生き残る方がいいです」 ひみこ

 「だねぇ・・・」

 軍人も、ええ格好しぃなのか、女性が一人混ざると温和な方向に話しが流れていく。

 「「「「「・・・・・」」」」」

 雌鶏が鳴くと家が滅ぶというが・・・

 

 

 国防省

 陸海軍省統合により16年から始まった99式小銃の生産はストップする。

 そのため38式小銃の改良が行われた。

   1) 機動性向上のため銃身の短縮、総重量の軽減

   2) 補給効率向上のため、銃弾を96式軽機関銃、3式機関銃と共通化

   3) 部品のゲージ規格化、量産性向上のため品質管理の導入

   4) 歩兵部隊の近接支援火力を増大するため、小銃擲弾の装備。

 

 そして、海軍主導の国防省が欲したのは、戦車ではなく、トラックであり・・・

 「戦車は? 97式中戦車、95式軽戦車・・・」 ひみこ

 「そんなものはいらん」

 「94式6輪自動貨車、95式小型乗用車、97式側車付自動二輪車」

 「98式4t牽引車(シケ車)、98式6t牽引車(ロケ車)で十分だ」 海軍将校

 「でも陸軍のトラックと馬がとられてるわ」

 「工兵師団にしたのだ」

 「鉄道建設と発電用ダム建設。港湾整備に住宅建設など、設備工事に必要でな」

 「そうですか・・・」

 「サインしただろう」

 「そ、そうでした」 ちょっと寂しい

 日本海軍局主導の国防省は、戦車に理解を示さなかった。

 代わりに港から降りた後の事を考え、トラックの生産を行う。

 1台15人だと100台で1500人を移動させることができた。

 

1個師団(25000)×18個
  使用弾薬 全長・銃身長 重量 装弾 初速 有効射程 発射速度 定数
38式小銃改 6.5mm×50 999・769 3.63kg 5 730m/s 400m 10000
96式軽機関銃 6.5mm×50 1075・550 10.2kg 30 740m/s 3500m 550発 500
3式重機関銃 6.5mm×50 1220・737 25.6kg 30 740m/s 4000m 500発 100
擲弾筒 50mm× 610 4.7kg     200〜700   1000
75mm砲 75mm 5000・3023 1400kg   680m/s 14000m   40
1600kg
105mm砲 105mm   1500kg   454m/s 10800m   40
1750kg
トラック               200
              7000
                 
 

 

独立砲兵連隊×10
149.1mm砲 149.1mm   10422kg   734m/s 18100m   500
独立機甲連隊×中戦車20 独立機乙連隊×軽戦車20
97式中戦車 46口径47mm             1000
95式軽戦車 18.5口径57mm             1000
独立対戦車連隊37mm×20 47mm×20
  46口径37mm             3400
  53.7口径47mm             2300
                 

 あぶれた兵器・武器弾薬を18個師団で振り分けると重装備師団となっていく。

 

 

 

 野村駐米大使、栗栖全権大使が対米交渉案の乙案をハルに提示。

 ハル長官は、絶句する。

 「まさか・・・日本は本気ですか?」

 「はい」

 

 ドイツ軍がロストフを占領する。

 

 

 国民勤労報国協力令が公布される。

 40歳未満の男子などに年30日以内の勤労奉仕が義務化される。

 ワシントンで、米英蘭華会議が開催される。

 

 

 ベルリンで日独伊防共協定5ヵ年延長に関する議定書に調印する。

 枢軸同盟にブルガリアが加盟する。

 

 

 

 ハル米国防長官が日本側の提案を受け入れる。

 横須賀

 戦艦 “陸奥” 艦橋

 「政府より入電。アメリカが乙案を了承しました」

 「やれやれ、出航するぞ」

 

 レバノンが独立を宣言する。

 

 ソビエト軍がドイツ軍を攻撃、ロストフから退却させる。

 

 ド・ゴールのフランス政府がレバノン独立を宣言する。

 

