第01話 1945年 『08月06日午前08時15分』
広島 相生橋よりやや東南の島病院付近
高度約580メートルの上空でガンバレル型原子爆弾リトルボーイが閃光を発した。
半径500m圏は太陽より明るく、
爆心点は3000〜6000℃に達し、数十万気圧の衝撃波は音速を超えた。
火球は市民を蒸発させ、
2km圏の建造物を破壊し、木造建築を全壊させた。
大気の壁は限界まで広がり切ると、今度は気薄になった爆心点に向かって収束し、
土砂、瓦礫、埃を巻き込みながらキノコ雲を作っていく、
たった1発の大型爆弾が13200000uに点在する61820棟を全焼全壊させ、
死者118661人、負傷者82807人を出し、
爆心地に1000mを超える円錐状の巨大な塔を出現させた。
イザナギ塔 司令室
吉祥司令、秋月政務官、白井民政官は、時計と逆進タイマーを確認すると、
無残に広がる広島を見下ろした。
「無残というか。酷いものだな」
「視野の狭い近視眼軍人どもが愛国心を嵩に私利私欲に走ったからだろう」
「目先の地位、名誉、財産に固執し、それ以上のモノを失った」
「無知と傲慢と怠惰と独り善がりの結果だよ」
「自己を否定するくらいなら、自己を犠牲にする方が楽だからね」
「ふっ 自己犠牲で責任をとった高級官僚がいるのならそう思ってやってもいいが」
「一応、自殺した高級官僚はいるよ」
「認めるつもりはないが、組織人にしたらそうもいかないのだろう」
「大半は、責任転嫁を繰り返し、戦争責任を弱者の国民に押し付けた」
「組織を守って亡国か・・・」
「結果として、日本人は日本軍閥を見限り、商業国家が生まれ」
「愛国心を失った資本主義は、自らの国さえ売り渡す末路」
「権威と権威に頼って、戦略観がないのは、惨めなものだな」
「戦後も軍需も民需も形を変えた政治家、官僚、資本家に過ぎない。中身は大して変わらないよ」
「民需は軍需より経済効率がマシだった。長持ちしたがね」
「とりあえず、次元シフトが成功したのならいいよ」
「外板は完全に消し飛んでしまったようだな」
「被害はともかく、次元移動は制御次第だよ」
「爆発後、爆心点は真空に近く、外に向かって引っ張られる」
「次元が違っても逆に外から爆心点に向かって押す力があればこちらの世界に押しやられる」
「それで、塔の外壁で内壁に向かって、こちら側に押したのだから、多少の被害はやむ得ない」
「管理長。地盤は?」
「はい、計算通り地下100m以下で切れてます」
「ヤバいな。風で倒れたらどうしよう」
「軽く作った分、フラフラですからね」
「太田川を消してるのできちんと埋め立てないと」
「加速器と大電圧でエネルギーを足したのだからもう少し欲しいものだ」
「計算外の幸運は、計算外の不幸の10分の1もないよ」
「期待値が10倍あるということでしょう」
「では計画通りレーザーで掘って静かにホールボーリングを打ち込んでいこう」
「台風が来る前に」
「はい」
「吉祥司令、偵察衛星が軌道に乗りました」
ディスプレーに地球の映像が映されていく、
「鈴木内閣を呼び出してくれ」
「はっ」
「重量軽減も兼ねて、反撃するか」
「「「「・・・・・」」」」
イザナギの塔は200mごと5階段層で階層ごと20m狭まり、
テラスはヘリポートやサイロになっていた。
頂上のサイロから宇宙ロケットが打ち上げられ、
索敵衛星で敵艦隊の所在を確認し、巡航ミサイルを発射していく、
第4層ヘリ格納庫
攻撃ヘリ 火影10機
汎用ヘリ 幻鳳10機、
対潜哨戒ヘリ 海燕10機、
輸送ヘリ 大凰10機が並んでいた。
「救出を急げ、雨が降る前に負傷者を郊外へ空輸させる」
「はっ」
外壁が開くとヘリが飛び立っていく、
「佐野幕僚長。昭和政府と軍に連絡が取れました」
「会見に応じるそうです。空路の対空砲陣地に撃たないよう通達したそうです」
「そうか。出撃するぞ」
「はっ」
第1層地上車格納庫
10式戦車20両、89式装甲戦闘車20両、96式装輪装甲車20両、化学防護車5両
防護服を来た自衛隊が出撃して救助活動が始まる。
廃墟となった市街地を4輪駆動の自動車が走り、
