月夜裏 野々香 小説の部屋
  

風の谷のナウシカ 『青き衣の伝説』

 

その者 青き衣をまといて 金色の野に降り立つべし

失われし大地との絆を むすび ついに人々を 青き清浄の地にみちびかん

 

第03話 『大海嘯』

 マニ族の民家

 「・・・ふ〜ん。その娘ケチャって言うんだ。アスベルと。どういう関係なのかな〜」

 ナウシカが空々しく、面白がる。

 「あ、ナウシカのファンなんだ。青き衣の・・・」

 「・・・青き衣・・・・・」

 ナウシカに自覚症状のない。

 「マニ族僧正は、青き衣の人ナウシカに接触しようとして」

 「神聖皇弟ミラルパに殺されたんだ」

 「だから、マニ族はナウシカ派が多い」

 ナウシカは呆れる。

 腐海で蟲に教われずに済んだのは、王蟲の血の付いた青い服を着ていただけ、

 特殊な力があるわけではない。

 「・・・みんな、清浄の地へ行きたいのさ」

 「・・・・・・・・」

 迷惑な伝説で、そんな場所は知らなかった。

 腐海の地下空間は、比較的、清浄の地に近い。

 しかし、人が生活するうえで太陽がない。

 他にも決定的に足りないものがある。

 第4軍が試験的に耕作しているが、まず食料の確保が間に合わない。

 そして、あの殺菌効果、消毒効果は、異常で人体にすら影響を与える。

 あそこに一度住めば腐海が全て浄化されるまで、

 少なくとも1000年間は、二度と太陽の下に出られない。

 何より、あそこは、青き清浄の地ではなく。暗き清浄の地。

 「自業自得なんだから、1000年ぐらい。人類に我慢させろよ」

 とギルがのたまう。

 どうも彼の発想と一般人の常識は、開きがある。

 とはいえ、ギルに逆らうつもりはなかった・・・

  

  

 ドルクの情報だけでなく。

 蟲使いを通じてトルメキア帝国の情報も入ってくる。

 第2軍の敗退でヴ王直属部隊の第1軍が出撃したらしい。

 その中に巨神兵の姿があるとかないとか。

 それで戦線は、持ち堪えている。

 風の谷軍管区は、クシャナ殿下が負傷。

 しかし、戦線は維持されている。

 ドルク領の南では制御不能になった粘菌が蟲使いの手を離れ暴走していた。

 そして、腐海では王蟲の群れの移動を確認。

 全ての事象が大海嘯に向かっていく。

 暴走している粘菌の正体はドルクの遺伝子技術で作られた化け物だった。

 制御する方法もなく。

 滅ぼす技術も確立されていない。

 次の大海嘯で人類の住むう場所は地上から消える。

 人類は、滅びる・・・・

 「「「「「・・・・・・・」」」」」

 ナウシカは、青き衣の伝説・・・青き清浄の地・・・で、当然、注目される

 「ケチャ。青き衣の伝説。ドルクでは、どれほど強いの?」

 ギルがたずねる。

 「宗教の教義と並ぶほど。というより、青き衣の伝説を支柱に終末観が作られている」

 「これを抜きに教義は成り立たないわ」

 「・・・ケチャ。マニ族は、青き衣のナウシカの側に立ってくれるだろうか」

 「ええ、マニ族は、神聖皇弟ミラルパに対して反意を持っているけど」

 「でも、マニ族は、神聖皇兄ナムリスと敵対しないかもしれない」

 「そして、神聖皇兄ナムリスと神聖皇弟ミラルパは、いがみ合ってます」

 「・・・青き衣の者が現れたと伝えてくれないか・・・・・場所は・・・・・シュワの墓所」

 ギルが指差した。

 「そ、そこは、聖地の中の聖地。禁断の場所です」

 「禁断・・・人類存亡の時に禁断。面白い。禁断の聖地に何があるか覗いてみよう」

 「王子。迎えが来たらすぐに逃げ出さねば、ギル様の脱出は、何より優先されるべきです」

 「・・・・何を言う。キルヒト」

 「人々を青き清浄なる地へ導かねばならぬのに。逃げ出してどうする」

 「「「「「・・・・・・・」」」」」

 「そうであろう。ナウシカ」

 「君は、突然、ドルク最深の禁断の聖地」

 「そこに姿を現して清浄なる地へ人々を導く」

 ・・・・・・

 「ええ、そうよ・・・」

   

 夜

 「・・・・どういうつもり。ギル。わたし、青き清浄なる地なんて知らないわ」

 「禁断の聖地を暴いて宗教崩壊を起こさせるのさ」

 「ドルク教は、根幹から崩れて結束力がなくなって、お終い」

 「あ・・・・そう」

 「そんなことより、その胸、触らせろ」

 「えぇ〜 婚儀終わってないもの」

 「えい!」

 「あ」

 この悪エロがき・・・・

  

  

