月夜裏 野々香 小説の部屋

    

召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』

 

 

 第01話 1923年 『おれ、一人でVRMMOかよ!』

 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ

 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ 使えねぇ

 なんで、価格が等価なんだよ。

 魔法陣から浮き上がって投影される光景は、楽×天の画面そのものだった。 

 財布の中にある軍資金を対価に現物を召喚することができた。

 カードも使えるが使うほど残量が減っていく、

 戦前と未来じゃ消費者物価指数が違うだろうが、時価で計算しろよ。ふざけんな。

 どこの馬鹿が物価を上げてるんだ。

 マジぶっ殺す。

 きっと、あいつだ。偉そうにニコ動で食っちゃべってるリフレ野郎

 まじ死ね。すぐ死ね。

 ていうか、なんで、楽×天は、民生品ばかりなの、ふざけてるの、

 いい加減、TPPで銃規制を外せよ。

 使える商品が少なすぎ。

 もっと、一生懸命に働いて、貯金しておけばよかったと後悔したよ。

 楽×天以外のサイトが使えないのが痛い、情報源から切り離され、孤立感が深まる。

 オタクは、ネットから切り離されると死ぬんだよ。マジで、

 取り敢えず、必要なのは情報だ。

 明治・大正・昭和史で、まともそう本を数冊買おうかと思ったが、

 あり過ぎて、どれがいい本なのか分からない・・・後回し、

 

 

 目の前に広がっていたのは、9月1日、関東大震災直後だ。

 まだ、火焔が巻き上がってるし、煙と灰がモウモウで、

 襖のようなものが燃えながら舞ってる。

 死体が焼けているような臭いがしてるし、泣きたくなった。

 つか、俺、下手したら死ぬよね。

 

 ちょっとだけ、回想しよう。

 そうしないと、戻れなくなるんじゃないかと不安になる。

 そう、あの日、楽×天で、買い物をしていた俺は、

    召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』  1000円  作者 X夜X X々X

     “行き先1923年 先着一名様でVRMMO。召喚魔術使えます。戻れなくなるけど (笑”

 なる商品を見つけた。

 購入のボタンを押したら、空中に文字が浮かび、声が聞こえた。

  “おめでとうございます”

  “召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』 のご案内をさせていただきます”

  “一人VRMMOで召喚魔術は、向こうで使います”

  “楽×天召喚魔術は、御手持ちのお金。口座のお金。現地のお金が使えます”

  “左手でV字を作って心臓に置くと発動し、やめると消えます”

  “3分後、1923年に出発しますので、準備してください”

  “総質量は、体重込みで100kg以内の手荷物”

  “靴。金。クレジットカード。金品類。着替え、その他、1923年代で使えそうなものです”

  “総質量をオーバーするとランダムで消えますので、お気を付けください”

  “では、御身内と関係者にお別れを・・・”

  “では、カウントを開始します”

  “180・179・178・177・176・175・174・・・・”

 魔が差した。

 そう、きっと、魔が差したんだ。

 だいたい意味不明なネット作家の書いた本に1000円もだすとか、ありえない。

 しかし、その日、映画館で見ようと思っていたXXァンXXXンを運良くX画で見れたんだよ。

 調子に乗ってました。マジで、

 ていうか、戻れないとか書いてあったけど、

 「・・・・」 ため息

 

 

 燃え盛る家並み、人々が必死に逃げ出していく、

 服に火が付いた人が家から飛び出し、近くの人が消していく、

 時々余震が起こり、あっちこっちの建物が崩れ、

 火焔が竜巻を作って物を空中に放り上げ、煤煙が燻っていた。

 とても垢抜けた服装でフラフラしてると、奇異に思われたのか、いろんな人に見られる、

 「おい、邪魔だ。どけ!」

 どてっ!

