第51話 『気分は、さざなみ』
角浦 紫織 中学3年 14歳の春
響きが、素晴らしい。
青春真っ盛り、希望と夢、期待で胸? 膨らむ季節・・・・・・・・
“のらくろ” を見たいと来たのは、勝野ヒロコと、その娘、海平ケイコ、今村ヒロミ。
どうやら、遺産相続のことで、揉めているらしい。
話しを聞けば・・・・・・・
長男夫婦が相続した土地を売るというので、困っているらしい。
母親が長男夫婦に土地を売らせないように共同名義にしたらしいのだが、
事情が変わって、長男夫婦が、すぐに土地を売りたいらしい。
散々揉めた結果、長男夫婦を家から、叩き出して、
もし、売るというのなら、
“自分が、死んだ後、長男に全部やる”
と言った財産の半分を貰うという。
「・・・よ、よく、長男は、共同名義で、良いといいましたね」 紫織 汗
「ええ、人の良い息子で・・・」
『自分が死なない限り財産を渡さないって?』
『母親のあんたが、人の良い息子から、財産の半分をふんだくるつもり?』
「じ、実の長男なんですよね」
「ええ、そうです」
『・・どうしたものかしら・・・・』
「そ、そうですか・・・息子さんの家族は?」
「長男夫婦に子供が4人です」
「・・・子供の、学校は?」
「そんな、近所の学校なんて、行かせませんよ」
『財産金欲しさに、4人の子連れの長男家族を家から叩き出して』
『さらに遺産の半分をよこせって・・・・鬼ババァか。あんた』
「そ、その土地は、大切な土地なんですね」
「ええ、とても」
「お母さんは、相続の半分を受け取っているんですよね?」
「ええ」
「長男は、ええとぉ〜」
「わたしが半分で、三人兄弟ですので、6分の1になります」
『・・6分の1から、更に半分を取ろうとしているの?』
『あんた達、殺されるよ。普通』
「・・・そ、それで、話しの向きは?」
「それが、酷いんです。長男が、わたしたちの事をヤクザみたいだって、いうんです」
『・・・・その通りね・・・』
「そうなの “金を出さないなら、家から、出て行けって!!” 言ったら」
「わたしの子供の前で、わたしたちの事を、“ヤクザみたいだ” なんて、酷いじゃないですか・・・」
娘のケイコが割り込んで、半狂乱。
『・・・娘も、人でなしだわ・・・』
「そうなの、人の事、ヤクザだなんて、信じられない。謝りもしないなんて」
「わたしたち、くやしくて、くやしくて、夜も眠れない!!」
もう一人の娘、ヒロミも割り込んで、怒髪天。
『・・・・・げっ!・・・』
話しは、長くなりそうだ・・・・
最近は、自分の感情を表情で反応させない程度のワザを体得しつつある、
しかし、呆れる内容も多い。
『母親や妹だからといって、信じるものじゃないわね。金に目が眩んでいるもの・・・・』
「」
「」
角浦 紫織 花の中学3年生。
楽しいを生活しているか、というと、そういうわけでもない。
青春を謳歌しているはずが、現実は、あまくない。
他の同級生は、どうかしらないが・・・・
かなり破天荒な目に遭っている。
心根の腐った人間の面白くない話しが多かったりする。
紫織、佐藤エミ、安井ナナミ、ハル
春の陽気に誘われて、こもれび商店街を歩く。
中学3年といえば、受験生。
とはいえ、ある種の人たちは、角浦 紫織という少女を放っておかない節がある。
何しろ、昨年の冬。
中国系のヤクザな合併製薬企業を潰して以来。
内調や警察からも目を付けられて、やりにくい。
連中に監視されて良いことは無い。
困っても助けないだろう。見て見ぬ振りで見殺し、
そして、悪さをしようとすれば密告され、手柄にされる。
理不尽で不公平に思うというか、死にやがれ。
別に悪さをしたいわけでないが探偵業務ともなれば、非合法な場合もある。
