仮想戦記 『東海道鉄道株式会社』

著者 文音

 

 第326話

 1938年(昭和12年)七月四日午後八時過ぎ

 亜米利加 東海岸カリン市カリン署

 「ハイ、こちら、カリン署、どうされましたか」

 「こちら、カリン市役所。市長が拳銃を持った集団に襲われつつあります」

 「市長は今どこに?」

 「今日の独立記念祭を祝うために、市民ホールへ市民とともに」

 「襲撃団の人数は?」

 「十名弱」

 「襲撃団の戦力は?」

 「火器三十丁、ライフル銃とマシンガン、銃弾多数」

 「市長は無事だという理由は?」

 「襲撃を受けたとき、警備員が対応。警備員が時間を稼いでいる間に、市民はホール二階に避難。バリケードを構築して時間稼ぎの真っ最中。ただ、バリケード突破まで二十分ほどしかない。バリケードが突破されたら、二階にいる市民全員が死亡だろうな」

 「了解した。こちらから、州軍隊に連絡もしておく。限られた時間で最善を尽くす」

 「すぐさま、行動に移ってくれ」

 「イエッサー、ガ、チャン」

 「野郎ども、署にいる人間は州軍に連絡する人員以外すべて出動。敵は市長を襲撃する武装集団、十名。五分でパトカーに乗れ」

 「イエッサー」

 

 

 「くそ、市長を襲撃するおばかは何者だ?」

 「市民の人口比は、黒人五割。白人四割、その他一割」

 「選挙に負けて、市長を殺せば再選挙だろという腹かね」

 「端的にいえば、少数派の暴走か」

 「そうなるかな。市長が警察署長を指名するから、署長は目下黒人。それが許せないという白人至上主義者だろ」

 「なるほど、俺たちは死ぬしかないのか?」

 「市長が死んでもし仮に、白人市長が誕生するとしたら悲劇だ。それなら先に死んだほうがいい」

 「なるほど、俺の屍を越えてゆけと、州軍隊に言わせれば成功か」

 「次善の策だな。警察が時間を稼ぎ、軍隊が制圧する。市長が生存ならミッションコンプリートだな」

 「長く短い一日になりそうだな」

 

 

  市民ホール一階

 「二階のバリケードは突破できそうか」

 「時間がかかります。机やらピアノやらあるものすべてで封鎖している様子です」

 「ちっ、あの警備員の野郎、いい仕事をしやがって」

 「単に俺たちが白人ばっかりで不振な荷物を抱えすぎいていたせいではないですか」

 「まあ、いいさ、二階が開く前に黒人警察官相手にどんぱちやるか」

 「予定では、後二分でやってきます」

 「よーし。バリケードを担当するもの以外、一階に降りて来い。黒人警官を相手にする」

 「白人警官を撃っては駄目なんですか」

 「相手は、市長を奪還しにがむしゃらにつっこんでくる。突進するものすべてを撃て」

 「よっしゃー」

 

 

 ディディディ ピコ ピコ

 ディディディ ピコ ピコ

 ダァダァダァ ピコ ピコ

 ダァダァダァ ピコ ピコ

 ウーーーン ウーーーン ウーーーン

 おいらの出番ですか パーーン

 ガシャガガシャガアアアア

 

 

 

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