『FESTA!! -HYPER GIRLS POP-』プレイ日記
FESTA!! -HYPER GIRLS POP-
Lass / 2005年12月16日発売 / Windows98se・Me・2000・XP対応ゲーム / 18禁 [amazon購入ページ][ゲーム概要]
2003年『青と蒼のしずく』、2004年『3days』と年一本のペースで新作をリリースしてきたLassの第三作。旧二作で“完全攻略不能のヒロイン”として登場、魅力の一端を担ってきた千神奈々子をメイン・ヒロインに据え、境界線で二分された奇妙な町・まほろば市を舞台に描く青春物語である。
父の海外赴任にあたって日本に残ることを選んだ黒田孝弘は、昔育った土地であるまほろば市に転居しひとり暮らしを始める。しかし、彼が離れている数年のあいだに故郷は御剣町と鏡町の対立を悪化させ、道路や建物のなかに明確に引かれた境界線できっちりと二分されてしまっていた。この奇妙な状況のなか、やがて孝弘の転校したまほろば学園で開催される学園祭を軸に、町の、そして彼自身と彼を巡る少女たちの運命が変わろうとしていた……
- 2005/12/16
- 某所で某氏と同時にスタートしてリアルタイムで言いたいことを書いておく、という企画をやるために、とりあえず手をつけました。冒頭、世界観説明のあたりまで。
……んー、無理が多い。冒頭、駅前でやたらとハイテンションなやり取りが繰り広げられ、ここだけで“謎のブルマ少女”、幼馴染みの早坂恋水(れみ)、そしてLass作品皆勤賞の“奈々子商法”こと千神奈々子の三人と偶然出会う、というのは狙っているにしてもやりすぎ。時間を前後させたり。タライを落とすなどの過剰な演出をしたりと色々遊んでいますが、こういうAVGの呼吸に合わないのでテンポを崩しているだけです。とりあえず転校直後のところまで遊んでみましたが、世界観と実情とのすり合わせにも微妙なところがあって、全体に噛み合っていません。
物書きとしていちばん引っかかったのは、テキストウインドウに振り仮名が添えられるシステムを用意しているのですが、「回転る」と書いて「まわる」と読ませるようなどうでもいい工夫に拘って、もっと重視するべき人名に初出時に振らない、という配慮の雑さ。プレイヤー・キャラクターにも音声が収録されているため、彼が読んでくれるからいいだろう、程度に考えていたのだとしたらやはり甘すぎる。音声なしで遊ぶ人もいるでしょうし、だいいちシステムで主人公の音声をミュートにすることが出来るのですから、テキストでひととおり理解できる配慮は最低限必要です。ていうか、率直に言って主人公の声は聴き取りづらいし感情移入するうえでも邪魔なので、私自身が早々にミュートにしてしまいました。兎に角配慮がなってない。
この点は箱・マニュアルも同様で、不親切が多い。外箱のスペック表に、必要とするハードディスク空き容量が記されておらず、ではマニュアルに書いてあるかと思えばこちらにもなく、具体的な数値が表示されるのは何とインストール後に表示される“Readme.txt”が初めて、というのはもう言語道断に酷い。そしてマニュアルにある登場人物紹介にも、読みづらい名前が多いにも拘わらず振り仮名はほとんどなし。
まだゲームの本編にも入っていないという段階ですが、それ以前のところで悪印象を齎すものが多すぎます。シナリオ担当のおひとりが知らない方ではないがゆえに見方がきつくなっているのも否定しませんが、それを差し引いても第一印象は良くない。箱やマニュアルのデザインに凝る前に、プレイヤーが心地よく遊べる状況をまず整えることに注意を払ってください。物語としては面白くなりそうな要素が色々とあるので、私は継続して遊びますが、短気な人はもうこの段階で手を止めても不思議じゃないぞ。
- 2005/12/18
- いちおう遊んでますが……しんどい。本当に、しんどい。感性が合わない、とフォローしてあげたいところですが、これはどう考えてもライターが笑いの呼吸を理解せずに、ノリとマニアックなネタを詰め込めば面白いだろう、と安易に考えて話を作っているレベルとしか言えない。特にお嬢様と巫女もどき(たとえ当人が怒ろうと、彼女は完全に“もどき”の域を出ません)の戦闘シーンはギャグはおろか真面目な会話でさえ滑っていて、居たたまれませんでした。ていうか本気で苛々してきます。