 

 ソビエト軍が反撃を開始する。

 

 エチオピアのゴンダルでイタリア軍降伏。

 

 

 ドイツ軍がロストフを失う。

 

 

 羊毛自給の目的で、御殿場に国立種羊場が開場する。

 

 12月

 御前会議で各省は、対米・英・蘭との非戦・協力を確認する。

 

 

 ドイツ部隊がモスクワ北方30キロに達する。

 

 

 ソビエトがポーランド亡命政府と友好・援助協定に調印する。

 

 

 野村・栗栖両大使が日本側回答をハル国務長官に手渡す。

 モスクワ防衛ソビエト軍が反攻に成功する。

 ヒトラーが第2航空艦隊に対して東部戦線から地中海方面への移動を命じる。

 

 

 野村駐米大使宛てに対米覚書が打電される。

 モスクワを防衛しているソビエト軍がドイツ軍への総反撃を開始する。

 イギリスがフィンランド、ハンガリー、ルーマニアに宣戦布告する。

 

 

 ソビエト軍の反撃により ドイツ軍のモスクワ総攻撃が失敗する。

 東部戦線が休止となる。

 

 

 12/08 オアフ島 日米首脳会談

 日本の戦艦 “陸奥” が真珠湾に入港していた。

 ルーズベルト大統領と近衛文麿首相が初の日米首脳会談を行う。

 朝鮮半島・中国大陸及び遼東半島を含めた満州権益を200億ドル(800億円)相当でアメリカに売却。

 満州帝国の国教をキリスト教とし、キリスト教国家とする。

 日本はアメリカ極東権益地への進駐を容認し、

 日本軍は大陸から撤収する。

 日本は、ドイツに対し正式に3国同盟脱退を通告。

 日米新通商条約、日米不可侵条約が締結。

 

 

 

 ロンメルがトゥブルクの包囲を解かれてガザラに撤退する。

 

 

 ソビエト軍がモスクワに迫ってきたドイツ軍を撃退する。

 

 

 イタリア軍がイギリス潜水艦に囲まれたためベンガジへの補給を断念する。

 

 

 国防省(大本営)が市ケ谷の新庁舎に移転する。

 

 

 呉海軍工廠で戦艦大和が竣工する。

 大和 艦橋

 「すぐに飛行石を長門から大和に移す」

 「はっ」

 

 イギリスのイーデン首相がモスクワを訪問。戦争目的で一致する。

 

 

 ヒトラーがソビエトの総攻撃に対し、死守命令を出す。

 

 

 アレキサンドリア港

 イタリアの小型潜水艦3隻がイギリスの戦艦クイーン・エリザベスとバリアントを撃沈する。

 