裏家業で、探偵などと言っても、まともに推理できる人間は、一人もいない。
最近、推理小説(まんが)を読むが推理が終わるまで犯人が分かった事は、ほとんど無い。
当たったとしても、推理自体が的外れ、
こりゃ駄目だという感じだろうか。
まず、推理ショーは、無理だろう。
ということは、犯人探しで、非合法な方法を使うのが手っ取り早いことになる。
女がバタバタと走って行く。
そして、追いかける。男。
こもれび商店街の名物だろうか。
「・・・待ってくれよ・・・・ヨシミ」
「もう! 着いてこないでよ。いい加減にして!!」
「なあ、ヨシミ。戻ってきてくれないか」
「もう、イヤ!! 早く離婚してよ!!」
「そ、そんなこと言わないで、戻ってきてくれよ。ヨシミ」
ヨシミが、逃げ。
夫が追いかけていく。
夫婦不和の原因は、惣菜屋の経済だった。
こもれび商店街の経済状態は、一部の商店を除いて、苦しい。
そして、苦しさに耐えられない者が、キレる。
出会い系にハマッた、妻。
どこに行くのかわからないが・・・・・・
“いい加減に離婚して、良い女を探せば良いのに” とも思う。
「いい加減に離婚して、いい女を探せば良いのに・・・・」 安井ナナミ
「あっ! それ、わたしも思った」 佐藤エミ
まあ、三人とも似たようなことを考える。
何も、わからないハルが羨ましい。
経済の勝ち負けは、恐ろしい。
家族を崩壊させてしまう。
男たちが生きていくために必死になって働いている、
そして、生存競争に負けた者は、家族ごと廃れていく。
三食昼寝付きで出会い系で遊んでいる主婦たちもいる。
お互い様という場合もあるが、もう少し、モラルがあっても良いような気がする。
そういう事例ばかり扱っていると、
そう思う。
段々、自分自身の一般認識がスレてくるのがわかる。
かと思えば、昼間から、ベタベタしている新婚も通り過ぎる
「・・・ねぇ〜 カズオちゃん。今度の休みは、遊園地に行こうよ♪」
「そうだね。行こうか。ナツミちゃん」
新婚で新鮮さがあって、生活が安定している時は、あんなものだろうか?
道長カズオ、道長ナツミは、喫茶店を経営しているが経営状態は、それなり。
いつも腕を組んで歩いている。
奈河市駅を中心に新規参入の大型店が増え、
勝ち組、負け組が、少しずつ明確になりつつあった。
青春真っ盛りの割に・・・・・・・世知辛い。
「・・・・いろいろ、あるわね・・・・人間って」 安井ナナミが呟く。
「そうね。紫織ちゃんのおかげで、随分、いろんな人間を見せられたわね」 佐藤エミ
「あはは・・・」
「それも、ロクでもないのばかり」 安井ナナミ
「あはは・・・」
「仕事は大丈夫?」
「・・・最近は、シンペイちゃんとサナエに任せて、配信ばかりかな」
「楠お姉ちゃんが茂潮さんと東京に行っちゃったし。なんかな・・・」
「なに? やる気なし?」
「わたし、受験生なのよ。これでも。ね! エミちゃん」
「あまり、手が付いてないようだけどね」
「げっ!」
「・・・・・ふっ ほら、手に付かない。原因が歩いてくるよ」
一ツ橋サツキ(27歳)。
「げっ!」
東京に行った楠カエデの位置に居座っている、やり手のキャリア女刑事。
「紫織ちゃん。いま暇?」 ニンマリ。
「・・・友達と。青春中よ」
「じゃあ、大丈夫ね」 にんまり
「」
「」
最近の倫理道徳は、どこまで狂ってきているのだろうか。
日本人らしい、慎みとか、遠慮とか、気配りとか、どこに行ってしまったのだろうか。
自分の欲望や利益しか考えなくなっている。
気がする。
奈河市 警察署
取調室。
紫織は、出された番茶をすする。
どうして取調室にいるのかというと。
挙動不審で捕まったらしい。
善良で、いたいけな女子中学生を補導するとは・・・・・
・・・・エリート女官僚の横暴さは、腹に据えかねる。