そもそもプレイヤーキャラからして、常識人のように見えてかなり物云いは歪んでいる。教室の中に立っている、“MINAGOROSHI”とだけ記された石柱を即“墓石”と表現してしまう感性がさっぱり理解できません。説明からすると教室の一角に、たぶん車輪つきの台座に乗せられていたはずなんですから、それを見ていきなり“墓石”だとは考えないでしょう。持ち主である巫女もどき・久遠寺凜のキャラクターと合わせて“墓石”と比喩するならまだしも――ていうかだいたい神道であの形状の墓石はないだろうに。
シナリオはスティック選択方式で、並んだもののなかからひとつを適当に選んで進めていくかたちになっています。最初ふたつは強制で、以降残り五つは自由に選べるようですが――そういうシステムにした理由が不明。強制二つが終ったあと、試しにちょっと離れたところにある「千神姉妹のお買い物」というシナリオを始めてみたのですが、途中経過を省略した会話をしている。小説であればあまり気にならない手法ですが、選択肢を辿って物語を進めていく、というゲームのスタイルでは違和感がありすぎます。いやそれ以前に、このシステムだと自分がいったいどの日付のイベントを鑑賞しているのかが解らず、もともと異様な世界観のために話の中に入り込みづらくなっているプレイヤーを尚更遠ざけてしまっている。……そりゃのめり込めないわけだ。
キャラクター自体、そんなに嫌いではないのですが、練り込みの密度にばらつきのありすぎる世界観と、キャラクター性をあまり活かしていないシナリオのためにほとんど動かなくなってしまっている。広原翔というキャラクターにしても、あのヒロッチョの系譜を踏みつつはみ出していく台詞に子安武人を起用したアイディアは素晴らしいと思うんですが……こちらはこちらで、グラフィックの質がついていっていないために目障りになっている。
まだたぶん、ひとまわり目の半分くらいしか進んでいないのですが、それにしても褒めるところがなさ過ぎて困ってます。Lass作品は一作目からずっと律儀にやってますが、ここまできついのは初めてだ……手加減したくても、本当に美点があまり見つからないのでどうしようもないんだよー!
更新後に追記。四番目くらいのスティック選択で、何故か夏休みに境界線を挟んで怪談話を始めるシナリオが登場します――なんでわざわざ境界線を挟んで双方が参加するのか、どうしてそういう成り行きになっているのか一切説明がないのもアレなんですが……怪談の話運びを追っていて更に苛立ちました。怪談の舞台となった場所について、双葉が「10年くらい前にテレビでやってた」と表現するのも微妙なら、肝心の話の内容も微妙。怪談なめてんじゃねえ。
- 2005/12/19
- 最初のエンディングは、最低の結末でした。バッドエンドなのはいいが、この脈絡のなさは何だ。シナリオを書くことを放棄してないか。しかも薄気味悪すぎて真面目にもギャグにもなりきれていない。この纏まりの悪さはあまりにもあまりにも酷すぎます。複数名のライターが手懸けているのが一因かも知れませんが、基本的にとりまとめが下手なんでしょう。
で、選ぶスティックを変えて進めてみましたが……結果は同じ。なんで。そもそもどうしてああもあいだをすっ飛ばしてバッドエンドに辿り着くのかが解らなくては回避のしようもないでしょう。AVGとして根本的に間違っている。何度か選択を変えてようやく先に進みましたが、何故先に進んだのかが一向に理解できません。虱潰しAVG以下じゃないですか、これじゃ。そのうえ、響紗南絵だけはあるシナリオを選んだだけで勝手に攻略できてしまう。嫌気が差してこの辺はテキストをすっ飛ばしてしまいましたが、スキップで眺めていても解るくらい、この唐突な展開自体にも起伏がない。
もはや鬱陶しくなって、どう考えても場つなぎでしかない重要度「低」のマークの付いたシナリオは基本的にスキップさせてます。まだまともに攻略できていない段階からこんな感覚にさせられたのは本当に何年かぶりです。……もうね、本当に、面白くない。これなら終盤に破綻していても、まだ話として道筋がちゃんと出来ていた前二作のほうが遙かにましです。