 墓所は、禁断の聖地だけあって警戒が厳重だった。

 しかし、井戸水の位置関係から、墓所に繋がっていると予測。

 地下水路を移動する。

 ギル、ナウシカ。

 そして、アスベル、ユパ、ケチャ。兵士たち。

 「ひび割れが多いのね」

 「前回の大海嘯の時。大きな地震があったそうです」

 「それ以前は、地震なんてなかった場所だったそうですが、そのあと、何度か地震があって・・・」

 「この辺の地下水は、その時できたそうです」

 地底湖を丸太を使って移動。

 亀裂を見つけて入ると、

 たいまつの明かりで地下施設が浮かび上がる。

 「・・・なんだ。これ?」

 廃墟と化した施設の中、

 壊れた機械類が残されていた。

 「ペジテの地下に似ているよ。ペジテは埋まっているから掘り出すけどね」

 「なるほど、ドルクの力の源。根幹も古代の力か・・・」

 『・・・静かにした方がいい』

 『もし、そうなら、採掘している人間がいるはずだから』

 『本・・・みたいなものは、ないかな』

 『本・・・ですか?』

 『情報が欲しい。何の施設か知りたい』

 『ギル様・・・あれを』

 キルヒトが指差した。

 司令塔らしき場所に書類がある。

 たいまつの光で揺れる殴り書きされた文字。

 書類そのものがボロボロに風化しつつある。

 『・・・古代文字でペジテのものと少し様式が違う。・・・・世界・・が・・・・・・わかりにくいな』

 『・・・わたしが、見てみる』

 ケチャが前に出る

 『・・・量産型エバ・・・・暴走・・・・世界が・・・・滅ぶ・・・使徒が・・・・悪魔を・・・・魔王を作り・・・」

 『希望は3つ・・・・・・生き残れない・・・・最後の希望・・・』

 『『『・・・・・・・・』』』

 『ほ、他には?』

 『他は、全然、読めない』

 『何があったんだろう』

 『・・・他にないか調べよう』

 世界地図があったが地形が変わっていた。

 ・・・・・結局、何もなかった。

 文書の内容。

 それが、なにか、わからず。

 上の層に行く道も閉ざされている。

 そして、ここが最地下層だった。

    

    

 マニ族の民家

 「・・・エバって、なんだ?」

 ギルの質問に全員が首を振る

 「・・・・エバ、使徒、悪魔、魔王。3つの希望。最後の希望・・・神話のなぞなぞか?」

 「アスベル。ペジテの機密は、ないのか?」

 「土に埋まっていて、文字は残っていません」

 「ほとんどは、7日間戦争のあと。伝承を文字として残したものです」

 「「「「・・・・」」」」

 「本当です。大海嘯を前に嘘なんか付きませんよ」

 「1000年前も世界は滅ぶ寸前だったんだな・・・」

 「希望が3つ。俺らの希望はいくつ残されているかな」

 「あの地下空間だけでは?」

 「その件なら参謀のキルヒスに伝えている。人選も済ませていた」

 「あいつが暗号を解ければ、風の谷の住人を地下空洞に避難させる」

 「では、それが、第一の希望では?」

 「もう一つは ・・・親父の巨神兵か」

 「巨神兵があるの!」

 ナウシカの顔色が変わる

 「1機な。トルメキア王家の力の源泉。金にもならないし、民を食わせられない」

 「何より、制御・・・第二の希望には、小さすぎる」

 「「「「・・・・・・」」」」

 「一個半か。他のグループは、何か考えているだろうか」

 「ドルクは?」

 「ドルクは、自分自身を人工的に変質させることで滅亡を逃れようとした」

 「その究極が腐海、王蟲、森の人かな」

 「そして、最悪の粘菌を作り出した」

 「トルメキアは物理的で巨大な力を利用することで滅亡から逃れようとした。巨神兵」

 「どちらも、置いてけぼりにされる人間が多い」

 「淘汰としては悪くないが実力や能力というより。悪党をひいきして滅ぼしたいね」

 「・・・・」

 「神のようですな」

 「いや、神だけじゃなく。悪魔も、人間も、自分以外は従順な人間を求めるからね」

 「なるほど。では、今後は、どうされるつもりで?」

 「近しい者たちと生き残る」

 「利己・排他的で争いの火種にもなるけど、基本は、これでいいだろう」

 「・・・ええ」

 ギルは、地下から持ってきた特殊な紙で出来た世界地図を見詰める。

  

  

 夜

 ギルとナウシカは、ベットの中

 ギルは、古い世界地図を見ている。

 「王蟲は、仲間が苦しめられると怒って、飢餓で朽ち果てるまで暴走」

 「人間は、飢餓状態になると、仲間同士で殺し合って人減らし」

 「この地球の主人として、ふさわしいのは、人間と王蟲。どっちかな・・・・」

 ギルは、そう言いながら、ナウシカの胸をつんつんする。

 弾力が良くてギルが面白がる

 「・・・あまり、触っていると・・・・掴むわ・・・」

 ・・・指が止まる。

  

  

