仮想戦記 『東海道鉄道株式会社』
著者 文音
第327話
1938年(昭和12年)七月四日午後九時
亜米利加 東海岸カリン市カリン署
「こちら、カリン市警察署連絡係シム=ベンス巡査。州陸軍本部、聞こえてますか?」
「イエッサー、ノー プロブレム」
「双眼鏡にて確認しています。カリン市警察特別編成部隊、市民ホールに向け突入部隊、準備完了の模様。州陸軍の応援はまだでしょうか?」
「イエッサー、現在準備中」
「至急、応援を要請します。市民百人が殺害される危機にあります」
「イエッサー、ハリーアップ」
ディ ディ ディ ディ ピコ
「狙撃銃により警官一名被弾。戦線離脱」
「連絡係、数百メートル先をよく夜中に見えるな」
「市民ホールは、今夜独立記念日だったんですよ。そりゃあ、ライトアップされてたんですよ」
「夜中に軍隊出動かあ。今夜は厳しいぞ。出撃はするのはいいが、やたらめったら、砲撃が飛んできそうだ」
「わかっています。市街地がほぼ無法地帯になっているのは。けれど、軍が出なくて誰が出てくれるんですか」
「そういうな。最善は尽くしているんだ。ただな、俺たちの上司は実は‥‥‥」
「わかっています。わが市が特別なのは。うちくらいなものですよ。トップが黒人というのは」
「そこはわかってくれるか。だから、下は最善を尽くしているが。なかなか、指令が下りない」
「ええ、わかっています。けれど、市長が殺された理由が軍隊にあったとされたらそちらが困るのではないですか」
「市街地が無秩序になっているんだ。大統領令か州知事令以外無視しても上は問題ないといっているんだが」
「ええ、わかっています。わが市以外に優先的に出動させても文句を言える状況にないって」
「ええ、お願をしているのはこちら。選択肢はあなた方にあるのは重々承知しています」
「そうなんだよな。出撃を要請されている自治体は両手に余る。どっちに出撃してもそれ以外の市からたたかれるのは目にみえてる」
「その中で重大そうなのはいくつありますか?」
「ええーと、黒人が乗車したバスが襲撃された物とか、そっちのように市長クラスが襲撃されたような事例が五件ほど」
「要するに出撃は難しいと」
「そうともいう。俺のような電話番が五人ほど同様に対応中」
「ちなみに俺のように長電話しているのは?」
「さすがにいませんよ。ただ、電話の先から危機感は最大というのはひしひしと伝わってきますが」
「そうですか。では、わが市の希望がついえたとしてこちらからの電話を切らせていただきます」
「申し訳ありません。こちらの体制も混乱気味でして」
「ではでは」
「ツーツーツー」
ディ ディ ディ ディ ピコ
あ、また、警官が狙撃された
ディ ディ ディ ディ ピコ
ついに署長が被弾した
ウーーン ウーーン ウーーン ウーーン ガッシャーーン
署長が乗っていた救急車が狙撃され、大破した
だけど、狙撃がそれに集中していたせいで警官が市民ホールにとりつけた
「署長、貴方の犠牲は無駄にしません」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ
「そんな、連中、マシンガンを壁越しに撃って、警官を一掃とか。どれだけ、火力をもっているんだ」
市民ホール一階の警官が全て行動不能になった
「ドッカーーン」
「ああ、二階も全滅か。もう、軍隊に電話する必要がなくなったな」
襲撃者達が撤収を始めた
ゲームオーバー
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