“毒なので黒い雨に濡れない様に” と、スピーカーで伝えた。
沖縄
母親たちは赤子が奪われて泣き叫んでいた。
“はっ” という掛け声と共に赤子は空に放り投げられ、
M1ガーランドが火を噴くと、鮮血と肉塊が空に飛び散った。
アメリカ軍将兵は面白がって笑い、賭け金が受け渡されていく、
“絶対に殺さない” と言われ、
信じて降伏して洞窟から出てきたひめゆり女子挺身隊の少女は服を剥がされ、
アメリカ軍兵士たちによって輪姦され
“殺して” と日本兵に助けを求め、泣き叫びながら殺されていく、
日本軍兵士は面白半分に殺され、
白人と下等動物の日本人の関係が作られ、アメリカに忠誠を誓う者しか生き残れなかった。
「おい、あれはなんだ」
低空を高速で迫る白いなにかが高度を上げ、上陸船団の上空に達した。
閃光を発し、アメリカ軍兵士と、近くにいた住民も一緒に巻き込んで絶命していく、
重油のような粘り気のある大粒の黒い雨が降っていた。
隊員はイザナギの中に入って息をひそめ外の様子を見守った。
「どの程度、助けられたかな」
「手遅れの外側にいる数万人を助けたと思う」
「酷いよな。日本は、よくここから再建できたな」
「日本人の魂が残ってるなら再建できる」
「しかし、魂を曇らされたり穢れさせられたら再建は」
「そうさせないようにしないとな」
首相官邸からヘリに搭乗した閣僚らは中腹のヘリポートに降り、司令室へと案内されていく、
「ようこそ、イザナギの塔へ」
「あなた方は、いったい何者なのです」
「日本人ですよ。未来から来ました」
「未来から?」
「ええ、過去の日本を救いにね」
「確かに救われたようですな。海外無線を聞くとわかります」
「それより、アメリカ艦隊の回収を急いでいただきたい」
「本当に敵艦隊は、いないので?」
「いないのはアメリカ軍将兵ですよ」
「いったいどうやって」
「中性子弾頭巡航ミサイルです」
「アメリカ機動部隊も浮かんでいるだけですし」
「ハワイ、マリアナ、沖縄、フィリピン、ウルシーのアメリカ軍も将兵を失ってるでしょう」
「単独航行してる部隊は別でしょうが」
「本当に?」
「ええ、いまのうちにハワイ、ウルシー、シンガポール、フィリピンを占領し。艦隊を捕獲してください」
「未来からは艦隊を派遣できないのですか?」
「未来側も莫大なエネルギーを必要とするのでね」
「軍艦程度の大きさでは不可能だ」
「わかった。油が続く限り残存艦隊を出そう・・・」
窓ガラスの外を戦闘ヘリが通過していく、
「あのヘリコプターは?」
「攻撃ヘリ火影。この時代の戦闘機なら軽く10機は撃墜できるでしょうね」
「ヘリコプターがか?」
「未来というのは、そういうものですよ」
「未来とは何時ごろの」
「ミレニアムの向こう側ですよ」
「「「「・・・・・」」」」
「時に吉祥司令。長崎から住民を避難させなければならない理由は何です?」
「1945年08月09日、午前11時02分。長崎市松山町171番地の上空503m」
「原爆が落ちる。正確には我々が落とすのですよ」
「そして、もう一つ、イザナミの塔も現れる」
「もう、一棟、このような巨大な塔が現れるのですか」
「ええ、そうなれば、日本は再建が成るでしょう」
「いったいどいう仕組みで」
「まぁ この時代に必要なエネルギーがあったからでしょう」
「原爆ですか」
「ええ」
「「「「・・・・・」」」」
「どうせ、我々が来なければ多くの日本人を巻き込んで失われた命」
「戦争に負けないため、長崎から避難していただきたい」
「「「「・・・・・」」」」
「あと、満州も必ず外延部の日本人住民を引き連れて軍隊を後退させてください」
「じゃ・・・」
「なるべく、ハルピンに近い当たりで殲滅するのでハルピンまで後退すればいいでしょう」
「ほ、本当に?」
「ええ、ソビエト軍もアメリカ機動部隊と同じ目に遭うでしょう」
呉湾
被災してボロボロになった日本人たちが見たこともないヘリを呆然と見ていた。
対潜哨戒ヘリ海燕が港湾上空を飛び磁気機雷の直上から小さな爆弾を投下し、
機雷を次々爆破し、航路を切り開いていく、
