月夜裏 野々香 小説の部屋
  

風の谷のナウシカ 『青き衣の伝説』

 

第04話 『せんたく』

 人類世界は滅びつつあった。

 粘菌の大繁殖。

 それを食い尽くそうとする蟲たちの群れ。

 なす術のない人類。

  

  

 聖都シュワ

 土王クルバルカ家のチククに扇動されたマニ族が立ち上がり墓所を包囲する。

 皇弟ミラルパは、自身が生き残るため、墓所の技術でヒドラと化す。

 人間でない異形の者になった皇弟ミラルパは、マニ族の攻撃を受け、

 そこに王蟲型飛行物体の群れが現れた。

 浮砲台が攻撃しても意に介さず。

 王蟲型飛行物体は逆襲して浮砲台を破壊していく。

 そして、女の子が一人、メーヴェにのって、墓所の頂上に降り立つ。

 「・・・わたしは、青き衣の者。ナウシカ」

 「戦いを止めて、すぐにあの山に向かいなさい」

 「そうすれば生き残れるでしょう」

 予言の青い衣の者であることを宣言。

 空中に浮かぶ王蟲要塞と青き衣ナウシカの宣言。

 ドルク人は、我先に山に向かって逃げ出していく。

 皇弟ミラルパの参謀チヤルカの軍閥も、皇弟ミラルパと離別して山に向かって逃亡。

 この瞬間、土鬼諸侯連合(ドルク)は、国家としての絆を失い瓦解する。

  

  

 王蟲空中要塞

 ギル、ナウシカ、キルヒス。アスベル、ケチャ、ユパ、ほか・・・・・

 「ご無事で何よりです。ギル王子」

 「キルヒス。良く出来たものだ」

 王蟲空中要塞の内装を見て感心する。

 「これなら浮砲台の砲撃や重コルベットの攻撃も跳ね返すだろう」

 「はい、地下空間では、風の民の住人も王蟲の中に」

 「可能な限り、住民を救出するようにガンシップで伝えてくれ」

 「はい」

 「これから、父の第1軍と合流する」

 「はい」

 

 

 第3軍 コルベット

 不時着した重コルベットから、2人の人間が救助された。

 「これは、これは、ひょんなところで、お会いしました」

 「ガル皇子、グル皇子。もう一人。デル皇子は、どうされた?」

 「死んだよ、蟲に食べられて」

 「ふっ・・・それは、弔えなくて残念じゃな。せめて、看取って、あげたかった」

 「我々をどうするつもりだ。クシャナ殿下」

 「じっくりと昔話をしましょうか」

 「その後、決めても、良いでしょう」

 クシャナが残忍な視線を投げかけ。

 ガル皇子とグル皇子は怯える。

 

  

 第1軍

 重コルベットとガンシップが巨神兵を中心に編隊を組んでいた。

 強大な巨神兵も1体だけでは世界を燃やすことが出来ず。

 王蟲と粘菌がせめぎ合う情景を見ていた。

 王蟲を攻撃すれば粘菌が大繁殖して人類世界は飲み込まれ。

 粘菌を攻撃すれば王蟲の腐海が広がって大海嘯に人類世界は滅ぼされる。

 考え方を変えるなら生き残って弱体化した方を叩く手もあった。

 そこに王蟲型空中要塞が現れる。

 重コルベットとガンシップが戦闘態勢に入るがヴ王が止める。

 “ギルか”

 “やあ、お父さん”

 “滅びる前におまえに会えて良かったよ”

 “僕もだよ。お父さん”

 “・・・・・・・・・・・”

 “・・・・・・・・・・・”

 白々しい空気。

 “お父さん。いまどこにいるんだい?”

 “巨神兵の中だ”

 “制御装置は、見つからなかったんだ”

 “ああ、親不孝な息子が秘石を探してくれなかったからな”

 “敬愛する息子たちが秘石を探さず”

 “仇の娘が、お父さんのために石を探していたわけだ”

 “ふっ 諸行無常というのだ”

 “それより、お父さん。力を貸してくれないかな”

 “ほう 巨神兵の血を持ち。王蟲の要塞に乗るおまえが力を欲しがるとはな”

 “お父さんのこと。忘れないよ”

 “・・・ふっ。調子のいいことを”

   

  