とはいえ、目の前にケーキの箱を出されると。
とても、素直になってしまう。自分も怖い。
「これ見て、もらえる?」
質問しているように見えて、これが、命令。
目の前に置かれた証拠物件は、某宗教団体の資料。
一橋サツキと楠カエデの違い。
それがコピーでも証拠物件を外に持ち出せるか、持ち出せないかの違いと言える。
平気でリスクを犯せる楠カエデの方が危ない。
もう一つの違い、
楠カエデが “金” 目的なら。
一橋サツキが “出世” 目的と言える。
「・・・・勧誘?」
「まぁ〜 遠からず。近からず。かな」
「まさか・・・・潜入・・・・」
「そう。この人が、問題の人なの」
写真が添えられる。
蓮本ヨシオ(33歳) 大手出版 英明社
「・・・・・・・・」
「ほら、宗教団体って学校とか、マスコミとかと同じで警察が踏み込みにくいところなのよ」
「ふ〜ん」
「ほら、教育基本法とか、信仰の自由、報道の自由とか」
「・・・で」
「この人。会社の金を横領したところまでは、突き止めたんだけど・・・・」
「お金を某宗教団体の敷地に隠した?」
「当たり〜」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「報酬は?」
「むふふふ。わたしが払うわ」
「きゃ〜 お金持ち〜 って、これが成功報酬になると×××万近いよ」
「大丈夫よ。会社と話をつけているから」
「ったくぅ」
と、言いながら、目の前のケーキで気持ちを良くしている上に。
シンペイと一緒に潜入すれば、何とかなるような気もする。
しかも、大金が入る。
たまには、仕事もすべきだろう。
・・・受験生なのだが・・・直接、視覚に入る誘惑は強い。
いくらでも、サボる口実が思いつく。
これ、売春?
警察署の外。
“・・・青春を売ったのではなく。公共の福祉に青春を賭けるの”
と、お土産の包みを抱えながら無理やり思い込む。
常々、性悪論的な思考になる割に都合の良いときは、偽善者。
大義名分という自己正当化は、行動を起こす燃料になる。
某宗教団体
いわゆる・・・・宗教関連百貨本・・・・
うんたら、かんたら・・・書かれた “うんちく本” を読んだあと。
シンペイと一緒に大きな建物に入っていく。
最近の宗教は、良いところ取りで、組み立てられているのか、
大きく “愛” という立て札が、あったりする。
キリスト教?
もっとも、紫織は、少しばかり愛に失望してる。
同時に勧誘されやすく危なっかしい。
と本に注意書きされている。
つまり現実の世間に愛想を尽かしているため。
宗教に希望を持って、入りやすいということだろう。
更に独立独歩、
世間の風評にも依存していないため、紫織は、唯我独尊的に入りやすい。
世間が思うように “弱いから” から入るのではなく。
自分が正しいと思えば、大多数の世間をまったく気にしない
“強いから” 入るという、ところだろうか。
本には “慎重に考えて決めよう” といった注意書きがあるのだが一応、目を通している。
とはいえ、子供は、意識されず。警戒もされず。あまり相手にされていないらしい。
「・・・見学していいですか?」
「・・・名前を記入してから、どうぞ」 ニコニコ
で、あっさり、潜入。
ここで分担を決めているのだがオーラが見えるシンペイは、人間を見る。
そして、紫織は、物を見る。
適当に寄り道しながら。神殿らしきところで、お目当ての蓮本ヨシオ(33歳)を見かける。
『・・・・どう? シンペイちゃん』
『お金は・・・・ここにあると思うけど・・・・会社に利用されたんじゃないかな・・・』
と、いきなり爆弾発言。
『な、なにぃ?』
『悪い人じゃないと思うよ。どちらかと言うと善良』
『げっ!』
確かに悪い人に見えにくい。