関門海峡周辺や瀬戸内海西部1800個、
東京港・大阪港・神戸港・名古屋港1422個、
舞鶴港や新潟港、船川港、朝鮮半島の釜山港3746個
B29爆撃機は延べ1529機で、投下機雷の数は12135個に及び、
日本の航路と港はほぼ機雷に埋め尽くされていた。
これらの機雷処理処理のため、最低限の航路を確保しなければならなかった。
輸送ヘリ大凰は、一度に55人の日本海軍将兵を乗せて飛び立っていく、
若い日本軍将兵は驚き、
眼下の巨大なアメリカ機動部隊の陣容にも目を見張った。
日本軍は空母の飛行甲板に降りると
中性子線照射で絶命したアメリカ海軍将兵に手を合わせ、海に捨てていく、
空母ヨークタウンU
国防軍将兵
「エセックス型か。いいねぇ 流石アメリカはお金持ち・・・」
国防軍将校は端末でエセックス型の設計図を調べ、
海軍将校に命令を下し、ヨークタウンUを接収させていく、
輸送ヘリ大凰は、ほかの艦艇にも海軍将兵を次々に降ろし、
対潜哨戒ヘリ海燕は、周辺海域を哨戒していた。
空母 鳳翔
巡洋艦 八雲、酒匂、鹿島、輸送船12隻
鳳翔 艦橋
「敵潜水艦だけは気を付けろ」
「はっ」
「艦長。アメリカ第58機動部隊です」
「撃ってこないな」
「ええ」
「乗員を乗り込ませて捕獲しろ。1隻残らず呉に曳航するぞ」
「はっ」
アメリカ第58機動部隊 正規空母13、軽空母8、戦艦10隻、重巡16隻、軽巡10隻、駆逐艦88隻、
イギリス第37機動部隊 空母4隻、戦艦1隻、軽巡6隻、駆逐艦18隻
第01任務群
空母ヨークタウンU、ボンノム・リチャード 軽空母ベロー・ウッド、バターン
重巡ボストン、キャンベラ、ボルチモア 防空巡オークランド、サンファン 駆逐艦14
第02任務群
空母バンカーヒル、 ワスプU 軽空母モントレー、カボット
軽巡サンタフェ、モービル、ビロクシー 駆逐艦12
第03任務群
空母エンタープライズ、レキシントンU 軽空母サン・ジャシント
重巡インディアナポリス 軽巡バーミンガム、クリーブランド 防空巡レノ 駆逐艦13
第04任務群
空母エセックス、タイコンデロガ 軽空母カウペンス、ラングレー
軽巡ビンセンス、マイアミ 防空巡サンディエゴ 駆逐艦14
第05任務群
空母ベニントン、ハンコック 軽空母インディペンデンス
重巡クインシー、シカゴ、ボストン、セント・ポール 軽巡1、駆逐艦18、
第06任務群
空母ランドルフ、シャングリ・ラ、
ポートランド、チェスター、ペンサコーラ、ソルトレイクシティ、駆逐艦17
第07任務群
戦艦アイオワ、ニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシン、
サウス・ダコタ、インディアナ、アラバマ、マサチューセッツ、
ワシントン、ノース・カロライナ
重巡ニューオーリンズ、ミネアポリス、サンフランシスコ、ウィッチタ 駆逐艦14
イギリス第37機動部隊
空母フォーミダブル、ヴィクトリアス、インプラカブル、インディファティガブル、
戦艦キング・ジョージV世、軽巡6、駆逐艦18 輸送船200隻
第1護衛隊
護衛空母サンガモン、サンティー スワニー、ペトロフ・ベイ
駆逐艦 3隻 護衛駆逐艦 4隻 輸送船200隻
第2護衛隊
護衛空母ナトマ・ベイ、マーカス・アイランド、オマニー・ベイ、サボ・アイランド、カダシャン・ベイ、マニラ・ベイ
駆逐艦 3隻 護衛駆逐艦 4隻 輸送船200隻
第3護衛隊
護衛空母ファンショー・ベイ、セント・ロー、ホワイト・プレインズ、カリニン・ベイ、キトカン・ベイ
駆逐艦ホーエル ヒーアマン ジョンストン 護衛駆逐艦デニス ジョン・C・バトラー レイモンド サミュエル・B・ロバーツ
輸送船 200隻
アメリカ合衆国
白い家
「どうして、ハワイと連絡が取れない?」
「わかりません。いくら問いかけてもホノルルは応えません」
「沖縄は?」
「いえ、ウルシー、マニラ、硫黄島、マリアナとも連絡が取れません」
「いったい、何が起きた?」
「原子爆弾は投下したのか」
「はい、広島への原子爆弾の投下は確認しています」