 南の方角が光り輝いた。

 そして、数日後

 高波が大地を襲い、全て大陸を飲みつくしていく。

 毒の人類世界。

 猛毒の腐海世界。

 消毒の清浄世界。

 三世界が洪水で混ざり合い。溶け合って融合していく。

 大山脈に避難して災厄を逃れても豪雨に洗われる。

 浮砲台、戦列艦(バカガラス)、重コルベット。コルベット。

 ガンシップ。ブリック。バージが海上を漂う、

 そして、同じように王蟲とその背中に乗る蟲たちも海を漂い、

 瘴気を出していなかった。

  

  

 住人と食料。種を満載した王蟲空中要塞60隻が海上を浮遊していた。

 ギルとナウシカは、王蟲空中要塞の背中に作られたテラスで昼食を取っていた。

 「ギル。これから、どうなるの?」

 「さあ・・・極地が凍り始めたら、水は退いていくよ」

 「それが清浄なる地?」

 「ナウシカが青き衣の人なんだろう」

 「わたしは・・・夫に従っただけよ」

 「それは、それは、良い妻だ。でも、もう少し、辛い方が良いな」

 『ガキのくせに無理して』

 「・・・スパイスが、もうなくなるわ」

 「それは、悲しい」

 「これからは、基本的な食料だけになるけど・・・」

 「「・・・・・!?」」

 森の人。

 セルムとセライネがテラスの一角に立っていた。

 「その者 青き衣をまといて 金色の野に降り立つべし

 失われし大地との絆を むすび ついに人々を 青き清浄の地にみちびかん

 セルムが呟く

 「その者 人であり 人でなく 定められた選択 光と闇を混沌に戻して 新しい天地を創らん

 セライネが唱える。

 「「・・・・・・」」 ギル、ナウシカ。

 「二つの予言を成す人間が一緒にいるなんて・・・・」

 「僕はセルムだ。この場にいられることも光栄なのかな」

 「「・・・・・・」」

 「森の人。生きていたんだ」

 「羽蟲に乗ってね。危なく死ぬところだったよ」

 「これ、あなたにお返しするわ」

 セライネがネックレスをギルに渡す

 「秘石よ。蟲使いから買ったの」

 「・・・買い戻した方が良いのかな」

 「いいえ、予言されていた人間に出会えたお礼に上げるわ」

 「あなた達の方が珍しいもの」

 「・・・ありがとう。セライネ」

 「ところでギル王子。これから、どうするつもりだい?」

 「予言が本当になるなんて、計画が滅茶苦茶だ」

 「仲良くやっていけるだろう。しばらくはね」

 「・・・・君たちが、もう一度。生めよ、増えよ、地に満ちるまで・・・かな」

 「僕たちは、欲が強いからね」

 「ふっ 君たちを見ていると面白いよ」

 「見てるだけでなく。一緒に生活してみたらどうだろう」

 「混ざり合えば別のものも見えてくる」

 「・・・検討する課題ではあるね。君らが嫌いなわけではない。面白いだけだ」

 「傍観者から、当事者になれば、少しは評価も変わるよ」

 「当事者か・・・しかし、君たちの性質には、疑問を感じるね」

 「1000年前。人類は、星の世界にまで行ってた」

 「君たちは、どうだろう。この1000年。星の世界に行ったことは?」

 「・・・・・いや」

 「欲望の中には希望もあるよ」

 「それも、面白いかもしれないな」

 「水が退けたら、僕たちは、婚儀を始める。出席してくれないか」

 「・・・いいだろう。参席させてもらうよ」

 水が退いたのは、洪水が始まって40日後。

  

  

 瑞々しい大地

 雲間から日が差し込む

 王蟲空中要塞が浮かび。

 ギルとナウシカが地上の宴席で婚儀を執り行う。

 トルメキア人、ドルク人、森の人。蟲使いが祝福し、

 最大勢力は、森の人だった。

 クシャナ殿下とガル皇子、グル皇子は、憮然と見ている。

 生存者の多くは、ギル王子とナウシカによって助けられたと知っていた。

 トルメキア王位継承は決定済み。

 というより新しい大地の新しい王はジルに決まっている。

 大きな虹が披露宴を飾り。

 大地からは新芽が出ていた。

 王蟲と巨神兵が見守る中。

 ギルとナウシカは、チコの種を植える。

  

   

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 月夜裏 野々香です。

 風の谷ナウシカの本編再構成 終了です。

 ナウシカは、完成度が高くて、たぶん、こうなるんじゃない?

 などと言われそうなので、一度に全部、創ってしまいました。

 10万HIT記念も兼ねてです。

 

 

 

  

 

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