その後、あれやこれやで試行錯誤を繰り返した結果――というよりもう部分的に攻略サイトを参照しましたが、どうにか話が先に進んだ模様。しかし、それでも評価は改善せず、心証は悪くなる一方でした。似たようなイベントなのに先に見るかあとに見るかで展開が違う、のはいいとして、それほどシナリオの展開に重要なイベントに「低」のマークをつけるのはだまし討ちじゃないのか。苦労して先に進んだら、紆余曲折もなくあっさり話が終わるってありか。プレイヤーの苦労に対して、何ら報いのない展開しか待っていないのでは、もう。
更に、ギャグの上滑りっぷりもどんどん酷くなる。学園もので、基本的に同年代の人達が集まっているのだから、誕生日が来たら何歳になるのかぐらい訊かなくても解るだろうに、わざわざ18禁の特異な自主規制を逆手にとったつもりで年齢を訊ねる、なんてギャグやられても失笑しかしません。前回の感想では褒めましたが、場所を弁えない広原翔のキャラクターは話を追うごとに鬱陶しくなるだけだし。
どうも鏡町のシナリオはまだまし、という話らしいので、もう少し我慢して御剣町側を進めてからそっちに移るつもりですが……あああああ。
- 2005/12/20
- 御剣町側の久遠寺凜シナリオ、千神双葉シナリオ終了。出来は……もう言わずもがな。前者はある出来事ひとつで、中盤の紆余曲折など何もなくあっさり話がまとまってしまううえに説得力なし。後者はまだ多少キャラクター性を活かした筋にはなっていますが、まだてんで厚みが足りない。
どうも奈々子商法は健在っぽいので、ここで御剣町はいったん脇に置いて、鏡町のほうのシナリオに移行してみた。
……天国に見える。シナリオが遥かに落ち着いている。世界観は突飛なままだが、ちゃんと地に足が着いている印象で、話運びも無理がない。そもそも登校初日の描写からして安定感が雲泥の差だ。何だこれ。どうして同じゲームでこうまで出来が違う?
ただし、全体を通しての整合性は相変わらず良くない。御剣町側の描写では誰も上がってこない和やかな空間のように描写されていた昼休みの屋上は、鏡町側に移った途端カオスに陥っている。これはもう、ライター同士の意見調整が行われていないとしか思えません。話運びの安定感にしても内容の調整にしても、ライターというよりはディレクターの目がまったく行き届いていないのでしょう。鏡町のシナリオの安定ぶりはそのまま、ゲームとしての拙さを示す材料に過ぎません。
……ああ、しかし、御剣町があんまりだった反動か、鏡町のシナリオは遊んでいて落ち着きます。御剣町側だとただの大馬鹿娘でしかなかったお嬢様・獅童彩音が、こっちでは愛嬌のある大馬鹿娘になっている。犬娘・早坂恋水も読書家・日下部琴子も、御剣町のキャラクターたちよりはまだしも話に波があり、恋に落ちていく過程がそれなりに伝わってくるかたちになっています。
しかしそれとて結局は比較の問題。出来がいい、と言っても、恋愛をメインに描くならこの程度は描いていて当たり前、というレベルに過ぎません。全員終盤は一気に片付けるつもりで、クライマックス手前で止めているため、ラストの処理までは確認していませんが、恋愛物でいちばん盛りあがるべき部分が大半お座なりにされている感は否めません。青春ものとしては決して悪くないのですが、恋愛物としてはあまりに緩い。やっぱり全体的にシナリオは赤点です。こと、琴子シナリオで登場するマニア向けの知識は、マニアを喜ばせる以上の役をまるで果たしていないので、大幅にカットすべきでした。別に笠井潔の大量死説とか持ち出さなくていいの。
絵については、ところどころバランスが悪いくらいでさほど問題なし……と感じていたのですけど、しかし全体を俯瞰すると、塗りに統一感がないのがネック。一枚絵のCGならではの丁寧な塗りをしているものもあるかと思えば、枚数をこなすためのアニメ風のものも幾つか見受けられる。個人的にアニメ的な塗りでもそんなに文句は言わないほうなのですが、しかしちゃんと皺やグラデーションを描いているなかで、色の境界線そのまんまの絵が出て来たらそりゃ多少気分を害しようというものです。
個人的に何よりも許せなかったのは、新刊書店と古書店がまったく同じ背景で表現されていたこと。違うだろてめぇ!! 新刊書店と古書店の佇まいは全然違うだろ?! そこまで本好きのキャラクター演出するなら、そのくらいの配慮を怠るなー!!!!!