 日本のGDPは1940年度2097億ドル。

 その国に200億ドルが注ぎ込まれた。

 大規模な公共投資が開始される。

 港湾整備、水力発電ダム、海底トンネル建設、鉄道建設、住宅公団、設備投資・・・

 アメリカから大量の重機、工作機械が購入され、日本各地で建設が始まる。

 1931年、水稲農林1号は、東北地方の稲作を可能にし、

 東北地方の農地開拓の弾みになっていく。

 1923年、アメリカで作られたブルドーザーは、列強でも作られ、日本も研究されていた。

 アメリカから購入した本場のブルドーザーは、日本の公共工事を活性化させていく。

 東海道新幹線は1億4000万円=515.4kmで、

 さらに建設線路を増大40000kmを目標にして108億を計上。

 産業で必要な電力を賄うため、さらに発電用ダム建設が行われる。

 福島県 東北電力 沼沢沼発電所 43700KW

 宮城県 東北電力 大倉発電所 5200KW

 熊本県 九州電力 上椎葉発電所 90000KW

 群馬県 東京電力 須田貝発電所 46000KW

 和歌山県 関西電力 殿山発電所 15000KW

 富山県 関西電力 黒部川第四発電所 335000KW

 高知県 四国電力 大森川発電所 12200KW

 高知県 四国電力 穴内川発電所 12500KW

 徳島県 四国電力 名頃発電所 1300KW

 神奈川県 神奈川県企業庁  城山発電所 250000KW

 日本列島は狭く人口過密。

 しかし、完全に開発されているわけではなかった。

 都市は狭い段階で利己的となり、集客率を維持するため閉ざされ、寒村地が増えていく。

 地主は土地と手足を失う事を恐れ、

 大家は、より住み易い新しい貸家が作られることを嫌う、

 財閥は、集客が減ると致命的だった。

 有力者の多くが己のピラミッドを大きくすることを望み、

 貧富の格差が縮まらないように画策する、

 当然、有力者が息子娘を水飲み百姓や貧乏人に嫁がせるなどありえず。

 格差は広がるばかりで縮まることはなかった。

 しかし、大陸権益の売却益で得た資本は巨大な需要を作り、

 渋りつつも新規の新規建設を進める。

 誰でも新しい需要、田畑、住宅、雇用が起これば惹かれていく、

 新天地が住み易くなれば、土地無し農民は後顧の憂いもなく移動していく。

 朝鮮・満州のアメリカ売却益は、それほど大きなカンフル剤であり、

 死にかけていた日本経済を再生させた。

 国防を捨てて、金を取った日本は、その資本で急速に経済を好転させていた。

 皇居

 「経済は良いようだね」

 「はい」

 「国民の幸福を考え、田畑を広げ、人材を育て、より良い社会を作っていくのが良い」

 「ですが一部、権益を手放さず、国防主体の産業に移行させようという勢力も根強いようです」

 「国防も大事。しかし、国民の衣食住も大事」

 「いくら近代化で貧富の格差が必要でも限度がある」

 「国民を飢えさせるようでは愛国心も尽き、だれでも倒閣を望むようになるだろう」

 「御意、ですが権力を欲する者が倒閣させる輩も少なくありません」

 「権力を望む者は、むかしから国を危うくしても下剋上を望むな」

 「権力に胡坐をかく者も現れますから、覇道を望む者が間違っているとは限りませんが・・・」

 「軍部は少々、力を付け過ぎていたからの」

 

 

 日タイ同盟条約調印。

 

 

 イギリス軍がベンガジを奪回する。

 ドイツ軍 グデーリアン将軍が解任される。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 ファンタジー系火葬戦記です。

 大戦の年の大日本帝国に魔法資源を引き込んでしまいました。

 農業、工業、商業に続く “魔業” の可能性。

 上層部は、未知の可能性と戦力で、欧米諸国相手にインチキ勝負ができると大騒ぎ。

 傲慢な陸軍は魔力欲しさに暴挙。

 狡猾な海軍は魔業を渡すのが嫌で、大砲をぶっぱなし。

 陸軍を逆賊にしまいました。

 日本は、満州・中国の利権だけでなく、併合した朝鮮半島も売却。

 

 大本営は、お宝を活用して昭和の臥薪嘗胆。

 真珠湾攻撃をしませんでした。

 

 

 右翼とヤクザと朝鮮人

 右翼の中核はヤクザ、

 ヤクザの中核は、日本人に対し非合法活動が平気な朝鮮人です。

 意外と知らない人が多いので書いておきました。

 右翼を見破る方法は、価値観。

 軍 > 国家。

 軍 > 天皇。

 軍 > 国民。

 保守層は、不等号が逆になります。

 因みに右翼は政治勢力で、

 本来、政治に中立な軍は右翼に含みません。

 

 

 ふっ いくらファンタジー仮想戦記でも青髪の少女は作れんかった。

 作者の世界観の げ・ん・か・い

 

 

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

 

ファンタジー系火葬戦記 『魔業の黎明』

第01話 1941年 『大本営 長門』
第02話 1942年 『軍需バブル崩壊?』