「なぜ、その後の連絡がない、空母機動部隊はどうした?」
「機動部隊とも連絡が取れません」
「いったい、何が起きた」
「まさか、化学兵器を」
「日本は化学兵器を使ったのか」
「わかりませんがそれ以外に・・・」
「ではどうやって、化学兵器を運んだのだ?」
「「「「・・・・・」」」」
並行次元世界の地球
日本時空管理室
「次元レーダーは1945年08月06日午前08時15分の時空座標で固定されています」
「核爆発の歪みだな」
「この時空で固定されているということは、戦争で落とされたということでしょうか」
「そうだろうな」
「じゃ この世界の日本は戦争で負けたのですかね」
「ほかに、この1945年の時空の歪は見つかってないのか?」
「ええ、この座標の歪みが見つかったのは、上空をたまたま、早期警戒管制機が飛んだからですが」
「時代背景的にはありえますね」
「多分アメリカでしょう」
「あいつら阿漕な事するからな・・・」
“司令。もう一つ時空の歪みを見つけました”
「何時、どこで?」
“1945年08月09日午前11時02分。長崎です”
「以外にあるもんだな」
「日本は、袋叩きなんですかね」
“また。お馬鹿な日本を見つけたな”
「ですが観測するには丁度いいですけど」
「高度は?」
“高度503mです”
「また、トンデモ高さの観測点だな」
「1分に満たない時間ですが電波も捉えられそうですし、定期的に観測したいですね」
「まぁ それはあるがね」
次元の彼方の次元レーダーで歪が生まれ、座標が固定される、
第一外壁を吹き飛ばすことで。内壁の第二外壁は圧力を受け、次元の向こうに押し出される。
08月09日、午前11時02分。
長崎市松山町171番地の上空503m
次元の向こう側に到達すると、膨張するエネルギーに第二外壁が外に引っ張られて吹き飛んだ。
十数秒後、膨張しきったエネルギーが爆心点に向かって一気にもどると、
第三外壁に向かって、放射性物質が混ざった土砂と瓦礫が押し寄せ、
塔を振動させる。
イザナミ 司令塔
「急いで地盤に向けてレーザーを撃て、ホールボーリングして土台を固めろ」
「菊池司令。イザナギの吉祥司令と通信を回復しました」
「そうか。ネットワークの確立を急がせろ」
“菊池司令。無事にこれたようだな”
「まだ1分も経ってないぞ」
“イザナギは、3日前からいる”
「そうだったな」
“さっそくで悪いが、満州ソビエト軍に向かって、巡航ミサイルを撃ってくれ”
「では、ほぼ史実通りか」
“三日では事態の変化に気付かれなかったのだろう”
「わかった」
“あと、アメリカ西海岸とパナマにもな”
「了解した」
イザナミから打ち上げられた巡航ミサイル満州に向かって飛び。
ソビエト機甲師団上空で、中性子弾頭が次から次へと炸裂していく、
ソビエト軍将兵は中性子線で絶命し、
日本軍将兵はソビエト軍の兵装をそのまま接収していく、
ワシントン
白い家
「大統領。パナマ運河が破壊されました」
「後、サンチアゴ、サンフランシスコ、ロスアンジェルスの海軍施設も破壊されています」
「いったい、何が起きてる」
「わかりませんが小型の爆弾が投下されたかと思うと核ミサイルのように爆発を起こしたそうです」
「日本は原子爆弾を開発していたのか?」
「わかりませんが、被害状況が実験場のものと少し違うようです」
「状況は掴めないのか?」
「前線部隊からはなにも・・・」
「いったい何が起きてる。沖縄の将兵54万人はどうした」
「「「「・・・・・」」」」
クレムリン
カザコフ館
「満州で、なにが起きたのだ?」
「先ほどハバロフスクから無線がありましたが、状況を知る者が途中で息絶えました」
「150万だぞ。150万のソビエト軍将兵はどこに行ったのだ」
「む、無線が繋がらないだけかもしれません」
「将校は狙い撃ちにされたとか。指揮所が破壊されたとか」
「状況を調べろ、偵察部隊を出せ」
「はっ」
呉
アメリカ機動部隊が湾に並べられていく、
イザナギとイザナミから派遣された数人の国防軍将校が指揮権を持ち、
日本海軍将校は隷属下にあった。