というより、あの手の善人タイプが悪さをすれば、善良に見える分、反動で怖さが、数倍増す。
まったくもって、最近の犯罪物が面白くないのは善人ぶった人間を犯人役にしないところ、だろうか。
犯人と刑事を入れ替えた方が10倍はマシに思えたりもする。
「・・・・・・・・」
『・・裏を取るわよ』
『・・・お金は?』
『シンペイちゃん。探せる?』
首を振るシンペイ。
この辺が殺人と違うところだろう。
クライアントに対する守秘義務がある
“あんた会社に騙されているよ”
“このままだと、弱みを握られて飼い殺しよ”
とは言えない。
雇い主のほうが極悪ということも、あったりする。
この辺が世相だろうか、金の出所が善意の出所と限らず。逆が多かったりする。
金の出所は、悪意の出所。人の世の辛いところ。
とはいえ、世間にしらけている紫織も積極的に悪意に加担する気になれない。
ものには限度があって悪党対悪党なら。
同類相食むで まぁ、いいかぁ〜 でも。
一方的な悪意には、反発する。
数日後
いくつかの条件が重なって、事件が起きたことがわかる。
英明社の世代交代で若手社長の英見トモカズが映像H系への展開を進めようとしていた。
“別会社を作れよ”
とか思うのだが世代交代した社長は、既存のものを変えて新しいことをしたがる。
当然、方針を問題ありとする社員とぶつかる。
いわゆる、そういう仕事(H)で食ってます。
というのに抵抗がある勢力との兼ね合いになる。
そして、蓮本ヨシオは、そういう抵抗のあるグループの一人だった。
そこまでやるなら “クビを切れ” なのだが、稼ぎ頭を失いたくないらしい。
それならば、という事だろうか。はた迷惑この上ない。
この金をしばらく隠してくれていたら、
社の方針を考え直してもいいとか、言ったらしい。
もう一つ、
宗教団体が大きくなると政治的発言が強くなったりする。
一言で集票できるのなら心強い。
もっとも、互いに宗教色、政治色から一線引いている場合が多い、
浮動票の兼ね合い。
政治不信、宗教不信もある。他にも官僚不信、企業不信。
これだけ相互不信、人間不信が大きければ経済不況になるのも当たり前だろうか。
“ちょっと、彼と食事をしてね” など。
どちらの協力も露骨でなく。わかってくれよ的な。
微妙な言い回しや雰囲気で誘導しているに過ぎない。
そして、相手の弱みを握っていると一方的に協力してもらえる。ということも、わかってくる。
とういうわけで政財での癒着も絡んでいる。
“どこかで聞いた話しね” と思う。
紫織も、相当な秘密を知っている。
守秘義務と同時に金のなる木。財産でもある。
中には公表した方が世のため人のため、といった迷惑な守秘義務もある。
今回も、それに分類される。
加害者になる人間の方が頼みに来て、被害者を作る。
しかし、これが外に漏れると一流どころ、二流どころから相手にされなくなるから厳しい。
顧客にすれば当然。自分に不利益を与えるようなところに、お金を支払ったりしない。
シンペイの特殊能力は別にして、
こもれび探偵団は、守秘義務で稼いでる。と言ってもいい。
見ても、聞いても、言わざる。
善悪の基準で、決めて良いのか怪しいが信頼されて、入ってくる情報なのか。
積極的に工作して、の情報なのか。
ということになる。
こもれび古本店 二階
こういったことに受験生である中学3年生が関わって良いものか、どうか。
ボーイフレンドの三森ハルキに見せられないと。思っていたりもする。
紫織。
豪族娘の佐藤エミ。
ヤクザ娘の安井ナナミ
そして、大学生だが、富田サナエ。
どうしたものかと頭を付き合わせる。
おやつは、ワンパターンと思いながらも店の前でやっている回転焼か、
少し歩いた先のクレープ。
せせらぎ商店街に行けば、美味しいケーキ屋さんがあるのだが・・・・