 粘菌を食べきれなくなった王蟲が死んでいく。

 大海嘯は狂った粘菌を王蟲が貪り食べることで起きた。

 そして、胞子を撒き散らし。

 狂った粘菌が胞子を食べて、変質しながら増殖していく。

 トルメキア軍とドルク軍の戦線は崩壊し逃げ惑う。

 もはや、人間同士の戦いではなくなり、生き残る術もなく逃げ惑う。

 南から粘菌が迫る。

 そして、戦線と諸国は、王蟲に踏み躙られ、粘菌に覆われていく。

 「クシャナ殿下! 急いで、北へ」

 「クロトワ!! 第4軍は、何をしている!!」

 「キルヒス参謀は、お構いなくと」

 「ふざけるな!!」

 「・・・・」

 「人類が滅ぼうとしているのに何がお構いなくだ」

 「・・・・」

 「ギル王子の居場所は、突き止めたのか?」

 「いえ、とにかく。いまは、お逃げください」

 「可能な限り。兵と住民を乗せよ。この地より、離脱する」

  

  

 腐海で生きる森の人たちは、高みの見物。

 セルム、セライネ

 「ドルク製の粘菌は、何とか食い尽くせそうね」

 「うん、あの粘菌は、僕たちとも相容れないよ。イレギュラーだね」

 「お兄さん。ナウシカを助けないの?」

 「お気に入りでしょう」

 「ナウシカ。王蟲の血を浴びて腐海に対する耐性が強くなっている・・・」

 「生き残ったら、会うことにするよ」

 「失意の女の子を慰めてあげるの?」

 「悲しんでいる女の子を慰めるのは、男の義務だよ」

 「相手が望んでいればね」

 「・・・・・」

 「お兄さん・・・ギルと言う子供・・・・」

 「ああ、少し違和感があるね」

 「巨神兵に近い感じがする」

 「・・・セライネ。予言は?」

 「その者 青き衣をまといて 金色の野に降り立つべし

 失われし大地との絆を むすび ついに人々を 青き清浄の地にみちびかん

 「もう一つの予言だよ」

 「・・・その者 人であり 人でなく 定められた選択 光と闇を混沌に戻して 新しい天地を創らん

 「青き衣は、我々の側の予言」

 「そして、もう一つの予言は・・・」

 「トルメキア側の言い伝えよ。それも、予言ではなく民間に伝わる伝承」

 「些細で、どうでもいい伝承」

 「些細な伝承なのに、森の人が知っている。なぜだ?」

 「・・・他に対極する伝承がないから。民間に広がって、わたしたちも知っているだけ」

 「予言であれ。願望であれ。民の望む力がイデアとして蓄積され、結集することもあるだろう」

 「でも、どちらの予言も、わたしたち森の人からすれば、百害あって一利なしよ」

 「でもセライネ。助けただろう。ギルとナウシカに助言して」

 「お兄さんもね」

 「過去。人類は、危機を迎えて生き残るため方法を模索した」

 「一つが人工進化計画」

 「もう一つは危機に至った原因を利用して身を守ろうとした勢力」

 「二つは、時に協力しながら危機と戦い」

 「そして、最後は争った」

 「・・・・・・」

 「彼らは、憎むべき相手ではないよ。我々と選択が違っただけだ」

 「そして、人工進化計画は、勝利を目前にしているわ。長い年月を掛けたけどね」

 「彼らは、どうするかな。見ものだな」

 「こっちで、何もしなくても自業自得で滅んでくれるから。あの人たち、面白いわね」

 「見てて飽きなかったから。いなくなるのは、寂しいよ」

 「今度の大海嘯で旧人類は、全て死ぬ。残るのは、わたしたち森の人。新人類」

 「うん」

 「でも、お兄様。元々の計画は?」

 「腐海が全て浄化されたら、出て来る。本当の旧人類」

 「シュワの墓に眠っている種?」

 「最後の希望は?」

 「彼らと一緒に生きていけるかどうか、わからないな」

 「一緒に生きていけるのなら生きていけばいいし。駄目なら、他の大陸に行く?」

 「そうね・・・・そういえば、地下空間のあの人たち・・・・」

 「自給自足できなければ、争って自滅するんじゃないかな」

 「・・・・増えたら、増えたで、面白いかもね」

 「ふっ・・・そのネックレス・・・似合うじゃないか」

 「巨神兵の制御装置にしては綺麗ね・・・」

 「あなたを選択した人類がどうなるか、見せてあげる」

 セライネは、微笑みながら赤い玉を弄んだ。

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 原作でナウシカは、血生臭く、猛々しく、聖母の様に暴れまわる。

 『青き衣の伝説』では、大人しいです。

 主役としての意識に欠けてます。

 やはり、ギルに従属しているという。あきらめ観に支配されているからでしょう。

 

 女の幸せか? 人類愛か? 選択の時です。どっちも×××ですが。

 

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第02話 『あれま〜』
第03話 『大海嘯』
第04話 『せんたく』