空母ヨークタウンU 艦橋
「満足に操艦もできないくらい若い将兵しか残っていないのか」
「よくもまぁ ベテラン将兵を磨り潰してくれたものだ」
「馬鹿さ加減に、だんだんムカついてきた」
「まったくだ・・・」
若い将校が近づいてくる
「あのぉ 我々だけで、ハワイを占領するのですか」
「どうせ、太平洋のアメリカ軍将兵も極東ソビエト軍将兵も壊滅している」
「給油艦も拿捕してるし。M4戦車もM3軽戦車もある」
「この艦隊を使えば楽勝だろう」
といったもののF6Fヘルキャットを離着艦させられるとは思えず。
日本の艦上戦闘機は片道特攻ならともかく、怖過ぎて乗れない。
偵察衛星はアメリカ軍を監視しており脅威は事前に分かっていた。
アメリカ潜水艦は一度浮上すると、偵察衛星にマークされ、
いくら潜って移動しも自動的に追跡されてしまう。
水上艦艇だけでもハワイを占領できる気がしていた。
イザナギの塔は、正式に日本軍の総司令部となり、
日本軍全軍の指揮権はイザナギの塔に移っていた。
太平洋のアメリカ軍は壊滅して空白状態となり
日本軍は沖縄、マニラ、硫黄島、マリアナ、ウルシーを回復してく、
日本軍将兵は、飛行場に並ぶアメリカ軍機を緑色に塗り、日の丸をつけていく、
極東ソビエト軍の攻勢も中枢部隊を失って停止していた。
指揮系統が破壊されると、軍隊は機能しなくなり、
ソビエト軍の兵装を奪った日本軍が反撃すると後退するよりなかった。
イザナギ
日本の中枢はイザナギの塔に移っていた。
捕獲したアメリカ、イギリス、ソビエトの戦力は、莫大だった。
アメリカ第58機動部隊
正規空母13、軽空母8、戦艦10隻、重巡16隻、軽巡10隻、駆逐艦588隻、艦上機1400機
イギリス第37機動部隊
空母4隻、戦艦1隻、軽巡6隻、駆逐艦18隻、艦上機150機
商船1500隻
B29爆撃機367機、B24爆撃機453機、B17爆撃機264機
P51ムスタング562機、P47サンダーボルト436機、F4U コルセア244機、
F6Fヘルキャット1307機、SB2Cヘルダイバー454機、TBF/TBMアヴェンジャー266機
ソビエト軍 火砲26137門(迫撃砲含む)、戦車・自走砲5556両、航空機3446機
アメリカ軍 M4戦車200両、M5軽戦車200両、火砲10000門が日本軍の手に落ちていた。
敗北寸前だった日本は、開戦時に勝る海軍力、空軍力、陸軍力を接収し、
テーブルにイザナギ代表と日本政府代表が集まっていた。
小さなロボットがお茶を運んでテーブルの上に並べ
日本政府代表が驚嘆する。
「今朝ほど、日本軍はハワイに上陸しました」
「ハワイのアメリカ軍は無力化されており、島民は抵抗を見せましたが降伏するでしょう」
「救出に向かったアメリカ機動部隊も御覧の通り・・・」
巨大なディスプレーにアメリカ機動部隊が映され閃光が走った。
ズームアップしていくと、甲板上のアメリカ軍将兵が倒れていた。
「この艦隊も拿捕できるでしょう」
「さて、これだけの戦力を保持しているのなら、もはや軍需生産は手抜きしてもいいでしょう」
「これからは、基幹産業や民間人が必要な衣食住を生産してください」
政治家と官僚がほっとし、
日本軍将校らは、顔を見合わせて、物言いたげだったが黙っていた。
「さて、問題の石油ですが・・・」
政治家、官僚、日本軍将校らの目の色が変わる。
「生産しますので主要港に近いところを200kuほど貰うことになります」
「生産?」
「石油を生産します」
「どうやって」
「秘密です」
「まぁ 倍の土地がいただけるなら輸出くらいできるでしょう」
「ゆ、輸出」
オーランチオキトリウム培養が始まる。
「それと、朝鮮人ですが邪魔なので一人残らず、四川盆地へ追いやってください」
「し、しかし、朝鮮人は同胞・・・」
「今後、日本民族は朝鮮民族との接触を一切禁じます。これは、命令です」
「「「「・・・・・」」」」
「しかし、炭鉱労働や荷揚げ荷卸しは・・・」
「その炭鉱や港湾に巡航ミサイルを撃ち込んで欲しいですか?」
「い、いや・・・わかりました」