 急いでいた小男に邪険にされて気持ちが崩れた。

 泣きたいよ。

 俺。こんなとこに置かれても無理だから、

 お金あんまりないのに楽×天召喚なんて使えないよ

 「あんた、大丈夫かい?」

 「平気です」

 「あんたも焼け出されたんだろう」

 「はい」

 「わたしの家も燃えちゃったよ」

 「どうしよう・・・」

 「お互い様だよ。あんたもがんばんな」

 「はい」

 優しい人に出会えて、ちょっとだけ、HPが回復、

 でも、ほとんどの人は、戦災で、それどころじゃなく。こっちも、それどころじゃない、

 そういえば爺さんと婆さんの時代だな、

 爺さんと婆さんの名前・・・なんて言ったっけ、

 核家族が進み過ぎた弊害で思い出せねぇ

 というより、子供にあんたの孫ですとか。笑うしかないわ。

 

 取り敢えず、身元を証明するための戸籍やら住民票やら手に入れなければならない、

 死人ならワンサカいるから成り済ますことはできるかもしれない、

 しかし、この時代の特高は、まじで怖い、

 家族が全滅していたらいいけど、知り合いとか生き残ってたら面倒なことになる、

 それどころか、小中高と、同級生が全滅してるとか、天文学的で無理ゲー過ぎる。

 そうそう、この時代の金もいるけど、当然、無一文だ。

 まじ泣きてぇ

 火事場泥棒でもするか、

 いや、流石に良心が咎める。

 んな、こと言ってられない、

 うぅああああああああああああああああああ!

 わかった。

 わ か り ま し た

 頼むよ。助けてください、

 X夜Xは、神様です。

 我が神、X夜X様。なんとか言ってください。

 いつもみたいに、ご高説たれてください、

 どうしていいのか、言ってください!

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 マジで、どうしていいのか、わかんないの

 読んでるよね。見てるよね。

 見て笑ってるよね

 フラグあるなら言ってみて、やるから

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 おれ、ボイコットしちゃうからね

 この世界の日本。負けさせちゃうからね。

 どうなっても知らないから!

 史実通りにしちゃうよ。おれなーんにもしないから、

 おれ、最強とか患ってないし!

 おれ、TUEEEEEEEEとか全然ないから!

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 スルーかよ。

 お前はそんなヤツだよ

 青白き読んでそう思ったよ。

 おまえ、マンパワー信じてないよな。だよな。

 本当は、先着1名とかじゃなくで、先着1名が数千人いるんだろう

 ていうか、なんで憑依じゃないの、偉い人に転生させろよ。

 身元不明で追い詰めるとかやらないだろう。普通!

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 あれ・・・よく考えると、急に熱が弱くなるんですけど、

 燃え盛る空から大きな看板とか、カバンのようなものがクルクル回りながら迫って来る、

 頭、真っ白

 ドカッ!

 看板は魔法陣に当たって跳ね返った。

 な、なに?

 魔方陣って、ETフィールドなの、

 楽×天だからRTフィールドってか、

 や、やった。

 やった!

 おれ、最強!

 おれ、TUEEEEEEEE!

 って、動かせねぇじゃん、

 魔法陣、移動できないじゃん!

 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け

 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け

 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け

 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け 動け・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 うぅああああああああああ!

 おまえ、好きじゃん。エ×ァ好きじゃん、答えてよ!

 ・・・・・・

 ・・・

 このサディスト! マジで怒るからな、なんとか言えよ!

 だいたい、3分って、なんだよ。3分って!!

 服を着替えて、金持って、靴履いて手近なもの入れたら終わりじゃん、

 最低5分よこせよ。

 チョットぐらい、人間性があるなら3日くれるはずだろう!

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 俺、孤軍奮闘なんて嫌だからな! 絶対にやらないからな!

