月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 

 第01話 20XX年 『モノは試しで・・・』

 胡散臭い理屈で国防予算が使われる。

 懐古主義と先見性の最大公約数で血税が浪費させられることは少なくない。

 原子力発電所と直結した電力がテスラコイルへと流れる。

 

光の速さに近いスピードで微粒子が衝突し、過去への扉が開かれる。

エネルギー量が十分なら時間は歪み、現在と未来をつなぐタイムトンネルが発生する。

 

 “テスラコイル、共振モード準備完了”

 “原子共有結合のサーチに入ります”

 “原子軌道及び分子軌道の変数は、許容範囲内です”

 “艦の固有振動数と原子共有結合を一致させます”

 “価電子波長の同調性は、80パーセント”

 “原子軌道誤差0.03パーセント。分子軌道誤差0.021パーセント”

 “重力計数は変化ありません」

 幾つものモニターに波紋が流れ、

 オペレーターが計測値を報告していく、

 マッドサイエンティストと軍将校たちが思い思いに鋼の壁に触る。

 「本当に振動してるのか・・・凄いな」

 「教授。素人考えだが同一の原子構成物じゃなくてもいいのか?」

 「混ざりモノの方が壊れにくく、振動を制限できます」

 「もっと軽量なもので実験できなかったのか?」

 「ただの圧力ではいけない。余計な波形は困るし」

 「固有振動だけで作用させる必要があってね」

 「それにエネルギー変換器と変調器を格納できるだけの余裕がないと」

 「また時間のファブリック(繊維)に裂け目を開けるためには、速度だけでなく質量も必要ですから」

 「速度って、動いてないのに?」

 「テスラコイルの波長を艦の固有振動数と合わせるからアイドリング状態でも疑似光速だ」

 「なんとも、胡散臭い理屈と実験だな」

 「念のため乗員と爆発物だけは降ろしてるがね」

 「どうせ何も起こらないと思うが・・・」

 「そんなことはない。一番近い時空物と衝突し、時空振動が起こるはず」

 「その一番近い時空物とは何だね?」

 「艦の前後の時空に存在する物体です」

 「つまり、同じモノじゃないか」

 「ええ、これは、近似値時空が連続しているか否かの実験です」

 「計算通りなら、近似値の時空の物体同士がゼロコンマ、フェムト秒以下で入れ替わる」

 「重力の影響は?」

 「原子共有結合は・・・」

 「簡単に説明すると、引っ張ろうとする引力と、逃げようとする斥力で成り立っています」

 「よくわからんが。じゃ 男と女の関係だな」

 「そういえば、俺は昔っから女どもから逃げるのが大変だったよ」

 「「「「あははは・・・」」」」

 「つまり、テスラコイルの波長を艦の固有振動数に合わせることで、原子共有結合に歪みを作り・・・」

 マッドサイエンティストの話しを聞いている軍人はいなかった。

 「つまり、一瞬だけ、艦の組成を変え、前後の時空を滑らせる試みで・・・」

 “・・・共有結合の波長が逆流を感知”

 “分子軌道に変調です”

 「な、なんだ・・・実験中止」

 幾つものスイッチが切られていく。

 “変調が止まりません”

 「き、教授・・・どういうことだ?」

 「さぁ・・・」

 「そ、そんな無責任な・・・」

 巨大な鋼の壁全体から青白い光が輝きだした。

 「「「「・・・・・」」」」 ごっくん!

 その日、ウクライナの黒海に面した都市ムィコラーイウ、

 チェルノモールスキイ第444海軍工廠を中心に30km半径が閃光に包まれ爆発してしまう、

 ソビエトは、チェルノモールスキイ第444海軍工廠で起きた核爆発事故と発表した。

 しかし、なぜか、津波が周辺域を襲っており、

 中心部は、切り取られたような同心円状の穴が作られており、

 原因は不明だった。

 そして、ソビエト当局は、30万人もの犠牲者を出した実験に恐怖し、

 事実は、闇から闇へと隠蔽され葬られた。

 

 

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 月夜裏 野々香です

 ついにタイムスリップ系に手を出してしまいました。 (笑

 現代に近いと、ちょっとだけ、共感できるようなできないような。

 日本の軍艦じゃないです。

 でも軍オタ好みの・・・

 

 

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 タイムスリップ系架空戦記 『時空巡洋艦 露鳳』

第01話 20XX年 『モノは試しで・・・』
第02話 1942/04 『それは、神風とともに』