「あと、爆撃された都市は、計画都市として再建します」
「コンピューターで区分けしたのでこの通りにしていただきます」
「しかし、予算が」
「紙幣はこちらで印刷します」
「模倣は不可能になるでしょう」
「し、しかし」
「経済なんて言うのはね」
「コンピューターにやらせるのがいいんですよ」
「所得に応じで税をかけ、均等配分する。この繰り返しです」
ディスプレーに幾つもの山が作られ、
政府、銀行、企業体、個人の金の流れが表現され、
その時々に応じて税率を変え、配分を変え、高くもなく、低くもない山が作られていく、
特定産業に財政投資した時は、特定産業の人事整理と追加課税がなされ、
経済を均衡させていく、
「し、しかし・・・」
「紙幣は模倣されないことと必要な量が出回っていればいいのですよ」
「それを、そのコンピュータ徒やらでできるのかね」
「ええ、日本人全てを血で管理できますよ」
「住民票ではなく、個人で管理できるので土地に縛られずに済むでしょう」
呉港
イザナギ塔のオーランチオキトリウム生成システムは、年間1万tの油を作ることができた。
そして、石油精製工場が周辺に作られようとしていた。
本土決戦用の戦力が残されていた。
戦闘機 416機(673機) 局地戦闘機107機(276機)
夜間戦闘機106機(161機) 戦闘爆撃機171機(248機)
艦上爆撃機277機(375機) 艦上攻撃機148機(207機)
陸上爆撃機72機(89機) 陸上攻撃機123機(197機)
陸上偵察機47機(104機)
水上機189機(223機)
中間練習機1698機(2243機) 白菊(練習機)320機(413機)
実働機3674機(5209機)
小銃 歩兵銃165万丁、騎兵銃22500丁
弾薬量80万t
火砲 大砲・擲弾4万門、臼 砲12000門、曲射砲2500門
戦車1325両
国防軍将兵と日本陸海軍将校たち
「結構あるな」
「こんだけあったらゲリラ戦でしつこく戦えばアメリカ軍を追い出せたかもな」
「未来の日本は、本当に降伏したのですか」
「・・・・航空機は、こんなエンジンや主脚じゃ怖くて飛べんだろう」
「航空機はほとんど解体で、残りは博物館行きだな」
「し、しかし」
「陸上兵器はともかく・・・こっちもアメリカ製とソビエト製で戦うべきだろうな」
「アメリカ軍機を日本機色に塗り替えて使うしかないな」
「し、しかし」
「戦争は勝てばいいんであって、勝つために戦争するもんだ」
「美学で殺されるのはごめん被る」
「捕獲したアメリカ軍機は8000機、ソビエト軍機は3000機に及ぶ」
「戦車も腐るほどあるし、大砲も小銃も武器弾薬も有り余ってる」
「これだけあれば、負けないだろう」
「だといいのですが」
「八幡製鉄所が爆撃から生き残っていたのは幸運だ」
「不良品は溶かしてしまえ」
「「「「・・・・・」」」」
オアフ島
緑色のP38ライトニング4機編隊が飛行していた。
飛行場では、アメリカ軍機が緑色に塗り替えられていた。
日本軍将兵はM4戦車に乗って島を支配し、島民は見守るしかなかった。
国防軍将兵たち
「アメリカ軍は、大人しくなったな」
「機動部隊を丸ごと奪われたら用心深くもなるだろう」
「しかし、もう、巡航ミサイルはほとんど残ってないだろう」
「まぁ 残ってはいないが、パナマが破壊してるし」
「アメリカも、これ以上の損失には耐えられまい」
「それより、製油は?」
「上手く生産している。ハワイ基地を維持する程度の生産はできるよ」
「油で悩まない軍隊は強い」
「というより油で悩まない国は戦争する必要がないがな」
「そうそう」
扉が開くと士官が入ってくる。
「ハワイの住民はどうするって?」
「白人は本土に帰国したいそうだ」
「そうか」
満州ハルピン
膨大な数のT34戦車が並び、関東軍の全てが機甲師団となっていた。
国防軍将兵たち
「みんなで渡れば怖くないって。こんな地の果てまで来てしまったんだな」
「日本だけでも十分広いだろうに」
「石油が欲しかったんだろう」
「石油か、石油が必要なのに軍隊を強くするって的外れな気がするね」