 頼むから、なんとか言って、

 ・・・・・・・

 ・・・・

 どうしよう。

 無一文だし。

 まじ泣きてぇ

 火事場泥棒でもするか、

 いや、流石に良心が咎める。

 んな、こと言ってられない、

 と、堂々巡りのループから抜け出せずにいたが、

 生きている者が下敷きになっていると、近くの人たちが助け出している、

 実に素晴らしい助け合いの共同体だ。

 火事場泥棒とか、どうやって死人に成り済まそうとか、おれ、恥ずかしい。

 そんなことしていられないのだが、自分も近くにいたら助けないとまずいだろう。

 そういや、ニコ動で誰かが言ってました。いいひと作戦。

 することを思いつくと、なんとなく、やろうという気になるから不思議、

 邪魔な手荷物は、誰も見てないところで、穴を掘って埋める。

 こんなの特高に発見されたら拙すぎるし、

 あっちで、人助け、

 こっちで、人助け、

 偽善はいいね、リリンが生み出した最高の文化だよ。

 崩れた塀から爺さんを引っ張り出すと、

 「危ない!」

 !?

 ぼこっ!

 あうっ!

 俺の人生 お つ か れ さ ま で ・ ・ ・

 

 

 

 

 かっこよく人助けしていた俺は、うっかり壁の下敷きになった。

 次に目を覚ましたとき、

 袴少女に手当されていた。

 『ああ、ちょっと、萌えです』

 できれば、青髪の美少女ならって思ったけど、現実は甘くない、

 「だ、大丈夫ですか?」

 「あ、ああ、大丈夫です」

 「よかった。せっかく、お爺様を助けてくださったのに怪我をなされたので心配しました」

 『何文節話したんだ。昔の娘は、こんなふうに話せたのか』

 「あのぉ どちら様でしょう。お名前をお聞かせください」

 『し、しまったぁ なんも考えてなかった!!!!』

 「あのぉ 大丈夫ですか?」

 「え、ええ・・・と・・・なんだっけ・・・・・・」

 「ひょっとして、記憶をなくされたのですか?」

 「はい」

 「「・・・・・・」」

 

 

 

 情けは人の為ならず、

 そう、人に情けをかけることは、その人のためでなく、

 巡り巡って自分に恩恵が戻ってくる。

 そう、神様は、上から見ていてくれる。感謝・・・

 じゃねぇよ!

 ふざけんな。X夜X!

 どうせ、過去に送るなら先着2名にしやがれ、孤立無援だろうが!

 おれ、ボイコットするから! サボタージュするから! 本気だからな!

 だいたい、楽×天召喚ってなんだよ。おまえ、楽×天の回し者か。

 それに、お前の作品は、いつもいつも、冷たいんだよ。心がないんだよ。

 ・・・・

 あ、ごめん、ごめんなさい、俺が悪かった。

 だから、ほかの人と変えてください、

 おれ、読む人だから! 本当に読んで笑う人だから! なーーーんにもしない人だから!

 巻き込まれただけ、

 ちょっと、手が滑ったの、指がね、力入りすぎたの、

 魔が差したの、本当に魔が差したんだからね!

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 放置プレーかよ・・・・

 買うんじゃなかったよ・・・

 

 

 

 神奈川県 二宮町 園川邸

 「二宮さん」

 「げっ! 突然入ってくるな!」

 楽×天召喚を女中に見られた。

 「あれ・・・」

 ん?

 「どこいったのかしら」

 なんだ。気づいてない。

 「朝食も取らずに。しょうがないわね」

 すぅ〜

 魔法陣の外からは、見えないのか

 通りで・・・・

 ギョッ! とされたり、なんとなく、思い当たる節があった。

 

 