……………………ごめんなさい取り乱しました。とにかく、ざっと遊んだところ、確かに御剣町より鏡町のほうがまだ出来はましですが、それでようやく水準という印象。全体を通しては平均点をかなり下回っている、という評価は覆せそうもありません。
どうも主立ったエンディングを見届けると、そのあとに別のシナリオが始まるようですが……仮にそっちが面白くても逆に腹が立つだけという気もする。ここまでやったので完結はさせるつもりですが。
- 2005/12/21
- 鏡町側の三人、幼馴染みの早坂恋水に、読書家の日下部琴子、世間知らずのお嬢様獅堂彩香を一気に終了させる。
全般に御剣町側よりましであるのは間違いないのですが、それでもかなり物足りない。題名にもある学園祭にこだわりがあるのは解るのですが、そこを境に話の流れが似たり寄ったりになっているので、三人それぞれの味わいというものがない。魅力的に見えても大した掘り下げをしていないので、盛り上がりのところで話の拡げようがなくなっているという印象。唯一、琴子は衒学趣味で存在感を示していますが、しかし彼女の場合はそれが却って鬱陶しい。ラストシーンに中也の引用など要りません。自分の言葉だけで語ってください。
そして、御剣町に戻って千神奈々子攻略に挑戦。……うまく行かないので攻略サイトに頼る。
彼女のルートに入る構造には感心したものの、付随する登場人物の言動にまったく同調できないので、カタルシス一切なし。何より、主人公のろくでもない行動にプレイヤーが一切関与できないのが腹立たしい。あんな結果の明瞭な選択に踏み込むことそのものが微妙なんですから、せめて心理的な伏線は丁寧に張るべきなのに、それすら怠っている。だいたい、この終り方であんな脳天気なエンディングテーマを流されていい気がすると思うのか? 改めて、ここまで付き合ってくれたユーザーに対する配慮というものが欠如していることを証明するだけのシナリオです。
また、これはかなり早い段階から感じていたことですが、全般にシステムが不親切。たとえば、最初のプレイにて4番目のスティックで遭遇したイベントがあるとする。これはキャラクター固有のイベントをうまくこなしていくと、3番目のスティック一覧くらいでほぼ同じイベントが発生することになるのですが、このとき、どういうわけか「未読はスキップしない」にチェックが入っていると、いちど読んだことのある文章でも飛ばしてくれないのです。スティックが違うのだから別イベント、という判断をプレイヤーがするはずもなく、このときの時間の無駄遣い感は如何ともし難い。もっとテキストの管理を親切にするか、あるいはあれだけ多くの割り当てコマンドを用意しているのですから、未読の文章をスキップしないようにするのと一括してスキップするのと併存させるなりの配慮は必要でしょう。シナリオほど手のつけようのない箇所ではないはずなので、いまからでもこの辺はパッチで改善する方がいいと思われます。
それから、攻略したキャラのイベントCGを使っているだけで代わり映えのしないエンディングテーマを、飛ばす方法がないのも鬱陶しい。CGが違うだけなら一回見せれば充分でしょう。
どうしようもない奈々子シナリオを終了させたところで、ようやく隠しシナリオが登場。冒頭をやっただけで狙いはなんとなく解りましたが――続きは明日。たぶん次回が最終回になりますが、どう足掻いても評価が好転することはなさそうです。
- 2005/12/22
- 隠しシナリオ『千神』も終了、まだCG閲覧モードに空きがありますが、正直そこまで徹底したい程の出来ではないので、これにて攻略も終了とします。
ここで初めてキャラクターデザインに関する、とある工夫があったことにも気づきましたが、これもあまり効果を成していない。驚きを演出したいのなら寧ろこの工夫は邪魔であり、別のデザインを用意するのが正解。
隠しシナリオとして用意するほどなのですから、相当に気合いの入ったものを持ってきているのか、と期待していたのに、拍子抜けするほどあっさりと終了。わざわざ三度もタイトル画面に戻してシナリオ選択をやり直させる意図も解りません。様式だと言いたいならもっとシナリオが緻密でないと駄目です。まるでドリフのコントのような展開にするのではなく、プレイヤーの心を削り取っていくような鬼気迫る描写があってこそあのくだりは説得力を備える。だいいちあの話運びじゃただのギャグです。コントとすら言えない。
そもそもこういう話廻しにしたいなら、尚更本編が魅力的でなければまずかった。少なくとも、あの本編の千神奈々子シナリオの決着からこの話に結びつけたところで悲壮感も何もない。ただの自業自得なのですから、主人公側がどれほど苦労しても共感を呼び起こすことは出来ませんし、また奈々子の真摯さも浮ついたものになる。