「アメリカ軍が脅威だったんだよ」
「国民に小銃を配ってしまえば、どこの国だって、攻めてこないと思うね」
「ところでさ。満州はともかく中国大陸は維持するの?」
「いま、関東軍や大陸軍が戻ってくるとイザナギ・イザナミ支配が揺らぐし」
「半分を南に送るらしいから、もうしばらくは維持するんじゃないの」
「いまのうちに体制をまとめておかないと」
「まぁ 兵力差は大きいからね」
「ていうか、軍上部は、前線将兵を帰還させると復讐されると思って殺そうとしてんじゃないか」
「「「「「あはははは」」」」」
「陸軍は、50万くらいに解体してもいいと思うけどね」
「その前に停戦しないと」
「停戦するかな」
「さぁ」
日本再建が始まっていた。
製鉄所で生産されるのは生活必需品と産業機械だった。
イザナギとイザナミでマザーマシンが作られ、子飼いの産業へ送って支援していく、
それらの生産はイザナギ・イザナミのコンピューターで管理され、最短コースで再建が進んでいた。
ヘリが磁気探知機を使って不発弾を見つけると、軍隊に処理させ、
区画整理が進むと、土地と家が割り当てられ、
プレハブの建築機材がトラックに載せられ、次々降ろされていく、
その再建光景は、共産主義と言えるものだったが、犯罪の少ない日本社会ならではといえた。
第01任務群
空母 彩鳳(ヨークタウンU)、紅鳳(ボンノム・リチャード)
軽空母 雷凰(ベロー・ウッド)、閃凰(バターン)
重巡 吾妻(ボストン)、伊吹(キャンベラ)、鞍馬(ボルチモア)
防空巡 五十鈴(オークランド)、長良(サンファン) 駆逐艦14
彩鳳(ヨークタウンU) 艦橋
提督と副官が飛行甲板の緑色F6Fヘルキャットを見下ろしていた。
「大雑把だがいい機体じゃないか」
「俺ならもっと細く作る」
「それは言えるが、初戦で生き残れば数段練度が上がる」
「そして、練度が上がってから高性能機に乗せると勝ちやすい」
「日本は、開戦前、ベテランがたくさんいたのに今はほとんど残っていないだろう」
「それが戦力差になってしまってる」
「日本は、貧乏でしたからね」
「いまは、空襲と死傷者で、もっと貧乏だ」
「再建しなければならないのに、戦争している暇なんてない」
「だからほかの艦隊を港に?」
「まぁ ミサイルも無限にあるわけじゃないからね」
「今後は陸海軍で頑張ってもらうが、再建しないとならないから生産性を失いたくない」
「不安だな」
「敵艦隊の位置はわかるよ。偵察衛星から逃げることはできないからね」
「敵の動きが見え見えなら勝てるでしょ」
「確かに勝ちやすいですね」
LST1級戦車揚陸艦に載せられたBT7、BT5、T26が上海から揚子江を遡って
日本軍部隊へと配備されていく、
日本軍がBT7、BT5、T26を配備するだけで攻守は数倍も強靭になり、
T34戦車が配備されれば移動要塞の如く、中国軍を恐怖させ、
La7とYak9がシュトゥルモヴィークを護衛しながら爆弾を中国軍陣地に投下すれば後退していく、
日本軍が揚子江の上流域を支配すると、
朝鮮半島で朝鮮人が船に押し込められ、東シナ海を降り、
上海から揚子江を登り、四川盆地に入って降ろされた。
朝鮮族は自衛用の武器こそ持たされていたが、
四川盆地で生存圏を確保しようと、もがかなければならなかった。
ウラジオストック港
丙型海防艦と輸送艦が入港すると
巡洋艦2隻、響導艦1隻、駆逐艦・掃海艇12隻、潜水艦78隻が浮かんでいた。
満足な武器を持っていない日本軍がソビエト艦隊を接収していく、
ソビエト軍将兵は死んで、多くは中性子線被爆で無力化されていた。
「急いで接収するぞ」
「はっ」
「本当に、無力化されたんですね」
「気を許すと民間人に撃たれるぞ」
「気を付けます」
「ハバロフスクもこうだといいなぁ」
「ええ」
深夜、 重慶
攻撃ヘリ 火影10機
汎用ヘリ 幻鳳10機、
輸送ヘリ 大凰10機が並んでいた。
濃霧の中、アパッチが中国軍駐留部隊を攻撃し、
BT7快速戦車4両と日本軍300人が総督府周辺に降りると中国軍を制圧し、
蒋介石総統を捕虜としてしまう。