 園川高吉(76)は薩摩閥で銀行業に携わり、

 その後も東京倶楽部理事や帝国運輸倉庫社長など数多の会社役員を務めた官僚、実業家。男爵だった。

 老い先短い生命の恩人をどうしたものかと、逡巡するが、その男は、記憶喪失。

 それ以前に、元服を過ぎてるというのに、どう見ても役立たず、出来損ないに見えた。

 この日本で、どう育ったら、あんなクズみたいな男に育つのか、皆目わからんが、

 しかし、風体は、いいところの出としか思えない、

 知人の薩摩閥と長州閥にも問い合せているが、それらしい者はいない、

 そうなると、それ以外の華族か、成り上がりか、地方の豪族衆になるが・・・

 放り出した後、記憶が戻り利権絡みで敵対されると厄介で、書生として抱え込むしかなかった。

 女中がコーヒーを持ってくる。

 「光子さん。彼は何をしてるのかね」

 「部屋で、何か独り言を呟いていたようですけど」

 「昼まえに起きて、新聞を読んだあと、弁当持って、震災の助けに行きました」

 「ほう、見かけによらずだな」

 「ご主人様の命の恩人なのでは?」

 「まぁ そうだが、どうも、あの男は、ふわふわ、ナヨナヨしてる」

 「わたしも、そんな気がします」

 「そんなヤツに助けられたとあっては、末代までの恥だが、何を考えてるのか、全くわからん」

 「いいところの出なのでしょう」

 「そうかも、しれんな」

 女中は、頭がいいに限る、

 自分の考え不足と、感覚の正常と異常を気づかせてくれる。

 

 

 

 おれ、園川邸を出て歩いている。

 この時代の日本人の平均身長は10cmほど低いらしい、

 ま、頭一つ分で、俺って少し偉くなったきがする。

 自分の手荷物は、まだ埋まったまま、落ち着き先を見つけない限り、掘り出さないほうがいいだろう。

 目の前に焼け野原が広がっている。

 救済活動は、なかなか大変だが、気を紛らせてくれる。

 園川老も何か思い出す切っ掛けになるだろうと、外出を認めていた。

 人助けも、衣食住足りて、なんとやらだ。

 あと、記憶喪失は面倒だから、

 住所プラスで、二宮忘太(にのみや もうた)なる名前をつけられた。

 思い出せなかったら、一生、忘太だ。カッコ悪い。

 ていうか、戻れないなら、ずっとこの名前だよ。

 拾ったカバンの中は、教科書とノートらしいものが入っていたがそれだけだった。

 持ち主を探しに行くが、まぁ 人脈作りだ。

 その前に特高に捕まっても誤魔化せそうな戸籍と住民票を手に入れないと、まずい、

 あ、戸籍を取ったら徴兵されるか、

 いや、徴兵は住民票だっけ、

 まずい、まずい、まずい、

 俺みたいなのが帝国軍に行ったらいじめ殺されるわ。

 だいたい、死ぬの嫌だし、撃たれるならともかく、餓死とかマジ勘弁。

 なんとなく、魔法陣を描き、楽×天を起動する。

 何度見ても、適当な価格で、なにか役に立ちそうな物が、全くないのが腹立たしい、

 旋盤は・・・・はぁああああ?

 口座の残金が少な過ぎる上に消費者物価が違いすぎるのだ。

 ×夜×の野郎・・・

 どうせ、召喚できるのならゴーレムとか、ドラゴンとか、潰しの効くものにしてくれりゃいいものを・・・

 楽×天とか、ありえないし、お金持ちしか駄目じゃん、俺、貧乏で駄目じゃん、

 しかし、園川老は、薩長閥の有力者の一人らしく、なかなか使える。

 最大の問題は、身元不信で不審がられてるところだろうか、

 なんにしても、金はいるのだ。

 どうしたものかと廃墟をうろつき、困っている人を助けていく、

 小さなことからコツコツとで、知り合いが少しずつ増えていく、

 「実は、記憶喪失なんですよ」

 「まぁ たいへん、今は、どうされてるのですか?」

 「たまたま助けた相手が金持ちだったらしくて、今は、そこの書生をしてるんです」

 「そうなんですか」

 「いまは、二宮忘太なんて、住所付きの名前をつけられまして、忘太の忘は、忘れるの字なんですけどね」

 「まぁまぁ 早く、本当の名前を思い出せるといいですね」

 「ええ、そうなんですよ」

 なんて感じ、

 たまに人助けのお礼で、余り物をもらったりする。

 10人に1人くらい、

 

 

