仮想戦記 『東海道鉄道株式会社』

著者 文音

 

 第325話

 1938年(昭和12年)七月四日午後八時過ぎ

  亜米利加 東海岸滝線都市

 「ひっく。休日のアルコール、これに勝るものなし」

 「今日は、記念すべき独立記念日、で、黒人にとってこれめでたいの?」

 「順位付けでは、南北戦争の北軍勝利のほうが価値が高い」

 「でも、南部では黒人は一時的かもしれないが奴隷解放によって公民権を得たはず。でも、南部では、現状そうではない。これ、いかに?」

 「州議会を掌握している多数派の白人層が隔離策を制定し、黒人の公民権を奪った。南北戦争終了、四半世紀後のことだな」

 「いわゆる、ジムクロウ法によって、黒人は準奴隷という立場に南部では位置づけられている」

 「では、今日はめでたい日?そうでない?」

 「北部にいる限り、仕事には困らない」

 「給与のピンはねもない」

 「めでたいでいいんでない」

 「「「パン、パン、パン」」」

 「よし、宇宙人の手先三人。先制攻撃により死亡確認」

  

 アトランタ

 「南軍の主要都市、アトランタを不法占拠する不法占拠民を排除する」

 「イエッサー、白人所有者が死去した後、ふらふらと郊外の別荘地を徘徊する黒人団体を今日、この日、実力を持って退ける」

 「見つけ次第、銃殺だ」

 「イエッサー、宇宙人の手先、黒人を排除することこそ、国家のため」

 「ギー」

 「これより正門より、正面突破をかけます」

 「第一目標、食料の確保」

 「イエッサー、キッチンを襲撃します」

 「これがうまくいけば、この別荘の占有権は我々のものだ」

 「イエッサー」

 「ギー。キッチンに人影なし」

 「第一目標、達成」

  

  同時刻同別荘裏門

 「黒人に奪われた不動産資産、郊外別荘を白人の手に取り戻す」

 「イエッサー、この風光明媚な別荘は俺たち白人至上団体雨傘が使用するにふさわしい」

 「別荘地に進入次第、不法占拠者を射殺せよ」

 「イエッサー、裏門より突入し、客間の確保を最優先します」

 「突入を許可する」

 「ギー、客間に人影なし」

 「隊長、正門ならびにその隣のキッチンの扉が開いた音がしました」

 「どうみる、副隊長、敵は逃げ出したか?それともキッチンに移動したか?」

 「順番からみるに、先に正門が開きました。敵はキッチンにあり」

 「よし、俺も同意見だ。キッチンに突入するか?」

 「先制攻撃をかけるべきです。突入に同意します」

 「よし、忍び足でキッチンを襲撃」

 「イエッサー」

 「これより、この角を曲がればキッチンの入り口が見えます」

 「敵の姿も見えないが、こちらも敵の姿が見えない」

 「くそ、手榴弾を持ってくればよかった」

 「時間がなかったからな」

 「これより匍匐前進」

 「イエッサー」

 「パン、パン」

 「敵が先に撃ってきました」

 「撃ち返せ」

 「イエッサー」

 「敵の火力の推定は?」

 「拳銃二挺」

 「火力で押せ」

 「イエッサー」

 「敵の火力半減しました」

 「よし、後一押し」

 「敵の砲撃、沈黙しました」

 「よし、包囲戦だ」

 「イエッサー」

 「コロンコロン、何かが転がってきます」

 「煙幕だろうな、吸い込むな」

 「イエッサー」

 「ドカン」

  

 「ギー、ふーひどい目にあった。ワインクーラーで寝ていたら、どんぱちをはじめやがって」

 「で、侵入者はどうなった」

 「ドカンといったから、その周囲にいた人間はお陀仏だろ」

 「ひどいな。火力に勝っていた裏手門部隊は手榴弾で全滅」

 「火力に押されたキッチン部隊は、致命傷二つ」

 「どっちも仏になってくれたおかげで、俺たちは命拾いだ」

 「さて、金目のものを手に入れたら朝になったらここを引き上げよう」

 「そうだな。町を出よう」

 「つかまったら、問答無用で両者を殺した真犯人に仕立てられるだろうからな」

  

 

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