「・・・・なんかな・・・・気乗りしないな。こういうの」 安井ナナミ
「でも良くある話しね。シュールで良いわ」 佐藤エミ
「当事者でなければね」
「わたしは、家に反発しているから。この手の話し、自分から積極的に関わりたくないのよ」
「チョコケーキ食べたのに?」
「ぐっ! 美味しかったけど・・・」
「・・・・・・」
「だいたい、一橋のやつ、ロクな話しを持ってこないんだから、何が裏が取れたよ」
「裏の裏があるじゃない」
「裏の裏は、表・・・」
利害関係さえわかれば、簡単に表で繋がったりする。
逆に利害関係で犯人の目星がつく。
「「「・・・・んん・・・・」」」
探偵業は、クライアントの意思と利益が優先される。
テレビやアニメでやっているような、正義の味方ではない。
クライアントに不利益を負わせると。受注は、ぱったり。
それも良いかも、と思ったりもするが実入りが良いため、ズルズルと続いている。
というより。 やめる = 漏えい と、判断されると生命の保証も怪しくなる。
しかし、抜け道もある。
公衆道徳に反する依頼の場合は・・・うんたら、かんたら・・・という文面。
こいつにサインしてるのだから、利用すれば、何とか、なったりもする。
とはいえ、そんなの頻繁に使っていたら仕事にならない。
独りよがりの正義感も、偽善も、振りかざせない人の世。
引き篭もり万歳。と、思いたくもなる。
いや、引き篭もりの何が悪い。
日本外務省は、引き篭もりのドメ派が実権を握っている。
というわけで、英明社前。
紫織 & シンペイ & サナエ
大手出版社だけあって、ビルも大きい。
オタク少年シンペイは、かなり嬉しそうで、鼻歌交じり。
彼の好きな作品も、ここから発信されている。
本来、簡単には入れないところだが社長お墨付き。
予約が入っていると別。
・・・・・偽名を使っているはずなのに・・・・・
・・・・ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・・ヒソヒソ・・・・
こもれびの妖怪娘とか、妖女とか、呪いたくなるような、連中が数人いる。
こういう連中が情報を配信しているのだから、世の中、悪くなる。
少なくとも、表面上、被害者としてしか、
有名になっていないはず。
弱っている人間の傷口を広げ、塩を塗って、面白がり、金にするような連中だ。
思わず、この世から消す方法を考えたりもする・・・・
・・・・とりあえず、情報収集。
「・・・あのぅ」 案内嬢
「なにか?」
「有名な、探偵なんですよね。推理ショーとか、されるんですか?」
「・・・そんなの、したことありません」
案内嬢も、ろくな事を聞かない。
偽名を使っているんだから少しは悟れ、
だんだん、自分が芝居小屋に入った芸人に思えてくる。
『・・・6人に1人は、知っているよ』
だそうだ。
少なくとも見てみぬ振りをしている良識家が半分ほど・・・
救いだろうか。
これで、容姿が沢木ケイコや中山チアキなら映像になって、引っ張りだこだろう。
淀中3年 教室
中学三年という季節。
荒れやすい兆候もある。
紫織が、どういう立場かと言うと。
社会的に自立している点で、同級生とは、一線を画していた。
芸能人とほとんど同じ扱いと言っていい。
既に社会人なのだから、学校側の進路相談も、
“社会的に実績あるので好きにしていいよ” で、 “はぁ” という感じ。
誰も、親が恋しい年頃とは、思っていないようだ。
とはいえ、忙しくて、それど頃でないというのが実情と言える。
中学生で社会人ともなれば、これが、いろいろと相談されたりする。
「・・・角浦さん、高校は、どうするの?」
何度目の質問だろうか?
そんなにわたしの動向が気になるのだろうか?