 一週間もすると社会の様子がなんとなく見えてくる。

 この時代、3種類の人間が日本に住んでいた。 

 権力層、日本人、朝鮮人。

 利権者のやることは変わらない、

 利権を守るため最大限に紙幣を集めるため庶民に紙幣が回らず、貧富の格差が広がっていく、

 革命前夜とはいかないものの、

 金が満州や半島に流れて、利権屋が私腹を肥やしている。

 あと、中国に紡績工場とか作って安い綿製品を仕入れようとか、

 どんだけ日本の労働者を失業させてんだよ。

 いつの時代だよ。同じ繰り返すなよ馬鹿がって感じ、

 見渡すと、貧富の格差が広がり、左翼思想が万延している。

 特高がピリピリとするほどだ。

 こんだけ格差社会だと、そりゃそうだ。そうりゃそうだ。と実感するね。

 そして、朝鮮人は、もっと悲惨で、ひたすら、利権に媚びしがみつき、

 騒乱と混乱と戦争を画策し、どさくさに紛れて出世しようとしてた。

 この構造は、未来と変わらない、

 アメリカに支配されていないだけましで、

 治安は、ちょっと粗野だけど、それなりに守られていた。

 しかし、関東大震災のせいで、被災民が路頭に迷い、結核患者が急増している、

 戦艦なんか建造してる場合じゃないだろう。

 そう思うほど、格差が広がっているのに公共投資が行われておらず、道路は舗装もされていない、

 毎日、毎日、人助けをしつつ、炊き込みを分けてもらいつつ、名前を売って、人脈を広げ・・・

 さて、どうしたものか、

 下手に動いて、特高に捕まって三角木馬されたら、マジ泣き叫ぶ自信がある。

 

 

9月

   関東大震災発生

   東京市他郡部に戒厳令発令(〜11月15日)

   第2次山本内閣発足

 

   戒厳地域を東京府・神奈川県に拡大

   戒厳地域を埼玉県・千葉県に拡大

   亀戸事件

 

   支払猶予令(震災手形参照)

   東京市内に夜間外出禁止令発令

   国際刑事警察機構設立

 

   ホンダポイント遭難事件がおこる

   憲兵大尉甘粕正彦が大杉栄や伊藤野枝らを殺害(甘粕事件)

   甘粕事件のため福田雅太郎戒厳司令官更迭(後任山梨半造)

   スペインでプリモ・デ・リベラ軍事政権が成立

 

 

 麹町(霞が関)

 震災跡が、まだくすぶっていた。

 東京倶楽部は、第一級の紳士の社交場として作られた赤レンガ館で、

 園川男爵は、そこの理事をしていた。

 俺は、車を運転し、園川老の東京倶楽部の送り迎えをしていた。

 あまりのボロさに泣きたくなる舶来物の外車で、日本製よりはるかにいいらしい、

 「二宮君は、何をしたい?」

 「はい、飛行機関係の仕事をしたいと思ってます」

 「飛行機か。わしは、銀行は、わかるが。飛行機は、全くわからんが」

 「これからは、飛行機と潜水艦の時代だと思うのです」

 「なるほど」

 「なので、両方に関わりのある機械がいいかもしれません」

 「ほぉ 君は、君なりに。日本のことを考えてるのだな。驚いたよ」

 「そう言われると、照れます」

 「もっと自分本位な人間だと思っとった」

 「・・・・」 苦笑い

 「これから行く場所は、有力者がたくさん集まる」

 「二宮君は、まだ入ることは許されないが、君の希望が叶うかどうか聞いてみよう」

 「ありがとうございます」

 なんとなく迷うが、軍隊生活は無理だとわかる、俺、繊細だから、

 しかし、これからのことを考えると、何かに精通しないと徴兵される

 まずい・・・・

 

 10月

   ウォルト・ディズニー・カンパニー創立。

   ドイツのマルク暴落に対して暫定通貨であるレンテンマルクの発行を決定

   フォッケウルフ社の前身ブレーマー航空機製造株式会社がが設立される。

   トルコ共和国成立

 

 

 その後も、震災で困っている人を、いい人作戦で、人助けをしつつ、名前を売り人脈を広げた。

 結構、必死なのは、徴兵逃れのためだ。

 そうそう、カバンの持ち主が見つかった。

 大学生の吉野次郎で、今は料理屋に住み込んで働いている

 震災で家と学校を半分燃やされたらしい、

 残念そうに教科書を見ていた。

 