国民軍中枢が失われると国民軍はバラバラの軍閥と化していく、
沖縄
マングローブが林を作る河口汽水域
輸送ヘリ輸送ヘリ 大凰が海岸に着陸すると、白衣を着た男と兵士たちが降りて何かを探し始めた。
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月夜裏 野々香です。
末期戦です。それも降伏間近の日本からです。
日本海軍残存艦隊
戦艦4隻 巡洋艦11隻 空母6隻 水上機母艦1隻 潜水母艦1隻 敷設艦3隻
駆逐艦41隻 潜水艦59隻 海防艦100隻 砲艦14隻 水雷艇3隻 掃海艇11隻
駆潜艇28隻 敷設艇6隻 哨戒艇6隻 輸送艦16隻 特務艦19隻
敷設特務艇14隻 駆潜特務艇146隻
掃海特務艇21隻 電纜敷設艇1隻 哨戒特務艇25隻
魚雷艇(甲)6隻 魚雷艇(乙)200隻 魚雷艇(隼)88隻
横須賀(86隻)
長門
駆逐艦
花月、春月、夏月、宵月、雪風、波風、汐風、初桜、響、夕風、
萩、蔦、柿、菫、欅、桐、楠、竹
海防艦
福江、保高、生野、四阪、14号、16号、34号、36号、37号、71号、105号、107号、
神津、倉橋、屋代、48号、49号、76号、77号、
輸送艦 9号、13号、16号、19号、110号、147号
掃海艇 23号、102号、
敷設艇 神島、巨済、石崎
駆潜艇 47号、49号
掃海特務艇 11号、12号、13号、14号、17号、18号、21号、22号
駆潜特務艇
1号、4号、27号、58号、68号、72号、78号、88号、
155号、159号、161号、171号、181号、183号、185号、194号、
196号、202号、203号、212号、221号、241号、公称1182、公称1648
哨戒特務艇 3号、26号、31号、134号
呉
葛城
榛名、伊勢、日向
青葉、利根
佐世保(86隻)
準鷹
駆逐艦 樫、雄竹、杉、楓、冬月
海防艦
宇久、金輪、波太、対馬、択捉、三宅、羽節、伊王、隠岐、
8号、27号、32号、44号、52号、55号、57号、58号、60号、78号、79号、
106号、118号、126号、132号、142号、150号、192号、194号、196号、
198号、215号、221号、227号、鵜来、竹生、生名、12号、22号、104号、154号、217号
輸送艦 137号、172号、174号
水雷艇 雉
敷設艇 粟島、済州、加徳、黒島、鷲崎
駆潜艇 9号、21号、38号
掃海特務艇 16号
駆潜特務艇
71号、80号、89号、90号、93号、99号、154号、158号、
168号、169号、173号、231号、234号、247号、249号、250号
補給船 若鷹、光済、白崎、早崎、荒崎
陸軍SB艇 109号、114号
陸軍ES艇 7号、12号、18号、19号
舞鶴(60隻)
駆逐艦 初梅、樺、榧、槇、椎
海防艦
奄美、占守、67号、81号、85号、87号、158号、160号、205号、207号、
新南、26号、40号、102号、156号
掃海艇 21号
敷設艇 黒神、片島
掃海特務艇 19号、20号
駆潜特務艇
57号、79号、86号、157号、162号、164号、166号、175号、179号、
184号、186号、187号、198号、214号、215号、217号、219号、
222号、227号、232号、236号、239号、245号、246号
哨戒特務艇
84号、135号、136号、138号、139号、152号、153号、154号、175号、179号、191号
シンガポール
妙高、高雄、北上
空母 鳳翔
巡洋艦 八雲、酒匂、鹿島、
特務艦 長鯨、箕面、聖川丸
駆逐艦 雪風、汐風、夕風、波風、神風、冬月、春月、夏月、花月、宵月」ほか20隻
潜水艦 伊14、伊36、伊201、伊203、伊400、伊401、伊402、伊500、伊501、伊502、伊505、伊506
天ぼた系火葬戦記 『イザナギ・イザナミの塔』 |
第01話 1945年 『08月06日午前08時15分』 |
第02話 1946年 『塔の消失』 |