冬の間、仕事の合間を縫って、
エミちゃんに教わっただけあって、中の上にまで、返り咲いていた。
順当に行けば・・・・・・・・・・
「・・・・・道善高校か、奉山高校かな」
上の上の宗仙高校。上の中の光誠高校。上の下の甲斐高校。
中の上の道善高校。中の中の奉山高校。中の下の奈河高校。
下の上の比叡高校。下の中の聖心高校。下の下の純清高校。
どちらかと言うとセーラー服目当てと、保険で高校に行く。
中卒でも生きていけないことはないが高卒でないと、仕事で差し障りがあるかもしれない。
日本が学歴社会かどうか。
一定の学歴がある方が相手に安心感を与えると言う程度。
高校に行ってない相手だと信頼できるかどうか、役に立つかどうか、だけでなく。
能力や実力まで、確認しなければならない。
この仕事が、できるか、どうか・・・・この作業がかなり、煩わしい。
自分自身で生きるのに精一杯なら、省ける作業があるなら省くのが当然。
どこそこの高校出身なら、ある程度、能力や実力をイメージできる。
昔と違って、こいつ駄目なら、クビを切ればいい。
使い捨てを前提にした採用ができない社会になると。
雇う側も “雇って、育てれば良い” といった気概まで失う。
教室を見渡すと高校受験を考えているのか、そわそわしている。
『世知辛いわね』
そうでもなさそうなのは、沢木ケイコと中山チアキだろうか。
二人ともますます美人になっている。
高校入学と同時に某プロダクションで芸能活動もするらしい。
もっとも、“10倍返しよ” で、二人に、とんでもない投資をしているのが紫織だった。
自分でも使った事が無いような化粧品が使われている。
“中学生が化粧するな”
なのだが、美肌効果のあるものばかりで、化粧と言うわけではない。
それでも、10倍返しなら、悪くない。
競馬、競艇でも、一番人気、二番人気で、10倍は、そうそうない。
2人とも合気道が強い、新しもの好きな芸能界でスキルが高いように思える。
声は悪くなく。歌唱力は、人並み。
アカペラでなければ、なんとか、誤魔化せるらしい。
“中学生が投機するな” という声も聞こえてきそうだが、
資金に余裕が、あると捨て金でも投機もしたくなるというもの。
おかげで鎌田ヨウコと少しばかり隙間風。
シンペイも、あれだけ美人の沢木ケイコ教われば簡単に落ちそうに思える。
某宗教団体で、盗難騒ぎ。
しかし、盗まれておらず。
敷地の隅で金庫が発見され、中身も無事。
という事件。
その数日後、
警察が盗難騒ぎを口実に某宗教団体に乗り込んで英明社の箱に入った札束を発見。
蓮本ヨシオが容疑者で捕らえられる。
横領となるはずだったが英見トモカズ社長が恩着せがましく起訴しないことで一件落着。
めでたく、英明社のH推進派が優位になり。
某党も、某宗教団体に恩を着せながら、“なあなあ” で集票稼ぎ。
となるところだった。
しかし、札束と一緒に英見トモカズと某党地方幹事の贈収賄の証拠まで発見されてしまう。
奈河市の外れの喫茶店。
富田サナエが、コーヒーを飲んでいると。
幸城ショウタが相席。
サナエが黙って封筒を渡す。
「・・随分と、まどろっこしいな」
「・・今回はね」
「正義の味方は辛いぜ」
「人を呪わば穴2つよ」
「そして、蓮本の祈りも届いたと、いうところね」
「英明社が、まっとうに稼ぐのも大変な時代だよ」
「大変なのは、むかしから。無理じゃないもの」
「仕事が、あったら、また、呼んでくれ」
「ええ」
しばらくすると、一橋刑事が喫茶店にやってきて、相席。
今度は、一橋刑事が封筒をサナエに渡す。
「・・・おかげで、助かったわ、よくピンポイントでお金の隠し場所が分かったわね」
「盗難騒ぎで蓮本がお金の隠し場所にまで確認に行ったの」
「彼に付けた発信機で追跡すれば、大体わかる」
「なるほど、警察を引き込みやすくするためだけじゃなかったのね」
「・・・店長は・・・もう少し、後味の良い仕事をしたいそうよ」
「まあ、今回は、ちょっと後ろめたかったわね。まじめな人だったもの」
「でも痛み分けか、あの社長、弱っていたから」
「出世欲に目が眩んでない?」
「・・・まさか。まだ、正義感のほうが強いわよ」
「だと良いけど」
「じゃ わたし行くわ。もう大変、遺産相続で殺人未遂があったの」
「へぇ〜」
「もう、なんだかねぇ〜 母親と娘二人が長男の分の遺産を狙って殺そうとするんだから」
「世の中狂ってきたわね」
「・・・・・・・・・」
「それに、長男のいない間に父親の病理解剖も断っているし・・・」
「・・・・・・・・」
「病院もグルかもね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です
第一部が、41話で終わっているので、第二部は、51話から始めます。
いまのところ、埋めるつもりはありません。
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よろしくです
紫 織 一部 |
第51話 『気分は、さざなみ』 |
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