 数日後、

 園川老に案内されつつ車を走らせていく、

 園川老の後ろの威圧というか、眼力は本物だと思う。

 徳川幕府相手に明治維新をやり遂げた長州閥って、はんぱねぇ

 「その工場に入りなさい」

 「はい」

 震災は痛い痛しいが、学校の運動場ほどの工場の前に止まる。

 「ここは寄せ集めの紡績工場でな」

 「経営難に陥った持ち主が亡くなった」

 「震災から立ち直れず、銀行の抵当に入った工場だ」

 「紡績機が10台とミシン10台」

 「あと、旋盤4台、ボール盤2台、中ぐり盤1台がある」

 「たぶん、震災が落ち着けば、機械の類は、倍に増やせるだろう」

 「住む場所も隣の敷地にあって、その家だ」

 「ここで働けるんですか」

 「まぁ 好きに使いたまえ」

 「ぼ、僕がですか」

 「難しいなら別に経営者を探して送るが」

 「ぜ、是非やらせてください。お願いします」

 「この工場の社員で残ってるのは、5、6人だったかな」

 「あそこにいる」

 「わかりました。挨拶してきます」

 銀行関係者は、この種の情報が集まる。

 そして、自分なりに人脈を広げていて、

 元工員や使えそうな人にも心当たりがあった。

 

 

 与えられた地位は、町工場の工場長だった。

 しばらく、銀行が面倒を見てくれるらしいが、支援は10年で打ち切るからと言われた。

 この時代にしては、寛大で大盤振る舞いだ。

 早速、自分が履いていたトランクスを解体して、図面を描いた。

 俺、トランス派なんだよね。

 そして、作らせてみたがゴムが駄目駄目だった。

 マジ泣きたい。

 しかし、ふんどしは勘弁して欲しい。

 その日、出来たての現物を見せ、園川老にトランクスの特許申請ができるか聞いてみた。

 「ほう、それは中国製と思っていたが、そうでもなさそうだな」

 ガーン!

 この爺さん、知ってやがった!

 そりゃ あのトランクスを洗ったら目立つわ、

 しかもナイロン製ソールにメイドイン中国って書いてるし、

 不敵に笑う爺さんに、全力の苦笑いで誤魔化すしかなかった。

 ていうか、この爺い〜 疑ってるのに知らんふりしやがって、しれっと悪党だろう。

 道理で大盤振る舞いと思った。

 

 

 11月

   アドルフ・ヒトラーの国家社会主義ドイツ労働者党などがミュンヘン一揆

 

 

 園川老がつけてくれた秘書は、石原省吾34歳で優秀な男だった。

 こちらが道を考えると、

 ヤクザから警察まで折り合いを付け、藪を払って大抵の凸凹を整備し、

 ボロボロの工場が正常運転にまで漕ぎ着けていく、

 こいつ。年上とかそういうの抜きに、俺より優秀な気がする。

 本当は、特高じゃないかと内心ヒヤヒヤしている。

 巷の噂だと、特高の天下りは、軍の天下りより強制力があるらしい、

 トランクスは無事に特許が取れた。

 トランクスがデパートに納入されると工場の利益は採算に乗り、

 なんとなく羽振りが良くなっていく、

 この時代の日本は、やっぱり、繊維織物業だ。

 ちなみに工作機械は、地震でちょっと歪んでんじゃないのって出来だが、

 こちらも楽×天で選んだ工具を召喚して模倣させる。

 センスがいいので、そこそこ売れ、10年以内に自立できそうな気がする。

 そうそう、あれやこれやで工場長の給与は、174円。

 大卒の初任給が75円から65円だから意外と悪くない、

 やっぱり銀行を味方につけると人脈と金脈が強く、営業も楽だ。資本主義万歳 (笑

 というより、資本家レベルで、格差是正ができるわけがないのだ。

 そういうのは政治家の仕事じゃね。

 

 

 家は、関東大震災の生き残った平屋。

 元々作りが良いいだけでなく、運も良かったのだろうが今は、ボロだ。

 元住人の物が少しだけ残されていて、必要な物は使い、

 いらないものは、近所に上げて人脈作り、質屋に売る方法もある。

 なんていうか、この時代の常識だね。

 基本、自炊するが、慣れないとあたふたする。

 つか、カマドって、なに?