そうして、ようやく念願の瞬間が訪れるわけですが――これにしたところで、肝心の隠しシナリオの盛り上がりが乏しすぎるためにどうも感慨が乏しい。さすがにスタッフのほうには感じるところがあって、他のキャラクターよりも厚みはありますが、ドラマとしての練り込みが浅いので「だから?」としか思わない。登場人物の盛り上がりにこちらが溶けこめない。折角の場面であるのに、原画の仕上がりが雑であることも心証を悪化させます。
何より、これほど引っ張ったのに、エピローグはおろかエンディングも用意していない。本編では、もう今更繰り返し見たくない、というときにもプレイヤーにスキップを許さないようなシステムにしておきながら、最も感動に浸れて然るべき場面でそれを用意しないというのはいったいどういう了見なのか。
すべてが悪い方向へと期待を裏切っている。三作引っ張った奈々子商法の結末がこれでは呆れ果ててものも言えません。引っ張るのは構わないが、これだけユーザーを翻弄したのなら珠玉のシナリオで挑んでください。
そして、本編の最大の問題点を最後に指摘しておく。――この作品、題名のもとである“祭”がほとんど活かされていない。肝心のくだりで展開がほとんど同じなので、印象的でも何でもなくなってしまっている。だいいち、題名がこうならば、隠しシナリオでももっと明確に“祭”を謳わなければ話が閉じない。本編でも随所に配慮不足が認められましたが、隠しシナリオはその最たるもの。カタルシスを齎すべきクライマックスで逆に不快感だけを催させるという、最低の出来になっている。
もう少し幅を持たせて欲しかった厭味はあるもののキャラクターは悪くないし、境界線で二分された町、という着想は巧い。部分的には目を惹く描写や発想もある。しかしライターそれぞれの漕ぐ力と、ディレクターの舵取りが致命的に雑だったため、暗礁に乗り上げたままの状態で放り出されてしまった、という趣です。……何のことはない、旧二作で私が指摘した問題点をずーっと引きずったまま、最悪のところまで落ちこんでしまったのが本編だった、というわけ。それじゃ失望も深まるはずだ。
システム的にも美点よりも欠点が増えたことはこれまでのプレイ日記でも説明した通り。評価できるところは評価したいのは山々なのですが、それを思い出すことさえ困難というのが実際です。流れについて考慮せず、スティック各個のテキストを、頭を空っぽにして読めばそれなりに楽しめるかも知れませんが、通して遊ぶのはしんどいだけの作品でした。はっきりと、駄作だと思います――私がこんなことを書くのは最近極めて珍しいのですけれど、心を鬼にして言わざるを得ません。
途中で挿入し損なってしまいましたが、システム面でもうひとつ注文をつけておきます。
メッセージスキップ等で、飛ばせる演出と飛ばせない演出とが混ざっているのが解りません。特に恋水絡みのイベントで、動物の絵を妙に長々と見せる場面がありますが、二度目以降は非常に鬱陶しいのに、何故か飛ばせないのは不思議です。それから、最も間の抜けた演出であるタライについてはオン・オフが選択できるようにして欲しかった。もしかしたらスタッフは自信があったのかも知れませんが、冒頭から何よりも失笑を買い、ゲームを続ける上で邪魔に感じられたのは、このタライでした。
音声入りのシナリオについてはもう修正不能でしょうが、システムについては今からでもパッチ等で対応することを考えていただきたいところ。そうでもなければ、時間が経ってから再度遊ぶ、という選択肢すらなくなるでしょうから。
- 2005/12/24
- タイトル画面に全キャラが表示されたのでもう完結だと思いこんで、「あれで本当の終わり?! エンディングテーマもなしだとー?!!!」といきり立ち、昨日の飲み会で数人と肴にしていたところ、遅れて本日完了させた某氏から、「もしかして、ひとつシナリオを見忘れてないか?」という御指摘があったので、慌てて確認。たしかに、一個やり忘れていたシナリオがあった。ちゃんと終わりらしい終わり方をし、トゥルーエンドのテロップも流れた。
……だからといって評価が改善するかというとそんなことはまるでなく、寧ろ全体でも大した長さのないシナリオを四分割して、わざわざプレイヤーをいったんタイトル画面に戻してから再度シナリオを選択させる、という過程を踏む方がおかしい。何の為にあれだけ沢山のセーブ領域を用意したのか解らないではないか。儀式だ、と言い張りたいのだとしても、ならば「まだ終わっていない」ことをプレイヤーに明確に解るような状況を作るか、或いはタイトル画面に飛ばすのではなく、追加シナリオのメニューに戻して選択肢が増えたことを明示するべきではないのか。
結局のところ、追加シナリオの扱いもまた、製作者がプレイヤーに対する配慮を著しく欠いたまま自己満足で作っていたことを証明しているに過ぎない。普通ならスッキリ爽快感を残すはずのエピローグなのに、却って腹が立ちました。ああもう、関係している某氏に会ったら延々説教だけで終わりそうだよこれじゃ。