Book Review 秋田禎信編

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秋田禎信『エンジェル・ハウリング1 獅子序章-from the aspect of MIZU
1) 富士見書房 / 文庫版(富士見ファンタジア文庫) / 平成12年10月25日付初版 / 本体価格460円 / 2000年11月20日読了

 アニメ化もされたシリーズ『魔術士オーフェン』で人気の高い作者の新シリーズ。月刊ドラゴンマガジン連載の同名シリーズとは主人公を違え、同じ世界・交差する内容で展開する番外編的な位置づけの作品となる、らしい。

[粗筋]
 ミズー・ビアンカは殺人武器であり、職業的暗殺者だった。ある理由から退役騎士ベスポルド・シックルドを捜し、情報屋に接触するが、成果を確認しに再訪すると、彼は何者かによって惨殺されていた。犯人との格闘で左脚に深い傷を負ったミズーは気を失い、そこをアイネスト・マッジオと名乗る学者に拾われる。職業柄口喧しい彼と何故か同道する羽目に陥りながら、尚もミズーはベスポルドの居所を求める。幾つかの因縁、幾つもの謎。物語は始まったばかりだった――

[感想]
 シリーズの切り出しだから謎が残るのも致し方ない――と言いたいところだが、これはちょっと焦点が曖昧に過ぎませんか。主人公・ミズーの行動も、途中から同道する学者の行動理念も存在意義も今一つ不明瞭で、結局何が起きているのか解らないまま話が終わってしまった、という印象。明かされる事実はあるのだが読み手を納得させられるほどの説得力も、それで一冊引っ張るほどの価値も見出せず、仮にこれ一冊で終わるとしたら、私怒ります。無論、続きがあると記しているからこういう言い方をするのだけれど、正直、一冊の中で読者を惹き付ける要素も納得させる要素も殆ど提示されないというのは、単行本という括りの意味も価値も損なっている気がして、私には評価できないのだけれど。
 とは言え、意味深長な文脈、設定などには魅力があり、先を読ませようという気にはさせる。ただ、それにしても意味深長が過ぎて意味不明な描写が多かったり、今一つ魅力的な人物がいないのは現時点でマイナス。何れにしても、今後の展開をもう暫く見守りたい。

(2000/11/20)


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