 ガスくらい入れろや、

 ていうか、トイレが汲み取り式の穴とか、吐きたくなるし、

 被災民が路頭に迷ってる中、一軒家に住めるなら御の字だ。

 取り敢えず、穴を掘って埋めていた手荷物を運び込む、

 ノートパソコンのコンセントを入れると、動いた。

 感動する。

 当然、ネットからは切り離されているが、他にも小物の電気製品があって嬉しい。

 でもまぁ 用心のためパソコンと電気製品は、隠し場所を作ってそこに隠すことにした。

 

 魔法陣を作って、楽×天を発動させる。

 たっけぇ〜

 工場長の給与175円でなに買えるのって感じ、

 くっそぉ デフレ派は、何やってんだよ。もっと気張れよ、何も買えねぇじゃん、殺す気か、

 口座にあといくら残ってたっけ・・・

 というわけで、ようやく選んだ歴史書を何冊か買う。

 いきなり給料の10倍以上が消えるので泣きたくなった。

 

 工場が軌道に乗ったので増築を考えた。

 しかし、工場が軌道に乗るほど周辺の地価が上がるって、なに?

 マジむかつくんですけど

 

 12月

   第47臨時議会召集

   ネパールがイギリスから独立

   虎ノ門事件

   第48議会召集

   第2次山本内閣総辞職

  

 年末年始は、従業員たちを労い、

 取引相手と得意客と園川老にご挨拶に行く、

 師走と言われるだけはあるが、師でさえ走らされる。

 もちろん俺も、世間並みに人脈作りで動いた。

 神奈川県 二宮町 園川邸 

 年越しそばをご馳走になった。

 「二宮君。どうだ」

 園川老が熱燗を注ごうとし、恐縮する。

 「い、いただきます」

 酒は苦手だ。

 しかし、飲まなきゃやってられんって気持ちはわかる。

 「次は、清浦伯爵が総理大臣になりそうですね」

 新聞を斜め見しながら呟くと、園川老は目を細める。

 「ほう、なぜそう思う」

 「一度、大命を受けてますので、組閣させないわけには行かないと思いました」

 「なるほど、政治にも詳しいようだな」

 「なんとなくです」

 「そうか。なにか、面白い、提案でもあるのかね」

 「軍事費より公共投資を増やすべきでしょう」

 「このままだと、失業者が増えて治安が悪くなります」

 「だがな、軍と軍需産業がそれを許さんのよ。やりすぎると殺される」

 「伊藤博文みたいにですか」

 「・・・まぁ そんなところだ」

 「「・・・・・」」 ため息

 カマをかけたが巷の噂通り、安重根は犯人じゃなく、身代わり、

 警察も検察も裁判官も真犯人を暴こうとせず茶番劇を演じたのだろう。

 ていうか、この時代、ほとんどの日本人が半島を欲した勢力主犯説で、

 安重根を犯人と思っていない、

 そして、警察、検察、裁判官に圧力をかけられる力は、そうそうない、

 今は、軍部の台頭に頭を痛めてる人間も多いようだ。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 小説は、キャラが命だよ (笑

 そんな火葬戦記です。

 登場人物

   作者   =  神(笑

   主人公  =  二宮忘太 (仮名)  中二病 & オタク

 おれ、お前の二人称小説風?

 今回は、コメント省くことになりそうです (笑

 

 史実 日本の総人口5811万人

 

 日本67万5000ku。関東州3462ku。南洋諸島2475ku。

 

 

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召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』

第01話 1923年 『おれ、一人でVRMMOかよ!』
第02話 1924年 『おれ、企業再生機構なんちゃら役員』